(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホッパ内のロール状のラベル印刷用紙をフィードローラにより繰り出し搬送して印刷ヘッドにより印刷し、カッターでカットすることにより作成されたラベルをラベル発行口から発行し、カット後の前記ラベル印刷用紙を前記フィードローラの逆転により所定長引き戻すラベルプリンタにおいて、
前記ホッパと前記フィードローラの間であって、用紙搬送面の下側に、外周面に糊が付き難い処理を施した補助ローラを、その補助ローラの外周面が前記フィードローラの外周面に圧接され、前記フィードローラの回転方向と逆方向に回転されるように設けたことを特徴とするラベルプリンタ。
請求項3に記載のラベルプリンタにおいて、前記補助ローラを左右のフレームに支持する軸の端部にワンウェイクラッチを封入したギアを備え、そのギアを前記フィードローラの軸に設けたギアに噛み合わせ、印刷時の前記フィードローラの回転により前記補助ローラが前記フィードローラと逆方向に回転され、バックフィード時には前記フィードローラのギアから回転力が前記補助ローラに伝動されないようにしたことを特徴とするラベルプリンタ。
請求項4記載のラベルプリンタにおいて、前記フィードローラのギア歯数Zaと前記補助ローラのギアの歯数Zbを、Za>Zbに設定して、前記フィードローラの外周速度よりも前記補助ローラの外周速度を速くしたことを特徴とするラベルプリンタ。
【背景技術】
【0002】
従来、ラベルは裏面に糊が付いていて、剥離紙と呼ばれる台紙に貼り付けられている。そのラベルを所望のところに貼り付ける場合は、ラベルから台紙を剥がしてから貼り付けている。剥がされた台紙は不要なため、廃棄されている。
【0003】
近年、環境への配慮から、廃棄される台紙の無いラベル印刷用紙(以下、台紙無しラベル印刷用紙という。)に印刷できるラベルプリンタが市場に出始めた。市場が求めるラベルプリンタは、台紙無しラベル印刷用紙だけでなく、従来の台紙付きのラベル印刷用紙にも対応できるものである。台紙付きラベル印刷用紙には、ラベルが所望の長さでカットされ、台紙上にラベル間にギャップ(隙間)をもって貼り付けられているものと、ラベルに切れ目が無く、連続しているものとがある。そして、ラベルプリンタは、台紙無しラベル印刷用紙と台紙付きラベル印刷用紙のそれぞれの専用機が使用されている。
【0004】
ロール状のラベル印刷用紙(以下、ロール紙という場合がある。)は、台紙の有無に関わらず連続していることから、ラベルプリンタには、ホッパからフィードローラにより繰り出され搬送されるラベル印刷用紙を所定の長さにカットするためのカッタ―が必須である。そして、カッタ―の位置は、印刷ヘッドから下流側に所定の距離(これを仮にLとする。)だけ離れているから、次回印刷されるラベル印刷用紙の先端から印刷開始位置までの余白を少なくするため、カット後のラベル印刷用紙をフィードローラにより
所定長バックフィード(ラベル発行口からホッパ方向へ搬送)している。
【0005】
そのバックフィード量を(L−α)とする場合、αが小さいほど、ラベル印刷用紙先端の余白が少なくなる。また、台紙無しラベル印刷用紙の場合は、距離Lが大きいと、ラベル間にギャップを有する台紙付きラベル印刷用紙の場合よりも、バックフィード量が多くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のラベルプリンタには、カット後のラベル印刷用紙をフィードローラによりバックフィードすることに伴って、次のような問題がある。
第1の問題
台紙無しラベル印刷用紙を用いる場合は、
図27に示すように、ホッパ4に装填されている台紙無しラベル印刷用紙B1が弛み、ホッパ4の前壁4cや通紙路6に貼り付く(
図27のBa)ため、ラベル印刷用紙B1から糊がホッパ側に転移したり、印刷時のラベル印刷用紙B1の搬送により、貼り付いている用紙が引き剥がされる際の異音が生じたり、用紙搬送負荷が大きくなったり、搬送不良が発生したりする。このような現象の発生を防ぐためには、ホッパ4に大きな印刷用紙収容空間4bを設けることが必要となるので、プリンタが大型化していた。
【0008】
図27〜
図32において、6は通紙路、7は用紙ガイド、11はフィードローラ、12はプレッシャローラである。
【0009】
通常、台紙付きラベル印刷用紙を用いる場合、そのラベル印刷用紙がラベル間にギャップを有するもの(ギャップあり)である場合は、印刷または排紙のための搬送時(以下、印刷・排紙搬送時という。)には
図28の(a)、バックフィード時は
図28の(b)にそれぞれ示すような用紙の流れとなる。すなわち、印刷・排紙搬送時は、ラベル印刷用紙の繰り出された部分Bbは緊張状態になり、ロール紙が前方に転がる。また、バックフィード時はラベル印刷用紙のバックフィードされた部分が
図28の(b)の第1の流れBc1または第2の流れBc2で示すように弛み、前方に転がったロール紙は後方に戻る。
【0010】
また、そのラベル印刷用紙がラベルの連続しているもの(ギャップ無し)である場合は、
印刷・排紙搬送時は
図29の(a)、バックフィード時は
図29の(b)にそれぞれ示すような用紙の流れとなる。すなわち、印刷・排紙搬送時は、
図28の(a)と同様であるが、バックフィード時は、
図28の第1の流れBc1と同じ流れのみとなる。
【0011】
しかし、ギャップあり台紙付きラベル印刷用紙の場合は、以下に述べる第2の問題がある。
第2の問題
図30に示すように、ホッパ4にギャップあり台紙付きラベル印刷用紙B21を弛んだ状態で装填し、印刷を続けた場合は、通紙路6の入口でラベルがフィードローラとプレッシャローラ12により大きく屈曲される。このため、
図31に示すように、ラベルの先端Laが台紙から剥がれて浮き出し、その浮き出したラベルの先端Laがホッパ4や用紙ガイド7またはフィードローラ11に突き当る。そのため、
図32に示すように、ラベルの先端折れLbや貼り付き等が発生して、用紙ジャムが発生することがある。このような場合は、用紙ジャムを解消した後、ラベルの再発行が必要になると言う不具合があった。
【0012】
本発明の目的は、上記第1の問題および第2の問題を解決することができるラベルプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、ホッパ内のロール状のラベル印刷用紙をフィードローラにより繰り出し搬送して印刷ヘッドにより印刷し、カッターでカットすることにより作成されたラベルをラベル発行口から発行し、カット後のラベル印刷用紙をフィードローラの逆転により所定長バックフィードするラベルプリンタにおいて、 ホッパとフィードローラの間であって、用紙搬送面の下側に、外周面に糊が付き難い処理(非粘着化処理)を施した補助ローラを、その補助ローラの外周面がフィードローラの外周面に圧接され、フィードローラの回転方向と逆方向に回転されるように設けたことを特徴とする。
【0014】
上記ラベルプリンタにおいて、フィードローラの外周とホッパ内のロール径が最小時におけるラベル印刷用紙の外周とを結ぶ接線に補助ローラの外周が接触しないように、補助ローラを接線から離間することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上記目的を達成するため、ホッパ内のロール状のラベル印刷用紙をフィードローラにより繰り出し搬送して印刷ヘッドにより印刷し、カッターでカットすることにより作成されたラベルをラベル発行口から発行し、カット後のラベル印刷用紙をフィードローラの逆転により所定長バックフィードするラベルプリンタにおいて、ホッパとフィードローラの間であって、用紙搬送面の下側に、外周面に糊が付き難い処理を施した補助ローラ
を、その外周面をフィードローラから
駆動力を与えられない距離に離間して回転自在に設
けたことを特徴とする。
【0016】
前記回転自在の補助ローラを左右のフレームに支持する軸の端部にワンウェイクラッチを封入したギアを備え、そのギアを前記フィードローラの軸のギアに噛み合わせ、印刷時にはフィードローラの回転により補助ローラがフィードローラと逆方向に回転され、バックフィード時にはフィードローラのギアから回転力が補助ローラに伝動されないようにしてもよい。
【0017】
前記フィードローラのギア歯数Zaと前記補助ローラのギアの歯数Zbを、Za>Zbに設定して、フィードローラの外周速度よりも補助ローラの外周速度を速くすることが好ましい。
【0018】
上記ラベルプリンタにおいても、フィードローラの外周とホッパ内のロール径が最小時におけるラベル印刷用紙の外周とを結ぶ接線に補助ローラの外周が接触しないように、補助ローラを接線から離間することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
印刷・切断後の台紙なしラベル印刷用紙をバックフィードする際に、用紙がホッパに粘着し、粘着剤の転移、搬送負荷の増大、搬送不良等を起こす問題、台紙付きラベル印刷用紙の場合は、バックフィード時や台紙から剥がれた状態で印刷搬送された時に、台紙から剥がれた用紙先端がホッパ、用紙ガイド、フィードローラに突き当たり、ラベル先端折れや貼り着き、ジャムが発生する問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの斜視図である。
【
図2】
図1のプリンタの右側のフレームを除去して示す側面図である。
【
図3】補助ローラの第1の取付態様における補助ローラとラベル印刷用紙の位置関係およびフィードローラとの関係を示す図である。
【
図4】補助ローラの第1の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合の、印刷・排紙搬送時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図5】補助ローラの第1の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合の、バックフィード時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図6】補助ローラの第1の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙付きラベル印刷用紙である場合の、印刷・排紙搬送時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図7】補助ローラの第1の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙付きラベル印刷用紙である場合の、バックフィード時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図8】補助ローラの第1の取付態様における補助ローラとフィードローラの位置関係を示す
図3、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合および台紙付きラベル印刷用紙である場合のそれぞれの印刷・排紙搬送時およびバックフィード時の補助ローラの作用を説明する
図4〜8の相互関係をまとめた表である。
【
図9】補助ローラの第2の取付態様における補助ローラとラベル印刷用紙の位置関係およびフィードローラとの関係を示す図である。
【
図10】補助ローラの第2の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合の、印刷・排紙搬送時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図11】補助ローラの第2の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合の、バックフィード時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図12】補助ローラの第2の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙付きラベル印刷用紙である場合の、印刷・排紙搬送時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図13】補助ローラの第2の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙付きラベル印刷用紙である場合の、バックフィード時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図14】補助ローラの第2の取付態様における補助ローラとフィードローラの位置関係を示す
図9、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合および台紙付きラベル印刷用紙である場合のそれぞれの印刷・排紙搬送時およびバックフィード時の補助ローラの作用を説明する
図10〜13の相互関係をまとめた表である。
【
図15】補助ローラの第3の取付態様を採用したプリンタの要部の平面図である。
【
図17】
図16の回転する部材の印刷時およびバックフィード時の回転方向を示す図である。
【
図18】補助ローラの第3の取付態様における補助ローラとラベル印刷用紙の位置関係およびフィードローラとの関係を示す図である。
【
図19】補助ローラの第3の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合の、印刷・排紙搬送時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図20】補助ローラの第3の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合の、バックフィード時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図21】補助ローラの第3の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙付きラベル印刷用紙である場合の、印刷・排紙搬送時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図22】補助ローラの第3の取付態様において、ラベル印刷用紙が台紙付きラベル印刷用紙である場合の、バックフィード時の補助ローラの作用を説明する図である。
【
図23】補助ローラの第3の取付態様における補助ローラとフィードローラの位置関係を示す
図18、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合および台紙付きラベル印刷用紙である場合のそれぞれの印刷・排紙搬送時およびバックフィード時の補助ローラの作用を説明する
図19〜22の相互関係をまとめた表である。
【
図24】補助ローラの一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図25】補助ローラの他例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図26】補助ローラのさらに他の例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【
図27】従来のプリンタの一部の構成と問題点を説明する図である。
【
図28】
図27のプリンタにおいてギャップあり台紙付きラベル印刷用紙が搬送される時と、バックフィードされる時の用紙の状態を示す図であり、(a)は搬送時の状態、(b)はバックフィード時の状態を示す。
【
図29】
図27のプリンタにおいてギャップ無し台紙付きラベル印刷用紙が搬送される時と、バックフィードされる時の用紙の状態を示す図であり、(a)は搬送時の状態、(b)はバックフィード時の状態を示す。
【
図30】
図27のプリンタのホッパに台紙付きラベル印刷用紙が弛みのあるままセットされた状態を示す図である。
【
図31】
図30の弛みのあるままセットされた台紙付きラベル印刷用紙に印刷・排紙搬送動作が行われている状態を示す図である。
【
図32】
図31の台紙付きラベル印刷用紙に対する印刷中に、下層のラベルが台紙から剥がれ、先端が折れてジャムした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、
図27以下の図面に示された従来のプリンタの構成部材と同一または相当の部材には同一の符号を付す。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係るラベルプリンタ(以下、プリンタという。)Aの、斜め後方から見た斜視図であるが、外装と保護を兼ねるカバーが取り外されている。また、プリンタAの後部に設けられているホッパ4に装填されたロール状のラベル印刷用紙(ロール紙)Bが、未使用の状態で示されている。
【0023】
図1および
図2に示すように、プリンタAは、ベース1とそのベース1の左右両端部から起立するフレーム2,3を有し、そのフレーム2,3の間に,後述される諸部材が取り付けられている。まず、プリンタAの後部には、ロール紙Bを装填するためのホッパ4が設けられている。このホッパ4は、フレーム2,3の後部内側面に密着する垂直な側壁4aと、両側壁4aの間を延び、断面U字状に連続して上面に開口するロール紙収容空間4bを形成する前壁4cと、底壁4dと、後壁4eとを有する。
【0024】
次に、プリンタAの前部(
図1,2において右側)には、印刷されたラベルを外部に発行するラベル発行口5が設けられている。ホッパ4の前壁4cの上端からラベル発行口5までの間に、後述されるフィードローラにより繰り出され搬送されるラベル印刷用紙Bが通る通紙路6が設けられ、その通紙路6の上側には用紙ガイド7が取り付けられている。
【0025】
ラベル発行口5の上流側の至近位置には、ラベル印刷用紙Bをカットするための既知のカッター8が備えてある。このカッター8は、通紙路6の上側に刃先を下向きに取付けられた固定刃8aと、通紙路6の下側に刃先を固定刃8aに対向させて設けられた可動刃8bとを有する。可動刃8bは、たとえば、モータとカム、またはソレノイド等の既知の可動刃昇降手段8cに結合されている。その可動刃昇降手段8cにカッター制御部(図示せず)から制御信号を与えられるたびに、可動刃8bが、その刃先が用紙搬送面よりも低い位置から用紙搬送面よりも高い位置まで移動されるように昇降されて、固定刃8aと協働してラベル印刷用紙Bをカットする。
【0026】
カッタ―8からホッパ4の方向(上流側)に所定距離隔てた位置の通紙路6の上側に、サーマルヘッドからなる印刷ヘッド9が備えられている。そして、通紙路6の下側の印刷ヘッド9に対向する位置にプラテンローラ10が設けられている。図示されていないが、印刷ヘッド9による印刷が行なわれないときは印刷ヘッド9をプラテンローラ10から離間させ、印刷が行われるときは印刷ヘッド9をプラテンローラ10方向に押圧する押圧手段が備えられている。
【0027】
ホッパ4の前壁4cの上側、換言すると、通紙路6の入口付近の用紙搬送面よりも下側に、ホッパ4内のラベル印刷用紙Bを、通紙路6を経てラベル発行口5方向に搬送したり、通紙路6内のラベル印刷用紙Bをホッパ4側にバックフィードするためのフィードローラ11が設けられている。そして、そのフィードローラ11の上面に、通紙路6の上側に設けられたプレッシャローラ12が圧接されている。
【0028】
フィードローラ11は、たとえばステッピングモータからなる可逆モータ13により、印刷時には正回転(
図2において時計方向に回転)され、バックフィード時には逆回転(
図2において反時計方向に回転)される。
図2には示されていないが、可逆モータ13の回転力をフィードローラ11に伝える伝動手段が備えられている。この伝動手段は、後の
図16,17の記載から推考可能である。
【0029】
以上の構成は、既存のプリンタの構成と同様である。本発明の実施の形態においては、本発明の上記目的を達成するため、
図2に示すように、フィードローラ11とホッパ4の間であって、通紙路6の用紙搬送面よりも下側に、補助ローラ14が設けられている。この場合、
図3に示すように、フィードローラ11の外周とロール径が最小時におけるラベル印刷用紙(ロール紙)Bsの外周とを結ぶ接線
に補助ローラ14の外周が接触しないように、
補助ローラ14をその接線から距離δ1だけ離間させてある。
【0030】
また、補助ローラ14は、その外周面にラベル印刷用紙Bの糊が付き難くするための表面処理(非粘着化処理)が施されている。非粘着化処理には、たとえば、補助ローラ14の外周面に非粘着性のコーティングを施す、補助ローラ14の外周面に非粘着性のゴム管を嵌合密着する、あるいは、非粘着性のゴムで補助ローラ14を製作する、などの方法を採用することができる。
【0031】
続いて、補助ローラ14のフィードローラ11に対する取付態様と、その取付態様における作用効果を、いくつかの例について説明する。
[第1の取付態様]
補助ローラ14の第1の取付態様は、
図3に示すように、補助ローラ14をフィードローラ11の外周面に圧接するように、補助ローラ14が摩擦受動によりフィードローラ11の回転方向と逆方向に回転されるようにしたことである。
【0032】
補助ローラ14のこのような取付態様においては、台紙無しラベル印刷用紙B1に印刷される場合は、
図4に示すように、ラベル印刷用紙B1が緊張状態にある。その時のフィードローラ11の外周とラベル印刷用紙
(ロール紙)B1の外周とを結ぶ接線と補助ローラ14の外周との間にδ1
以上の間隙があるため、印刷および排紙のための搬送時には補助ローラ14はラベル印刷用紙Bの裏面や糊面に接触することはない。
したがって、搬送負荷の増大や搬送不良等を起こすことはない。仮に接触したとしても、補助ローラ14は表面が非粘着化処理をされているので、ラベル印刷用紙B1を捕捉することはない。したがって、ラベル印刷用紙B1の印刷時の搬送に影響することはない。
【0033】
従来技術の第1の問題は、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合に、その台紙無しラベル印刷用紙がバックフィードされる時にホッパ周辺に貼り付くことであった。本実施の形態においては、補助ローラ14を設けたことで、台紙無しラベル印刷用紙B1が(L−α)の長さをバックフィードされても、
図5に示すように、台紙無しラベル印刷用紙B1は補助ローラ14の外周に沿って流れるため、ホッパ4や用紙ガイド7に貼り付くことがない。したがって、紙無しラベル印刷用紙B1が剥がされる時の異音の発生や用紙ジャムの発生が防止される。
【0034】
また、従来技術の第2の問題は、ラベル印刷用紙がギャップあり台紙付きラベル印刷用紙である場合に、ロール紙が弛んだ状態で印刷時に搬送される際に、ラベル先端の折れやフィードローラに対する突き当りが発生することであった。本実施の形態においては、補助ローラ14がフィ―ドローラ11の上流側の用紙搬送面よりも下側に設けてあるので、
図6に示すように、台紙付きラベル印刷用紙B2の印刷・排紙搬送時に
は、補助ローラ14は弛んだ下層のラベル印刷用紙B2が下流側に寄るのを遮る作用をする。また、
図6に示すように、補助ローラ14は、弛んだ下層のラベル印刷用紙B2を下方に押し出すことや、台紙から浮き上がったラベルの先端を拾い上げ、下方に送り込むことができるため、ラベル先端の折れやフィードローラ11への突き当りを防止できる。さらに、
図7に示すように、台紙付きラベル印刷用紙B2が弛んだ状態でバックフィードされる場合は、補助ローラ14は印刷方向(
図7において時計方向)に回転するが、下層のラベル印刷用紙B2が補助ローラ14と接触しても、補助ローラ14は搬送力を持たないので空回りとなり、最上紙が下に流れようとした場合に、その流れを防ぐ作用をする。
【0035】
上に説明した補助ローラの第1の取付態様における補助ローラ14とフィードローラ11の位置関係、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合および台紙付きラベル印刷用紙である場合のそれぞれの印刷・排紙搬送時およびバックフィード時の補助ローラ14の作用の相互関係を表にまとめると、
図8に示すとおりである。なお、
図8に記載されているように、ラベル印刷用紙がギャップ無し台紙付きラベル印刷用紙である場合の補助ローラ14の作用は、ギャップあり台紙付きラベル印刷用紙の場合と同様である。
【0036】
[第2の取付態様]
第2の取付態様として、
図9に示すように、補助ローラ14をフィードローラ11に接触しないように、上記間隙δ1(フィードローラ11の外周とラベル印刷用紙Bの外周を結ぶ接線と補助ローラ14の外周との間の間隙)と間隙δ2(フィードローラ11の外周と補助ローラ14の外周との間の間隙)を設け、何にも駆動されずに回転自在に取り付けた。
【0037】
この取付態様により、印刷・排紙搬送時は、
図10に示すように、台紙無しラベル印刷用紙B1は台紙が無いた
め、弛むことはなく、緊張状態を保つ。台紙無しラベル印刷用紙B1がフィードローラ11によりバックフィードされるときは、
図11に示すように、ラベル印刷用紙B1が補助ローラ14に接触するので、補助ローラ14はラベル印刷用紙B1の流れに連れ回りすることがある。しかし、バックフィードによりラベル印刷用紙B1が下方に撓んでも、補助ローラ14の外周がラベル印刷用紙B1をホッパ4や用紙ガイド
7に接触させないように遮る壁の機能を有するので、ラベル印刷用紙B1の貼り付きによる搬送不良が発生することはない。
【0038】
また、
図12に示すように、台紙付きラベル印刷用紙B2の印刷・排紙搬送時は、ラベル印刷用紙B2の弛んだ下層部分が通紙路6側に寄るのを補助ローラ14が防止するので、ラベル印刷用紙B2が急激に屈曲されることはない。したがって、ラベル先端が台紙から剥がされることはない。
【0039】
さらに、
図13に示すように、台紙付きラベル印刷用紙B2が弛んだ状態でバックフィードされる時は、補助ローラ14は回転せず、ラベル印刷用紙B1が下方に流れようとする場合は、補助ローラ14はその流れを防ぐ壁として機能する。
【0040】
図14は、上に説明した補助ローラの第2の取付態様における補助ローラ14とフィードローラ11の位置関係、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合および台紙付きラベル印刷用紙である場合のそれぞれの印刷・排紙搬送時およびバックフィード時の補助ローラ14の作用の相互関係をまとめた表である。
【0041】
[第3の取付態様]
第3の取付態様として、
図15,
図16に示すように、補助ローラ14の軸15を左右フレーム2
,3に支持し、かつ、その軸15の端部にワンウェイクラッチを封入したギア16を固着し、そのギア
16をフィードローラ11の軸17に固着したギア18に噛み合わせてある。ギア18には、フレーム3に取付けられたギア19が噛み合わされており、そのギア19と同軸上に固着されているプーリ20、フレーム3に取付けられた他のプーリ21および可逆モータ13のプーリ22にベルト23が掛け回されている。
【0042】
図17は、フィードローラ11の印刷時とバックフィード時のそれぞれの回転方向と補助ローラ14の回転の有無を示している。補助ローラ14は、
図18に示すように、δ1とδ2の間隙を有している。印刷・排紙搬送時は、
図19に示すように、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙B1である場合は、ラベル印刷用紙B1は弛むことはなく、常時密着したロール状態を維持し、フィードローラ11により繰り出された部分は常に緊張状態を保つ。補助ローラ14はバックフィード側に回転するが、台紙無しラベル印刷用紙B1は補助ローラ14に接触することはない。
【0043】
バックフィード時は、
図20に示すように、ラベル印刷用紙B1は密着ロール状態を維持し、バックフィード方向の流れはワンウェイクラッチの空転方向と一致するので、ラベル印刷用紙B1が補助ローラ14に接触すると、補助ローラ14がバックフィード方向に連れ回りすることがある。しかし、台紙無しラベル印刷用紙B1がバックフィードされる時は、
図20に示すように、ワンウェイクラッチが空転するので、補助ローラ14が強制回転されることはない。したがって、補助ローラ14の第2の取付態様の場合と同様の作用と効果が得られる。また、貼り付きによる異音発生および搬送不良が生じない。
【0044】
上記第2の問題に関しては、台紙付きラベル印刷用紙B2の印刷時、排紙搬送時は、ワンウェイクラッチがロックするため、
図21に示すように、補助ローラ14がバックフィード方向に回転する。これは、補助ローラ14の第1の取付態様の場合(
図6)と同様の状態である。したがって、ギャップあり台紙付きラベル印刷用紙B2のラベルの先端やフィードローラ11への突き当りが防止される。
【0045】
台紙付きラベル印刷用紙B2のバックフィード時は、
図22に示すように、バックフィード方向の流れはワンウェイクラッチの空転方向と一致するので、補助ローラ14の第2の取付態様の場合(
図13)と同様に、台紙付きラベル印刷用紙B1のラベルの先端やフィードローラ11への突き当りが防止される。
【0046】
フィードローラ11のギア歯数をZa、補助ローラ14のギアの歯数をZbとすると、ZaとZbの関係をZa>Zbに設定して、フィードローラ11の外周速度よりも補助ローラ14の外周速度を速くすることが好ましい。これにより、上記効果が一層高揚されるからである。
【0047】
図23は、上に説明した補助ローラの第3の取付態様における補助ローラとフィードローラの位置関係、ラベル印刷用紙が台紙無しラベル印刷用紙である場合および台紙付きラベル印刷用紙である場合のそれぞれの印刷・排紙搬送時およびバックフィード時の補助ローラの作用の相互関係をまとめた表である。
【0048】
上記補助ローラ14の形状および材質等は、ラベル印刷用紙に対して非粘着性と低摩擦性を有するならば、特に限定されない。使用可能なものを例示すると、たとえば非粘着性シリコンゴム製の、
図24に示すような複数の円筒形のローラ14A、
図25に示すように、複数のそろばん玉状のローラ14B、あるいは
図26に示すように、低摩擦性の複数の拍車状のローラ14Cなどである。
【課題】台紙の無いラベル印刷用紙の場合は、ホッパに装填されているラベル印刷用紙が弛み、ホッパ側の壁や通紙路に貼り付くため、糊がホッパ側に転移したり、印刷時のラベル印刷用紙の搬送により、貼り付いている用紙を引きはがす際の異音が生じたり、用紙搬送負荷が大きくなったり、搬送不良が発生したりする。ラベル間に隙間がある台紙付きラベル印刷用紙の場合は、ホッパにラベル印刷用紙を弛んだ状態で装填し、印刷を続けた場合は、通紙路の入口でラベルが大きく屈曲されるため、ラベルの先端が台紙から剥がれて浮き出し、その浮き出したラベルの先端がホッパや用紙ガイドまたはフィードローラに突き当り、先端折れや貼り付き等が発生して、用紙ジャムが発生することがある。