(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記経過時間が前記規定時間を上回る場合、前記吐出回数に上乗せする数を、前記経過時間に応じて段階的に変更することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
前記コントローラは、前記経過画素数が前記規定数を上回る場合、前記吐出回数に上乗せする数を、前記経過画素数に応じて段階的に変更することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1〜第4の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るインクジェット記録装置1の要部構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、制御の中枢として機能するCPU(Central Processing Unit)2を備える。このCPU2には、CPUバス3を介してROM(Read Only Memory)4、RAM(Random Access Memory)5、データメモリ6、入力ポート7、インターフェース8、駆動信号制御回路9(コントローラ)、ヘッドメンテナンス制御回路10、およびメディア搬送制御回路11等が接続されている。また、入力ポート7には操作パネル12が接続され、駆動信号制御回路9には温度センサ13とヘッド14が接続され、ヘッドメンテナンス制御回路10にはヘッドメンテナンス装置15が接続され、メディア搬送制御回路11にはメディア搬送装置16(搬送装置)が接続されている。
【0011】
CPU2は、インクジェット記録装置1の制御に関わる各種の処理を実行する。また、CPU2は、
図5の説明にて後述する非駆動時間検出制御を実行する。
【0012】
ROM4には、CPU2に実行させて各種の処理を実現する制御プログラムや、該処理に用いる固定値等が記憶されている。RAM5には、処理場面に応じて各種の作業用記憶領域が形成される。
【0013】
データメモリ6には、例えばインクジェット記録装置1の外部から入力される画像データや、この画像データに含まれる各画素をインク滴の吐出回数に変換した階調値データの集合体である展開データ等が記憶される。
【0014】
操作パネル12は、各種操作ボタンやタッチパネル付きのディスプレイ等で構成され、印刷の開始や印刷条件の設定等に関わる情報の入力に使用されるとともに、インクジェット記録装置1の制御状態を上記ディスプレイへの表示によって報知する。
【0015】
インターフェース8には、例えばホストコンピュータ等の外部機器と通信するためのケーブル等が接続される。
【0016】
駆動信号制御回路9、温度センサ13、およびヘッド14は、本実施形態に係るインクジェットヘッド100を構成する。駆動信号制御回路9、温度センサ13、およびヘッド14の詳細については、
図2,
図3の説明にて後述する。
【0017】
ヘッドメンテナンス装置15は、ヘッド14に向けて移動し、ヘッド14のノズル面を清掃する。ヘッドメンテナンス制御回路10は、ヘッドメンテナンス装置15を制御する。
【0018】
メディア搬送装置16は、例えば、図示せぬ用紙カセットに収納された記録媒体である用紙をピックアップするピックアップローラ、該ローラにてピックアップされた用紙を外周面に吸着してヘッド14によるインク吐出位置に搬送する吸着ドラム、ヘッド14により画像が形成された後の用紙を該ドラムから剥離する剥離機構、該剥離機構により剥離された用紙を図示せぬ排紙トレイへと排紙する排紙ローラ等で構成される。メディア搬送制御回路11は、メディア搬送装置16が備える各部を制御する。
【0019】
次に、インクジェットヘッド100を構成する各部の詳細について説明する。
図2の断面図に示すように、ヘッド14は、インクカートリッジ等のインク供給源に接続したインク流入口101、このインク流入口101に流入するインクを収容する共通圧力室102、この共通圧力室102内のインクが充填される複数の圧力室103、これら圧力室103と共通圧力室102とを仕切る隔壁104、各圧力室103にそれぞれ連通するインク吐出用の複数のノズル105、各圧力室103の一壁面を形成する複数の振動板106、これら振動板106上にそれぞれ配置した複数の圧電素子107等を備えている。上記温度センサ13は、共通圧力室102内のインクの温度を検出できる位置に設けられている。上記駆動信号制御回路9は、振動板106および温度センサ13に接続されている。
【0020】
図2のA−A線に沿う断面を矢印方向に見たのが
図3である。すなわち、各圧力室103は、それぞれ隔壁108を介して隣り合う。
【0021】
各振動板106および各圧電素子107により、各圧力室103の容積を変化させる複数のアクチュエータが構成される。圧力室103の容積が拡張すると、共通圧力室102内のインクがその圧力室103に導入される。圧力室103の容積が拡張された状態から収縮すると、その圧力室103内のインクが対応するノズル105からインク滴となって吐出される。
【0022】
駆動信号制御回路9は、
図4に示すように、圧力室103の容積を拡張するための拡張パルスP1、圧力室103の容積を拡張パルスP1による拡張から定常状態に復帰させるためのグラウンド電位(パルス休止)P2、圧力室103の容積を収縮するための収縮パルスP3、および圧力室103の容積を収縮パルスP3による収縮から上記定常状態に戻すためのグラウンド電位(パルス休止)P4が順に含まれる波形の電圧を、各アクチュエータに出力する。
【0023】
拡張パルスP1、グラウンド電位P2、収縮パルスP3、グラウンド電位P4によって、1つのインク滴を吐出させるための吐出波形が構成される。本実施形態では、マルチドロップ方式を採用し、この吐出波形を最大で3回繰り返して同一のアクチュエータに出力することで、用紙上に1画素を形成する。これにより、1つのヘッド14で4階調(0ドロップ、1ドロップ、2ドロップ、3ドロップ)の画像形成が可能となる。なお、
図4においては、上記吐出波形が3回(1〜3ドロップ)繰り返して出力される場合を示している。
【0024】
拡張パルスP1は負極性であり、収縮パルスP3は正極性である。但し、拡張パルスP1および収縮パルスP3の極性を入れ替え、正極性の拡張パルスP1にて圧力室103の容積が拡張し、負極性の収縮パルスP3にて圧力室103の容積が収縮するようにアクチュエータを構成してもよい。
【0025】
拡張パルスP1の期間では、圧力室103の容積が拡張し、共通圧力室102内のインクが圧力室103に導入される。グラウンド電位P2の期間では、圧力室103の容積が拡張パルスP1による拡張から定常状態に復帰し、圧力室103内のインクがノズル105から吐出される。収縮パルスP3の期間では、圧力室103の容積が収縮し、グラウンド電位P4の期間では、圧力室103の容積が収縮パルスP3による収縮から定常状態に復帰する。この収縮および復帰により、圧力室103内のインクの振動が抑制される。
【0026】
なお、拡張パルスP1、グラウンド電位P2、収縮パルスP3、グラウンド電位P4の期間は、インクの固有振動周期AL等を考慮して、インク滴吐出後に圧力室103内のインクの振動が抑制され易い期間に設定すればよい。
【0027】
次に、本実施形態における画像形成処理について説明する。
例えばインターフェース8を介してホストコンピュータ等の外部機器から画像形成が指示されると、CPU2が当該指示とともに当該外部機器から入力される画像データをデータメモリ6に記憶する。さらに、CPU2は、データメモリ6に記憶した画像データに含まれる各画素を0〜3ドロップの階調値データに変換した展開データを生成し、データメモリ6に記憶する。
【0028】
このようにしてデータメモリ6に記憶された展開データに基づき、用紙に画像が形成される。すなわち、メディア搬送制御回路11がメディア搬送装置16を制御して給紙カセットから用紙をピックアップするとともに当該用紙をヘッド14のノズル面に搬送し、駆動信号制御回路9が用紙の搬送に合せてデータメモリ6に記憶された展開データの先頭ラインから順に、各ラインに含まれる各画素の階調値データに応じた数の吐出波形を含む駆動電圧信号を、それぞれ対応する圧電素子107に供給する。
【0029】
このような処理において1つの画素を用紙に形成するにあたり、駆動信号制御回路9は、当該画素に対応するノズル105が前回インク滴を吐出してからの経過時間(以下、非駆動時間T)が規定時間T1を下回る場合には、吐出波形を当該画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数分だけ連続して圧電素子107に出力して当該画素を形成させ、非駆動時間Tが規定時間T1を上回る場合には、吐出波形を当該画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に2つ上乗せした数分だけ連続して圧電素子107に出力して当該画素を形成させる。なお、上乗せする数は2つではなく1つ、あるいは3つ以上など、1つ以上であればよい。
【0030】
この動作の詳細につき、
図5に示すフローチャートおよび
図6に示す駆動電圧信号の波形例を用いて説明する。
図5に示すように、1つの画素(以下、次形成画素)を用紙に形成するにあって、先ずCPU2が非駆動時間検出制御を実行し、当該次形成画素に対応するノズル105の非駆動時間Tを検出する(Act1)。非駆動時間Tは、例えば
図6に示すように、当該ノズル105にて前回形成した画素(以下、前形成画素)に対応する吐出波形に含まれる最後のグラウンド電位P4を駆動信号制御回路9が出力した時間から、次形成画素の先頭である拡張パルスP1を駆動信号制御回路9が出力するまでの時間であり、例えばCPU2が備えるタイマ等によってカウントされる時間を参照することで検出される。
【0031】
Act1の後、CPU2は検出した非駆動時間Tを駆動信号制御回路9に出力する。そして、駆動信号制御回路9は、非駆動時間Tが規定時間T1以上であるか否かを判定する(Act2)。なお、規定時間T1は、インク滴の吐出回数を上乗せすべき場合とすべきでない場合とを隔てる閾値であり、インクの種類等によって経験的、実験的、ないしは理論的に定められ、ROM4等に予め記憶されている。また、インクの粘度が温度によって変化することに鑑み、当該規定時間T1を温度センサ13によって検出される温度に応じて動的に変更してもよい。この場合、例えば温度センサ13によって検出される温度が高いほど規定時間T1を長くし、同温度が低いほど規定時間T1を短くすればよい。
【0032】
非駆動時間Tが規定時間T1未満(T<T1)であるならば(Act2のNo)、駆動信号制御回路9は、データメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act3)。そして、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act4)。
【0033】
一方、Act2において非駆動時間Tが規定時間T1以上(T≧T1)であるならば(Act2のYes)、駆動信号制御回路9は、データメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に2つ上乗せした数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act5)。そして、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act4)。
Act4を以って1つの画素を用紙に形成するための動作が完了する。
【0034】
図6中には、上記のように上乗せされる2つの吐出波形(追加ドロップ)を破線で示している。すなわち、データメモリ6に記憶された次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数が1ドロップである場合、非駆動時間Tが規定時間T1未満であるならば実線で示すように1つの吐出波形にて構成される駆動電圧信号が対応する圧電素子107に出力され、非駆動時間Tが規定時間T1以上であるならば実線および破線で示すように3つの吐出波形にて構成される駆動電圧信号が対応する圧電素子107に出力される。
【0035】
以上のような動作がノズル105ごとに順次実行されることによって1ライン分の画素が用紙に形成される。さらに、展開データを構成する全てのラインについて同手順を繰り返すことで、1頁の画像形成が完了する。なお、データメモリ6に記憶された次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数が“0”であるならば、当該画素に関して
図5のフローチャートに示す動作は行わない。すなわち、階調値データで示されるインク滴の吐出回数が“0”である画素に関しては、非駆動時間Tに関わらず非吐出が維持される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では非駆動時間Tが規定時間T1を上回る画素に対し、インク滴のドロップ数を上乗せする。このような構成であれば、インクの吐出頻度が少ないノズル105内でインクのメニスカスが乾燥し、増粘が生じている場合であっても、適切な体積のインクを適切な速度で用紙に吐出させることができるので、良好な画質を得ることが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
本実施形態においては、
図5のフローチャートに示す動作に代え、
図7のフローチャートに示す動作を行うことによって1つの画素が形成される。インクジェット記録装置1、インクジェットヘッド100、および駆動電圧信号の構成は、
図1〜
図4に示したものと同様である。
【0038】
図7のフローチャートにおいて、先ずCPU2がAct1と同様に非駆動時間Tを検出する(Act11)。そして、駆動信号制御回路9が、Act2と同様に非駆動時間Tが規定時間T1以上であるか否かを判定する(Act12)。
【0039】
非駆動時間Tが規定時間T1未満(T<T1)であるならば(Act12のNo)、駆動信号制御回路9は、Act3と同様にデータメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定し(Act13)、Act4と同様に当該決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力して、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act14)。
【0040】
一方、Act12において非駆動時間Tが規定時間T1以上(T≧T1)であるならば(Act12のYes)、駆動信号制御回路9は、非駆動時間Tが規定時間T2以上であるか否かを判定する(Act15)。規定時間T2は、規定時間T1よりも長い時間(T2>T1)に設定され、規定時間T1とともにROM4等に予め記憶されている。この規定時間T2の値は、規定時間T1と同様に、温度センサ13によって検出される温度に応じて動的に変更してもよい。この場合、例えば規定時間T1を下回らない範囲内で、温度センサ13によって検出される温度が高いほど規定時間T2を長くし、同温度が低いほど規定時間T2を短くすればよい。
【0041】
非駆動時間Tが規定時間T2未満(T1≦T<T2)であるならば(Act15のNo)、駆動信号制御回路9は、データメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に1つ上乗せした数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act16)。そして、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act14)。
【0042】
一方、非駆動時間Tが規定時間T2以上(T2≦T)であるならば(Act15のYes)、駆動信号制御回路9は、データメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に2つ上乗せした数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act17)。そして、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act14)。なお、Act16にて上乗せする数は2つではなく3つ以上であってもよく、Act17にて上乗せする数はAct16にて上乗せする数を下回らない範囲で定めれば3つ以上であってもよい。
Act14を以って1つの画素を用紙に形成するための動作が完了する。
【0043】
このように、本実施形態においては非駆動時間Tが規定時間T1を上回る場合に階調値データで示される吐出回数に上乗せする数を、非駆動時間Tに応じて段階的に変更する。このような構成であれば、個々のノズル105の状況に応じた適切な数だけ吐出回数を上乗せすることができ、本来求められていたインクの吐出体積により近い量のインクを各ノズル105に吐出させて各画素を形成できるようになる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
本実施形態においては、
図5のフローチャートに示す動作に代え、
図8のフローチャートに示す動作を行うことによって1つの画素が形成される。インクジェット記録装置1、インクジェットヘッド100、および駆動電圧信号の構成は、
図1〜
図4に示したものと同様である。但し、CPU2は、非駆動時間検出制御に代えて、非駆動画素検出制御を実行する。
【0045】
本実施形態では
図8に示すように、1つの画素(以下、次形成画素)を用紙に形成するにあって、先ずCPU2が非駆動画素検出制御を実行し、データメモリ6に記憶された展開データを参照して、当該次形成画素に対応するノズル105の非駆動画素数Dを検出する(Act31)。非駆動画素数Dは、当該ノズル105が前回インクを吐出して形成した画素(前形成画素)から当該次形成画素までの間に存在する階調値が0ドロップの画素の数である。
【0046】
非駆動画素数Dについて詳細に説明する。
図9は、あるノズル105にて用紙に形成される画素群(カラムに相当する)を示している。斜線を付した画素は階調値が1〜3ドロップのいずれかである画素を表し、斜線を付していない画素は0ドロップの画素を表している。各画素は、左端から順にラインL=1、2、3、…7のラインに含まれ、この順で用紙に形成される。この例において、ラインL=2の画素を次形成画素とした場合、前形成画素はラインL=1の画素となり、非駆動画素数D=0となる。同様に、ラインL=3,5の画素を次形成画素とした場合、前形成画素はそれぞれラインL=1,4の画素となり、非駆動画素数D=0となる。また、ラインL=4,6の画素を次形成画素とした場合、前形成画素はそれぞれラインL=2,4の画素となり、非駆動画素数D=1となる。また、ラインL=7の画素を次形成画素とした場合、前形成画素はラインL=4の画素となり、非駆動画素数D=2となる。
【0047】
Act31の後、CPU2は検出した非駆動画素数Dを駆動信号制御回路9に出力する。そして、駆動信号制御回路9は、非駆動画素数Dが規定数D1以上であるか否かを判定する(Act32)。なお、規定数D1は、インク滴の吐出回数を上乗せすべき場合とすべきでない場合とを隔てる閾値であり、インクの種類等によって経験的、実験的、ないしは理論的に定められ、ROM4等に予め記憶されている。また、インクの粘度が温度によって変化することに鑑み、当該規定数D1を温度センサ13によって検出される温度に応じて動的に変更してもよい。この場合、例えば温度センサ13によって検出される温度が高いほど規定数D1を大きく、同温度が低いほど規定数D1を小さくすればよい。
【0048】
非駆動画素数Dが規定数D1未満(D<D1)であるならば(Act32のNo)、駆動信号制御回路9は、Act3と同様にデータメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定し(Act33)、Act4と同様に当該決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力して、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act34)。
【0049】
一方、Act32において非駆動画素数Dが規定数D1以上(D≧D1)であるならば(Act32のYes)、駆動信号制御回路9は、Act5と同様にデータメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に2つ上乗せした数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act35)。なお、上乗せする数は2つではなく1つ、あるいは3つ以上など、1つ以上であればよい。Act35の後、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act34)。
Act34を以って1つの画素を用紙に形成するための動作が完了する。
【0050】
以上のような動作がノズル105ごとに順次実行されることによって1ライン分の画素が用紙に形成される。さらに、展開データを構成する全てのラインについて同手順を繰り返すことで、1頁の画像形成が完了する。なお、データメモリ6に記憶された次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数が“0”であるならば、当該画素に関して
図8のフローチャートに示す動作は行わない。すなわち、階調値データで示されるインク滴の吐出回数が“0”である画素に関しては、非駆動画素数Dに関わらず非吐出が維持される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係るインクジェットヘッド100ないしインクジェット記録装置1は、非駆動画素数Dが規定数D1を上回る画素に対し、インク滴のドロップ数を上乗せする。このような構成であっても、第1の実施形態と同様に、インクの吐出頻度が少ないノズル105のドロップ数を増やすことができるので、良好な画質を得ることが可能となる。
【0052】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
本実施形態においては、
図8のフローチャートに示す動作に代え、
図10のフローチャートに示す動作を行うことによって1つの画素が形成される。インクジェット記録装置1、インクジェットヘッド100、および駆動電圧信号の構成は、
図1〜
図4に示したものと同様である。但し、CPU2は、非駆動時間検出制御に代えて、第3の実施形態と同様に非駆動画素検出制御を実行する。
【0053】
図10のフローチャートにおいて、先ずCPU2がAct31と同様に非駆動画素数Dを検出する(Act41)。そして、駆動信号制御回路9が、Act32と同様に非駆動画素数Dが規定数D1以上であるか否かを判定する(Act42)。
【0054】
非駆動画素数Dが規定数D1未満(D<D1)であるならば(Act42のNo)、駆動信号制御回路9は、Act33と同様にデータメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定し(Act43)、Act34と同様に当該決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力して、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act44)。
【0055】
一方、Act42において非駆動画素数Dが規定数D1以上(D≧D1)であるならば(Act42のYes)、駆動信号制御回路9は、非駆動画素数Dが規定数D2以上であるか否かを判定する(Act45)。規定数D2は、規定数D1よりも大きい値(D2>D1)に設定され、規定数D1とともにROM4等に予め記憶されている。この規定数D2の値は、規定数D1と同様に、温度センサ13によって検出される温度に応じて動的に変更してもよい。この場合、例えば規定数D1を下回らない範囲内で、温度センサ13によって検出される温度が高いほど規定数D2を大きく、同温度が低いほど規定数D2を小さくすればよい。
【0056】
非駆動画素数Dが規定数D2未満(D1≦D<D2)であるならば(Act45のNo)、駆動信号制御回路9は、データメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に1つ上乗せした数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act46)。そして、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act44)。
【0057】
一方、非駆動画素数Dが規定数D2以上(D2≦D)であるならば(Act45のYes)、駆動信号制御回路9は、データメモリ6に記憶された当該次形成画素の階調値データで示されるインク滴の吐出回数に2つ上乗せした数分だけ吐出波形が連続する信号を、当該次形成画素を形成するための駆動電圧信号として決定する(Act47)。そして、駆動信号制御回路9は、決定した駆動電圧信号を当該次形成画素に対応する圧電素子107に出力し、当該圧電素子107に対応するノズル105から当該駆動電圧信号に含まれる吐出波形の数だけインク滴を吐出させる(Act44)。なお、Act46にて上乗せする数は2つではなく3つ以上であってもよく、Act47にて上乗せする数はAct46にて上乗せする数を下回らない範囲で定めれば3つ以上であってもよい。
Act44を以って1つの画素を用紙に形成するための動作が完了する。
【0058】
このように、本実施形態においては非駆動画素数Dが規定数D1を上回る場合に吐出回数に上乗せする数を、非駆動画素数Dに応じて段階的に変更する。このような構成であれば、第2の実施形態と同様に個々のノズル105の状況に応じた適切な数のドロップ数を上乗せすることができ、本来求められていたインクの吐出体積により近い量のインクを各ノズル105に吐出させて各画素を形成できるようになる。
【0059】
(変形例)
上記各実施形態に開示された構成は、実施段階において各構成要素を適宜変形して具体化できる。
例えば、上記各実施形態では、1つのノズル105からのインク吐出により、4階調の画素を形成する場合を例示したが、3以下または5以上の階調の画素を1つのノズル105で形成する場合に上記各実施形態にて開示した構成を適用してもよい。
【0060】
また、第2,第4の実施形態では、2つの閾値(T1およびT2、D1およびD2)を用いて、2段階で上乗せするドロップ数を変更する場合を例示したが、より多くの閾値を用いて、3段階以上で上乗せするドロップ数を変更する構成としてもよい。
【0061】
また、上記各実施形態では、
図4に示した吐出波形を用いて1つのインク滴をノズル105から吐出させる場合を例示したが、吐出波形として他の波形を用いてもよい。他の波形としては、例えば
図11に示すものを採用し得る。図示した波形は、拡張パルスP1、グラウンド電位(パルス休止)P2、収縮パルスP3、およびグラウンド電位(パルス休止)P4に加え、圧力室103の容積を収縮するための収縮パルスP5、圧力室103の容積を収縮パルスP5による収縮から定常状態に戻すためのグラウンド電位(パルス休止)P6を順に含む。このような構成において、例えば拡張パルスP1,グラウンド電位P2、収縮パルスP3の期間の総和をインクの固有振動周期の半値(ALと称す)以下とし、拡張パルスP1の始点から収縮パルスP3の終点までの期間の中間から、収縮パルスP5の中間までの時間差が2AL以下となるように構成する。このようにすれば、インク吐出による圧力室103内の残留振動が抑制され、インクの吐出性能がより良好となり、画質をさらに向上させることができる。
なお、
図11に示す吐出波形において、さらに収縮パルスの数を増やしてもよい。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。