(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガラス粉末とともにセラミックス粉末が含有されており、前記ガラス粉末と前記セラミックス粉末との合計量に占める前記ガラス粉末の割合が95質量%以上100質量%未満であり、前記セラミックス粉末の割合が0質量%を超え5質量%以下である請求項2又は3に記載の封着材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の封着用ガラス組成物と封着材とについて説明する。
本実施形態の封着材としては、例えば、所定の封着用ガラス組成部からなるガラス原体を粉砕したガラス粉末のみによって構成されたもの、又は、このガラス粉末とともにセラミックス粉末を含むものが挙げられる。
このガラス粉末は、焼成後の結晶化ガラスに所定の熱膨張係数を付与することができ、しかも、焼成時においてLSCFなどとの反応を抑制させ得る点において、以下の成分組成を有するガラス組成物で形成されていることが重要である。
【0015】
すなわち、本実施形態に係る封着用ガラス組成物は、酸化物換算でSiO
2:40〜55質量%、Al
2O
3:0〜5.0質量%、B
2O
3:0〜8.0質量%、MgO:20〜30質量%、CaO:10〜24質量%となり、且つ、MgOとCaOの合計が40〜54質量%となる組成比を有することが重要である。
【0016】
以下に、封着用ガラス組成物の各成分について説明する。
本実施形態の封着用ガラス組成物においてSiO
2は、ガラス網目形成成分であり、ガラス原体の製造時にガラスの安定性を向上させるとともに、粉末化後の焼成においてCaO−MgO−SiO
2系(ディオプサイド等)の高膨張性の結晶を生成させるのに有効な必須成分である。
主としてCaO−MgO−SiO
2系(ディオプサイド等)とMgO−SiO
2系(エンスタタイト、フォルステライト等)の結晶を析出するガラス組成物は、焼成温度による結晶相の変態が少なく、結晶化後のガラスの強度が安定化する傾向がある。
一方、ガラス原体中に結晶が析出していると、これを粉砕して得たガラス粉末は、封着焼成時において結晶化開始が早まり、そのため焼成開始から早期に組成物の流れ性が低下して流動が阻害され、焼成後の焼成体と封着対象物との間に隙間ができるという問題を生じ易いため好ましくない。
【0017】
本実施形態の封着用ガラス組成物においてSiO
2の含有量に上記のような範囲が定められているのはこのような観点に基づくものであり、上記のような下限値が定められているのは、SiO
2の含有量が40質量%未満では、粉末化後の焼成においてCaO−MgO−SiO
2系(ディオプサイド等)の高膨張性の結晶が十分に生成しないおそれを有するためである。
また、SiO
2の含有量が40質量%未満になると、CaO−MgO−SiO
2系(ディオプサイド等)、MgO−SiO
2系(エンスタタイト、フォルステライト等)の変態の少ない結晶の析出が不十分になり、結果として、酸化物電極材料と化学反応を起こしやすくなるおそれを有する。
また、上記のような上限値が定められているのは、SiO
2の含有量が55質量%を超える場合には、SiO
2を大量に含有させる結果CaOやMgOの含有量を相対的に減少させてしまい、CaO−MgO−SiO
2系(ディオプサイド等)、MgO−SiO
2系(エンスタタイト、フォルステライト等)の高膨張性の結晶を十分に生成させることができなくなるおそれを有するためである。
従ってSiO
2の含有量は、通常40質量%以上であり、好ましくは42質量%、より好ましくは45質量%以上とされる。
また、SiO
2の含有量は、通常55質量%以下であり、好ましくは53質量%以下とされ、より好ましくは52質量%以下であり、51質量%以下であることが最も好ましい。
すなわち、本実施形態の封着用ガラス組成物におけるSiO
2の含有量は、通常、40〜55質量%であり、40〜53質量%とされることが好ましく、40〜52質量%とされることがより好ましい。
特に42〜52質量%とされることが好ましく、45〜51質量%とされることが最も好ましい。
【0018】
本実施形態の封着用ガラス組成物においてAl
2O
3は、ガラス原体の製造時における安定性を向上させ、結晶化開始温度の調整および金属との接着力を保つために役立つ成分である。
ただし、Al
2O
3の含有量が5質量%を超えると焼成後に多くのガラス相を残存させる結果となって熱膨張曲線の直線性が低下するため好ましくない。
従ってAl
2O
3の含有量は、通常、0質量%以上であり、好ましくは0.5質量%、より好ましくは2質量%以上であり、3質量%以上であることが特に好ましい。
また、Al
2O
3の含有量は、通常5質量%以下である。
すなわち、本実施形態の封着用ガラス組成物におけるAl
2O
3の含有量は、通常、0〜5質量%であり、0.5〜5質量%とされることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%であり、2〜5質量%とされることが特に好ましい。
【0019】
本実施形態の封着用ガラス組成物においてB
2O
3は、ガラス網目形成成分であり、ガラス原体の製造時におけるガラスの安定性を向上させるとともに、粉末化後の焼成において、ガラスの結晶化温度を低下させ、MgO−B
2O
3系の高膨張性の結晶を生成させるために有効な成分である。
B
2O
3の含有量に上記のような範囲が定められているのは、このB
2O
3の含有量が8質量%を超えると、焼成時に結晶化しないガラス相の残存が多くなり熱膨張曲線の直線性が低下するためである。
また、B
2O
3の含有量が8質量%を超えると、融解温度が1100℃以下の結晶が析出し、酸化物電極材料と化学反応を起こしやすくなるため好ましくない。
このようなことから、B
2O
3の含有量は、通常、8.0質量%以下であり、6.0質量%以下とすることが好ましく、5.5質量%以下とすることがより好ましい。
したがって、本実施形態におけるB
2O
3の含有量は、通常、0〜8.0質量%であり、0〜6.0質量%とされることが好ましく、0〜5.5質量%とされることが特に好ましい。
【0020】
本実施形態の封着用ガラス組成物においてMgOは、MgO−B
2O
3系、CaO−MgO−SiO
2、MgO−SiO
2系の高膨張性結晶の生成に必須の成分である。
本実施形態においてMgOの含有量に上記のような範囲が定められているのは、このMgOの含有量が20質量%未満では、封着焼成後の結晶化ガラスの結晶化度が十分なものにならず、結晶相に対するガラス相の残存割合が多くなるためである。
また、このMgOの含有量が20質量%未満では、MgO−B
2O
3系、CaO−MgO−SiO
2、MgO−SiO
2系の高膨張性結晶が十分に析出しなくなり、ガラス焼成体の熱膨張係数が低下しやすくなるため、好ましくない。
一方、MgOの含有量が30質量%を超えると、ガラス原体の製造時における安定性が低下し、ガラス粉末の焼成時における流れ性が低下し流動が阻害されるため好ましくない。
従ってMgOの含有量の下限値は、通常、20質量%とされ、22質量%とされることが好ましい。
また、上限値については、通常、30質量%とされ、29質量%とされることが好ましい。
すなわち、本実施形態におけるMgOの含有量は、通常、20〜30質量%であり、22〜30質量%とされることが好ましく、22〜29質量%とされることがより好ましい。
【0021】
本実施形態の封着用ガラス組成物においてCaOは、CaO−MgO−SiO
2系の高膨張結晶の生成に必須の成分である。
本実施形態においてCaOの含有量に上記のような範囲が定められているのは、CaOの含有量が10質量%未満では封着焼成後の結晶化度が十分向上されずに結晶相に対するガラス相の残存割合が大きくなって固体酸化物型燃料電池の封着に適した耐熱性が付与されないおそれを有するためである。
一方で、上限値が24質量%に定められているのは、24質量%を超えると、融解温度が980℃以下の結晶を析出しやすくなり、焼成後の焼成体に十分な強度が発揮されないおそれを有するだけでなく、酸化物電極と反応しやすくなるおそれを有するためである。
従って、CaOの含有量の下限値は、通常、10質量%とされ、13質量%とされることが好ましい。
また、上限値については、通常、24質量%とされ、16質量%とされることが好ましく、15質量%とされることが特に好ましい。
すなわち、本実施形態におけるCaOの含有量は、通常、10〜24質量%であり、10〜16質量%とされることが好ましく、10〜15質量%とされることが特に好ましい。
【0022】
なお、上記MgOとCaOとは、上記のような含有量であることのみならず、これらの含有量の合計が40質量%以上54質量%以下であることが重要である。
このMgOの含有量とCaOの含有量との合計量が、上記のような範囲であることが重要であるのは、これらの合計量が40質量%未満では、封着焼成後の焼成体におけるガラスの結晶化度が十分なものにならず、結晶相に対するガラス相の残存割合が高くなるおそれを有するためである。
即ち、MgOの含有量とCaOの含有量との合計量が40質量%未満では、ガラス相の残存割合が高くなる結果、焼成後の焼成体に十分な強度が発揮されないおそれを有し、酸化物電極と反応しやすくなるおそれを有するためである。
一方、MgO含有量とCaO含有量の合計が54質量%を超えると、SiO
2やB
2O
3などのガラス網目形成成分が不足し、ガラス原体の製造時における安定性を低下させるおそれを有する。
従って、MgO含有量とCaO含有量の合計は、通常、40質量%以上とされ、42質量%以上とされることが好ましい。
また、上限値については、通常、54質量%とされ、50質量%とされることが好ましく、48質量%とされることが特に好ましい。
すなわち、MgO含有量とCaO含有量の合計は、通常、40〜54質量%とされ、好ましくは40〜50質量%であり、42〜50質量%とされることが特に好ましく、42〜48質量%とされることが最も好ましい。
【0023】
なお、本実施形態に係る封着材に含有させるガラス粉末は、全てのガラス粉末において酸化物換算での組成比が一致している必要は無く、成分割合の異なるガラス粉末が複数ブレンドされていてもよい。
なお、その場合、全体的な成分割合として上記組成比に合致するのであれば、一部のガラス粉末を上記組成比以外のガラス組成物で形成されたものとすることも可能である。
【0024】
さらには、本実施形態においては、封着用ガラス組成物におけるSiO
2、Al
2O
3、B
2O
3、MgO、CaOの各含有量の間に上記のような関係が満たされていれば、得られるガラス原体や結晶化ガラスの物性に対して大きな影響を与えない中性成分を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において加えることができ、このような中性成分を含有するような場合も本発明が意図する範囲のものである。
【0025】
このような成分としては、SrO、ZnO、ZrO
2、La
2O
5、TiO
2、BaO、CeO
2、Y
2O
3等が挙げられる。
これらの成分は、その総合計量が3質量%以下であれば、通常、ガラス組成物の成分として含有させても、封着のための焼成時や、焼成後の結晶化ガラスに対して著しい悪影響を与えない。
一方で、P
2O
5などはガラス原体を作製する場合にガラス状態を安定化させやすくなる反面、焼成後の結晶化ガラスに分相を生じさせるとともに耐酸性を著しく低下させるために実質上含有させないことが好ましい。
さらに、第5族から第11族にあたる遷移金属元素成分、中でもCu成分は高温域においてガラスの電気伝導度を向上させる傾向を示すことから絶縁性が求められる固体酸化物型燃料電池の封着材としては不向きな成分であり、実質的に含有させないことが好ましい。
また、NaやKなどのアルカリ金属成分も高温域において電気伝導度を向上させる傾向を示すことから、実質的に含有させないことが好ましい。
【0026】
ここで、「実質的に含有させない」との表現については、本明細書においては、不純物レベルで含有されるような場合までをも否定する意図ではなく、例えば、ガラス原体を作製する原材料などに不純物として含まれているレベルであればその含有が許容され得ることを意図するものである。
より具体的には、上記のような成分は、その合計量が酸化物換算で1000ppm以下であれば含有されても問題になるおそれは低く、実質的に含有されていない場合に相当する。
ただし、上記のような問題を発生させるおそれをより確実に防止する意味においては、酸化物換算で、少なくとも、Cu成分が100ppm未満の含有量とされることが好ましく、第5族から第11族にあたる遷移金属元素成分の合計が100ppm以下の含有量とされることがより好ましく、前記合計が30ppm以下の含有量とされることが特に好ましい。
【0027】
また、本発明においては、上記のような成分によって構成されるガラス組成物は、その結晶化ピーク温度(Tx)と軟化点(Ts)の差(Tx−Ts)が90℃以上となるように調整することが好ましい。
結晶化ピーク温度と軟化点の差(Tx−Ts)が90℃以上であることが好ましいのは、この差が90℃未満では焼成時における流動性が不足して、緻密な焼成体が得られないおそれを有するとともに、金属およびセラミックスなどの封着対象物と焼成体との間に隙間が生じるおそれを有するためである。
このようなおそれをより確実に防止するためには、上記差(Tx−Ts)は、95℃以上であることが好ましい。
なお、この差(Tx−Ts)の値に関して、その上限値は特に限定されるものではないが、通常、140℃とされる。
なお、結晶化ピーク温度(Tx)は、例えば、40mg程度の試料に対して20℃/min程度の昇温速度で示差熱分析(DTA)を行なって、軟化点(Ts)よりも高温側でかつ最初に見られる発熱ピークのピーク温度を測定することで求めることができる。
【0028】
次に、ガラス粉末ならびに該ガラス粉末を含有する封着材について説明する。
上記に示したような封着用ガラス組成物によってガラス粉末を形成させるには、原料である金属酸化物を調合、混合し溶融(例えば、1400〜1550℃で)した後、冷却して得られるガラス原体(結晶化していない)を乾式粉砕して製造すればよい。
【0029】
また、本実施形態においては、ガラス粉末が、焼成時に一旦収縮し、軟化流動しながら金属、セラミックスの表面を濡らすことが求められるため、焼成時の流動性が高いことが求められる。
このためには、上記乾式粉砕の条件により粒径を調整し、平均粒径を7〜40μmとすることが好ましく、平均粒径を7〜10μmとすることがより好ましく、最大粒径を250μm以下とすることが好ましい。
例えば、平均粒径が40μmを超えると、封着焼成後の結晶化度が高まらず、結晶相に対するガラス相の残存割合が大きくなるため、耐熱性が低下し、好ましくない。
また、平均粒径が7μm未満では、微粉の割合が多くなり、金属およびセラミックスの表面を濡らす流動性が低下するため、好ましくない。
また、平均粒径が7μm未満では、焼成時における粉末表面からの結晶化が早くなって、結晶化ピーク温度(Tx)を低下させやすくなり、結果として、結晶化ピーク温度と軟化点の差(Tx−Ts)が低下しやすくなることからも好ましいものではない。
さらに、平均粒径が7μm未満では、焼成時に粉末どうしの接着および封着が阻害され、焼成体内部に気泡が生じるおそれを有する点においても好ましくない。
このようなガラス粉末を得る方法としては、湿式粉砕では、水や有機溶剤などを使用して粉砕中のガラス粉末どうしが付着することを抑制させて粉砕効率を高めているため、乾式粉砕に比べると微粉の割合が多くなりやすいため好ましくない。
また、湿式粉砕ではメカノケミカル反応により、ガラス粉末表面が水や有機溶剤などと反応し、焼成時において結晶化開始が早くなることで流動性の低下や焼成体内部の気泡の原因となるため好ましくない。
即ち、このようなガラス粉末を得る方法としては、乾式粉砕を採用することが好ましい。
【0030】
ここで、粒子径が過度に小さい微粉では結晶化開始が早くなり、封着焼成時における組成物の流れ性が低下して流動が阻害されるため、封止材の塗布・焼成回数を増加させる必要が生じて製造コストの増加につながり、好ましくない。
一方、粒子径が過度に大きい粗粉は、粉末をペースト化する際、あるいは塗布、乾燥の際に、粉末粒子が沈降し分離するという問題と、結晶化が不均一、不十分となりやすく強度が低下するという問題がある。
上述のようなことから、微粉、粗粉を分級等の操作により取り除くことによって粒径を調整することが好ましい。
すなわち、平均粒径を、7μm以上であり、且つ、該平均粒径が、40μm以下、好ましくは、10μm以下となるように調整しつつ最大粒径が、250μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下となるように分級操作を行うことが好ましい。
【0031】
このガラス粉末は先にも述べたように、単独で、又は、セラミックス粉末(セラミックスフィラー)とともに封着材を構成させることができる。
このセラミックス粉末を含有させることで熱膨張係数の微調整や焼成後のガラスの強度向上を図ることができる。
ただし、このセラミックス粉末は、焼成時における流れ性に大きく影響を与えない程度の含有量で封着材に含有させることが好ましい。
すなわち、ガラス粉末とセラミックス粉末との合計量を100質量%とする場合、前記セラミックス粉末含有量は0.01質量%未満では効果が期待できないおそれを有し、5質量%を超えると流れ性を阻害させるおそれを有する。
このことを考慮すると、ガラス粉末とセラミックス粉末との合計量に占めるセラミックス粉末の含有量は0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.03〜5質量%とすることがより好ましい。さらには、0.03〜1質量%とすることが特に好ましい。
【0032】
上記セラミックスフィラーとしては、石英、アルミナ、ジルコニア、マグネシアなどの粉末が挙げられるが、これらに限定されない。
セラミックスフィラーの平均粒径は、好ましくは20μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、かつ最大粒径は、好ましくは106μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは22μm以下である。
【0033】
なお、本実施形態に係る封着材は、上記ガラス粉末とセラミックス粉末(セラミックスフィラー)とをバインダーに分散させたペーストや溶媒に分散させたスラリーなどの形態で固体電解質型燃料電池のセルとこれを取り付けるSUSなどの金属製の部材との間の封着に用いられ得る。
特に、本実施形態に係る封着材は、上記に述べたようなガラス組成物で構成されたガラス粉末が用いられているために焼成後の焼成体の熱膨張係数がこれらの封着に好適な状態となる。
具体的には、焼成後の結晶化ガラスの50〜550℃における熱膨張係数が95〜120×10
−7/℃とすることができる。
また、上記に述べたようなガラス組成物で構成されたガラス粉末が用いられているために焼成後の熱膨張係数が固体電解質型燃料電池に適した状態になるばかりでなく酸化物電極材料やインターコネクタ用の構成材料としてLSCF(La
0.8Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3、等)、LSC(La
0.6Sr
0.4Co
1.0O
3、等)、LSM(La
0.6Sr
0.4MnO
3)などのペロブスカイト系酸化物が使用された場合であっても焼成時にこれらとの反応が生じることが抑制される。
なお、焼成時に上記ペロブスカイト系酸化物とガラスとが反応すると、ペロブスカイト系酸化物の電気伝導性が低下するだけでなく、焼成後のガラス焼成体の絶縁性が低下するおそれを有する。
また、第5族から第11族にあたる遷移金属元素又は、アルカリ金属をガラス組成物に実質的に含有させないことによって固体酸化物型燃料電池の封着材に優れた絶縁性を付与させうる。
【0034】
このような封着材を使用するにあたっては、従来の封着材と同様に使用することができ、例えば、印刷により又はディスペンサーによって対象物に塗布した後、850〜1100℃で焼成することが可能である。
また、成型助剤と混合後、乾式プレス成型を行い、ガラスの軟化点付近の温度で仮焼成を行った成型体を前記ペーストと組み合わせて用いることもできる。
【0035】
このような使用時において、本発明の封着用ガラス組成物は上記のように酸化物電極材料やインターコネクタ用材料等との反応性が抑制されているために、反応を抑制させるためのバッファ層を設けることなく、インターコネクタ材や電極材に封着材を直接塗布して焼成することができ、工程の簡略化が図られ得る。
【0036】
なお、ここでは詳述はしないが、封着材に含有させるガラス粉末やその他の材料などに関する技術事項については、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において、従来公知の技術事項を本発明においても採用することができるものであり、本発明は上記例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
〔ガラス原体及びガラス粉末の製造〕
実施例1〜9及び比較例1〜7
表1〜2に示すガラス組成となるように原料を調合、混合し、調合原料を白金るつぼに入れて1400〜1550℃で2時間溶融後、ガラス原体であるガラスフレークを得た。
ポットミルにこのガラスフレークを入れ、平均粒径が7〜40μmになるよう調整しつつ粉砕し、その後、目開きが106μmの篩にて粗粒を除去し、実施例、及び、比較例のガラス粉末(封着材)とした。
なお、実施例5については、ガラス粉末に石英粉末(平均粒径1.3μm)を添加し、混合物を封着材として評価した。
【0039】
〔試験方法〕
実施例及び比較例の封着材(ガラス粉末)については、下記の方法により「平均粒径」、「軟化点」、「結晶化ピーク温度」を測定し、焼成後の焼成体の「熱膨張係数」、「LSCF耐性」を下記の方法により評価した。
【0040】
(1)ガラス粉末の平均粒径
レーザー散乱式粒度分布計(日機装社製マイクロトラックHRA)を用いて、体積分布モードのD
50の値を求めた。
【0041】
(2)軟化点、結晶化ピーク温度
封着材(実施例5においてはガラス粉末とセラミックス粉末との混合品、それ以外はガラス粉末)約40mgを白金セルに充填し、DTA測定装置(リガク社製Thermo Plus TG8120)を用いて、室温から20℃/分で昇温させて軟化点(Ts)、結晶化ピーク温度(Tx)を測定した。
なお、(Tx−Ts)が90℃未満のものは、焼成時の流動性に関して問題を生じさせるおそれを有するため、測定値の横に「×」を併記した。
【0042】
(3)熱膨張係数
得られた粉末を乾式プレスで成型後、1100℃で焼成を行なった。
得られた焼成体を約5×5×15mmに切り出し、試験体を作製した。
試験体につき、TMA測定装置(リガク社製Thermo Plus TMA8310)を用いて、室温から10℃/分で昇温したときに得られる熱膨張曲線から、50℃と550℃の2点に基づく熱膨張係数(α)を求めた。
なお、熱膨張係数が95×10
−7/℃未満のものは、金属、セラミックス等とのマッチング性に問題があるため、測定値の横に「×」(不適合)を併記した。
【0043】
(4)LSCF耐性
上記(3)で得られた焼成体の上部にLSCF粉末を混合したペーストを塗布し、1100℃で焼成した。
焼成体を切断し、LSCFと焼成体界面および焼成体表面を観察し、化学反応を起こしているか調べた。LSCFとの反応が実質的にないものを「◎」(特に良好)、LSCFの焼成体内部への浸食が1mm未満のものを「○」(適合)、焼成体内部への侵食が1mm以上または、LSCFおよび焼成体に変色が見られるものを「×」(不適合)とした。
結果を表1〜2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
これらの表に見られるように、実施例の封着材は熱膨張係数、及び、LSCF耐性の何れの項目も満足している。
一方、比較例の封着材は、何れかの項目で不適合になっている。
なお、実施例6においては、1100℃で焼成を行なったところ焼成体の内部に気泡が存在していた。
この気泡を含有している焼成体の熱膨張係数を測定したところ、同一組成の実施例4に比べて低い値が観察された。
これは、気泡の存在によって見かけ上の熱膨張係数が実際の熱膨張係数よりも低く観察されたためであると考えられる。
なお、他の実施例、比較例の封着材(「ガラス粉末」、「ガラス粉末とセラミックス粉末との混合物(実施例5)」)においては、このような気泡の存在は認められなかった。
すなわち、このことからも良好なる焼成体を得る上で平均粒径を7μm以上とすることが重要であることがわかる。