【実施例】
【0011】
<1>全体の構成。(
図1、3)
本発明の下水流の切り替え部材1は、挿入管11と、小径管12と、ラッパ管13とによって構成する。
【0012】
<2>挿入管。
挿入管11は、両端を開放した単純な筒体である。
この挿入管11の外径は、できるだけ切り替え予定の下水管の内径に近い寸法に構成する。
【0013】
<3>小径管。
小径管12は、前記の挿入管11よりも小さい内径の筒体である。
この小径管12も、両端を開口した単純な筒体である。
この小径管12の断面積は、切り替え対象の下水管の下水が、下水管内での流下状態とほぼ等速で流下できる断面積以上が必要であり、その断面積が流下量に対して不十分であっては、後述する開口部から下水があふれてしまって切り替えができない。
【0014】
<4>ラッパ管。
ラッパ管13は、円錐台形状の、両端を開口した筒体である。
円錐台状であるから、一方の開口は拡大口となり、他方の開口はそれよりも面積の狭い、縮小口となる。
そしてラッパ管13の拡大口の内径は、前記の挿入管11の内径と同一の寸法に構成する。
一方、ラッパ管13の縮小口の内径は、前記の小径管12の内径と同一の寸法に構成する。
そしてこのラッパ管13の拡大口には挿入管11を取り付け、縮小口には小径管12を取り付けて接続する。
図の実施例では、挿入管11と小径管12の中心軸を一致させた形状を示すが、両者の中心軸をずらした構成を採用することもできる。(
図6)
【0015】
<5>開口部。
ラッパ管13の一部を切断して開口部14を開口する。
その場合は、ラッパ管13は円錐台の一部を切り欠いた形状となる。
この開口部14が、後述するように、切り替え時の下水流の流入口となり、流出口となる。
したがってこの開口部14の面積は、下水管からの下水を完全に取り入れできるだけの面積が必要である。
【0016】
<6>切り替え方法。
次に本発明の下水流の切り替え方法について説明する。
なお、下水流の切り替えの前に、マンホールの補強など別途で行う各種の工事も想定されるが、それらは多岐にわたり、かつ本願発明とは別の技術なので説明は省略する。
なお下水の流下量は下水管の全断面を流下している場合ではなく、下水管の下半分程度を流下している場合を前提としている。
【0017】
<7>部材の吊り降ろし。
一つのマンホールaに上流側と下流側の下水管bが接続して開口しており、下水はbマンホールa内を通過して流下している構造である。
そのマンホールa内に、上記した切り替え部材1を2基吊り降ろす。
【0018】
<8>挿入管の挿入。(
図2)
ひとつの切り替え部材1の挿入管11を、上流側の下水管b1に挿入する。
その場合に、小径管12をマンホールa側に向け、かつラッパ管13の開口部14を下側に位置させた状態で挿入する。
他のひとつの切り替え部材1の挿入管11を、下流側の下水管b2に挿入する。
その場合にも前記の切り替え部材1と同様に、小径管12をマンホールa側に向け、かつラッパ管13の開口部14を下側に位置させた状態で挿入する。
各挿入管11は、下水管b1、b2内に一定距離だけ挿入して、両側の切り替え部材1の小径管12の端部が多少の距離だけマンホールa内に露出している状態で設置する。
【0019】
<9>切り替え前の下水の流れ。
この状態では、両側のラッパ管13の開口部14は下水管の下側、すなわち底面側に向けて位置している。(
図1、2)
そのため、下水は上流側の切り替え部材1の挿入管11の開放面から流入し、ラッパ管13の開口部14からマンホールa内へ流入する。
マンホールaを通過した下水は、下流側のラッパ管13の開口部14から挿入管11内へ流入し、挿入管11の下流側の開放面から下流側の下水管の流出する。
したがって小径管12には下水は流入していない。
【0020】
<10>接続。
マンホールa内で対向して位置する小径管12の間を接続管2で接続する。
この接続管2は、狭いマンホールa内での接続が容易なように、フレキシブルな管を採用する。
小径管12には下水が流入していないから、その作業は簡単である。
こうして対向する小径管12の間を接続することができる。
【0021】
<11>切り替え部材の回転。(
図3、4)
その後に両切り替え部材1を下水管内で、筒状の挿入管11の中心軸を軸として回転する。
回転は、両側の切り替え部材1と、接続管2全体を同時に回転する。
この回転によって、両側のラッパ管13の開口部14は下向きの位置から上向きの位置まで移動する。
【0022】
<12>切り替え後の下水の流れ。(
図4)
両側の開口部14が上記の位置にあると、上流からの下水は開口部14で取り入れるのではなく、挿入管11の上流側の開放面から取り入れることになる。
挿入管11の上流側から切り替え部材1内に取り入れた下水は、接続管2を経て、下流側の切り替え部材1の挿入管11の開放面から下水管に放流する。
すなわちこの状態では上方向に位置する開口部14は、もはやなんらの作用もしない。
【0023】
<13>切り替え中の流れ。
切り替えの前後でも、下水のすべては上流側の挿入管11の開放面から取り入れることに変わりはない。
こうして取り入れた下水を、切り替え前は開口部14からマンホールaに向けて流出し、切り替え後は接続管2を通して下流側の切り替え部材1へ流出することにものである。
したがって切り替え中、すなわち切り替え部材1の回転中には、挿入管11の開放面からの取り入れた下水は、開口部14から流出する量が徐々に減少し、その分だけ接続管2への流入量が徐々に増大する、という現象を呈する。
接続管2への流入量の比率が徐々に増し、最後には開口部14からの流出量がゼロとなり、すべてが接続管2への供給となる。
こうして下水流の切り替えが完了する。
【0024】
<14>止水性の確保。
上流側の切り替え部材1が下水の水圧押し出されないように、あるいはマンホールaの内部への漏水を完全に閉塞するためには、
図5に示すように小径管12の周囲に閉塞材3を充填する。
この閉塞材3とは例えばモルタルを充填した袋、土嚢、空気袋などで構成することができる。
マンホールaの中心に両側に位置する小径管12と下水管の隙間に閉塞材3を充填し、両者間に突っ張りようの反力枠31を設置すれば完全な止水効果を達成することができる。
【0025】
<15>その後の作業。
マンホールa内を満たして流下していた下水の全量が接続管2を流下することになれば、マンホールaには下水は存在せず、自由な作業が可能となる。
したがってマンホールaと下水管の取り合い部の補強、その他の工事を行うことできる。
次に
図7以降でその実施例を説明する
が、先行技術文献の方法、空気袋で止水する方法など、公知の他の下水流の切り替え方法を採用できることはもちろんである。
【0026】
<16>地盤改良。(
図7)
損壊した既設マンホールa1、およびそれに接続している既設下水管bの周囲を地盤改良する。
地盤改良には例えばセメント系材料を地中に噴射して撹拌するような公知の技術を採用できる。
【0027】
<17>既設マンホールの撤去。(
図8)
既設マンホールa1の外周を包囲する状態で、その外径より大きい内径を備えた鋼管4を圧入する。
鋼管4の内部に泥水を充填し、地上から解体機を吊り降ろして、鋼管4内の土砂の掘削と、既設マンホールa1の解体を行う。
このように泥水の充填により掘削途上の鋼管の先端でのボイリングなどによる周辺地盤のかく乱を防ぐことができる。
【0028】
<18>鋼管の打ち止め。(
図9)
圧入している鋼管4がやがて改良地盤に貫入したら、鋼管4の外周で、かつ改良地盤の上部の区域に、地上からさらに止水剤を注入して修復範囲への地下水の漏水、ボイリングの発生を防止する。
前記したように、下水幹線は深い位置にあるので、ボイリングの可能性が高いからである。
鋼管4の先端は、下水管bを打ち抜くことなく、下水管bの上部に近い位置で貫入を止める。
【0029】
<19>コンクリートの巻き立て。
鋼管4の内部の泥水をポンプでくみ出す。
前記したように、下水管bを流れる汚水はすべて切り替え部材1の内部を流れているから、泥水を排除するとマンホールa1の内部では自由に作業を行うことができる。
そこで、鋼管4の先端から下水管bの周囲を、矢板5で土止めを行いつつ、手掘り掘削によって下水管bの周囲から下部まで掘り下げる。(
図10)
その状態で既設マンホールa1と下水管bとの取り付け箇所を露出させる。
そして破損状態を確認し、取り付け部などが破損していた場合には下水管bを巻き込む状態で、取り付け部巻き立てコンクリート6を打設する。(
図11)
【0030】
<20>
プレキャストマンホールの新設。(
図12)
新設マンホールa2用のプレキャスト部材を順次吊り降ろして積み上げ、新設マンホールa2を構築する。
新設マンホールa2と鋼管4との間には、新設マンホールa1の上昇に平行して例えば流動化処理土7を投入する。
その状態で鋼管4を引き抜けば、
引き抜き途中の鋼管先端の周囲の壁面が崩壊することがなく、安全な状態で鋼管4を回収することができる。
また流動化処理土は適量のセメントなどの固化材が配合してあるので今後発生する地震に対し流動化による損傷を抑止できる。
【0031】
<21>
現場打設マンホールの
新設。
あらかじめ鋼管4の内側面に鉄筋を配筋し、内型枠8を設置し、鋼管4を引き抜きつつ、コンクリート
を投入する。
その状態で鋼管4を引き抜けば、引き抜き途上の鋼管4先端の周囲の壁面が崩壊することがなく、安全な状態で鋼管4を回収することができ、現場打設のマンホールa2を新設することができる。
こうして既設マンホールa1の損壊箇所、あるいは既設マンホールa1と下水管bとの取り付け部の損壊箇所の修復が完了し、新設マンホールa2の構築も完了する。
その後に切り替え部材1を撤去して、上流側の下水道bからの汚水を、マンホールaを通して下流側の下水道bに流して原状に戻す。