(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0011】
[モータの全体構成]
図1に、本発明を適用したモータ1を示す。このモータ1は、車載用のインナーロータ型ブラシレスモータであり、例えば、電動パワーステアリングを駆動するために使用される。同図に示すように、このモータ1には、ケーシング2やバスバーユニット100、ステータ200、ロータ300、シャフト6などが備えられている。
【0012】
ケーシング2は、有底円筒形状をした容器体2aと、略円盤状の蓋体2bとを有している。容器体2aの開口の周囲に張り出すフランジに蓋体2bが締結固定され、その内部にステータ200等が収容されている。蓋体2bの中央部には貫通孔3が形成されており、この貫通孔3に対向して容器体2aの底面に軸受部4が形成されている。軸受部4と貫通孔3の内側には、それぞれベアリング5,5が設けられ、これらベアリング5,5を介してシャフト6がケーシング2に回転自在に支持されている。シャフト6の一方の端部は、貫通孔3を通じて蓋体2bの外側に突出しており、その端部が電動パワーステアリングに減速機を介して接続される(図示せず)。
【0013】
シャフト6の中間部には、ロータ300が同軸に固定されている。容器体2aの内周面には、ロータ300の周りを囲むようにステータ200が固定されていて、ステータ200の内周面とロータ300の外周面とが僅かな隙間を隔てて対向している。バスバーユニット100は、ステータ200の軸方向端部に取り付けられている。なお、同図中、符号7は回転角度を検出する回転角センサである。
【0014】
このモータ1には、生産性の向上や生産コスト等の削減を図るべく様々な工夫が施されている。以下、各構成部品の説明と併せてその内容について詳しく説明する。
【0015】
[バスバーユニットの構成]
バスバーユニット100の構成について詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように、バスバーユニット100は、ステータ200の軸方向端部(
図2における上側端部)に配設されると共に、後述するステータ200の複数のコイル線端末204aに電気的に接続されており、電流を後述するステータ200のコイル204へ供給するものである。
【0016】
図4〜
図9に示すように、バスバーユニット100は、ホルダ101u,101v,101wと、バスバー120と、端子部材130と、を備えている。本実施形態のバスバー120は、ステータ200におけるコイル204のu相、v相、w相の各相に対応して、3つ備えられている。ホルダは、各バスバー120を個別に収納保持する、u相ホルダ101uとv相ホルダ101vとw相ホルダ101wの3つ備えられている。そして、各バスバー120には、端子部材130が複数接続されている。
【0017】
図7及び
図8に示すように、各バスバー120は、導電性の線材が環状に形成されてなる本体部1201からなるものである。具体的に、本実施形態のバスバー120(本体部1201)は、絶縁被膜を有しない裸電線(例えば、裸銅線)で形成されている。このバスバー120本体部1201は、周方向における所定の複数箇所が端子接続部121となっており、その端子接続部121に端子部材130が接続される。バスバー120本体部1201は、端子接続部121の断面形状は、端子部材130との接続時に矩形に変形され、その端子接続部121以外の部分の断面形状は略円形に形成されている。また、本実施形態では、バスバー120(本体部1201)の断面積はステータ200におけるコイル204の断面積よりも大きく形成されている。
【0018】
なお、本実施形態において、バスバー120は、導電性の線材で形成されていれば、その断面形状は問わない。また、バスバー120は、環状ではなくC型状に形成するようにしてもよい。また、バスバー120は、導電性を有する線材の外周に絶縁被膜を有するものであってもよい。その場合、バスバー120の端子接続部121は絶縁被膜を除去する必要がある。この絶縁被膜を除去する手段としては、端子部材130との電気的導通を図ることができるのであれば、機械的に絶縁被膜を剥がしてもよいし、抵抗溶接を行ってもよい。
【0019】
各端子部材130は、
図9に示すように、1つの板材から形成される。端子部材130は、バスバー120(本体部1201)に接続されるバスバー接続部131と、ステータ200のコイル線端末204aに接続されるコイル接続部135と、バスバー接続部131とコイル接続部135との間に連続形成される連結部134と、を有している。
【0020】
バスバー接続部131は、2つのC型筒部132と、その両者の端面同士を連結する平板部133とからなっている。2つのC型筒部132は、板材がC型状に折り曲げられてなる筒体であり、互いに同じ軸心上に並設されている。このC型筒部132にバスバー120が挿通する。コイル接続部135は、板材が略C型状に折り曲げられてなる筒体であり、この筒体にコイル線端末204aが挿通する。コイル接続部135の軸心とC型筒部132の軸心とは、互いに直交している。連結部134は、コイル接続部135の端面からバスバー接続部131の平板部133まで延びる板材である。そして、連結部134は、途中で板厚方向に折り曲げられている。具体的に、連結部134は、コイル接続部135の端面からその軸心方向に延びた後、その直交方向に折り曲げられて平板部まで延びている。このように形成された端子部材130の全体は、コイル接続部135の軸心方向の平面視形状が略T字型となり、バスバー接続部131の軸心方向の平面視形状が略L字型となる。
【0021】
また、端子部材130の展開図を
図10に示す。端子部材130は、一枚の板材に対してこの展開図のとおり切断し、その切断したものを曲げ加工することで形成される。このように、本実施形態の端子部材130は、材料の歩留まりが高い形状となっている。
【0022】
また、
図11に示すように、端子部材130は、環状に形成される前のバスバー120に対して挿通される。つまり、裸電線が環状に形成される前の直線状態のときに、その裸電線に端子部材130のC型筒部132が挿通される。そして、バスバー120の端子接続部121においてC型筒部132が圧着又は溶着される。その後、直線状のバスバー120(裸電線)が環状に形成される。これにより、複数の端子部材130がバスバー120に電気的に接続される(
図7を参照)。なお、本実施形態では、複数の端子部材130が挿通された直線状のバスバー120を環状に形成した後、バスバー120の端子接続部121においてC型筒部132を圧着又は溶着するようにしてもよい。
【0023】
3つのホルダ101u,101v,101wは、それぞれ絶縁材料で一体成型された環状体であり、互いに同一の形状をなしている。
図7に示すように、各ホルダ101u,101v,101wは、環状体であるホルダ本体105を備えている。ホルダ本体105の環状面105aには、その周方向に環状の収容溝106が形成されている。この収容溝106に、複数の端子部材130が接続された環状のバスバー120(本体部1201)が収容保持される。収容溝106は、周方向における所定の複数箇所(本実施形態では、6箇所)が端子収容部107となっている。この端子収容部107に、端子部材130が収容保持される。そして、収容溝106において、端子収容部107には端子部材130の抜け止め109が形成され、端子収容部107以外の部分にはバスバー120の抜け止め110が複数形成されている。これら抜け止め109,110は爪状に形成されている。なお、端子収容部107における外側壁には、端子部材130の連結部134がホルダ本体105の径方向外方へ挿通するための切欠き108が形成されている。
【0024】
また、各ホルダ101u,101v,101wにおいて、ホルダ本体105の内周壁には周方向に等間隔に複数のフック111が形成されている。具体的に、各フック111は、ホルダ本体105の内周壁の一部が軸方向に延びて収容溝106の環状面105aよりも突出するように形成されている。また、ホルダ本体105の内周壁には、各フック111の間であって周方向に等間隔に複数の縦溝112が形成されている。つまり、各縦溝112は、ホルダ本体105の内周壁を軸方向に延びている。各縦溝112には、溝底面から径方向内方へ突出する突起113が形成されている。
【0025】
図12及び
図13に示すように、本実施形態の各バスバー120において、5つの端子部材130のうち4つの端子部材130は互いに90°間隔で接続されており、残りの端子部材130が他の何れかの端子部材130と近接して接続されている。また、本実施形態では、u相ホルダ101u及びv相ホルダ101vと、w相ホルダ101wとでは、バスバー120の収容状態が若干異なる。具体的に、u相ホルダ101u及びv相ホルダ101vでは、収容溝106において互いに近接して配設される3つの端子収容部107のうち最右のものには端子部材130が収容されない(
図12参照)。w相ホルダ101wでは、収容溝106において互いに近接して配設される3つの端子収容部107のうち最左のものには端子部材130が収容されない(
図13参照)。また、バスバー120が収容された各ホルダ101u,101v,101wでは、各端子部材130のコイル接続部135が径方向外側へ突出する状態となる。そして、コイル接続部135の軸心とホルダ101u,101v,101wの軸心とが互いに平行な状態となる。
【0026】
図2や
図4〜
図6に示すように、バスバーユニット100は、各々バスバー120が収容保持された状態の各ホルダ101u,101v,101wが、互いにステータ200の軸方向に積層されている。なお、本実施形態では、軸方向上側から、u相ホルダ101u、v相ホルダ101v及びw相ホルダ101wの順に積層されているが、積層順はこれに限られない。また、
図5や
図6に示すように、各ホルダ101u,101v,101wは、何れも収容溝106の環状面105aが軸方向下向きになるように積層されている。つまり、本実施形態では、各ホルダ101u,101v,101wは互いの収容溝106の開口面同士が対向する状態を阻止するように積層されている。
【0027】
また、
図4や
図5に示すように、互いに積層するホルダ101u,101v,101w同士は、上述したフック111と縦溝112の突起113とが係合することで固定される。つまり、一方のホルダ101u,101v,101wのフック111を、他方のホルダ101u,101v,101wの突起113に引っ掛けることで、積層する3つのホルダ101u,101v,101wが相互に固定される。
【0028】
また、
図14に示すように、各ホルダ101u,101v,101wは、軸方向から視て互いの端子部材130(130u、130v、130w)が重ならないように周方向に角度を変えて積層されている。なお、同図において、符号130u、130v、130wは、それぞれu相ホルダ101u、v相ホルダ101v、w相ホルダ101wに設けられている端子部材を示し、括弧付きの符号はそれぞれステータ200のコイル線端末204aに接続されない端子部材を示す。具体的に、本実施形態のモータ1は12スロットの構成を採っている。そして、本実施形態では、コイル線端末204aに接続されない3個の端子部材130を除く12個の端子部材130(130u、130v、130w)が周方向に30°間隔で配列されるように、各ホルダ101u、101v、101wが積層されている。なお、上述したモータ1のスロット数は一例であってこれに限定されるものではない。また、図示しないが、ステータ200のコイル線端末204aが接続されない3個の端子部材130には、外部電源からの導電線が例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)などの制御装置を介して接続される。これにより、外部電源の電源電流が、各バスバー120、ステータ200のコイル204へと供給される。なお、ECUはモータ1の回転力を制御するものである。
【0029】
図6や
図15に示すように、各ホルダ101u,101v,101wにおいて、収容溝106の環状面105aには、周方向に所定間隔で複数の凸部114が形成されている(
図15(a)参照)。また、各ホルダ101u,101v,101wにおいて、収容溝106の環状面105aとは反対側の環状面105aには、各凸部114に対応する複数の凹部115が周方向に所定間隔で形成されている(
図15(b)参照)。この凸部114及び凹部115は、各ホルダ101u、101v、101wを積層する際の位置決め手段となる。つまり、互いに積層するホルダ101u,101v,101wの一方の凸部114と他方の凹部115とを嵌合させることで、周方向の位置決めをすることができる。さらに、各凸部114と各凹部115とを嵌合させて積層することで、各ホルダ101u、101v、101wの周方向移動を規制することができる。
【0030】
また、
図4や
図6に示すように、上段に積層されるu相ホルダ101uの端子部材130は、そのu相ホルダ101uの外側で連結部134が軸方向下側へ向かって折れ曲がる状態となるように配設されている。一方、中段のv相ホルダ101v及び下段のw相ホルダ101wの端子部材130は、各v相ホルダ101v及びw相ホルダ101wの外側で連結部134が軸方向上側へ向かって折れ曲がる状態となるように配設されている。つまり、本実施形態のバスバーユニット100は、上段のu相ホルダ101uの端子部材130と下段のw相ホルダ101wの端子部材130とにおいて、互いの連結部134が対向して折れ曲がる状態となるように配設されている。これにより、上段のu相ホルダ101uにおいてその端子部材130が上端面から突出することはなく、下段のw相ホルダ101wにおいてその端子部材130が下端面から突出することはない。そのため、バスバーユニット100の高さを低く抑えることができる。
【0031】
また、
図16及び
図17に示すように、バスバーユニット100は、下段のw相ホルダ101wの各フック111を、ステータ200側に形成された上述の突起113と同様の突起205gに引っ掛けることで、ステータ200の軸方向端部に固定される。また、バスバーユニット100は、下段のw相ホルダ101wの各凸部114を、ステータ200の軸方向端部に形成された凹部205hに嵌合させることで位置決めされる。さらに、これら各凸部114と各凹部205hとを嵌合させることで、バスバーユニット100の周方向移動を規制することができる。
【0032】
また、
図3や
図5、
図17、
図18にも示すように、バスバーユニット100は、軸心がステータ200の軸心と同一となる状態で、ステータ200の軸方向端部に取り付けられる。この状態において、各バスバー120は、ステータ200の軸心回りに環状に延びる状態で配設されることとなる。一方、ステータ200において、各コイル線端末204a(24本)は、その軸方向端部から軸方向に突出している。また、各コイル線端末204aは、ステータ200の軸心回りに15°間隔で配列されている。つまり、各コイル線端末204aは、ステータ200の軸心を中心として同一半径の円周上に配列されている。
【0033】
また、上述したコイル線端末204aは、バスバーユニット100の各端子部材130に接続される各相の相端末20aと、中性点用端末20bとに区分され、相端末20aと中性点用端末20bとが交互に配列されている。中性点用端末20bは、後述する中性点用端子部材250aによって中性点用バスバー250と接続されている。この中性点用バスバー250は、ステータ200の軸方向端部におけるバスバーユニット100の外周側にモールド成型された保持部によって保持されている。このように、中性点用バスバー250についてはステータ200の軸方向端部に固定するようにしたため、バスバーユニット100に中性点用のホルダを設けなくてもよい分、バスバーユニット100自体、引いてはモータ1全体の高さを低くすることができる。また、各バスバー120と中性点用バスバー250との絶縁性をより確保することができる。
【0034】
本実施形態において、バスバーユニット100の各端子部材130は、コイル接続部135の軸方向がステータ200の軸方向と同じである。つまり、コイル接続部135の軸方向とコイル線端末204aの突出方向とが同じとなる。このように、本実施形態では、1つの端子部材130において、周方向に延びる環状のバスバー120に接続するバスバー接続部131と、ステータ200の軸方向に延びるコイル線端末204aに接続するコイル接続部135とを備えるようにした。これにより、バスバーユニット100をステータ200の軸方向端部に向かってその軸方向に移動させるだけで、バスバーユニット100の各端子部材130のコイル接続部135を各コイル線端末204aに挿通させることができる。そのため、コイル線端末204aの向きを変えるという作業を行うことなく、バスバーユニット100の端子部材130、引いてはバスバーユニット100自体を簡易に取り付けることが可能となる。よって、バスバーユニット100の組み付け工程の短縮を図り、引いてはモータ1の生産性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、バスバー120と端子部材130とを別体で備え、バスバー120を線材で形成するようにしたので、従来の端子一体型の帯状導体に比べて、材料の歩留まりが向上する。よって、バスバーユニット100並びにモータ1における材料コスト引いては生産コストを低減することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、上述したように端子部材130についても材料歩留まりの高い形状としたため、材料コスト及び生産コストを一層低減することができる。
【0037】
また、本実施形態のバスバー120を絶縁被膜を有しない裸電線で形成するようにしたため、端子部材130との接合方法の選択自由度が高まる。例えば、圧着や溶着の別を問わなくてもよくなる。
【0038】
また、本実施形態のバスバーユニット100は、各バスバー120を個別に収容保持する環状の収容溝106を有する環状体からなる複数のホルダ101u,101v,101wをそなえるようにしたため、各バスバー120同士の絶縁性を確保することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、各ホルダ101u,101v,101wを互いに同一形状となしたので、生産性がさらに向上する。
【0040】
また、本実施形態では、各ホルダ101u、101v、101wにおいて、互いの収容溝106の環状面105a同士(即ち、収容溝106の開口面同士)が対向する状態を阻止するようにしたため、各バスバー120の絶縁性をより確保することができる。
【0041】
また、本実施形態では、バスバーユニット100の各端子部材130を周方向に等間隔に配置するようにしたため、コイル線端末204aの向きを変えるという作業をなくすことができる。
【0042】
なお、本実施形態の端子部材130は
図19に示す端子部材140であってもよい。つまり、この端子部材140は、1つの板材からなり、バスバー120に接続されるバスバー接続部141と、コイル線端末204aに接続されるコイル接続部145と、バスバー接続部141とコイル接続部145との間に連続形成される連結部144と、を有している。そして、バスバー接続部141は、1つのC型筒部142と、その端面に連続形成される平板部143とからなっている。その他の構成、作用及び効果は
図9に示した端子部材130と同様である。つまり、この端子部材140は、
図9の端子部材130においてC型筒部132を1つ削除するようにしたものである。また、この端子部材140の展開図を
図20に示す。端子部材140は、一枚の板材に対してこの展開図のとおり切断し、その切断したものを曲げ加工することで形成される。この端子部材140についても、同様に、材料の歩留まりが高い形状となっている。
【0043】
また、本実施形態では、各ホルダ101u、101v、101wを互いに同一形状としたが、各バスバー120を絶縁した状態で保持できるのであれば、各ホルダ101u,101v,101wは互いに異なる形状であってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、3つのホルダ101u,101v,101wで各バスバー120を個別に保持するようにしたが、1つのホルダで全てのバスバー120を保持するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、ホルダ101u,101v,101wを絶縁材料で形成したが、バスバー120が導電性の線材の外周に絶縁被膜を有するものである場合、ホルダ101u,101v,101wは絶縁材料で形成する必要はない。
【0046】
また、本実施形態では、各ホルダ101u,101v,101wはバスバー120全体を収容して保持する環状体としたが、バスバー120が導電性の線材の外周に絶縁被膜を有するものである場合、ホルダはバスバー120をその周方向において部分的に配設されて保持するものとしてもよい。
【0047】
また、端子部材130は、周方向に延びる環状のバスバー120に接続するバスバー接続部131とステータ200の軸方向に延びるコイル線端末204aに接続するコイル接続部135とを有する1つの部材で形成されていればよく、その形状は上述した形状に限定されない。
【0048】
また、本実施形態のバスバーユニット100は変形例として
図49〜
図53に示すように構成してもよい。本変形例のバスバーユニット100は、上述した実施形態のバスバーユニット100と比べて、バスバー120及びホルダ101u,101v,101wの構成が異なる。
【0049】
本変形例の各バスバー120は、1本の導電性の線材が屈曲されて形成されている。具体的に、各バスバー120は、導電性の線材が環状に形成されてなる本体部1201と、該本体部1201から径方向内方へ屈曲して延びた後に軸方向に屈曲して延びる外部接続部1202とからなるものである。外部接続部1202は、本体部1201に連続した一つながりの部材である。つまり、各バスバー120は、1本の導電性の線材が、環状に折り曲げられた後、その両端部が径方向内方へ屈曲されて、次いで軸方向に屈曲されてなる。本変形例のバスバー120(本体部1201及び外部接続部1202)も、上述した実施形態と同様、絶縁被膜を有しない裸電線(例えば、裸銅線)で形成されている。バスバー120の本体部1201には、上述した実施形態のバスバー120よりも1つ少ない4つの端子部材130が互いに90°間隔で接続されている。外部接続部1202は、外部電源に電気的に接続され、外部電源の電源電流を本体部1201に供給するものである。このように、本変形例のバスバー120は、ステータ200のコイル線端末204aと接続するための導電線(本体部1201)だけでなく、外部電源と電気的接続するための導電線(外部接続部1202)を一体に備えるようにしたものである。
【0050】
本変形例の各ホルダ101u,101v,101wは、上述した実施形態のホルダ101u,101v,101wにおいて引出し溝116及び引出し縦溝117が付加された構成となっている。各ホルダ101u,101v,101wにおいて、引出し溝116は環状の収容溝106から径方向内方へ延びてから軸方向に延びるように形成されている。つまり、引出し溝116は、各ホルダ101u、101v、101wの環状面105aにおいて収容溝106から径方向内方へ延びる径方向溝と、各ホルダ101u、101v、101wの内周面において径方向溝に連続し且つ軸方向に貫通する縦溝とで構成されている。なお、本変形例では、引出し溝116は各ホルダ101u、101v、101wにおいて1つ設けられている。各ホルダ101u、101v、101wでは、バスバー120の本体部1201は収容溝106に収容保持され、バスバー120の外部接続部1202は引出し溝116に収容保持される。つまり、外部接続部1202は、引出し溝116を通じて収容溝106から径方向内方へ引き出されてから軸方向に引き出される。また、引出し縦溝117は、各ホルダ101u、101v、101wの内周面において軸方向に貫通する溝であり、別のホルダ101u,101v,101wの引出し溝116に対応する箇所に形成されている。この引出し縦溝117は、3つのホルダ101u,101v,101wが積層された状態で、引出し溝116から軸方向に引き出された外部接続部1202を収容保持してそのまま軸方向に引き出すためのものである。なお、本変形例では、引出し縦溝117は各ホルダ101u、101v、101wにおいて2つ設けられている。
【0051】
本変形例において、3つのホルダ101u,101v,101wは、軸方向から視て互いの引出し溝116が重ならないように周方向にずれて積層されている。さらに、3つのホルダ101u,101v,101wは、それぞれ2つの引出し縦溝117が別のホルダ101u,101v,101wの引出し溝116に対応して位置するように積層されている。これにより、各バスバー120の外部接続部1202を交差させることなく軸方向に引き出すことができる。また、本変形例では、各バスバー120の外部接続部1202が軸方向上向きに引き出されるように、各ホルダ101u、101v、101wが積層されている。このように、本変形例のバスバーユニット100では、各バスバー120の本体部1201は各ホルダ101u、101v、101wの収容溝106に保持され、各バスバー120の外部接続部1202は収容溝106から径方向へ引き出されてから軸方向に引き出される。
【0052】
以上の変形例の構成によれば、バスバー120が外部電源と電気的接続するための導電線(外部接続部1202)をも一体に備えているため、上記実施形態のように各バスバー120において外部電源からの導電線を接続するための端子部材が不要となる。これにより、バスバーユニット100の外周側において周方向に配置される端子部材130同士の距離が長くなると共に、不要となった端子部材130の圧着作業が省略される。したがって、端子部材130とステータ200のコイル線端末204aとの圧着作業性が向上する。その結果、モータ1の生産コストを一層削減することができる。
【0053】
また、バスバー120の外部接続部1202を一旦径方向へ引き出してから軸方向へ引き出すようにしているため、外部接続部1202をそれぞれ軸方向に配列される各バスバー120の本体部1201に接触させることなく軸方向へ引き出すことができる。
【0054】
また、各ホルダ101u、101v、101wにおいてバスバー120の外部接続部1202を径方向内方へ引き出すようにしたため、バスバーユニット100の外周側に外部接続部1202が配線される状態を回避することができる。これにより、バスバーユニット100の外周側において外部接続部1202の配線領域を削減できるので端子部材130とコイル線端末204aとの圧着作業性をさらに向上させることができる。
【0055】
また、本変形例では、外部接続部1202を径方向内方へ引き出してから単に軸方向に引き出すのではなく、各ホルダ101u、101v、101wの内周面に形成した溝(引出し溝116の縦溝部分、引出し縦溝117)に収容保持させながら軸方向へ引き出すようにしている。そのため、外部接続部1202の配線スペースを削減することができる。
【0056】
なお、本変形例では、バスバー120の外部接続部1202をホルダ101u,101v,101wの内周面よりも内方へ引き出してから軸方向へ引き出すようにしてもよい。
【0057】
また、
図54〜
図56に示すように、外部接続部1202を収容溝106から径方向内方ではなく径方向外方へ引き出してから軸方向へ引き出すようにしてもよい。その場合、図示するように、引出し溝118の縦溝部分や引出し縦溝119をホルダ101u,101v,101wの外周面に形成してその溝を通じて外部接続部1202を収容保持しながら軸方向(軸方向上向き)に引き出すことも可能である。これにより、バスバーユニット100の外周側において外部接続部1202の配線領域が生じるのを回避することができる。そのため、端子部材130とコイル線端末204aとの圧着作業性が損なわれることは殆どない。
【0058】
また、例えば外部接続部1202を収容溝106から径方向外方へ引き出した後軸方向に引き出さずにそのまま径方向へ配線するようにしてもよい。つまり、モータ1の設置方向や外部電源の位置によって、外部接続部1202の引出方向を任意に変更してもよい。
【0059】
また、本変形例では、1本の導電性の線材の両方の端部を外部接続部1202として引き出すようにしたが、本発明はこれに限らず、一方の端部のみを外部接続部1202として引き出すようにしてもよい。つまり、一方の端部側で環状の本体部1201を形成し、他方の端部側を外部接続部1202として引きだしてもよい。この場合、バスバー120の材料コストを削減することが可能となる。
【0060】
また、バスバー120の本体部1201は環状ではなくC型状に形成してもよい。例えば、本体部1201には4つの端子部材130が90°間隔で接続することができればよいので、本体部1201は少なくとも270°の円弧状に形成されていればよい。
【0061】
[ステータの構成]
本実施形態のステータ200は、複数の分割ステータ201により、
図2に示すように、円筒状に形成されている。この例では、ステータ200を構成する分割ステータ201の数(分割数)は12個である。すなわち、それぞれの分割ステータ201の中心角は30度である。
図21は、分割ステータ201の斜視図である。また、
図22は、分割ステータ201の縦断面図である。
図22に示すように、分割ステータ201は、分割コア202、インシュレータ203、コイル204、及び樹脂層205を備えている。
【0062】
なお、以下の説明において、ステータ200や分割ステータ201の軸方向、あるいは縦方向とはシャフト6の軸心の方向をいい、横方向とはシャフト6の軸心に垂直な方向をいう。また、内周側とはシャフト6により近い側をいい、外周側とは、シャフト6からより遠い側をいう。
【0063】
〈分割コア202〉
図23は、分割コア202の斜視図である。分割コア202は、複数の電磁鋼板を積層して軸方向に延びるように形成されている。そして、
図23から分かるように、分割コア202の横断面は略T字状をしている。
【0064】
分割コア202は、より詳しくは、ティース部202a、コアバック部202b、及び内ヨーク部202cを備えている。コアバック部202bは、ステータ200を構成した際に該ステータ200の周方向に延びる部分である。コアバック部202bの2つの周方向側端面壁202eのなす角が分割コア202の中心角であり、この例では30度である。また、ティース部202aは、コアバック部202bからステータ200の径方向に向かって延びる部分である。また、内ヨーク部202cは、ティース部202aの内周側に連なってコアバック部202bよりも小さく周方向に延びる部分である。ティース部202aの両側における内ヨーク部202c及びコアバック部202bの間の空間が、それぞれ、コイル204を収容するスロット202dである。
【0065】
〈インシュレータ203(絶縁層)〉
インシュレータ203は、分割コア202とコイル204とを絶縁する絶縁層として、後述するように、コイル204とティース部202aの間に設けてある。すなわち、インシュレータ203は、本発明の絶縁層の一例である。そのため、インシュレータ203は、絶縁性の部材を用いて形成してある。この例では、絶縁性の部材として熱可塑性の樹脂を採用している。
【0066】
図24は、インシュレータ203の構造を示す斜視図である。このインシュレータ203は、具体的には、
図24に示すように、本体部203a、端面壁203b、及び端面壁203cを有している。本体部203aは、略U字状の形状をしていて、ティース部202aに嵌め込まれる。
図25は、分割コア202にインシュレータ203を取り付けた状態を示す斜視図である。この分割ステータ201では、2つのインシュレータ203が用いられ、一方のインシュレータ203は、本体部203aが分割コア202の軸方向の一方の端部側(出力側端部)から分割コア202のティース部202aを覆うように嵌めこまれている。また、もう一方のインシュレータ203は、分割コア202の軸方向のもう一方の端部から、分割コア202に嵌め込まれて、本体部203aがティース部202aを覆っている。
【0067】
また、端面壁203b,203cは、インシュレータ203を分割コア202に取り付けた状態で、分割コア202の軸方向側端面壁よりも突出している。この端面壁203cは、インシュレータ203を分割コア202に取り付けた状態で、分割コア202の内周側面202fよりも外周側に位置している。また、端面壁203cは、分割コア202側における軸方向の端部に段差部203eが形成されている(
図24を参照)。
【0068】
また、インシュレータ203は、分割コア202に取り付けた状態で、その周方向側の端面壁203dが、分割コア202の周方向側端面壁202eよりも、ティース部202a側(周方向内側)に、僅かに後退した位置となるようになっている。この例では、インシュレータ203の端面壁203dと分割コア202の周方向側端面壁202eとは、概ね0.1mmの段差がある。
【0069】
〈コイル204〉
コイル204は、エナメル被覆銅線等の電線(銅線)が、インシュレータ203を介して分割コア202に整列巻きされて形成されている。このとき、コイル204は、インシュレータ203の端面壁203dから膨出しないように巻回される。
図26は、コイル204を巻回した分割コア202における、スロット202d部分の横断面図である。
図26では、同図の下側がティース部202aであり、同図に示した矢印の順に銅線を巻回している。また、
図26では、コイル204の各段の横に示した数字(8・7…2・1等)は、巻き数を示している。例えば、コイル204の1段目(
図26の最下方側)は、1回目から8回目まで巻回されている。巻回数はモータ1の定格に応じて設定される。このように、コイル204を整列巻きすることで、コイル204が、分割コア202の周方向端面から膨出しないようにすることが可能になる。この例では、インシュレータ203の周方向の端面壁203dのライン(
図26で2点鎖線で示したライン)から、概ね0.1mmのクリアランスを確保している。
【0070】
図27は、インシュレータ203を取り付けた分割コア202にコイル204を巻回した状態を示す斜視図である。
図27に示すように、コイル204は、一対のコイル線端末204aを有している。それぞれのコイル線端末204aは、前記出力側端部側(すなわち、分割ステータ201の軸方向側)に、互いに平行して延びている。一対のコイル線端末204aによって形成される中心角(以下、ピッチ角ともいう)は、分割コア202の中心角の半分の大きさ(この例では15度)である。本実施形態では、これらのコイル線端末204aは、この中心角となるように、樹脂層205によって固定される。これにより、分割ステータ201を円環状にしてステータ200として組み立てた状態で、コイル線端末204aは、15度の等間隔で配置されることになる。なお、インシュレータ203を取り付けた分割コア202にコイル204を巻回した状態を、以下では説明の便宜上、サブアセンブリ206とよぶ。
【0071】
〈樹脂層205〉
樹脂層205は、一対のコイル線端末204aを除いたコイル204全体を封止している。このようにコイル204全体を覆うことで、樹脂層205は、他の分割ステータ201との短絡(相間の短絡)の防止する機能を発揮することができる。また、コイル204の励磁振動を低減する機能も発揮できる。
【0072】
この樹脂層205は、サブアセンブリ206に、モールドによって形成される。この例では樹脂層205には、インシュレータ203と同様の熱可塑性の樹脂を採用している。勿論、樹脂層205には、一般的にモータに使用される熱硬化性の樹脂を用いてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、樹脂層205の周方向側端面壁205dは、分割コア202の周方向側端面壁202eよりも、周方向内側にある。また、樹脂層205は、インシュレータ203の端面壁203c上および分割コア202の内周側面202f上を避けて設けられている。
【0074】
また、樹脂層205は、前記出力側端部側の端面に、グランド側(中性点)の配線部材として機能する中性点用バスバー250を収容可能な溝205aが形成されている。
図28は、分割ステータ201の溝205aを示す斜視図である。この溝205aは、分割ステータ201を円環状にしてステータ200として組み立てると、連続した円環状の溝になる(
図2を参照)。溝205a付近の断面は、
図17示すようになる。
図17では、中性点用バスバー250を収容した状態を示している。この例では、中性点用バスバー250は、円環状又はC字状の配線部材である。この中性点用バスバー250には、前記分割数と同じ12個の中性点用端子部材250aが取り付けられている。それぞれの中性点用端子部材250aは、バスバーユニット100で用いられる端子部材130と同様の略T字状をしている。また、それぞれの中性点用端子部材250aは、コアバックの中心角で、中性点用バスバー250に対してカシメなどによって固定されている。
【0075】
そして、これらの中性点用端子部材250aは、分割ステータ201の一方のコイル線端末204aに対応するように溝205a内に収容され、対応したコイル線端末204aに取り付けられる。
図29は、中性点用端子部材250aをコイル線端末204aに取り付けた状態を説明する図である。
図29では、説明の便宜のため、中性点用バスバー250の図示を省略してある。
図29に示すように、それぞれの中性点用端子部材250aは、対応した分割ステータ201の一方のコイル線端末204aが軸方向から挿入されて、コイル線端末204aと電気的に接続される。
【0076】
また、溝205aには、内周側の壁面に、複数の突部205bが形成されている(
図28を参照)。これらの突部205bは、中性点用端子部材250aや中性点用バスバー250の抜け止めのために設けてある。
図17に示すように、中性点用端子部材250aは、突部205bと溝205aの底部の間に保持されている。この突部205bにより、中性点用端子部材250a等が溝205aから外れるのが防止され、中性点用端子部材250aとコイル線端末204aと間の電気的な接続をより確実にすることが可能になる。
【0077】
また、樹脂層205には、前記出力側端部側にバスバーユニット100を搭載する平面部205eが形成されている(
図21を参照)。さらに樹脂層205には、前記出力側端部の内周側に、凹部205fが形成されている(
図22や
図17を参照)。本実施形態のステータ200は、12個の分割ステータ201で構成されているので、ステータ200では、凹部205fは、30度の等間隔で配置されることになる。この凹部205fの内部には、ホルダ101wのフック111と機械的に結合する突起205gが形成されている。この凹部205fと突起205gとで、本発明の固定部の一例を形成しているのである。
【0078】
〈樹脂層のモールド〉
図30は、樹脂層205のモールドに用いる金型260の一部を示す斜視図である。また、
図31は、金型260の断面図である。
図31では、サブアセンブリ206を金型260内にセットした状態を示している。この金型260は、固定側型部260a、コイル線端末側型部260b、可動側型部260c、及びスライド部260dを備えている。
【0079】
コイル線端末側型部260bは、一対のコイル線端末204aの位置を規定するようになっている。具体的には、分割ステータ201を円環状にしてステータ200として組み立てた状態でコイル線端末204aが15度の等間隔(ピッチ角=15度)で配置されるように、このコイル線端末側型部260bには、コイル線端末204aを挿入する穴260eが所定間隔で2箇所設けられている。コイル線端末204aとコイル線端末側型部260b(穴260e)との隙間から、注入した樹脂が漏れないように、このコイル線端末側型部260bには所定のシール構造を設けてある。
【0080】
スライド部260dは、樹脂が注入される前に、分割コア202の軸方向他方側(出力側端部の反対側)の端部までスライドして当接する。
【0081】
つぎに、インシュレータ203の段差部203eについて説明する。固定側型部260aは、同一のものを何度も使うので寸法は一定であるのに対して、分割コア202の軸方向寸法には、個体差がある。分割コア202の軸方向寸法が小さいときは、固定側型部260a、分割コア202の軸方向他方側端部、インシュレータ203の端面壁203cによって余分な空間が形成される。その空間に樹脂層205を構成する樹脂が流れ込む。この空間に流れ込んだ樹脂の厚みが非常に薄いとき、ステータ内周面からロータ側へ樹脂が剥がれる恐れがある。そこで、インシュレータ203の段差部203eを形成する。この段差部203eには、モールドにより樹脂が流れ込むことになる。したがって、ある程度の厚みがある樹脂層205を形成することができる。
【0082】
固定側型部260aは、インシュレータ203の端面壁203cおよび分割コア202の内周側面202に沿うように形成されている。これにより、樹脂層205は、端面壁203c上および分割コア202の内周側面202f上を避けて設けられることになる。また、固定側型部260aは、段差部203eに回り込んだ樹脂の面205c(
図29参照)と、分割コア202の内周側面202fとが面一となるように形成されている。
【0083】
また、固定側型部260aは、インシュレータ203の両側の端面壁203dに接するようになっている。さらに、固定側型部260aは、分割コア202の両側の周方向側端面壁202eにも接するようになっている。すなわち、樹脂層205のモールドでは、これらの壁面203d,202eを基準としてモールドするのである。このように、固定側型部260aが分割コア202の両側の周方向側端面壁202eに接していると、分割コア202の周方向側端面壁202e上には樹脂層205が形成されないことになる。
【0084】
前記のように、分割コア202の周方向側端面壁202eとインシュレータ203の周方向の端面壁203dとは段差がある。固定側型部260aにも、この段差に対応した段差(概ね0.1mmの段差)が設けてある。そのため、この金型260でモールドを行うと、樹脂層205の周方向側端面壁205dと、分割コア202の周方向側端面壁202eにも、同程度の段差(概ね0.1mm)ができる。すなわち、樹脂層205の周方向側端面壁205dは、分割コア202の周方向側端面壁202eよりも、周方向内側に形成される。したがって、ステータ200では、分割コア202の周方向側端面壁202e同士は接触するが、樹脂層205同士は周方向側では接触しないのである。
【0085】
図32は、互いに隣接した分割ステータ201における、コイル204付近の横断面の拡大図である。既述したように、分割コア202の周方向側端面壁202eとインシュレータ203の周方向の端面壁203dとは概ね0.1mmの段差があるので、
図32に示すように、互いに隣接した分割ステータ201間で0.2mm以上の空気絶縁層の確保が可能になる。そして、コイル204とインシュレータ203の周方向の端面壁203dとは、概ね0.1mmの距離があるので、隣接する銅線間の距離を0.4mm以上確保できる。
【0086】
以上のように本実施形態によれば、ステータ200において、分割コア202の周方向側端面壁202e同士が接触し、樹脂層205同士は周方向側では接触しない。それゆえ、本実施形態では、分割コア202の精度でステータ200を構成することができる。したがって、この分割ステータ201でステータ200を形成すれば、樹脂層同士が周方向側で接触する分割ステータを用いた場合と比べ、ステータの内径真円度をより向上させることが可能になる。ステータの内径真円度はモータ1の特性に影響があるので、本実施形態ではモータ1の特性改善も可能になる。
【0087】
また、インシュレータ203の端面壁203cには段差部203eが設けられているので、この段差部203eの部分で、分割コア202の軸方向寸法の累積誤差を吸収することが可能になる。
【0088】
また、コイル線端末側型部260bで一対のコイル線端末204aの位置を規定した状態で樹脂層205をモールドするので、分割ステータ201におけるコイル線端末204aのピッチ角が所定の精度で定まる。これにより、同一分割ステータ201内におけるコイル線端末204a同士の短絡(いわゆる相内短絡)を防止することが可能になる。また、バスバーユニット100の装着も容易になる。このように、バスバーユニット100の装着が容易になれば、自動機による組み立ても可能になる。また、コイル線端末204aが位置決めされているので、無理な配線の引き回しをなくすことが可能になり、その結果、配線の結合部における応力残渣の低減、延いては電気的結合の信頼性の向上も可能になる。
【0089】
また、凹部205fでバスバーユニット100と機械的に結合しているので、バスバーユニット100の機械的剛性、耐振動・耐衝撃性能の向上も可能になる。
【0090】
また、バスバーユニット100とは別に中性点用バスバー250を収容可能な溝205aを設けたことにより、各相の配線とグランド側の配線とを1つのバスバーユニットで構成するよりもモータ1の全長を抑えることが可能になる。これにより、コストの低減も可能になる。
【0091】
また、インシュレータ203と樹脂層205でコイル204を挟み込むように樹脂層205を充填しているので、コイル204の励磁振動を低減することが可能になる。
【0092】
なお、前記絶縁層は、インシュレータ203の他に、塗装(例えば電着塗装)により形成することも可能である。
【0093】
また、中性点用バスバー250は、板材を円環状あるいはC字状に打ち抜いて製造してもよい。この場合には、中性点用端子部材250aは、中性点用バスバー250を打ち抜く際に、中性点用バスバー250と一体的に形成してもよい。
【0094】
また、ステータ200の分割数は例示である。
【0095】
また、一対のコイル線端末204aによって形成される中心角の大きさは例示である。すなわち、前記のように、分割コア202の中心角の半分の大きさでなくてもよい。
【0096】
[ロータの構成]
図33や
図34に示すように、本実施形態のロータ300は、2ステップスキュー構造のロータであり、ロータコア310やマグネット320、スペーサ330、ロータカバー340などで構成されている。ロータコア310やマグネット320、スペーサ330は、接着剤を使用することなく、ロータカバー340によって一体に固定されている。なお、
図34に示しているのは鍔部341を形成する前のロータカバー340(ベース340a)である。
【0097】
本実施形態のロータ300には、2個のロータコア310が備えられている。各ロータコア310は、断面が略8角形の柱状体からなり、その中心には、シャフト6が挿入され、そして回転軸Sを一致させて固定される貫通孔311が形成されている。ロータコア310は、複数の金属板を回転軸S方向に積層して一体化することにより形成されている。
【0098】
本実施形態のロータ300は8極(ポール)のロータであり、各ロータコア310には、マグネット320が8個ずつ備えられている(マグネット群)。各マグネット320は、帯板状に形成されていて、断面劣弧状に突出する曲突面321を有している。各マグネット群のマグネット320は、その曲突面321を径方向外側に臨ませ、貫通孔311と平行に延びるようにして、ロータコア310の外周面に一定の隙間を隔てながら周方向に等間隔で配置される。これらマグネット320は、それぞれ径方向にS極とN極とに着磁されていて、径方向外側においてS極とN極とが周方向に交互に並んでいる。
【0099】
2つあるロータコア310及びマグネット群(ロータアセンブリ301ともいう)は、回転軸S方向に配列される。これらロータアセンブリ301は、周方向に所定のステップ角ずらした状態でロータカバー340の内部に装着される。そうすることで、ロータアセンブリ301ごとに8個のマグネット320がそれぞれ所定のステップ角ずつ周方向にずれた位置に配置され、ステップスキュー構造が構成されている。
【0100】
本実施形態のロータ300には、スペーサ330が2つ備えられている。各スペーサ330は、ロータカバー340の内周面に沿う円環形状をした板状の部材である。スペーサ330の外径はロータカバー340の内径よりも僅かに小さく形成されている。そして、スペーサ330の内径は、貫通孔311の外径よりは大きく、ロータコア310の端面の一部を覆うように少なくともロータコア310の外径よりも小さく形成されている。なお、スペーサ330の素材は非磁性体であれば金属でも樹脂でもよい。
【0101】
スペーサ330は、ロータカバー340に装着された各ロータアセンブリ301の端面とロータカバー340の端部を変形して形成される鍔部341との間に介在される。スペーサ330は、鍔部341と協働してこれらロータアセンブリ301の軸方向への動きを規制する機能を有している。また、詳細は後述するが、鍔部341の加工を容易にするとともに、その際におけるマグネット320やロータコア310の損傷を防ぐ機能も有している。
【0102】
ロータカバー340は、円筒形状をした金属加工品であり、円筒状の周壁342と、その各端に開口する開口344とを有している。ロータカバー340は、シームレスな円筒形状をしたベース340aをプレス加工等して形成される。各開口344を通じてその内部にロータアセンブリ301やスペーサ330がそれぞれ装着される。ロータアセンブリ301はロータカバー340に圧入される。ロータカバー340は、これら各部材を保護するとともに接着剤を使用せずに所定位置に位置決めして一体に保持する機能を有している。
【0103】
ロータカバー340は、鍔部341が形成されている点を除けばベース340aと実質的に同じである。ロータカバー340は、最終的にベース340aの開口344の周りの部分(加工端345ともいう)を変形させ、径方向内側に張り出す鍔部341を形成することによって完成する。従って、ベース340aの軸方向の長さ寸法は、ロータコア310やマグネット320と比べて大きく設計されている。
【0104】
ロータカバー340の周壁342の外面には、回転軸方向に隣接する2つのロータアセンブリ301の間に対応して径方向内側に窪む区画凹部350が形成されている。本実施形態の区画凹部350は、ロータカバーにおける回転軸方向の中央部位を周方向に延びる直線状の溝として形成されている。この区画凹部350によって2つのロータアセンブリ301は接することなく保持される。
【0105】
なお、ロータアセンブリ301の接触を防ぐことができればよいので、区画凹部350によって僅かでも隙間が形成できればよいが、近接し過ぎると高速回転時に渦電流損が発生するおそれがあるため、2つのロータアセンブリ301が1mm以上離れるように区画凹部350を形成するのが好ましい。
【0106】
ロータカバー340の周壁342の外面には、各マグネット320に対応して回転軸方向に延びる複数のリセス346が凹み形成されている。各リセス346は、ロータカバー340における区画凹部350の両側のそれぞれの部分において、両端部を除く部分に形成されている。
【0107】
各リセス346は、開口344側の端部に、ロータカバー340の外周面から径方向内側へ略垂直に入り込む第1端壁346aを有している。各リセス346の第1端壁346aは、周方向にほぼ直線状に並んでいる。一方、各リセス346の区画凹部350側の端部は、先窄まり形状を呈しており、ロータカバー340の外周面から径方向内側へ傾斜して入り込む第2端壁346bを有している。なお、第2端壁346bの形状はリセス346形成時の無理抜きを回避する結果として生じる形状である。
【0108】
図35に示すように、これらリセス346により、ロータカバー340には、その内側に装着される各マグネット320の曲突面321に対応して径方向外側に突出する断面劣弧状の支持領域347が複数形成されている。すなわち、これら各支持領域347に曲突面321が対向するように各マグネット320は配置される。そして、各支持領域347に各マグネット320が接することにより、各マグネット320は周方向への動きが規制され、所定位置に保持される。
【0109】
周方向に隣接する2つの支持領域347の間の部分には、これら支持領域347に連続するとともに、回転軸S方向に延びて線状に窪む凹部348が形成されている。各凹部348は、支持領域347とは逆に、径方向内側に突出する劣弧状の断面を有している。これら凹部348は、隣接する2つのマグネット320の間の隙間に入り込む小さな窪みであり、各リセス346における周方向の中央部分に形成され、第1端壁346aから第2端壁346bの近傍にわたって延びている。これら凹部348の存在により、周方向に隣接するマグネット320どうしの接触を安定して阻止できる。
【0110】
各支持領域347は、各曲突面321と安定して面接触し、マグネット320を適正に保持できるように工夫されている。
【0111】
すなわち、
図36に示すように、支持領域347の内面が曲突面321よりも小さい曲率半径で形成され、支持領域347の内面における周方向の両端部の内側に、曲突面321における周方向の両端部が位置するように寸法設計されている。
【0112】
同図の(a)に示すように、支持領域347に外力が作用していない状態では、支持領域347は曲突面321よりも小さい曲率半径で形成されているので、支持領域347の内面に曲突面321を接触させたときにはその周方向の両端部2箇所が接触し、その中間部分は接触しない。そして、ベース340aにロータコア310等を装着した後には、同図の(b)に示すように、ベース340aの径を拡げる方向に力が作用するため、支持領域347における周方向の両端部が逆向きに引っ張られる。その結果、マグネット320に回転軸側に押し込む力が作用し、支持領域347の内面が曲突面321の略全面と面接触する。
【0113】
そして、支持領域347が曲突面321と密着して同じ曲率半径となった場合に、その弧の長さが曲突面321よりも支持領域347の方が大きくなるように設定されているため、安定して曲突面321は支持領域347と面接触させることができる。その結果、マグネット320は周方向の所定位置に保持される。
【0114】
図37や
図38を参照して、支持領域347の曲率半径等を導出する関係式について説明する。外力が作用していない状態での支持領域347の曲率半径(mm)をRaとし、その中心角(ラジアン)をαとする。そして、同様に、凹部348の曲率半径をRbとし、その中心角をβとする。
【0115】
ロータカバー340にマグネット320等が装着された変形状態での支持領域347の曲率半径をRa’とし、その中心角をα’とする。同じく変形状態での凹部348の曲率半径をRb’とし、その中心角をβ’とする。なお、Ra’は曲突面321の曲率半径と一致する。
【0116】
ロータカバー340にマグネット320等を装着した状態でのロータカバー340の最大外径(mm)をRとする。そして、ロータ300の1ポール当たりの中心角をθ、ロータカバー340の厚み(mm)をt、ロータカバー340の周方向の長さ(mm)をL、ロータカバー340の縦弾性係数をEとする。
【0117】
この条件の下でロータカバー340を構成することにより、次の幾何学的な関係式が成立する。
【0120】
更に、ロータカバー340にマグネット320等を装着することで、支持領域347や凹部348の周方向の端部には引張り力Fが発生し、これにより支持領域347や凹部348が引き伸ばされるため、次の関係式が成立する。
【0122】
そして、支持領域347に発生した引張り力Fにより、マグネット320に対しては次の関係式が示す力N(支持力)が径方向内側に作用する。
【0124】
従って、これら関係式に基づいて求められる支持力Nを、マグネット320に加わる最大の遠心力より大きくすることでマグネット320を適正に保持することができる。
【0125】
具体的には、各マグネット320の質量をMmとし、貫通孔311の中心からマグネット320の重心までの距離をRmとし、設計に基づくロータ300の最大角速度をSとしたとき、次の関係式を満たすように設計すればよい。
【0127】
〈ロータの製造方法〉
次に、本実施形態のロータ300の製造方法について説明する。
【0128】
このロータ300は、上述したように、接着剤を使用せず、マグネット320等をロータカバー340に装着して一体化する。具体的には、その製造方法は、ロータカバー340のベース340aを形成する工程(ベース形成工程)や、ベース340aに区画凹部350を形成する工程(区画凹部形成工程)、ベース340aに支持領域347を形成する工程(支持領域形成工程)、ロータコア310やマグネット320をベース340aに装着する工程(装着工程)、ベース340aに鍔部341を形成し、ロータカバー340を完成させる工程(鍔部形成工程)などの工程で構成されている。
【0129】
(ベース形成工程)
図39に示すように、本工程では、ロータカバー340のベース340a(初期状態)を形成する。具体的には、まず、金属板をプレス加工することにより、同図の(a)に示すような、シームレスの有底円筒状のプレス加工品を形成する。金属板の厚みに関しては、耐久性およびモータ性能の観点から、0.2mm〜0.3mmが好ましい。
【0130】
そして、同図の(b)に示すように、その底を切り取って同図の(c)に示すような形態とした後、不要なフランジ部分を切り取る。最終的に同図の(d)に示すような、両端に開口を有するシームレスの円筒体を形成し、これをロータカバー340のベース340a(初期状態)とする。
【0131】
これ以外にも、例えば、
図40に示すように、底部に曲面を有するシームレスの有底円筒状のプレス加工品から形成することもできる。この場合、例えば、底面の一部を切り抜いた後、曲面部分をプレス加工により変形させて筒状に加工し、不要なフランジ部分を切り取って形成すればよい。
【0132】
(区画凹部形成工程)
本工程では、ベース340aの周壁342を径方向外側から凹ませることにより、ベース340aの軸方向の中間部分に区画凹部350を形成する。
【0133】
図41に示すように、具体的には、まず、所定の治具380における半割状の一方の部分に差し込んでベース340aを支持する。半割状の他方の部分を連結した治具の外周面には区画凹部350に対応した窪み380aが形成される。この窪み380aに対し、ベース340aの周壁342の外方から径方向内側に向かって先端に突起を有するプレス具381を押し付け、周壁342の所定部位に区画凹部350を形成する。
【0134】
(支持領域形成工程)
本工程では、ベース340aの周壁342を径方向外側から凹ませ、複数のリセス346を形成することにより複数の支持領域347を複数形成する。また、本実施形態では、支持領域347と同時に凹部348も形成する。
【0135】
更に、本工程では、区画凹部350によってベースが軸方向に2分される一方の部分に、複数の支持領域347を形成する第1の支持領域形成工程と、他方の部分に、周方向に所定のステップ角ずらした状態で複数の支持領域347を形成する第2の支持領域形成工程とで構成されている。
【0136】
図42〜
図45に示すように、本工程では、円柱状の治具360や、片側のロータアセンブリ301のリセス346に対応して設けられる8個のプレスバー361(押圧体)などが用いられる。治具360は、ベース340aの半分程度の軸方向における長さと、ベース340aの内径よりも僅かに小さい外径とを有している。治具360の外周面には、リセス346の断面形状、換言すれば、支持領域347及び凹部348の断面形状に対応して窪み部362が8箇所形成されている。これら窪み部362のそれぞれは、治具360の外周面における軸方向の中間部位から突端まで延びており、径方向に拡がる端面で塞がれた閉塞端362aと開放された開放端362bとを有している。
【0137】
各プレスバー361は、リセス346の断面形状に対応して突出するプレス面を有している。各プレスバー361は、そのプレス面361aを治具360の窪み部362に向けた状態で、治具360の周りに配置され、径方向に進退可能に設けられている。各プレス面361aの軸方向の一端は、窪み部362の閉塞端362aに合わせて位置決めされ、他端は治具360の突端に至る途中の部位に位置するように形成されている。
【0138】
本工程では、まず、
図42に示すように、ベース340aを一方の開口344から治具360の突端(装着端)に被せ付ける。そして、
図43に示すように、他方の開口344から支持用の治具360aを差し込んだ後、ベース340aの外周面に各プレスバー361を押し付け、その周壁342の所定部位をリセス346の形状に変形させる(第1の支持領域形成工程)。
【0139】
窪み部362の突端側は開放端362bとなっているので、無理抜きしなくても、各プレスバー361が退いた後にベース340aを治具360から引き抜けば、容易に治具360からベース340aを取り外すことができる。
【0140】
次に、
図45に示すように、ベース340aを逆向きにし、周方向に所定のステップ角ずらして再度、ベース340aを他方の開口344から治具360の突端に被せ付け、先と同様にしてベース340aの周壁342の所定部位をリセス346の形状に変形させる(第2の支持領域形成工程)。
【0141】
そうすることで、
図33等に示したような、複数のリセス346、つまりは支持領域347を形成することができる。
【0142】
(装着工程)
本工程では、支持領域形成工程の後、ロータコア310やマグネット320、スペーサ330をベース340aに装着して一体に仮組する。
【0143】
まず、ベース340aの一方にロータアセンブリ301を装着する。例えば、支持具を用いて、ロータコア310の外周面の所定位置に各マグネット320を配置した状態で支持する。そうして、これらの軸方向の端部からベース340aを被せ付け、ロータコア310どうしが突き当たるまで、そして、各マグネット320が区画凹部350に突き当たるまで圧入する。そのとき、支持領域347の内面における周方向の両端部の内側に、曲突面321における周方向の両端部が位置するように位置合わせする。
【0144】
そうすれば、曲突面321と支持領域347とが面接触し、各マグネット320は周方向に安定して保持される。また、隣接するマグネット320間に凹部348が入り込むので、マグネット320どうしの接触を避けることができる。
【0145】
同様にして、ベース340aの他方に所定のステップ角ずらした状態でロータアセンブリ301を装着する。
【0146】
最後に、ベース340aに装着された各ロータアセンブリ301の開口344に臨む端面の上に、スペーサ330を入れ込む。ロータコア310、マグネット320、スペーサ330が適正に装着されたベース340aの開口344側の端部は、スペーサ330の端面よりも上方に突出している(加工端345)。
【0147】
(鍔部形成工程)
本工程では、装着工程の後、ベース340aの加工端345を変形させて鍔部341を形成し、ロータカバー340の内部にマグネット320等を封止する。
【0148】
図46〜
図48を参照して、本工程を説明する。本工程では、これら図に示すように、専用の旋盤装置370を用いて鍔部341を形成する。旋盤装置370には、回転軸S周りに回転制御可能なチャック371や、チャック371と回転軸S方向に対向して配置され、スペーサ330を支持しながらチャック371と同期して回転するテールストック装置372などが備えられている。
【0149】
また、この旋盤装置370には、先端に回転自在な小径ローラ(カムフォロア373)が設置され、チャック371等の回転軸Sに対し、その径方向に変位制御可能で、少なくとも回転軸Sとこれに直交する軸との間の範囲で傾動変位制御可能な圧着装置374が備えられている。更に、加工時の基準位置を探るタッチプローブ375も備えられている。その他、これら各装置を統括的に制御する制御装置等も備えられていて(図示せず)、鍔部341を形成する一連の加工処理は自動的に実行できるようになっている。
【0150】
本工程では、まず、チャック371にロータコア310等を装着したベース340aをその一方の開口344側を外方に向けて支持させる。このとき、チャック371の回転軸Sとベース340aの回転軸Sは一致する。そして、旋盤装置370を作動させると、
図46に示すように、タッチプローブ375が駆動され、タッチプローブ375がスペーサ330の端面に接触することにより、加工の基準となる基準面が設定される。なお、基準面に基づいて加工を行うことで部品間の寸法のばらつきに対応することができる。
【0151】
図47に示すように、設定された基準面に基づいてテールストック装置372が作動し、テールストック装置372がスペーサ330を適正にチャック371側に押し付けることにより、ベース340aは旋盤装置370に支持される。そして、チャック371やテールストック装置372とともにベース340aは回転軸S周りに所定の回転数で回転する。
【0152】
図48に示すように、回転しているベース340aの加工端345にカムフォロア373を押し付ける。そして、
図47に示すように、カムフォロア373を段階的に傾動させることで、加工端345を径方向内側に変形させ、鍔部341を形成する。鍔部341を形成することにより、スペーサ330は鍔部341とロータコア310の端部との間に挟み込まれる。
【0153】
このとき、カムフォロア373が適宜回転することにより、加工端345との間に過度な摩擦力(アグレッシブ摩耗)や偏った力の発生が抑制される。また、スペーサ330はマグネット320やロータコア310の端部の損傷を防ぐとともに、リセス346の影響を受けずに加工端345を円形に保持して鍔部341の成形を容易にする機能を果たす。
【0154】
そうすることで、径方向に平坦に拡がる仕上がりの綺麗な鍔部341が形成される。鍔部341はスペーサ330に密着し、その動きを規制する。
【0155】
鍔部341の周壁342からの突出寸法は、1mm以上に設定するのが好ましい。1mm以上であれば、波打つこともなく、平坦な鍔部341を安定して形成することができ、スペーサ330を安定して固定することができる。なお、鍔部341は、全周にわたって均等に形成する必要はなく、部分的に切欠が形成されていてもよい。
【0156】
その後、ベース340aを逆向きに設置して同様に処理を行い、他方の加工端345を変形させて鍔部341を形成する。
【0157】
これら鍔部341の形成により、ロータカバー340が完成する。鍔部341やスペーサ330、区画凹部350の協働により、その内部に装着されたロータコア310やマグネット320は、回転軸方向への動きが規制され、所定位置に保持される。このように、本発明によれば、接着剤を一切使用することなくロータ300を形成することができるので、生産性の向上や製造コストの削減を実現することができる。また、接着剤という介在物を用いないこと、および周方向において等間隔にマグネットが配置されることにより、ロータのインバランス量が改善できる。
【0158】
なお、本発明にかかるロータ300等は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0159】
例えば、ロータコア310の断面形状は8角形に限らない。円形やその他の多角形状等、配置されるマグネット320の数や形状に応じて適宜変更できる。
【0160】
ロータコア310は1つにして、マグネットをその回転軸方向に複数配列してもよい。
【0161】
支持領域形成工程の後に区画凹部形成工程を行ってもよい。また、区画凹部は、マグネットを軸方向に保持できるのであれば、周方向全域に設けるだけでなく、周方向に部分的に形成してもよい。