(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703104
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】ヒートシンク
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20150326BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
H05K7/20 P
H01L23/46 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-90292(P2011-90292)
(22)【出願日】2011年4月14日
(65)【公開番号】特開2012-222333(P2012-222333A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】和田 努
(72)【発明者】
【氏名】須山 隆行
(72)【発明者】
【氏名】川村 威一郎
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3010080(JP,U)
【文献】
特開2004−214623(JP,A)
【文献】
特開2002−164490(JP,A)
【文献】
特開2007−184349(JP,A)
【文献】
特開2012−104583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿状に形成され、その全周縁に小フランジ部(1)を有し、その底部の一端に連通孔(2)が形成された皿状プレート(3)と、
その皿状プレート(3)に内装されるインナーフィン(4)と、
その皿状プレート(3)の小フランジ部(1)に周縁部が接して、その接触部が互いにろう付けされ、他端に冷却水の出入口(5)が形成され、前記皿状プレート(3)より肉厚の平坦なベースプレート(6)と、によりエレメント(7)を構成し、
一対の前記エレメント(7)が、その各皿状プレート(3)を背中合わせで且つ、互いの前記連通孔(2)が整合されて接合され、各ベースプレート(6)に被冷却体(8)が接合されるヒートシンク。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンクにおいて、
前記皿状プレート(3)およびベースプレート(6)が平面方形に形成され、そのベースプレート(6)の四隅にボルト孔(9)が設けられ、
そのボルト孔(9)に整合する位置で、対向するベースプレート(6)間に介装され、中心にボルト孔(10)が設けられた四つのボス部材(11)を有し、
そのベースプレート(6)およびボス部材(11)の前記ボルト孔(9)(10)に挿通されるボルトおよびそのボルトに締結されるナットを介して、前記被冷却体(8)がそのベースプレート(6)に接合されるヒートシンク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヒートシンクにおいて、
前記各皿状プレート(3)の四隅に、前記ボス部材(11)の外周に整合する欠切部(12)が形成され、その欠切部(12)と前記ボス部材(11)の外周とが接することにより、両者が位置決めされて、各部品間が一体にろう付けされてなるヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイリスタや各種電力用コンデンサ等の被冷却体を表面に取付けて、内部の冷却水で冷却する液冷ヒートシンクに関し、そのヒートシンク本体の内部にインナーフィンを設けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人はすでに下記特許文献に示す水冷ヒートシンクを提案している。
これは薄肉の皿状プレートの一端部に隣接して一対の出入口を設け、その一対の出入口を境として、断面L字状の仕切り板で内部を二分し、その仕切の平面を皿状プレートの底面に平行に対向させてヒートシンク本体を構成する。そして、その本体の開口に厚肉のベースプレートを被嵌し、そのベースプレートにサイリスタ等の被冷却体を固定するものである。
そして、冷却水を一方の出入口から流入させ、仕切り板に沿ってUターンさせ、他方の出入口から流出させ、それによりベースプレート各部を可及的に均一に冷却し、被冷却体を効果的に冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−184349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記水冷ヒートシンクは、皿状プレートの内部に断面L字状の仕切り板を取付け、一対の出入口間を二分するものである。このヒートシンクは特殊形状の仕切り板を要し、その製造、組立てが面倒であるとともに、半導体等の被冷却体の取付け面積が小さく且つ、その取付けが面倒である欠点がある。さらには耐圧性に欠ける欠点があった。
そこで、本発明は係る問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、皿状に形成され、その全周縁に小フランジ部(1)を有し、その底部の一端に連通孔(2)が形成された皿状プレート(3)と、
その皿状プレート(3)に内装されるインナーフィン(4)と、
その皿状プレート(3)の小フランジ部(1)に周縁部が接して、その接触部が互いにろう付けされ、他端に冷却水の出入口(5)が形成され、前記皿状プレート(3)より肉厚の平坦なベースプレート(6)と、によりエレメント(7)を構成し、
一対の前記エレメント(7)が、その各皿状プレート(3)を背中合わせで且つ、互いの前記連通孔(2)が整合されて接合され、各ベースプレート(6)に被冷却体(8)が接合されるヒートシンクである。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のヒートシンクにおいて、
前記皿状プレート(3)およびベースプレート(6)が平面方形に形成され、そのベースプレート(6)の四隅にボルト孔(9)が設けられ、
そのボルト孔(9)に整合する位置で、対向するベースプレート(6)間に介装され、中心にボルト孔(10)が設けられた四つのボス部材(11)を有し、
そのベースプレート(6)およびボス部材(11)の前記ボルト孔(9)(10)
に挿通されるボルトおよびそのボルトに締結されるナットを介して、前記被冷却体(8)がそのベースプレート(6)に接合されるヒートシンクである。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載のヒートシンクにおいて、
前記各皿状プレート(3)の四隅に前記ボス部材(11)の外周に整合する欠切部(12)が形成され、その欠切部(12)と前記ボス部材(11)の外周とが接することにより、両者が位置決めされて、各部品間が一体にろう付けされてなるヒートシンクである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒートシンクは、その底部の一端に連通孔2を有する皿状プレート3と、それに内装されるインナーフィン4と、皿状プレート3に被嵌され他端に冷却水の出入口5が形成されたベースプレート6とによりエレメント7を構成する。そして、一対のエレメント7が、各皿状プレート3を背中合わせで接合され、各ベースプレート6に被冷却体8が接合されるものであるから、冷却水が出入口5から流入し、皿状プレート3内をその端まで流通して対向するエレメント内を逆向きに流通する。そして、各皿状プレート3どうしが伝熱し、各エレメント7のベースプレート6を効率的に冷却することができる。そして、それらに接合された被冷却体8を効果的に冷却しうる。
これは各皿状プレート3どうしが接合され、熱伝達が行なわれるため、エレメント各部を可及的に均一に冷却できるからである。しかも、本発明は構造が簡単で、組立てが容易で製造しやすい特徴を有する。また、ベースプレート6は積層方向に両端に一対存在するため、コンパクトで被冷却体8の取付面積が広くなり、より多くの半導体等の被冷却体8を同時に冷却できる。
【0009】
上記構成において、請求項2に記載のように、皿状プレート3およびベースプレート6が平面方形に形成され、対抗するベースプレート6間の四隅にボス部材11を介挿して、それらのボルト孔9、10を介して被冷却体8がベースプレート6に接合されるようにした場合には、被冷却体8の取付が容易で且つ、被冷却体8とベースプレート6の接触および伝熱状態を良好に保つことができる。それと共に、ベースプレート6を取付けるボルト15およびボス部材11を介してエレメント7の耐圧性を向上しうる。即ち、内部を流通する冷却水の内圧に十分耐える。
【0010】
上記いずれかの構成において、請求項3に記載のように、皿状プレート3の四隅に、ボス部材11の外周に整合する欠切部12を形成し、その欠切部12とボス部材11外周とが接することにより両者が位置決めされ、その状態で各部品間が一体にろう付け固定されたヒートシンクにおいては、各部品相互間の精度を向上させ、量産性の優れたヒートシンクを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は一対のエレメント7の積層体からなる。各エレメント7は、皿状プレート3とそれに内装されるインナーフィン4とベースプレート6とを有する。この皿状プレート3、インナーフィン4、ベースプレート6は同一の金属材、例えばアルミニウム板等からなる。
【0013】
皿状プレート3は、平面矩形に形成され、その全周縁に環状の小フランジ部1が設けられている。その長手方向両端に位置する小フランジ部1には、この例では一対づつの半円形の欠切部12が形成されている。そして、皿状プレート3の底部の一方端には幅方向に細長い連通孔2が開口する。
【0014】
次に、インナーフィン4はこの例ではオフセットフィンからなるが、それに替えて波型ストレートフィンでもよい。その幅は皿状プレート3の底部の幅に略等しく、長さは皿状プレート3の底部の長さより少し短い。次にベースプレート6はその幅が皿状プレート3に整合するとともに、長さは皿状プレート3のそれより少し長い。その板厚は皿状プレート3よりも厚く、より剛性の高いものである。
【0015】
ベースプレート6の四隅には、それぞれボルト孔9が穿設されている。ボルト孔9の皿状プレート3側は段付孔に形成されている。段付孔の大径は、後述するボス部材11の縮小部11aに整合し、小径はボス部材11のボルト孔10に略整合する。ベースプレート6の長手方向他端には、冷却水の出入口5が穿設されている。
【0016】
次に、この例では一対のエレメント7どうしが積層されるとき、その四隅部にボス部材11が介装される。このボス部材11はその軸線上にボルト孔10を有し、その両端に縮小した縮小部11aを有する。この縮小部11aの高さは、皿状プレート3の板厚よりも高い。その縮小部11aの外周と皿状プレート3の欠切部12とが整合する。そして、これら一対のエレメント7が4つのボス部材11を介して積層される。この時、各ボス部材11の両端の縮小部11aが皿状プレート3の欠切部12に接触するとともに、その縮小部11aの突出端が各ベースプレート6のボルト孔9の段付孔に嵌着される。なお、接触する各部品の何れか一方の接触面には、予めろう材が被覆され、あるいはろう材が載置あるいは、塗布される。また、各ベースプレート6の出入口5には出入口パイプ13が配置される。なお、各ボルト孔9、10には内ネジを設けることもできる。
そして、全体を積み立てて、積層方向に圧縮した状態で、高温の炉内に挿入され、一体的にろう付け固定される。
【0017】
上記製造方法に替えて、先ず各エレメント7を一体的にろう付け固定し、一対のエレメント7をボス部材11およびボルトを介して締結固定することも可能である。その時、各皿状プレート3の連通孔2の周縁にはシール材(伝熱性ゴム)が被覆される。
【0018】
このようにしてなるヒートシンクには、
図3のごとくボルト15およびナット16を介して各ベースプレート6の表面に被冷却体8が固定される。
【0019】
そして、一方の出入口パイプ13から冷却水が一方の皿状プレート3内に流入し、連通孔2を介して他方の皿状プレート3内に導かれ、それをUターンして他方の出入口パイプ13から流出する。このとき、互いに接触する皿状プレート3どうしが伝熱しあうとともに、冷却水がUターンするため、一対のベースプレート6の各部は可及的に均一に冷却され、それぞれに接続された被冷却体8を効率よく冷却する。
【符号の説明】
【0020】
1 小フランジ部
2 連通孔
3 皿状プレート
4 インナーフィン
5 出入口
6 ベースプレート
7 エレメント
8 被冷却体
9 ボルト孔
【0021】
10 ボルト孔
11 ボス部材
11a 縮小部
12 欠切部
13 出入口パイプ
14 ろう材
15 ボルト
16 ナット