特許第5703531号(P5703531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703531
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20150402BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20150402BHJP
   F21Y 101/02 20060101ALN20150402BHJP
【FI】
   F21S8/10 150
   F21W101:10
   F21Y101:02
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-64540(P2011-64540)
(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-203995(P2012-203995A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】小池 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】梁 吉鎬
【審査官】 川内野 真介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−224053(JP,A)
【文献】 特開2010−056003(JP,A)
【文献】 特開2004−342405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光源装置と、前記レーザー光源装置から放射される光を用いて所定配光パターンを形成するように構成された光学系と、を備えた車両用灯具において、
前記レーザー光源装置は、
光透過性部材からなる円柱形状の導光部であって、レーザー光を前記導光部内部に導入する入光面を含む一端面、外周面及び他端面を含む表面を備え、かつ、前記表面のうち前記入光面以外の領域に散乱面が設定された導光部と、
前記外周面のうち、前記導光部の円柱軸を含む第1平面と前記導光部の円柱軸を含みかつ前記第1平面に対して所定角度傾斜した第2平面とで囲まれた出光領域上に配置された蛍光体と、
前記表面のうち前記入光面及び前記出光領域以外の領域上に配置された反射膜と、
前記入光面から前記導光部内部に導入され、前記散乱面で散乱し、前記出光領域から散乱光として出射し、前記蛍光体に入射するレーザー光を出射するレーザー光源と、
を備えており、
前記導光部とレーザー光源とが隣接して配置されており、
前記レーザー光源と前記入光面との間には、前記レーザー光源から出射したレーザー光を透過させるための偏光フィルタが配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記出光領域には、頂角が90°以下の凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記レーザー光源と前記偏光フィルタとの間には、屈折率の互いに異なる2つの層が交互に積層されて構成されている反射防止膜が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光学系は、
前記レーザー光源装置から放射された光が入射するように前記レーザー光源装置の前方に配置されるとともに、前記レーザー光源装置から入射した光を、すれ違いビーム用配光パターンを形成する収束光として反射する反射面と、
前記反射面で反射された光が透過するように前記反射面の前方に配置された投影レンズと、
前記反射面で反射された光の一部を遮光してすれ違いビーム用配光パターンのカットオフを形成するように、前記反射面と投影レンズとの間に配置されたシェードと、
を備えていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光学系は、
前記レーザー光源装置から放射された光が入射するように前記レーザー光源装置の前方に配置されるとともに、前記レーザー光源装置から入射した光を、走行ビーム用配光パターンを形成する光として反射する反射面と、
前記反射面で反射された光が透過するように前記反射面の前方に配置された投影レンズと、
を備えていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して180°又は360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記光学系は、灯具光軸の上方に配置された放物面系反射面であり、
前記レーザー光源装置は、その光軸が灯具光軸に一致するように配置されており、
前記放物面系反射面は、焦点が前記導光部の後端部近傍に設定されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記光学系は、灯具光軸の下方に配置された放物面系反射面であり、
前記レーザー光源装置は、その光軸が灯具光軸に一致するように配置されており、
前記放物面系反射面は、焦点が前記導光部の前端部近傍に設定されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して180°、195°又は360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されていることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されており、
さらに、前記導光部の外周面の周囲に、当該外周面との間に間隔をおいて配置された反射面を備えていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されており、
さらに、前記導光部の外周面の周囲に、当該外周面との間に間隔をおいて配置された反射面と、
前記導光部とレーザー光源とが隣接して配置されるとともに、前記導光部の外周面の周囲に配置された反射面が形成されたヒートシンク台と、
を備えており、
前記ヒートシンク台は、前記導光部の円柱軸を含む第3平面によりカットされた水平面と、前記導光部の円柱軸を含みかつ前記第3平面に対して195°傾斜した第4平面によりカットされた斜面と、を含んでいることを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項12】
前記導光部とレーザー光源とが隣接して配置されたヒートシンク台をさらに備えることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項13】
前記ヒートシンク台が着脱自在に装着されるスライドイン構造を含むヒートシンク基板をさらに備えることを特徴とする請求項11又は12に記載の車両用灯具。
【請求項14】
前記導光部の外径が0.3〜2mm、長さが0.3〜6mmであることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源装置を用いた車両用灯具、特に、従来と比べて光軸方向寸法が短い車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の分野においては、夜間に充分な強度の光で遠方を照明するために高輝度の光源が求められており、この要求に応えるために、レーザー光源とレーザー光(例えば、青色レーザー光)により励起されて発光する蛍光体(例えば、YAG蛍光体)とを組み合わせたレーザー光源装置を用いた車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図20図21に示すように、特許文献1に記載の車両用灯具200は、レーザー光源210、レーザー光により励起されて発光する蛍光体220、蛍光体220から放射される光を前方に向けて反射する反射面230等を備えている。
【0004】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、レーザー光源210が出射したレーザー光により励起されて蛍光体220が発光することでLEDやHIDと比べて高輝度の光源を実現することが可能となる(図22参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−232044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具においては、レーザー光源210と蛍光体220とを物理的に離して配置する構成であるため(図20図21参照)、その分、車両用灯具200の光軸方向寸法が長くなるという問題がある。これは、青色レーザー光源であるレーザー光源210から発するガウシアン分布照射束が放射状に拡がる発光となるため、収束光線の先にある蛍光体200にあたる照射面積を小さくする目的で、レーザー光源210と蛍光体220との間にコリメートレンズ240を配置して光を収束させる必要があり、その分、光学長さが必要となるためである(図20参照)。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レーザー光源装置を用いた車両用灯具であって従来と比べて光軸方向寸法が短い車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、レーザー光源装置と、前記レーザー光源装置から放射される光を用いて所定配光パターンを形成するように構成された光学系と、を備えた車両用灯具において、前記レーザー光源装置は、光透過性部材からなる円柱形状の導光部であって、レーザー光を前記導光部内部に導入する入光面を含む一端面、外周面及び他端面を含む表面を備え、かつ、前記表面のうち前記入光面以外の領域に散乱面が設定された導光部と、前記外周面のうち、前記導光部の円柱軸を含む第1平面と前記導光部の円柱軸を含みかつ前記第1平面に対して所定角度傾斜した第2平面とで囲まれた出光領域上に配置された蛍光体と、前記表面のうち前記入光面及び前記出光領域以外の領域上に配置された反射膜と、前記入光面から前記導光部内部に導入され、前記散乱面で散乱し、前記出光領域から散乱光として出射し、前記蛍光体に入射するレーザー光を出射するレーザー光源と、を備えており、前記導光部とレーザー光源とが隣接して配置されており、前記レーザー光源と前記入光面との間には、前記レーザー光源から出射したレーザー光を透過させるための偏光フィルタが配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、導光部(入光面)とレーザー光源とを隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短い車両用灯具を構成することが可能となる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光を実現することが可能となる。
【0011】
また、請求項1に記載の発明によれば、散乱面の作用により、均一な発光輝度分布と均一な発光色の確保が可能なレーザー光源装置を用いているため、均一な発光色で色むらが無い配光を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、偏光フィルタの作用により、導光部内部で拡散したレーザー光が入光面から出射してレーザー光源へ入射することに起因するレーザー光源の出力変動を防止することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記出光領域には、頂角が90°以下の凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、頂角が90°以下の凹凸の作用により、導光部(出光領域)と蛍光体との密着性を向上させることが可能となる。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記レーザー光源と前記偏光フィルタとの間には、屈折率の互いに異なる2つの層が交互に積層されて構成されている反射防止膜が配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、反射防止膜の作用により、導光部(入光面)に向かう透過光を強めることが可能となる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の発明において、前記光学系は、前記レーザー光源装置から放射された光が入射するように前記レーザー光源装置の前方に配置されるとともに、前記レーザー光源装置から入射した光を、すれ違いビーム用配光パターンを形成する収束光として反射する反射面と、前記反射面で反射された光が透過するように前記反射面の前方に配置された投影レンズと、前記反射面で反射された光の一部を遮光してすれ違いビーム用配光パターンのカットオフを形成するように、前記反射面と投影レンズとの間に配置されたシェードと、を備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、導光部(入光面)とレーザー光源とを隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いプロジェクタタイプの車両用灯具を構成することが可能となる。
【0020】
また、請求項に記載の発明によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光(すれ違いビーム用配光パターン)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0021】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の発明において、前記光学系は、前記レーザー光源装置から放射された光が入射するように前記レーザー光源装置の前方に配置されるとともに、前記レーザー光源装置から入射した光を、走行ビーム用配光パターンを形成する光として反射する反射面と、前記反射面で反射された光が透過するように前記反射面の前方に配置された投影レンズと、を備えていることを特徴とする。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、導光部(入光面)とレーザー光源とを隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いプロジェクタタイプの車両用灯具を構成することが可能となる。
【0023】
また、請求項に記載の発明によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光(走行ビーム用配光パターン)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0024】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の発明において、前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して180°又は360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されていることを特徴とする。
【0025】
請求項に記載の発明によれば、蛍光体を180°の出光領域に配置することで、LEDと同様、半球方向に光を放射することが可能で、なおかつ、LEDと比べて高輝度なレーザー光源装置を構成することが可能となる。これにより、LEDを用いた場合よりも明るい配光を実現できる車両用灯具を構成することが可能となる。
【0026】
また、蛍光体を360°の出光領域に配置することで、ハロゲン電球、HID電球と同様、全周方向に光を放射することが可能で、なおかつ、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置を構成することが可能となる。これにより、ハロゲン電球やHID電球を用いた場合よりも明るい配光を実現できる車両用灯具を構成することが可能となる。
【0027】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の発明において、前記光学系は、灯具光軸の上方に配置された放物面系反射面であり、前記レーザー光源装置は、その光軸が灯具光軸に一致するように配置されており、前記放物面系反射面は、焦点が前記導光部の後端部近傍に設定されていることを特徴とする。
【0028】
請求項に記載の発明によれば、導光部(入光面)とレーザー光源とを隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いリフレクタタイプの車両用灯具を構成することが可能となる。
【0029】
また、請求項に記載の発明によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0030】
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の発明において、前記光学系は、灯具光軸の下方に配置された放物面系反射面であり、前記レーザー光源装置は、その光軸が灯具光軸に一致するように配置されており、前記放物面系反射面は、焦点が前記導光部の前端部近傍に設定されていることを特徴とする。
【0031】
請求項に記載の発明によれば、導光部(入光面)とレーザー光源とを隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いリフレクタタイプの車両用灯具を構成することが可能となる。
【0032】
また、請求項に記載の発明によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0033】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して180°、195°又は360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されていることを特徴とする。
【0034】
請求項に記載の発明によれば、蛍光体を180°の出光領域に配置することで、水平カットオフを含む配光パターンを形成することが可能となる。また、蛍光体を360°の出光領域に配置することで、略円形の配光パターンを形成することが可能となる。また、蛍光体を195°の出光領域に配置することで、水平カットオフ及び斜めカットオフを含むすれ違いビーム用配光パターンを形成することが可能となる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の発明において、前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されており、さらに、前記導光部の外周面の周囲に、当該外周面との間に間隔をおいて配置された反射面を備えていることを特徴とする。
【0036】
請求項10に記載の発明によれば、外周面との間に間隔をおいて配置された反射面の作用により、レーザー光源装置が放射する光束をほぼ倍増させることが可能となる。
【0037】
請求項11に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記蛍光体は、前記外周面のうち、前記第1平面と前記第1平面に対して360°傾斜した前記第2平面とで囲まれた前記出光領域上に配置されており、さらに、前記導光部の外周面の周囲に、当該外周面との間に間隔をおいて配置された反射面と、前記導光部とレーザー光源とが隣接して配置されるとともに、前記導光部の外周面の周囲に配置された反射面が形成されたヒートシンク台と、を備えており、前記ヒートシンク台は、前記導光部の円柱軸を含む第3平面によりカットされた水平面と、前記導光部の円柱軸を含みかつ前記第3平面に対して195°傾斜した第4平面によりカットされた斜面と、を含んでいることを特徴とする。
【0038】
請求項11に記載の発明によれば、水平カットオフ及び斜めカットオフを含むすれ違いビーム用配光パターンを形成することが可能となる。
【0039】
請求項12に記載の発明は、請求項1から10のいずれかの発明において、前記導光部とレーザー光源とが隣接して配置されたヒートシンク台をさらに備えることを特徴とする。
【0040】
請求項12に記載の発明によれば、蛍光体とレーザー光源とをヒートシンク台に配置したユニットとして構成することが可能であるため、蛍光体とレーザー光源とが位置ズレすることなく高精度にアライメントされたレーザー光源装置を構成することが可能となる。
【0041】
請求項13に記載の発明は、請求項11又は12に記載の発明において、前記ヒートシンク台が着脱自在に装着されるスライドイン構造を含むヒートシンク基板をさらに備えることを特徴とする。
【0042】
請求項13に記載の発明によれば、蛍光体等の発熱をヒートシンク台から熱伝導により灯具筐体側へ伝熱することが可能となる。また、レーザー光源装置を、光学系に対して正確に位置決めして取り付けることが可能となる。さらに、レーザー光源装置に不具合が発生した場合であっても当該レーザー光源装置を容易に交換することが可能となる。
【0043】
請求項14に記載の発明は、請求項1から13に記載の発明において、前記導光部の外径が0.3〜2mm、長さが0.3〜6mmであることを特徴とする。
【0044】
請求項14に記載の発明によれば、前照灯として求められる高輝度の発光部(ハロゲン電球のフィラメント、HID電球のアークチューブ等)よりもさらに小型で高輝度の発光部を構成することが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、レーザー光源装置を用いた車両用灯具であって従来と比べて光軸方向寸法が短い車両用灯具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の実施例1に係る光源装置の構成を示す斜視図である。
図2】(a)および(b)は、それぞれ本発明の実施例1に係る波長変換構造体の構成を示す斜視図および上面図である。
図3】(a)および(b)は、それぞれ図2(b)における3a−3a線および3b−3b線に沿った断面図である。
図4】本発明の実施例1に係る光源装置の動作を説明するための断面図である。
図5】本発明の実施例1に係る波長変換構造体の断面図である。
図6】本発明の実施例1に係る波長変換構造体の製造工程を示す断面図である。
図7】(a)および(b)は、本発明の実施例2に係る波長変換構造体の構成を示す断面図である。
図8】(a)は本発明の実施例3に係る波長変換構造体の構成を示す斜視図、(b)は、本発明の実施例3に係る光源装置の構成を示す断面図である。
図9】本発明の実施例4に係る光源装置の動作を説明するための縦断面図である。
図10】車両用灯具70の縦断面図である。
図11】(a)スライドイン構造の斜視図(レーザー光源装置装着前)、(b)スライドイン構造の斜視図(レーザー光源装置装着後)である。
図12】車両用灯具80の斜視図である。
図13】車両用灯具90の縦断面図である。
図14】波長変換構造体20(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=195°)の、円柱軸AXcに対して垂直な平面で切断した断面図である。
図15】(a)車両用灯具90(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=195°)の正面図、(b)図15(a)の車両用灯具90により形成される配光パターンの例である。
図16】(a)車両用灯具90の変形例(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°)の正面図、(b)図16(a)の車両用灯具90の変形例により形成される配光パターンの例である。
図17】(a)車両用灯具90の変形例(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=360°)の正面図、(b)図17(a)の車両用灯具90の変形例により形成される配光パターンの例である。
図18】レーザー光源装置4の変形例の、円柱軸AXcに対して垂直な平面で切断した断面図である。
図19】(a)図18のレーザー光源装置4(変形例)を用いて構成した車両用灯具の正面図、(b)図19(a)の車両用灯具により形成される配光パターンの例である。
図20】従来の車両用灯具200の縦断面図である。
図21】従来の車両用灯具200の横断面図である。
図22】レーザー光源、LED、HIDの輝度の関係を説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施例1に係るレーザー光源装置1について説明する。
【0048】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1に係るレーザー光源装置1の構成を示す斜視図、図2(a)および図2(b)は、それぞれ光源装置1を構成する波長変換構造体20の構成を示す斜視図および平面図である。図3(a)および図3(b)は、それぞれ、図2(b)における3a−3a線および3b−3b線に沿った断面図である。
【0049】
レーザー光源としてのレーザダイオード10は、例えばGaN等の窒化物系半導体層を含み、波長450nm前後の青色光を放射する半導体レーザである。レーザダイオード10は、セラミックス等からなるサブマウント12上に搭載される。レーザダイオード10を搭載したサブマウント12は、ヒートシンク台30の上面に搭載される。サブマウント12の表面には、レーザダイオード10の裏面電極に電気的に接続された導体配線(図示せず)が形成されており、かかる導体配線とヒートシンク台30上に設けられた第1電極32aは、ボンディングワイヤ34により電気的に接続されている。レーザダイオード10の表面電極とヒートシンク台30上に設けられた第2電極32bもボンディングワイヤ34により電気的に接続されている。第1電極32aおよび第2電極32bは、それぞれ、レーザダイオード10のp電極およびn電極に対応している。第1電極32aおよび第2電極32bの終端部には、リードワイヤ35を固定するための固定示治具33が設けられている。リードワイヤ35は、レーザダイオード10に給電を行うための配線である。ヒートシンク台30は熱伝導率の高いCuやAl等により構成される。第1電極32aおよび第2電極32bは、絶縁膜を介してヒートシンク台30の上に設けられている。
【0050】
波長変換構造体20は、レーザダイオード10に隣接して設けられる(図1参照)。図2(a)、図2(b)に示すように、波長変換構造体20は、光透過性を有する円柱形状のガラス材からなる導光部22と、導光部22の外周面27上に配置(塗布)された蛍光体含有樹脂24とを含んでいる。蛍光体含有樹脂24は、導光部22内に導入されたレーザ光を波長変換して外部に放射する光取り出し面を形成する。
【0051】
導光部22は、レーザー光を導光部22内部に導入する入光面25(以下、レーザ入射口25とも称する)を含む一端面23(以下、レーザー入射端面23とも称する)、外周面27及び他端面28を含む表面を備えている。
【0052】
波長変換構造体20は、レーザ入射口25を有するレーザ入射端面23がレーザダイオード10のレーザ出射面と対向するように配置される(図1参照)。すなわち、波長変換構造体20は、導光部22の円柱軸AXcとレーザ光の光軸方向が一致するように配置される。
【0053】
図3(a)、図3(b)に示すように、導光部22の表面のうち入光面25以外の領域(外周面27、他端面28等)には、散乱面としての複数の微細な凹凸29が設定されている。凹凸29は例えばブラスト処理等によるランダムな粗し加工により形成される。尚、凹凸29は、フォトリソグラフィー技術を用いて形成された規則的な形状、例えば円錐形状、角錐形状等であってもよい。凹凸29の深さは100nm以上5μm以下、好ましくはレーザ波長と同等の500nmである。導光部22表面の凹凸29を構成する1つの突起の大きさは、レーザ波長の10倍以内であり、アスペクト比は0.5以上であることが好ましい。
【0054】
導光部22の表面は、レーザ入射口25を形成する部分および蛍光体含有樹脂24を形成する部分を除き、光反射膜26で覆われている。光反射膜26は、高反射率および高熱伝導率を有する材料、例えば、Ag、Al等の金属またはBa系酸化物等により構成される。光反射膜26は導光部22の表面の凹凸29に沿って形成され、これにより、散乱面(凹凸29)に沿った光反射面が形成される。導光部22は、レーザ入射端面23の中央部において、光反射膜26で被覆されず、ガラス材が露出したレーザ入射口25を有する。レーザダイオード10から出射されるレーザ光は、レーザ入射口25を介して導光部22内に導入される。レーザ入射口25の位置、形状および寸法はレーザ光のスポットサイズや、レーザダイオード10と導光部22との相対位置等を考慮して適宜設定することができる。
【0055】
光反射膜26は、導光部22との界面において光反射面を形成し、導光部22内に導入されたレーザ光が蛍光体含有樹脂24の表面以外の部分から外部に放射されるのを防止する。すなわち、導光部22内に導入されたレーザ光は、蛍光体含有樹脂24の内部を経由してのみ外部に放射される。導光部22の表面に形成された散乱面(凹凸29)と光反射膜26との組み合わせによって導光部22の表面には光拡散構造が形成される。
【0056】
蛍光体含有樹脂24は、シリコーン樹脂等の光透過性樹脂にYAG:Ce蛍光体を分散させたものである。蛍光体は、レーザダイオード10から出射される波長450mm程度の青色光を吸収してこれを例えば波長560nm前後に発光ピークを持つ黄色光に変換する。蛍光体により波長変換された黄色光と、波長変換されずに蛍光体含有樹脂24を透過した青色光が混ざることにより、蛍光体含有樹脂24の表面からは白色光が得られるようになっている。尚、蛍光体の粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0057】
蛍光体含有樹脂24は、導光部22の外周面27の湾曲形状に沿うように形成される。図3(a)、図3(b)に示すように、蛍光体含有樹脂24は、導光部22の外周面27のうち、導光部22の円柱軸AXcを含む第1平面P1(水平面)と導光部22の円柱軸AXcを含みかつ第1平面P1に対してθ1=180°傾斜した平面P2とで囲まれた領域a(以下、出光領域aとも称する)上に配置(塗布)されている。すなわち、導光部22の外周面27のうち、周方向の約半分の領域が蛍光体含有樹脂24で覆われており、かかる範囲において白色光が放射される。蛍光体含有樹脂24の厚さは、例えば100μm程度である。
【0058】
次に、上記構成のレーザー光源装置1の動作について説明する。
【0059】
一対のリードワイヤ35を介してレーザダイオード10に給電を行うと、図4に示すように、レーザダイオード10のレーザ出射面からは、波長450nm前後の青色のレーザ光が出射される。レーザ光は、レーザ入射口25を介して導光部22内に導入される。
【0060】
導光部22内に導入されたレーザ光は、導光部22の散乱面(凹凸29)および光反射膜26により構成される光拡散構造によりランダムな方向に拡散・散乱され、外周面27のうち光反射膜26で覆われていない出光領域aから散乱光として出射し、蛍光体含有樹脂24に入射する。導光部22がかかる光拡散構造を有することにより導光部22内におけるレーザ光の反射回数を低減することができ、高効率を実現できる。また、かかる光拡散構造により、導光部22内においてレーザ光はランダムな方向に拡散・散乱されるので、レーザ光を蛍光体含有樹脂24の全面に亘って入射させることが可能となる。すなわち、蛍光体含有樹脂24の全面から光を取り出すことができ、発光部面積を拡大させるとともに輝度むらの発生を防止することが可能となる。特に導光部22表面に1単位の大きさがレーザ波長の10倍以下であり、アスペクト比が0.5以上である凹凸29を形成することにより、輝度むらの発生を効果的に防止することができる。なお、凹凸29のサイズ、密度、凹凸29を構成する各面の傾斜角度等を調整することで(例えば、部分ごとに凹凸29のサイズ、密度、凹凸29を構成する各面の傾斜角度等を変えることで)、輝度むらをさらに防止又は低減することが可能となる。
【0061】
仮に散乱面(凹凸29)を形成せず導光部22の表面が平坦である場合、導光部22内に導入されたレーザ光は導光部22内において反射を繰り返すことにより減衰し、発光効率が低下する。また、この場合、蛍光体含有樹脂24の特定の部位にレーザ光が集中し、発光部面積が小さくなる。更に、平坦面で反射した光が干渉波を発生させる確率が高く、光取り出し面において輝度むらを生じる場合がある。
【0062】
導光部22の露出面は、レーザ入射口25及び出光領域aを除き光反射膜26で覆われているので、導光部22内に導入されたレーザ光は全て蛍光体含有樹脂24内部に導入される。すなわち、レーザ入射口25を介して導光部22内に導入されたレーザ光は出光領域aから散乱光として出射し、蛍光体含有樹脂24を経由して外部に放射されることとなる。
【0063】
蛍光体含有樹脂24内に導入されたレーザ光は、蛍光体粒子との衝突により回折を生じ、新たな波面を生じさせる。すなわち、蛍光体粒子の各々を新たな光源とみなすことができる。蛍光体粒子による回折を受けた光はインコヒーレント光となり、いかなる光学系をもってしてもレーザダイオード10から出射されたレーザ光のスポット径に復元することは不可能となる。つまり、レーザ光が蛍光体含有樹脂24を経由することにより、ビームスポットサイズは蛍光体含有樹脂24のサイズに拡大される。
【0064】
蛍光体は、上記したように、レーザダイオード10から出射される波長450nm程度の青色光を吸収してこれを例えば波長560nm前後に発光ピークを持つ黄色光に変換する。蛍光体により波長変換された黄色光と、波長変換されずに蛍光体含有樹脂24を透過した青色光が混ざることにより蛍光体含有樹脂24の表面から放射される光は白色光として認識される。すなわち、レーザダイオード10から出射された青色のレーザ光は、蛍光体含有樹脂24の表面全体からインコヒーレントな白色光として取り出される。
【0065】
図5に導光部22と蛍光体含有樹脂24の界面近傍の拡大図を示す。導光部22の表面(外周面27)に凹凸29と同様の凹凸を形成することにより、導光部22の表面積が増加して、導光部22と蛍光体含有樹脂24との密着性が向上する。
【0066】
一方、蛍光体含有樹脂24は、波長変換を行う際に光エネルギーを吸収して発熱するため温度変化が大きい。このため、蛍光体含有樹脂24は、温度変化による膨張と収縮を繰り返す。仮に導光部22の表面(外周面27)が平坦である場合、導光部22と蛍光体含有樹脂24の熱膨張係数差に起因して蛍光体含有樹脂24の剥離が起こりやすくなる。すなわち、導光部22の表面(外周面27)が平坦である場合、導光部22と蛍光体含有樹脂24の界面に生じる熱応力は、各部分において互いに強め合う向きに作用するので、熱衝撃に対して脆弱となる。
【0067】
本実施例のように、導光部22の表面(外周面27)に凹凸を設け、これを覆うように蛍光体含有樹脂24を形成した場合、導光部22と蛍光体含有樹脂24の界面に生じる熱応力は、図5において矢印で示すように、凹凸に沿った方向に作用する。すなわち、熱応力は界面の各部分において互いに干渉するようには働かず、その結果、蛍光体含有樹脂24の剥離が生じにくくなる。特に、凹凸を構成する複数の突起の各々の形状が円錐状又は角錐状等の規則的な形状を有しており、各突起の頂角Aが90°以下である場合、熱応力は界面の各部において完全に分離され、熱衝撃に対する耐性が極めて高くなる。すなわち、頂角が90°以下の凹凸の作用により、導光部22(出光領域a)と蛍光体含有樹脂24(蛍光体)との密着性を向上させることが可能となる。
【0068】
このように、導光部22の表面(出光領域a)に凹凸を形成し、この凹凸を覆うように蛍光体含有樹脂24を形成することにより、導光部22と蛍光体含有樹脂24の密着性と、熱衝撃に対する耐性を向上させることができる。
【0069】
次に、本発明の実施例に係る波長変換構造体20の製造方法について説明する。図6は、波長変換構造体20の製造工程毎の断面図である。
【0070】
はじめに、導光部22を構成するガラス材21を用意する。ガラス材21は、直径φ:0.2〜1.0mm、長さl:1.0〜5.0mmの円柱形状を有する。前照灯の場合、直径φ:0.3〜2.0mm、長さl:0.3〜6.0mmの円柱形状が望ましい。これにより、前照灯として求められる高輝度の発光部(ハロゲン電球のフィラメント、HID電球のアークチューブ等)よりもさらに小型で高輝度の発光部を構成することが可能となる。
【0071】
また、直径φと長さlとの相関比率は、すれ違いビーム用の場合、φ:l=1:2〜6、走行ビーム用の場合、φ:l=1:2〜4が望ましい。また、すれ違いビーム用の場合、直径φを細くするのが望ましく、走行ビーム用の場合、直径φを太くするのが望ましい。
【0072】
ガラス材21は、円柱形状に限らず角柱形状であってもよい。また、導光部22は、ガラス材以外の他の材料、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル、ポリカーボネイト等の光透過性樹脂により構成されていてもよい。また導光部22は内部が空洞である筒状構造を有するものであってもよい(図6(a)参照)。
【0073】
次に、ガラス材21のレーザ入射端面23を除く表面に粗し加工を施す。具体的には、ガラス材21のレーザ入射端面23を覆うマスクを形成しておき、金属粒子やセラミック粒子からなる投射体をガラス材21に衝突させガラス材21の表面にランダムな形状の凹凸29を形成する。かかる凹凸面においてレーザ光を効果的に拡散・散乱させるため、凹凸29深さはレーザ光の波長と概ね一致していることが好ましい。青色レーザを使用する場合、凹凸29深さは500nm程度、アスペクト比は0.5以上であることが好ましい。尚、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて、規則的な形状および配列を有する凹凸29を形成してもよい(図6(b)参照)。
【0074】
次に、レーザ入射口25を形成する部分および蛍光体含有樹脂24を形成する部分(出光領域a)をマスクで覆った後、ガラス材21の表面にAgまたはAl等の金属膜を蒸着する。これにより、ガラス材21の表面に光反射膜26およびレーザ入射口25が形成される。光反射膜26は、ガラス材21の表面の散乱面(凹凸29)に沿って形成され、これにより光拡散構造が形成される。マスクで保護されたレーザ入射口形成部および蛍光体含有樹脂形成部には光反射膜26は形成されず、ガラス材21が露出している。尚、ガラス材21の表面にBa系酸化物を選択塗布することにより光反射膜26を形成してもよい(図6(C)参照)。
【0075】
次に、シリコーン樹脂にYAG:Ce蛍光体を分散した蛍光体含有樹脂24を、ガラス材21の表面(外周面27)のうち光反射膜26が形成されていない出光領域aに塗布する。蛍光体含有樹脂24は、導光部22の外周面27の湾曲形状に沿って形成される。その後、熱処理を行って、蛍光体含有樹脂24を硬化させる。蛍光体含有樹脂24は、ガラス材21表面の凹凸上に形成されるので、ガラス材21と蛍光体含有樹脂24との密着性が確保される(図6(d)参照)。
【0076】
以上の各工程を経ることにより、波長変換構造体20が完成する。波長変換構造体20は、レーザダイオード10とともにヒートシンク台30に実装される(図1参照)。
【0077】
本実施例によれば、図1に示すように、波長変換構造体20とレーザダイオード10とをヒートシンク台30上に隣接して配置することが可能であるため、従来のレーザー光源装置と比べてコンパクトなレーザー光源装置1(例えば、ヒートシンク台30の横:20mm×縦:30〜40mm)を構成することが可能となる。
【0078】
また、本実施例によれば、波長変換構造体20(蛍光体含有樹脂24)とレーザダイオード10とをヒートシンク台30上に配置したユニットとして構成することが可能であるため、波長変換構造体20(蛍光体含有樹脂24)とレーザダイオード10とが位置ズレすることなく高精度にアライメントされたレーザー光源装置1を構成することが可能となる。
【0079】
また、本実施例によれば、レーザダイオード10が出射したレーザー光が散乱面(凹凸29)の作用により散乱した散乱光として蛍光体含有樹脂24に入射する構成であるため、ハロゲン電球等と同様の配光分布のインコヒーレントな光を放射することが可能なレーザー光源装置1を構成することが可能となる。
【0080】
また、本実施例によれば、散乱面(凹凸29)の作用により、均一な発光輝度分布と均一な発光色の確保が可能なレーザー光源装置1を構成することが可能となる。なお、凹凸29のサイズ、密度、凹凸29を構成する各面の傾斜角度等を調整することで(例えば、部分ごとに凹凸29のサイズ、密度、凹凸29を構成する各面の傾斜角度等を変えることで)、輝度むらをさらに防止又は低減することが可能なレーザー光源装置1を構成することが可能となる。以上により、配光パターンを形成するための光学設計を容易に行うことが可能となる。
【0081】
また、本実施例によれば、導光部22が円柱形状であるため(直径d:0.3〜2.0mm、長さL:0.3〜6.0mm)、その直径φ、長さlを調整することで、前照灯として求められる高輝度の発光部(ハロゲン電球のフィラメント、HID電球のアークチューブ等)よりもさらに小型で高輝度の発光部を構成することが可能となる。これにより、従来のレーザー光源装置と比べてさらにコンパクトなレーザー光源装置1を構成することが可能となる。また、蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1(出光領域a)を調整することで、発光部の形状を自由に選択することが可能となる。
【0082】
また、本実施例によれば、例えば、蛍光体含有樹脂24をθ1=180°の出光領域aに配置(塗布)することで(図3(b)参照)、LEDと同様、半球方向に光を放射することが可能で、なおかつ、LEDと比べて高輝度なレーザー光源装置1を構成することが可能となる。これにより、LEDを用いた場合よりも明るい配光を実現できる車両用灯具を構成することが可能となる。
【0083】
また、本実施例によれば、例えば、蛍光体含有樹脂24がθ1=360°の出光領域aに配置(塗布)することで(すなわち、蛍光体含有樹脂24を、導光部22の外周面27の全周に塗布することで。図8(a)、図8(b)参照)、ハロゲン電球やHID電球と同様、全周方向に光を放射することが可能で、なおかつ、ハロゲン電球やHID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置1を構成することが可能となる。これにより、ハロゲン電球やHID電球を用いた場合よりも明るい配光を実現できる車両用灯具を構成することが可能となる。
【0084】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施例に係る光源装置によれば、レーザダイオード10より出射されるレーザ光は、導光部22内に導入され、必ず蛍光体含有樹脂24内を通過して外部に放射されることとなる。すなわち、蛍光体含有樹脂24の表面で反射されたレーザ光がそのまま外部に放射されることはない。蛍光体含有樹脂24内を通過するレーザ光は、蛍光体粒子による回折を受けて新たな波面を生じさせる。すなわち、蛍光体粒子の各々を新たな光源とみなすことができる。蛍光体粒子による回折を受けた光はインコヒーレント光となり、いかなる光学系をもってしてもレーザダイオード10から出射されたレーザ光のスポット径に復元することは不可能となる。
【0085】
また、導光部22の表面には、散乱面(凹凸29)と光反射膜26とからなる光拡散構造が形成されるので、導光部22内に導入されたレーザ光が導光部22内において繰り返し反射するのを防止することができ、高い発光効率を得ることができる。また、かかる光拡散構造により、レーザ光はランダムな方向に拡散・散乱するので、導光部22内に導入されたレーザ光を蛍光体含有樹脂24の全面から取り出すことが可能となり、発光部面積を増大させるとともに輝度むらの発生を防止することが可能となる。
【0086】
また、蛍光体含有樹脂24は導光部22の凹凸面上に形成されるので、蛍光体含有樹脂24の密着性が確保され、熱衝撃に対する耐性を向上させることができる。
【0087】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係るレーザー光源装置2について説明する。
【0088】
図7(a)は、本発明の実施例2に係る波長変換構造体20aの構成を示す断面図である。本実施例のレーザー光源装置2(波長変換構造体20a)は、レーザダイオード10への戻り光を遮断するための偏光フィルタ40が導光部22のレーザ入射端面23に隣接して設けられている点以外、上記した実施例1に係る波長変換構造体20と同様である。
【0089】
偏光フィルタ40は、レーザダイオード10から出射しレーザ入射端面23から導光部22内部に導入されるレーザー光を透過させるためのフィルタであり、図7(a)に示すように、レーザダイオード10とレーザ入射端面23との間に配置されている。偏光フィルタ40は、特定の方向の振幅成分を持つ光のみを通過させる。偏光フィルタ40は、レーザダイオード10から出射され導光部22に向かう直線偏光のレーザ光を透通させるように設計されている。導光部22内に導入されたレーザ光は、導光部22の表面に形成された光拡散構造により拡散・散乱して振動方向が変化する。振動方向が変化したレーザ光は、偏光フィルタ40を透過することができないので、これによりレーザダイオード10への戻り光を抑制することができる。戻り光がレーザダイオード10に入射すると、レーザ発振が不安定になり、出力変動が起こり得るが、本実施例のように導光部22のレーザ入射端面23に偏光フィルタ40を取り付け、戻り光を遮断することによりレーザダイオード10の出力安定性を保つことが可能となる。
【0090】
以上説明したように、本実施例によれば、偏光フィルタ40の作用により、導光部22内部で拡散・散乱したレーザー光がレーザ入射端面23から出射してレーザダイオード10へ入射することに起因するレーザダイオード10の出力変動を防止することが可能となる。
【0091】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係るレーザー光源装置3について説明する。
【0092】
図7(b)は、戻り光の遮断機能と導光部22へ向かうレーザ光の透過率が更に改善された波長変換構造体20bの構成を示す断面図である。本実施形態のレーザー光源装置3(波長変換構造体20b)は、偏光フィルタ40に隣接して設けられた反射防止膜50を有する点以外、上記した実施例2に係る波長変換構造体20aと同様である。
【0093】
図7(b)に示すように、反射防止膜50は、レーザダイオード10と偏光フィルタ40との間に配置されている。反射防止膜50は、屈折率が互いに異なる2種類の層を交互に繰り返して積層することにより構成される。反射防止膜50は、レーザ光の波長に応じて各層の層厚を設定することにより、低屈折率層と高屈折率層との各界面で発生する反射光が互いに打ち消し合い且つ導光部22に向かう透過光が互いに強め合うように作用する。低屈折率層は例えばSiO2膜により構成され、高屈折率層は例えばTiO2膜により構成される。これらの膜は、いずれも真空蒸着法やスパッタ法により成膜することができる。尚、反射防止膜50を、偏光フィルタ40と組み合わせることなく、単独で使用することも可能である。この場合、反射防止膜50は、導光部22のレーザ入射端面23に隣接して設けられる。
【0094】
以上説明したように、本実施例によれば、反射防止膜50の作用により、導光部22(レーザー入射端面23)に向かう透過光を強めることが可能となる。
【0095】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4に係るレーザー光源装置4について説明する。
【0096】
図8(a)は、本発明の実施例4に係る波長変換構造体20cの構成を示す斜視図、図8(b)は、本発明の実施例4に係る光源装置4の構成を示す断面図である。
【0097】
本実施例4のレーザー光源装置4(波長変換構造体20c)は、図8(a)、図8(b)に示すように、蛍光体含有樹脂24がθ1=360°の出光領域aに配置(塗布)されている点(すなわち、蛍光体含有樹脂24が、導光部22の外周面27の全周に塗布されている点)、及び、リフレクタ60を備えている点以外、上記実施例1〜3の波長変換構造体20、20a、20bと同様である。
【0098】
このように、本実施例に係る波長変換構造体20cは、円柱形状の導光部22の外周面27の周方向に沿った全方位に白色光を放出し得る構造を有する。
【0099】
図8(b)に示すように、レーザー光源装置4は、ヒートシンク台30、ヒートシンク台30の表面に配置されたサブマウント12上に固定されたレーザダイオード10、ヒートシンク台30上に固定された固定リング31、固定リング31に一端面23側が挿入されて固定され、レーザ入射口25とレーザダイオード10とを隣接させた状態で片持ち梁状に支持された波長変換構造体20c、ヒートシンク台30上面のうち、波長変換構造体20cが対向する領域に形成された凹部36、凹部36に形成された反射膜37等を備えている。反射膜37は、外周面27との間に間隔をおいて配置されている。凹部36は、波長変換構造体20cの外形に沿って凹んでいる。
【0100】
本実施例によれば、反射膜37の作用により、レーザー光源装置4が放射する光束をほぼ倍増させることが可能となる(図9参照)。
【0101】
また、本実施例によれば、実施例1と同様の効果を奏することが可能となる。
【0102】
尚、上記各実施例においては、蛍光体含有樹脂の形成範囲を限定的に記載したが、かかる場合に限らない。蛍光体含有樹脂の形成範囲すなわち発光部の範囲は光源装置の配光設計に応じて適宜変更することが可能である。
【0103】
次に、上記実施例1に記載のレーザー光源装置1を用いて構成したプロジェクタタイプの車両用灯具70について説明する。
【0104】
図10に示すように、車両用灯具70は、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°)、レーザー光源装置1から放射される光を用いてすれ違いビーム用配光パターンを形成するように構成された光学系71等を備えている。
【0105】
図11(a)、図11(b)に示すように、車両用灯具70は、レーザー光源装置1が着脱自在に装着される凹部72(スライドイン構造)を含むヒートシンク基板73を備えている。これにより、波長変換構造体20等の発熱をヒートシンク台30から熱伝導により灯具筐体61側へ伝熱することが可能となる。また、レーザー光源装置1を、光学系71に対して正確に位置決めして取り付けることが可能となる。さらに、レーザー光源装置1に不具合が発生した場合であっても当該レーザー光源装置を容易に交換することが可能となる。
【0106】
図10に示すように、光学系71は、レーザー光源装置1から放射された光が入射するようにレーザー光源装置1の前方に配置されるとともに、レーザー光源装置1から入射した光を、すれ違いビーム用配光パターンを形成する収束光として反射する反射面74、反射面74で反射された光が透過するように反射面74の前方に配置された投影レンズ75、反射面74で反射された光の一部を遮光してすれ違いビーム用配光パターンのカットオフを形成するように、反射面74と投影レンズ75との間に配置されたシェード76等を備えている。反射面74は、例えば、第1焦点F1が蛍光体含有樹脂24近傍に設定され、第2焦点F2がシェード76の上端縁近傍に設定された回転楕円系の反射面である。
【0107】
上記構成の車両用灯具70によれば、レーザー光源装置1から放射された光は、図10に示すように、反射面74で反射され、シェード76の上端縁近傍で収束した後、投影レンズ75を透過して前方に照射される。これにより、投影レンズ75に正対する仮想鉛直スクリーン上(25m前方に配置されている)に、シェード76の上端縁により規定されるカットオフを含むすれ違いビーム用配光パターンが形成される。
【0108】
また、上記構成の車両用灯具70によれば、波長変換構造体20(レーザー入射端面23)とレーザダイオード10とをヒートシンク台30上に隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置1を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いプロジェクタタイプの車両用灯具70を構成することが可能となる。
【0109】
また、上記構成の車両用灯具70によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置1を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光(すれ違いビーム用配光パターン)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0110】
また、上記構成の車両用灯具70によれば、散乱面(凹凸29)の作用により、均一な発光輝度分布と均一な発光色の確保が可能なレーザー光源装置1を用いているため、均一な発光色で色むらが無い配光(すれ違いビーム用配光パターン)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0111】
なお、シェード76を省略するとともに、投影レンズ75を透過して前方に照射される光が走行ビーム用配光パターンを形成するように反射面74を構成してもよい。これによっても上記と同様の効果を奏することが可能となる。
【0112】
以上、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°)を用いて車両用灯具70を構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=360°)を用いて車両用灯具70を構成してもよい。また、レーザー光源装置1に代えて、レーザー光源装置2〜4を用いて車両用灯具70を構成してもよい。なお、蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1(出光領域a)は適宜調整することが可能である。
【0113】
次に、上記実施例4に記載のレーザー光源装置4を用いて構成したプロジェクタタイプの車両用灯具80の例について説明する。
【0114】
図12に示すように、車両用灯具80は、レーザー光源装置4(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=360°)、レーザー光源装置4から放射される光を用いてすれ違いビーム用配光パターンを形成するように構成された光学系81等を備えている。
【0115】
車両用灯具80は、車両用灯具70と同様、レーザー光源装置4が着脱自在に装着される凹部72(スライドイン構造)を含むヒートシンク基板73を備えている(図11(a)、図11(b)参照)。これにより、波長変換構造体20c等の発熱をヒートシンク台30から熱伝導により灯具筐体61側へ伝熱することが可能となる。また、レーザー光源装置4を、光学系81に対して正確に位置決めして取り付けることが可能となる。さらに、レーザー光源装置4に不具合が発生した場合であっても当該レーザー光源装置4を容易に交換することが可能となる。なお、ヒートシンク基板73に装着されたレーザー光源装置4の光軸AX4(図9参照)と灯具光軸AX(図12参照)とは一致する。
【0116】
図12に示すように、光学系81は、レーザー光源装置4から放射された光が入射するようにレーザー光源装置4を覆うように配置されるとともに、レーザー光源装置4から入射した光を、すれ違いビーム用配光パターンを形成する収束光として反射する反射面82、反射面82で反射された光が透過するように反射面82の前方に配置された投影レンズ83、反射面82で反射された光の一部を遮光してすれ違いビーム用配光パターンのカットオフを形成するように、反射面82と投影レンズ83との間に配置されたシェード84等を備えている。反射面82は、例えば、第1焦点F1が蛍光体含有樹脂24近傍に設定され、第2焦点F2がシェード84の上端縁近傍に設定された回転楕円系の反射面である。
【0117】
上記構成の車両用灯具80によれば、レーザー光源装置4から放射された光は、図12に示すように、反射面82で反射され、シェード84の上端縁近傍で収束した後、投影レンズ83を透過して前方に照射される。これにより、投影レンズ83に正対する仮想鉛直スクリーン上に、シェード84の上端縁により規定されるカットオフを含むすれ違いビーム用配光パターンが形成される。
【0118】
また、上記構成の車両用灯具80によれば、波長変換構造体20c(レーザー入射端面23)とレーザダイオード10とをヒートシンク台30上に隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置4を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いプロジェクタタイプの車両用灯具80を構成することが可能となる。
【0119】
また、上記構成の車両用灯具80によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置4を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光(すれ違いビーム用配光パターン)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0120】
また、上記構成の車両用灯具80によれば、散乱面(凹凸29)の作用により、均一な発光輝度分布と均一な発光色の確保が可能なレーザー光源装置4を用いているため、均一な発光色で色むらが無い配光(すれ違いビーム用配光パターン)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0121】
なお、シェード84を省略するとともに、投影レンズ83を透過して前方に照射される光が走行ビーム用配光パターンを形成するように反射面82を構成してもよい。これにより、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい走行ビーム用配光パターンを実現することが可能となる。
【0122】
以上、レーザー光源装置4(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=360°)を用いて車両用灯具80を構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、レーザー光源装置4(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°)を用いて車両用灯具80を構成してもよい。また、レーザー光源装置4に代えて、レーザー光源装置1〜3を用いて車両用灯具80を構成してもよい。なお、蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1(出光領域a)は適宜調整することが可能である。
【0123】
次に、上記実施例1に記載のレーザー光源装置1を用いて構成したリフレクタタイプの車両用灯具90について説明する。
【0124】
図13に示すように、車両用灯具90は、灯具光軸AXの上方に配置されたレーザー光源装置1、下方に配置されたレーザー光源装置1、上方のレーザー光源装置1から放射される光を用いてすれ違いビーム用配光パターンを形成するように構成された上方の反射面91、下方のレーザー光源装置1から放射される光を用いて走行ビーム用配光パターンを形成するように構成された下方の反射面92等を備えている。
【0125】
上方のレーザー光源装置1は蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=195°(図14参照)、下方のレーザー光源装置1は、例えば、蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°(図3(b)参照)である。
【0126】
車両用灯具90は、車両用灯具70と同様、各レーザー光源装置1が着脱自在に装着される凹部72(スライドイン構造)を含むヒートシンク基板73を備えている(図11(a)、図11(b)参照)。これにより、波長変換構造体20等の発熱をヒートシンク台30から熱伝導により灯具筐体61側へ伝熱することが可能となる。また、各レーザー光源装置1を、反射面91、92に対して正確に位置決めして取り付けることが可能となる。さらに、各レーザー光源装置1に不具合が発生した場合であっても当該レーザー光源装置1を容易に交換することが可能となる。なお、ヒートシンク基板73に装着された各レーザー光源装置1の光軸と灯具光軸AXとは一致する。
【0127】
図13に示すように、上方の反射面91は、上方のレーザー光源装置1から放射された光が入射するように上方のレーザー光源装置1の前方に配置されている。反射面91は、例えば、焦点F91が上方のレーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24)の後端部近傍に設定された回転放物面系の反射面である。
【0128】
同様に、下方の反射面92は、下方のレーザー光源装置1から放射された光が入射するように下方のレーザー光源装置1の前方に配置されている。反射面92は、例えば、焦点F92が下方のレーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24)の前端部近傍に設定された回転放物面系の反射面である。
【0129】
上記構成の車両用灯具90によれば、上方のレーザー光源装置1から放射された光は、図15(a)に示すように、反射面91及び反射面92のうち蛍光体含有樹脂24に対応する領域B1(図15(a)中ハッチングで示す領域)に入射して反射され、前方に照射される(領域B1の像が上下左右に反転した像として前方に投影される)。これにより、図15(b)に示すように、反射面91、92に正対する仮想鉛直スクリーン上に、水平カットオフCL及び斜め15°カットオフCL15を含むすれ違いビーム用配光パターンPB1が形成される。
【0130】
同様に、下方のレーザー光源装置1から放射された光は、反射面92で反射され、前方に照射される。これにより、仮想鉛直スクリーン上に、走行ビーム用配光パターンが形成される。
【0131】
また、上記構成の車両用灯具90によれば、波長変換構造体20(レーザー入射端面23)とレーザダイオード10とをヒートシンク台30上に隣接して配置したコンパクトなレーザー光源装置1を用いているため、従来と比べて光軸方向寸法が短いリフレクタタイプの車両用灯具90を構成することが可能となる。
【0132】
また、上記構成の車両用灯具90によれば、LED、ハロゲン電球、HID電球と比べて高輝度なレーザー光源装置1を用いているため、LED、ハロゲン電球、HID電球を用いた場合よりも明るい配光(すれ違いビーム用配光パターン等)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0133】
また、上記構成の車両用灯具90によれば、散乱面(凹凸29)の作用により、均一な発光輝度分布と均一な発光色の確保が可能なレーザー光源装置1を用いているため、均一な発光色で色むらが無い配光(すれ違いビーム用配光パターン等)を実現することが可能な車両用灯具を構成することが可能となる。
【0134】
以上、上方のレーザー光源装置1として、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=195°)を用いて車両用灯具90を構成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上方のレーザー光源装置1として、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°又は360°)を用いて車両用灯具90を構成してもよい。
【0135】
上方のレーザー光源装置1として、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=180°)を用いて車両用灯具90を構成した場合(図16(a)参照)、上方のレーザー光源装置1から放射された光は、図16(a)に示すように、反射面91及び反射面92のうち蛍光体含有樹脂24に対応する領域B2(図16(a)中ハッチングで示す領域)に入射して反射され、前方に照射される(領域B2の像が上下左右に反転した像として前方に投影される)。これにより、図16(b)に示すように、反射面91、92に正対する仮想鉛直スクリーン上に、水平カットオフCLを含む配光パターンPB2を形成することが可能となる。
【0136】
また、上方のレーザー光源装置1として、レーザー光源装置1(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=360°)を用いて車両用灯具90を構成した場合(図17(a)参照)上方のレーザー光源装置1から放射された光は、図17(a)に示すように、反射面91及び反射面92のうち蛍光体含有樹脂24に対応する領域B3(図15(a)中ハッチングで示す領域)に入射して反射され、前方に照射される(領域B3の像が上下左右に反転した像として前方に投影される)。これにより、図17(b)に示すように、反射面91、92に正対する仮想鉛直スクリーン上に、略円形の配光パターンPB3を形成することが可能となる。
【0137】
また、上方のレーザー光源装置1に代えてレーザー光源装置4(蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1=360°)を用いて車両用灯具90を構成してもよい。このレーザー光源装置4のヒートシンク台30は、図18に示すように、導光部22の円柱軸AXcを含む第3平面P3(水平面)によりカットされた水平面38、導光部22の円柱軸AXcを含みかつ第3平面P3に対してθ2=195°傾斜した第4平面P4によりカットされた斜面39を含んでいる。
【0138】
これにより、レーザー光源装置4から放射された光は、図19(a)に示すように、反射面91及び反射面92のうち蛍光体含有樹脂24に対応する領域B4(図19(a)中ハッチングで示す領域)に入射して反射され、前方に照射される(領域B4の像が上下左右に反転した像として前方に投影される)。これにより、図19(b)に示すように、反射面91、92に正対する仮想鉛直スクリーン上に、水平カットオフCL及び斜め15°カットオフCL15を含むすれ違いビーム用配光パターンPB4が形成される。
【0139】
なお、蛍光体含有樹脂24の塗布範囲θ1(出光領域a)は適宜調整することが可能である。
【0140】
なお、下方のレーザー光源装置1及び反射面92、又は、上方のレーザー光源装置4及び反射面91は省略することが可能である。
【0141】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0142】
10…レーザダイオード、12…サブマウント、20、20a、20b、20c…波長変換構造体、21…ガラス材、22…導光部、23…一端面(レーザー入射端面)、24…蛍光体含有樹脂、25…入光面(レーザー入射口)、26…光反射膜、27…外周面、28…他端面、29…凹凸、30…ヒートシンク台、31…固定リング、32a…電極、32b…電極、33…固定示治具、34…ボンディングワイヤ、35…リードワイヤ、36…凹部、37…反射膜、38…水平面、39…斜面、40…偏光フィルタ、50…反射防止膜、60…リフレクタ、70…車両用灯具、71…光学系、72…凹部、73…ヒートシンク基板、74…反射面、75…投影レンズ、76…シェード、80…車両用灯具、81…光学系、82…反射面、83…投影レンズ、84…シェード、90…車両用灯具、91…反射面、92…反射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図22