特許第5703003号(P5703003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703003
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ピッチシフト装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/053 20060101AFI20150326BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20150326BHJP
   G10H 1/10 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   G10H1/053 B
   G10H1/00 A
   G10H1/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-272268(P2010-272268)
(22)【出願日】2010年12月7日
(65)【公開番号】特開2012-123081(P2012-123081A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】福田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 昇一
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−171387(JP,A)
【文献】 特開平07−152379(JP,A)
【文献】 特開2005−107328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子弦楽器の楽音信号が入力される入力手段と、
前記入力手段から入力された楽音信号のピッチ情報を検出するピッチ検出手段と、
入力された楽音信号のピッチ情報とそのピッチ情報をピッチシフトさせるためのピッチシフト情報とを対応付けたピッチシフト情報群を記憶するピッチシフト情報記憶手段と、
前記ピッチ検出手段により検出されたピッチ情報に対応するピッチシフト情報を、前記ピッチシフト情報記憶手段に記憶されているピッチシフト情報群から読み出すピッチシフト情報読出手段と、
前記ピッチシフト情報読出手段により読み出したピッチシフト情報に基づいて、前記入力手段から入力された楽音信号をハーモニー音としてピッチシフトするピッチシフト制御手段とを備えたピッチシフト装置において、
電子弦楽器のチョーキングを検出するチョーキング検出手段を備え、
前記ピッチシフト制御手段は、前記チョーキング検出手段により前記チョーキングが検出された場合に、前記ピッチシフト情報読出手段により前記ピッチシフト情報群から読み出されるピッチシフト情報の変更に伴う前記ハーモニー音のピッチシフト変化を補間する制御を行う補間手段を含んで構成されることを特徴とするピッチシフト装置。
【請求項2】
前記ピッチシフト情報記憶手段は、前記ピッチシフト情報群を複数記憶するものであり、
前記ピッチシフト装置は、
前記ピッチシフト情報記憶手段に記憶されている複数のピッチシフト情報群の中から、1の情報群を任意に選択可能な選択手段を備え、
前記ピッチシフト情報読出手段は、前記選択手段により選択されたピッチシフト情報群から、前記ピッチ検出手段により検出されたピッチ情報に対応するピッチシフト情報を読み出すものであることを特徴とする請求項1に記載のピッチシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッチシフト装置に関し、特に、電子弦楽器による演奏音から、その演奏音をピッチシフトさせた音(ピッチシフト音)を好適に得ることができるピッチシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力音のピッチを、所定のピッチシフト量だけシフトさせて出力するピッチシフト装置が知られている。特許文献1には、入力音の各ピッチ(C,C,D,D,…,A,B)に対し、ピッチシフト後のピッチが音楽的に自然なピッチとなるようにピッチシフト量が規定されたテーブル(ピッチシフト量テーブル)を、演奏者により設定可能な演奏時のキー(調)及びスケール(音階)と、音程を示すシフト情報(例えば、+3度、−3度など)とのそれぞれに応じたものを予め記憶させておき、演奏者が設定したキー情報(キー及びスケール)とシフト情報に応じたピッチシフト量テーブルを用いて入力音をピッチ変化させることにより、音楽的に自然なピッチシフト音を出力できるピッチシフタ(ピッチシフト装置)が記載されている。
【0003】
図7(a)は、ピッチシフト量テーブルの内容の一例を示す模式図であり、特許文献1に記載されるピッチシフタでも同様のテーブルが採用されている。この図7(a)に示したピッチシフト量テーブルは、キー情報がC(Cメジャー)又はAm(Aマイナー)に設定され、シフト情報が+3度(+3rd)に設定された場合に参照されるテーブルである。ピッチシフト量テーブルでは、図7(a)の上段に記載される音名で表したピッチと、下段に記載される半音単位のピッチシフト量とが対応しており、入力音のピッチに応じて上段が参照され、対応する下段のピッチシフト量が決定される。図7(a)に示すテーブルの下段には、ピッチシフト量として、「3」又は「4」の数字が記載されているが、これらの数字はそれぞれ「3半音(短三度)」又は「4半音(長三度)」を示す。即ち、この例のピッチシフト量テーブルでは、入力音のピッチに応じて、ピッチシフト量が+3半音(短三度)又は+4半音(長三度)と規定されている。具体的に、入力音のピッチが「C」、「D」、「D」、「E」、「G」、「A」、「A」又は「B」である場合に、ピッチシフト量が+3半音と規定され、入力音のピッチが「C」、「F」、「F」又は「G」である場合に、ピッチシフト量が+4半音と規定されている。
【0004】
図7(b)は、図7(a)のピッチシフト量テーブルを用いて入力音にハーモニー音を付加する場合に、通常奏法(フレット変更)で電子ギターを演奏したときの各音のピッチの時間変化を示すグラフである。このグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は入力音の音名(ピッチ)を示す。図7(b)のグラフによれば、時刻t1に、「G」の入力音101が入力されると、図7(a)のピッチシフト量テーブルに基づいて、「G」の4半音上となる「B」のハーモニー音102が、入力音101と共に出力される。その後、時刻t2にて、入力音101が通常奏法(フレットの変更)により「G」から「A」に変化されたとする。この場合、図7(b)に示すように、入力音101は、時刻t2を境界として「G」から「A」に変わるので、ハーモニー音102も、時刻t2を境界として「B」から「C」に変化する。
【0005】
入力音101が「G」である場合には、その4半音階上の「B」が音楽的に自然なハーモニー音であり、入力音101が「A」である場合には、その3半音階上の「C」が音楽的に自然なハーモニー音であるので、図7(a)のピッチシフト量テーブルを用いることにより、電子ギターの演奏音に、自然なハーモニー音を自動で付与することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−171387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ピッチシフト量テーブルを用いてピッチシフトを行う場合、チョーキング奏法を行った場合に不自然なピッチ変化が生じるという問題点があった。
【0008】
図7(c)は、図7(a)のピッチシフト量テーブルを用いて入力音にハーモニー音を付加する従来方法において、チョーキング奏法で電子ギターを演奏したときの各音のピッチの時間変化を示すグラフである。このグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は入力音の音名を示す。「G」の入力音101が時刻t1において入力された後、時刻t2aにおいてチョーキングを開始し、入力音101のピッチを、「G」から、時刻t2cにおいて「A」になるように変化させるとする。かかる場合、ハーモニー音102のピッチは、時刻t2a以降、入力音101のピッチが上昇するに伴って、入力音のピッチに対する4半音上の音程を保ちつつ、「B」から上昇する。しかし、時刻t2bにおいて、入力音101のピッチが「G」であると検出されると、ハーモニー音102のピッチは、図7(a)のピッチシフト量テーブルに基づき、「G」の3半音上である「B」に設定される。この場合、ハーモニー音102のピッチが急激に下がることになり、そのピッチ変化が不自然なものとなる。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、電子弦楽器(例えば、ギターやベースなど)による演奏音に基づくピッチシフト音を好適に得ることができるピッチシフト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載のピッチシフト装置によれば、電子弦楽器のチョーキングを検出するチョーキング検出手段を備えており、そのチョーキング検出手段によりチョーキングが検出された場合には、ピッチシフト制御手段の補間手段により、ピッチ情報記憶手段に記憶されているピッチシフト情報群(入力された楽音信号のピッチ情報とそのピッチ情報をピッチシフトさせるためのピッチシフト情報とを対応付けたもの)からピッチシフト情報読出手段によって読み出されたピッチシフト情報の変更に伴うハーモニー音のピッチシフト変化を補間する制御が行われる。よって、ピッチシフト情報群から読み出されるピッチシフト情報に基づいて、入力手段から入力された電子弦楽器の楽音信号のピッチ情報のピッチシフトを行う場合に生じ得る、ピッチシフト音(ピッチシフトされた楽音信号)の不自然なピッチ変化を抑制でき、電子弦楽器による演奏音に基づくピッチシフト音をハーモニー音として好適に得ることができるという効果を奏する。
【0011】
請求項2記載のピッチシフト装置によれば、請求項1の奏する効果に加え、ピッチシフト情報群を選択手段により選択できるように構成されているので、演奏に最適なピッチシフト情報群を選択可能であり、それにより、演奏に最適なピッチシフト音を得ることができる。さらに、任意のピッチシフト情報群を選択可能に構成されているが、どのピッチシフト情報群が選択されても、チョーキングが検出された場合には補間手段による補間制御が実施されるので、演奏に最適であり、かつ、不自然なピッチ変化が抑制されたピッチ音を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態であるピッチシフト装置の模式的な外観図である。
図2】ピッチシフト装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3】ピッチシフト装置がハーモニーモードに設定されている場合の機能を示す機能ブロック図である。
図4】ハーモニーモードにおいて、CPUが実行するピッチシフト処理を示すフローチャートである。
図5】ピッチシフト装置がハーモニーモードに設定されている場合に、チョーキングが行われたときの、入力音及びハーモニー音のピッチの時間変化を示すグラフである。
図6】ピッチシフト装置がピッチシフトモードに設定されている場合の機能を示す機能ブロック図である。
図7】(a)は、ピッチシフト量テーブルの内容の一例を示す模式図であり、(b)は、(a)のピッチシフト量テーブルを用いて入力音にハーモニー音を付加する場合に、通常奏法で電子ギターを演奏したときの各音のピッチの時間変化を示すグラフであり、(c)は、(a)のピッチシフト量テーブルを用いて入力音にハーモニー音を付加する従来方法において、チョーキング奏法で電子ギターを演奏したときの各音のピッチの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるピッチシフト装置1の模式的な外観図である。本実施形態のピッチシフト装置1は、電子弦楽器(例えば、電子ギターや電子ベースなど)の演奏によって入力された入力音(演奏音)のピッチに応じた、該入力音のピッチシフト音を生成して出力する装置である。
【0014】
本実施形態では、ピッチシフト音の出力モードとしては、モード切替スイッチである操作子15aの操作により切り替え可能な2つのモードが設けられている。第1のモードは、入力音を第1の出力音として出力すると共に、入力音のピッチに応じた該入力音のピッチシフト音を生成して、そのピッチシフト音を第2の出力音として出力するハーモニーモードである。なお、上記「第2の出力音」を、以下では「ハーモニー音」と称することがある。第2のモードは、ピッチシフト音だけを出力する、即ち、演奏音をピッチシフトさせて出力するピッチシフトモードである。
【0015】
ピッチシフト装置1は、操作パネルを表面に有する筐体50と、入力端子51と、出力端子52とを有する。電子ギターや電子ベースなどの電子弦楽器の出力が入力端子51に接続され、接続された電子弦楽器による演奏音が入力端子51を介して入力音としてピッチシフト装置1に入力されると、設定されたモードに応じた出力音が出力端子52から出力され、それらの音が出力端子52に接続されたアンプに供給される。なお、他のエフェクタの出力を入力端子51に接続し、効果の付与された演奏音を入力音として入力してもよい。同様に、出力端子52に接続される装置としては、アンプに限らず、他のエフェクタであってもよい。
【0016】
図1には、筐体50に設けられた操作パネルが紙面手前側に向けられたピッチシフト装置1が図示されている。操作パネルには、各種操作子15a〜15gと、設定されているキー情報を表示するキー情報表示部53と、設定されているシフト情報を表示するシフト情報表示部54と、設定されているモードに応じた態様で点灯する設定モード表示用LED55,56とが設けられている。
【0017】
操作子15aは、ピッチシフト音の出力モードを設定するためのモード切替スイッチであり、押し操作が可能なボタンスイッチとして構成される。操作子15aによる操作が行われると、その都度、モードが、ハーモニーモードとピッチシフトモードとの間で切り替わる。図1において向かって左側に位置する設定モード表示用LED55は、ハーモニーモードが設定されている場合に点灯するLEDであり、他方の設定モード表示用LED56は、ピッチシフトモードが設定されている場合に点灯するLEDである。つまり、設定モード表示用LED55と設定モード表示用LED56との点灯状態は、操作子15aの操作が行われる毎に切り替わる。なお、図1に示す例では、設定モード表示用LED55が点灯されており、モードがハーモニーモードに設定されていることを示す。
【0018】
操作子15b,15cは、ユーザがキー情報を設定するためのキー情報設定スイッチであり、押し操作が可能なボタンスイッチとして構成される。操作子15bは、Cメジャー→Cメジャー→Dメジャー→…→Aメジャー→Bメジャー→Cマイナー→Cマイナー→Dマイナー→…→Aマイナー→Bマイナーの順でキー情報を変化させることができるスイッチである。一方、操作子15cは、キー情報を、操作子15bによる変化とは逆順に変化させることができるスイッチである。キー情報表示部53は、ユーザにより設定されたキー情報を表示する画面であり、操作子15b,15cが操作される毎に、その操作に応じて設定されたキー情報が表示される。図1に示す例では、キー情報表示部53に「Cm」と表示されており、これは、設定されているキー情報がCm(Cマイナー)であることを示している。
【0019】
操作子15d,15eは、シフト情報を設定するためのシフト情報設定スイッチであり、押し操作されるボタンスイッチとして構成される。本実施形態では、ハーモニーモードで使用されるシフト情報として、4つの音程(−5度、−3度、+3度、5度)が設けられている。また、ピッチシフトモードで使用されるシフト情報として、7つのシフト情報(−1オクターブ、−700セント、−500セント、+300セント、+500セント、+700セント、+1オクターブ)が設けられている。
【0020】
モードがハーモニーモードに設定されている場合には、操作子15dは、シフト情報を、−5度→−3度→+3度→+5度の順で順次変化させることができるスイッチとして機能し、操作子15eは、シフト情報をその逆順序(即ち、+5度→+3度→−3度→−5度の順)で順次変化させることができるスイッチとして機能する。一方で、モードがピッチシフトモードに設定されている場合には、操作子15dは、シフト情報を、−1オクターブ→−700セント→−500セント→+300セント→+500セント→+700セント→+1オクターブの順で順次変化させることができるスイッチとして機能し、操作子15eは、シフト情報をその逆順序で順次変化させることができるスイッチとして機能する。シフト情報表示部54は、設定されているシフト情報を表示する画面であり、操作子15d,15eが操作される毎に、その操作に応じて設定されたシフト情報が表示される。図1に示す例では、シフト情報表示部54に「+3rd」と表示されており、設定されているシフト情報が+3度であることを示している。
【0021】
操作子15fは、ピッチシフトモードにおいて、効果(ピッチシフト)のオンとオフとを切り替えるためのオン/オフ切替スイッチである。操作子15fは、押し操作されるボタンスイッチとして構成され、操作される毎に効果のオンとオフとが切り替えられる。
【0022】
操作子15gは、ピッチシフトモードにおいて効果がオフからオンに切り替えられた場合に、効果がかかりきるまでの時間(以下、この時間を「第1時間」と称する)と、効果がオンからオフに切り替えられた場合に、元のピッチに戻るまでの時間(以下、この時間を「第2時間」と称する)を設定するための時間設定つまみである。この操作子15gを回転操作することにより、第1時間及び第2時間を設定することができる。操作子15gが「0(ゼロ)」に設定された場合には、第1時間及び第2時間は、予め決められている基準時間に設定される。操作子15gを「0(ゼロ)」より+方向(時計回り)に回すことにより、第1時間及び第2時間を基準時間より長くすることができ、その回転量が多い程、第1時間及び第2時間をより長い時間に設定できる。一方で、操作子15gを「0(ゼロ)」より−方向(反時計回り)に回すことにより、第1時間及び第2時間を基準時間より短くすることができ、その回転量が多い程、第1時間及び第2時間をより短い時間に設定できる。
【0023】
本実施形態のピッチシフト装置1は、モードがハーモニーモードに設定されている場合には、操作子15b,15cにより設定されたキー情報と、操作子15d,15eにより設定されたシフト情報とに基づいて選択されたピッチシフト量テーブル12b(図2参照)を参照し、入力音のピッチを示すピッチ情報に応じたピッチシフト量を決定し、入力音を、決定されたピッチシフト量だけピッチシフトすることにより、ハーモニー音を生成する。
【0024】
また、ピッチシフト装置1は、モードがピッチシフトモードに設定され、かつ、効果がオンに設定されている場合に、入力音を、操作子15d,15eにより設定されたシフト情報が示すピッチシフト量だけピッチシフトすることにより、ピッチシフト音を生成する。なお、詳細は後述するが、ピッチシフト装置1は、モードがピッチシフトモードに設定されている状態で、操作子15f(オン/オフ切替スイッチ)の操作によって、効果がオフからオン、又は、オンからオフに切り替えられた場合には、入力音とピッチシフト音とをクロスフェードさせるクロスフェード時間が、操作子15d,15eにより設定されたシフト情報(ピッチシフト量)と、操作子15gにより設定された第1及び第2時間とに応じた値に調整されるように構成されている。
【0025】
図2は、ピッチシフト装置1の電気的構成を示すブロック図である。このピッチシフト装置1は、CPU11と、ROM12と、RAM13と、DSP14と、上述した各操作子15a〜15gと、アナログデジタルコンバータ(ADC)16と、デジタルアナログコンバータ(DAC)17とを有しており、ADC16とDAC17とを除く各部11〜17は、バスライン18を介して接続されている。ADC16及びDAC17は、それぞれ、DSP14に接続されている。また、ADC16は、入力端子51に接続され、DAC17は、出力端子52に接続されている。
【0026】
CPU11は、ROM12やRAM13に記憶される固定値データや制御プログラムに従って、ピッチシフト1の各部を制御する中央制御装置である。ROM12は、書き替え不能なメモリであって、CPU11やDSP14に各処理を実行させるための制御プログラム12aや、この制御プログラム12aが実行される際にCPU11により参照される固定値データ(図示せず)などが記憶される。
【0027】
また、ROM12には、ハーモニーモードにおいて参照されるピッチシフト量テーブル12bが記憶されている。ピッチシフト量テーブル12bは、図7(a)のピッチシフト量テーブル(キー情報:Cメジャー又はAマイナー、シフト情報:+3度)と同様のテーブルであり、複数のピッチシフト量テーブル12bから構成される。本実施形態では、それら複数のピッチシフト量テーブル12bの中から、操作子15d,15eにより設定されたシフト情報と、操作子15b,15cにより設定されたキー情報とに応じたピッチシフトテーブル12bを参照用に選択する。
【0028】
RAM13は、書き替え可能なメモリであり、CPU11が制御プログラム12aを実行するにあたり、各種のデータを一時的に記憶するためのワークエリア(図示せず)を有している。
【0029】
DSP14は、デジタル信号を処理するための演算装置である。DSP14は、例えば、入力端子51から入力されてADC16によりデジタル化された入力音(入力信号)のピッチシフトを行い、生成されたピッチシフト音をDAC17へ出力するための制御を実行する。
【0030】
図3は、本実施形態のピッチシフト装置1がハーモニーモードに設定されている場合の機能を示す機能ブロック図である。なお、図3に示す各機能(手段31〜34)は、CPU11とDSP14とによる協同的な処理によって機能するものである。
【0031】
ピッチシフト装置1がハーモニーモードに設定されている場合、入力端子51から入力された入力音は、ピッチ検出手段31とピッチシフト手段34とに供給されると共に、出力端子52から直接出力される。ピッチ検出手段31は、入力音のピッチを検出し、検出したピッチを示す情報であるピッチ情報を、チョーキング検出手段32とピッチシフト量制御手段33とに供給する。
【0032】
チョーキング検出手段32は、ピッチ検出手段31から供給されたピッチ情報に基づき、チョーキングがされたか否かの検出を行う。本実施形態では、チョーキング検出手段32は、単位時間あたりのピッチ変化量(ピッチ変化の速度)をピッチ情報に基づいて算出し、その単位時間あたりのピッチ変化量が所定値より小さい場合(即ち、ピッチ変化の速度が所定レベル以上に緩やかである場合)に、チョーキングがされたと検出する。チョーキング検出手段32は、その検出結果を示すチョーキング情報(チョーキングの有無を示す情報)を、ピッチシフト量制御手段33に供給する。
【0033】
ピッチシフト量制御手段33には、操作子15b,15c(キー情報設定スイッチ)により設定されたキー情報と、操作子15d,15e(シフト情報設定スイッチ)により設定されたシフト情報とが入力される。ピッチシフト量制御手段33は、入力されたキー情報とシフト情報とに応じたピッチシフト量テーブル12bを読み出し、読み出したピッチシフト量テーブル12bを参照し、ピッチ検出手段31から供給されたピッチ情報に応じたピッチシフト量を決定する。
【0034】
また、ピッチシフト量制御手段33は、チョーキング検出手段32から供給されたチョーキング情報に基づき、ピッチシフト手段34が備える補間処理のオン(実行)/オフ(不実行)を制御する。具体的に、ピッチシフト量制御手段33は、チョーキング検出手段32から入力されたチョーキング情報が、チョーキングがされたことを示す場合には、ピッチシフト手段34が補間処理を実行するように制御する。一方で、ピッチシフト量制御手段33は、チョーキング検出手段32からのチョーキング情報が、チョーキングがされていないことを示す場合には、ピッチシフト手段34が補間処理を実行しないように制御する。
【0035】
ピッチシフト手段34は、ピッチシフト量制御手段33により決定されたピッチシフト量に基づき、入力音をピッチシフトし、ハーモニー音として出力端子52から出力する。ここで、チョーキング検出手段32によりチョーキングが検出された場合には、ピッチシフト手段34は、ピッチシフト量制御手段33から供給されるピッチシフト量に変更があった場合に、補間処理、即ち、そのピッチシフト量の変更に伴うピッチシフト変化を緩やかに行う(鈍らせる)制御を実行する。本実施形態のピッチシフト装置1は、ピッチシフト手段34がかかる補間処理を実行するよう構成されているので、チョーキング奏法中にピッチシフト音(ハーモニー音)が不自然に変化をすることを防止でき、不自然なハーモニー音の出力を防止することができる。
【0036】
なお、ピッチシフト手段34が実行する補間処理としては、例えば、ピッチシフト量制御手段33により決定されたピッチシフト量をローパスフィルタにかける処理が挙げられる。補間処理の別例としては、ピッチシフト量制御手段33により決定されたピッチシフト量と、前回に出力されたピッチシフト量とを所定比に分けた値(例えば、その和の半分のピッチシフト量)を、今回のピッチシフト量とする処理がある。
【0037】
上述した通り、本実施形態のピッチシフト装置1は、ハーモニーモードにおいて、入力端子51から入力され直接出力端子52へ出力された音(入力音)と、ピッチシフト手段34から出力端子52へ出力されたハーモニー音との二声ハーモニーを、出力端子52から出力する。
【0038】
次に、図4を参照して、上記構成を有するピッチシフト装置1がハーモニーモードに設定されている場合にCPU11が実行するピッチシフト処理について説明する。図4は、ハーモニーモードにおいて、CPU11が実行するピッチシフト処理を示すフローチャートである。なお、このピッチシフト処理は、ROM12に格納されている制御プログラム12aにより実行される処理であり、操作子15a(モード切替スイッチ)の操作により、モードがハーモニーモードに切り替えられた場合に起動する。
【0039】
ピッチシフト処理において、CPU11は、入力音(入力信号)のピッチを検出してピッチ情報を得るピッチ検出処理を実行する(S1)。このピッチ検出処理(S1)は、所定タイミング毎に定期的に実行されるものとする。ピッチ検出処理(S1)により得られたピッチ情報は、実行したタイミングを区別可能な態様(例えば、処理の実行時刻と対応付けて記憶させたり、時刻が判別可能な記憶位置に記憶させる)で、RAM13内に設けられた図示されない記憶領域やリングバッファなどに格納される。
【0040】
次いで、CPU11は、S1の処理により得られたピッチ情報に基づき、オクターブ又は音名の変化があったか否かを判定する(S2)。このとき、オクターブの変化も音名の変化もないと判定された場合には(S2:No)、CPU11は、処理をS1に戻し、次の実行タイミングにおいてピッチ検出処理を実行する。
【0041】
一方で、S2においてオクターブ又は音名の変化があったと判定された場合(S2:Yes)、CPU11は、その変化が半音の変化であるか否かを判定する(S3)。S3において半音の変化があったと判定された場合(S3:Yes)、CPU11は、ピッチ情報に基づきピッチの周期変化情報(単位時間あたりのピッチ変化量)を算出する(S4)。
【0042】
S4の処理後、CPU11は、算出された周期変化情報が所定値以下であるか否かを判定する(S5)。S5において、周期変化情報が所定値以下、即ち、ピッチの変化速度が所定レベル以上の緩やかな変化速度であると判定されると(S5:Yes)、CPU11は、チョーキングによる半音変化である(即ち、チョーキング奏法が行われている)と判断し、DSP14によるピッチシフト変化の補間処理をオンに設定し(S6)、処理をS7へ移行する。具体的には、DSP14に当該補間処理を実行させるためのスイッチをオンに設定する。このS6の処理によって補間処理がオンに設定されると、DSP14においてピッチシフト変化の補間処理が実行される。
【0043】
一方で、S5において、周期変化情報が所定値を超える、即ち、ピッチの変化速度が所定レベル以上の急激な変化速度であると判定された場合には(S5:No)、CPU11は、フレット変更による半音変化である(即ち、通常奏法が行われている)と判断し、DSP14によるピッチシフト変化の補間処理をオフに設定し(S8)、処理をS8へ移行する。具体的には、DSP14に当該補間処理を実行させるためのスイッチをオフに設定する。S8の処理により、ピッチシフト変化の補間処理がオフに設定されると、ピッチシフト変化の補間処理は実行されない。また、S3において半音以上の変化があったと判定された場合も(S3:No)、CPU11は、処理をS7へ移行する。
【0044】
S7では、CPU11は、操作子15b,15cにより設定された演奏時のキーと、操作子15d,15eにより設定されたシフト情報とに応じたピッチシフト量テーブル12bを参照し、S1の処理により得られたピッチ情報に応じて、DSP14に指示するピッチシフト量を設定する(S7)。DSP14は、S7により設定されたピッチシフト量で入力音のピッチシフトを行う。S7の処理後、CPU11は、処理をS1に戻し、次の実行タイミングにおいてピッチ検出処理を実行する。
【0045】
このピッチシフト処理によれば、チョーキング検出手段を構成するS3〜S5の処理により、チョーキングが行われていると判定(検出)された場合には、DSP14においてピッチシフト変化の補間処理が実行されるので、S7の処理により設定されるピッチシフト量に変更があった場合に、そのピッチシフト量の変更に伴うピッチシフト変化を緩やかに行う(鈍らせる)ことができる。よって、本実施形態のピッチシフト装置1によれば、ピッチシフト量テーブル12bを使用する構成であるが故に生じ得る、チョーキング時におけるピッチシフト音(ハーモニー音)のピッチ変化の不自然さを軽減又は回避することできるので、聴感のよいハーモニー音を出力できる。
【0046】
ここで、図5を参照して、上記のピッチシフト処理(図4参照)による効果について説明する。図5は、本実施形態のピッチシフト装置1がハーモニーモードに設定されている場合に、チョーキングが行われたときの、入力音101及びハーモニー音102のピッチの時間変化を示すグラフである。このグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は入力音の音名(ピッチ)を示す。なお、ハーモニー音102を得るために参照するピッチシフト量テーブル12bとして、キー情報がC又はAmに設定され、シフト情報が+3度に設定された場合に用いるテーブル(図7(a)参照)を用いている。
【0047】
図5に示すように、ピッチが「G」である入力音101が時刻t1において入力された後、時刻t2aにおいてチョーキングを開始し、入力音101のピッチを、「G」から、時刻t2cにおいて「A」になるように変化させるとする。かかる場合、ハーモニー音102のピッチは、時刻t2a以降、入力音101のピッチが上昇するに伴って、入力音のピッチに対する4半音上の音程を保ちつつ、「B」から上昇する。
【0048】
その後、時刻t2bにおいて、入力音101のピッチが「G」より半音上の「G」であると検出されると、図4のピッチシフト処理におけるS3においてYesと判定される。そして、チョーキングが行われているためにS5ではYesと判定されて、S6の処理が実行されるので、DSP14によるピッチシフト変化の補間処理がオンに設定される。その結果、DSP14においてピッチシフト変化の補間処理が実行されるので、時刻t2b以降において、入力音101のピッチが「G」から「G」に変更したことによるピッチシフト量の変更に伴うピッチシフト変化が鈍らされる。そのため、本来ならば、ピッチシフト量テーブル12bにより決定されたピッチシフト量に基づき、ハーモニー音のピッチが「B」まで急激に下がるところ(図7(c)参照)、そのピッチシフト変化を小さく抑えることができる。よって、本実施形態のピッチシフト装置1によれば、ピッチシフト音のピッチ変化の不自然さを軽減又は回避でき、聴感のよいハーモニー音を出力できる。
【0049】
次に、図6を参照して、本実施形態のピッチシフト装置1がピッチシフトモードに設定されている場合の機能について説明する。図6は、ピッチシフト装置1がピッチシフトモードに設定されている場合の機能を示す機能ブロック図である。なお、図6に示す各機能(手段34〜36)は、CPU11とDSP14とによる協同的な処理によって機能するものである。
【0050】
ピッチシフト装置1がピッチシフトモードに設定されている場合には、入力端子51から入力された入力音(入力信号)は、ピッチシフト手段34とクロスフェード手段36とに供給される。
【0051】
ピッチシフト量制御手段33には、操作子15d,15e(シフト情報設定スイッチ)により設定されたシフト情報が入力される。ピッチシフト量制御手段33は、ピッチシフト量を、入力されたシフト情報が示すピッチシフト量に決定する。ピッチシフト手段34は、ピッチシフト量制御手段33により決定されたピッチシフト量に基づき、入力音をピッチシフトしてピッチシフト音を生成し、そのピッチシフト音をクロスフェード手段36に供給する。
【0052】
クロスフェード制御手段35は、操作子15a,15d,15e,15f,15gから入力された各情報に基づいてクロスフェード手段36を制御する。具体的に、クロスフェード制御手段35には、操作子15a(モード切替スイッチ)により設定されたモードを示すモード情報と、操作子15f(オン/オフ切替スイッチ)による効果のオン/オフの状態を示すオンオフ情報と、操作子15d,15e(シフト情報設定スイッチ)により設定されたシフト情報と、操作子15g(時間設定つまみ)により設定されたスピード情報(第1及び第2時間を示す情報)とが入力される。
【0053】
クロスフェード制御手段35は、モード情報がピッチシフトモードを示し、かつ、オンオフ情報が効果のオンオフが切り替えられた(即ち、操作子15fにより効果がオフからオンに切り替えられた、又は、その逆の切り替えがあった)ことを示す場合には、クロスフェード手段36から出力される音が切り替わるように、クロスフェード手段36を制御する。
【0054】
クロスフェード手段36は、クロスフェード制御手段35による制御によって、入力端子51から入力された入力音と、ピッチシフト手段34から供給されたピッチシフト音とをクロスフェードさせて、出力音の切り替えを行う。なお、クロスフェード手段36から出力される入力音を、以下では「ダイレクト音」と称する。即ち、クロスフェード手段36は、効果がオフからオンに切り替えられた場合には、出力中のダイレクト音のレベル(音量)を、時間経過に伴って減少(フェードアウト)させるとともに、ピッチシフト音のレベルを、時間経過に伴って増加(フェードイン)させることにより、出力音の切り替えを行う。一方で、効果がオンからオフに切り替えられた場合には、出力中のピッチシフト音のレベルを、時間経過に伴って減少させるとともに、ダイレクト音のレベルを、時間経過に伴って増加させることにより、出力音の切り替えを行う。
【0055】
また、クロスフェード制御手段35は、モード情報がピッチシフトモードを示し、かつ、オンオフ情報が効果のオンオフが切り替えられたことを示す場合には、ピッチシフト量を示すシフト情報と、第1又は第2時間を示すスピード情報とに応じて、クロスフェードを行う際のクロスフェード時間(クロスフェードの実行期間)を設定する。具体的には、シフト情報とスピード情報とに応じて、ダイレクト音とピッチシフト音との切り替えスピードを予測し、その予測に基づいてクロスフェード時間を決定し設定する。具体的には、シフト情報とスピード情報とに基づき、単位時間あたりピッチシフト量が大きい程、クロスフェード時間を短く、単位時間あたりピッチシフト量が小さい程、クロスフェード時間を長く設定する。
【0056】
従来のピッチシフト装置は、入力音が必ずピッチシフト手段34に相当するピッチシフト手段を経由するように構成されていた。よって、効果(ピッチシフト)が付与されていない音、即ち、ピッチシフト量がゼロである音であっても、入力音が遅延回路でもあるピッチシフト手段を経由する構成上、ユーザの演奏動作に対して遅延した音が出力される。そのため、ユーザはその遅延(即ち、演奏動作に対する反応の悪さ)に違和感を感じることがあった。
【0057】
これに対し、本実施形態のピッチシフト装置1は、図6に示すように、効果がオフである場合には、入力端子51から入力された入力音が、ピッチシフト手段34を経由せずに出力端子52からダイレクト音として出力されるので、ユーザの演奏動作(実演奏)に対して遅れのない音を出力することができる。よって、効果をオフにしている間、ユーザは、自身の演奏動作に対して違和感のない音(ダイレクト音)を聴きながら演奏を行うことができる。
【0058】
しかし、効果がオンである場合には、入力音が遅延回路でもあるピッチシフト手段34を経由せざるを得ないので、ピッチシフト音は実演奏に対して遅延した音として出力される。よって、効果がオンからオフに切り替えられた場合、又は、その逆の切り替えが行われた場合には、実演奏に対して遅延のないダイレクト音と、実演奏に対して遅延しているピッチシフト音とが切り替わるので、そのタイミングが上手く合わなければ、切り替え時に不自然な節が生じるなど、聴感上の不具合が生じる。
【0059】
これに対し、本実施形態のピッチシフト装置1は、操作子15d,15e(シフト情報設定スイッチ)により設定されたシフト情報と、操作子15g(時間設定つまみ)により設定されたスピード情報とに基づき、ダイレクト音とピッチシフト音との切り替えスピードを予測し、その予測に基づきクロスフェード時間を決定するように構成されているので、ダイレクト音とピッチシフト音との切り替え時に生じ得る聴感上の不具合を防止することができる。
【0060】
よって、本実施形態のピッチシフト装置1によれば、効果がオフである場合には、自身の演奏動作に対して違和感のないダイレクト音を聴くことができる上に、ダイレクト音とピッチシフト音との切り替え時に生じ得る聴感上の不具合も防止されているので、ユーザに、従来にない弾き心地の良さを提供することができる。
【0061】
以上説明した通り、本実施形態のピッチシフト装置1によれば、ピッチシフト量テーブル12bを用いてピッチシフト量を決定するハーモニーモードにおいて、チョーキングが検出された場合には、ピッチシフト量の変更に伴うピッチシフト変化を補間する処理(補間処理)を実行することにより、ピッチシフト量の変更に伴うピッチシフト変化を緩やかに行う(鈍らせる)ことができる。よって、ピッチシフト量テーブル12bを使用する構成であるが故に生じ得る、チョーキング時におけるピッチシフト音(ハーモニー音)のピッチ変化の不自然さを軽減又は回避することができ、半音単位でピッチが変化する電子ギターや電子ベースなどの電子弦楽器の演奏音から、聴感のよいピッチシフト音(ハーモニー音)を生成できる。また、かかるピッチ変化の不自然さの軽減又は回避を補間によって対応しているので、チョーキング時専用のピッチシフト量テーブルを設ける必要もなく、記憶量や制御負荷の増大を抑制しつつ、違和感のない音の供給を実現できる。
【0062】
また、本実施形態のピッチシフト装置1は、チョーキングの検出を、単位時間あたりのピッチ変化量に基づいて行うので、従来必要であったトリガ情報(弦を弾いたことを示す情報)は不要であり、弦を弾きながらのチョーキングも検出することが可能である。
【0063】
また、本実施形態のピッチシフト装置1は、効果(ピッチシフト)がオフである場合には、入力端子51から入力された入力音が、ピッチシフト手段34を経由させないダイレクト音として出力される構成であるので、効果をオフにしている間、ユーザが、自身の演奏動作に対して、出力されたダイレクト音を違和感のない音として聴くことができる。そして、効果が切り替えられた場合には、ダイレクト音とピッチシフト音との切り替えを、操作子15d,15e及び操作子15gによる設定に応じて予測し、これらの音の切り替え時に行うクロスフェード時間の設定を行うので、これらの音(ダイレクト音及びピッチシフト音)の切り替え時に生じ得る聴感上の不具合を防止することができる。
【0064】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0065】
例えば、上記実施形態では、チョーキング検出手段32によるチョーキングの検出を、ピッチ検出手段31により検出された入力音のピッチ(ピッチ情報)の変化速度に基づいて行う構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、特開平6−12072に記載されるチョーキング検出方法(トリガ情報を検出してからの入力音のピッチ変化を見る方法)を適用してもよい。あるいは、機械的なチョーキング検出方法を適用してもよい。機械的なチョーキング検出方法としては、例えば、弦の張力を検出するセンサをピッチシフトの対象とする弦楽器側に設け、そのセンサからの入力(即ち、弦の引っ張り具合)に基づいてチョーキングの有無を検出する方法や、弦の位置を検出するセンサ(例えば、超音波センサ)をピッチシフトの対象とする弦楽器側に設け、そのセンサからの入力(即ち、弦の位置)に基づいてチョーキングの有無を検出する方法や、チョーキングがされるとオンになるスイッチをピッチシフトの対象とする弦楽器に設け、そのスイッチからの入力に基づいてチョーキングの有無を検出する方法などが挙げられる。
【0066】
また、上記実施形態では、ボタンスイッチである操作子15fをオン/オフ切替スイッチとしたが、フットボリュームを接続可能に構成し、ピッチシフト装置1に接続されたフットボリュームをユーザが足で操作することにより、効果のオンとオフとを切り替えることができるようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、操作子15g(時間設定つまみ)により、第1時間と第2時間との両方を設定する構成としたが、第1時間を設定する操作子と第2時間を設定する操作子とを設ける構成としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、ハーモニーモードにおいて、入力音とハーモニー音との二声ハーモニーを、出力端子52から出力する構成としたが、ハーモニー音(ピッチシフト音)だけを出力端子52から出力する構成としてもよい。
<その他>
<手段>
技術的思想1のピッチシフト装置は、電子弦楽器の楽音信号が入力される入力手段と、前記入力手段から入力された楽音信号のピッチ情報を検出するピッチ検出手段と、楽音信号のピッチ情報とそのピッチ情報をピッチシフトさせるためのピッチシフト情報とを対応付けたピッチシフト情報群を記憶するピッチシフト情報記憶手段と、前記ピッチ検出手段により検出されたピッチ情報に対応するピッチシフト情報を、前記ピッチシフト情報記憶手段に記憶されているピッチシフト情報群から読み出すピッチシフト情報読出手段と、前記ピッチシフト情報読出手段により読み出したピッチシフト情報に基づいて、前記入力手段から入力された楽音信号をピッチシフトするピッチシフト制御手段とを備えたものであって、電子弦楽器のチョーキングを検出するチョーキング検出手段を備え、前記ピッチシフト制御手段は、前記チョーキング検出手段により前記チョーキングが検出された場合に、前記ピッチシフト情報読出手段により前記ピッチシフト情報群から読み出されるピッチシフト情報の変更に伴う前記楽音信号のピッチシフト変化を補間する制御を行う補間手段を含んで構成される。
技術的思想2のピッチシフト装置は、技術的思想1のピッチシフト装置において、前記ピッチシフト情報記憶手段は、前記ピッチシフト情報群を複数記憶するものであり、前記ピッチシフト装置は、前記ピッチシフト情報記憶手段に記憶されている複数のピッチシフト情報群の中から、1の情報群を任意に選択可能な選択手段を備え、前記ピッチシフト情報読出手段は、前記選択手段により選択されたピッチシフト情報群から、前記ピッチ検出手段により検出されたピッチ情報に対応するピッチシフト情報を読み出すものである。
<効果>
技術的思想1記載のピッチシフト装置によれば、電子弦楽器のチョーキングを検出するチョーキング検出手段を備えており、そのチョーキング検出手段によりチョーキングが検出された場合には、ピッチシフト制御手段の補間手段により、ピッチ情報記憶手段に記憶されているピッチシフト情報群(楽音信号のピッチ情報とそのピッチ情報をピッチシフトさせるためのピッチシフト情報とを対応付けたもの)からピッチシフト情報読出手段によって読み出されたピッチシフト情報の変更に伴う前記楽音信号のピッチシフト変化を補間する制御が行われる。よって、ピッチシフト情報群から読み出されるピッチシフト情報に基づいて、入力手段から入力された電子弦楽器の楽音信号のピッチ情報のピッチシフトを行う場合に生じ得る、ピッチシフト音(ピッチシフトされた楽音信号)の不自然なピッチ変化を抑制でき、電子弦楽器による演奏音に基づくピッチシフト音を好適に得ることができるという効果を奏する。
技術的思想2のピッチシフト装置によれば、技術的思想1が奏する効果に加え、ピッチシフト情報群を選択手段により選択できるように構成されているので、演奏に最適なピッチシフト情報群を選択可能であり、それにより、演奏に最適なピッチシフト音を得ることができる。さらに、任意のピッチシフト情報群を選択可能に構成されているが、どのピッチシフト情報群が選択されても、チョーキングが検出された場合には補間手段による補間制御が実施されるので、演奏に最適であり、かつ、不自然なピッチ変化が抑制されたピッチ音を提供できるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0069】
1 ピッチシフト装置
12 ROM(ピッチシフト情報記憶手段)
12b ピッチシフト量テーブル(ピッチシフト情報群)
31 ピッチ検出手段
32 チョーキング検出手段
33 ピッチシフト量制御手段(ピッチシフト情報読出手段)
34 ピッチシフト手段(ピッチシフト制御手段、補間手段)
51 入力端子(入力手段)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7