特許第5703152号(P5703152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703152
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20060101AFI20150326BHJP
   H02P 6/12 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   H02P6/02 351N
   H02P6/02 351P
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-154804(P2011-154804)
(22)【出願日】2011年7月13日
(65)【公開番号】特開2013-21866(P2013-21866A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】高田 鉄平
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−369572(JP,A)
【文献】 特開2003−009573(JP,A)
【文献】 特開2008−220043(JP,A)
【文献】 特開2008−011628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧をスイッチングにより交流電圧に変換してモータに供給するインバータ装置において、
前記モータに流れる電流を検出する検出手段と、
前記モータの各相巻線に対する通電を強制的に切換えることにより前記モータを起動した後、前記検出手段の検出電流から前記モータの回転速度を推定し、この推定回転速度が指令速度となるよう前記スイッチングを制御する制御手段と、
前記起動の開始から予め定めた一定時間内に、かつ前記推定回転速度が予め定めた一定値に達しないうちに、前記検出手段の検出電流が予め定めた設定値以上に上昇したとき、前記モータがロックしていると判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記判定手段でロックが判定されたとき、その旨を報知するとともに、前記スイッチングを停止することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば空気調和機に用いるインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機のファンモータ等に使用されるブラシレスDCモータを駆動する場合、運転開始時の早い段階でモータのロック(拘束状態)を検出し、モータを停止するなどの保護が必要となる。このようなロック検出の手段として、モータの各相巻線に誘起する電圧からロータ位置を検知し、そのロータ位置に基づいてロックを検出する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、モータの誘起電圧を検出する回路を削除して部品点数を少なくすると同時にモータ効率の向上を得るために各相巻線に対する通電を強制的に切換える強制転流によってモータを起動し、その後、各相巻線に流れる電流(モータ電流という)からロータ速度(=回転速度)を推定し、その推定ロータ速度が指令速度となるよう各相巻線に対する電力供給を制御するセンサレスのベクトル制御が、用いられている。このようなベクトル制御を用いた場合、モータ電流に基づいてモータのロックを検出することが考えられる。
【0004】
すなわち、ベクトル制御では、各相巻線に対する通電を強制的に切換える強制転流によってモータを起動し、その後、モータ電流に基づいてベクトル制御によってロータ速度を推定する。ところが、モータがロックした場合でも、モータの各相巻線には電流が流れる。ベクトル制御では、モータがロックしていてもモータ電流が検出されることからロータ速度としてある値を推定してしまい、この状態でのロック検出はできない。このため、その推定ロータ速度を指令速度に近づけるべく、モータへの駆動電流を増加方向に制御する。この駆動電流の増加にもかかわらず、モータがロックしているため推定ロータ速度は上記値のまま上昇せず、モータへの駆動電流をますます増加方向に制御する。その結果、モータ電流がある設定値に達するので、それをモータのロックとして判定することができる。
【0005】
なお、ファンモータの場合、指令速度が高い状況や負荷が重い状況でモータが正常に起動した際のモータ電流は、モータがロックしているときのモータ電流とほとんど差がないため、モータがロックしていると誤判定する可能性がある。この対策として、起動の開始から所定時間内にモータ電流が設定値に達したとき、モータがロックしていると判定するようにすれば、そのような誤判定を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−88994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のベクトル制御では、負荷が軽い状況では指令速度に対するロータ速度の追従性が良くなるため、負荷が軽い状況でモータが正常に起動した際に、起動の開始から所定時間が経過する前にモータ電流がモータロックを判定する設定値に達し、モータがロックしていると誤判定してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の実施形態の目的は、指令速度や負荷にかかわらず、モータのロックを的確に検出できる信頼性にすぐれたインバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態のインバータ装置は、直流電圧をスイッチングにより交流電圧に変換してモータに供給するものであって、前記モータに流れる電流を検出する検出手段と、前記モータの各相巻線に対する通電を強制的に切換えることにより前記モータを起動した後、前記検出手段の検出電流から前記モータの回転速度を推定し、この推定回転速度が指令速度となるよう前記スイッチングを制御する制御手段と、前記起動の開始から予め定めた一定時間内に、かつ前記推定回転速度が予め定めた一定値に達しないうちに、前記検出手段の検出電流が予め定めた設定値以上に上昇したとき、前記モータがロックしていると判定する判定手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の構成を示すブロック図。
図2】一実施形態におけるモータ制御部の制御を示すフローチャート。
図3】一実施形態の正常時のモータ電流Iおよび推定ロータ速度Rの変化を示す図。
図4】一実施形態のロック時のモータ電流Iおよび推定ロータ速度Rの変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態のインバータ装置について図面を参照して説明する。
図1に示すように、もっぱら海外で多用されている三相4線式400Vの商用交流電源1のR相とT相(接地相)との間に、インダクタ2を介して整流回路3が接続される。整流回路3は、商用交流電源1の交流電圧を整流する。この整流回路3の出力端に平滑コンデンサ4を接続し、その平滑コンデンサ4にスイッチング回路5を接続する。スイッチング回路5は、複数のスイッチング素子を有し、これらスイッチング素子のスイッチングにより、整流回路3および平滑コンデンサ4から供給される直流電圧を所定周波数の三相交流電圧に変換する。この三相交流電圧を、駆動電力として、ブラシレスDCモータ6の各相巻線に供給する。ブラシレスDCモータ6は、空気調和機等の室外ファンを駆動するファンモータとして使用される。なお、ブラシレスDCモータ6は、空気調和機の室内ファンを駆動するものでもよい。
【0012】
スイッチング回路5とブラシレスDCモータ6との間の三相ラインに電流検出手段として電流トランス7,8,9をそれぞれ配置し、これら電流トランス7,8,9の出力をモータ制御部10に供給する。そして、モータ制御部10には、表示部11が接続されている。本実施の形態においては、モータの巻線に流れる電流を検出する手段として、電流トランス7,8,9を用いたが、その代わりにスイッチング回路5内の三相分の各下側スイッチング素子と負側電源間にシャント抵抗を挿入し、このシャント抵抗の両端間の
電圧降下に基づき電流を検出してもよい。なお、インバータ装置は、整流回路3以降のすべての各要素で構成されている。モータ制御部10は、ブラシレスDCモータ6の各相巻線に対する通電を強制的に切換えるべくスイッチング回路5のスイッチングを制御し、これによりブラシレスDCモータ6を起動するとともに、起動後にはブラシレスDCモータ6の各相巻線に流れる電流(モータ電流という)Iを電流トランス7,8,9の出力に基づいて検出し、そのモータ電流IからブラシレスDCモータ6のロータ速度(=回転速度)Rを推定し、この推定ロータ速度(=推定回転速度)Rが外部、たとえば空気調和機の制御回路から入力される指令速度Rtとなるようスイッチング回路5のスイッチングを制御する。各相巻線に対する通電を強制的に切換える制御のことを、強制転流制御という。この強制転流制御を、例えば、起動指令を受けてから一定時間t1行う。モータ電流Iの検出、検出したモータ電流Iのd軸電流Id及びq軸電流Iqへの変換、推定ロータ速度Rの推定、およびその推定ロータ速度Rと指令速度Rtとの比較に基づく制御のことを、ベクトル制御という。このベクトル制御を、上記一定時間t1の経過後から行う。
【0013】
とくに、モータ制御部10は、強制転流制御およびベクトル制御の機能のほかに、ブラシレスDCモータ6のロックを判定する判定手段、およびこの判定手段でロックが判定されたときにその旨を報知し且つ上記スイッチングを停止する制御手段を有する。上記判定手段は、ブラシレスDCモータ6の起動の開始から予め定めた一定時間t2に達しないうちに、かつ上記推定ロータ速度Rが予め定めた一定値Rsに達しないうちに、上記モータ電流Iが予め定めた設定値Is以上に上昇したとき、ブラシレスDCモータ6がロックしていると判定する。なお、このロック判定に使用されるモータ電流Iは、ベクトル制御上のIqの瞬時値が用いられる。
【0014】
つぎに、モータ制御部10の制御動作を図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0015】
モータ制御部10は、外部から起動指令が入力されると(ステップ101のYES)、タイムカウントtを開始し(ステップ102)、そのタイムカウントtが一定時間t1に達するまで強制転流制御を実行する(ステップ103、ステップ104のNO)。この強制転流制御により、ブラシレスDCモータ6が起動する。なお、起動指令は一般的に、指令速度Rtが0からそれ以外の回転数へ立ち上がることで判別される。
【0016】
モータ制御部10は、タイムカウントtが一定時間t1に達すると(ステップ104のYES)、モータ電流Iを検出し(ステップ105)、強制転流制御からベクトル制御に移行する(ステップ106)。このベクトル制御により、ブラシレスDCモータ6の速度が指令速度Rtに向け上昇していく。
【0017】
モータ制御部10は、ベクトル制御の実行に伴い、タイムカウントtが一定時間t2に達しないうちに(ステップ107のYES)、かつ推定ロータ速度Rが一定値Rsに達しないうちに(ステップ108のYES)、モータ電流Iが設定値Is以上に上昇するかどうかを判定する(ステップ109)。
【0018】
ブラシレスDCモータ6が正常に起動した場合のモータ電流Iおよび推定ロータ速度Rの変化を図3に示す。この正常時、モータ電流Iが一定時間t2内に設定値Isに達する事態は生じない。すなわち、モータ電流Iが設定値Isに達する前にステップ109がNOを繰り返している間に、起動時間の判別ステップ107または回転数の判別ステップ108のいずれかの判断がNOとなり、ステップ109の判定がなされなくなる。特に、起動時間の判断ステップ107の判断は一旦NOとなれば、再度停止して起動しない限り、YESに移行することはない。この正常運転中に、モータ制御部10は、外部から停止指令、指令速度Rtが0となる、を受けた場合(ステップ112のYES)、スイッチング回路5のスイッチングを停止し(ステップ111)、ブラシレスDCモータ6を停止させる。
【0019】
一方、ブラシレスDCモータ6が起動前にロックしている場合のモータ電流Iおよび推定ロータ速度Rの変化を図4に示す。ロック状態であっても、ブラシレスDCモータ6の各相巻線に電流が流れる。モータ制御部10のベクトル制御は、モータ電流Iが流れることからロータ速度としてある値を推定し、その推定ロータ速度Rを指令速度Rtに近づけるべく、ブラシレスDCモータ6への駆動電流を増加方向に制御する。ただし、この駆動電流の増加にもかかわらず、推定ロータ速度Rはほぼ一定値のまま上昇しないため、モータ制御部10のベクトル制御は、ブラシレスDCモータ6への駆動電流をますます増加方向に制御する。その結果、モータ電流Iは、一定時間t2内(ステップ107のYES)で、かつ推定ロータ速度Rが一定値Rsより低い状態(ステップ108のYES)で設定値Isに達する(ステップ109のNO)。
【0020】
指令速度Rtが高い状況やファンの負荷が重い状況でブラシレスDCモータ6が正常に起動した場合、モータ電流Iが設定値Isに達することもあるが、その際、モータ電流Iが設定値Isに達するのは一定時間t2の経過後である。この一定時間t2をロック判定の条件として加えているので、指令速度Rtが高い状況や負荷が重い状況での誤判定を防ぐことができる。
【0021】
ファンの負荷が軽い状況では指令速度Rtに対するロータ速度の追従性が良くなるため、このような状況でブラシレスDCモータ6が正常に起動した際に、一定時間t2が経過する前にモータ電流Iが設定値Isに達することもある。しかしながら、この場合、一定時間t2内でモータ電流Iが設定値Isに達する前に推定ロータ速度Rが一定値Rsを超える(ステップ107のYES、ステップ108のNO)。したがって、この場合にも、モータ制御部10は、ロックと判定しない。この結果、正常であるにもかかわらずロック判定されるような誤判定を防止できる。
【0022】
モータ制御部10は、タイムカウントtが一定時間t2に達しないうちに(ステップ107のYES)、かつ推定ロータ速度Rが一定値Rsに達しないうちに(ステップ108のYES)、モータ電流Iが設定値Is以上に上昇したとき(ステップ109のYES)にのみ、ブラシレスDCモータ6がロックしていると判定し、その旨を表示部11の表示により使用者に報知するとともに(ステップ110)、ベクトル制御によるスイッチング回路5のスイッチングを停止する(ステップ111)。このスイッチングの停止により、ロック状態のブラシレスDCモータ6に対する不要な駆動がいつまでも続かず、スイッチング回路5やその他の電気・電子部品を破壊することがない。使用者は、駆動停止の理由がブラシレスDCモータ6のロックであることを表示部11の表示により察知し、修理を依頼することができる。
【0023】
以上のように、ブラシレスDCモータ6のロック判定に3つの条件を設定することにより、指令速度Rtや負荷にかかわらず、ブラシレスDCモータ6のロックを的確に検出できる。これにより、インバータ装置としての信頼性が大幅に向上する。
【0024】
なお、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1…商用交流電源、3…整流回路、5…スイッチング回路、6…ブラシレスDCモータ、7,8,9…電流トランス、10…モータ制御部、11…表示部
図1
図2
図3
図4