【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため第1の構成は、車両本体の重心から前後方向に延びる中心線を挟んだ左右いずれかの領域に駆動輪が配置されてなるフォークリフト、の動作を制御する制御装置である。
【0008】
この制御装置は、操舵輪を操舵させるべく運転者が操作するステアリングにつき、該ステアリングの操作量を検出する操作検出手段と、車両本体に作用しているヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、前記操作検出手段により検出された操作量が車両本体を前後方向に直進させる際の操作量となっている場合に、前記ヨーレート検出手段により検出されたヨーレート(検出ヨーレート)が、車両本体が前後方向に直進している場合におけるヨーレート(想定ヨーレート)の所定範囲外となっているか否かを判定するヨーレート判定手段と、前記ヨーレート判定手段により前記検出ヨーレートが前記想定ヨーレートの所定範囲外になっていると判定されたときに、前記検出ヨーレートの作用による車両本体の旋回を相殺する方向へと操舵輪を操舵させるべく該操舵輪に操舵トルクを付与するトルク付与手段と、を備えている。
【0009】
上述したように、駆動輪が左右いずれかの領域に配置されたフォークリフトでは、車両本体を前後方向に直進させるべくステアリングの操作が行われているにも拘わらず、駆動輪の配置に起因して車両本体を旋回させる方向のヨーレートが発生することがある。上記構成では、実際に車両本体に作用しているヨーレート(検出ヨーレート)を検出しているため、これがステアリングの操作と無関係に大きくなると、直進させようとするステアリングの操作に応じた想定ヨーレートから離れた値(所定範囲外)となり、このヨーレートの相違が車両本体に意図しない旋回を発生させる原因になってしまう。
【0010】
ところが、上記構成では、検出ヨーレートが想定ヨーレートの所定範囲外となる場合に、検出ヨーレートの作用による車両本体の旋回を相殺する方向へ操舵輪を操舵させるべく操舵トルクを付与するため、これにより検出ヨーレートが想定ヨーレートに近い値となる結果、意図しない旋回を防止することができる。
【0011】
そして、上記構成では、操舵トルクを付与して旋回を防止するという構成上、例えば、ステアリングモータなどステアリングの操作量に応じた操舵トルクを操舵輪に付与する手段を流用して旋回を防止することができるため、装置構成が大型化してしまうこともなければ、旋回防止のためだけにコストが大幅に増加してしまうようなこともない。
【0012】
さらに、上記構成では、操舵輪の操舵により旋回を防止していることから、ブレーキにより旋回を防止する構成のように、車両の走行速度を不必要に低下させてしまうようなこともない。
【0013】
なお、上記構成では、検出ヨーレートが想定ヨーレートの所定範囲外になっている間にわたって操舵輪へと操舵トルクが付与され、検出ヨーレートが想定ヨーレートの所定範囲以内になると、操舵輪へと付与されていた操舵トルクは解除されることになる。また、ステアリングの操作量が車両本体を前後方向に直進させる場合の操作量でなくなると、検出ヨーレートと想定ヨーレートとの比較が行われなくなり、検出ヨーレートが想定ヨーレートの所定範囲以内となっているか否かが判定されなくなるため、この場合も、操舵輪へと付与されていた操舵トルクは解除されることになる。
【0014】
また、上記構成において、操舵輪に付与される操舵トルクは、検出ヨーレートの作用による旋回を相殺させる方向へ操舵輪を操舵させることができればよいが、検出ヨーレートを想定ヨーレートの所定範囲内とするために必要な操舵角だけ、操舵輪を操舵させることができるものであると、意図しない旋回を抑制するために好適といえる。
【0015】
このためには、上記構成を以下に示す第2の構
成のようにするとよい。
第2の構成においては、前記ヨーレート判定手段により前記検出ヨーレートが前記想定ヨーレートの所定範囲外になっていると判定された場合に、前記検出ヨーレートおよび前記想定ヨーレートに基づき、該検出ヨーレートの作用による車両本体の旋回を相殺する方向に操舵輪を操舵した結果として前記検出ヨーレートが前記想定ヨーレートと所定範囲以内となるような操舵角を特定する操舵角特定手段、を備えている。
【0016】
そして、前記トルク付与手段は、前記ヨーレート判定手段により前記検出ヨーレートが前記想定ヨーレートの所定範囲外になっていると判定されたときに、操舵輪が前記操舵角特定手段により特定された操舵角だけ操舵されるように該操舵輪に対して操舵トルクを付与する。
【0017】
この構成であれば、検出ヨーレートを、実際のステアリングの操作に応じたヨーレートである想定ヨーレートの所定範囲以内に近似させることができるため、より効果的に意図しない旋回を防止することができる。
【0018】
なお、「操舵輪を操舵した結果として検出ヨーレートが想定ヨーレートと所定範囲以内となるような操舵角」とは、検出された検出ヨーレートの作用による旋回が相殺される方向への旋回を発生させ、その後の検出ヨーレートが想定ヨーレートの所定範囲内とすることができるような操舵輪の操舵角のことである。この操舵角は、検出ヨーレートと想定ヨーレートとの差に応じてあらかじめ定められた値を用いてもよいし、その都度、各ヨーレートなどのパラメータに基づいて算出した値を用いることとしてもよい。
【0019】
また、上記構成において、検出ヨーレートと想定ヨーレートとの比較、および、操舵輪への操舵トルクの付与は、より意図しない旋回が起こりやすい状況にのみ実施することとしてもよい。意図しない旋回が起こりやすい状況としては、例えば、一定以上の速度で直進していた状態から、駆動輪の回転を抑制して制動を行うような状況が考えられる。
【0020】
駆動輪の回転を抑制する状況では、慣性により車両本体が直進し続けようとするため、駆動輪の配置された左右いずれかの領域が反対の領域よりも比較的強く制動されることになり、左右の速度バランスが崩れてヨーレートが大きくなりやすくなる。このことは、フォークリフトの前方側で荷物を支えるなどして重量バランスが前方に傾いているような場合に特に顕著となる。
【0021】
このような状況においてのみ、検出ヨーレートと想定ヨーレートとの比較、および、操舵輪への操舵トルクの付与、を実施するためには、例えば、上記各構成を以下に示す第3の構
成のようにするとよい。
【0022】
第3の構成においては、車両本体の走行速度を検出する速度検出手段と、駆動輪の回転を抑制させるための制動操作が行われていることを検出する制動検出手段と、を備えており、前記トルク付与手段は、前記速度検出手段により検出された走行速度が一定以上となっており、かつ、前記制動検出手段により制動操作が行われていることが検出されている状態において、前記ヨーレート判定手段により前記検出ヨーレートが前記想定ヨーレートの所定範囲外になっていると判定されたときに、前記操舵輪に対する操舵トルクの付与を行う、ように構成されている。
【0023】
この構成であれば、検出ヨーレートと想定ヨーレートとの比較、および、操舵輪への操舵トルクの付与を、より意図しない旋回が起こりやすい状況においてのみ実施することができるようになる。
【0024】
また、この構成においては、例えば、駆動輪にブレーキが備えられている場合においてそのブレーキが操作されたことや、車両本体が走行する方向と反対方向に駆動輪を回転させるための操作がなされたことなどを、制動操作が行われたものとして判定すればよい。
【0025】
この前者のようにブレーキが操作されたことをもって制動操作が行われたと判定するためには、上記各構成を以下に示す第4の構
成のようにするとよい。
第4の構成において、前記制動検出手段は、前記駆動輪の回転を抑制するブレーキが操作されていることを、前記制動操作が行われているものとして検出する。
【0026】
この構成であれば、ブレーキが操作されている状態を、制動操作が行われている状態として判定することができる。
また、車両本体が走行する方向と反対方向に駆動輪を回転させるための操作がなされたことを、制動操作が行われたものとして判定するためには、上記各構成を以下に示す第5の構
成のようにするとよい。
【0027】
第5の構成において、前記制動検出手段は、車両本体を前方および後方のいずれか一方に走行させるべく操作がなされている状態から、いずれか他方に走行させるための操作へと切り替えられて以降、前記速度検出手段により検出される走行速度が一定未満となるまでを、前記制動操作が行われているものとして検出する。
【0028】
この構成であれば、車両本体が走行する方向と反対方向に駆動輪を回転させるための操作が開始されて以降、走行速度が一定未満となるまでの間、制動操作が行われているものとして判定することができる。
【0029】
ところで、上記各構成においては、ステアリングの操作量が車両本体を前後方向に直進させる操作量である場合にのみ、操舵輪に操舵トルクを付与するようにしてもよく、このためには、上記各構成を以下に示す第6の構
成のようにすることが考えられる。
【0030】
第6の構成において、前記ヨーレート判定手段は、前記操作検出手段により検出された操作量が車両本体を前後方向に直進させる操作量以外の操作量となったときに、前記検出ヨーレートが前記想定ヨーレートの所定範囲外となっているか否かの判定を中止する。
【0031】
このような構成であれば、車両本体を旋回させるべくステアリングが操作されている場合においてのみ、検出ヨーレートが想定ヨーレートの所定範囲外となっているか否かの判定を経て、検出ヨーレートの作用による車両本体の旋回を相殺する方向へ操舵輪を操舵させるべく操舵トルクを付与することができる。
【0032】
また、上記第1から5のいずれかの構成においては、ステアリングの操作量が車両本体を前後方向に直進させる操作量である場合に操舵輪に操舵トルクを付与するようにしているが、車両本体を前後方向に直進させる操作量以外の操作量となっている場合においても、操舵トルクを付与することとしてもよい。
【0033】
このためには、上記各構成を以下に示す第7の構
成のようにすることが考えられる。
第7の構成において、前記ヨーレート判定手段は、前記操作検出手段により検出された操作量が車両本体を前後方向に直進させる操作量以外の操作量となっている場合に、前記検出ヨーレートが、その操作量に応じた操舵角となるように操舵輪が操舵されている場合におけるヨーレート(想定ヨーレート)の所定範囲外となっているか否かを判定する。
【0034】
このような構成であれば、車両本体を旋回させるべくステアリングが操作されている場合においても、検出ヨーレートの作用による車両本体の旋回を相殺する方向へ操舵輪を操舵させるべく操舵トルクを付与することにより、検出ヨーレートを想定ヨーレートに近づけて意図しない旋回(意図よりも小さいまたは大きい旋回)を防止することができる。
【0035】
また、上記各構成において、ヨーレートを検出するための具体的な構成は特に限定されないが、例えば、ヨーレートセンサからの出力に基づいて検出することが考えられる。このヨーレートセンサを用いる場合には、上記各構成を以下に示す第8の構
成のようにするとよい。
【0036】
第8の構成において、前記ヨーレート検出手段は、車両本体に設けられたヨーレートセンサからの出力に基づいてヨーレートを検出する。
この構成であれば、ヨーレートセンサからの出力に基づいてヨーレートを検出することができる。
【0037】
なお、ヨーレートを検出するためのセンサとしては、ヨーレートセンサの他に回転方向の速度(角速度)を検出するジャイロセンサなどを採用してもよい。
また、ヨーレートを検出するための構成としては、車両本体に設けられている左右一対の車輪の回転速度の差に基づいて検出することを考えることもできる。このためには、上
記各構成を以下に示す第9の構
成のようにするとよい。
【0038】
第9の構成において、前記ヨーレート検出手段は、車両本体の重心から前後方向に延びる中心線を挟んだ左右の領域それぞれに設けられた一対の従動輪につき、該従動輪それぞれの回転速度を検出するセンサからなり、該センサそれぞれに検出される回転速度の差およびセンサ間の距離に基づいて、前記検出ヨーレートを特定するように構成されている。
【0039】
この構成であれば、一対の従動輪それぞれの回転速度の差に基づいてヨーレートを特定することができる。
また、上記課題を解決するため第10の構
成は、上記第1〜第9のいずれかの構成に係る制御装置を備えている。
【0040】
この構成であれば、上記各構成と同様の作用、効果を得ることができる。
また、上記課題を解決するため第11の構成は、コンピュータを、上記第1〜第9のいずれかの構成に係る制御装置として機能させる。
【0041】
このプログラムにより機能するコンピュータは、上記各構成と同様の作用効果を得ることができる。
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介して制御装置またはフォークリフトや、これを利用するユーザに提供されるものである。