【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、メチオニンと、その誘導体及び/又は塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む、紫外線障害軽減経口組成物を提供する。
【0006】
本発明の紫外線障害軽減経口組成物において、前記メチオニンはD−体の場合がある。
【0007】
前記紫外線障害軽減経口組成物は、シワ抑制剤の場合がある。
【0008】
前記紫外線障害軽減経口組成物は、皮膚疾患用医薬品として用いられる場合がある。
【0009】
前記皮膚疾患は、紅斑、日光皮膚炎、慢性光線皮膚症、光線角化症、光線口唇炎、Favre−Racouchot病、光線過敏症、光接触皮膚炎、ベルロック皮膚炎、光線過敏性薬疹、多形日光疹、種痘様水泡症、日光蕁麻疹、慢性光線過敏性皮膚炎、色素性乾皮症、雀卵斑、ポルフィリン症、ペラグラ、Hartnup病、日光角化症、皮膚筋炎、扁平苔癬、Darier病、毛孔性紅色粃糠疹、酒さ、アトピー性皮膚炎、肝斑、単純性疱疹、エリテマトーデス、扁平上皮癌、基底細胞癌及びBowen病からなるグループから選択される場合がある。
【0010】
本発明の紫外線障害軽減経口組成物において、前記皮膚疾患用医薬品は皮膚疾患用治療剤の場合がある。
【0011】
本発明の紫外線障害軽減経口組成物において、前記皮膚疾患用医薬品は皮膚疾患用予防剤の場合がある。
【0012】
本発明の紫外線障害軽減経口組成物は、食品として用いられる場合がある。
【0013】
本発明の紫外線障害軽減経口組成物は、白内障用医薬品として用いられる場合がある。
【0014】
本発明の紫外線障害軽減経口組成物において、前記白内障用医薬品は、白内障用治療剤又は白内障用予防剤の場合がある。
【0015】
前記白内障は老人性白内障の場合がある。
【0016】
本発明は、メチオニンと、その誘導体及び/又は塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む、紫外線障害軽減経口組成物を投与するステップを含む、紫外線曝露による皮膚疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。前記皮膚疾患は、紅斑、日光皮膚炎、慢性光線皮膚症、光線角化症、光線口唇炎、Favre−Racouchot病、光線過敏症、光接触皮膚炎、ベルロック皮膚炎、光線過敏性薬疹、多形日光疹、種痘様水泡症、日光蕁麻疹、慢性光線過敏性皮膚炎、色素性乾皮症、雀卵斑、ポルフィリン症、ペラグラ、Hartnup病、日光角化症、皮膚筋炎、扁平苔癬、Darier病、毛孔性紅色粃糠疹、酒さ、アトピー性皮膚炎、肝斑、単純性疱疹、エリテマトーデス、扁平上皮癌、基底細胞癌及びBowen病からなるグループから選択される場合がある。前記メチオニンはD−体の場合がある。
【0017】
本発明は、メチオニンと、その誘導体及び/又は塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む、紫外線障害軽減経口組成物を投与するステップを含む、皮膚の美容状態の改善方法を提供する。前記皮膚の美容状態の改善方法において、前記メチオニンと、その誘導体及び/又は塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む、紫外線障害軽減経口組成物は食品組成物の場合がある。前記メチオニンはD−体の場合がある。
【0018】
本発明の皮膚の美容状態の改善方法において、皮膚の美容状態の改善とは、シワ抑制の場合があるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明は、L−及びD−メチオニンと、それらの誘導体及び/又は塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む組成物を投与するステップを含む、白内障を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0020】
本発明の白内障を治療及び/又は予防する方法において、前記白内障は老人性白内障の場合がある。
【0021】
本明細書においてメチオニンの「塩」とは、メチオニンの紫外線障害の軽減効果を損なわないことを条件として、金属塩、アミン塩等を含むいずれかの塩をいう。前記金属塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を含む場合がある。前記アミン塩は、トリエチルアミン塩、ベンジルアミン塩等を含む場合がある。
【0022】
本明細書においてメチオニンの「誘導体」とは、メチオニンの紫外線障害の軽減効果を損なわないことを条件として、メチオニン分子が、アミノ基か、カルボキシル基か、側鎖かにおいて、いずれかの原子団と共有結合したものを指す。前記いずれかの原子団は、N−フェニルアセチル基、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)基等のような保護基と、タンパク質、ペプチド、糖、脂質、核酸等のような生体高分子と、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステル等のような合成高分子と、エステル基等のような官能基とを含むがこれらに限定されない。前記エステル基は、例えば、メチルエステル、エチルエステルその他の脂肪族エステルか、芳香族エステルかを含む場合がある。
【0023】
アミノ酸には光学異性体としてL−体とD−体とがあるが、天然のタンパク質はL−アミノ酸がペプチド結合したものであり、細菌の細胞壁などの例外を除きL−アミノ酸のみが利用されていることから、ヒトを始めとする哺乳類にはL−アミノ酸のみが存在し、L−アミノ酸のみを利用していると考えられてきた。(木野内忠稔ら、蛋白質 核酸 酵素、50:453−460 (2005)、レーニンジャーの新生化学[上]第2版 pp132−147 (1993) 廣川書店、ハーパー・生化学 原書22版 pp21−30(1991) 丸善)したがって、従前より、学術的にも産業的にもアミノ酸としてはL−アミノ酸のみが専ら使用されてきた。
【0024】
例外的にD−アミノ酸が使用されるケースとしては、細菌に産生させる抗生物質の原料として使用する場合、およびアミノ酸を化学合成した際に等量得られるL−アミノ酸とD−アミノ酸混合物からL−アミノ酸のみを分取するコストを省くために、そのままDL−アミノ酸混合物としてD−アミノ酸を使用している食品添加物の例がある。しかし、L−アミノ酸を含まないD−アミノ酸だけを生理活性物質として産業的に使用している例は従来なかった。
【0025】
D−セリンやD−アスパラギン酸はD−体の割合が高いことから比較的研究が進んでいる。D−セリンは大脳、海馬に局在し、脳内のNMDA受容体の調節因子で明らかにされている。D−アスパラギン酸は精巣や松果体に局在が認められ、ホルモン分泌の制御に関与していることが示されている(特開2005−3558号公報)。しかし皮膚、特に紫外線障害におけるL―及びD−メチオニンの生理作用は明らかにされていない。
【0026】
以下の実施例に示すとおり、L−体又はD−体か、その混合物かとしてのメチオニンについて紫外線障害を軽減する効果はこれまで知られていなかった。したがって本発明のL−及び/又はD−メチオニンを含む紫外線障害軽減経口組成物は新規発明である。
【0027】
近年、ddYマウスに10mMのD−アミノ酸水溶液を2週間自由摂取させた後、各器官でD−アミノ酸濃度を測定したところ、松果体では松果体1腺あたり3−1000pmolであり、脳組織では湿重量1グラムあたり2−500nmolであることが報告された(Morikawa,A.ら、Amino Acids,32:13−20(2007))。これに基づいて、以下に説明する本発明の組成物に含まれるL−及びD−メチオニンの一日摂取量の下限が算出された。
【0028】
本発明のメチオニンは、以下の実施例に示すとおり、培養ヒト線維芽細胞に対しては0.001〜100μMか、マウスに対しては10mMかの濃度で紫外線障害を軽減する効果を有する。したがって、本発明の医薬品組成物と、シワ抑制剤及び食品組成物とに含まれるメチオニンの量は、この濃度範囲のメチオニンが生体皮膚組織の線維芽細胞に送達されることを条件として、いかなる含有量であってもかまわない。本発明の組成物が内服剤の場合におけるメチオニンの含有量は、0.000001重量%〜100重量%の範囲であればよい。本発明の組成物が内服剤の場合におけるメチオニンの含有量は、0.000002重量%〜80重量%が望ましく、0.00002重量%〜60重量%であることが最も望ましい。なお、本発明の組成物に含まれるD−メチオニンの一日摂取量の下限は、体重1kgあたり0.01ngであればよく、0.1ngが好ましく、1ngがより好ましい。本発明の組成物に含まれるL−メチオニンの一日摂取量の下限は、臨床薬の投与量(体重1kgあたり2mg以上)より少ない量であって、体重1kgあたり0.01mgであればよく、0.1mgが好ましく、1mgがより好ましい。
【0029】
本発明の医薬品組成物は、メチオニンの単体、メチオニンの塩及び/又は生体内で薬物代謝酵素その他によってメチオニンを放出できる誘導体に加えて、メチオニンの紫外線障害の軽減効果を損なわないことを条件として、さらに1種類又は2種類以上の薬学的に許容される添加物を含む場合がある。前記添加物は、希釈剤及び膨張剤と、結合剤及び接着剤と、滑剤と、流動促進剤と、可塑剤と、崩壊剤と、担体溶媒と、緩衝剤と、着色料と、香料と、甘味料と、防腐剤及び安定化剤と、吸着剤と、当業者に知られたその他の医薬品添加剤とを含むが、これらに限られない。
【0030】
本発明のシワ抑制剤は、有効成分として、メチオニン、メチオニンの塩及び/又は生体内で薬物代謝酵素その他によってメチオニンを放出できる誘導体のみを使用して調製することも可能であるが、通常本発明の効果を損なわない範囲で、医薬部外品を含む化粧品や医薬品等の皮膚外用剤等に用いられる他の成分を、必要に応じて適宜配合することができる。前記他の成分(任意配合成分)としては、例えば、油分、界面活性剤、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の食品組成物は、メチオニン、メチオニンの塩及び/又は生体内で薬物代謝酵素その他によってメチオニンを放出できる誘導体に加えて、メチオニンの紫外線障害の軽減効果を損なわないことを条件として、調味料、着色料、保存料その他の食品として許容される成分を含む場合がある。
【0032】
本発明の食品組成物は、例えば、清涼飲料、グミ、キャンディー、錠菓等、従来食品組成物に用いるものであればいずれでもよく、前記例示に限定されるものでない。
【0033】
紫外線曝露は皮膚疾患だけでなく眼疾患、特に、白内障の原因の1つであると考えられている。マウスでは長時間紫外線曝露が水晶体の前部皮質に白濁を生じさせ、実験的に白内障モデルを作製することができることが知られている(前里多佳美及び岩田修造、「水晶体 その生化学的機構」、318−323頁、岩田修造編、メディカル葵出版、東京(1986))。また、老人性白内障の原因の1つは紫外線である考えられており(藤永豊、「白内障 眼科MOOK No.17」、10頁、三島濟一ら編、金原出版、東京(1982))、Zigmanらは、マニラ、タンパ及びロチェスターでの疫学的調査によって、紫外線の照射量と、白内障の発生率とに相関があり、紫外線は白内障のリスク因子であることを示した(Zigman, S.ら、Invest. Ophthalmol. Visual Sci.18:462−467(1979))。したがって、これらの知見と、以下の実施例とによれば、紫外線障害を軽減する効果を有するL−及びD−メチオニンは、白内障の予防又は治療に有効である。