(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の考察および図面を参照して、本開示のシステムおよび方法に対する例示的な取組みが以下に詳細に示される。図面はいくつかの可能な取組みを表すが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、本開示をより良く例示し説明するため、特定の特徴が誇張、除去、または部分的に断面で示されることがある。さらに、本明細書に記載される説明は、包括的であるか、または別の形で請求項を、図面に示され以下の詳細な説明で開示される正確な形態および構成に限定することを意図しない。
【0007】
本明細書には、脊椎および脳組織の除去などの神経外科用途に適している組織切断デバイスが記載される。デバイスは、往復運動する内側カニューレと外側カニューレとの間の環状スペースの一端部にある半固形シールを有して構成される。その結果、本開示の組織切断デバイスは、環状スペース内の空気の人工産物及び流体の流れの発生を避け、それによって、多くの周知のデバイスでわかったものに比べて比較的高い内側カニューレの往復運動率の使用を促進する。特定の実施形態では、組織切断デバイスは、ユーザーによって選択された位置において内側カニューレを静止させるのに使用されることができる内側カニューレ停止一制御が提供される。特に、ユーザーは、外側カニューレの収容開口内の位置に停止位置を設定することができ、吸引棒としてデバイスを使用することができる。他の特定の実施形態では、選択的に湾曲可能な内側カニューレが、直線の通路に沿ってアクセスされることができない標的組織の切除を容易にするために、湾曲した外側カニューレと共に使用するために提供される。
【0008】
図1を参照すると、組織切断デバイス40はハンドピース42および外側カニューレ44を含む。1つの例示的形態では、ハンドピース42は全体的に円筒形状であり、好ましくは片手で把持されるようにサイズおよび形状が決められる。ハンドピース42は、近位区画46および遠位区画48を備える下部ハウジング50を含む。下部ハウジング50は、モータハウジング71に接続される最近位ハウジング部分82(
図2および3)と、モータハウジング71に接続されるカムハウジング69とを備える。前部ハウジング区画51はカムハウジング69に接続される。上部ハウジング52も設けられる。組織回収器58は(より詳細に後述されるように)上部ハウジング52に動作可能に接続されてもよい。
ハンドピース42に対して外側カニューレ44を回転させる回転ダイヤル60も、上部ハウジング52に装着される。
【0009】
図2、3、および20で最も良く分かるように、外側カニューレ44は、開いた近位端45、閉じた遠位端47、および遠位端47に近接した遠位開口部49を含む。組織切断デバイス40はさらに、外側カニューレ内腔110内に部分的に配置される内側カニューレ76を備える。内側カニューレ76は、より詳細に後述されるように、外側カニューレ内腔110内で往復運動し、外側カニューレ遠位開口部49を通して外側カニューレ44に入る組織サンプルを切断するように構成される。内側カニューレ76は、
図2に示される近位位置と
図3に示される遠位位置との間で往復運動する。内側カニューレ76は開いた近位端77および開いた遠位端79を含む。遠位端79は、好ましくは組織を切断するように構成され、好ましい実施形態では、脳または脊椎由来などの神経系組織を切断することができる。1つの例示的実施形態では、内側カニューレ遠位端79は、尖った円形の先端を作り、組織切断を容易にするように、半径方向内側へと斜角が付けられる。
外側カニューレ44は並進不能であり、ハンドピース42の長手方向軸線の方向に沿ったハンドピース42に対するその位置は固定のままである。モータ62は、ハンドピース42の近位側下部ハウジング区画46に配置され、外側カニューレ内腔110内での内側カニューレ76の往復運動を駆動するように、内側カニューレ76に動作可能に接続される。モータ62は往復または回転モータであってもよい。それに加えて、電動式または油圧式であってもよい。しかし、
図2および3の実施形態では、モータ62は回転モータであり、その回転によって内側カニューレ76が外側カニューレ内腔110内で往復運動する。
【0010】
モータ62は、下部ハウジング近位区画46の一部分を画定するモータハウジング71に収容される。モータ62は、モータ62の回転運動を内側のカニューレ76の並進運動に変換するために使用される内側カニューレ駆動アセンブリ63に接続される。モータハウジング71は、その近位端では、電力ケーブルポート84と
図3の例示的実施形態ではアイレットであるホースコネクタ43とを含む、最近位ハウジング部分82に接続される。ホースコネクタ43は、真空システムのホースをハンドピース42に対してしっかり保定し、それによって組織回収器58に真空を供給できるようにする手段となる。
【0011】
内側カニューレドライバアセンブリ63(図中では独立して示されない)は、カム64、カム従動子68、カム移送機構(cam transfer)72、およびカニューレ移送機構74を備える。カム64は全体的に円筒状構造であり、
図16Aおよび16Bに詳細に示される。溝またはチャネル65がカム64の表面に画定される。1つの例示的実施形態では、溝65は連続的であり、カム64の周囲に外接するが、カム64の長手方向軸線に垂直には向き付けられず、すなわち溝65はカム軸線に対して角度を付けられる。地点65aおよび65bなど、溝65上の対向する地点は、カムの長手方向軸線に沿って離隔した「頂点」の対を規定し、すなわち溝はカムの長さの一部分に沿って延在する。カム64はまた、モータ軸を受け入れる近位開口部114(
図16a)と、軸体がぴったり受け入れられてもよい近位陥凹部116とを含む。後述するように、位置センサと協働してカム64の角位置を、かつそれに対応して外側カニューレ内腔110内での内側カニューレ76の直線位置を決定するカム位置インジケータを装着するため、穴118および120が設けられる。
【0012】
カム従動子68は
図17Bに詳細に示される。カム従動子68は、中空内部にカム64が部分的に配置される、ほぼ矩形のブロック状構造である。カム従動子68はまた、その上面に、玉軸受(図示なし)が定置される穴70を含む。玉軸受はカム溝65に乗り、カム移送機構72を係合する。その結果、カム64が回転すると、カム従動子68はハンドピース42の長さに沿って並進する。カム従動子68はまた、カム移送機構72が提供する対応する部材178a、178bを協働可能に係合する側面スロット182aおよび182bを含む。
カム従動子68は、カムハウジング69に形成されたカムチャンバ67内に配置される。カム64は、カムチャンバ67に部分的に配置され、そこから近位側に延在してモータ62を係合する。カムハウジング69はハンドピース42の遠位部分48の一部を含む。カム64は、カムチャンバ67内では往復運動せず、その代わりにそれ自体の長手方向軸線を中心にして単に回転する。しかし、カム従動子68は、ハンドピース42の長さ方向に沿ってカムチャンバ67内で往復運動する。カム従動子68はその近位端では開いていて、カム64を受け入れる。
図15および16Aに示されるように、カム64は、カム従動子68の遠位開口部191(
図17b)を介して突出し、ナット190(
図15)を係合してカム64がカムハウジング69に対して往復運動するのを防ぐ、ねじ切りされた遠位端123を任意に含んでもよい。カム64がカムハウジング69内で回転する際にそれを支持するため、近位カム軸受186および遠位カム軸受188(
図15)も提供されてもよい。
【0013】
カム移送機構72は、カムチャンバ67から上部ハウジング52に形成されたカム移送チャンバ73内まで延在する。
図17aで最も良く分かるように、カム移送機構72は、カム従動子68に取付け可能な近位端72aと、カニューレ移送機構74を通して内側カニューレ76に取付け可能な遠位端72bとを備える。近位端72aは、離隔し下向きに延在する一対の部材178aおよび178bを備え、遠位端72bは、離隔し上向きに延在する一対の部材180aおよび180bを備える。下向きに延在する部材178aおよび178bは、カム64の長さ、及び、ハンドピース42に垂直な方向で離隔し、上向きに延在する部材180aおよび180bは、カム64およびハンドピース42の長さに平行な方向で離隔する。カム従動子スロット182aおよび182bは、カム移送機構72の下向きに延在する部材178aおよび178bを係合する。カム移送機構72の下向きに延在する部材178aおよび178bは、弾性であってもよく、その自由端に、カム従動子68の底面および側面をしっかり係合するための係合部分179aおよび179b(例えば、フックまたはクリップ)を有してもよい。
【0014】
図20で最も良く分かるように、カニューレ移送機構74は内側カニューレ76の周りに配置されたスリーブを備える。カニューレ移送機構74は、近位端128、中間区画127、および遠位端126を備える。カム移送機構72の上向きに延在する部材180aおよび180bは、カニューレ移送機構74の中間区画127を受け入れ支える又状構造を規定する。カニューレ移送機構74の遠位端126および近位端128は、上向きに延在する部材180aおよび180bの外側に配置され、カム移送機構72とカニューレ移送機構74との相対的並進を防ぐように形作られる。図示される実施形態では、カニューレ移送機構74の遠位端126および近位端128は、上向きに延在する又状部材182aおよび182bに当接し、それによってカム移送機構72とカニューレ移送機構74との相対的並進を防ぐように、中間区画127に対して拡大される。その結果、カム移送機構72がハンドピース42の長さに沿って往復運動すると、カニューレ移送機構74も往復運動する。カニューレ移送機構74は内側カニューレ76に固着されるので、それが往復運動すると、内側カニューレ76が外側カニューレ44内で往復運動する。
【0015】
1つの例示的な配置では、モータ62はブラシ付DCモータであり、多数のやり方でカム64に動作可能に接続されてもよい。
図2および3の実施形態では、モータ62は、近位開口部114内まで延在し、カム64に画定された陥凹部116を係合する、遠位側に延在する軸体66を含む。軸体66は、ねじ切りされた接続部、接着剤、または他の既知の接続手段によってカム64に接続されてもよい。
図15に示される代替実施例では、別個のカム連結具184が提供される。カム連結具184は近位開口部114に定置され、開口部114の直径よりも大きい幅を有する。カム連結具184はまた、軸体66の回転によってカム連結具184が回転し、それによってカム64がともに回転するようにしてモータ軸66に接続される。モータ軸66が1回転することによってカム64が1回転分回転し、それによって内側カニューレ76が1工程分、すなわち
図2の位置から
図3の位置へ、また
図2の位置へと往復運動する。
【0016】
カム移送機構72は、機械的手段、接着手段、または他の既知の接続手段によってカム従動子68に接続されてもよい。1つの例示的実施形態では、下向きに延在する部材178aおよび178bは、カム従動子68に機械的にクリップ留めされ、取外し可能に係合する。別の実施形態では、カム移送機構72はカム従動子68に接着によって固着される。さらに別の実施形態では、機械的接続および接着接続の両方が使用される。カム従動子の穴70に配置された玉軸受(図示なし)は、カム64が回転するにつれてカム溝65を横切って、カム従動子72を
図2の近位位置から
図3の遠位位置へと往復運動させる。その結果、モータ62およびカム64が回転すると、カム移送機構72、カニューレ移送機構74、および内側カニューレ76はそれぞれ、
図2の近位位置と
図3の遠位位置との間で並進する。
【0017】
モータ62は、好ましくは、少なくとも約1,000往復/分の速度で、内側カニューレ76を
図2の位置から
図3の位置へ、また
図2の位置へと往復運動させることができる回転速度を有するように選択される。少なくとも約1,200往復/分の往復速度がより好ましく、少なくとも約1,500往復/分の往復速度がより一層好ましい。約2,500往復/分未満の往復速度が好ましい。約2,000未満の往復速度がより好ましく、約1,800往復/分未満の往復速度がより一層好ましい。
図14で最も良く分かるように、デバイス40の往復速度によって、組織を、多くの従来のデバイスによって得られる「塊状の(slug)」組織サンプルよりも比較的小さい「断片」112状に切り取ることが可能になる。往復運動が継続するにつれて、一連の切り取られた組織断片112が得られる。
【0018】
上述したように、外側カニューレ44は、組織を外側カニューレ内腔110に受け入れるための開口部49を含む。
図8〜12で最も良く分かるように、開口部49は、好ましくは、組織を切り取るように構成された刃先51と、組織を切り取るようには構成されていない非刃先(non-cutting edge)53とによって画定される。特定の例示的実施例では、
刃先51は、外側カニューレ44の外径の約50%以下の半径方向奥行き「d」を有する。1つの例示的実施例では、刃先51は半径方向内側へと斜角が付けられ、非刃先53には斜角が付けられず、刃先51は非刃先53のすぐ遠位側に位置する。内側カニューレ遠位端79は、好ましくは組織を切断するように構成される。1つの例示的実施形態では、遠位端79は、鋭い先端を提供するため、内側カニューレ76の円周の周りで半径方向内側へと斜角が付けられる。組織が外側カニューレ開口部49に受け入れられると、内側カニューレ遠位端79と外側カニューレ刃先51との間で圧縮されて、受け入れられた組織が周囲組織から切り取られる。
【0019】
組織切断デバイス40は、脊髄組織および脳組織などの強靭な組織を切断する際に使用するのに特に良く適している。外側カニューレ44および内側カニューレ76は、硬質プラスチックまたは金属など、全体的に剛性の材料を含む。1つの好ましい実施例では、両方のカニューレはステンレス鋼を含み、より好ましくは医療等級の機器に一般的に使用される304SSを含む。
【0020】
図9〜14で最も良く分かるように、強靭な組織の切断を容易にするため、内側カニューレ76はヒンジ80を含む。ヒンジ80は、ヒンジ80の近位側に位置する内側カニューレ本体区画81と、ヒンジ80の遠位側に位置する内側カニューレ切断区画83との間に位置する。1つの例示的な配置では、ヒンジ80は一体ヒンジ(living hinge)である。本明細書で使用するとき、「一体ヒンジ」という用語は、2つの比較的剛性が高い部品を互いに接合する薄く可撓性があるヒンジを指す。一例では、ヒンジ80は、内側カニューレ76の円周の一部分を長さL(
図11)に沿って除去することによって、内側カニューレ本体区画81および内側カニューレ区画83と一体的に形成される一体ヒンジである。ヒンジ80によって、内側カニューレ76が外側カニューレ44内で往復運動するにつれて、切断区画83がヒンジ80を中心にして枢動することが可能になる。内側カニューレ76は、遠位方向に並進すると、外側カニューレ開口部49に受け入れられた組織に接触し、組織が遠位方向に押しやられるにつれて、組織から漸進的に増加する抵抗を受ける。組織の抵抗力が増加するにつれて、内側カニューレ遠位端79と外側カニューレ開口部49との間で環状間隙がゼロになるまで、切断区画83がさらに漸進的に枢動する。受け入れられた組織は切り取られ、内側カニューレ内腔110に沿って近位方向に吸引され、組織回収器58に受け入れられる。したがって、内側カニューレ内腔110は内側カニューレ遠位端79から内側カニューレ近位端77までの吸引経路を提供する。ヒンジ80によって、
切断区画83において内側カニューレ遠位端79と外側カニューレ開口部49との間の環状間隙がほぼゼロになり、一方で内側カニューレ本体区画81と外側カニューレ44との間の環状間隙には影響を及ぼさないことが可能になる。この構成により、組織の切断が最大限になるとともに、別の方法であれば、外側カニューレ44と内側カニューレ76との間に存在する環状間隙が非常に小さい場合に内側カニューレ本体区画81の外表面と外側カニューレ44の内表面との摩擦係合によって生じるであろう、摩擦損失が最小限に抑えられる。
【0021】
外側カニューレ開口部49は多数の形状を有してもよい。特定の例では、外側カニューレ開口部49を平面で見たとき、ほぼ正方形、長方形、台形、楕円形、または「D」字型の形状を有する。特定の他の例示的実施例では、外側カニューレ開口部49は、内側カニューレ76が遠位方向に並進するにつれて圧縮されてもよいように組織を方向付けるように構成される。
図10および12に示される1つの例示的実施形態では、外側カニューレ開口部49は、外側カニューレ開口部49を平面で見たときにほぼ三角形の形状を有する。
図10および12が示すように、平面で見たとき、外側カニューレの長手方向軸線に垂直な方向での開口部49の幅は、外側カニューレ44の長さに沿って長手方向で変動し、好ましくは、開口部49の近位部分から遠位部分へと狭まる。側面図で見たとき、刃先51は、刃先51に沿って遠位側に移動する半径方向外側へと傾斜している。その結果、組織サンプルが、内側カニューレ76の動作によって外側カニューレ開口部49内で遠位側に押しやられるにつれて、組織は内側カニューレ76の円周の方向で(または平面で見たときの開口部49の「幅」の方向で)次第に圧縮される。完全な切断を確保するため、内側カニューレ遠位端79は、好ましくは、組織切断動作中は外側カニューレ開口部49の遠位側の位置へと移動し、すなわち内側カニューレのオーバーストロークがある。
【0022】
上述したように、組織切断デバイス40は、内側カニューレ内腔78に受け入れられた組織サンプルを吸引して、組織サンプルを内側カニューレ76の長さに沿って近位方向に移動させる。特定の使用方法では、デバイス40は、さらなる分析用に組織サンプルを回収することなく組織を切除するのに使用される。そのような実施形態では、組織回収器を設ける必要はない。組織の回収が望ましい他の実施形態では、デバイス40は、好ましくは、組織切断処置の間、吸引された組織サンプルが蓄積される組織回収器58を含む。組織回収器58は、
図21Aに示されるように、組織切断動作の間、ハンドピース42から離れて、かつ滅菌野の外に位置してもよい。しかし、代替実施形態では、
図1〜7の例で最も良く分かるように、組織回収器58はハンドピース40に取外し可能に接続される。どちらの実施形態でも、吸引された流体によって真空発生装置が汚染または損傷しないように保護するため、流体回収キャニスター192が、好ましくは組織回収器58と真空源(
図21Aの真空発生器153など)との間に位置する。組織回収器を含まない実施形態では、流体回収キャニスター192は、吸引された流体および組織両方を回収するために提供されてもよい。
【0023】
図4〜7を参照すると、組織回収器58は、吸引された組織サンプルを受け入れるため、内側カニューレ76の近位側で上部ハウジング52に接続される。組織回収器58は、内側カニューレ内腔78および真空源(
図4〜7には図示なし)と流体連通している内部容積を備えた、ほぼ円筒状の中空体である。組織回収器58は、回収した組織サンプルを周期的に除去できるように、ハウジングコネクタ96に取外し可能に固定される。組織回収器58は、好ましくは、切り取られた組織サンプルの一貫した吸引を維持するため、ほぼ耐漏れ性の真空シールを提供するようにして上部ハウジング52に固定される。真空ホース継手59は、組織回収器58の近位端に形成され、後述するように、組織回収機58の内部および真空発生器と流体連通している。
【0024】
図4〜5の実施形態では、ハウジングコネクタ96は、上部ハウジング52から近位側に延在するほぼ円筒状のフランジである。上部ハウジング52の上部シェル54および下部シェル56は、シールホルダ94がその中に部分的に配置されるキャビティを協働して画定する。シールホルダ94は、Oリングなどのシール92が配置される遠位環状陥凹部を含む。シールホルダ94はまた、内側カニューレ76が滑動可能に配置される中央内腔を含む。シールホルダ94の近位側に突出する部分95は、上部ハウジング52から離れる方向で近位方向に突出し、ハウジングコネクタ96に受け入れられる。
図2および3で最も良く分かるように、組織切断デバイス40の動作中に内側カニューレ76が往復運動するとき、内側カニューレ近位端77は好ましくはシールホルダ94内に留まる。しかし、内側カニューレ76が往復運動するにつれて、近位端77はシールホルダ94内で移動する。シール92は、好ましくはエラストマー材料などの弾性材料を含む。シール92および内側カニューレ76の封止係合は、空気または流体が内側カニューレ76と上部ハウジング52との間で漏れるのを防ぎ、内側カニューレ内腔78によるサンプルの一貫した吸引を維持する助けとなる。
【0025】
ハウジングコネクタ96は、組織回収器58の対応する接続機構102および104と係合するように構成された接続機構98および100を含む。
図4および5の実施形態では、接続機構98および100はハウジングコネクタ96に形成された「J」字型のスロットであり、接続機構102および104は、接続機構98および100をそれぞれ係合する、組織回収器58に形成された補完的な突起である。組織回収器58をハウジングコネクタ96に接続するためには、突起102および104がスロット98および100と位置合わせされ、次に組織回収器58が遠位方向でハウジングコネクタ96に挿入される。次に、組織回収器58が回転されて、突起102および104がスロット98および100と完全に係合する。シール103が組織回収器58の円周の周りに設けられて、ハウジングコネクタ96の内表面を封止可能に係合する。
【0026】
組織回収器58の代替実施形態が
図6および7に示される。
図6および7の実施形態では、組織回収器58は断面が半楕円形であり、
図4および5の実施形態と同様に、サンプルを受け入れる中空内部を含む。
図6および7の実施形態では、円筒状のフランジハウジングコネクタ96は提供されない。その代わり、上部ハウジング52には、組織回収器58上に形成された補完的なクリップ106を係合する係合陥凹部108が形成される。上述の実施形態それぞれにおいて、組織回収器58は、固体の組織サンプルを回収するとともに、液体およびガス(例えば、空気)は通過させるフィルタ(図示なし)を内部に備えてもよい。例示的なフィルタとしては、組織断片112よりも小さいメッシュサイズを備えた医療等級のメッシュフィルタが挙げられる。
【0027】
図4〜7の実施形態では、組織回収器58は、好ましくは、ハンドピース42、モータ62、及び、カム64の長手方向軸線と同一直線上にない長手方向軸線を有する。「インライン」フィルタ構成とするため、組織回収器58の長手方向軸線は、好ましくは内側カニューレ76の長手方向軸線と実質的に共軸である。組織回収器58および内側カニューレ76は両方とも、ハンドピース42、モータ62、およびカム64の長手方向軸線から離隔し、かつそれらとほぼ平行である。したがって、切断軸(すなわち、外側カニューレの長手方向軸線)および内側カニューレ内腔78を通るサンプル吸引経路軸は、ハンドピース42の長手方向軸線と共軸ではない。その結果、デバイス40が組織を切断するのに使用されるとき、切断軸を見る外科医の視線は自身の手によって妨げられない。さらに、外科医は、フィルタの近位端を「照準器」として扱い、それを切断すべき組織サンプルと位置合わせし、それによって外側カニューレ44を組織サンプルと位置合わせして、従来のデバイスよりも、特に従来の神経外科デバイスよりも向上した人間工学的利益をもたらすことができる。
図21Aおよび21Bに示されるような遠隔組織回収器58を備えたデバイスの場合、ユーザは、上部ハウジング52の近位端を照準器として扱い、それを標的組織と位置合わせすることができる。
【0028】
デバイス40が組織を切断するのに使用されるとき、外側カニューレ開口部49は、対象の標的組織を切断のために受け入れるため、それと位置合わせされなければならない。デバイス40全体をハンドピース42の長手方向軸線を中心にして回転させて、外側カニューレ開口部49を所望の位置に置くことができる。しかし、この技術は厄介な場合があり、外科医の手際の良さを低減させることがある。したがって、例示的実施形態では、デバイス40は選択的に回転可能な外側カニューレ44を含む。
図18〜20で最も良く分かるように、回転ダイヤル60が設けられ、上部ハウジング52の上部シェル54および下部シェル56によって画定されるキャビティ内に回転可能に定置される。回転ダイヤル60は、回転されると、ハンドピース42に関して外側カニューレ44をその長手方向軸線を中心にして回転させるように構成される。回転ダイヤル60は、好ましくは、外側カニューレコネクタ部分88に接続される。
図18〜20の実施形態では、外側カニューレコネクタ部分88は、回転ダイヤル60と一体的に形成され、かつ接着剤または他の既知の接続手段などによって外側カニューレ44に固着して固定されたスリーブである。
図20の例示的実施形態では、回転ダイヤル60はスリーブ88よりも大きい外径を有する。
【0029】
上述したように、内側カニューレ76は、デバイス40が動作中のとき、内側カニューレ切断区画83が外側カニューレ開口部49に向かって枢動することを可能にするヒンジ80を含む。ヒンジ80の補正動作を確保するため、ヒンジ80および外側カニューレ開口部49の円周方向の位置合わせを維持すべきである。したがって、回転ダイヤル60は、好ましくは、回転ダイヤル60が回転されると、外側カニューレ44および内側カニューレ76の両方が、回転ダイヤル60の回転量に直接対応する量だけ互いに対して固定の角度方向で回転するようにして、内側カニューレ76に接続される。回転ダイヤル60は、内側カニューレ76に直接接続されてもよく、またはあるいは介在する接続デバイスを使用してもよい。しかし、回転ダイヤル60は、内側カニューレ76が回転ダイヤル60に対して往復運動できるように構成されるべきである。
図20で最も良く分かるように、回転ダイヤル60を内側カニューレ76に接続する、回転ダイヤルの内側カニューレコネクタ86が提供されてもよい。回転ダイヤルの内側カニューレコネクタ86は、内側カニューレ76の周りに配置された近位スリーブ87と、スリーブ87よりも大きい外径を有する遠位の半径方向に延在する環状フランジ90とを備える。スリーブ87およびフランジ90は円形シリンダの形状であってもよい。あるいは、
図18〜19に示されるように、スリーブ87およびフランジ90は多角形のシリンダの形状であってもよい。スリーブ87は、カニューレ移送機構74の遠位端126で環状キャビティ130内に滑動可能に受け入れられ、環状キャビティ130の位置でカニューレ移送機構74の内表面に合わせられ、それによって、スリーブ87はカニューレ移送機構74に対して往復運動することができるとともに、回転ダイヤル60が回転されるとカニューレ移送機構74がスリーブ87とともに回転するようになる。内側カニューレ76が往復運動すると、カニューレ移送機構遠位端126はスリーブ87に対して往復運動し、それによって環状キャビティ130内に規定されたギャップ「G」(
図20)が可変に調節される。あるいは、カニューレ移送機構遠位端126は、スリーブ87に形成された環状キャビティに滑動可能に受け入れられてもよく、ダイヤル60が回転すると、カニューレ移送機構が依然としてスリーブ87とともに回転しつつ、スリーブ87に対して往復運動してもよいように、環状キャビティの内表面に合わせられてもよい。
【0030】
図20で最も良く分かるように、回転ダイヤル60は、フランジ90をぴったり合う関係で受け入れ係合するようにサイズ決めされた第1の環状キャビティ61を含む。回転ダイヤル60はフランジ90にプレス嵌めされてもよい。それに加えて、接着接続または機械的接続が使用されてもよい。回転ダイヤル60は、外側カニューレ44および内側カニューレ76両方に直接または間接的に接続されるので、カニューレは両方とも回転ダイヤル60の回転に直接対応し、それによってユーザが、外側カニューレ開口部49および内側カニューレヒンジ80の向きを、ハンドピース42に対して円周方向で調節することができる。その結果、外科医は、所望の角度方向を得るために組織切断デバイス40全体を回転させる必要がない。
【0031】
回転ダイヤル60、外側カニューレ44、および内側カニューレ76は、好ましくは360°回転するように構成される。それに加えて、ダイヤル60が所与の開始点からどの程度回転したかをユーザが信頼性高く判断できるように、触覚インジケータが好ましくは回転ダイヤル60に設けられる。触覚指示は、回転ダイヤル60の外表面上またはその中に画定される表面機構を備えてもよい。
図18〜20に示される1つの例示的実施形態では、触覚指示を提供するため、複数の隆起122が回転ダイヤル60の円周の周りに設けられる。隆起はまた、握りとして作用し、手術部位に望ましくない動きを伝達することなく、外科医がダイヤル60を回転させることを容易にする。
【0032】
上述したように、真空(準大気圧)が組織回収器58に適用されて、切り取られた組織サンプルが内側カニューレ76を介して近位方向に吸引される。組織回収器真空ホース継手59を通して内側カニューレ76に真空を適用することは、内側カニューレ76と上部ハウジング52の構成要素との間に漏れが生じた場合に、外側カニューレ44の近位端45で真空を発生させる傾向を有する。外側カニューレ近位端45での真空の発生によって、次いで、外側カニューレ44の遠位端で流体および/または組織サンプルが、外側カニューレ近位端45にあるその近位端から内側カニューレ遠位端79にあるその遠位端まで延在する内側カニューレ76と外側カニューレ44との間の環状間隙に流入する。この流体および/または組織は、環状間隙の阻害、および内側カニューレ76と外側カニューレ44との間の摩擦の増加をもたらし、結果として性能を低下させる場合がある。したがって、内側カニューレ76と外側カニューレ44との間の環状間隙へのアーチファクト、流体(水、食塩水、血液など)のフロー、および組織サンプルのフローを防ぐため、シール129が好ましくは提供される。シール129は、好ましくは内側カニューレ76と外側カニューレ44との間の環状間隙の近位端に隣接して、すなわち、外側カニューレ近位端45の近位側に隣接して配置される。
図20に示されるように、シール129は好ましくは環状であり、内側カニューレ76に外接して、内側カニューレ76の外表面から半径方向外向きに、ならびに内側カニューレ76の長さの一部分に沿って長手方向に延在する。
【0033】
図20の実施形態では、回転ダイヤル60およびスリーブ87は、シールハウジングとして作用し、第1の環状キャビティ61に直接隣接しかつその遠位側に配置された環状キャビティであるシールキャビティ131を含む。シールキャビティ131はシール129を受け入れるようにサイズ決めされる。シール129は、固体、可撓性、および/または弾性Oリングなどの従来のシールであってもよい。しかし、シール129は好ましくは無定形であり、半固体である揺変性材料を含む。さらに、シール129はシールキャビティ131全体を充填して、キャビティ131がほぼ漏れのないことを確保することが好ましい。
図20の例示的実施形態では、シールキャビティ131は、外側カニューレ44の外径よりも大きい外径を有する。さらに、シールキャビティ131の環状の厚さは、環状間隙の完全な封止を確保するため、好ましくは外側カニューレ45と内側カニューレ76との間の環状間隙よりも厚い。
【0034】
1つの例示的実施形態では、シール129は、真空条件に耐えるように調合されたグリース(いわゆる「高真空用グリース」など)である。適切な高真空用グリースとしてはハロゲン化ポリマーが挙げられる。ハロゲン化ポリマーは、好ましくは、環状エーテルまたは不飽和炭化水素ポリマー前駆物質をベースとする。1つの例示的実施形態では、パーフルオロポリエーテル(PFPE)グリースが使用される。そのようなグリースの例としては、Solvay Solexis,Inc.によって供給されるFOMBLIN(登録商標)類が挙げられる。そのようなグリースの他の例としては、DuPontによって供給されるTEFLON(登録商標)グリースなどのポリテトラフルオロエチレングリース(「PTFE」)が挙げられる。1つの適切な高真空用グリースは、PTFE増粘剤を含むPFPEグリースである、FOMBLIN(登録商標)Y VAC3グリースである。半固体シール129は、好ましくは、20℃で少なくとも約500cSt、より好ましくは少なくとも約800cSt、より一層好ましくは少なくとも約1200cStの動粘度を有する。半固体シール129は、好ましくは、20℃で約2500cSt以下、より好ましくは約2000cSt以下、より一層好ましくは約1700cSt以下の動粘度を有する。半固体シール129の使用はいくつかの利点を有する。シールが半固体であるため、内側カニューレの往復運動から伝達される振動を吸収し緩衝し、それによってデバイス40の振動全体を、特に外側カニューレ44に伝達される振動を低減する傾向がある。繊細な神経外科処置を妨害する恐れがある、外側カニューレ44に対する望ましくない振動の伝達を減少するので、そのような振動の緩衝は特に有益である。さらに、固体シールではないので、シール129は、往復運動する内側カニューレ76によって摩擦係合されたときに生じる発熱および摩耗が少なくなる。特定の実施形態では、シール129の一部分は、内側カニューレ76が往復運動する際にその外表面に付着して、内側カニューレ76の外表面におけるすべり速度条件をゼロにし、そのことによってシール129の摩擦発熱および劣化がさらに低減される。Oリングなどの従来の固体シールと比べて、半固体シール129は内側カニューレ76の往復運動に対する摩擦抵抗が少なく、そのことによって必要なモータの消費電力も減少し、トルクおよびコストがより低いモータの使用を容易にすることができ、さらにデバイス40を使い捨てにすることが容易になる。
【0035】
1つの構成では、デバイス40は真空源に接続され、可変吸引用に構成され、すなわち可変の真空レベルを内側カニューレ内腔78に供給するように構成される。
図21Aに示されるように、1つの例示的実施例では、組織切断デバイス40、組織回収器58、コントローラ132、真空発生器153、真空アクチュエータ144、制御可能なバルブ146、真空ライン151、および流体回収キャニスター192を備える組織切断システムが提供される。上述したように、
図21Aでは、組織回収器58はハンドピース42から離隔して位置し、組織切断動作の間、滅菌野の外に留まるようにハンドピース42から十分に離れて置かれてもよい。
図21Bで最も良く分かるように、組織回収器58は、
図4〜5に示される組織回収器58とほぼ同じである。真空ライン151aは、組織回収器58の遠位端を、組織切断デバイスの上部ハウジング52の近位端でシールホルダ94の近位側に突出する部分95に接続する。1つの配置では、真空ライン151aの近位端は、組織回収器連結具296と一体的に形成されたホース継手59bを含む。連結具296は、組織回収器コネクタ96(
図4〜5)に類似した構造であり、組織回収器58の一部分を受け入れる中空内部を有する円筒状構造である。
図21Bで最も良く分かるように、組織回収器58は、
図4〜5で突出部102および104がスロット98および100を係合するのと同じやり方で、連結具296の補完的なスロット298および200を係合する突出部202および204を含む。組織回収器58の近位端で、ホース継手59aは真空ライン151bを係合し、それが次いで流体回収キャニスター192に接続される。流体回収キャニスター192は、真空ライン151cを通して真空発生器153に接続される。真空発生器153は圧力ライン147を経由して制御可能なバルブ146に接続される。
【0036】
組織収集キャニスター192の出口は、好ましくは、ほぼ液体を含まず、真空ライン151cを通して真空発生器153に接続される。したがって、真空発生器153は組織回収器58および内側カニューレ内腔78と流体連通し、それによって内側カニューレ76の近位端77で真空を発生させて、切り取られた組織サンプルを内側カニューレ遠位端79から組織回収器58へと吸引する。真空発生器によって発生する真空レベルは好ましくは可変であり、ユーザによって選択的に制御可能である。少なくとも約0mmHg(0インチHg)の最大真空レベルが好ましく、少なくとも約0.0393mmHg(1インチHg)の最大真空レベルがより好ましい。少なくとも約0.1965mmHg(5インチHg)の最大真空レベルがより一層好ましく、少なくとも約0.393mmHg(10インチHg)の最大真空レベルがさらに好ましい。少なくとも約0.786mmHg(20インチHg)の最大真空レベルがさらにより好ましく、約1.1397mmHg(29インチHg)の真空レベルが最も好ましい。
【0037】
制御可能なバルブ146および真空発生器153は、組織回収器58および内側カニューレ内腔78の近位端に適用される真空レベルを連続的に調節し制御する手段となる。制御可能なバルブ146には、加圧ガス、好ましくは空気、または窒素などの不活性ガスが供給される。1つの例示的実施形態では、制御可能なバルブ146に印加される圧力は約4.921kgf/cm
2(70psi)である。
【0038】
システムはさらに、様々な構成要素との間で信号を送受信して、それらの動作を制御または監視する電気的コントローラ132を含む。コントローラ132は、モータ駆動制御ライン142を通して制御信号をデバイス40に供給して、モータ62を起動または停止する。吸引バルブ制御ライン150は、コントローラ132から、真空発生器153に圧力を供給する制御可能なバルブ146まで延在する。ライン150を介する制御可能なバルブ146への信号は、組織回収器58に適用される真空の量を制御するのに使用される。
【0039】
コントローラ132はまた、システムの様々な構成要素から電気信号を受け取る。例えば、吸引用の制御可能なバルブ146に関連付けられた圧力変換器148は、ライン152に沿ってコントローラ132に信号を送る。信号は、制御可能なバルブ146を介して真空発生器153に供給される圧力を表す。その結果、変換器148は即時のフィードバックをコントローラに供給し、それが次いで吸引用の制御可能なバルブ146に信号を供給する。
【0040】
ユーザは、コンソールノブ138などのパネル制御、および/またはフットペダル144などの1つもしくは複数の押下げ式コントローラを使用して、システム操作パラメータを調節することができる。1つの実施形態では、フットペダル144はデバイス40内のモータ62を起動して、内側カニューレ76を外側カニューレ44内で往復運動させるのに使用することができる。別の実施形態では、フットペダル144は、真空発生器153から組織回収器58および内側カニューレ内腔78に供給される真空レベルを制御するのに使用することができる。さらに別の実施形態では、フットペダル144は、モータ62を起動し、真空発生器153から組織回収器58に供給される真空レベルを制御するのに使用することができる。1つの配置では、フットペダル144は、フットペダル144が第1の位置から第2の位置に押し下げられると、組織回収器58に適用される真空レベルを最小レベルから最大レベルへと可変に増加させるように構成される。そのような配置では、第1の位置は、フットペダル144がまったく押し下げられていないか、またはわずかだけ押し下げられている位置であり、第2の位置は、フットペダル144が完全に押し下げられた位置である。別の実施形態では、ノブ138は、真空発生器153によって適用される予め選択された最大真空レベルを設定するのに使用される。したがって、フットペダル144を第1の完全に開いた位置から第2の完全に閉じた位置へと押し下げることによって、最大真空レベルをノブ138によってユーザが調節可能な状態で、複数の(好ましくは連続的な)真空レベルを組織回収器58に供給することができる。
【0041】
1つの例示的実施形態では、フットペダル144は、可変の真空を提供するものとモータ62を起動するものとの2つのスイッチ(図示なし)を含む。別の例示的実施形態では、フットペダル144が開いた、すなわち押し下げられていない位置から部分的に押し下げられると、モータ62が起動される。この実施形態によれば、フットペダル144の連続的な押下げによって真空発生器153が起動する。フットペダル144は、好ましくは、完全に開いた位置と完全に押し下げられた位置との間で連続的な移動を提供し、それらは、内側カニューレ内腔78に供給される複数の、好ましくは連続的な真空レベルに対応する。フットペダル144が完全に押し下げられると、内側カニューレ内腔78に供給される真空レベルは予め選択された最大真空レベルに対応する。
【0042】
特定の実例では、ユーザは、切り取るべき組織を取り囲む組織において所望のレベルの「牽引」を達成するように真空レベルを調節する。本明細書で使用されるとき、「牽引」という用語は、切り取るべき標的組織を取り囲む組織に対して引っ張り力を掛けることを指す。いくつかの例では、牽引は、顕微鏡または内視鏡などの拡大機器を使用して、外科医によって可視化可能であってもよい。真空レベルはまた、外側カニューレ開口部49に引き込まれる切り取らない組織の量を決定し、したがって、切り取られる組織断片112(
図14)のサイズを決定する。したがって、微細な削り取り動作が望ましいとき、真空レベルは、減量(debulking)(大規模な組織除去)が行われる場合よりも相対的に低レベルになる。当然ながら、予め選択された最大真空レベルは、外側カニューレ開口部49に引き込まれる組織の最大サイズにも影響し、したがって、任意の動作中に切り取られる組織サンプルの最大サイズに影響する。また、真空レベルは、組織の弾力性、線維の含量、および硬さ/軟らかさに基づいて調節されてもよい。
【0043】
コンソール134はまた、切断の起動を示すものと、吸引の起動を示すものとの表示灯136を含んでもよい。
コンソール134はさらに、「吸引」および「カッター」の読出し装置を備えたアナログ表示装置140を含んでもよい。「吸引」読出し装置は、真空発生器153から組織回収器58に供給される真空レベルを示す。「カッター」読出し装置は、内側カニューレ76の往復運動の速度を示す。1つの実施形態では、内側カニューレ76の往復運動の速度を判断する速度センサがデバイス40に搭載され、センサはコントローラ132に入力される。
【0044】
上述したように、デバイス40が切断動作を行うのに使用されるとき、内側カニューレ76は外側カニューレ開口部49内で往復運動して、外側カニューレ開口部49内に受け入れられた組織を切り取る。切断動作が完了すると、組織が内側カニューレ遠位端79と外側カニューレ刃先51との間に捕捉されないことを確保するため、内側カニューレ76を、外側カニューレ開口部49の近位縁部53の近位側の位置に定置させるようにすることが好ましいことがある。しかし、特定の使用方法では、組織切断デバイス40はいかなる組織も切断することなく吸引棒として使用されてもよい。これらの実施形態では、外側カニューレ開口部49内の内側カニューレ遠位端79の停止位置は、外側カニューレ44の開放領域を決定し、したがって、外側カニューレ開口部49に直接隣接して適用することができる吸引レベルを決定する。したがって、いくつかの好ましい実施形態では、内側カニューレ停止位置はユーザ調節可能である。組織切断デバイス40は、血液、食塩水、脳脊髄液、および乳酸リンガー液を含むがそれらに限定されない、神経外科処置と関連する様々な流体を吸引するのに使用されてもよい。特定の例では、内側カニューレ停止位置は所望の程度の吸引を提供するように調節され、外側カニューレ44は標的組織に近接して位置付けられ、真空が適用されて標的組織を操作し、外側カニューレ開口部49に引き込む。次に、外側カニューレ44は所望の位置または向きへと移動され、それによって標的組織を所望の位置または向きに移動させる。標的組織が十分に操作されると、切断動作が開始される。デバイス40をこのように使用することよって、標的組織を組織切断動作が望ましくない範囲から引き離すことができ、それらの範囲から離れて切断を行うことができる。
【0045】
1つの例示的なシステムでは、モータ62が停止したときの内側カニューレ76の定置位置を制御する、内側カニューレ位置制御が提供される。
図24を参照すると、カム回転位置インジケータ176aおよび176bが
カム64の近位端に搭載される。例示的実施形態では、カム回転位置インジケータ176aおよび176bは反対の極を有する磁石である。位置センサ174は、カムハウジング69の内表面に搭載され、位置センサ174に対するインジケータ176aおよび176bの回転位置を示す信号を生成する。上述したように、
カム64の回転は、外側カニューレ44内の内側カニューレ76の位置と直接相関する。したがって、
カム64の回転を感知して、内側カニューレ76の位置を間接的に判断することができる。したがって、インジケータ176a/176bおよびセンサ174を使用して、外側カニューレ開口部49の近位縁部53(
図10〜12)に対する内側カニューレ76の位置を判断することができる。
【0046】
図22を参照すると、組織切断デバイス40の動作を制御するシステムの実施形態が提供される。システムは、(図示される実施形態では)マイクロプロセッサに基づくシステムとして構成された、主制御ユニット158(「MCU」)を含む。1つの実施例では、MCU158はコントローラ132(
図21A)に組み入れられ、組織切断デバイス40の様々な動作を制御するように動作可能である。フットスイッチ144は、等しい数K(Kは任意の整数であってもよい)の信号経路156を通してMCU158の複数の入力に電気的に接続される。ノブ138などのパネル制御は、等しい数J(Jは任意の整数であってもよい)の信号経路145を通してMCU158の複数の入力に電気的に接続される。
【0047】
表示装置140は、等しい数Q(Qは任意の整数であってもよい)の信号経路141を通してMCU158の複数の出力に電気的に接続される。
図21Aに示される1つの例示的実施例では、表示装置140はコンソール134上に提供される。
【0048】
上述したように、組織切断デバイス40は、内側カニューレ駆動アセンブリ63によって内側カニューレ76に連結されたモータ62を含む。モータ62は、M個(Mは任意の整数であってもよい)の信号経路142を通してモータ制御ユニット160に電気的に接続される。モータ制御装置160は、次いで、等しい数Nの信号経路161を通してMCU158の複数の出力に接続される。カム回転位置センサ174は、信号経路162を通してMCU158のモータ軸位置フィードバック入力(SPF)に電気的に接続され、さらに十分に後述するように、それに対してモータ停止識別信号を提供する。信号経路162上のセンサ174によって供給されるモータ軸停止識別信号は、好ましくはMCU158にモータ停止識別信号を供給し、任意に、ギヤ掛けシステムのモータ速度に比例する、または直接駆動システムのモータ速度と同一のカッター速度信号を供給してもよい。
【0049】
ハンドピース42はさらに、導管163を通して真空ユニット168(例えば、
図21Aの制御可能なバルブ146および真空発生器153の組み合わせ)に機械的に接続され、それによって真空ユニット168は、内側カニューレ内腔78に受け入れられた組織を吸引するため、制御可能な真空レベルを組織切断デバイス40に提供する。真空ユニット168は、P個(Pは任意の整数であってもよい)の信号経路169を通して真空制御ユニット166に電気的に接続される。真空制御ユニット166は、次いで、等しい数L(Lは任意の整数であってもよい)の信号経路167を通してMCU158の複数の出力に接続される。温度補償型の固体圧力センサであってもよい真空センサ164は、導管151内に位置付けられ、信号経路165を通してMCU158の真空フィードバック(VF)入力に電気的に接続されてもよい。あるいは、
真空センサ164は、ハンドピース42内に、または真空ユニット168自体の中に配置されてもよい。
【0050】
動作中、MCU158は、制御パネル138、フットペダル144、または等価の制御機構と関連付けられた対応する制御機構によって好ましくは供給される、真空コマンド信号に応答して、1つまたは複数の対応する真空制御信号を信号経路167に沿って真空制御ユニット166に供給する。真空制御ユニット166は、次いで、その1つまたは複数の真空制御信号に応答して、真空ユニット168を起動し、それによって組織切断デバイス40に所望の真空レベルを提供する。組織切断デバイス40に提供される実際の真空レベルは、真空センサ164によって感知され、それが、対応する真空フィードバック信号をMCU158の真空フィードバック入力VFに供給する。MCU158は、次に、真空フィードバック信号を真空コマンド信号と比較し、それに対応して1つまたは複数の真空制御信号を調節して、組織切断デバイス40内の所望の真空レベルを達成するように動作可能である。そのような閉ループフィードバック技術は制御システム分野において良く知られている。
【0051】
1つの代替実施形態では、MCU158は、モータ62および真空ユニット168の動作を制御するための入出力を制御する個々のマイクロプロセッサと置き換えることができる。この代替実施形態では、モータ制御および真空制御マイクロプロセッサは、Microchip,Inc.(アリゾナ州チャンドラー)によって提供されるPIC16CXXシリーズのマイクロコントローラであることができる。モータ制御マイクロコントローラは、モータドライバ172(
図23)および位置センサ174、ならびにフットスイッチ144およびパネル制御138から入力信号を受け取ることができる。同様に、真空マイクロコントローラは、真空センサ164、フットスイッチ144、およびパネル制御138から入力信号を受け取ることができる。各マイクロコントローラは、独自の出力を自身が駆動する構成要素に提供することができ、その動作状態を示すLEDディスプレイなどの独自の表示装置を有することができる。さらに、切断および吸引機能の適切なタイミングによってきれいな切断を確保するため、2つのユニットは互いに通信することができる。
【0052】
次に
図23を参照すると、モータ制御ユニット160の1つの例示的実施形態がより詳細に示される。1つの実施形態のモータ制御ユニット160は、MCU出力の1つ161
1に接続されたモータ速度入力を有するパルス幅変調(PWM)発生器回路170を含む。モータ速度制御が提供される場合、出力161
1は、所望のモータ速度を示し、スロットル、フットペダル、または他のアクチュエータの位置に基づく可変電圧信号を供給することができる。特定の実施形態では、付加的な入力はMCU出力の別の1つ161
2に接続される。この出力161
2の信号は、後述するようなモータ減速信号であることができる。あるいは、出力161
2は、電流フィードバックモータコントローラと関連して使用される制動信号を構成することができる。さらなる代替例として、減速コマンドは、別個の信号161
2ではなくモータ速度コマンド自体を通して通信されてもよい。この例では、出力161
2は不要なことがある。
【0053】
図示される実施形態では、PWMはモータ制御ユニット160内に配置される。あるいは、PWMは、MCU158に、または上述した個別のモータ制御マイクロプロセッサに統合することができる。モータ速度制御を含む実施形態では、モータ速度入力は、モータ62の所望の動作速度を示すモータ速度信号をMCU158から受け取る。減速入力は、モータ62と関連付けられたモータセンサから供給される実際のモータ速度信号に基づく速度調節信号をMCU158から受け取ることができる。
【0054】
モータドライバ回路172は、信号経路173を通してPWM発生器回路170に電気的に接続され、そこから所望のモータ速度を示すパルス幅変調信号であるPWM駆動信号を受け取る。モータドライバ回路172は、信号経路175を通してモータ駆動信号(MD)をモータ62に供給する。開示される実施形態は、PWM発生器回路170を使用したモータのデジタル制御を想到しているが、代替実施形態は、特により低速の切断速度が想到される場合、閉ループフィードバックアナログ回路を利用することができる。
【0055】
モータ駆動信号は、MCU出力の別の1つ161
1に接続されるモータ停止入力を含む。本開示の一態様によれば、MCU158は、より十分に後述するように、内側カニューレ76を所望位置で停止するため、フットスイッチ144またはパネル制御138によって供給されるモータ停止コマンドに基づいて、また、センサ174によって供給されるモータ停止識別信号に基づいて、信号経路161
3にモータ停止信号を供給する。特定の実施形態では、予め定められた位置で停止するようにモータに指令するため、モータ停止信号のみが利用される。これらの特定の実施形態では、経路161
2上のモータ減速信号は排除することができ、または、経路161
2上の入力をモータ制御回路に対する他の制御信号に使用することができる。
【0056】
上述したように、組織切断デバイス40が停止されると、内側カニューレ76は外側カニューレ開口部49内に部分的に配置されて静止することができる。
図25〜27を参照すると、内側カニューレ76の3つの異なる停止位置が示される。表示の容易さについては、流体供給スリーブ302は図示されない。
図27は、内側カニューレ76を、組織Tの一部分が外側カニューレ開口部49と内側カニューレ遠位端79との間に捕捉される位置で停止できることを示す。外側カニューレ44を手術部位から引き抜こうとすることにより、結果として、組織部分T’が断裂して周囲の組織基部Tから離れることがある。そのような捕捉に直面した外科医は、一般的に、組織切断デバイス40を再起動して、組織部分T’を周囲の組織基部Tから解放することが必要となる。そのような組織の捕捉が生じるのを防ぐため、モータ62の停止は、内側カニューレ76が往復運動を停止するとき、内側カニューレ遠位端79が外側カニューレ開口部49から離隔して位置付けられるように制御される。しかし、特定の使用方法では、デバイス40は吸引棒として使用される。それらの方法では、外側カニューレ開口部49に近接した解剖学的構造の領域に供給される吸引のレベルを調節するため、内側カニューレ遠位端79の停止位置は、外側カニューレ開口部49の異なる位置に調節される。例えば、停止位置は、外側カニューレ開口部49の開放領域の割合を、開口部49の合計面積の25%、50%、または75%に制限するように選択されてもよい。
【0057】
図23および24を再び参照して、モータ62の制御された停止について以下に詳細に記載する。組織切断デバイス40を停止するのが望ましい場合、例えばフットスイッチ144またはパネル制御138を通して、モータ停止コマンドが提供される。1つの実施形態では、MCU158は、モータ停止コマンドに応答して、信号経路161
2を通してモータ62の作用を減速する減速信号がPWM発生器に供給される。好ましくは、減速信号は、モータ速度閾値レベルよりも低いモータ速度でモータ62を駆動するように動作可能な定義済みの信号レベルに対応する。モータ62はブラシ付DCモータなので、上述したように回転抵抗またはそれと関連付けられた抵抗トルクを有する。それに加えて、場合によっては、内側カニューレ76と外側カニューレ44との間の摩擦によって回転抵抗が増加する。この組み合わされた回転抵抗により、モータ62をモータ速度閾値未満で駆動させながら、信号経路142上のモータ駆動信号が使用禁止にされた場合、モータ62の動作が非常に急速にまたはほぼ瞬時に止まる。したがって、デバイス40が組織を切断するのに使用されるとき、位置インジケータ176aまたは176bとセンサ174との位置合わせは、好ましくは、内側カニューレ遠位端79と外側カニューレ開口部49との間に組織を捕捉する危険がない組織切断デバイス40の位置に対応し、センサ174は、インジケータ176aまたは176bとそのように位置合わせされると、モータ停止識別信号を生成するように動作可能である。
【0058】
1つの実施形態では、MCU158は、信号経路161
2上で減速信号を生成してからインジケータ176aまたは176bが一度通過した後にセンサ174が位置インジケータ176aまたは176bとの位置合わせを検出すると、信号経路161
3上でモータ停止信号を生成するように動作可能である。減速信号を発行した後にセンサ174によってインジケータ176aまたは176bを一度通過させることによって、減速コマンドが発行されたときのセンサ176に対するインジケータ176aまたは176bの位置に関わらず、モータ停止コマンドを次に発行するときにモータ62の回転速度がモータ速度閾値未満であることが確保される。減速信号を発行してからセンサ174によってインジケータ176aまたは176bを一度通過させた後、MCU158は、インジケータ176aまたは176bとの位置合わせを示すセンサ174によって供給される信号に応答して、信号経路161
3上でモータ停止信号を生成する。モータドライバ172は、モータ停止信号に応答して、信号経路175上でモータ使用禁止信号を生成する。固有の回転抵抗により、モータ62はモータ使用禁止信号に応答して、その動作を即座に止めるとともに、インジケータ176aまたは176bはセンサ174とほぼ位置合わせされ、それにしたがって、内側カニューレ76は内側カニューレ遠位端79と
外側カニューレ開口部49との間に組織を捕捉しないように位置付けられる。
【0059】
上述したように、1つの例示的実施形態では、内側カニューレ停止位置は、例えばコンソール134上のパネル制御138を調節することによってユーザ調節可能である。実施形態によれば、カム64の、したがって内側カニューレ遠位端79の停止された回転位置は、その代わりに、インジケータ176a/176bとセンサ174との間の予め定められた特異距離と位置合わせされてもよいことが想到される。この予め定められた特異距離を適宜校正することができるように、内側カニューレ76およびモータ62の制動特性を確定し、停止距離を決定することができる。しかし、好ましい実施形態では、内側カニューレ76が静止すると、
図26に示されるように、遠位端79は所定距離だけ
外側カニューレ開口部49の近位側に位置する。
【0060】
デバイス40を使用して組織切断処置を行う方法を、神経系の標的組織を切断することを伴う神経外科処置の文脈で以下に記載する。1つの例では、標的組織は脳組織であり、別の例では、標的組織は脊髄組織、例えば椎間板の組織である。特定の例示的な方法では、切断される組織標本は腫瘍または病変である。
【0061】
この方法によれば、最初に、切断動作が減量動作、微細な削り取り動作、または減量動作と微細な削り取り動作の間の切断動作であるかが判断される。次に、外科的アクセス経路が対象の組織サンプルに作られる。1つの実施形態では、外科的経路が作られ、かつ/または、標的組織が雰囲気に対して開いている「開放」処置(例えば、全開放開頭術(full open craniotomy))を使用して標的組織にアクセスされる。別の実施形態では、外科的経路が作られ、かつ/または、標的組織が雰囲気から封鎖されている「閉鎖」処置を使用して標的組織にアクセスされる。
【0062】
この時点では、上述したタイプの内側カニューレ停止位置制御を使用することにより、内側カニューレ76の遠位端79は外側カニューレ開口部69の近位側に位置する。次に、パネル制御138を使用して、デバイス40に適用される最大真空レベルが設定される。一般に、真空レベルが高い方が、組織の相対的に大きい区画を外側カニューレ開口部49に引き込む傾向があるので、微細な削り取り動作の場合よりも減量処置の場合の方が高い真空レベルが使用される。1つの実施形態では、パネル制御138は、所望の最大真空レベルを設定するように回転されるコンソール134上のノブである。
【0063】
1つの配置では、デバイス40は、組織切断処置中、片手で握られるように構成される。従って、外科医は、一方の手の指でハンドピース42を把持し、外側カニューレ44を標的組織に近接した位置に挿入する。標的組織に対する手および外科医の向きに応じて、次に、外科医はダイヤル60を回転させて、外側カニューレ44をそれ自体の長手方向軸線を中心にして回転させ、外側カニューレ開口部49を標的組織に直接隣接させて向き付けてもよい。ダイヤル60を用いて外側カニューレ44を回転させることによって、内側カニューレ76と外側カニューレ44との間の固定の回転または角度関係が維持されるようにして内側カニューレ76が回転する。開口部が所望の向きになると、モータ62は、例えば、ペダル144をそのまったく押し下げられていない(開放)位置から第2の部分的に押し下げられた位置まで押し下げ始めることによって起動され、それによってモータ制御ユニット160が信号経路142上で信号をモータ62に送る。モータ62はまた、パネル制御138によって起動されてもよい。モータ62の回転によってカム64が回転し、その結果、カム従動子68およびカム移送機構72が往復運動する。カム移送機構72の往復運動によってカニューレ移送機構74が往復運動し、それによって内側カニューレ76が外側カニューレ内腔110内で往復運動する。
【0064】
モータ62が起動されると、真空が内側カニューレ内腔78に供給される。1つの実施形態では、ペダル144がさらに(モータ62が起動される位置を越えて)押し下げられると、真空発生器153が起動される。次に、外科医は、外側カニューレ開口部49に対する標的組織の移動を可視化することによって、所望の真空レベルを得るようにフットペダル144の押下げの程度を調節する。特定の実施形態では、外科医は、標的組織を取り囲む組織の所望の牽引量を得るように真空レベルを制御する。外科医が予め設定された最大真空レベルを適用したい場合、ペダル144をその完全に押し下げられた位置まで押し下げる。
【0065】
所望であれば、外科医は、複数回ペダル144を押し下げ、部分的に解放して、標的組織を満足のいくやり方で操作してもよい。真空制御ユニット166は、予め選択された最大レベルよりも低い一連のレベルに沿って内側カニューレの真空レベルを調節するように操作可能な、真空発生器153のセットポイントを調節するように操作可能である。1つの実施形態では、フットペダル144の押下げの程度は、信号経路167上の真空制御ユニット166に供給される真空セットポイントを、したがって真空ユニット168によって提供される真空の量を表す。真空センサ164は、組織回収器58に供給された真空を測定し、信号経路165上で主制御ユニット158に信号をフィードバックする。次に、測定された真空は、フットペダル144によって真空制御ユニット166に適用されるセットポイントと比較され、次に、真空発生器153に伝達される信号は、測定された真空値をセットポイントに向かって移動させるように調節される。最大プリセットレベルに等しい真空レベルを得るため、ペダル144は完全に押し下げられる。少なくとも約0mmHg(0インチHg)の最大真空レベルが好ましく、少なくとも約0.0393mmHg(1インチHg)の最大真空レベルがより好ましい。少なくとも約0.1965mmHg(5インチHg)の最大真空レベルがより一層好ましく、少なくとも約0.393mmHg(10インチHg)の最大真空レベルがさらに好ましい。少なくとも約0.786mmHg(20インチHg)の最大真空レベルがさらにより好ましく、約1.1397mmHg(29インチHg)の真空レベルが最も好ましい。
【0066】
外側カニューレ開口部49に引き込まれる組織の抵抗により、内側カニューレ76が遠位方向に移動するにつれて、切断区画83はヒンジ80を中心にして、かつ外側カニューレ開口部49に向かって枢動する。内側カニューレ切断区画83は、遠位方向に移動しながら枢動し続け、最終的には外側カニューレ開口部49内の組織を圧縮し切り取る。切り取られた組織は、内側カニューレ内腔78内で一連の組織断片112(
図14)を形成する。組織回収器58に適用される真空により、断片112は内側カニューレ内腔78を介して近位方向に吸引される。それらは、最終的には、内側カニューレ近位端77で内側カニューレ内腔78を出て、組織回収器58(または、回収器58が提供されない場合は流体回収キャニスター192)に入る。吸引されるあらゆる流体は、組織回収器58を出て、流体回収キャニスター192に捕捉される。外科医は、好ましくは、少なくとも約1,000カット/分の切断速度で組織を切り取る。少なくとも約1,200カット/分の切断速度がより好ましく、少なくとも約1,500カット/分の切断速度がより一層好ましい。約2,500カット/分未満の切断速度が好ましい。約2,000未満の切断速度がより好ましく、約1,800カット/分未満の切断速度がより一層好ましい。
【0067】
外科医は、所望の程度の切断が完了するまで、標的組織の周囲でデバイス40を移動させてもよい。次に、例えば、ペダル144がそのまったく押し下げられていない(開放)位置に戻るように完全に解放することによって、モータ62が停止される。内側カニューレ停止位置制御が提供される場合、内側カニューレ76は、好ましくは、
図26に示されるように外側カニューレ開口部49の近位側で静止する。次に、外側カニューレ44は手術部位から除去される。次に、組織回収器58はハンドピース42の上部ハウジング52から除去され、回収された組織サンプルは廃棄されるか、後で分析するために保存される。キャニスター192に回収された流体は好ましくは廃棄される。
図21Aの遠隔組織回収器が使用される場合、組織サンプルは、外側カニューレ44を手術部位から除去することなく、または別の形で周囲組織を妨害することなく除去されてもよい。
【0068】
特定の標的組織は、アクセスするのが困難になる可能性があり、外科医は、非直線状通路で標的組織をアプローチすることを必要とする。例えば、非直線状アプローチは、開頭の配置が標的組織に対して都合がよくない場合、開頭中必要とされる。他の場合では、腫瘍はしばしば腫瘍の主体を超えて拡張する付加物を発達させ、非直線状アプローチは、主体及び付加物を完全に切除するために必要とされる。また、特定の場合、病理の程度は、初期のイメージによって示唆されるよりも大きい場合があり、病変組織のすべてを削除するために非直線状の外科的アプローチを必要とする。動脈及び神経などの重要な構造又は骨の構造は、標的組織へのアプローチを妨げ、従って、非直線状アプローチを必要とする。そのような場合では、標的組織に届くために湾曲した外側カニューレ及び内側カニューレを有することが望ましい。カニューレ構造の特定の既知の材料は、所望の湾曲した形状に曲げられることができるが、対策が内側カニューレと外側カニューレとの間の接触の程度を減少することを採用していない場合、過度の摩擦が内側カニューレの外面と外側カニューレの内面との間に生じる。そのような接触を減少させる内側カニューレの実施形態が以下に述べられる。
【0069】
図28乃至
図31を参照すると、湾曲可能な内側カニューレ276が示されており、湾曲可能な内側カニューレ276は、湾曲した外側カニューレ内で往復運動するのに適する。内側カニューレ276は、内側カニューレ76と同じである。しかしながら、内側カニューレ276は、近位端277と遠位端279との間に配置された曲げ部分285を含む。内側カニューレ276は、全体が剛性であるが、少なくとも曲げ部分285に沿って変形可能である。一般的には、内側カニューレ76の類似部分に対応する内側カニューレ76の部分は、対応する“200”番台の数字で符号が付せられている(例えば、内側カニューレ76の近位端77は、内側カニューレ276の近位端277に対応する)。
【0070】
曲げ部分285は、いくつかの方法で形状づけられているが、概ね、内側カニューレ276の長さの部分に沿って軸方向の長さの単位あたりの減少した内側カニューレ面の領域を含む。
図28及び
図29に示された一例では、曲げ部分285は、二つの離間した壁289a及び289bを備える。離間した壁289a及び289bは、形状が部分的に円形である(すなわち、離間した壁289a及び289bは、内側カニューレ276の直径に沿って円柱切片、又は、内側カニューレ276の断面で弦に沿った切片を構成する)。
図31に示されるように、壁289a及び289bは、互いに対向して面する円弧の外観を有する断面を画定する。当然ながら、曲げ部分285は、特定の組織切断デバイスの必要性に応じて、二つの壁よりも少ない壁、又は二つの壁よりも多い壁を備えることができる。
【0071】
壁289a及び289bは、様々な異なる方向で及び様々な異なる円周方向の間隔で互いから離間配置される。
図28乃至
図31の例では、壁289a及び289bは、内側カニューレ276が外側カニューレ44内で往復運動するときにヒンジ280がそれを中心にして枢動するy軸線に対して垂直であるx軸線に沿った方向において離間配置される。他の配向も可能である。一例では、壁289a及び289bは、ヒンジ280の枢動軸線に平行な方向(y方向)において離間配置される。他の例では、壁289a及び289bは、ヒンジ280の枢動(y)軸線に対して鋭角又は鈍角を形成する方向において離間配置される。
【0072】
図28乃至
図31の内側カニューレ276は、曲げ部分285に沿って二つの部分的円形部分291a及び291bを軽減することによって形成される。軽減された部分は、
図31において軽量化の線で示される。従って、内側カニューレ276は、曲げ部分285を含むように一体に形成される。しかしながら、他の構成も使用されることができる。例えば、曲げ部分285は、曲げ部分285の近位及び遠位である内側カニューレ276の部分に(例えば、接着剤、機械的ファスナー、はんだ付け、溶接等によって)その近位端及び遠位端で続いて取り付けられる別個に形成された構成要素からなることができる。
【0073】
図31に示されるように、一例では、離間配置された壁289a及び289bは、実質的に等しい断面の長さ(すなわち、y軸線に沿った一定の軸方向の位置で壁の一方側から壁の他方側まで各壁の表面に沿ってたどった円周方向の距離)を有する。しかしながら、他の構造を使用されることができ、壁289a及び289bの断面の長さが等しくない構造を含む。さらに、曲げ部分285は、様々な長さ又は
図31に示された等しい長さの壁を備えることができる。
【0074】
内側カニューレ276から軽減された表面領域の量は、好ましくは、予想される外科手術状況に基づいて所望の曲げ及び剛性の程度を提供するために選択される。
図30aに示された一例では、軽減区分291a及び291bは、
内側カニューレ276の外径の約45%乃至約65%であり、好ましくは内側カニューレ276の外径の約52%乃至約62%であり、さらに好ましくは内側カニューレ276の外径の約55%乃至約60%である、累積する軽減半径の距離Z
1+Z
2(Z
1及びZ
2は、軽減区分291a及び291bの円形部分の高さである)を画定する。“累積する” 軽減半径の距離は、共通の直径に沿った軽減された半径距離(すなわち、同一直線上にある半径距離)の合計を指す。従って、
図30a及び
図30bの例では、共通の直径に沿った二つの軽減された半径距離Z
1及びZ
2があり、その累積する軽減半径の距離は、それらの合計Z
1+Z
2に等しい。
【0075】
曲げ部分285の長さは、好ましくは、外側カニューレ44の曲がった部分の長さに適合するように選択される。一例では、曲げ部分285は、内側カニューレ276の長さの約65%乃至約90%、好ましくは内側カニューレ276の長さの約70%乃至約85%、さらに好ましくは内側カニューレ276の長さの約72%乃至約82%である長さを有する。他の例では、曲げ部分285は、より顕著な曲率が必要とされる場合、内側カニューレ276の全長のより小さい割合を備えることができる。従って、特定の例では、曲げ部分285は、内側カニューレ276の長さの約20%乃至約50%である長さを有し、好ましくは、内側カニューレ276の長さの約30%乃至約40%である長さを有する。
【0076】
曲げ部分285が内側カニューレ276の一部分を軽減することによって形成される場合、それは、典型的なヒンジ80及び280に示されるような縦平面で見たときに鋭角を生じるようにされる。しかしながら、より漸進的な軽減変化を使用することができる。
図30aを参照すると、近位の曲げ部分の軽減変化区分293a及び293bが示される。図に示すように、軽減変化区分293a及び293bは、内側カニューレ276が上平面図で示される場合に曲がった外形を有する。図示の軽減変化部分293a及び293bの各々は、概ね、内側カニューレ276の外径の約10%乃至約40%である曲率半径を有する。内側カニューレの直径の約20%乃至約30%である曲率半径が好ましく、約22%乃至約26%である曲率半径がさらにより好ましい。遠位曲げ部分軽減変化部分295a及び295bは、同様な形態で形状づけられるが、近位曲げ部分の軽減変化区分293a及び293bの同じ形状又は曲率半径を有する必要はない。
【0077】
図38乃至
図40を参照すると、曲げ部分585を有する内側カニューレ576の代替実施例が示される。曲げ部分585は、近位内側カニューレ577とヒンジ580との間に配置されている。前の実施例と同様に、内側カニューレ76の類似部分に対応する内側カニューレ576の部分は、内側カニューレ76の類似特徴の符号に対応する“500”番台の数字で符号が付せられている。
図28−29の実施例とは異なり、曲げ部分585は、二つの離間配置された壁を備えていない。その代わりに、それは、
図40に示されるように一つの部分的円筒形状の壁589を備える。
図38−39の実施例では、内側カニューレ576は、部分的円筒形状の壁589に相補的である部分的円筒形軽減区部591を画定するために軽減される。ヒンジ80及び部分的円筒形状の壁589は、互いに関して様々な方向に配向されることができ、さまざまな相対的外周配向を画定する。
図38−39の実施例では、曲げ部分585は、それを中心にしてヒンジ580が枢動する枢動軸線(すなわち、
図38及び
図39の頁面の内外に突出するx−軸線)に平行である曲げ軸線を中心にして曲がることができる。
図40に示されるように、部分的円筒形状の壁589は、その長さに沿って(すなわち、x方向に)延びる対称平面593を有する。同様に、ヒンジ580は、その長さに沿って(すなわち、x方向に)延びる対称平面595を有する。対称平面593及び部分的円筒形状の壁589の交差は、(y方向において)部分的円筒形状の壁589の長さに沿った第1交差線を画定する。同様に、対称平面595及びヒンジ580の交差は、(y方向において)ヒンジ580の長さに沿った第2交差線を画定する。第1交差線及び第2交差線は、実質的に互いに平行であるのが好ましい。しかしながら、第1及び第2交差線は、実質的に共軸であるのがより好ましい。
図38乃至
図41の実施例では、部分的円筒形状の壁589及び対称平面593の交差によって画定される第1交差線は、ヒンジの部分的円筒形状の壁580及び対称平面595の交差によって画定される第2交差線と実質的に共軸である。しかしながら、対称平面593及び595は、
部分的円筒形状の壁580及び589が180度以外の量によって互いに円周方向に離間されるときなどの角度で交差することもできる。
【0078】
図39及び
図40に示されるように、対称平面593及び部分的円筒形状の壁589の交差は、部分的円筒形状の壁の高さ“h”を画定する。高さhは、概ね、内側カニューレの外径の約30%乃至約45%であり、好ましくは、内側カニューレの外径の約33%乃至約42%であり、より好ましくは、内側カニューレの外径の約35%乃至約40%である。一例では、高さhは、内側カニューレの外径の約39%である。
【0079】
図39に最も見られるように、内側カニューレ576は、遠位曲げ部分変化区分597a及び597b(
図39には示されていない)を含み、遠位曲げ部分変化区分597a及び597bは、曲げ部分585に近位である内側カニューレ576の部分間の変化を画定する。同様な変化(図示せず)が、曲げ部分585と、
曲げ部分585に近位である内側カニューレ576の部分との間に提供されることもできる。側面で見たとき、変化は、(ヒンジ580と同じように)とがった又は漸進的である。漸進的な変化は、直線的な傾斜され、凹形状にされ、凸形状にされ、または、さまざまな他の形状にすることができる。
図39の実施例では、曲げ部分変化区分597aは、側面から見たときに(すなわち、内側カニューレ576の長さに垂直な方向において)凹面形状を画定する。変化597a及び597bは、概ね、内側カニューレ576の外径の、約45%乃至約85%、好ましくは約50%乃至約80%、より好ましくは約60%乃至約70%、さらに好ましくは約65%乃至約70%である曲率半径を画定する。曲げ部分585は、内側カニューレ576と一体に形成され、あるいは、内側カニューレ576の近位区分及び遠位区分に別個に取り付けられることができる。
図38−
図39の実施例では、曲げ部分585は、内側カニューレ576を形成することによって内側カニューレ576に一体に形成され、次に、部分的円筒形状区分591を取り除く。
【0080】
組織切断デバイス40は、湾曲した外側カニューレ及び内側カニューレ276又は576を備え、曲げ部分285、585は、外側カニューレの長さ及び曲率に適合する長さ及び曲率を有する。しかしながら、一例では、組織切断デバイス40は、
図1に示された直線状外側カニューレ44及び曲げ可能な内側カニューレ276、576を備えられる。このように組織切断デバイス40を提供することは、特定の外科的処置によって決定する際に、直線状外側カニューレ又は湾曲した外側カニューレの使用のオプションを外科医に提供する。外側カニューレ44及び内側カニューレ276、576は、変形後に寸法的に安定する医療用の鋼などの変形可能な材料で作られるのが好ましい。従って、外側カニューレ44内に配置された内側カニューレ276を有する一例では、外科医は、所望の形状を得るために、外側カニューレ44を曲げることができる。その結果、内側カニューレ276、576は、外側カニューレ44の形状に概ね従って部分285、585を曲げることができる。一図例では、外科医は、あらゆる外部の曲げ装置の援助を必要としないで彼の手を使用して外側カニューレ44を曲げることができる。他の図例では、外部曲げ装置が使用される。
【0081】
図32乃至
図34を参照すると、チューブベンダー410が示される。チューブベンダー410は、チューブベンダー410に含まれた曲げ表面に従って所望の形状に外側カニューレ44及び内側カニューレ276、576を曲げるために使用される。チューブベンダー410は、所望の形状に外側カニューレ44及び内側カニューレ曲げ部分285を曲げるように形状づけられると共に構成されている方が好ましい。
【0082】
チューブベンダー410は、近位端402及び遠位端404を含み、概ね円弧状の近位区分411及び概ね直線状の遠位区分413を備える。近位区分411は、外側カニューレ44及び内側カニューレ曲げ部分285に所望の曲げ形状を与えるために使用される曲げ表面408を含む。遠位のチューブベンダー区分413は、外側カニューレリテイナー406を備える。外側カニューレリテイナー406は、外側カニューレ44の垂直方向、すなわちリテイナー406の上面に直交する方向の移動を制限するように形状づけられている方が好ましい。
図32−36の例では、カニューレリテイナー406は、その長さに沿って外側カニューレ44が突出する内腔420などのチャンネルを含む。内腔420は、外側カニューレ44を収容しかつ外側カニューレ44に適応するように寸法づけられ、好ましくは、概ねぴったりとした適合を提供する。他の例では、カニューレリテイナー406は、完全に包囲した内腔の代わりにチューブベンダー410の両側で開放するチャンネルを含むことができる。曲げを促進するために外側カニューレ44を保持するのに適当であるあらゆる他の構造が可能である。例えば、
図32−
図35では、外側カニューレリテイナー406は単一の構造である。しかしながら、チューブベンダー410の長さに沿った二つ以上の離間した部分を備えることができる。
【0083】
また、凹部412は、遠位チューブベンダー区分413に沿って提供され、リテイナーの遠位端418とチューブベンダーの遠位端404との間に配置される。また、ストップ面414がチューブベンダーの遠位端404の近位側に配置され、外側カニューレ44がリテイナー406に配置されたときにチューブベンダー410に関して外側カニューレ44の移動を制限する。凹部412は、リテイナー406へのその完全な挿入を確認するために使用者が、外側カニューレ44の遠位端47を見ることができる。
【0084】
チューブベンダー410は、概ね軽量で剛性である。構造の適切な材料は、プラスチックを含む。適当なプラスチックの一例の種類は、ポリカーボネートである。
また、チューブベンダーの近位区分411は、近位区分411の曲率によって画定された半径方向に曲げ表面408から離間配置されたユーザー係合表面409を含む。以下にさらに説明されるように、ユーザー係合表面409は、外側カニューレの曲げ動作中にユーザーが彼又は彼女の指又は親指を押すことができる支持面を提供する。
【0085】
図32−
図34の例では、チューブベンダー410は、その長さに沿った複数の凹部434、436、438、439、440、441、442及び444を含む。凹部は、壁422、424、426、427、428、429及び430によって分離される。凹部は、プラスチック成型プロセスによってチューブベンダー410の製造を容易にし、その強度と剛性を過度に犠牲にすることなくチューブベンダー410の重さを有益に減少する。
【0086】
曲げ動作中に外側カニューレ44及び内側カニューレ276、576を曲げるためのチューブベンダー410の方法が説明される。一つの例示的な方法によれば、組織切断デバイス40が提供され、
図1乃至
図3の実施例に対して説明されたのと同じ構成要素を含む。しかしながら、内側カニューレ276又は576が内側カニューレ76の代わりに提供される。他のすべての点では、デバイス40は変更がない。他の例示的な実施例によれば、
図1乃至
図3の組織切断デバイス40は、内側カニューレ76と共に使用される。内側カニューレ276又は576を使用するための利点の一つは、曲げ部分285、585が内側カニューレ76の同じ領域に対してその長さに沿った減少した内側カニューレ表面領域を有することである。その結果、内側カニューレ276、576と外側カニューレ44との間の摩擦係合に対する潜在的な表面領域が減少され、それによって、内側カニューレ276、576が摩擦熱の発生が原因で故障するリスクを減らす。
【0087】
上記方法に従って、組織切断デバイス40の外側カニューレ44が近位リテイナー端部416で
外側カニューレリテイナー内腔420に挿入される(
図34)。外側カニューレ44は、最終的に、凹部412の中に突出して凹部412を通じストップ表面414と接触係合になるまで遠位方向に前進される。
図35に示されるように、このポイントで、外側カニューレ44の縦軸線は、チューブベンダー遠位区分413の縦軸線に実施的に平行である。従って、組織切断デバイス40が配向された状態で、外側カニューレ44の第1部分は、外側カニューレリテイナー内腔420内に配置され、外側カニューレ44の他の部分は、露出され、近位方向に外側カニューレリテイナー406から離れる方向に突出する。次に、ユーザーは、外側カニューレ44が曲げ表面408の長さに沿って曲げ表面408と接触係合になるまで曲げ表面408の方に外側カニューレ44を移動させる。その結果、曲げ表面408の曲率が外側カニューレ44及び内側カニューレ276の曲げ区分285に付与される(
図36)。
【0088】
特定の状況では、外側カニューレ44の遠位端47と曲げが始まる位置との間の距離を調整することが望ましい。そのような場合では、透明な及び/又は明白な外側カニューレリテイナー406を提供すること(あるいは、完全に透明及び/叉は明白であるチューブベンダー410を提供すること)及びチューブベンダー410内の外側カニューレ遠位端47の位置を確実に示す位置インジケーターを提供することが役立つ。一例では、適当な参照インジケーターが外側カニューレリテイナー406の長さに沿って提供される。参照インジケーターは、互いに予め決められた距離(例えば、1cmの間隔)で離間配置された、成型された又は取り付けられたリブ、あるいは、外側カニューレリテイナー406の長さに沿ったインキマーキング、エッチング、表面特徴などの他のインジケーターを含むことができる。
【0089】
チューブベンダー410及び組織切断デバイス40は、曲げ動作中多くの方法で操作されることができる。一例では、片手の親指がユーザー係合面409に配置され、同じ手の指が組織切断デバイス40の周りに(例えば、ハンドピース42あるいは外側カニューレ44の露出部分の周りに)巻きつけられる。次に、デバイス40及びユーザー係合面409は、外側カニューレ44の露出部分が
図36に示されるようにその長さに沿って曲げ表面408と隣接的に係合するまで互いの方に押し付けられる。次に、外側カニューレ44は、それを近位方向に摺動することによって外側カニューレリテイナー406から取り除かれる。さらに、ユーザーは、曲げ動作中、外側カニューレ44の遠位端47をストップ表面414と接合的係合で保持する必要はない。その代わりに、外側カニューレ44は、曲げる前にリテイナー206から部分的に回収されて外側カニューレ44の有効な曲げ部分の長さを増加する。
【0090】
前述のように、組織切断デバイスは、直線又は予め曲がった外側カニューレ44が提供される。どちらの場合でも、デバイス40は、標的組織が外科医によって直線状経路に沿ってアクセスされることができない組織切断動作を実行するために使用されることができる。そのようなオペレーションは、顕微鏡や内視鏡などのイメージデバイスの援助の有無にかかわらず実行することができる。曲がった外側カニューレを組織切断デバイス40を使用する方法は、
図37A及び
図37Bで示されたような開頭手術を参照して説明される。この方法によれば、患者の頭蓋骨の一部が標的組織342に到達するためのアクセス部位を提供するために取り除かれる。標的組織342は、一般的に直線状の通路に沿ってアクセスできず、従って、切除のために湾曲した外側カニューレを必要とする。内視鏡300は、標的組織342を見えるようにするために提供され、光ファイバ310を湾曲したシャフト306を含む。内視鏡カート364が提供され、内視鏡コネクタ321及び関節ジョイント362を有する関節アーム360を含む。モニター345は、外科医340が内視鏡300が操作されるように標的組織342を見ることを許容する。内視鏡シャフト306及び外側カニューレ44の双方は、通常、標的組織342に対して同じ通路をならうため、内視鏡シャフト306は、外側カニューレ44の曲率と概ね類似又は同じである曲率を有する方が好ましい。標的組織342が見える状態になると、次に、外科医340は、曲がった外側カニューレ44を標的組織342の方へ前進する。そして、デバイス40が作動され、外側カニューレ44によって画定された湾曲した通路に沿って内側カニューレ276を往復運動させる。次に、外側カニューレ開口49に収容された組織は、内側カニューレ276の遠位端279で切断刃によって切断される。前述の方法と同様に、内側カニューレ276、576は、外側カニューレ開口49に収容された組織に対して前進すると、切断区分283、583を開口49の方にヒンジ280、580を中心にして枢動させる抵抗力が発生する。そして、切断された組織サンプルは、組織回収器58の方に内側カニューレ276、576の曲がった通路に沿って吸引される。上述のように、またデバイス40は、必要に応じて標記組織342を操作するために組織を切断することなく吸引棒として動作される。
【0091】
内側カニューレ276、576は、好ましくは少なくとも約1,000往復/分の往復運動で曲がった外側カニューレ44内で往復運動する。少なくとも約1200往復/分の往復速度がより好ましく、少なくとも約1,500往復/分の往復速度がより一層好ましい。約2,500往復/分未満の往復速度が好ましい。約2,000未満の往復速度がより好ましく、約1,800往復/分未満の往復速度がより一層好ましい。
図14で最も良く分かるように、湾曲した外側カニューレデバイスでは、デバイス40の往復速度によって、組織を、多くの従来のデバイスによって得られる「塊状の(slug)」組織サンプルよりも比較的小さい「断片」状112に切り取ることが可能になる。往復運動が継続するにつれて、一連の切り取られた組織断片112が得られる。
【0092】
図28及び
図29に示されるように、曲げ部分285、585が軽減されるため、内側カニューレ276、576の曲げ部分285、585に沿って、内側カニューレ内腔278、578は、外側カニューレ44の内面と連通する。好ましくは、曲げ部分285、585に沿った内側カニューレ276、576の外面と、外側カニューレ44の内面との間に画定された環状間隙は、組織サンプルでの環状間隙の閉塞を防止するのに十分に小さい。前述したように、シール129(
図20)は、内側カニューレ276、576及び外側カニューレ44との間の環状クリアランスにおける空気の人工産物、流体(水、生理食塩水、血液など)の流れ及び組織サンプルの流れを有益に防止する。この特徴は、内側カニューレ内腔278、578は外側カニューレ44の長さのかなりの部分に沿って外側カニューレ44の内面と連通するときに部分的に有益である。従って、前述の有益に加えて、シール129は、その長さに沿って軽減される内側カニューレ276の曲げ部分285、585の使用を容易にする。
【0093】
本明細書に記載される組織切断デバイスおよび方法は広範な用途を有することが理解されるであろう。上述の実施形態は、方法および装置の原理ならびにいくつかの実際の用途を例証するために選択され記載されたものである。上述の説明によって、当業者が、方法および装置を様々な実施形態で、また想到される特定の使用に適するように様々に修正して利用することが可能になる。特許法の規定にしたがって、本発明の動作の原理およびモードを例示的実施形態にて説明し例証してきた。
本発明の方法および装置の範囲が以下の請求項によって定義されるものとする。しかし、本発明は、その趣旨または範囲から逸脱することなく、具体的に説明され例証されるものとは別の形で実施されてもよいことが理解されるはずである。以下の請求項で定義されるような趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態の様々な代替例が請求項を実施する際に採用されてもよいことが、当業者には理解されるべきである。本発明の範囲は、上述の記載を参照して判断されるべきではなく、その代わりに、添付の請求項ならびにかかる請求項によって権利が付与される等価物を参照して判断されるべきである。本明細書にて考察される分野が将来的に発展し、開示のシステムおよび方法がかかる将来的な例に組み入れられることが予測され、意図される。さらに、本明細書においてそれに反する明示的な指示がない限り、請求項で使用されるすべての用語には、それらの最も広範な合理的解釈、および当業者に理解されるようなそれらの通常の意味が与えられるものとする。特に、「a」、「the」、「said」などの単数形の使用は、請求項がそれに反する明示的な限定を列挙しない限り、1つまたは複数の指示された要素を列挙しているものとして読み取られるべきである。以下の請求項は本発明の範囲を定義し、これら請求項およびその等価物の範囲内にある方法および装置を包含するものとする。つまり、本発明は修正および変形が可能であり、以下の請求項によってのみ限定されるものと理解されるべきである。