【文献】
H. Y. Bai, et al.,Electrical resistivity in Zr_48 Nb_8 Cu_12 Fe_8 Be_24 glassy and crystallized alloys,J. Appl. Phys.,2004年 2月 1日,Vol.95, No.3,p.1269-1273
【文献】
Y. Takahara, et al.,Structural Relaxation and Crystallization of Amorphous Fe_79 B_16 Si_5,J. Japan Inst. Metals,1987年,Vol.51, No.2,p.95-101
【文献】
K. Kuwabara, et al.,Microstructure and electrical properties of thin films of ReSi_1.75 produced by co-sputtering,Intermetallics,2002年 2月,Vol.10, No.2,p.129-138
【文献】
P. Allia, et al.,Free volume dependence of the electrical resistivity of metallic glasses prepared with different quenching rates,Solid State Commun.,1982年 9月,Vol.43, No.11,p.821-824
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合金は、Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beまたはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
前記マスターカーブプロットを得るステップはさらに、前記複数の基準合金サンプルの各々に関する関係を破壊的技法によって計測するステップを備える、請求項1に記載の方法。
前記マスターカーブプロットを得るステップはさらに、完全非晶質の基準合金サンプルを表す基準カーブを基にして各基準カーブを正規化するステップを備える、請求項1に記載の方法。
前記決定のステップはさらに、事前定義された温度において前記合金試料に関する前記カーブを前記マスターカーブプロットと比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
前記複数の基準合金サンプルの各々に関する前記計測のステップはさらに、前記基準合金サンプルを加熱しながら電気抵抗率を計測するステップを備える、請求項10に記載の方法。
前記複数の基準合金サンプルの各々に関する前記計測のステップはさらに、抵抗性加熱、誘導式加熱、伝導式加熱、輻射式加熱によって前記基準サンプルを加熱するステップを備える、請求項10に記載の方法。
前記合金試料に関する前記計測のステップは4探触子技法、誘導式技法またはこれらの組み合わせによって前記合金試料の電気抵抗率を計測することによって実行される、請求項10に記載の方法。
前記合金試料を作製するステップと、前記カーブと前記マスターカーブの前記比較に基づいて前記作製するステップを評価するステップとをさらに備える請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
相(phase)
本明細書において「相」という用語は熱力学相図内で見出し得るような相のことを意味することが可能である。相とは、その全体を通じて材料の物理的特性のすべてが本質的に均一であるような空間領域(例えば、熱力学系)のことである。物理的特性の例には、密度、屈折率、化学組成および格子周期性が含まれる。簡単な説明では相とは、化学的に均一であり、物理的に異なりかつ/または機械的に分離可能であるような材料領域のことである。例えばガラス瓶内の氷と水から成る系では、氷片が1つの相であり、水が第2の相であり、また水の上の湿った空気が第3の相である。瓶のガラスは別の異なる相である。相は、2元、3元、4元若しくはこれより多元の溶体とすることが可能な固溶体、または金属間化合物などの化合物を意味することもあり得る。別の例として、非晶質相は結晶質相と異なる。
【0017】
金属、遷移金属および非金属
「金属」という用語は、陽電性の化学元素のことを意味する。本明細書において「元素」という用語は一般に、周期律表中に見出し得る元素のことを意味する。物理的には、基底状態にある金属原子は占有状態に近い空乏状態の部分的に満たされたバンドを包含する。「遷移金属」という用語は、内側電子殻が不完全でありかつ元素系列内の陽電性が最大のものと最小のものとの間の遷移リンクの役割をするような周期律表中の第3〜12族の域内にある金属元素のうちのいずれかのことである。遷移金属は、複数の原子価、着色化合物、および安定な錯イオンの形成能力によって特徴付けられる。「非金属」という用語は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有しないような化学元素のことを意味する。
【0018】
その用途に応じて、適当な任意の非金属元素またはこれらの組み合わせを用いることが可能である。合金組成には、少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類またはこれ以上の種類の非金属元素など複数の非金属元素を含むことが可能である。非金属元素は、周期律表中の第13〜17族に見出される任意の元素とすることが可能である。例えば非金属元素は、F、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、PbおよびBのうちの任意の1つとすることが可能である。場合によっては非金属元素はまた、第13〜17族内のある種のメタロイド(例えば、B、Si、Ge、As、Sb、TeおよびPo)を意味することが可能である。一実施形態ではその非金属元素は、B、Si、C、Pまたはこれらの組み合わせを含むことが可能である。したがって例えばその合金組成は、ホウ化物、炭化物またはこれら両方を含むことが可能である。
【0019】
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウムおよびウンウンビウムのうちのいずれかとすることが可能である。一実施形態では遷移金属元素を包含したBMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、CdおよびHgのうちの少なくとも1つを有することが可能である。その用途に応じて、適当な任意の遷移金属元素またはこれらの組み合わせを用いることが可能である。合金組成には、少なくとも2種類、少なくとも3種類、少なくとも4種類またはこれ以上の種類の遷移金属元素などの複数の遷移金属元素を含むことが可能である。
【0020】
ここに記載した合金または合金「サンプル」あるいは「試料」合金は任意の形状またはサイズを有することが可能である。例えばこの合金は、球形、楕円体、針金状、棒状、シート状、フレーク状または不規則形状などの形状を有することが可能な粒子形状を有することが可能である。この粒子は適当な任意のサイズを有することが可能である。例えばその有する平均直径を、約1マイクロメートルから約100マイクロメートルの間(例えば、約5マイクロメートルから約80マイクロメートルの間など、約10マイクロメートルから約60マイクロメートルの間など、約15マイクロメートルから約50マイクロメートルの間など、約15マイクロメートルから約45マイクロメートルの間など、約20マイクロメートルから約40マイクロメートルの間など、約25マイクロメートルから約35マイクロメートルの間など)とすることが可能である。例えば一実施形態ではその粒子の平均直径は、約25マイクロメートルから約44マイクロメートルの間である。幾つかの実施形態では、ナノメートルレンジにあるものなどこれより小さい粒子あるいは100マイクロメートルを超えるものなどこれより大きな粒子を用いることが可能である。
【0021】
合金サンプルまたは試料はまたさらに大きな寸法とすることも可能である。例えばこれを、インゴット、電子デバイスのハウジング/ケーシングまたさらには寸法がミリメートル、センチメートルまたはメートルレンジにある構造構成要素の一部分などバルク構造構成要素とすることが可能である。
【0022】
固溶体
「固溶体」という用語は、固体形状の溶体のことを意味する。「溶体(solution)」という用語は、固体、液体、気体またはこれらの組み合わせとし得る2つ以上の物質から成る混合体を意味している。この混合体は、均質性(homogeneous)とすることも不均質性(heterogeneous)とすることも可能である。「混合体」という用語は、互いに組み合わせられると共に分離可能であることが一般的な2つ以上の物質から成る組成物のことである。一般にこの2つ以上の物質は化学的には互いに結合していない。
【0023】
合金
幾つかの実施形態では、本明細書に記載した合金粉末組成物を完全に合金化することが可能である。一実施形態では「合金」という用語は、一方の原子がもう一方の原子の間の格子間位置に置き替わっているまたはこれを占有している2つ以上の金属から成る均質性の混合体または固溶体のことを意味しており、例えば真ちゅうは亜鉛と銅の合金である。複合材と異なり合金は、金属マトリックス内の1つまたは複数の化合物など金属マトリックス内の1つまたは複数の元素からなる部分固溶体または完全固溶体を意味する可能性がある。本明細書において「合金」という用語は単一の固体相微細構造を与えることが可能な完全固溶体合金と2つ以上の相を与えることが可能な部分溶体の両方を意味する可能性がある。
【0024】
したがって完全合金化された合金は、固溶体相であるか、化合物相であるかまたはこの両方であるかによらず、均質に分布した成分を有することが可能である。本明細書で使用する「完全合金化」という用語は、誤差許容値の域内にあるわずかなバラツキを考慮に入れることが可能である。例えばこれは、少なくとも90%合金化(少なくとも95%合金化など、少なくとも99%合金化など、少なくとも99.5%合金化など、少なくとも99.9%合金化など)を意味することが可能である。本明細書におけるパーセントは、そのコンテキストに応じて体積パーセントと重量パーセントのいずれの意味とすることも可能である。これらのパーセントは、合金の一部でないような組成または相を意味し得る不純物をその残部とさせることが可能である。
【0025】
非晶質または非結晶性固体
「非晶質」または「非結晶性固体」とは結晶に特徴的な格子周期性を欠いた固体のことである。本明細書で使用する場合に「非晶質の固体」には、ガラス転移相を経るような加熱を受けると柔らかくなって液体様の状態まで変形する非晶質固体である「ガラス」を含む。一般に非晶質の材料は結晶の長距離秩序性を欠いているが、これらは化学結合の性質に由来して原子長スケールではある程度の短距離秩序は保持することが可能である。非晶質固体と結晶性固体は、X線回折や透過型電子顕微鏡法などの構造特徴化技法によって決定されるような格子周期性に基づいて区別することが可能である。
【0026】
「秩序(order)」と「無秩序(disorder)」という用語は多粒子系におけるある種の対称性または相関の有と無を示している。「長距離秩序(long−range order)」と「短距離秩序(short−range order)」という用語によって、長さスケールに基づいて材料の秩序を区別している。
【0027】
固体内の秩序に関する最も厳格な形態は格子周期性である、すなわち並進不変の空間タイル配列が形成されるようにあるパターン(単位セル内の原子の配列)が何度も反復されている。これが結晶に関する定義特性である。可能な対称性は、14種のブラベー格子と230種の空間群に分類されている。
【0028】
格子周期性は長距離秩序を含意する。1つの単位セルさえ既知であれば、並進対称によって任意の距離にあるすべての原子位置を正確に推定することが可能となる。一般にこの逆も真である(ただし、例えば完全な決定性のタイル配列を有するが格子周期性をもたないような疑似結晶の場合を除く)。
【0029】
長距離秩序は、その内部において同じサンプルの遠隔部分が相関性の挙動を示す物理系を特徴付ける。このことは、1つの相関関数(すなわち、スピン対スピン相関関数G(x,x’)=〈s(x),s(x’)〉で表現することが可能である。
【0030】
上の関数において、sはスピン量子数でありまたxは当該の系の内部における距離関数である。この関数は、x=x’のときに1に等しく、また距離|x−x’|が増大するのに連れて減少する。これは典型的には、距離が大きくなるとゼロまで指数関数的に減衰すると共に、その系は無秩序状態にあると見なされる。しかし相関関数が大きな|x−x’|において一定の値まで減衰する場合、その系は長距離秩序性をもつということが可能である。距離のべき乗でゼロまで減衰するような場合、これを疑似長距離秩序と呼ぶことが可能である。何が|x−x’|の大きな値に当たるのかは相対的であることに留意されたい。
【0031】
その挙動を規定する幾つかのパラメータが時間に関連して出現するものでないランダム変数であるとき(すなわち、それがクエンチまたは冷凍を受けた場合)、系はクエンチ無秩序を示すということができる(例えば、スピンガラス)。これは、ランダム変数が単独で出現できるようなアニール性無秩序とは対照的である。本明細書の実施形態は、クエンチ無秩序を備える系を含む。
【0032】
本明細書に記載した合金は、結晶性、部分結晶性、非晶質または実質的に非晶質とすることが可能である。例えば合金サンプル/試料は、ナノメートルレンジおよび/またはマイクロメートルレンジのサイズを有する粒子/結晶を備えた少なくともある程度の結晶化度を含むことが可能である。別法としてその合金を完全非晶質など実質的に非晶質とすることが可能である。一実施形態ではその合金粉末組成は、実質的に結晶性である、全体的に結晶性であるなど少なくとも実質的に非晶質としていない。
【0033】
一実施形態では、通常であれば非晶質合金であるようなものの中に結晶が1つまたは複数存在することをその内部の「結晶質相」と解釈することが可能である。合金の結晶化の程度(または、幾つかの実施形態では略して「結晶化度」という)によって、合金内に存在する結晶質相の量を示すことが可能である。この程度によって例えば、合金内に存在する結晶の比率を示すことが可能である。この比率は、そのコンテキストに応じて体積比率を示すことも重量比率を示すことも可能である。非晶質合金がどのくらい「非晶質的」であるかの尺度を、非晶質性(amorphicity)とすることができる。非晶質性は結晶化の程度を基準として計測することが可能である。例えば一実施形態では、結晶化の程度が低い合金のことを、非晶質性の程度が高いということが可能である。一実施形態では例えば、60vol%の結晶質相を有する合金は、40vol%の非晶質相を有するとすることが可能である。
【0034】
非晶質合金または非晶質金属
「非晶質合金」とは、体積基準で50%を超える非晶質含有量(好ましくは体積基準で90%を超える非晶質含有量、さらに好ましくは体積基準で95%を超える非晶質含有量、最も好ましくは体積基準で99%超でほとんど100%に至る非晶質含有量)を有する合金のことである。上述のように、非晶質性が高い合金は等価的に結晶化の程度が低いことに留意されたい。「非晶質金属」とは、無秩序な原子スケール構造を有する非晶質の金属材料のことである。結晶性でありまたこのために極めて秩序立った原子配列を有している大部分の金属と異なり、非晶質合金は非結晶性である。こうした無秩序な構造がその内部で冷却中に液体状態から直接作り出される材料のことを「ガラス」と呼ぶことがある。したがって、非晶質金属のことを通常「金属ガラス」または「ガラス様金属」と呼んでいる。一実施形態では「バルク金属ガラス」(「BMG」)によって、その微細構造が少なくとも部分的に非晶質性であるような合金を示すことが可能である。しかし極めて急速に冷却する以外にも、非晶質金属を作製するためには、物理蒸着法、固相反応、イオン放射、溶融スピニング、メカニカル・アロイングを含む幾つかの方法が存在する。非晶質合金は、これを作製する方法に関わらず単一等級の材料とすることが可能である。
【0035】
非晶質金属は、多種多様な急速冷却方法を通じて作製することが可能である。例えば非晶質金属は、スピンさせた金属ディスク上に溶融した金属をスパッタリングすることによって作製することが可能である。この急速冷却(毎秒概ね数百万度)は極めて高速で結晶を形成させないことが可能であり、したがってまたその材料はガラス様状態となるように「ロックイン(locked in)」される。さらに非晶質金属/合金は、厚い層を成した非晶質構造の形成を可能にするように十分に遅い臨界冷却速度で作製することが可能である(例えば、バルク金属ガラス)。
【0036】
「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルク非晶質合金およびバルク凝固非晶質合金という用語は、本明細書において区別なく使用している。これらの用語は、有する最小寸法が少なくともミリメートルレンジにあるような非晶質合金を意味している。例えばその寸法は少なくとも約0.5mm(少なくとも約1mmなど、少なくとも約2mmなど、少なくとも約4mmなど、少なくとも約5mmなど、少なくとも約6mmなど、少なくとも約8mmなど、少なくとも約10mmなど、少なくとも約12mmなど)とすることが可能である。その幾何学形状に応じてこの寸法は、直径、半径、厚さ、幅、長さ、その他を示すことが可能である。BMGはまた、少なくとも1つの寸法がセンチメートルレンジ(少なくとも約1.0cmなど、少なくとも約2.0cmなど、少なくとも約5.0cmなど、少なくとも約10.0cmなど)の金属ガラスとすることが可能である。幾つかの実施形態ではBMGは、少なくともメートルレンジとした少なくとも1つの寸法を有することが可能である。BMGは、金属ガラスに関連させて上で述べた形状や形態のいずれをとることも可能である。したがって本明細書に記載したBMGは幾つかの実施形態において、従来の蒸着技法により製作した薄膜とある重要な点で異ならせることが可能である(前者を後者と比べてかなり大きい寸法とすることが可能である)。
【0037】
非晶質金属は、純粋金属ではなく合金とすることが可能である。合金は、サイズが大幅に異なる原子を包含し、これにより溶融状態における自由体積が小さいこと(またしたがって、他の金属や合金と比べて数桁まで大きい粘性を有すること)がある。この粘性によって、秩序立った格子を形成するような原子の十分な移動が妨げられる。この材料構造のために、冷却中の収縮が小さくなり、また塑性変形に対する抵抗性を得ることができる。幾つかの場合では結晶性材料の脆弱箇所になるような粒子境界が無いため、例えば摩耗や腐食に対する良好な抵抗性を得ることができる。一実施形態では非晶質金属(技術的に見ればガラス)は酸化物ガラスやセラミックと比べてかなり強靭としかつ脆性をより小さくすることができる。
【0038】
非晶質材料の熱伝導率は、これを結晶性とした場合のものの熱伝導率と比べてより低くすることができる。より低速の冷却とした場合であっても非晶質の構造の形成を得られるように、より大きなポテンシャルエネルギーを伴う複雑な結晶単位となりかつ形成確率がより小さくなるようにその合金を3つ以上の構成要素から作製することがある。非晶質合金の形成は幾つかの要因(合金の構成要素の組成、構成要素の原子半径(高い充填密度と小さい自由体積が得られるように12%を超える大きな差をもたせることが好ましい)、並びに結晶核形成を阻止し溶融金属が過冷却状態に留まる時間を延長させるような構成要素の合成体を混合する負の熱)に依存する可能性がある。しかし、非晶質合金の形成が異なる多くの変数に基づくため、ある合金組成物が非晶質合金を形成するか否かは事前に決定することは困難となる可能性がある。
【0039】
例えば、ホウ素、ケイ素、リンおよび磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)を有する別のガラス形成体から成るような非晶質合金は磁性とし、保磁力を小さくかつ電気抵抗を大きくすることができる。抵抗が大きいことによって、例えば変圧器の磁気コアとして有用な特性である交番磁界を受けたときのうず電流による損失の低減が得られる。
【0040】
非晶質合金は、有用となり得る多種多様な特性を有することがある。具体的にはこれらは、同様の化学組成をもつ結晶性合金と比べてより強靭となる傾向があり、かつこれらは結晶性合金と比べてより大きな可逆的(「弾性」)変形を維持することが可能である。非晶質金属はその強度をその非結晶性構造から直接引き出しており、結晶性合金の強度を制限するような欠陥(転位など)を全く有する可能性がない。例えば、Vitreloy(商標)という最近の非晶質金属の1つは、高品位チタンの場合のほとんど2倍の引っ張り強度を有する。幾つかの実施形態では金属ガラスは室温において延性でなく、また切迫した不良が明瞭でなくとも引っ張り荷重を受けたときに信頼度が重要な用途において材料の適用性を制限するような突然の不具合を生じる傾向がある。したがってこの問題点を克服するためには、延性のある結晶性金属の樹枝状粒子または繊維を包含した金属ガラスマトリックスを有する金属マトリックス複合材料を用いることが可能である。別法として、脆化を生じさせる傾向がある元素(複数可)(例えば、Ni)を低くしたBMGを用いることが可能である。例えばBMGの延性を改善するために、NiフリーのBMGを用いることが可能である。
【0041】
バルク非晶質合金に関する有用な別の特性は、これが本物のガラスとなり得ること、換言すると加熱すると柔らかくなりかつ流動可能となることである。これによって、射出成形によるなどしてポリマーとほとんど同じ方法で容易に処理することが可能となる。このため非晶質合金は、スポーツ器具、医用デバイス、電子部品や電子装置および薄膜を作製するために用いることが可能である。非晶質金属の薄膜は、高速酸素燃料技法(high velocity oxygen fuel technique)を介して保護コーティングとして被着させることが可能である。
【0042】
材料としては、非晶質相、結晶質相またはこの両方を有することが可能である。非晶質相と結晶質相は同じ化学組成を有すると共に微細構造においてのみ異なること(すなわち、一方を非晶質としもう一方を結晶性とすること)が可能である。一実施形態における微細構造は、顕微鏡によって25倍以上の倍率で顕在化するような材料の構造を意味している。別法としてこの2つの相は、異なる化学組成および微細構造を有することが可能である。例えば組成を、部分的非晶質とすること、実質的に非晶質とすること、あるいは完全に非晶質とすることが可能である。
【0043】
上で述べたように非晶質性の程度(また逆に言えば結晶化の程度)は合金内に存在する結晶の比率によって計測することが可能である。この程度は、合金内に存在する結晶質相の重量比率の体積比率を示すことが可能である。部分的に非晶質の組成は、非晶質相がその少なくとも約5vol%(少なくとも約10vol%など、少なくとも約20vol%など、少なくとも約40vol%など、少なくとも約60vol%など、少なくとも約80vol%など、少なくとも約90vol%など)であるような組成を示すことが可能である。「実質的に」や「約」という用語は本出願中の他の箇所で定義してある。したがって、少なくとも実質的に非晶質の組成は、非晶質であるのがその少なくとも約90vol%(少なくとも約95vol%など、少なくとも約98vol%など、少なくとも約99vol%など、少なくとも約99.5vol%など、少なくとも約99.8vol%など、少なくとも約99.9vol%など)であるような組成を示すことが可能である。一実施形態では実質的に非晶質の組成は、その内部に存在する結晶質相がある付随的な微量である可能性がある。
【0044】
一実施形態では非晶質合金組成物は、非晶質相に関して均質性とすることが可能である。組成が均一(uniform)である物質は均質性である。このことは、不均質性である物質と対照的である。「組成」という用語は、物質内の化学組成および/または微細構造を示している。物質の体積を半分に分け、分けた半分の両方が実質的に同じ組成であるとき、その物質は均質性である。例えば、粒子懸濁体の体積を半分に分け、分けた半分の両方が実質的に同じ粒子体積であるとき、その粒子懸濁体は均質性である。しかし、顕微鏡下で個々の粒子を観察することも可能ではある。均質性物質の別の例は、その内部の異なる成分が均等に懸濁されている空気である(ただし、空気中の粒子、気体および液体は別々に分析することや、空気から分離することが可能である)。
【0045】
非晶質合金に関して均質性である組成物は、その微細構造全体にわたって実質的に均一に分布した非晶質相を有する組成を示すことが可能である。換言するとその組成物は巨視的に、その組成全体にわたって実質的に均一に分布した非晶質合金を含む。代替的な一実施形態ではその組成は、非非晶質の(non−amorphous)相をその内部に有する非晶質相を有する複合材とすることが可能である。非非晶質相は、1つの結晶または複数の結晶とすることが可能である。こうした結晶は、球形、楕円体、針金状、棒状、シート状、フレーク状または不規則形状などの任意の形状をした粒子の形態とすることが可能である。一実施形態ではこれは、樹枝状を有することが可能である。例えば、少なくとも部分的に非晶質の複合材組成は非晶質相マトリックス内に分散させた樹枝形状をした結晶質相を有することが可能であり、またこの分散は均一とすることも非均一とすることも可能であると共に、その非晶質相と結晶質相は同じ化学組成を有することも異なる化学組成を有することも可能である。一実施形態ではこれらは実質的に同じ化学組成を有している。別の実施形態では結晶質相はBMG相と比べて延性をより高くさせることが可能である。
【0046】
本明細書に記載した方法は任意のタイプの非晶質合金に適応可能とすることが可能である。同様に、組成物または物品の一構成要素として本明細書に記載した非晶質合金は任意のタイプとすることが可能である。この非晶質合金は、元素Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beまたはこれらの組み合わせを含むことが可能である。すなわちその合金は、その化学式や化学組成に関してこれらの元素を任意に組み合わせて含むことが可能である。これらの元素は、異なる重量パーセントまたは体積パーセントで存在することが可能である。例えば、鉄「系(based)」合金は、その内部に存在する鉄の重量パーセントが無視できない(non−insignificant)ような合金を示すことが可能であり、その重量パーセントは、例えば少なくとも約20wt%(少なくとも約40wt%など、少なくとも約50wt%など、少なくとも約60wt%など、少なくとも約80wt%など)とすることが可能である。別法として一実施形態において、上述のパーセントを重量パーセントではなく体積パーセントとすることが可能である。したがって非晶質合金を、ジルコニウム系、チタン系、白金系、パラジウム系、金系、銀系、銅系、鉄系、ニッケル系、アルミニウム系、モリブデン系、その他とすることが可能である。幾つかの実施形態では合金あるいは合金を含んだ組成物は、ニッケル、アルミニウム若しくはベリリウムまたはこれらの組み合わせを実質的に含んでいない。一実施形態ではその合金または複合材は、ニッケル、アルミニウム若しくはベリリウムまたはこれらの組み合わせを完全に含んでいない。
【0047】
例えば非晶質合金は、a、bおよびcがそれぞれ重量パーセントまたは原子パーセントを示すとして、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu,Fe)
b(Be,Al,Si,B)
cを有することが可能である。一実施形態では原子パーセントにおいて、aは30〜75の範囲にあり、bは5〜60の範囲にあり、またcは0〜50の範囲にある。別法としてその非晶質合金は、a、bおよびcがそれぞれ重量パーセントまたは原子パーセントを示すとして、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有することが可能である。一実施形態では原子パーセントにおいて、aは40〜75の範囲にあり、bは5〜50の範囲にあり、またcは5〜50の範囲にある。この合金はまた、a、bおよびcがそれぞれ重量パーセントまたは原子パーセントを示すとして、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有することが可能である。一実施形態では原子パーセントにおいて、aは45〜65の範囲にあり、bは7.5〜35の範囲にあり、またcは10〜37.5の範囲にある。別法としてその合金は、a、b、cおよびdがそれぞれ重量パーセントまたは原子パーセントを示すとして、式(Zr)
a(Nb,Ti)
b(Ni,Cu)
c(Al)
dを有することが可能である。一実施形態では原子パーセントにおいて、aは45〜65の範囲にあり、bは0〜10の範囲にあり、cは20〜40の範囲にあり、またdは7.5〜15の範囲にある。上述の合金系の例示的な一実施形態は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のLiquidmetal Technologiesにより製作されたVitreloy−1やVitreloy−101などの商標名がVitreloy(商標)のZr−Ti−Ni−Cu−Be系の非晶質合金である。異なる系の非晶質合金に関する幾つかの例を表1に提示している。
【0048】
これらの非晶質合金はまた、(Fe,Ni,Co)系の合金などの鉄合金とすることが可能である。こうした組成物の例は、米国特許第6,325,868号、同第5,288,344号、同第5,368,659号、同第5,618,359号および同第5,735,975号、Inoueら、Appl.Phys.Lett.,Volume71,464ページ(1997)、Shenら,Mater.Trans.,JIM,Volume42,2136ページ(2001)、並びに日本特許出願第200126277号(公開第2001303218A号)に開示されている。例示的な一組成はFe
72Al
5Ga
2P
11C
6B
4である。別の例は、Fe
72Al
7Zr
10Mo
5W
2B
15である。本明細書のコーティングに使用可能な別の鉄系合金系は、米国特許出願公開第2010/0084052号に開示されており、ここではその非晶質金属は例えば、マンガン(1〜3原子%)、イットリウム(0.1〜10原子%)およびケイ素(0.3〜3.1原子%)を括弧で括って示した組成範囲で包含しており、かつクロム(15〜20原子%)、モリブデン(2〜15原子%)、タングステン(1〜3原子%)、ホウ素(5〜16原子%)、炭素(3〜16原子%)およびその残部が鉄であるように元素を括弧で括って示した指定の組成範囲で包含している。
【0049】
上述の非晶質合金系はさらに、Nb、Cr、VおよびCoを含む追加の遷移金属元素などの追加の元素を含むことが可能である。この追加の元素は、約30wt%以下(約20wt%以下など、約10wt%以下など、約5wt%以下など)だけ存在させることが可能である。一実施形態では任意選択の追加元素は、炭化物を形成しまたさらに摩耗や腐食抵抗を改善させるようなコバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウムおよびハフニウムのうちの少なくとも1つである。さらに任意選択の元素は、融点を低下させるために総量で約2%、また好ましくは1%未満までのリン、ゲルマニウムおよびヒ素を含むことがある。これ以外の付随的な不純物は、約2%未満また好ましくは0.5%未満とすべきである。
【0050】
幾つかの実施形態における非晶質合金を有する組成物は、少量の不純物を含む可能性がある。この不純物元素は、機械的特性(例えば、硬度、強度、破断メカニズム、その他)の改善および/または腐食抵抗の改善など組成物の特性を変更するために意図的に追加される可能性がある。別法としてその不純物は、処理や製造の副産物として生じる不純物など不可避的で付随的な不純物として存在する可能性がある。この不純物は、約10wt%以下(約5wt%など、約2wt%など、約1wt%など、約0.5wt%など、約0.1wt%など)となる可能性がある。幾つかの実施形態ではこれらのパーセントを、重量パーセントではなく体積パーセントとすることが可能である。一実施形態ではその合金サンプル/組成は、本質的に非晶質合金(ある少量の付随的な不純物だけは伴う)から成る。別の実施形態ではその組成は、非晶質合金(観察可能な不純物を伴わない)から成る。
(表1)
表1.例示的な非晶質合金組成
【0051】
電気抵抗率
電気抵抗率(ρ)(抵抗率、比電気抵抗または体積抵抗率とも呼ぶ)とは、材料がどの程度強力に電流の流れに抗するかの尺度の1つである。抵抗率が小さいことは、材料が電荷の動きを容易に可能にすることを示している。電気抵抗率に関するSI単位は、オーム・メートル(Ωm)である。抵抗率は、材料に固有の特性であり、このため幾何学的に独立である。他方で電気抵抗(R)は、材料の幾何学形状に依存する。例えば一実施形態では、電気抵抗はワイヤの断面積に反比例する一方、ワイヤの長さに正比例する。換言すると短いワイヤはより低いワイヤより電気抵抗が小さくなる一方、断面積が小さいワイヤは断面積が大きいワイヤより電気抵抗が大きくなる。
【0052】
一般に、結晶性金属やその合金の電気抵抗率は温度と共に上昇する一方、半導体の抵抗率は温度の上昇に伴って低下する。この2つの場合において、電子・フォノンの相互作用が重要な役割をする可能性がある。高温では金属の抵抗は温度に伴って直線的に増加する。金属の温度が低下すると、抵抗率の温度依存性は温度のべき関数に従う。数学的には、金属の抵抗率ρの温度依存性は次のBloch−Gruneisenの式で与えられる。
【数1】
上式において、ρ(0)は欠陥散乱に由来する残留抵抗率であり、Aはフェルミ表面における電子の速度、デバイ半径および金属中の電子数密度に依存する定数である。Θ
Rは抵抗率計測値から得られるようなデバイ温度であり、比熱計測値から得られるデバイ温度の値と極めて密に一致する。nは相互作用の性質に依存する整数であり、n=5はその抵抗がフォノンによる電子の散乱に由来する(単純金属に関する場合と同じ)ことを含意しており、n=3はその抵抗がs−d電子散乱に由来する(遷移金属に関する場合と同じ)ことを含意しており、n=2はその抵抗が電子・電子相互作用に由来することを含意している。
【0053】
金属の温度が(フォノンのすべてを「フリーズ(freeze)」させるように)十分に低下している場合は、その電気抵抗率は通常「残留抵抗率」と呼ぶある一定の値に到達する。この値は、金属の種類のみならず、その純度および熱履歴にも依存する。金属の残留抵抗率の値は、その不純物濃度によって決定することが可能である。ある種の材料では、超伝導と呼ぶ効果のために十分に低い温度においてすべての電気抵抗率を失う。
【0054】
結晶性金属や金属合金と異なり金属ガラスは、電気抵抗率に関して極めて異なる挙動を示す。例えば結晶性金属合金ではその電気抵抗が温度の上昇に伴って直線的に増大する一方、非晶質合金では結晶化が生じるまで温度を上昇させてもその電気抵抗は大幅に変化せず、また低下を示すことさえある。金属ガラスは温度が上昇してもその示す電気抵抗率がかなり一定に保たれるか低下する(すなわち、温度係数が小さくまた多くの場合に負である)こと、一方でこれに対する結晶性のものでは大きくかつ正の温度係数または抵抗率を有することが一般に知られている。さらに、金属ガラスの電気抵抗率(ρ)は結晶性合金の電気抵抗率より大きい可能性がある。例えば金属ガラスのρは、約100から約250μΩ・cmの範囲をとることが可能であると共に、Tgにおいてガラス転移を通過すると滑らかにかつ連続的に変動することが可能である。これに対して結晶性金属合金は、かなり小さい抵抗率(例えば、1〜50μΩ・cm)と、より大きくかつより正の温度係数と、を有することが可能である。
【0055】
例えばZr系合金では、結晶化温度(Tx)は概ね750Kとなる可能性がある。したがってこうした合金のρ対Tのプロットではカーブが、比較的平坦で水平に結晶化が生じる温度である750Kまで至るように表されている。したがって、バルク金属ガラスサンプルの電気抵抗率を所与の温度範囲にわたって計測することによって、サンプルの結晶化の程度/結晶化度を非破壊式に検出することを可能となし得る。
【0056】
マスターカーブプロット
結晶化の程度を決定するためのここに記載した方法は、先ずマスターカーブプロットを構築するステップと、その後に該プロットを用いて試料の結晶化の程度を決定するステップと、を含むことができる。本明細書において「マスターカーブプロット」という用語は、事前決定された基準サンプルのある種の材料特性を表した複数の基準カーブを包含したプロットを記述するために用いている。この特性は、例えばプロットで示すような関係および/または数学関数によっておよび/または数学的表現によって表すことが可能である。例えばそのプロットは、電気抵抗率(また逆に言うと、導電率)、密度比、体積、質量、熱抵抗率(また逆に言うと、熱伝導率)、結晶化度、その他(y軸上)に関する温度依存性(x軸)を示すことが可能である。x軸上のパラメータは必ずしも温度とする必要はなく、結晶化度、時間、密度、体積、組成、その他とすることが可能である。材料特性を示すためには適当な任意の軸を用いることが可能である。
【0057】
材料特性の比較の場合と同様にマスターカーブプロットは、サンプルの少なくとも1つの別のパラメータを比較可能とするように、比較しようとするサンプル材料のパラメータを一定に保持しながら構築することが好ましい。例えば一実施形態ではそのマスターカーブプロットは合金組成に特異的である。すなわち、同じ組成の複数の基準合金サンプルに関してそのプロットを構築することが可能である。基準合金サンプルは様々な程度の結晶化度を有することが可能である。一実施形態ではそのマスターカーブプロットは、その各々が複数の基準サンプルのうちの1つに関する電気抵抗率と温度の間の関係を表している複数の基準カーブを含むことが可能である。基準サンプルは有する化学組成は同じであるが事前決定された結晶化の程度は様々とすることが可能である。
【0058】
マスターカーブプロット(また幾つかの実施形態では略して「マスタープロット」)は、具体的にはこのプロットを用いて検査しようとするパラメータに応じて様々な技法によって構築することが可能である。例えば本明細書に記載した一実施形態は、複数の基準サンプルに関する温度の関数として電気抵抗率の間の関係(すなわち、電気抵抗率の温度依存性)を表したマスタープロットを提供する。これらの基準サンプルは一般に、別のパラメータに関する比較を可能とするように少なくとも1つの共通のパラメータを有することになる。
【0059】
一実施形態ではマスターカーブプロットは、事前決定された周知の化学組成を有する複数の基準合金サンプルに関して構築される。しかしこれらの基準サンプルは同じ化学組成を有する一方、その結晶化の程度は異なる。例えばこれらの基準サンプルのうちの幾つかは、100vol%結晶性、25vol%結晶性、50vol%結晶性、75vol%結晶性または0vol%結晶性(非晶質)とすることが可能である。この実施形態では、基準サンプルの各々に関する電気抵抗率と温度の間の関係を計測することが可能である。各基準サンプルごとにこうした関係を「基準」カーブによって表現することが可能である。その用途に応じてそのデータ収集頻度を任意の値とすることが可能である。さらに、組成および結晶化の程度が同じ幾つかの基準サンプルが計測される場合には、これらの同じ基準サンプルからのデータ点を標準偏差(該当する場合)を伴って平均値として表現することが可能である。このデータ点は必ずしも組成および結晶化の程度が同じ様々な基準サンプルからとる必要はない。例えば、基準サンプルの異なる箇所からとることが可能であり、こうした計測は特定の軸に沿った材料特性の均一性のインジケータを提供することが可能である。さらに、所望であれば得られたデータに基づいて統計分析を実行することが可能である。
【0060】
複数の基準カーブを重ね合わせることによってマスターカーブプロットを構築することが可能であるが、この複数の基準カーブはすべて同じ化学組成を有するがその各々はそれ自体の事前決定された結晶化の程度を有する。前に述べたように、結晶化の出現より低い温度では、少なくとも部分的に非晶質となった合金の電気抵抗率は一般に温度と独立である。すなわち電気抵抗率対温度のプロット上において、結晶化温度に至るまでそのカーブはかなり平坦である可能性がある。しかし上述したように幾つかの実施形態では、非晶質合金の電気抵抗率は結晶化の程度の上昇に伴って減少する可能性がある。
【0061】
図1は、一実施形態による結晶化の程度がそれぞれX1、X2、X3、X4およびX5である3つの例示の非晶質合金、A1、A2、A3、A4およびA5の電気抵抗率を表した例示のプロットを提供している。X1<X2<X3<X4<X5であると仮定すると、電気抵抗率ρ1、ρ2、ρ3、ρ4およびρ5はこれに従って関係ρ1>ρ2>ρ3>ρ4>ρ5を有することになる。
図1を参照されたい。本図に示したカーブは、単に例証を目的としたものであり、傾斜の変化は誇張されていることに留意されたい。合金材料の傾斜はその結晶化の程度に応じて様々にできることに留意されたい。具体的にはこの実施形態では、結晶化の程度が0に向かって低下する(すなわち、非晶質性の程度が上昇する)に従ってその傾斜がより正になる。非晶質性が0%になる(100%結晶性となる)と、このカーブは本質的にある正の傾斜を伴った直線となることができる。結晶化温度Txを超える温度では、合金サンプルの各々について電気抵抗率の急激な下落が出現していることに留意されたい。さらに、この温度状況ではサンプルはすべて結晶性となっているため、この実施形態による3つのカーブすべての崩落から分かるようにこれらのサンプルの挙動が同様となる可能性がある。
【0062】
比較および例証を容易にするために幾つかの実施形態では各基準カーブに関するデータを、
図2に示したように全体に/完全に非晶質となった(「ρ(100)」の)基準サンプルのデータによって正規化させることが可能である。別のタイプの正規化を用いることも可能であることに留意されたい。例えば、サンプルの幾何学形状を考慮に入れるために、各基準カーブの電気抵抗率をその寸法によって正規化し、各基準サンプルに関した(抵抗率ではなく)電気抵抗を検査することが可能である。
【0063】
温度依存性のために、基準サンプルの電気抵抗率はサンプルが加熱される際に計測することが可能である。このためある温度における電気抵抗率以外に、基準サンプルおよび/または試験試料に関する全加熱履歴を比較することが可能である。この加熱は、抵抗性加熱、誘導式加熱、伝導式加熱および/または輻射式加熱によって実行することが可能である。一実施形態ではその加熱を、炉、加熱用パッドおよび/または加熱用ランプにより伝達させることが可能である。輻射式加熱技法は例えば、高強度ラジアント加熱などのラジアント加熱とすることが可能である。一実施形態ではそのラジアント加熱は、高密度赤外線ランプなどの赤外線ランプによって実行することが可能である。このランプはまた、プラズマ・アーク・ランプ、タングステン・ハロゲンランプまたはこれらの組み合わせとすることが可能である。
【0064】
基準サンプルの各々の電気抵抗率は適当な任意の技法によって計測することが可能である。この技法は破壊的とすることも、非破壊的とすることも可能である。本明細書の幾つかの実施形態では「破壊的」技法とは、計測の実行自体によってある機序によってサンプルに永続的な変化が生じるような技法のことを指すことが可能である。例えばSEMにより検査するために、BMG部品が粉末まで粉砕されるかつ/または切り分けられることがある。破壊的計測技法の帰結の1つは、サンプルに対する永続的変化がそのサンプルを後続の計測に適さないようにさせること、あるいは後続の計測がそのサンプルを表さないような誤解を招く結果を与えかねないことである可能性がある。例えば破壊的技法は、示差走査熱量測定(「DSC」)を含むことが可能である。使用可能な技法は、機械的特性計測、放射線撮像法、顕微鏡法および示差走査熱量測定(「DSC」)を含むことが可能である。これらの方法は破壊的とすることも、非破壊的とすることも可能である。機械的計測は、曲げ、破壊靱性計測、引っ張り試験計測、圧縮試験計測、密度比計測、硬度計測によって実行することが可能である。放射線撮像法は、X線撮像法とX線回折のいずれとすることも可能である。エッチングを用いることも可能である。顕微鏡法は、偏光光学顕微鏡法などの光学顕微鏡法と電子顕微鏡法のうちの任意の1つとすることが可能である。
【0065】
これに対して非破壊技法では、サンプルの特性に観察可能な何らかの変化を生じさせるという少なくとも巨視的な意味においてはサンプルを変化させることがない。例えば非破壊技法ではそのサンプルを、接触せずに目視で観察するか、あるいはサンプルに観察可能な変化を生じさせない探触子とサンプルを接触させて観察することになる。例えば非破壊技法は、マルチメータを用いてサンプルの抵抗を計測しようとする可能性がある。基準サンプルの電気抵抗率が計測されるような一実施形態では非破壊技法は、GuoらによるSolid State Communications 135(2005)103〜107に記載されているような4探触子技法を含むことが可能である。この技法は簡単なマルチメータによって実行することも可能である。間接抵抗計測を利用することも可能である。一実施形態では誘導式技法を用いることが可能である。誘導式技法の幾つかの例は、TeodorescuらによるInternational Journal of Thermophysics,vol.22,No.5,1521ページ(2001)およびBakhtiyarovらによるTransactions of the ASME,vol.126,p.468(2004)に記載されているようなもののうちの1つとすることが可能である。
【0066】
その計測値は装置の適当な設計によって実行することが可能である。例えばこうした装置は、マルチメータ、サンプル保持器、電極、ヒータ、温度制御器、電気抵抗計測システム、コンピュータおよびディスプレイのうちの少なくとも1つを備えることが可能である。この装置あるいはその上述の構成要素のうちのいずれかを可搬式とすることが可能である。
【0067】
マスターカーブプロットによる結晶化度の決定
試料の特性を検査するためには、複数の基準カーブを備えたマスターカーブプロットを用いることが可能である。例えば一実施形態では、複数の基準サンプルに関する結晶化の程度と電気抵抗率の間の関係をガイドとして用いることによって、未知の合金試料の結晶化の程度を決定するために引き続き上述のマスターカーブプロットを用いることが可能である。合金試料および基準合金サンプルは上で述べた合金のうちのいずれとすることも可能である。
【0068】
例示的な一実施形態として、基準サンプルと同じ化学組成を有するが結晶化の程度が未知の合金試料に関する結晶化の程度を決定するためにマスターカーブチャートが用いられる。この実施形態では、合金試料の電気抵抗率と温度の間の関係は上述の技法のうちのいずれかによって計測することが可能である。合金試料の電気抵抗率の決定に使用する技法は非破壊式であることが好ましい。この関係はカーブによって表現することが可能である。次いでこのカーブをマスターカーブプロットの上に重ね合わせることが可能である。幾つかの実施形態では、電気抵抗率は温度からかなり独立に維持されるが結晶化度が上昇すると低下することになるため、合金試料の結晶化の程度は合金試料のカーブの当該箇所をマスターカーブプロット上の基準カーブのものと比較することによって決定することが可能である。
【0069】
一実施形態では、結晶化温度Txより前では温度独立であるため、結晶化度の決定はTxより下の事前規定された任意の温度で実行することが可能である。しかし幾つかの実施形態では、この温度をTxよりかなり低くすることが好ましいことに留意されたい。例えばその合金系に応じて、室温(約300K)、400K、500K、600K、その他において結晶化の程度を決定することが可能である。この温度独立性のために、ここに記載した方法の代替的な一実施形態は、Tx未満の単一の事前規定された温度において合金試料の抵抗率を計測すると共に、該値をマスターカーブプロットと比較することになることに留意されたい。こうした実施形態では、試料の全加熱履歴を観察する必要がないことになり計測の高速化が可能となる。しかし試料の加熱履歴を得ることによって合金試料に関する追加の貴重な情報も提供可能となることに留意されたい。
【0070】
この独立性のために、本明細書に記載した決定に使用可能なマスターカーブプロットの域内の温度範囲をかなり広くすることが可能である。例えばその温度を、77Kから結晶化温度までの任意の温度(約0℃(273K)から結晶化温度までなど、室温から結晶化温度までなど)とすることが可能である。この温度範囲の最低温度は、0℃未満とすることも可能であり、最低温度に関しては制限がない。例えばこの範囲の最低温度は、約250K未満(約200K未満など、約150K未満など、約100未満など、約80K未満など、約77K未満など、約50K未満など、約25K未満など、約10K未満など、0Kに近づけるなど)とすることが可能である。
【0071】
その用途に応じて、結晶化温度未満からこれを超えるまでの合金の熱履歴の観察を可能にするために結晶化温度を遥かに超える温度範囲を用いることが可能である。例えば上述の最低温度では、温度範囲の最高温度を少なくとも約100K(少なくとも約150Kなど、少なくとも約200Kなど、少なくとも約250Kなど、少なくとも約300Kなど、少なくとも約350Kなど、少なくとも約350Kなど、少なくとも約400Kなど、少なくとも約450Kなど、結晶化温度を超える温度)とすることが可能である。温度依存性は(例えば、室温から結晶化温度までの)加熱の結果として得ることが可能であり、あるいは(例えば、室温から273Kやさらに低く例えば77Kまでの)冷却の結果として得ることが可能である。
【0072】
さらに結晶化度に関する電気抵抗率依存性のために、結晶化の程度が未知の合金試料の結晶化度を当該カーブを基準カーブと比較することによって決定することが可能である。例えば合金試料のカーブが50vol%結晶性の基準サンプルの基準カーブと75vol%のものの別の基準カーブとの間に来ていれば、その合金試料は50vol%から75vol%の間の結晶化の程度を有すると推定することが可能である。この範囲は、事前決定された結晶化の程度が異なるより多くの基準カーブを備えることによって本方法をさらに高精度として狭めることが可能である。
【0073】
この決定をさらに高精度にするために追加的なさらに高度な方法を利用することが可能である。例えばその合金系に応じて、電気抵抗率と結晶化度の間の関係をある種の数式(例えば、一次式、二次式、指数式、多項式、その他の関数)によって明瞭にすることが可能である。したがって一実施形態では、基準カーブを基にした合金試料のカーブの相対的位置を決定することによって、数式に基づいて合金試料のより正確な結晶化度の決定が可能である。別の実施形態ではその比較はカーブ全体ではなく事前規定された特定の温度におけるカーブの位置に関して実行することが可能である。別法としてその比較はまた、カーブ全体や単一点ではなくカーブの一部分に関して実行することも可能である。
【0074】
マスターカーブプロットは化学組成に特異的であるため、検査しようとする合金試料が異なる化学組成から成る場合は複数のマスターカーブプロットを同時に用いる可能性がある。例えば、第2の組成から成る一連の基準合金サンプルに対する第2のマスターカーブプロット、第3のプロット、4プロット、等々を重ね合わせて同時に使用することが可能である。別法として異なるマスタープロットを別々に用いることが可能である。
【0075】
ここに記載した方法はまた、マスターカーブを用いずに合金試料を評価するために用いることも可能である。例えば一実施形態では、結晶性合金がその抵抗率対温度カーブに関して正の傾斜を有する傾向であることが分かっているため、合金のρ対Tカーブの傾斜によってその合金の特性に関するインジケータを提供することが可能である。一実施形態では、少なくとも2つの温度(例えば、少なくとも3つの温度、少なくとも4の温度、その他)で合金がその抵抗率に関する計測を受けることが可能である。ρ対Tプロット上で計測データをプロットすることによって、
図6に示したようにしてこれらのデータ点を1つの線で接続することができる。一実施形態では、結晶性合金が正の傾斜(例えば、
図6(c))を示すことが分かっているため、ゼロ傾斜または負の傾斜(例えば、
図6(b)、6(a)のそれぞれ)を示す線を有する任意の合金を非結晶性である(または、少なくとも部分的に非結晶性である)と見なすことが可能である。この実施形態ではマスターカーブは全く不要である。別法ではマスターカーブを用いることも可能である。別の実施形態では、ある種の結晶化の程度と傾斜の間の相関を事前に決定することが可能である。したがって、カーブの傾斜を計測してこれを事前決定された値と比較することによって、合金試料の結晶化の程度を傾斜に基づいて決定することが可能である。さらに、この方法により提供される材料特性は必ずしも正確な結晶化の程度である必要はない。例えば正の傾斜は結晶の存在を示すことが可能であり、これにより合金試料に関して何らかの指示を提供することができる。
【0076】
品質管理
その用途に応じて、任意の結晶化度を有するBMGは望ましくない可能性がある。他方、その結晶化度を計測するためにBMG部品を破壊することも同じく望ましくない。したがって、非晶質合金サンプルの結晶化の程度を非破壊式に監視および/または計測することが望ましい。マスターカーブプロットの利用を含む上述の方法は有用となり得る。
図4は、一実施形態による合金試料の結晶化度を決定するためにマスターカーブプロットを使用するステップを表した例示の流れ図を提供している。
【0077】
電気抵抗率は合金試料上の異なる箇所で計測することが可能である。この合金は、完全非晶質や部分非晶質など上で述べた合金のうちのいずれとすることも可能である。結晶化度の均一性を保証するためにこうした一連の計測値が有用となり得る。例えば結晶は合金試料内でランダムにまた均一に生じることがある。一実施形態では、
図3(a)に示したようにBMG1の複数の箇所11、12、13において合金サンプルの任意の表面上である軸に沿って一連の電気抵抗率計測を進めることが可能である。別法としてこれらの箇所は、
図3(b)に示したようにBMG1の平面2(または、断面領域)の上とすることが可能である。
【0078】
同じ線に沿って、ここに記載した方法はさらに、材料特性を結晶化の程度と相関させるために用いることが可能である。本方法は、全体とした合金試料に対する広域計測と異なり、材料の「局所的」特性に関するインジケータを提供するのに特に有用とすることができる。例えば
図3(a)〜3(b)にある箇所11、12および13は、全般的にはBMG1の全体とは対照的である。例えばここに記載した方法によれば、DSC計測後に合金試料の結晶化度計測値の計測の提供が全体として可能となるのみである既存の(破壊式の)方法と異なり、合金試料の上側、左側、右側、下側、その他に関する結晶化度計測値を提供することが可能となる。
【0079】
ここに記載した方法は、結晶化の程度に関して、特に合金製作処理過程において合金製品の品質を監視および/または計測する非破壊式の方法を提供することが可能である。例えば追加の監視ステップを付加することが可能である。一実施形態では、結晶化の程度の決定をさらに実施した後に「良」製品と「否」製品の2値判定を追加可能とするように「良」と「否」と見なすための品質基準を導入することが可能である。こうした2値インジケータは製品の合格・不合格を決めるために用いることが可能である。この品質計測/判定はまた、以下に示すような合金の製作過程を評価するために用いることが可能であり、これにより製作過程を修正および/または最適化することができるようになる。例えば合金サンプルの電気抵抗率の温度依存性は、合金の品質または製作(すなわち、製造)過程を評価するために用いることが可能である。例えば
図5に示したように、カーブ51が「合格」または「良」であると見なされた合金の関係を表すとした場合、影付けした領域内に示したレベルなどこうしたレベルにある関係を有する合金を「否」または「不合格」と見なすことが可能である。否の合金または不合格の合金は拒絶することが可能である。良または合格のレベルは、任意に規定することが可能であり、これは影付け領域についても同様に可能である。
【0080】
同様に、1つのマスターカーブを用いている上述の実施形態では、そのρ対Tカーブについて非正の傾斜をもつ合金が「合格」と見なすことが可能であり、一方前者を「不合格」と見なすことが可能である。したがってマスターカーブの利用を必要とせずに、線の傾斜を用いて合金の材料パラメータ(例えば、結晶性か結晶性でないか)を決定すること、またさらには上述したような非晶質合金の作製に関する製作過程の効果を評価することが可能である。
【0081】
上述の方法を実行可能な装置は、金属ガラス製作システムと一体とすることが可能な品質管理装置として利用することが可能である。例えば、装置のインジケータが「否」信号を示している場合、装置は製作システムに処理を停止させる信号を送ることが可能である。別法としてこの信号は、製作システムに対して製作条件(例えば、温度、圧力、その他)を変更して製品の品質を最適化するために送ることが可能である。装置と一体としたシステムの品質管理フィードバックは連続式とすること、すなわち製作システムがフィードバックを連続式に送受信すると共に連続して調整を実施することが可能である。別法として、そのフィードバックを離散的とすること、すなわち信号を指定の時点で送ることが可能であり、また次いで製作システムをこのフィードバックに基づいて監視および検査することが可能である。
【0082】
さらにここに記載した方法は、「良」または「否」の2値判定ではなく、結晶化度のレベル/程度を直接示すために用いることが可能である。一実施形態では、こうした処理後/製作後判定によって、製品品質を最適化するために製作パラメータを調整できるように製作過程においてフィードバックを提供することが可能である。一実施形態では、製作、品質監視およびパラメータ調整を含む全過程を自動化すること、すなわちコンピュータによって制御することが可能である。
【0083】
上述の品質管理はBMGを用いることを含む製作過程において有用となる可能性がある。BMGの特性が優れているため、BMGを多種多様なデバイスや部品内の構造構成要素にすることが可能である。こうしたタイプのデバイスの1つが電子デバイスである。
【0084】
本明細書において電子デバイスとは、当技術分野で周知の任意の電子デバイスを意味することが可能である。例えばこれを、携帯電話や固定電話などの電話機、あるいは例えばiPhone(商標)や電子メール送信/受信デバイスを含むスマートフォンなどの任意の通信デバイスとすることが可能である。またこれを、ディジタルディスプレイ、TVモニター、電子ブックリーダー、可搬式ウェブブラウザ(例えば、iPad(商標))およびコンピュータモニターなどのディスプレイの一部とすることが可能である。またこれを、可搬式DVDプレーヤー、従来式DVDプレーヤー、ブルーレイ・ディスクプレーヤー、テレビゲーム・コンソール、可搬式音楽プレーヤー(例えば、iPod(商標))などの音楽プレーヤー、その他を含む娯楽デバイスとすることも可能である。またこれを、画像、映像、音声(例えば、Apple TV(商標))のストリームの制御などの制御を提供するデバイスの一部とすることが可能であり、あるいはこれを電子デバイスに対するリモート制御装置とすることが可能である。またこれを、ハードドライブ・タワーハウジングやケーシング、ラップトップ・ハウジング、ラップトップ・キーボード、ラップトップ・トラックパッド、デスクトップ・キーボード、マウスおよびスピーカなどコンピュータやその付属品の一部とすることが可能である。腕時計や掛け時計などのデバイスにもこの物品を利用することが可能である。
【0085】
本明細書において「a(1つの)」や「an(1つの)」という冠詞を用いて当該冠詞の文法的対象について、1つのという意味や複数のという意味(すなわち、少なくとも1つのという意味)を示している。一例として、「a polymer resin(1つのポリマー樹脂)」は、1つのポリマー樹脂あるいは複数のポリマー樹脂のことを意味している。本明細書で引用した任意の範囲は両端を含む。本明細書全体にわたって用いている「実質的に」および「約」という用語は、微小なゆらぎについて記載しかつこれに対応するように使用したものである。例えばこれらによって、±5%以下(±2%以下など、±1%以下など、±0.5%以下など、±0.2%以下など、±0.1%以下など、±0.05%以下など)であることを示すことが可能である。