(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から5のいずれか一項において、前記変速機および前記発電機を収納するケースが、前記入力軸を貫通させる開口と、この開口の周囲を取り囲むフランジとを有し、前記フランジを介して前記ケースが前記エンジンに取り付けられている航空機用発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の発明では、
図10に示すように、圧縮機2、燃焼器3、タービン4を備えた2軸型ファンエンジンにおいて、圧縮機2を駆動する高圧軸7に、燃料ポンプ、油圧ポンプなどの他の補機類18を駆動する第1のアクセサリ・ギヤ・ボックス(AGB)19を連結し、このAGB19とは別に、発電装置75を駆動するために、ファン10を駆動する低圧軸9に、その径方向に延びる連結軸71を介して第2のAGB73を連結し、この第2のAGB73に発電装置75を連結している。さらに、発電装置75の内部の図示しない変速機や発電機を、それぞれエンジン軸心Cの方向に向け、かつ、互いに上下方向に並んで配置している。これにより、発電装置75をエンジン側方への出っ張りの少ない状態で取り付けて、エンジンEの前面面積の増大を抑制できる利点があるが、第2のAGB73を必要とするので、重量の増加、コストアップ、空気抵抗の増大およじ信頼性低下などを招くことになる。
【0008】
そこで、本発明は、低圧軸駆動の大容量発電を行う場合においても、アクセサリ・ギヤ・ボックスなどを別途設けることなく、航空機用エンジンに対しこれの前面の面積が増大するのを抑制した状態に取り付けることができる航空機用発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る航空機用発電装置は、航空機用エンジンにより駆動される発電装置であって、前記エンジンの回転軸に連結される変速機と、前記変速機の出力により駆動される発電機と、前記回転軸と交差する方向に沿った軸心を有し、前記回転軸に連結される入力軸と、前記入力軸に連結されて前記入力軸と交差する方向の軸心回りに前記変速機を駆動する伝動機構とを備え、前記変速機と前記発電機が前記回転軸の周方向に離間して配置されている。例えば、前記入力軸は前記回転軸の径方向に沿った軸心を有し、前記伝動機構は入力軸と直交する方向の軸心回りに変速機を駆動する。
【0010】
この航空機用発電装置では、エンジンの回転軸と交差する方向に沿って配置された入力軸の回転が、伝動機構によって入力軸と交差する方向の軸心回りの回転に変換されて変速機に伝達されるので、変速機を航空機用エンジンのほぼ前後方向に沿った配置で設けることができる。また、変速機と発電機が、回転軸の周方向、つまり上下方向に離間して配置されている。その結果、この発電装置は、全体として、エンジンの軸心方向から見て、縦長(周方向に長い)で厚みの薄いスリムな形状、つまり航空機用エンジンの側面からの出っ張りが少ない状態で好適に取り付けられる形状となり、航空機の空気抵抗の増大を抑制して燃費の低下を防止できる。
【0011】
また、エンジンの回転軸に交差する入力軸の回転が、伝動機構によって入力軸と交差する方向の軸心回りの回転に変換されるので、大容量発電を行うに際して発電装置を低圧軸の回転伝達により駆動する構成とする場合でも、アクセサリ・ギヤ・ボックスを別途設けることなしに達成することができる。したがって、アクセサリ・ギヤ・ボックスの追加による重量の増加、コストアップ、空気抵抗の増大および信頼性低下などを抑制できる。
【0012】
本発明において、前記入力軸が前記周方向における前記変速機と前記発電機の間に配置されていることが好ましい。これにより、入力軸が、重量の比較的大きい変速機と発電機との間、つまり、発電装置の重心に近くに位置することとなる。発電装置の航空機用エンジンへの取付面は、入力軸を取り囲むように配置されるが、入力軸が重心に近いので、この取付面に対する発電装置のオーバーハングモーメントが小さくなり、発電装置の航空機用エンジンへの取り付けが安定化される。
【0013】
本発明において、前記変速機と前記発電機は互いに平行な軸心を有し、少なくとも一部分の軸心方向位置が互いに重なっていることが好ましい。これにより、変速機と発電機とは、軸心が互いに平行なので、平歯車でギヤ連結できるから、構造を簡略化することができるとともに、少なくとも一部分の軸心方向位置が互いに重なっているので、発電装置の軸心方向の長さを短縮できる。
【0014】
本発明において、ファンを駆動する低圧軸と圧縮機を駆動する高圧軸とを備えるエンジンにより駆動される発電装置であって、前記回転軸が前記低圧軸であることが好ましい。これにより、発電装置は、エンジンストール防止のために取り出し負荷に制限がある高圧軸とは異なり、取り出し負荷の制限が少ない低圧軸により回転駆動されるので、大容量発電が可能になる。
【0015】
本発明において、前記変速機がトラクション無段変速機であることが好ましい。トラクション無段変速機を使用することにより、変速比の大きな変化にも対応することができるので、特に回転変動の大きい低圧軸に連結した場合でも、大容量発電を容易に実現できる。
【0016】
例えば、前記トランクション無段変速機をダブルキャビティ型とし、その軸心方向における中間部に入力部が設けられ、その外側に出力部が設けられている構成とすることができる。この構成によれば、伝動機構を介して変速機の入力部に連結される伝動機構入力軸が変速機の軸心方向の中間部に配置されるので、伝動機構入力軸を発電機の重心に近づけ易くなり、前述のオ−バ−ハングモ−メントが小さくなる。
【0017】
本発明において、前記変速機および前記発電機を収納するケースが、前記入力軸を貫通させる開口と、この開口の周囲を取り囲むフランジとを有し、前記フランジを介して前記ケースが前記エンジンに取り付けられていることが好ましい。これにより、ケースの開口を貫通して突出する入力軸をエンジンの回転軸に連結させた状態で、ケースにおける開口の周囲を取り囲むフランジを、例えばエンジンのフランジに重ね合わせ状態で互いに固定するなどの手段により、発電装置を容易な取付作業でエンジンに安定して取り付けることができる。
【0018】
本発明において、さらに、前記変速機と前記発電機との間をギヤ連結する中間ギヤを有していることが好ましい。これにより、変速機の回転を中間ギヤを介し増速または減速した状態で発電機に伝達できるので、変速機と発電機を共に適切な回転数で駆動することができ、変速機の回転を、発電機を駆動する回転数まで一挙に増速して伝達する場合のような大きな機械損失の発生を防止できる。
【0019】
前記中間ギヤを有する構成において、さらに、前記中間ギヤのギヤ軸に連結されて潤滑油を供給するポンプを備えていることが好ましい。これにより、中間ギヤの回転を利用してポンプを駆動することができ、ポンプ駆動用の専用の駆動系が不要となる結果、簡素化した構成により潤滑油を潤滑対象部分に供給することができる。
【0020】
本発明において、前記変速機と前記発電機の軸心が前記エンジンの回転軸と平行であることが好ましい。これにより、変速機と発電機の軸心が、エンジンの前後方向に配置される回転軸と平行配置とされることにより、回転軸に対し直交方向の横断面の面積(前面面積)が小さくなり、航空機用エンジンを覆うナセルの形状を、エンジンの前面面積の増大を抑制する好適な形状とすることができる。
【0021】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る航空機用発電装置1のエンジンEへの連結状態を模式的に示した構成図である。エンジンEは、2軸型ファンエンジンであり、圧縮機2、燃焼器3、タービン4およびファン10を主要構成要素として備えている。圧縮機2から供給される圧縮空気に燃料を混合して燃焼器3で燃焼させ、その燃焼により発生する高温高圧の燃焼ガスがタービン4に供給される。
【0024】
タービン4は前段側の高圧タービン41と後段側の低圧タービン42とを有し、圧縮機2は、中空の高圧軸7を介して高圧タービン41に連結されており、この高圧タービン41により回転駆動される。ファン10は、高圧軸7の中空部に挿通された低圧軸9を介して低圧タービン42に連結されており、この低圧タービン42により回転駆動される。高圧軸7および低圧軸9は共通のエンジン軸心Cを有する同心配置となっている。こうして、低圧タービン42から噴射される燃焼ガスのジェット流と、ファン10により生成される高速空気流とによりエンジン推力が得られるようになっている。
【0025】
低圧軸9におけるファン10の後方に傘歯車8Aが設けられ、この傘歯車8Aに噛合する傘歯車8Bが、低圧軸9の径方向に延びた第1連結軸11の一端部に設けられている。この第1連結軸11の他端部に発電装置1の後述する入力軸(伝動機構入力軸)が連結されており、低圧軸9からの回転伝達により発電装置1が駆動されるようになっている。すなわち、従来の一般的な航空機用発電装置では、発電装置1を駆動するエンジンEの回転軸として高圧軸7が用いられていたのと異なり、この実施形態では、低圧軸9が発電装置1を駆動する回転軸として用いられている。第1連結軸11は、エンジン回転軸の一つである低圧軸9の径方向に沿った軸心を有しているが、この第1連結軸11の他端部は、
図10に示した従来装置のようなアクセサリ・ギヤ・ボックス73を介在することなしに、
図1の発電装置1の入力軸に直接的に連結されている。
【0026】
発電装置1は、この実施形態において、エンジンEのファンケースFCに取付パッド12を介して取り付けられており、これの詳細については後述する。なお、従来装置と同様に、高圧軸7の前端に、互いに噛合する傘歯車13A,13Bを介して第2連結軸14の一端部がギヤ連結されており,この第2連結軸14の他端部に、燃料ポンプなどの補機18を駆動するためのアクセサリ・ギヤ・ボックス(AGB)19が連結されている。
【0027】
発電装置1の概略構成を示す模式図である
図2において、発電装置1の入力側には、エンジンEの第1連結軸11に一端部が直接連結されて径方向R(
図1)に延びる伝動機構入力軸27と、この伝動機構入力軸27に連結されて第1連結軸11と直交する方向(この例ではエンジン軸心Cの方向)の軸心回りに変速機22を駆動する伝動機構21が配設されている。前記入力軸27は径方向R(
図1)に延びるものに限定されず、径方向Rから若干傾斜していてもよい。つまり、入力軸27はエンジン軸心Cと交差する方向に沿った軸心を有するものであれば、本発明に含まれる。
【0028】
伝動機構21は、前後方向FRに沿った軸心を有する伝達軸17と、伝動機構入力軸27の他端部に設けられた傘歯車20Aと、伝達軸17の一端部に設けられて傘歯車20Aと噛合する傘歯車20Bと、伝達軸17の他端部に設けられた伝達平歯車23と、変速機入力軸28に設けられて前記伝達平歯車23に噛合する受動平歯車24とを備えている。この受動平歯車24は変速機22の入力歯車となる。
【0029】
変速機出力軸29に設けられた変速機出力ギヤ30には、中間ギヤ32が噛合しており、この中間ギヤ32に、潤滑油の循環用ポンプ33のポンプ回転軸31が一体回転するように連結されている。さらに、中間ギヤ32には、発電機34の回転軸38に設けられた発電機入力ギヤ39が噛合している。変速機22と発電機34が低圧軸9の周方向、つまりエンジンEの周方向に離間して配置されている。前記変速機出力ギヤ30、中間ギヤ32および発電機入力ギヤ39はいずれも平歯車であるが、スラスト軸受を設ければ、はすば歯車でもよい。
【0030】
図3は航空機用発電装置1のエンジンEへの取付状態を示す正面図である。発電装置1はエンジンEのファンケースFCの側部に取り付けられている。この
図3から明らかなように、発電装置1は、エンジン軸心Cの方向から見た正面視において厚さが小さい薄型で、かつ上下方向の寸法が大きい縦長の外形に形成されている。これにより、発電装置1は、側方への出っ張りが小さい状態で、エンジンEのファンケ−スFCの側部に取り付けることが可能になっている。エンジンEおよび発電装置1はエンジンナセルNにより覆われている。ただし、発電装置1はファンケ−スFCよりも公報のエンジンコア部の側面に取り付けてもよい。
【0031】
この発電装置1における
図2の変速機22、発電機34、ポンプ33および伝動機構21を収納するケース40は、
図4に示すように、前記伝動機構入力軸27を貫通させる開口43と、この開口の周囲を取り囲む取付フランジ44と、中央部に入力軸27を貫通させる貫通孔45aを有し開口43を塞ぐ第1のカバー壁45とを有している。前記貫通孔45aには、第1のカバ−壁45と入力軸27との間をシ−ルする第1のシール部材46が配置されている。第1のカバ−壁45は、発電装置1の保管、移送などの際の異物の混入を防止するためのものであり、割愛してもよい。また、
図5に示すように、航空機用エンジンEのファンケースFCには、前述のAGB19とともに、第1連結軸11を貫通させる開口48と、この開口48の周囲を取り囲む前述の取付パッド12とが設けられている。
【0032】
発電装置1のケース40は、
図6に示すような構造により、エンジンEのファンケースFCに取り付けられている。すなわち、開口48を取り囲む取付パッド12に取付フランジ44を重ねた状態で、断面V字形状のクランプバンド50により互いに固定され、これにより、発電装置1がエンジンEに取り付けられる。第1連結軸11の先端孔の内周面に内周スプライン11aが形成され、伝動機構入力軸27の先端部外周面に、前記内周スプライン11aに嵌合する外周スプライン27aが形成されている。両スプライン11a,27aの係合により、伝動機構入力軸27が第1連結軸11に一体回転可能で、かつ軸方向に着脱可能に連結されている。前記開口48は、中央部に第1連結軸11の貫通孔47aを有する第2のカバー壁47により塞がれており、貫通孔47aに第2のカバー壁47と第1連結軸11との間をシールする第2のシール部材49が配置されている。
【0033】
発電装置1は、
図7に示すように、エンジンEの低圧軸9にギヤ連結された第1連結軸11に
図6のようにスプライン係合により連結される伝動機構入力軸27と、この伝動機構入力軸27に伝動機構21を介して連結される無段のトラクション変速機22と、このトラクション変速機22の下方に配置されてトラクション変速機22の出力により駆動される発電機34と、トラクション変速機22と発電機34との間に配置されてトラクション変速機22の出力により駆動される潤滑油用のオイルポンプ33とを備えている。これら伝動機構21、トラクション変速機22、発電機34およびオイルポンプ33は、それらの軸心C22、C34およびC33が互いに平行であり、かつ、エンジンEの前後方向FR、すなわちエンジン軸心Cの方向に沿っている。
【0034】
伝動機構21を介して駆動される変速機22の軸心C22は、入力軸27と直交する方向から若干傾斜した方向に軸心を有していてもよい。つまり、伝動機構21は、入力軸27と交差する方向の軸心C22回りに変速機22を駆動するものであれば、本発明に含まれる。
【0035】
軸心方向の長さは オイルポンプ33、発電機34、変速機22の順に長くなっており、オイルポンプ33は軸心方向位置の全体が直接変速機22と重なり、半分以上が発電機34と重なっている。発電機34は軸心方向位置の全体が変速機22と重なっている。ただし、変速機22と発電機34は半分以上が重なるように若干軸心方向にずれていてもよい。トラクション変速機22、発電機34およびオイルポンプ33は、軸方向に分割されてケースフランジ40aで結合されたケース40に収納されている。
【0036】
トラクション変速機22は、中空の前記変速機入力軸28の内部に貫通されて前記変速機入力軸28と同心に配置された変速機出力軸29を有しており、この実施形態では、変速機出力軸29に沿って第1および第2のキャビティ51,52が所定の間隔を設けて配設されたダブルキャビティ型のハーフトロイダル・トラクションドライブ型である。各キャビティ51,52の軸方向内側に第1および第2の入力ディスク51a,52aを配設し、各キャビティ51,52の外側に第1および第2の出力ディスク51b,52bを配設している。両入力ディスク51a,52aを変速機入力軸28に一体回転するように連結するとともに、両出力ディスク51b,52bを変速機出力軸29と一体回転するように連結している。
【0037】
すなわち、この変速機22は、その軸心C22の方向における中間部が、入力歯車24、変速機入力軸28および両入力ディスク51a,52aを有する入力部INを形成し、その軸心C22方向における外側に、変速機出力軸29および両出力ディスク51b,52bを有する出力部OTを形成している。この実施形態では、動力分流軸を有するパワースプリット方式(特許文献1)を採用せずに、トラクション変速機22のみで定速駆動装置が構成されている。
【0038】
第1のキャビティ51には第1のパワーローラ51cが設けられ、第2のキャビティ52には第2のパワーローラ52cが設けられ、第2の出力ディスク52bの軸方向外側の近接位置に、パワーローラ51c,52cを軸方向に押圧する押付力を発生するための軸力発生機構53が配置されている。
【0039】
各パワーローラ51c,52cは、ローラ軸心51d,52d回りの回転を許容し、かつローラ軸心51d,52dおよび変速機入力軸28を含む平面内で傾転自在に支持されている。一方、キャビティ51,52においては、入力ディスク51a,52a、出力ディスク51b,52bおよびパワーローラ51c,52cという3つの転動体が、軸力発生機構53の押圧力により互いに押し付けられて、その接触部に生じる高粘度潤滑油膜の剪断抵抗によって動力が伝達される。すなわち、第1の入力ディスク51aと第1の出力ディスク51bとの間の駆動力伝達は、その間に配置された第1のパワー・ローラ51cとの流体摩擦によってなされ、第2の入力ディスク52aと第2の出力ディスク52bとの間の駆動力伝達は、その間に配置された第2のパワー・ローラ52cとの流体摩擦によってなされる。パワーローラ51c,52cは、変速機軸心C22の回りに180°対向する位置にも各一対配置されている。
【0040】
加速比および減速比、すなわち変速比の変更は、パワー・ローラ51c,52cのローラ軸心51d,52dの傾きである傾転角を、制御機構(図示せず)によって制御することにより行われる。変速比は所定範囲内、例えば0.5〜2.0の範囲内で任意に変化される。この場合は減速比で表現すると、4:1以内となっているが、5:1以内としてもよく、また、それ以外の範囲でもよい。
【0041】
トラクション変速機22と発電機34との間には、中間ギヤ32と一体回転するオイルポンプ33が配置されている。したがって、発電機34は、変速機出力軸29の回転が変速機出力ギヤ30、中間ギヤ32および発電機入力ギヤ39を介し伝達されることにより駆動される。このとき、中間ギヤ32の回転を利用してオイルポンプ33が駆動される。ケース40に設けた支持壁58には、変速機出力軸29、ポンプ駆動軸31および発電機回転軸38をそれぞれ回転自在に支持する軸受54A,54B,54Cが取り付けられている。この発電装置1では、変速機出力ギヤ30と発電機入力ギヤ39とのギヤ比の設定により、トラクション変速機22の回転を増速している。
【0042】
発電機34は、トラクション変速機22を介してエンジンEにより回転駆動されることにより、発電機として機能して、航空機の照明、空調および防氷装置などの各種の電気負荷に対し電力を供給する。なお、トラクション変速機22と発電機34の位置を上下入れ換えてもよい。
【0043】
また、トラクション変速機22の変速機出力軸29の回転速度は、変速機入力軸28の回転速度の変化に応じてトラクション変速機22のローラ軸心51d,52dの傾転角を所定の関係を維持しながら変化させることによって、一定に保つことが可能となる。すなわち、変速機入力軸28の回転数の変動をトラクション変速機22により相殺するように変速比を制御することにより、変速機出力軸29の回転速度が一定に保たれる。この変速機出力軸29の一定の回転速度は、中間ギヤ32で増速されたのちに、発電機34に伝達されるので、発電機34は常に一定の回転数で高速回転して一定周波数の交流電力を出力する。
【0044】
つぎに、実施形態の航空機用発電装置1の作用について説明する。
図1に示したエンジンEの低圧軸9の回転が第1連結軸11および
図2に示した伝動機構入力軸27を介して、発電装置1に伝達される。発電装置1では、伝動機構入力軸27から伝動機構21、トラクション変速機22および中間ギヤ32を介して発電機34に動力が伝達され、発電機34の回転により発電がなされる。
【0045】
図7に示すように、本実施形態の航空機用発電装置1は、伝動機構21、トラクション変速機22、発電機34およびオイルポンプ33などの全ての構成が、二つ割りとなったケース40内に収納されて、
図3から明らかなように、薄型で縦長の外形にコンパクトにまとめられている。このようにコンパクト化できたのは、
図8に示すように、軸方向に細長い変速機22、発電機34およびオイルポンプ33を前後方向FRに向けた、すなわち、
図7の変速機22の軸心C22、発電機34の軸心C34およびオイルポンプ33の軸心C33を互いに平行で、かつエンジン軸心Cに対しても平行に配置し、さらに、変速機22、発電機34およびオイルポンプ33を、
図3のエンジンEの周方向に間隔をあけて配置したからである。
【0046】
つまり、トラクション変速機22、発電機34およびオイルポンプ33を、トラクション変速機22の軸方向から見て、
図1のエンジン軸心Cと平行で、かつ、このエンジン軸心Cとほぼ同心円状の弓形の配置ライン上に配置したからである。したがって、この発電装置1は、全体として縦長で厚みの薄いスリムな形状、すなわち航空機用エンジンEの側面からの出っ張り量が少ない状態で好適に取り付けられる形状となり、エンジンEを覆うナセルNの形状を、前面面積の増大を抑制できる好適な形状とすることができ、航空機の空気抵抗の増大を抑制して燃費の低下を防止できる。ただし、これら
図7の変速機軸心C22,発電機軸心C34およびポンプ軸心C33は、エンジン軸心Cすなわち前後方向FRに対して若干エンジン軸心C(
図3)回りの周方向に傾斜していてもよい。
【0047】
さらに、トラクション変速機22、発電機34およびオイルポンプ33の少なくとも一部分の軸向位置が互いに重なっているので、発電装置1の軸方向長さを短縮できる。また、変速機22の軸心C22と発電機34の軸心C34とが互いに平行なので、変速機22と発電機34を単純な平歯車で連結できるから、発電装置1の構造が簡略化される。
【0048】
この発電装置1は、エンジンEの低圧軸9の径方向に沿って伝動機構入力軸27を配置し、この入力軸27の回転を、伝動機構21によって伝動機構入力軸27と交差する方向に変換したうえで、変速機22に伝達しているので、大容量発電を行うために発電機34を低圧軸9に機械的に連結するにあたり、AGBを別途設ける必要がない。したがって、AGBの追加による重量の増加、コストアップ、空気抵抗の増大および信頼性低下などを抑制できる。
【0049】
また、この発電装置1では、
図8の伝動機構入力軸27が低圧軸9の周方向におけるトラックション変速機22と発電機34の間に配置されているから、重量が比較的大きいトラクション変速機22と発電機34との間に伝動機構入力軸27が配置されることで、伝動機構入力軸27が発電装置1の
図3に示す重心Gの近くに位置することになる。その結果、発電装置1の航空機用エンジンEへの取付面を形成する取付フランジ44に対する重心Gのオーバーハングモーメントが小さくなり、発電装置1の航空機用エンジンEへの取り付けが安定化される。
【0050】
しかも、伝動機構21を介して変速機22の入力部INに連結される伝動機構入力軸27が、変速機軸心C22方向の中間部に配置されるので、伝動機構入力軸27を発電機34の重心に近づけ易くなり、前述のオ−バ−ハングモ−メントを一層小さくすることができる。なお、
図8の伝動機構入力軸27はトラックション変速機22の上方側に配置してもよいが、その場合は、取付フランジ44に対する重心Gのオーバーハングモーメントが大きくなる。
【0051】
図6に示す発電装置1のトラックション変速機22および発電機34を収納するケース40が、伝動機構入力軸27を貫通させる開口43と、この開口43の周囲を取り囲む取付フランジ44とを有し、取付フランジ44を介してエンジンEに取り付けられるようになっている。したがって、ケース40における開口43の周囲を取り囲む取付フランジ44を、エンジンEの例えば取付パッド12に重ね合わせ状態でクランプバンド50などにより互いに結合することにより、発電装置1を容易な取付作業でエンジンEに安定して取り付けることができる。
【0052】
また、この実施形態の発電装置1は、パワースプリット方式を採用せずにエンジンEの回転をトラクション変速機22のみを介して発電機34に伝達する定速駆動機構としたので、トラクション変速機22の最大変速比を5:1程度に設定することが可能となり、これにより、エンジンEの回転数の変動が大きい
図1の低圧軸9に連結しても、発電機34を定速回転させることが可能となる。
【0053】
さらに、圧縮機2に連結された高圧軸7から大きな負荷を取り出すと、低エンジン出力時(地上アイドル、降下中等)にエンジンストールが発生しやすいのに対し、負荷である発電装置1は、第1連結軸11を介して、取り出し負荷の制限が少ない低圧軸9により回転駆動される。したがって、
図7のトラクション変速機22に大型のディスク51a,51b,52a,52bを用いて発電容量の増大を図ることができる。その場合、トラクション変速機22の回転を中間ギヤ32を介して増速して発電機34を高速回転していることにより、変速機22のトルクを減少させることで過大な大型化や重量の増大を抑制することができる。
【0054】
トラックション変速機22と発電機34とが中間ギヤ32を介してギヤ連結されているから、トラクション変速機22の回転を中間ギヤ32を介し増速したのちに発電機34に伝達するので、トラクション変速機22と発電機34を共に適切な回転数で駆動することができ、トラクション変速機22の回転を、発電機34を駆動する回転数まで一挙に増速して伝達する場合のような大きな損失発生を防止できる。また、増速用の中間ギヤ32の回転を利用してオイルポンプ33を駆動しているので、ポンプ駆動用の専用の駆動系が不要となる結果、簡素化した安価な構成により、潤滑油を変速機22および発電機34の潤滑対象部分に供給することができる。
【0055】
図9は、本発明の第2実施形態に係る航空機用発電装置1AのエンジンEへの連結状態を模式的に示した構成図であり、
図2と同一若しくは相当するものに同一の符号を付して重複する説明を省略する。この実施形態の発電装置1Aが
図1の発電装置1と相違するのは、伝達軸17を省略して、伝動機構21Aの傘歯車59Aをトラクション変速機22の変速機入力軸28に設けた傘歯車59Bに直接噛合して、ギヤ連結した点のみである。この伝動機構21Aによっても、
図2の伝動機構21と同様に、伝動機構入力軸27の回転を伝動機構入力軸27と直交する方向の軸心回りの回転に変換してトラクション変速機22に伝達することができる。
【0056】
なお、変速機22は、トラクション無段変速機に限られるものではなく、ベルトドライブ式の無段変速機、またはその他の無段変速機であってもよい。
【0057】
さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。