(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。また、以下の各実施例において、同じ部材は同じ符号で標示する。
【0013】
(実施例1)
図1及び
図2を参照すると、本実施例の熱音響装置10は、第一基板100と、第二基板120と、音波発生ユニットと、を含み、この音波発生ユニットは、音波発生素子110と、第一電極130と、第二電極140と、を含む。第一電極130と第二電極140とは、相互に間隔をあけて電気的に絶縁して設置され、それぞれ音波発生素子110と電気的に接続される。音波発生ユニットは第一基板100と第二基板120との間に設置されている。つまり、音波発生ユニットは第一基板100と第二基板120とに挟まれている。
【0014】
第一基板100は、第一表面101を有する。第一表面101は、複数の凹部102及び複数の突起104を有し、複数の凹部102及び複数の突起104は交互に設置されている。音波発生素子110は、第一基板100の第一表面101に設置される。凹部102の位置と対応する音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二基板120は、第二表面121を有する。第二基板120は、音波発生素子110が第一基板100と接触する表面と相対する表面に貼付される。即ち、音波発生素子110は、第一基板100の第一表面101と第二基板120の第二表面121との間に設置される。また、第二基板120は複数の通孔122を有し、該複数の通孔122の少なくとも一部は複数の凹部102と対応する。
【0015】
第一基板100及び第二基板120は平面構造体であり、その形状に制限はない。例えば、円形、方形、矩形及び他の形状を有するものである。第一基板100の面積は第二基板120の面積と同じである。これにより、第一基板100と第二基板120との間に設置される音波発生ユニットを保護できる。第一基板100及び第二基板120の表面面積は、25mm
2〜200cm
2である。具体的には、第一基板100及び第二基板120の面積は、40mm
2、100mm
2、40cm
2、或いは100cm
2である。第一基板100及び第二基板120の厚さは0.1mm〜1cmであり、好ましくは0.2mm〜0.8mmである。第一基板100及び第二基板120が音波発生素子110を支持する表面を有することを保証しさえすれば、音波発生ユニットは他の構造でも良い。例えば、塊状構造、曲面構造、弧面構造などである。また、第一基板100の材料及び厚さは、第二基板120の材料及び厚さと異なっても良い。
【0016】
第一基板100及び第二基板120の材料は柔軟な材料である。具体的には、第一基板100及び第二基板120の材料は、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ベンゾシクロブテン(BCB)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂(PC/ABS)、ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)、ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレート(PC/PET)、ポリカーボネート/ポリメチルメタクリレート(PC/PMMA)、ポリアミド(PA)などの柔軟性材料のいずれか一種である。第一基板100及び第二基板120の材料は、優れた柔軟性を有するので、熱音響装置10も優れた柔軟性を有する。本実施例において、第一基板100及び第二基板120は正方形の平面構造であり、一辺の長さは10cmであり、厚さは600μmである。また、第一基板100及び第二基板120の材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。また、第一基板100及び第二基板120はプリント基板(PCB)でも良い。即ち、音波発生素子110は前記PCBに直接設置され、音波発生素子110に駆動電圧及び音響信号を入力することにより、音波発生素子110は熱によって音波を発生させることができる。これにより、発声の機能がPCBに集積できる。
【0017】
複数の凹部102は第一表面101から第一基板100の内部に凹む構造である。第一基板100の第一表面101において、複数の凹部102は均一に分布されるか、或いは特定の規則で分布されるか、或いはアレイ形式で分布されるか、或いはランダムに分布される。好ましくは、複数の凹部102は第一表面101に均一に分布され、且つ突起104によって相互に間隔をあけて設置される。即ち、隣接する二つの凹部102の間には突起104が形成されている。つまり、隣接する二つの凹部102間の第一基板100の表面は、突起104の表面である。複数の凹部102は、貫通溝、止まり溝、貫通穴、止まり穴のいずれか一種或いは多種である。複数の凹部102が貫通穴である場合、音波発生素子110が発生する音は、複数の凹部102によって外界に伝播できる。凹部102は、第一基板100の第一表面101から第一基板100の内部に凹んだ部位に、一つの底面と該底面に連接する二つの側面を含む。突起104の表面が支持されているので、音波発生素子110における音波発生素子110の凹部102と対応する部分は懸架され、且つ凹部102の底面及び側面には接触しない。
【0018】
凹部102の深度は、必要に応じて及び第一基板100の厚さによって選択できる。好ましくは、凹部102の深度は、100μm〜200μmである。この際、第一基板100は、音波発生素子110を保護すると同時に、第一基板100と音波発生素子110との距離を保証する。前記距離により、音波発生素子110が作動して発生した熱は、第一基板100に完全に吸収されず、周辺の媒体へ良く伝播されることができる。これにより、音量が低くなることを防止し、音波発生素子110が各音響周波数に優れた音響効果を有することを保証する。凹部102が溝である場合、凹部102が第一表面101に延伸する長さは、第一基板100の一辺の長さより短い。凹部102が延伸する方向における横断面の形状は、V字型、長方形、台形、多辺形、円形或いは他の不規則な形状である。凹部102の最大の幅(ここで最大の幅とは、横断面の幅の最大値のことである)は、0.2mm〜1mmである。第一基板100は前記のようなサイズの最大の幅を有する凹部102が形成されていることにより、音波発生素子110が作動中に破裂することを防止する。または、音波発生素子110の駆動電圧を下げる。駆動電圧は12Vより小さいが、好ましくは5V以下である。
【0019】
複数の凹部102は好ましくは複数の溝であり、該複数の溝は、相互に平行であり、且つ間隔をあけて均一に分布する。隣接する二つの溝の間の距離はd1であり、該d1は、20μm〜200μmである。前記d1は、第一基板100の表面に、スクリーン印刷方法によって第一電極130及び第二電極140を形成する際の、エッチングの精確性を保証して、音響効果を高めることができる。本実施例において、第一基板100の第一表面101には、相互に平行であり、且つ間隔をあけて均一に分布するストリップ状の複数の溝が設置されている。該ストリップ状の溝の第一表面101における最大幅は0.6mmであり、深度は150μmであり、前記d1は100μmである。
【0020】
音波発生素子110は、第一基板100の第一表面101に設置される。具体的には、音波発生素子110は、第一区域112と第二区域114に区分されることができる。第一区域112は、凹部102の位置と対応する一部である。従って、第一区域112の音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二区域114の音波発生素子110は、突起104の位置と対応する一部である。第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面に設置される。また、音波発生素子110を第一基板100に強固に固定するために、突起104の表面に接着剤層或いは接着剤点を設けることができる。
【0021】
音波発生素子110は、単位面積当たりの熱容量が非常に低い。音波発生素子110の材料は制限されず、例えば、カーボンナノチューブのみからなる純カーボンナノチューブ構造体、カーボンナノチューブ複合構造体或いは他の非カーボンナノチューブの熱音波発生材料である。本実施例において、音波発生素子110はカーボンナノチューブのみからなる純カーボンナノチューブ構造体である。該純カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量は2×10
−4J/cm
2・Kより小さい。具体的には、音波発生素子110は導電構造体であり、比表面積は非常に大きく、その厚さは薄い。これにより、音波発生素子110は入力された電流のエネルギーを熱エネルギーに変換することができる。即ち、音波発生素子110は、入力された信号によって、速く昇温し、熱を周辺の媒体へ伝播させ、この伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波によって、音波を発生させる。
【0022】
音波発生素子110は、好ましくは自立構造体である。ここで、自立構造体とは、支持体材を利用せず、音波発生素子110がそれ自体の特定の形状を保持することを意味する。従って、音波発生素子110は、その一部分が懸架して設置され、周辺の媒体と十分に接触して熱を伝播する。音波発生素子110は、フィルム構造、複数の線状構造が平行に形成された層状構造、或いはフィルム構造及び線状構造の組み合わせである。
【0023】
音波発生素子110は、層状のカーボンナノチューブ構造体である。好ましくは、該層状のカーボンナノチューブ構造体の厚さは0.5nm〜1mmである。カーボンナノチューブ構造体の厚さが薄い場合、例えば10nm以下である場合、カーボンナノチューブ構造体の透明度は優れる。カーボンナノチューブ構造体は自立構造であり、カーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブは分子間力で相互に引き合い、カーボンナノチューブ構造体は特定の形状を有する。即ち、カーボンナノチューブ構造体の一部は第一基板100に支持され、他の部分は懸架される。カーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブは同じ方向に延伸し、該延伸する方向と溝が延伸する方向とは角度を成す。該角度は0°〜90°である(0°は含まず)。
【0024】
カーボンナノチューブ構造体は、少なくともカーボンナノチューブフィルム、複数の平行に設置されたカーボンナノチューブワイヤ、或いは少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムとカーボンナノチューブワイヤの組み合わせである。カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイを直接引き出して得られる。カーボンナノチューブフィルムの厚さは0.5nm〜100μmであり、カーボンナノチューブフィルムの単位面積当たりの熱容量は1×10
−6J/cm
2・Kより小さい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブの一種または多種である。単層カーボンナノチューブの直径は0.5nm〜50nmであり、二層カーボンナノチューブの直径は1nm〜50nmであり、多層カーボンナノチューブの直径は1.5nm〜50nmである。
【0025】
図3を参照すると、カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブが形成された自立構造体であり、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。多数のカーボンナノチューブの延伸する方向はカーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行である。また、複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。具体的には、多数のカーボンナノチューブにおける各カーボンナノチューブは、延伸する方向における隣接するカーボンナノチューブと、分子間力で端と端とが接続されている。カーボンナノチューブフィルムには、少数のランダムなカーボンナノチューブが含まれているが、これは、多数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されていることに影響しない。
【0026】
カーボンナノチューブフィルムは自立構造体である。ここで、自立構造体とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができる形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。
【0027】
具体的には、カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、絶対的に直線状ではなくやや湾曲している。または、カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、延伸する方向に完全に配列せず、少しずれている場合もある。従って、同じ方向に沿って配列されている多数のカーボンナノチューブの中において、隣同士のカーボンナノチューブが部分接触する可能性がある。カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは第一基板100の第一表面101にほぼ平行である。カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブフィルムを含み、該複数のカーボンナノチューブフィルムは、同一面上で第一基板100の第一表面101に設置される。さらに、カーボンナノチューブ構造体は、相互に重なった多層のカーボンナノチューブフィルムを含み、隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、交差する角度βを有し、該角度βは0°〜90°である。
【0028】
カーボンナノチューブフィルムは強い接着性を有するため、突起104の表面に直接貼着できる。カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されている。該複数のカーボンナノチューブの延伸する方向は、凹部102の延伸する方向と角度を成す。好ましくは、複数のカーボンナノチューブの延伸する方向は凹部102の延伸する方向と垂直になる。更に、カーボンナノチューブフィルムを突起104の表面に貼着させた後、有機溶剤によって、第一基板100に貼着したカーボンナノチューブフィルムを処理する。具体的には、試験管を利用して、有機溶剤をカーボンナノチューブフィルムが浸漬するまで滴らせる。該有機溶剤は揮発性の有機溶剤であり、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、塩化エチレン或いはクロロホルムである。本実施例において、有機溶剤はエタノールである。微視的には、揮発性の有機溶剤が揮発する際、表面張力の作用によって、カーボンナノチューブフィルムにおける一部の隣接するカーボンナノチューブは収縮して束になり、カーボンナノチューブフィルムと第一基板100との接触面積を増大させ、突起104の表面に緊密に貼着できる。また、一部の隣接するカーボンナノチューブが収縮して束になるため、カーボンナノチューブフィルムの機械強度及び強靭さを増強させ、カーボンナノチューブフィルムの表面面積は減少し、接着性は小さくなる。巨視的には、カーボンナノチューブフィルムは均一なフィルム構造になる。
【0029】
一方、複数のカーボンナノチューブワイヤは、間隔をあけて平行して、層状のカーボンナノチューブ構造体を形成できる。カーボンナノチューブワイヤの延伸方向は凹部102の延伸方向と一定の角度を成す。カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの延伸方向と平行である。凹部102の位置において、層状のカーボンナノチューブ構造体は、間隔をあけて平行する複数のカーボンナノチューブワイヤを含み、且つ該複数のカーボンナノチューブワイヤは、凹部102と対応する位置に懸架して設置される。好ましくは、カーボンナノチューブワイヤの延伸方向は、凹部102の延伸方向と垂直である。隣接するカーボンナノチューブワイヤの距離は0.1μm〜200μmであるが、好ましくは、50μm〜130μmである。本実施例において、隣接するカーボンナノチューブワイヤの距離は120μmであり、カーボンナノチューブワイヤの直径は1μmである。
【0030】
カーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤであることができる。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤもねじれ状カーボンナノチューブワイヤも自立構造である。
図4を参照すると、カーボンナノチューブワイヤが、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤである場合、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本の非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。有機溶剤によって、カーボンナノチューブフィルムを処理して、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを得る。具体的には、有機溶剤によって、カーボンナノチューブフィルムの全ての表面を浸す。揮発性の有機溶剤が揮発する際、表面張力の作用によって、カーボンナノチューブフィルムにおける相互に平行する複数のカーボンナノチューブは、分子間力で緊密に結合して、カーボンナノチューブフィルムを収縮して非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを得る。前記有機溶剤はエタノール、メタノール、アセトン、塩化エチレン或いはクロロホルムである。有機溶剤によって処理されないカーボンナノチューブフィルムと比較して、有機溶剤によって処理された非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの比表面積は減少し、且つ接着性も小さい。また、カーボンナノチューブワイヤの機械強度及び強靭さを増強させ、外力によってカーボンナノチューブワイヤが破壊される可能性を低くする。作動中において、凹部102の位置に懸架されたカーボンナノチューブワイヤは変形しないため、優れた熱音響効果を保持できる。
【0031】
図5を参照すると、カーボンナノチューブフィルムの長手方向に沿う対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。好ましくは、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各カーボンナノチューブセグメントでは、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本のねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。更に、有機溶剤によって、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを処理する。有機溶剤によって処理されたねじれ状カーボンナノチューブワイヤは比表面積が減少し、接着性が小さい。また、カーボンナノチューブワイヤの機械強度及び強靭さを増強させ、カーボンナノチューブワイヤの製造方法は、特許文献1及び特許文献2に掲載されている。
【0032】
本実施例において、音波発生素子110は、複数の非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤが間隔をあけて平行して形成された層状のカーボンナノチューブ構造体である。有機溶剤によって単層のカーボンナノチューブフィルムを非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤに形成する。該複数の非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、凹部102と対応する位置に懸架して設置される。
【0033】
第一電極130及び第二電極140は、それぞれ音波発生素子110と電気的に接続される。これにより、周波数電気信号を音波発生素子110に入力することができる。具体的には、第一電極130及び第二電極140は、第一表面101に直接、間隔をあけて設置しても良い。或いは音波発生素子110の第一基板100と接触する表面と相対する表面に、間隔をあけて設置しても良い。更に、熱音響装置10は第三電極及び第四電極を有することができる。第一電極130及び第二電極140が、第一表面101に直接設置される場合、第三電極及び第四電極は第一基板100の内部に第一基板100と絶縁して設置され、且つ第一電極130及び第二電極140に電気的に接続される。第一電極130及び第二電極140が、音波発生素子110の第一基板100と接触する表面と相対する表面に設置される場合、第三電極及び第四電極は第二基板120の内部に第二基板120と絶縁して設置され、且つ第一電極130及び第二電極140に電気的に接続される。
【0034】
第一電極130及び第二電極140は導電材料からなり、その形状及び構造に制限はない。具体的には、第一電極130及び第二電極140は、細長いストリップ状、棒状或いは他の形状でも良い。その材料は、金属、導電性接着剤、導電ペースト、金属性のカーボンナノチューブ、ITOなどの導電性材料のいずれか一種である。
【0035】
本実施例において、音波発生素子110に対向する両辺縁における突起104の表面に、第一電極130及び第二電極140がそれぞれ設置され、この第一電極130及び第二電極140は、凹部102の延伸する方向と平行に位置する。音波発生素子110の第一区域112及び第二区域114は、第一電極130と第二電極140との間に位置している。第一電極130及び第二電極140は金属糸からなる。また、音波発生素子110の第一基板100と反対側の表面に、第一電極130及び第二電極140をそれぞれ設置しても良い。この際、音波発生素子110は、第一基板100の表面に緊密に固定される。
【0036】
第二基板120は複数の通孔122を有し、音波発生素子110に貼付して設置される。該複数の通孔122は複数の凹部102の一つ一つに対応する。即ち、音波発生素子110の第一区域112は、第二基板120の通孔122及び第一基板100の複数の凹部102と対応する。これにより、音波発生素子110の第一区域112は懸架される状態を保持する。第二基板120は音波発生素子110を保護すると同時に、外力によって音波発生素子110が破壊されることを防止できる。第二基板120の通孔122によって、音波発生素子110が発生した音を外界に伝播することができ、熱音響効果に影響を与えない。通孔122が第二基板120において延伸する方向は、凹部102が延伸する方向と同じである。通孔122が延伸する方向における横断面の形状は、V字型、長方形、台形、多辺形、円形或いは他の不規則な形状である。通孔122が延伸する方向における横断面の形状及び面積は、凹部102が延伸する方向における横断面の形状及び面積と同じである。本実施例において、通孔122が延伸する方向における横断面の形状は長方形である。
【0037】
カーボンナノチューブはその軸方向に優れた導電性を有するため、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている場合、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、好ましくは、第一電極130から第二電極140までの方向に沿って延伸する。また、第一電極130及び第二電極140との間の距離は好ましくは基本的に同じである。これにより、第一電極130及び第二電極140との間におけるカーボンナノチューブの抵抗値は基本的に同じである。第一電極130及び第二電極140の長さは、好ましくは、カーボンナノチューブ構造体の幅より長い。この際、カーボンナノチューブ構造体を十分に利用することができる。本実施例において、音波発生素子110におけるカーボンナノチューブは、第一電極130及び第二電極140の長手方向に垂直な方向に配列する。第一電極130と第二電極140とは平行に設置される。第一電極130及び第二電極140によって、周波数電気信号をカーボンナノチューブ構造体に入力する。
【0038】
音波発生素子110が音波を発生する原理は、電気−熱−音の変換であり、音波発生素子110が音波を発生する際熱が生じる。熱音響装置10が作動する際、第一電極130及び第二電極140により外部回路と電気的に接続され、外部信号を転送して、音波を発生させることができる。熱音響装置10はカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量及び散熱の表面は小さいので、信号を入力した後、カーボンナノチューブ構造体は速く昇温し、温度が周期的に変化して、温度波の拡散により、周辺の空気が熱膨張されて音が生じる。
【0039】
熱音響装置10には以下の優れた点がある。第一に、音波発生ユニットは第一基板と第二基板との間に設置されている。つまり、第一基板と第二基板とにより挟まれている。これにより、音波発生ユニットを固定すると同時に、層状のカーボンナノチューブ構造体を良好に保護でき、外力によって層状のカーボンナノチューブ構造体が破壊されることを防止する。また、第二基板における複数の通孔によって、音波発生素子が発生した音を外界に伝播することができ、熱音響効果に影響を与えない。第二に、第一基板及び第二基板は柔軟な材料からなるので、熱音響装置10も柔軟性に優れる。第三に、柔軟な材料は安価であり、また加工し易いので、熱音響装置10も加工し易い。従って、従来技術によって、小さいサイズの構造体及び部品を製造し易く、且つコストも低いため産業化に有利である。
【0040】
(実施例2)
図6、
図7を参照すると、本発明の実施例2は熱音響装置20を提供する。本実施例の熱音響装置20は、第一基板100と、第二基板120と、音波発生ユニットと、を含み、該音波発生ユニットは、音波発生素子110と、複数の第一電極130と、複数の第二電極140と、を含む。複数の第一電極130と複数の第二電極140とは、相互に間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。音波発生ユニットは第一基板100と第二基板120との間に設置されている。つまり、第一基板100と第二基板120とに挟まれている。
【0041】
本実施例2の熱音響装置20の構造と、実施例1の熱音響装置10の構造とは基本的に同じであるが、異なる点がある。その異なる点を以下に示す。本実施例2の音波発生ユニットは、複数の第一電極130と複数の第二電極140を含み、複数の第一電極130と複数の第二電極140とは間隔をあけて交互に設置され、任意の隣接する第一電極130と第二電極140との間に、少なくとも一つの凹部102を有し、複数の第一電極130と複数の第二電極140とは、突起104の表面に設置され、複数の第一電極130は相互に電気的に接続され、複数の第一電極140も相互に電気的に接続される。
【0042】
更に、複数の第一電極130と複数の第二電極140とは交互に設置され、隣接する第一電極130と第二電極140とは間隔をあけて設置される。具体的には、複数の第一電極130は、第一連接部150によって電気的に相互に連接されて第一櫛歯電極を形成する。複数の第二電極140は、第二連接部160によって電気的に相互に連接されて第二櫛歯電極を形成する。第一櫛歯電極と第二櫛歯電極とが対向して設置されることによって、第一櫛歯電極の歯部と第二櫛歯電極の歯部とは間隔をあけて互いに平行に、且つ交互に設置される。第一連接部150と第二連接部160の設置される位置は、音波発生素子110の音の発生に影響しない。本実施例において、第一連接部150と第二連接部160とは、第一基板100の第一表面101の対向する両辺縁にそれぞれ設置される。
【0043】
第一櫛歯電極の歯部と第二櫛歯電極の歯部とは交互に設置されている。この連接方式によって、隣接する第一電極130及び第二電極140は一つの熱音響ユニットを形成する。従って、音波発生素子110は複数の熱音響ユニットを備える。また、該複数の熱音響ユニットは並列であり、音波発生素子110の駆動電圧を低くする。
【0044】
(実施例3)
図8、
図9を参照すると、本発明の実施例3は熱音響装置30を提供する。本実施例の熱音響装置30は、第一基板100と、第二基板120と、複数の音波発生ユニットと、を含む。各音波発生ユニットは、音波発生素子110と、複数の第一電極130と、複数の第二電極140と、を含む。複数の音波発生ユニットは、第一基板100の第一表面101に相互に独立して設置され、第一基板100と第二基板120との間に設置されている。つまり、この複数の音波発生ユニットは第一基板100と第二基板120とに挟まれている。各音波発生ユニットにおいて、複数の第一電極130と複数の第二電極140とは、相互に間隔をあけて電気的に絶縁して設置され、それぞれ音波発生素子110と電気的に接続される。第一基板100の第一表面101は、複数の凹部102を有し、第二基板120は複数の通孔122を有し、該複数の通孔122の少なくとも一部は複数の凹部102と対応する。
【0045】
隣接する音波発生ユニットは相互に独立して設置される。ここで、相互に独立して設置されるとは、隣接する音波発生ユニットにおける音波発生素子110が相互に絶縁されていて、音波発生素子110に異なる信号を入力することによって、独立して作動することである。具体的には、切線108によって、隣接する音波発生ユニットは相互に独立して設置される。切線108は、第一基板100の第一表面101に設置される。第一基板100の面積或いは音波発生ユニットの数量によって、複数の切線108の位置を選択することができる。本実施例において、複数の切線108は、第一基板100の第一表面101に設置され、該複数の切線108は、相互に平行であり或いは相互に垂直である。複数の切線108は、貫通溝、貫通穴、止まり溝、止まり穴の一種或いは多種である。本実施例において、複数の切線108は止まり溝である。これにより、複数の音波発生ユニットは同じ基板を用いることになる。
【0046】
本実施例3の熱音響装置30の構造と、実施例2の熱音響装置20の構造とは基本的に同じであるが、異なる点がある。該異なる点を以下に示す。本実施例3の複数の音波発生ユニットは第一基板100の第一表面101に相互に独立して設置され、第一基板100と第二基板120との間に設置されている。つまり、第一基板100と第二基板120とにより挟まれている。
【0047】
実施例3に係る複数の音波発生ユニットの製造方法は、第一基板100を提供し、該第一基板100は第一表面101を有し、第一表面101に複数のユニット格子を定義するステップ(S11)と、各ユニット格子に、間隔をあけて平行する複数の凹部102を形成し、パターニングされた表面を形成するステップ(S12)と、パターニングされた表面に、間隔をあけて複数の第一電極130及び複数の第二電極140を形成するステップ(S13)と、第一表面101に音波発生素子110を設置し、複数の第一電極130及び複数の第二電極140と電気的に接続し、該音波発生素子110は複数のユニット格子を被覆し、且つ複数のユニット格子と一対一で対応するステップ(S14)と、切線108によって、音波発生素子110を切断して分離し、ユニット格子における隣接する音波発生素子110を絶縁するステップ(S15)と、を含む。
【0048】
ステップ(S11)では、第一基板100の第一表面101において、複数のユニット格子は相互に独立する。ユニット格子を定義する方法は制限されない。本実施例においては、第一基板100の第一表面101に、複数の切線108を形成することによって、複数のユニット格子を形成する。切線108を形成する方法は制限されず、例えば、機械的方法、化学的方法などである。本実施例において、ウェットエッチング法によって、第一基板100に、複数の切線108を形成する。
【0049】
具体的には、切線108を形成する方法は、第一基板100の第一表面101にマスク層(図示せず)を設置するステップ(S111)と、第一基板100をエッチングして、複数の切線108を形成するステップ(S112)と、マスク層を除去するステップ(S113)と、含む。
【0050】
ステップ(S12)において、第一基板100は第一表面101を有し、複数の凹部102を第一基板100の第一表面101に形成し、隣接する凹部102の間に、突起104を形成する。ドライエッチング法或いはウェットエッチング法によって、第一基板100の第一表面101に複数の凹部102を形成する。本実施例において、ウェットエッチング法によって、基板100の第一表面101に複数の凹部102を形成する。
【0051】
具体的には、各ユニット格子に、間隔をあけて複数の凹部102を形成し、パターニングされた表面を形成するステップは、第一基板100の第一表面101に、マスク層(図示せず)を設置するステップ(S121)と、第一基板100におけるユニット格子をエッチングして、間隔をあけて複数の凹部102を形成するステップ(S122)と、マスク層を除去するステップ(S123)と、含む。
【0052】
ステップ(S121)において、マスク層はパターニングされた構造であり、該パターニングされた構造は複数の貫通穴を有する。各ユニット格子における凹部102の位置及び数量によって、マスク層における貫通穴の位置及び数量を確定する。本実施例において、マスク層における貫通穴は矩形であり、且つ同じ方向に沿って延伸するので、複数の凹部102も同じ方向に沿って延伸する。また、隣接する各ユニット格子における凹部102は通じていないので、各ユニット格子は相互に独立する。凹部102の深度は100μm〜200μmであり、凹部102の最大の広さは0.2mm〜1mm。隣接する二つの凹部102の距離は20μm〜200μmである。
【0053】
更に、ステップ(S11)及びステップ(S12)は、一つのステップで完成できる。即ち、一つのマスク層によって、第一基板100の第一表面101に、複数の切線108及び複数の凹部102を一回で形成する。切線108及び凹部102の作用は異なる。切線108の作用は、第一基板100の第一表面101に複数のユニット格子を定義し、複数の音波発生ユニットを、切線108によって、相互に独立させることである。凹部102の作用は凹部102によって、音波発生素子110と第一基板100の間に特定の距離を形成し、熱音響効果を高めることである。
【0054】
ステップ(S13)において、各ユニット格子における突起104の表面に、複数の第一電極130及び複数の第二電極140を、間隔をあけて設置する。第一電極130及び第二電極140の延伸方向は突起104の延伸方向と平行である。隣接する第一電極130と第二電極140の間に、凹部102を有する。スクリーン印刷法によって、第一電極130及び第二電極140を形成する。本実施例において、スクリーン印刷法によって、突起104の表面に第一電極130及び第二電極140を形成する。
【0055】
ステップ(S14)において、音波発生素子110(カーボンナノチューブ構造体)は第一表面に設置され、複数のユニット格子を被覆する。各ユニット格子における音波発生素子110は、複数の第一電極130及び複数の第二電極140と電気的に接続される。音波発生素子110は第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112の音波発生素子110は、凹部102の位置に懸架して設置し、第二区域114の音波発生素子110は、突起104に設置する。音波発生素子110は、複数の第一電極130及び複数の第二電極140の表面に付着し、且つ複数の第一電極130及び複数の第二電極140と電気的に接続される。音波発生素子110はカーボンナノチューブ構造体を含み、カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列され、基板の表面とほぼ平行する。カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの延伸方向は凹部102と角度を成す。該角度は0°〜90°である(0°は含まず)。
【0056】
ステップ(S15)において、各ユニット格子における隣接する音波発生素子110を絶縁することを保証しさえすれば、複数のユニット格子によって、音波発生素子110を切断して分離する方法は制限されない。本実施例において、レーザーによって、切線108に沿って、カーボンナノチューブ構造体を切断する。
【0057】
熱音響装置30には以下の優れる点がある。第一に、熱音響装置30において、隣接する音波発生ユニットが相互に絶縁して設置される。これにより、各音波発生ユニットにおける音波発生素子110に異なる信号を入力でき、且つ各音波発生素子110は独立して作動することができる。第二に、第一基板100の第一表面101に複数のユニット格子を定義し、複数のユニット格子に、複数の第一電極130及び第二電極140を一度に形成して、音波発生素子110が一度に設置される。これにより、一つの基板に複数の音波発生ユニットを一度に形成することができ、工程が簡単であり、熱音響装置の産業化に有利である。第三に、各音波発生ユニットの一体性を保護できれば、必要な形状及び大小によって、切線で複数の音波発生ユニットを任意に切断することできる。これにより、複数の熱音響装置を得ることができ、熱音響装置の産業化に有利である。