【実施例1】
【0019】
本発明にかかる異物混入土砂の水中分離装置1は、
図1に示すように、水中に浮かせた筒体1aに異物混入土砂を投入しそれを旋回流で異物4と土砂5を分離させるものであり、前記筒体1aにおける床部の全範囲若しくは一部範囲に設けられ前記異物4を水底に落とさず前記土砂5のみを通過させて落とす網目を有するスクリーン2がある。
【0020】
前記筒体1aは、剛性な筒体、若しくは、壁体の中にバラスト用空間部が設けられ任意に上下高さを調節できる浮上可能な筒状体等である。よって、曳航船で浚渫などの処理地域に移動させることができるものである。この筒体1aは、
図1に示すように、多角形や丸形の函体とすることで旋回流が効率よく循環する。
【0021】
前記スクリーン2の網目は、筒体1aの上下方向で略中央部〜下端部の位置において、所要大きさの網目を持ち、木皮等の異物4の通過を阻止して、土砂5の通過を許容するものである。また、スクリーン2は、
図3(A)に示すように、床部から立設され周方向に連続する網目状の外周壁を有して上部開口させた箱状体にしてもよい。このスクリーン2を引き上げる際に、側面から異物4が落下しないようにするためである。
【0022】
また、
図3(B)に示すように、前記スクリーン2を、丸形状筒体1aの床部の全範囲に設けるのではなく、網目部分を中央部の一部にして、残りの周囲には床板2aを配設することで、網目のスクリーンによる旋回流の流速における損失が減少し、また、水深の影響を受けにくくなり、旋回流の流速を大きく維持して分離作業が効率的になる。
【0023】
前記スクリーン2が床部に平面的に設ける場合には、これを複数段にして、各段のスクリーン2の網目の大きさを変えることで、前記異物4をその大きさ毎に分けて回収することができるようになる。
【0024】
図1乃至
図2に示すように、前記筒体1aの中央部で前記スクリーン2の上に、固定して設置されるか、若しくは、着脱自在に載置される網状筒3がある。前記網状筒3は、前記異物4を流速の小さな筒体1aの中心に移動させないようにするものであり、また、この網状筒3と異物混入土砂(4,5)とが摺接することで、土砂5と異物4とを効率的に分離させるものである。この網状筒3の大きさは、任意であり、
図4(A),(B)に示すように、筒体1aの上端面に届く高さにして、直径は、異物4の大きさや旋回流の流速、異物回収所望量などを考慮して、適宜に定める。なお、前記床の一部に設けた場合のスクリーン2と前記網状筒3との大きさの関係は、いずれか一方が大きい場合と、ほぼ同じ大きさの場合とがある。
【0025】
前記網状筒3は、異物4の回収機能が付与されることがある。即ち、
図2に示すように、その網状筒3の周壁面に異物4を中に回収する開口部3aが設けられ、該開口部3aには周壁面に沿って上下若しくは左右に移動可能な網状扉3bが設けられる。一例として前記網状扉3bを上下に移動させる場合には、該扉の上部結びつけたロープ等を人手やウインチなどで持ち上げ、その自重で降下させるものである。前記開口部3aを開口させると、筒体1aの中央に旋回流6によって収斂された異物4が、この網状筒3の内部に自然に入り込むものである。なお、前記網状扉3bは、開口部3aを開口させればよいので、必ずしも網状筒3の周壁面に沿って移動する必要は無いが、例えば、回転軸を中心に回転する回転式の扉であれば、前記周壁面を旋回する異物等と回転中の扉とが衝突する恐れがあるので、前記周壁面に沿って上下、左右に網状扉3bを移動させるのが好ましい。
【0026】
図1及び
図4(A),(C)に示すように、前記筒体1aの内側周壁に、旋回流6を発生させ旋回させるミキサ装置7が設けられる。前記ミキサ装置7は、筒体1aに一つまたは二つ以上設けられるとともに、旋回流を時計方向・反時計方向のいずれか一つの方向に、若しくは、両方向に交互後に反転させるものである。
【0027】
前記ミキサ装置7には、
図1に示すように、旋回流6とともに旋回する異物4が当該ミキサ装置7に衝突しないようにする、異物侵入防止壁8が設けられている。該異物侵入防止壁8は、金属や合成樹脂などの板や網で構成されており、投入される異物混入土砂の性状や旋回流の速さの程度から適宜決定し設置する。
【0028】
前記筒体1aの下端部と水底との間には、筒体1aの周囲の水と筒体1a下の内部の水とを仕切る昇降自在な汚泥防止膜11が垂設されている。
【0029】
このようにしてなる異物混入土砂の水中分離装置1において、
図5(A),(B)に示すように、旋回流6の流速に関して、流速測定地点における中心からの距離における流速(cm/s)を測定して検証している。この測定条件は、前記スクリーン2無し、ミキサ装置7の位置は水面から30cmで、ミキサ装置7の出力は2.8〜4.0(m
3/min)である。
【0030】
この結果を基にして、前記ミキサ装置7による流速の値が大きくなるように設定する。例えば、周壁の流速値より格段に小さくなる中心からの距離30cm以内を避けて、網状筒3の半径を40cm〜45cm等に設定して、旋回流の流速が大きくなるようにする。
【0031】
また、
図5(C)は、スクリーン2において、その周囲に床板2aがある場合と無い場合とにおける流速の比較である。この条件は、測定点が
図5(B)の黒丸地点であり、スクリーン2位置は水面より70cmで、ミキサ装置7位置は水面より30cmで、ミキサ装置7の出力は2.8〜4.0(m
3/min)である。これにより、スクリーン2の周囲に床板2aのあるほうが、旋回流の流速を大きく維持できる。
【0032】
上記の本発明に係る異物混入土砂の水中分離装置1を形成し、これを使用した異物混入土砂の水中分離方法について説明する。前記異物混入土砂の水中分離装置1を移動させ分離処理用区域の所望の位置に運搬して設置する。この場合、前記異物混入土砂の水中分離装置1の筒体を函体にしてバラストで調整して浮かせて曳航したり、前記異物混入土砂の水中分離装置1の筒体にフロータをつけて水中に浮かせて曳航したり、台船上に前記異物混入土砂の水中分離装置1を固定して運搬したり、前記異物混入土砂の水中分離装置1の組立用パーツを台船上に乗せて、組み立てながら運搬して若しくは現地で前記パーツを組み立てて、所望の位置に設置したりするものである。
【0033】
そして、ミキサ装置7を駆動させて旋回流6を発生させ、浚渫した異物混入土砂(4,5)を前記水中分離装置1に投入する。これにより、前記異物混入土砂(4,5)が前記旋回流6によって前記水中分離装置1の網状筒3に収斂され、その流速が大きく維持されて旋回され、異物4と土砂5が分離される。
【0034】
更に、前記網状筒3に前記異物混入土砂(4,5)を摺接させて、その衝撃と摩擦とによって異物4と土砂5を分離させるものである。こうして、スクリーン2上に異物4を堆積させるとともに土砂5を水底中央付近に沈降させ堆積させるものである。
【0035】
前記異物4の回収に関しては、前記網状筒3の周囲に収斂されスクリーン2上に堆積させ後に、前記スクリーン2をクレーン等で持ち上げて筒体1aから回収する。なお、この場合に前記網状筒3と前記スクリーン2とを同時にクレーン等で引き上げてもよいし、先に網状筒3をクレーンで引き上げてから、スクリーン2を異物4とともにクレーンで引き上げて回収してもよい。
【0036】
前記網状筒3に異物回収機能を設けている場合には、当該網状筒3の網状扉3bをロープ等を介して上に持ち上げ、開口部3aを開口させて分離された異物4を網状筒3の内部に収納させる。その後、前記網状扉3bで前記開口部3aを蓋した後に、前記網状筒3をクレーンのワイヤなどで撤去して前記異物4を回収する。このようにして、浚渫した異物混入土砂を、大量に処理することができる。