特許第5703299号(P5703299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703299
(24)【登録日】2015年2月27日
(45)【発行日】2015年4月15日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスのための駆動機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20150326BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20150326BHJP
【FI】
   A61M5/315 500
   A61M5/24 500
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-527335(P2012-527335)
(86)(22)【出願日】2010年9月3日
(65)【公表番号】特表2013-503672(P2013-503672A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2010062931
(87)【国際公開番号】WO2011026931
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年8月30日
(31)【優先権主張番号】09011418.2
(32)【優先日】2009年9月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ユーグル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・センダツキー
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・トイチャー
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−521874(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0047622(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/145171(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0198193(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24− 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスのための、好ましくは、ペン型の注射器のための、駆動機構であって、該機構は:
送達工程の間、第1の方向に可動であるスピンドル(6)と、
該スピンドル(6)に、動作可能なように連結されたスプライン結合された部分(5,11)、及び、
ハウジング(1)を含んでなり、
上記スプライン結合された部分(5,11)と上記ハウジング(1)との間に配置されている後退手段を備え、又は、機構において送達すべき薬物を含有するカートリッジ(4)を収容するためのカートリッジ・ホルダ(3)をさらに含んでなり、上記スプライン結合された部分(11)と、送達すべき薬物を含有する上記カートリッジ(4)又は上記カートリッジ・ホルダ(3)との間に配置されている後退手段(16)を備え、
上記送達工程の後、上記スピンドル(6)及び/又は上記スプライン結合された部分(5,11)が、上記第1の方向と反対の第2の方向に動かされるように、少なくとも上記送達工程の終了の時点で上記スプライン結合された部分(5,11)に作動するように構成された後退手段(12,15,16,17,20)を特徴とする
駆動機構。
【請求項2】
後退手段が、弾性部分(12,17)、又は、バネ要素(15,16,20)として設計される、請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
弾性部分が、スピンドル(6)と係合するスプライン結合されたソケット(5)を緩和する、ゴム要素(17)として設計される、請求項2に記載の駆動機構。
【請求項4】
後退手段(12)とスプライン結合された部分(5)が、ハウジング(1)の一体成形された部材である、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項5】
スプライン結合された部分(11)が、送達工程の間、第1の方向に上記スピンドル(6)を動かすため、上記スピンドル(6)に作動するドライバー(10)の部材として設
計される、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項6】
スプライン結合された部分(5)が、ハウジング(1)に対して、回転するように固定されたスピンドル・ナットとして設計される、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項7】
スピンドル(6)が、カップ形状であり、可撓性材料で作られている、中空プラグ(22)に隣接し、上記中空プラグ(22)が、送達すべき薬物を含有するカートリッジ(4)内で作動する、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【請求項8】
上記中空プラグ(22)が、少なくとも、1mmの壁厚み、少なくとも、1mmの底部厚み、及び、少なくとも、1mmの、軸方向に垂直な中心線と内側底部面との間のクリアランスを有する、請求項に記載の駆動機構。
【請求項9】
スピンドル(6)が、ねじ付きピストン・ロッドとして設計され、第1のスプライン結合された部分(5)が、ねじ付きピストン・ロッドと係合しているナット状の要素として設計されており、ここで2つの対応するねじのピッチは、ピストン・ロッドとナットとの間の、僅かな相対的動きが可能であるように選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物含有カートリッジから、好ましくは、使用者が自分で用量を設定し得る処から、送達すべき医薬品の、即ち、薬物の注射による投与を提供する種類の、薬物送達デバイスのための、特に、ペン型の注射器のための、駆動機構に関わる。
【0002】
薬物送達デバイスは、正規の医療教育をうけていない人々による、定期的注射が行われる処で適用される。これは、自己治療によって、かかる人々が、彼らの病気を効果的に管理することができる、例えば、糖尿病にかかっている人々の間で、益々、一般的となっている。
【0003】
これらの状況では、かかる種類の薬物送達デバイスにいくつかの規定が必要となる。デバイスは、その操作についての使用者による、部品の取り扱いと理解の双方の観点から、構造的に丈夫であり、使用が簡単でなければならない。糖尿病にかかっている人々の場合、多くの使用者は、肉体的に弱く、視覚障害である可能性もある。
【背景技術】
【0004】
特許文献1は、薬物送達デバイスに使用する、一般的な種類の駆動機構を開示している。このデバイスは、ハウジング、ハウジングと係合している用量ダイヤル手段、用量ダイヤル手段に、取り外し可能なように連結されているスプライン結合された部分、及び、用量ダイヤル手段とスプライン結合された部分との間に置かれたクラッチ手段を含む。第1のモードにおいて、用量ダイヤル手段とスプライン結合された部分が連結されている時、両者は、ハウジングに対して、回転することが可能である。それにひきかえ、第2のモードにおいて、用量ダイヤル手段とスプライン結合された部分の連結が離されている時、ハウジングに対して、用量ダイヤル手段の回転が可能であり、一方、ハウジングに対しての、スプライン結合された部分の回転は不可能であり、それにより、スプライン結合された部分の軸方向の動きは、薬物送達デバイスの近位端に向って、縦方向に上記スピンドルを動かすために、スピンドルに伝えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 1 603 611 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬物送達デバイスのための、かかる従来の駆動機構の操作の間、近位端で、送達すべき薬物を投薬するために、薬物含有カートリッジ内部のプラグに加えられる軸方向の力は、ディスクを経由して、スピンドルによる力で加えられる。力を与えることにより、薬物の投薬の間、プラグは変形される、即ち、圧縮される。操作を終えた後、プラグの変形は、駆動機構、及び、スピンドルの送達システムを含んだ全体システムに力をかける。
【0007】
一方では、プラグは薬物含有カートリッジの方向にのみ緩和することができるので、残留している力は、送達システムの待機位置にある、送達すべき薬物の落下と滞留(dwell)時間の増加を引き起こす。一方では、圧縮されたプラグは、スピンドルとスプライン結合された部分に応力を加え、これにより、取扱いを難しくする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、改善された駆動機構を提供することにより、先行技術の欠点を克服することである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の駆動機構により解決される。
【0010】
特に、本発明の目的は、上記送達工程の後、上記スピンドル、又は、上記スプライン結合された部分と一緒に上記スピンドルが、上記第1の方向と反対の、第2の方向に動くように、送達工程の間、第1の方向に可動であるスピンドル、該スピンドルに動作可能であるように連結された、スプライン結合された部分、及び、少なくとも、上記送達工程の終了の時点で、上記スプライン結合された部分上に作動する後退手段を含んでなる機構である、薬物送達デバイスのための、好ましくは、ペン型の注射器のための駆動機構によって達成される。換言すれば、後退手段は、事前に選択された量の薬物が投薬された後、駆動機構の遠位方向に、スピンドル、及び/又は、スプライン結合された部分を移動するために、設計され、配置されている。これは、駆動機構に作動する力を減らすだけでなく、プラグの緩和を可能にし、従って、滞留時間と薬物落下の危険性を減少する。
【0011】
好ましくは、後退手段は、弾性部分、又は、バネ要素として設計され、ここでより好ましくは、弾性部分は、スピンドルと係合する、スプライン・ソケットを緩衝するゴム要素として設計される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適な実施態様において、駆動機構は、さらに、スプライン結合された部分とハウジングとの間に配置されている後退手段を備えた、ハウジングを含む。別の好適な実施態様において、後退手段とスプライン結合された部分は、ハウジングの一体成形された部材(component)である。
【0013】
本発明の駆動機構は、スプライン結合された部分と薬物含有カートリッジとの間に配置されている後退手段を備えた、薬物含有カートリッジを収容する、カートリッジ・ホルダを、さらに、含む。より好ましくは、スプライン結合された部分は、送達工程の間、スピンドルを第1の方向に動かすため、スピンドルに作動するドライバーとして設計される。さらになお、スプライン結合された部分は、ハウジングに対して、回転するように、固定されたスピンドル・ナットとして設計されてよい
【0014】
好ましくは、上記駆動機構において、スピンドルはカップ型の形状であり、可撓性材料で作られている中空プラグに隣接し、ここで、中空プラグは、送達すべき薬物を含有しているカートリッジ内で作動する。より好ましくは、この中空プラグは、少なくとも、1mmの壁厚み、少なくとも、1mmの底部厚み、及び、少なくとも、1mmの、軸方向に垂直な中心線と内側底部面との間のクリアランスを有する
【0015】
本発明に従った術語「薬物送達デバイス」は、好ましくは、医薬品の選択された用量、好ましくは、複数の選択された用量を、例えば、インシュリン、成長ホルモン、低分子量ヘパリン、及び、それらの、類似体、及び/又は、誘導体などを、投薬するために設計された、単一用量、又は、複数用量の、使い捨て、又は、再使用可能なデバイスを意味する。特に、術語「薬物送達デバイス」は、患者等の、正規の医療教育をうけていない人々による、定期的な使用のために設計された、力学的、及び、手動の用量送達、及び、用量選択機構を有する、使い捨て、複数用量のペン型デバイスを意味する。好ましくは、薬物送達デバイスは、注射式のものである。
【0016】
本発明に従った術語「ハウジング」は、好ましくは、任意の、主ハウジング、本体、若しくは、シェル(shell)などの、外部ハウジング、又は、又は、インサート(insert)
若しくは、内部本体などの内側ハウジングを意味する。ハウジングは、薬物送達デバイス、又は、それの機構のいずれかの、安全な、正しい、及び、簡単な取扱を可能にするように設計されてもよい。通常、液体、ごみ、土などの汚染物質への暴露を制約することにより、薬物送達デバイスのいずれかの内部部材を、例えば、駆動機構、カートリッジ、スピンドル、及び/又は、スプライン結合された部分を、収納し、固定し、保護し、ガイドし、及び/又は、係合するように、それは設計される。一般に、ハウジングは、環状の、又は、非環状の形状の、全体、又は、複数パートの部材であってよい。外部ハウジングは、医薬品の多数の用量を投薬することが可能な、カートリッジを収容するための、カートリッジ・ホルダを含んでよい。
【0017】
術語「近位端」は、好ましくは、デバイスの投薬端に最も近い、デバイス、又は、部材の端部を意味する。術語「遠位端」は、デバイスの投薬端から、最も離れている、デバイス、又は、部材の端部を意味する。
【0018】
術語「スプライン結合された部分」は、好ましくは、スピンドルの、スロット(slot)付きの、又は、キー付きの、又は、補完的な部分と係合する、キー付きの、又は、スロット付きの部分を意味する。
【0019】
好ましくは、「スプライン結合された部分」とそれの係合は、ピストン・ロッドとスプライン結合された部分の間の係合を通じて、軸方向の力を伝達することができるものである。好適な実施態様によると、スピンドルは、ねじ付きのピストン・ロッドとして設計され、第1スプライン結合された部分は、ねじ付きのピストン・ロッドと係合しているナット状の要素として設計される。さらになお、2つの対応するねじのピッチは、ピストン・ロッドとそのナットとの間の僅かな相対的動きが可能であるように、選択されてよい。ねじの1つは、第1スプライン結合された部分とねじ結合の係合をし、他のねじは、ドライブ・スリーブ、又は、同様の要素の内ねじとねじ結合の係合をする、2つの外ねじを有する、2重ねじ付きのピストン・ロッドである、スピンドルを提供することは好適である。スピンドルの2つのねじは、異なったピッチを有しても、及び/又は、反対勝手であってもよい。
【0020】
以下において、実施例により、及び、図面を参照することにより、本発明が記述される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施態様に記載の、駆動機構の概略的断面図を示す。
図2】本発明の第2の実施態様に記載の、バネ要素として設計された、後退手段の概略図示す。
図3図2のバネ要素を備えた駆動機構の概略的断面図を示す。
図4】待機位置にある、第3の実施態様に記載の、駆動機構の概略的断面図を示す。
図5】送達すべき薬物の投薬中の、第3の特定の実施態様に記載の、駆動機構の概略的断面図を示す。
図6】第4の実施態様に記載の、駆動機構の概略的断面図を示す。
図7】第5の実施態様に記載の、駆動機構の概略的断面図を示す。
図8】作動力F1が加えられた、先行技術に従う、従来のプラグの概略図を示す。
図9】第6の実施態様に記載の、駆動機構の概略的断面図を示す。
図10】第6の実施態様に記載の、中空プラグの設計図を示す。
図11】第6の実施態様に記載の、中空プラグの概略図を示す。
【0022】
一般的な種類の薬物送達デバイスの一般の組立体は、それの近位端上に底部2と、それの隣に、ハウジング1の近位端に固定された、薬物含有カートリッジ4を収容するためのカートリッジ・ホルダ3を有する、実質的に円形断面のハウジング1を含む。底部2は、スピンドル6と係合する、第1スプライン結合された部分5、又は、ソケットを含んでよい。図1に描かれた実施態様において、スピンドル6は、第1スプライン結合された部分5によって画成された第1内ねじと係合する、第1外ねじを有するピストン・ロッドである。換言するならば、底部2は、ねじ付きスピンドル6とねじ係合する、ナット状の要素を含んでもよい。スピンドル6のねじと、例えば、ナット状の第1スプライン加工された部分5は、ねじを画成する、スプライン、又は、溝の間に小さなクリアランスがあるように、設計される。これにより、スピンドル6と第1スプライン結合された部分5の間の、デバイスの軸方向の、僅かな相対的動きが可能になる。スピンドル6には、それの近位端に、薬物含有カートリッジ4のプラグ8に隣接する、ディスク7が備えられている。スピンドル6の近位方向への動きにより、プラグ8は、薬物含有カートリッジ4内側に押しやられ、これにより、送達すべき薬物を投薬する。
【0023】
送達すべき薬物の薬物量を事前設定するための用量ダイヤル・スリーブ9(ナンバー・スリーブ)は、ハウジング1内に収納され、この用量ダイヤル・スリーブ9内部で作動する、ドライブ・スリーブ10に、クラッチ手段を介して、取り外し可能なように、連結されている。ドライブ・スリーブ10は、内側壁上に、スピンドル6と係合する第2スプライン結合された部分11を含む。図1に描かれた実施態様において、スピンドル6は、ドライブ・スリーブ10の内側上の第2スプライン結合された部分11によって画成された、第2の内ねじと係合する、第2の外ねじ(図示されていない)を有するピストン・ロッドである。
【0024】
薬物送達デバイスの遠位端上に、用量ノブ(knob)が、用量ダイヤル・スリーブ9上に備えられている。用量ダイヤル・スリーブ9は、送達すべき、事前設定された薬物の総量を設定するように、ハウジング1から離れてねじ止めされている。薬物総量を注射(送達)するために、用量ダイヤル・ノブは、デバイスの近位端方向に押されてよい、その結果、用量ダイヤル・スリーブと駆動スリーブを同一方向に押し、これにより、全体デバイスの近位端方向に、送達すべき薬物を保留するため、スピンドル6の近位方向への回転(ねじ止め)がもたらされる。
【0025】
本発明の駆動機構を操作する間、第1のスプライン結合された部分5は、第1の方向に動くスピンドル6に、動作可能なように連結される。上述の先行技術とは対照的に、少なくとも、送達工程の終り時点で、後退手段12は、送達工程の後、スピンドル6、及び/又は、第1スプライン結合された部分5が、前記第1の方向と反対向きの、第2の方向に動かされるように、第1スプライン結合された部分5に作用する。それによって、第1スプライン結合された部分5、及び、スピンドル6は、緩和され、それらの待機位置にもどることが可能となる。この緩和の動きは、第1スプライン結合された部分5とスピンドル6の、それぞれのねじのクリアランス以内の動きだけである。
【0026】
本発明に記載の駆動機構の概略図が図1に示されている。
【0027】
例えば、送達工程の間、スピンドル6は、薬物送達デバイスの近位端へと、即ち、薬物含有カートリッジ4内へと、プラグ8を動かす。少なくとも、送達工程終了の後、即ち、ユーザーが用量ノブなどを放す時、後退手段12は、スピンドル6、及び/又は、第1スプライン結合された部分5に作用するので、それらは、薬物送達デバイスの遠位端方向に、即ち、薬物含有カートリッジ4から離れる方向に、動かされる。
【0028】
それによって、第1スプライン結合された部分5とスピンドル6は緩和され、それらの待機位置に戻ることが可能となる。それの戻りによって、送達すべき別の薬物を投薬することなしに、今度は、スピンドル6方向に緩和することが可能となる、薬物含有カートリッジ4内にあるプラグ8から、スピンドル6は後退する。換言するならば、後退手段12は、スピンドル6、及び/又は、第1スプライン結合された部分5に、復元力を加える。好ましくは、スピンドル6、及び/又は、スピンドル6に結びついているディスクは、前記の緩和、又は、後退工程の間、プラグ8の遠位面と接触したままである。
【0029】
本発明の駆動機構は、技術水準と比較して、実質的な効果を提供する。
【0030】
本発明の駆動機構(本明細書に記載のいずれかの実施態様のものも同様に)を適用することにより、薬物送達デバイス全体は、応力が除去される。応力除去されたスピンドル6、及び/又は、第1スプライン結合された部分5は、待機位置における、及び、ダイヤル(dialing)中の、ユーザーのための滞留時間短縮に貢献する。薬物含有カートリッジ4の内部のプラグ8の応力除去は、薬物送達デバイスの近位端からの、送達すべき薬物の落下を顕著に減らす。
【0031】
好ましくは、本発明に記載の駆動機構には、前記第1スプライン結合された部分5と上記ハウジング1の間に配置されている、前記後退手段12が、ハウジング1内に備えられている。別の方法として、駆動機構は、前記第1スプライン結合された部分5と前記薬物含有カートリッジ4の間に配置された後退手段12と共に、薬物含有カートリッジ4を収容するための、カートリッジ・ホルダ3を、さらに、含んでよい。
【0032】
さらに好ましくは、第1スプライン結合された部分5は、送達工程の間、前記スピンドル6を、第1の方向に動かすための、前記スピンドル上に作動するドライバーとして設計される。その上、第1スプライン結合された部分5は、ハウジング1に対して、回転するように、固定されたスピンドル6・ナットとして設計されてよい。
【0033】
第1の実施態様
第1実施態様によると、後退手段12と第1スプライン結合された部分5は、一体成形された、ハウジング1の部材である。ハウジング1は、ハウジング1の内側表面から内側に、半径方向に伸びている、内側壁、又は、底部2を備えた円筒形状を有してよい。底部2の半径方向、内側端部には、スピンドル6と係合している第1スプライン結合された部分5が、備えられている。好ましくは、後退手段12であり、可撓性を示す、ハウジング1の変形可能な底部2は、そこに一体成形された、第1スプライン結合された部分5を含む。本発明の駆動機構を操作する間、スピンドル6に、動作可能なように連結されているドライブ・スリーブは、底部の第1の固定停止部13上へと動かされる。ドライブ・スリーブ10がさらに、第1の固定停止部13上を越えて動かされる時、少なくとも、底部2の半径方向内側端部は、軸方向に移動し、ドライブ・スリーブ10の近位面は、端の停止部である、底部2の第2の固定停止部14と接触することになる。換言すれば、ドライブ・スリーブ10の、近位面の第1の支台は、第1スプライン結合された部分5を近位方向に曲げる。
【0034】
操作を終了した後、ハウジング1の軸方向に移動した底部2は、第1のスプライン結合された部分5の動きと反対方向に、回復力を加える。それによって、ドライブ・スリーブ10とスピンドル6(これらは、スピンドル6の第2の外ねじとドライブ・スリーブ10の内側上の第2スプライン結合された部分11のねじによってねじ結合で係合されている)は、緩和され、それらの待機位置に戻ることが可能となる。スピンドル6の戻りによって、薬物含有カートリッジ4の内部のプラグ8は、薬物送達デバイスの遠位端方向に緩和することが可能となる。
【0035】
第2の実施態様
第2の実施態様によると、後退手段は、図2に示される種類のバネ要素15として設計される。このバネ要素15とは、遠位方向に伸びる可撓性アーム15a、15b、15c、15dを有するリングとして設計される。さらに、アーム15e、15fは、ハウジング内部のバネ要素の取り付けのため、近位方向に伸びている。バネ要素15は、底部2、又は、ハウジング1の内側壁内で支えられる。好ましくは、それは、ハウジング1の近位端の方向に向いた、1つ、又は、それ以上のクランプによって固定されてもよい。第2の実施態様に記載のバネ要素15は、ドライブ・スリーブ10の近位面と、ハウジング1、特に、ハウジング1の、好ましくは、一体成形されたハウジング1の底部2、又は、内側壁との間に適用される(図3参照)。この第2の実施態様において、ドライブ・スリーブ10は、ドライブ・スリーブ上に備えられた、第2のスプライン結合された部分11を介して、スピンドル6と係合している。
【0036】
バネ要素15は、少なくとも、送達工程の終了の時点で、システムから応力を除去するように、ドライブ・スリーブ10を、それの寸法公差(第2のスプライン結合された部分11の)の範囲内で、ハウジング1に対して、遠位方向に移動するように作動する。それによって、薬物含有カートリッジ4内部のプラグ8も、送達工程の後、薬物送達デバイスの遠位端方向へ、緩和することが可能となる。
【0037】
第3実施態様
上述の第2の実施態様の変形として、図4、及び、5に示す種類の2重バネ要素16が、第3の実施態様において適用される。この2重バネ要素16は、(第2のスプライン結合された部分11を有している)ドライブ・スリーブ10と、薬物含有カートリッジ4の間に配置されている。好ましくは、それは、ドライブ・スリーブ10上の1つの側面上と、薬物含有カートリッジ4上の他の側面上に取り付けられ、一方、2重バネ要素16は、それぞれの開口部によって、ハウジング1の底部2、又は、内側壁を貫通し、そこに固定されてもよい。
【0038】
この配置によって、薬物送達デバイスの待機位置における応力は、除去される。薬物含有カートリッジ4内部のプラグ8は、遠位方向へと緩和することが可能になり、上述の効果をもたらすことになる。
【0039】
さらにその上、この配置において、薬物含有カートリッジ4は、2重バネ要素16のバネ力によって、軸方向に固定される。薬物送達デバイスの近位端上への注射針の取り付けが、薬物含有カートリッジ4を動かす可能性があるので、この固定は、重要である。それゆえ、固定された薬物含有カートリッジ4も、送達すべき薬物の落下の減少に貢献すると共に、送達すべき薬物の用量精度をも改善する。
【0040】
別の効果を、第3実施態様において認めることができる。2重バネ要素16が、ドライブ・スリーブ10上の1つの側面上と、薬物含有カートリッジ4上の他の側面上に取り付けられているので、それは、ハウジング1の底部2から、連結が解かれる。それゆえに、底部2は変形しない。
【0041】
待機位置において(図4参照)、ハウジング1は、応力が除去されているが、2重バネ要素16は、第1スプライン結合された部分5と薬物含有カートリッジ4との間に取り付けられている。それゆえ、落下は起きない。
【0042】
送達すべき薬物の投薬の間(図5参照)、2重バネ要素16がは、底部2と薬物含有カートリッジ4との間に、主に取り付けられていて、底部2の振動性励起を減衰させる。
【0043】
その結果、本発明の効果が達成される、即ち、薬物送達デバイスにおける応力を下げ、送達すべき薬物の落下の減少と滞留時間の短縮をもたらす。
【0044】
別の選択肢として、バネ要素は、ドライブ・スリーブ10とカートリッジ・ホルダ3の間に配置されてもよい。
【0045】
第4実施態様
第4実施態様によると、後退手段は、ハウジング1に対して、スピンドル6と係合する、第1スプライン結合された部分5、又は、ソケットを緩衝する、ゴム要素17として設計されてもよい。この配置は図6に示されており、ここで、ハウジング1には、半径方向内側に伸びている内側壁が備えられている。その壁の内側端部には、第1スプライン結合された部分5、又は、ソケットが備えられている。ゴム要素17、又は、同様な変形可能要素は、ハウジング1と第1スプライン結合された部分5、又は、ソケットの間に、即ち、内側壁の内部に、備えられている。
【0046】
上述の実施態様と同様に、本発明の駆動機構を操作している間、プラグ8を駆動するスピンドル6は、薬物送達デバイスの近位端方向に動かされる。少なくとも、送達工程の終了の時点で、スピンドル6と係合する、第1スプライン結合された部分5、又は、ソケットは、ゴム要素17の可撓性によって、軸方向近位方向に動かされる。
【0047】
送達操作を終えた後、ゴム要素17を介して、軸方向に動かされた第1スプライン結合された部分5、又は、ソケットは、スピンドル6の動きの反対方向に、回復力を及ぼし、それにより、スピンドル6とドライブ・スリーブ10は、緩和され、それらの待機位置に戻ることが可能となる。スピンドル6のこの戻りにより、薬物含有カートリッジ4内部のプラグ8は、薬物送達デバイスの遠位端方向に緩和することが可能となる。
【0048】
ゴム要素17は、薬物送達デバイスにおいて使用されるのに適切であり、当業者により、知られている、いかなる材料であってよい。
【0049】
第5の実施態様
第5実施態様によると、図7に示すように、ベアリング要素18は、後退手段を構築する。ハウジング1には、半径方向内側方向に伸びている内側壁が備えられている。そこに、バネ要素20が、ベアリング要素に対して、スピンドル6と係合している第1のスプライン結合された部分5、又は、ソケットを緩衝する、要素フレーム19が組み込まれている。
【0050】
上述の第4実施態様と同様に、本発明の駆動機構が操作される間、プラグ8を駆動するスピンドル6は、薬物送達デバイスの近位端方向に動かされる。少なくとも、送達工程の終了の時点で、スピンドル6と係合する、第1のスプライン結合された部分5、又は、ソケットは、バネ要素のバネ力によって、軸方向近位方向に動かされる。
【0051】
送達操作を終了した後、バネ要素20を介して、軸方向に動かされた第1のスプライン結合された部分5、又は、ソケットは、スピンドル6の動きの反対方向に、回復力を及ぼし、それにより、スピンドル6とドライブ・スリーブ10は、緩和され、それらの待機位置に戻ることが可能となる。スピンドル6のこの戻りにより、薬物含有カートリッジ4内部のプラグ8は、薬物送達デバイスの遠位端方向に緩和することが可能となる。
【0052】
第6の実施態様
上記実施態様に加えて、又は、それらの代替として、薬物含有カートリッジ4内部で作動するプラグ8を、薬物送達デバイス全体の作動力を減少するように、設計することができる。
【0053】
先行技術に従った、従来プラグ8を、作動力F1(送達すべき薬物の投薬力)にて、装着する時、プラグ8の弾性が、シールリップ21にて、概略的に図8に示されている、力F2とF3の増加をもたらす。プラグ8自体は圧縮される。この理由により、シールリップ21と、薬物含有カートリッジ4の壁との間の摩擦力が増す。それゆえ、プラグ8を動かすために要する力も、増える。
【0054】
薬物送達工程を終了した後、従来プラグ8は、薬物送達デバイスの遠位端の方向に緩和することができず、それは、近位方向において、それの応力を除去することができるだけであり、その結果、送達すべき薬物の落下とより長い滞留時間をもたらす。
【0055】
この欠点を克服するため、この実施態様に記載のカップの形状を有する、可撓性材料で作られた、中空プラグ22が提供される(図9参照)。中空プラグ22は、スピンドル6に隣接し、薬物含有カートリッジ4内で作動する。それは、少なくとも、1mmの壁厚み、少なくとも、1mmの底部厚み(カートリッジ4内に含有された薬物の隣にある)、及び、少なくとも、1mmの、軸方向に垂直な中心線と内側底部面との間のクリアランスを有する。例として、中空プラグ22の設計図を図10に示す。
【0056】
詳細については、作動力F1による、中空プラグ22への荷重は、図11の概略図に見られるように、中空プラグ22の内部にかけられる。中空プラグ22に作動力をかけることにより、それは長く伸ばされる。その時、力F2が減少し、一方、力F3は、増加するか、又は、変わらずに、そのままであり、結果として、中空プラグ22と、薬物含有カートリッジ4の壁との間の摩擦表面の低下がもたらされる。その結果、中空プラグ22を動かすために必要な作動力は減少する。
【0057】
薬物送達工程が終了した後、中空プラグ22は、それの初期位置に戻ることが可能である。中空プラグ22の底面(送達すべき薬物との接触面)は、それの最後の位置に留まり、一方、中空プラグ22の壁部分は収縮し、それによって、システムの応力を除去する。
【0058】
それゆえ、送達すべき薬物に追加の力はかからず、落下と滞留時間の増加が避けられる。
【0059】
中空プラグ22は、薬物含有カートリッジ4において使用されるのに適切であり、当業者により、知られている、いかなる材料であってよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11