特許第5703639号(P5703639)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703639
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】工具径調整装置を備える工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 39/00 20060101AFI20150402BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20150402BHJP
   B23B 29/034 20060101ALI20150402BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B23B39/00 B
   B23B49/00 B
   B23B29/034 A
   B23B29/034 B
   B23Q3/157 C
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2010-199116(P2010-199116)
(22)【出願日】2010年9月6日
(65)【公開番号】特開2012-55983(P2012-55983A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年8月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】中村 英士
(72)【発明者】
【氏名】沢木 典一
(72)【発明者】
【氏名】門田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 孝司
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−259970(JP,A)
【文献】 特開2005−288635(JP,A)
【文献】 特開昭59−064210(JP,A)
【文献】 特開2003−311517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/034
B23B 39/00
B23B 49/00
B23Q 3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を装着可能な主軸装置と、
工具径を調整可能なボーリングホルダを含む複数の前記工具を収容可能し、工具交換割出位置と、前記工具交換割出位置と異なる工具径調整割出位置とに割出可能な工具マガジンと、
前記工具マガジンのうち前記工具交換割出位置に位置する前記工具と前記主軸装置に装着されている前記工具とを交換する工具交換装置と、
前記工具マガジンから取り出された前記ボーリングホルダの工具径を調整すると共に、前記主軸装置の動作および前記工具交換装置の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列して前記ボーリングホルダの工具径の調整動作を行うことが可能な工具径調整装置と、
前記工具マガジンのうち前記工具径調整割出位置に位置する前記ボーリングホルダを前記工具マガジンから取り出して前記工具径調整装置へ搬送すると共に、前記工具径調整装置により工具径を調整した前記ボーリングホルダを前記工具径調整装置から前記工具マガジンに戻す搬送装置と、
前記工具交換装置による工具交換処理の実行中であるか否かを判定し、前記工具交換処理の実行中でない場合に、前記搬送装置による前記ボーリングホルダの前記工具マガジンからの取出動作および工具径を調整した前記ボーリングホルダの戻し動作を行う搬送制御装置と、
を備え
前記工具マガジンは、収容する前記工具の工具軸方向が水平方向となるように前記工具を収容し、
前記工具径調整装置は、工具軸方向が鉛直方向であり工具先端が上方を向くように前記ボーリングホルダを保持し、当該向きにて保持した状態で工具径を調整し、
前記搬送装置は、前記工具マガジンと前記工具径調整装置との間にて前記ボーリングホルダを搬送し、前記ボーリングホルダを搬送する際に前記ボーリングホルダの工具軸方向を水平方向から鉛直方向へまたは鉛直方向から水平方向へ方向変換する、工具径調整装置を備える工作機械。
【請求項2】
工具を装着可能な主軸装置と、
工具径を調整可能なボーリングホルダを含む複数の前記工具を収容可能し、工具交換割出位置と、前記工具交換割出位置と異なる工具径調整割出位置とに割出可能な工具マガジンと、
前記工具マガジンのうち前記工具交換割出位置に位置する前記工具と前記主軸装置に装着されている前記工具とを交換する工具交換装置と、
前記工具マガジンから取り出された前記ボーリングホルダの工具径を調整すると共に、前記主軸装置の動作および前記工具交換装置の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列して前記ボーリングホルダの工具径の調整動作を行うことが可能な工具径調整装置と、
前記工具マガジンのうち前記工具径調整割出位置に位置する前記ボーリングホルダを前記工具マガジンから取り出して前記工具径調整装置へ搬送すると共に、前記工具径調整装置により工具径を調整した前記ボーリングホルダを前記工具径調整装置から前記工具マガジンに戻す搬送装置と、
前記工具交換装置による工具交換処理の実行中であるか否かを判定し、前記工具交換処理の実行中でない場合に、前記搬送装置による前記ボーリングホルダの前記工具マガジンからの取出動作および工具径を調整した前記ボーリングホルダの戻し動作を行う搬送制御装置と、
を備え
前記ボーリングホルダは、工具径を調整する粗動調整機構と、前記粗動調整機構による調整精度に比べて高い調整精度を有する微動調整機構とを備え、
前記工具径調整装置は、前記ボーリングホルダの前記粗動調整機構による工具径の粗動調整であり、粗動調整後の前記ボーリングホルダの工具径を計測して微動調整量を算出し、
前記微動調整機構は、前記主軸装置に前記ボーリングホルダが装着された状態で、前記工具径調整装置により算出された前記微動調整量に基づいて前記ボーリングホルダの工具径の微動調整を行う工具径調整装置を備える工作機械。
【請求項3】
請求項1において、
前記ボーリングホルダは、工具径を調整する粗動調整機構と、前記粗動調整機構による調整精度に比べて高い調整精度を有する微動調整機構とを備え、
前記工具径調整装置は、前記ボーリングホルダの前記粗動調整機構による工具径の粗動調整であり、粗動調整後の前記ボーリングホルダの工具径を計測して微動調整量を算出し、
前記微動調整機構は、前記主軸装置に前記ボーリングホルダが装着された状態で、前記工具径調整装置により算出された前記微動調整量に基づいて前記ボーリングホルダの工具径の微動調整を行う工具径調整装置を備える工作機械。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記搬送制御装置は、前記工具交換装置による前記工具交換処理の実行開始までの時間が予め設定された時間以上あるかを判定し、前記工具交換処理の実行開始までの時間が前記設定時間以上ある場合に、前記搬送装置による前記ボーリングホルダの前記工具マガジンからの取出動作および工具径を調整した前記ボーリングホルダの戻し動作を行う工具径調整装置を備える工作機械。
【請求項5】
請求項4において、
前記工作機械は、前記ボーリングホルダにおける現在の工具径と当該ボーリングホルダに対する指令工具径に基づいて当該ボーリングホルダの工具径の調整を行うか否かを判定する主制御装置を備え、
前記搬送制御装置は、前記主制御装置により工具径調整を行うと判定された前記ボーリングホルダに対して、前記取出動作を行う工具径調整装置を備える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具径を調整可能なボーリングホルダに対して工具径調整を行う工具径調整装置を備える工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工具径を調整可能なボーリングホルダとして、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。これらのボーリングホルダは、マシニングセンタなどの工作機械の主軸に取り付けた状態で、工具径の調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−283469号公報
【特許文献2】特開2003−311517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、工作機械の主軸にボーリングホルダを取り付けた状態で工具径を調整すると、工具径を調整している間は、工作物の加工を行うことができない。そのため、非加工時間が長くなり、結果として加工サイクルタイムが長くなってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加工時間に影響を与えることなく、工具径の調整を行うことができる工具径調整装置を備える工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)第一の発明は、工具を装着可能な主軸装置と、工具径を調整可能なボーリングホルダを含む複数の前記工具を収容可能し、工具交換割出位置と、前記工具交換割出位置と異なる工具径調整割出位置とに割出可能な工具マガジンと、前記工具マガジンのうち前記工具交換割出位置に位置する前記工具と前記主軸装置に装着されている前記工具とを交換する工具交換装置と、前記工具マガジンから取り出された前記ボーリングホルダの工具径を調整すると共に、前記主軸装置の動作および前記工具交換装置の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列して前記ボーリングホルダの工具径の調整動作を行うことが可能な工具径調整装置と、前記工具マガジンのうち前記工具径調整割出位置に位置する前記ボーリングホルダを前記工具マガジンから取り出して前記工具径調整装置へ搬送すると共に、前記工具径調整装置により工具径を調整した前記ボーリングホルダを前記工具径調整装置から前記工具マガジンに戻す搬送装置と、前記工具交換装置による工具交換処理の実行中であるか否かを判定し、前記工具交換処理の実行中でない場合に、前記搬送装置による前記ボーリングホルダの前記工具マガジンからの取出動作および工具径を調整した前記ボーリングホルダの戻し動作を行う搬送制御装置とを備える。
前記工具マガジンは、収容する前記工具の工具軸方向が水平方向となるように前記工具を収容し、前記工具径調整装置は、工具軸方向が鉛直方向であり工具先端が上方を向くように前記ボーリングホルダを保持し、当該向きにて保持した状態で工具径を調整し、前記搬送装置は、前記工具マガジンと前記工具径調整装置との間にて前記ボーリングホルダを搬送し、前記ボーリングホルダを搬送する際に前記ボーリングホルダの工具軸方向を水平方向から鉛直方向へまたは鉛直方向から水平方向へ方向変換する、工具径調整装置を備える。
(請求項2)また、第二の本発明は、工具を装着可能な主軸装置と、工具径を調整可能なボーリングホルダを含む複数の前記工具を収容可能し、工具交換割出位置と、前記工具交換割出位置と異なる工具径調整割出位置とに割出可能な工具マガジンと、前記工具マガジンのうち前記工具交換割出位置に位置する前記工具と前記主軸装置に装着されている前記工具とを交換する工具交換装置と、前記工具マガジンから取り出された前記ボーリングホルダの工具径を調整すると共に、前記主軸装置の動作および前記工具交換装置の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列して前記ボーリングホルダの工具径の調整動作を行うことが可能な工具径調整装置と、前記工具マガジンのうち前記工具径調整割出位置に位置する前記ボーリングホルダを前記工具マガジンから取り出して前記工具径調整装置へ搬送すると共に、前記工具径調整装置により工具径を調整した前記ボーリングホルダを前記工具径調整装置から前記工具マガジンに戻す搬送装置と、前記工具交換装置による工具交換処理の実行中であるか否かを判定し、前記工具交換処理の実行中でない場合に、前記搬送装置による前記ボーリングホルダの前記工具マガジンからの取出動作および工具径を調整した前記ボーリングホルダの戻し動作を行う搬送制御装置とを備える。
前記ボーリングホルダは、工具径を調整する粗動調整機構と、前記粗動調整機構による調整精度に比べて高い調整精度を有する微動調整機構とを備え、前記工具径調整装置は、前記ボーリングホルダの前記粗動調整機構による工具径の粗動調整であり、粗動調整後の前記ボーリングホルダの工具径を計測して微動調整量を算出し、前記微動調整機構は、前記主軸装置に前記ボーリングホルダが装着された状態で、前記工具径調整装置により算出された前記微動調整量に基づいて前記ボーリングホルダの工具径の微動調整を行う。
(請求項3)第一の発明において、前記ボーリングホルダは、工具径を調整する粗動調整機構と、前記粗動調整機構による調整精度に比べて高い調整精度を有する微動調整機構とを備え、前記工具径調整装置は、前記ボーリングホルダの前記粗動調整機構による工具径の粗動調整であり、粗動調整後の前記ボーリングホルダの工具径を計測して微動調整量を算出し、前記微動調整機構は、前記主軸装置に前記ボーリングホルダが装着された状態で、前記工具径調整装置により算出された前記微動調整量に基づいて前記ボーリングホルダの工具径の微動調整を行う。
【0007】
請求項4第一、第二の発明において、前記搬送制御装置は、前記工具交換装置による前記工具交換処理の実行開始までの時間が予め設定された時間以上あるかを判定し、前記工具交換処理の実行開始までの時間が前記設定時間以上ある場合に、前記搬送装置による前記ボーリングホルダの前記工具マガジンからの取出動作および工具径を調整した前記ボーリングホルダの戻し動作を行う。
請求項5第一、第二の発明において、前記工作機械は、前記ボーリングホルダにおける現在の工具径と当該ボーリングホルダに対する指令工具径に基づいて当該ボーリングホルダの工具径の調整を行うか否かを判定する主制御装置を備え、前記搬送制御装置は、前記主制御装置により工具径調整を行うと判定された前記ボーリングホルダに対して、前記取出動作を行う。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1)本発明によれば、工具マガジンにおいて、工具径調整割出位置を工具交換割出位置と異なる位置としている。さらに、工具径調整装置は、主軸装置の動作および工具交換装置の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列してボーリングホルダの工具径の調整動作を行うことができる。さらに、搬送制御装置は、工具交換装置による工具交換処理の実行中であるか否かを判定し、工具交換処理の実行中でない場合に、搬送装置によるボーリングホルダの工具マガジンからの取出動作および工具径を調整したボーリングホルダの戻し動作を行う。これらによって、工具径調整装置の動作、および、搬送装置の動作は、加工プログラムの処理に影響を与えることなく実行できる。従って、ボーリングホルダの工具径を調整することがあっても、加工サイクルタイムが長くなることを抑制できる。
さらに、工具径調整装置にボーリングホルダが配置される状態においては、ボーリングホルダの工具軸方向が鉛直方向となるようにしている。これにより、人間が新たなボーリングホルダを工具マガジンに投入する場合に、工具径調整装置に配置することで、搬送装置を動作させることで、工具マガジンに投入することができる。特に、工具径を調整可能なボーリングホルダの質量は大きいものがある。そのため、大質量のボーリングホルダを工具マガジンに直接配置するために工具軸方向を水平方向に搬送し装着することは容易ではない。これに対して、大質量のボーリングホルダであっても、工具軸方向を鉛直方向に搬送し装着することは比較的容易である。つまり、大質量のボーリングホルダを工具マガジンに投入する場合に、当該ボーリングホルダを工具径調整装置に介して工具マガジンに投入することにより、容易となる。
(請求項2,3)本発明によれば、粗動調整機構と微動調整機構を有するボーリングホルダを対象としている。ここで、工具径の微動調整は、主軸装置にボーリングホルダを装着した状態で行う方が、より高精度に行うことができる。一方、工具径の粗動調整は、ボーリングホルダを主軸装置に装着した状態で行う必要はない。そこで、この粗動調整について、工具マガジンから取り出して加工プログラムの処理に影響を与えないように実行することで、所望の工具径調整を行うことができる。
【0011】
請求項4)本発明によれば、工具交換処理の実行開始までの時間が設定時間以上ある場合に、搬送装置による動作が行われるようにしている。従って、搬送装置により、ボーリングホルダの工具マガジンからの取出動作および工具径を調整したボーリングホルダの戻し動作を行っている最中に、工具交換装置により工具交換を行う状態となることを抑制できる。つまり、搬送装置による動作が、工具交換装置による工具交換動作に影響を与えることなく実行できる。その結果、加工サイクルタイムに影響を与える工具交換時間が長くなることを抑制できる。
請求項5)本発明によれば、例えば、指令工具径が現在工具径に一致する場合には工具径調整装置による工具径の調整を行う必要がないため、工具径調整を行わないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ボーリングホルダの軸方向の部分断面図である。
図2】粗動調整機構の軸方向の拡大断面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】微動調整機構を調整した状態を示すボーリングホルダの軸方向の部分断面図である。
図5】粗動調整機構の動作:連結工程を示す図である。
図6】粗動調整機構の動作:アンクランプ工程を示す図である。
図7】粗動調整機構の動作:当接工程を示す図である。
図8】粗動調整機構の動作:調整工程を示す図である。
図9】粗動調整機構の動作:クランプ工程を示す図である。
図10図9のB−B断面図である。
図11】工作機械の正面図(主軸の軸方向から見た図)である。
図12】工作機械の平面図、図11の上方から見た図である。
図13】搬送装置および工具径調整装置の部分の拡大平面図である。
図14】搬送装置および工具径調整装置を図13のC方向から見た図である。
図15】工具径調整装置を図14のD方向から見た図である。
図16】搬送装置を図14のE方向から見た図である。
図17】メインプログラム処理を示すフローチャートである。
図18】サブプログラムの処理を示すフローチャートである。
図19】ジョブセット処理を示すフローチャートである。
図20】工具取出処理を示すフローチャートである。
図21】工具戻し処理を示すフローチャートである。
図22】搬送制御装置の処理及び工具径調整装置による工具径調整の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(ボーリングホルダの構成)
ボーリングホルダ1の構成について、図1図3を参照して説明する。図1に示すように、ボーリングホルダ1は、軸線周りに回転可能な主軸2に保持されて工作物に穴などを加工する工具であって、工具径を調整可能とされている。ここで、各図において、ボーリングホルダ1のうち主軸2側を基端側といい、ボーリングホルダ1のうち刃具70が設けられる側を先端側という。
【0016】
ボーリングホルダ1は、被保持部10と、微動調整機構20と、粗動調整機構50と、刃具70とを備えている。被保持部10は、基端側に向かって細くなるようなテーパ状に形成されたテーパシャンク部11と、テーパシャンク部11の最基端に設けられたプルスタッド12とを備えている。テーパシャンク部11は、主軸2のテーパ穴に挿入され、プルスタッド12は、主軸2のコレット(図示せず)により把持される。このようにして、被保持部10は、主軸2に保持されている。また、テーパシャンク部11の中心には、軸線方向に延びる空気流路13が形成されている。この空気流路13には、主軸2側から空気が供給される。主軸2側から供給される空気は、主制御装置(図示せず)によって圧力を制御される。
【0017】
微動調整機構20は、被保持部10の先端側に取り付けられており、刃具70の軸線からの位置、すなわち工具径を微動調整することができる装置である。この微動調整機構20は、基端ボディ部21と、弾性変形部41とを備えている。
【0018】
基端ボディ部21は、被保持部10の先端側に一体的に結合されており、内部に空油圧変換部22が形成されている。空油圧変換部22は、次のように構成されている。被保持部10の空気流路13の先端側に連通する第一シリンダ23が形成されている。この第一シリンダ23内に第一ピストン24が、摺動シール25を介して、軸線方向(図1の上下方向に)に往復スライド可能に収容されている。また、第一ピストン24のうち先端側には、連結ロッド26を介して第二ピストン27が連結されている。この第二ピストン27は、第一シリンダ23の先端側に連通する小径の第二シリンダ28内に、摺動シール29を介して、軸線方向に往復スライド可能に収容されている。
【0019】
第二ピストン27の先端側は、作動油が充填される作動油空間30を形成しており、被保持部10の空気流路13を通して空気圧が第一ピストン24に作用することで、第一ピストン24が先端側に移動し、これに伴い第二ピストン27が先端側に移動することで、作動油空間30内の油圧が増圧される。このようにして、空油圧変換部22は、被保持部10の空気流路13から供給される空気圧を、油圧に変換させると共に増圧している。作動油空間30の先端側には、連通路31が連通して形成されている。
【0020】
弾性変形部41は、基端ボディ部21の先端側に、次のように構成されている。弾性変形部41の内部には、パワーユニット42が設けられている。パワーユニット42は、凸ブロック43と凹ブロック44との間に油圧空間45が形成され、この油圧空間45と基端ボディ部21の連通路31とが、弾性変形部41の本体および凹ブロック44に形成してある油通路46を通して連通している。さらに、弾性変形部41にはS字状のスリット47が形成されており、油圧空間45に油圧が作用すると、弾性変形部41における先端側の微動部48は、弾性変形することにより、弾性変形部41のうち基端ボディ部21側に対して、図1の左方向にシフトする。
【0021】
粗動調整機構50は、微動調整機構20の先端側に取り付けられており、刃具70の軸線からの位置、すなわち工具径を粗調整することができる装置である。この粗動調整機構50による工具径の調整可能量は、微動調整機構20による工具径の調整可能量よりも大きい。この粗動調整機構50は、粗動ハウジング51と、粗動移動体52と、カウンタウエイト53と、ピニオン軸54と、流体受給ポート55と、空油圧変換部56と、クランプ部57と、付勢力発生部58とを備えている。
【0022】
粗動ハウジング51は、微動調整機構20の弾性変形部41の微動部48に取り付けられている。つまり、粗動ハウジング51は、弾性変形部41の微動部48が径方向にシフトした場合には、その動作に伴って径方向にシフトする。
【0023】
粗動移動体52は、主として円柱状に形成されている。なお、粗動移動体52は、円柱状に限られるものではなく、例えば、角柱状に形成されるようにしてもよい。この粗動移動体52の先端側(ボーリングホルダ1の径方向外側)に刃具70が設けられている。粗動移動体52の外周面には、円柱の中心軸方向に直交する方向へ延在する溝52aが、円柱の中心軸方向に複数(4個)並設されている。例えば、図1においては、4個の溝52aを形成した図を示している。この溝52aは、周方向において全範囲に形成される必要はなく、所定の位相範囲のみに形成することで足りる。このように形成された粗動移動体52は、粗動ハウジング51の先端側であって径方向に向かって貫通形成されている円形孔51aのうち一方開口側(図1の右側)に、往復スライド可能に嵌挿されている。この粗動移動体52の粗動ハウジング51に対する径方向の移動量(粗動調整量)は、微動調整機構20の弾性変形部41における微動部48の微動調整量より大きい。
【0024】
そして、粗動移動体52の外周面の溝52aが、図1の上側(ボーリングホルダ1の基端側)を向くように配置され、かつ、粗動移動体52がその円柱軸周りに回転しないように回り止めされている。さらに、粗動移動体52の円柱状の基端部には、さらに円柱軸方向に延長されるように移動体側ラック部52bが一体的に形成されている。この移動体側ラック部52bは、ラック&ピニオン機構の一部を構成するものであり、後述するピニオン軸54に噛合している。つまり、ピニオン軸54が回転すると、粗動移動体52は図1の左右方向に移動する。
【0025】
さらに、粗動移動体52の先端側には、基端側に向かって突出する基準部52cが設けられている。この基準部52cのうちボーリングホルダ1の径方向外側面は、ボーリングホルダ1の径方向を法線方向とする平面状に形成されている。そして、基準部52cは、常に粗動ハウジング51の外部に露出する位置に位置している。この基準部52cは、粗動調整を行う際に用いるものであって、後述する粗動調整ユニット80に設けられる位置調整用基準部材83に当接させるための部材である。
【0026】
カウンタウエイト53は、粗動移動体52の偏心運動によって生じる不均一な荷重を吸収するためのものである。つまり、カウンタウエイト53の形状や位置は、粗動移動体52および刃具70による慣性モーメントと等価な慣性モーメントを有するように設定される。本実施形態においては、カウンタウエイト53は、全体としてほぼ円柱状に形成されており、粗動移動体52の質量とほぼ同程度の質量を有している。
【0027】
ここで、このカウンタウエイト53は、慣性モーメントを調整することができるような機構を有している。具体的には、カウンタウエイト53は、ウエイト本体53aと、調整用ウエイト53bとを備えている。調整用ウエイト53bは、例えば、ねじなどにより、ウエイト本体53aに対してカウンタウエイト53のスライド方向に相対移動可能に設けられている。つまり、調整用ウエイト53bのウエイト本体53aに対する位置を調整することで、例えば、刃具70の交換などにより、粗動移動体52および刃具70の慣性モーメントが変更された場合に、カウンタウエイト53全体としてこれに等価な慣性モーメントを有するようにできる。また、カウンタウエイト53は、円柱状に限られるものではなく、例えば、角柱状に形成されるようにしてもよい。
【0028】
このカウンタウエイト53は、粗動ハウジング51の先端側に貫通形成されている円形孔51aのうち他方開口側(図1の左側)に、往復スライド可能に嵌挿されている。そして、カウンタウエイト53は、その円柱軸周りに回転しないように粗動ハウジング51に回り止めされている。カウンタウエイト53の円柱状の基端部には、さらに円柱軸方向に延長されるようにウエイト側ラック部53cが一体的に形成されている。このウエイト側ラック部53cは、ラック&ピニオン機構の一部を構成するものであり、後述するピニオン軸54に噛合している。つまり、ピニオン軸54が回転すると、カウンタウエイト53は図1の左右方向に移動する。
【0029】
ピニオン軸54は、粗動ハウジング51の先端側に貫通形成されている円形孔51aのほぼ中央に、粗動ハウジング51の回転軸線回りに回転可能に支持されている。そして、ピニオン軸54は、移動体側ラック部52bとウエイト側ラック部53cに噛合している。そして、図3において、ピニオン軸54が左回りに回転すると、移動体側ラック部52bが図3の右側、すなわち粗動移動体52が径方向外側に移動し、かつ、ウエイト側ラック部53cが図3の左側、すなわちカウンタウエイト53が粗動移動体52の移動方向とは反対側の径方向外側に移動する。一方、ピニオン軸54が右回りに回転すると、移動体側ラック部52bが図3の左側、すなわち粗動移動体52が径方向内側に移動し、かつ、ウエイト側ラック部53cが図3の右側、すなわちカウンタウエイト53が粗動移動体52の移動方向とは反対側の径方向内側に移動する。つまり、ピニオン軸54が回転すると、粗動移動体52とカウンタウエイト53は、同期して、両者が反対方向に連動する。
【0030】
流体受給ポート55は、粗動ハウジング51の基端側の外周面に設けられている。この流体受給ポート55は、外部の粗動調整ユニット80に連結され、粗動調整ユニット80から供給される空気圧を供給される。さらに、流体受給ポート55は、第一ポートと第二ポートを有している。第一ポートは、後述する空気滞留空間51b側へ空気を供給するポートであって、第二ポートは、後述する空油圧変換部56側へ空気を供給するポートである。
【0031】
ここで、粗動ハウジング51には、粗動移動体52の基端(ボーリングホルダ1の径方向内側の端部)とカウンタウエイト53の基端(ボーリングホルダ1の径方向内側の端部)との間には、空気滞留空間51bが形成されている。この空気滞留空間51bと流体受給ポート55の第一ポートとの間には、両者を連通する空気流路51cが形成されている。つまり、空気滞留空間51bには、粗動調整ユニット80から供給される空気圧によって粗動移動体52とカウンタウエイト53が動作する。具体的には、粗動調整ユニット80から空気圧が供給されて空気滞留空間51bの空気圧が高まると、粗動移動体52は、径方向外側、すなわち刃具70の位置が回転軸線から遠ざかる方向へスライドする。粗動移動体52の動作と同時にかつ連動して、カウンタウエイト53が径方向外側へスライドする。また、空気滞留空間51bに供給された空気は、粗動ハウジング51の円形孔51aと粗動移動体52との間に形成されている僅かな隙間、および、当該円形孔51aとカウンタウエイト53との間に形成されている僅かな隙間から外部へ排出される。
【0032】
空油圧変換部56は、粗動ハウジング51の内部に形成され、後述する粗動調整ユニット80から流体受給ポート55の第二ポートを介して供給される空気圧を油圧に変換している。この空油圧変換部56は、粗動ハウジング51の内部に径方向に向かって形成された段付きシリンダ56aと、この段付きシリンダ56a内に径方向に往復スライド可能に収容されているピストン56bとを備えている。ピストン56bは、大径円盤部と小径ロッド部とを有している。段付きシリンダ56aのうちピストン56bの大径円盤部より図2の右側空間には、流体受給ポート55から空気圧が供給される。また、段付きシリンダ56aのうちピストン56bの小径ロッド部の図2の左側空間は、作動油空間を形成している。つまり、流体受給ポート55の第二ポートを介して供給される空気圧がピストン56bの大径円盤部に作用することで、ピストン56bが図2の左側へ移動し、これに伴い作動油空間内の油圧が増圧される。このようにして、空油圧変換部56は、空気圧を油圧に変換させると共に増圧している。
【0033】
クランプ部57は、L字型のレバーからなり、粗動ハウジング51内に支持されている。このクランプ部57は、粗動移動体52の外周面を押圧することにより、粗動ハウジング51に対する粗動移動体52の位置をクランプする。一方、クランプ部57は、粗動移動体52の外周面の押圧を解除することにより、粗動ハウジング51に対する粗動移動体52の位置をアンクランプする。つまり、クランプ部57は、粗動移動体52のクランプとアンクランプの切り替えレバーの役割を有する。なお、クランプ部57は、粗動移動体52のクランプとアンクランプの切り替えを行うのみであって、粗動移動体のスライド動作を行うものではない。つまり、クランプ部57によるクランプ/アンクランプの切り替え動作は、粗動移動体52のスライド動作とは独立して行われる。
【0034】
このクランプ部57は、ほぼL字型の一端側に位置し、粗動ハウジング51に形成された回転支持部51dにほぼ回転可能に支持された支持部57aと、L字型の他端側に位置し、粗動移動体52の外周面を押圧し複数の溝52aの何れかに係合する爪57b(押圧部)とを備えている。つまり、クランプ部57は、支持部57aを中心に揺動することで、爪57bが粗動移動体52の溝52aと係合する状態(クランプ状態)と、爪57bが粗動移動体52の溝52aと係合しない状態(アンクランプ状態)とを切り替え動作する。このクランプ部57は、粗動ハウジング51に配置された第一スプリング60によって、爪57bが粗動移動体52の溝52aと係合しない状態となる方向に付勢されている。
【0035】
さらに、クランプ部57のうち基端側(付勢力発生部58側)には、傾斜面を有する係合突起部57cが形成されている。この係合突起部57cは、図2の状態において、右側の突起量が左側の突起量に比べて小さくなるように形成されている。
【0036】
付勢力発生部58は、クランプ部57が粗動移動体52をクランプする方向(押圧する方向)への付勢力をクランプ部57に対して発生させる。この付勢力発生部58は、第二スプリング58aと、付勢部材58bとを備えている。第二スプリング58aは、粗動ハウジング51のうちボーリングホルダ1の回転軸方向のほぼ中央付近に、径方向に向かって形成された円形孔51eの一端に支持されている。
【0037】
この第二スプリング58aの他端に付勢部材58bが当接している。付勢部材58bは、ほぼ有底筒状をなし、その筒底面に第二スプリング58aが当接し付勢している。一方、付勢部材58bのうち第二スプリング58aと反対側には、作動油空間51fが形成されている。この作動油空間51fは、空油圧変換部56の作動油空間(段付きシリンダ56aのピストン56bの小径ロッド部より図2の左側空間)から、連通路51gを介して供給される作動油が収容される。つまり、付勢部材58bは、第二スプリング58aの付勢力と作動油の圧力とが相互に対抗するように力を受け、両者の力に応じてスライド方向の位置が決定される。
【0038】
この付勢部材58bの外周面には、さらに、図2の左側に向かって縮径するテーパ部58cが形成されている。このテーパ部58cは、付勢部材58bの周方向において全範囲に形成される必要はなく、所定の位相範囲のみに形成することで足りる。このテーパ部58cには、クランプ部57の係合突起部57cの傾斜面が常に当接している。つまり、テーパ部58cとクランプ部57の係合突起部57cとは、くさび係合している。そして、付勢部材58bのスライド位置に応じて、クランプ部57の係合突起部57cの傾斜面が当接する位置が異なる。つまり、付勢部材58bのスライド位置に応じて、クランプ部57が粗動移動体52に対してクランプする方向への付勢力が調整される。
【0039】
(微動調整機構による工具径の微動調整方法)
次に、微動調整機構による工具径の微動調整方法について、図1および図4を参照してより詳細に説明する。主軸2側から制御された所定の圧力の空気が供給されるとする。そうすると、この空気圧に応じて空油圧変換部22の第一ピストン24が、ボーリングホルダ1の先端側に向かってスライドする。第一ピストン24の移動に伴って、第二ピストン27も、ボーリングホルダ1の先端側に向かってスライドする。この第二ピストン27の移動によって、作動油空間30に充填される作動油の圧力が高まる。作動油の圧力が高まることで、連通路31および油通路46を介して、弾性変形部41の油圧空間45の油圧が高くなる。その結果、弾性変形部41における先端側の微動部48が、図4に示すように、左側へシフトする。
【0040】
このようにして弾性変形部41の微動部48が基端ボディ部21に対して径方向に微動することにより、弾性変形部41の微動部48側に取り付けられている粗動調整機構50全体が、基端ボディ部21に対して径方向に微動する。つまり、粗動移動体52に取り付けられている刃具70の回転軸線に対する位置、すなわち工具径は、微動調整機構20の動作によって微動調整される。
【0041】
微動調整量を変更する場合には、主軸2側から供給される空気の圧力を調整することにより行う。ここで、微動調整機構20は、空油圧変換部22により主軸2側から供給する空気圧を増幅している。従って、小さな空気圧によって、弾性変形部41の弾性変形を可能とする。また、微動調整量をゼロに戻す場合には、主軸2側から供給する空気圧をゼロにすればよい。この微動調整機構20による微動調整は、弾性変形部41の弾性変形によるものであるため、この微動調整量はそれほど大きなものではない。逆に言うと、微動調整機構20は、非常に微小な調整を高精度に行うことができる。
【0042】
(粗動調整機構による工具径の粗調整方法)
次に、粗動調整機構50の動作について、図5図10を参照して説明する。粗動調整機構50の動作に際して、粗動調整ユニット80を用いるため、まずは、粗動調整ユニット80について説明する。
【0043】
粗動調整ユニット80は、図5に示すように、流体供給装置81と、流体供給スライドポート82と、位置調整用基準部材83とを備える。流体供給装置81は、空気を供給することができ、かつ、供給する空気圧を制御可能な装置である。ここで、本実施形態においては、粗動調整ユニット80は、後述する工具径調整装置107に設けられている。
【0044】
流体供給スライドポート82は、粗動調整機構50の流体受給ポート55に連結することができ、流体供給装置81から供給される空気を流体受給ポート55へ供給するポートである。この流体供給スライドポート82は、流体供給装置81に対して、図5の左右方向にスライド可能に設けられている。さらに、流体供給スライドポート82は、流体受給ポート55の第一ポートに対応した第一連結ポートと、流体受給ポート55の第二ポートに対応した第二連結ポートとを備えている。そして、流体供給装置81は、流体供給スライドポート82の第一連結ポートから空気圧を供給するか、第二連結ポートから空気圧を供給するかの切り替えを行うことができる。位置調整用基準部材83は、流体供給装置81に固定されており、粗動移動体52に設けられた基準部52cに当接可能に設けられている。
【0045】
次に、粗動調整機構50による工具径の調整方法について説明する。まず、図5に示すように、ボーリングホルダ1と粗動調整ユニット80とを相対的に移動させて、粗動調整ユニット80の流体供給スライドポート82と、粗動調整機構50の流体受給ポート55とを連結させる(連結工程)。具体的には、流体供給スライドポート82の第一連結ポートを流体受給ポート55の第一ポートに連結し、流体供給スライドポート82の第二連結ポートを流体受給ポート55の第二ポートに連結する。このとき、粗動調整ユニット80の流体供給スライドポート82は、図5の左側に最もスライドした状態としている。さらに、この状態において、粗動移動体52の基準部52cは、粗動調整ユニット80の位置調整用基準部材83に対向するように位置している。
【0046】
続いて、図6に示すように、流体供給装置81が、流体供給スライドポート82の第二連結ポートおよび流体受給ポート55の第二ポートを介して、空油圧変換部56の段付きシリンダ56aのうちピストン56bの大径円盤部の右側空間に空気圧を供給する。そうすると、空油圧変換部56のピストン56bが図6の左側へ移動し、段付きシリンダ56a内のピストン56bの小径ロッド部より図6の左側空間および作動油空間51fの油圧が高まる。この作動油の圧力の高騰により、付勢部材58bが、第二スプリング58aの付勢力に抗して、図6の右側へスライドする。そうすると、付勢部材58bの外周面に形成されているテーパ部58cの位置が、図6の右側へスライドする。これに伴って、クランプ部57の係合突起部57cとテーパ部58cとの接触可能位置が図6の上方に移動する。そのため、第一スプリング60の付勢力により、クランプ部57は、支持部57aを中心として、図6の反時計回りに揺動し、爪57bが粗動移動体52の溝52aから係合を離脱する。つまり、粗動移動体52は、粗動ハウジング51に対してアンクランプされる(アンクランプ工程)。そして、流体供給装置81は、流体供給スライドポート82の第二連結ポート側へ供給している空気圧を一定の状態を維持しておく。
【0047】
続いて、図7に示すように、流体供給装置81が、流体供給スライドポート82の第一連結ポートおよび流体受給ポート55の第一ポートを介して、空気流路51cに空気圧を供給する。そうすると、空気滞留空間51bの空気圧が高まり、空気滞留空間51bの体積を拡大するような力を発生する。つまり、空気滞留空間51bの空気圧の高騰により、粗動移動体52およびカウンタウエイト53が離れる方向、すなわち、径方向外側へスライドする。このとき、粗動移動体52、カウンタウエイト53およびピニオン軸54は、ラック&ピニオン機構を構成している。従って、粗動移動体52の径方向外側へのスライド動作と、カウンタウエイト53の径方向外側へのスライド動作とは、同期しかつ連動している。さらに、粗動移動体52のスライド量とカウンタウエイト53のスライド量とは同一である。
【0048】
このように、粗動移動体52が径方向外側へスライドすることに伴って、粗動移動体52の基準部52cが、粗動調整ユニット80の位置調整用基準部材83に当接する(当接工程)。このとき、刃具70の位置は、ボーリングホルダの回転軸線から遠ざかる方向の所定位置(例えば、最も遠ざかる位置)に移動している。つまり、流体供給スライドポート82が流体供給装置81に対して図7の最も左側に位置する状態であって、流体供給スライドポート82が流体受給ポート55に連結された状態であって、粗動移動体52の基準部52cが位置調整用基準部材83に当接した状態において、刃具70の回転軸線に対する位置、すなわち工具径は、既知である。この状態を基準状態とする。
【0049】
続いて、図8に示すように、基準状態から、ボーリングホルダ1と位置調整用基準部材83との相対的な位置を近接する方向に変更する。ここで、基準状態における工具径は既知であって、目標工具径は把握できている。そこで、目標工具径と基準状態における工具径との差分だけ、ボーリングホルダ1を位置調整用基準部材83に近接する方向へ相対的に移動させる。このようにして、回転軸線に対する刃具70の位置、すなわち工具径を粗調整する(調整工程)。
【0050】
この調整工程において、回転軸線に対する刃具70の位置を調整する際に、刃具70の位置が回転軸線から遠ざかる方向へ粗動移動体52を粗動ハウジング51に対してスライドさせるために供給された空気は、粗動移動体52およびカウンタウエイト53と粗動ハウジング51に形成された円形孔51aとの僅かな隙間から外部へ排出している。
【0051】
続いて、図9および図10に示すように、流体供給装置81が、流体供給スライドポート82の第二連結ポートおよび流体受給ポート55の第二ポートを介して供給していた空気圧を低下させる。そうすると、空油圧変換部56のピストン56bが図9の右側へ移動し、段付きシリンダ56a内のピストン56bの小径ロッド部より図9の左側空間および作動油空間51fの油圧が低下する。この作動油の圧力の低下により、付勢部材58bが、第二スプリング58aの付勢力により、図9の左側へスライドする。そうすると、付勢部材58bの外周面に形成されているテーパ部58cの位置が、図9の左側へスライドする。これに伴って、クランプ部57の係合突起部57cとテーパ部58cとの接触可能位置が図9の下方に移動する。そのため、第一スプリング60の付勢力に抗して、クランプ部57は、支持部57aを中心として、図9の時計回りに揺動し、爪57bが粗動移動体52の外周面を押圧する。このとき、爪57bは、粗動移動体52の溝52aを押圧しながら係合する。つまり、粗動移動体52は、粗動ハウジング51に対してクランプされる(クランプ工程)。
【0052】
(工作機械の構成)
次に、上述したボーリングホルダ1および粗動調整ユニット80を搭載した工作機械の例としてのマシニングセンタ100について図11を参照して説明する。なお、本実施形態で説明するマシニングセンタ100は、一例であって、本発明は、他の横型マシニングセンタや立型マシニングセンタにも適用可能である。
【0053】
図11に示すように、マシニングセンタ100は、横型マシニングセンタを例示している。マシニングセンタ100は、ベッド101と、主軸装置102と、コラム103と、テーブル104と、工具マガジン105と、工具交換装置106と、主制御装置(図示せず)と、工具径調整装置107と、搬送装置108と、搬送制御装置109とを備えて構成される。
【0054】
主軸装置102は、上述したように工具を装着可能な主軸2を備えている。この主軸装置102は、ベッド101に固定されているコラム103に対してX軸方向およびY軸方向に移動可能に設けられている。テーブル104は、工作物を搭載し、ベッド101上に配置され、ベッド101に対してZ軸方向に移動可能に設けられている。
【0055】
工具マガジン105は、複数の工具を収容している。工具マガジン105が収容する工具には、上述した工具径を調整可能な複数種類のボーリングホルダ1、および、工具径を調整不可の工具(例えば、エンドミルなど)が含まれる。また、工具マガジン105は、後述する工具交換装置106により工具交換を行う工具交換割出位置P1と、工具径調整を行うために搬送装置108との受け渡しを行う工具径調整割出位置P2とをそれぞれ異なる位置に設定している。図12に示すように、工具交換割出位置P1は、工具マガジン105のうち工作機械の正面側に位置し、工具径調整割出位置P2は、工具マガジン105のうち工作機械の奥側に位置する。そして、工具マガジン105のポケットは、工具交換割出位置P1および工具径調整割出位置P2のそれぞれに割出可能とされている。
【0056】
工具交換装置106は、工具マガジン105のうち工具交換割出位置P1に位置する工具と主軸装置102に装着されている工具とを交換する装置である。従って、工具交換装置106は、主軸装置102と工具マガジン105との間に設けられている。本実施形態においては、工具交換装置106により交換される次工具は、工具マガジン105に保管されている工具を90°旋回させて、次工具交換位置に移動される。
【0057】
工具径調整装置107は、上述した粗動調整ユニット80を備えており、ボーリングホルダ1の粗動調整を行う。工具径調整装置107は、工具マガジン105から取り出されたボーリングホルダ1の工具径を粗動調整すると共に、主軸装置102の動作および工具交換装置106の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列してボーリングホルダ1の工具径の粗動調整動作を行うことが可能である。工具径調整装置107の詳細構成は、後述する。
【0058】
搬送装置108は、工具マガジンのうち工具径調整割出位置P2に位置するボーリングホルダ1を工具マガジン105から取り出して工具径調整装置107へ搬送すると共に、工具径調整装置107により工具径を調整したボーリングホルダ1を工具径調整装置107から工具マガジン105に戻す。搬送制御装置109は、搬送装置108に一体的に設けられている。搬送装置108の詳細構成および搬送制御装置109による処理は、後述する。
【0059】
(工具径調整装置の詳細構成および動作)
次に、工具径調整装置107の詳細構成について、図13図15を参照して説明する。工具径調整装置107は、基台210と、工具回転支持装置220と、工具回転用モータ230と、図5図9を用いて説明した粗動調整ユニット80と、工具径計測装置240と、水平スライド装置250と、高さ調整装置260とを備えて構成される。
【0060】
基台210は、図14および図15に示すように、床上に固定され、工具マガジン105のうち工作機械の奥側に配置されている。工具回転支持装置220は、図15に示すように、基台210に固定されている。この工具回転支持装置220には、ボーリングホルダ1のテーパシャンク部11を挿入して位置決め可能なテーパ穴が上面に形成されている。さらに、工具回転支持装置220は、基台210に対して回転可能に支持されている。この工具回転支持装置220の回転軸は、床面に垂直な方向(鉛直方向)となるように設けられている。つまり、工具回転支持装置220には、図15に示すように、ボーリングホルダ1を上方から下方に向かって配置することになる。工具回転用モータ230は、工具回転支持装置220の下方に設けられており、工具回転支持装置220を鉛直軸回りに回転駆動させる。
【0061】
粗動調整ユニット80は、図13および図15に示すように、基台210の上面に配置され、工具回転支持装置220の上面に対して水平方向(Z軸方向)に対向するように配置されている。粗動調整ユニット80の詳細は、上述したとおりであるので、ここでは説明を省略する。工具径計測装置240は、工具回転支持装置220に配置されているボーリングホルダ1の工具径を計測する装置である。この工具径計測装置240は、粗動調整ユニット80と一体的に設けられており、粗動調整ユニット80の僅かに上方に設けられている。
【0062】
水平スライド装置250は、図15に示すように、基台210の上面に設けられ、粗動調整ユニット80および工具径計測装置240を、基台210に対して、図15の左右方向(Z軸方向)にスライド可能としている。このスライド駆動は、モータにより行う。高さ調整装置260は、図15に示すように、水平スライド装置250に設けられ、粗動調整ユニット80および工具径計測装置240の鉛直方向高さを調整可能としている。つまり、ボーリングホルダ1の種類によって工具軸方向長さが異なるため、種々のボーリングホルダ1に適用可能となるようにするための機構である。
【0063】
工具径調整装置107の動作について説明する。図15に示すように、搬送装置108により搬送されてきたボーリングホルダ1を工具回転支持装置220にて支持する。続いて、工具回転用モータ230を駆動して、ボーリングホルダ1の刃具70が粗動調整ユニット80側を向くように、ボーリングホルダ1を回転させる。続いて、水平スライド装置250を駆動して、粗動調整ユニット80をボーリングホルダ1に当接させて、工具径の粗動調整を行う。続いて、工具径計測装置240により、ボーリングホルダ1の工具径を計測する。
【0064】
ここで、工具径調整装置107にボーリングホルダ1が配置される状態においては、ボーリングホルダ1の工具軸方向が鉛直方向となるようにしている。これにより、人間が新たなボーリングホルダ1を工具マガジン105に投入する場合に、工具径調整装置107に配置することで、搬送装置108を動作させることで、工具マガジン105に投入することができる。特に、工具径を調整可能なボーリングホルダ1の質量は大きいものがある。そのため、大質量のボーリングホルダ1を工具マガジン105に直接配置するために工具軸方向を水平方向に搬送し装着することは容易ではない。これに対して、大質量のボーリングホルダ1であっても、工具軸方向を鉛直方向に搬送し装着することは比較的容易である。つまり、大質量のボーリングホルダ1を工具マガジン105に投入する場合に、当該ボーリングホルダ1を工具径調整装置107に介して工具マガジン105に投入することにより、容易となる。
【0065】
(搬送装置の詳細構成および動作)
次に、搬送装置108の詳細構成について、図13図14および図16を参照して説明する。搬送装置108は、基台310と、旋回テーブル320と、テーブル旋回用モータ330と、テーブル昇降シリンダ340と、ホルダ把持アーム350と、アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ360と、ホルダ抜差用直動シリンダ370とを備えて構成される。
【0066】
基台310は、図14および図16に示すように、床上に固定され、工具マガジン105と工具径調整装置107との間に配置されている。旋回テーブル320は、基台310に対して鉛直方向(Y軸方向)の軸回りに回転可能に、かつ、基台310に対して鉛直方向に昇降可能に支持されている。テーブル旋回用モータ330は、旋回テーブル320を基台310に対して鉛直軸回りに回転駆動する。テーブル昇降シリンダ340は、旋回テーブル320を基台310に対して鉛直方向に昇降駆動する。
【0067】
ホルダ把持アーム350は、旋回テーブル320の上に支持され、ボーリングホルダ1を把持することができる。このホルダ把持アーム350は、図13の状態において、旋回テーブル320に対して、Z軸方向に移動可能であると共に、Z軸回りに回転可能であり、さらにX軸方向に移動可能である。つまり、ホルダ把持アーム350は、基台310に対して、Y軸方向(鉛直方向)に移動可能であり、Y軸(鉛直軸)回りに回転可能であり、図13の状態においてZ軸方向に移動可能であり、Z軸回りに回転可能であり、X軸方向に移動可能である。
【0068】
アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ360は、旋回テーブル320の上に設けられ、旋回テーブル320に対して、ホルダ把持アーム350を図13の状態においてZ軸方向に駆動し、かつ、Z軸回りに回転駆動する。つまり、アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ360は、図13の状態においてZ軸方向に移動することにより、工具マガジン105の工具径調整割出位置P2(図12に示す)に位置決めされているボーリングホルダ1をホルダ把持アーム350によって把持させると共に、その逆の動作を行う。さらに、アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ360は、図15に示すように、Z軸回りに回転することにより、把持しているボーリングホルダ1の工具軸方向を水平方向と鉛直方向とで変換する。
【0069】
ホルダ抜差用直動シリンダ370は、旋回テーブル320の上に設けられ、旋回テーブル320に対して、ホルダ把持アーム350を図13の状態においてX軸方向に駆動する。つまり、ホルダ抜差用直動シリンダ370は、図13において、工具マガジン105の工具径調整割出位置P2(図12に示す)に位置決めされているボーリングホルダ1をホルダ把持アーム350によって抜き取ると共に、その逆の動作を行う。
【0070】
搬送装置108の動作について説明する。図13の「No.1」の矢印にて示すように、図13の状態において、アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ360によりホルダ把持アーム350をZ軸方向に移動させる。この動作により、ホルダ把持アーム350が、工具マガジン105の工具径調整割出位置P2に収容されているボーリングホルダ1を把持する。続いて、図13の「No.2」の矢印にて示すように、ホルダ抜差用直動シリンダ370により、ホルダ把持アーム350をX軸方向に移動させる。この動作により、ホルダ把持アーム350が、工具マガジン105の工具径調整割出位置P2からボーリングホルダ1を抜き出す。
【0071】
続いて、図13の「No.3」の矢印にて示すように、図13の状態において、テーブル旋回用モータ330により、旋回テーブル320を90°旋回させる。この動作により、ホルダ把持アーム350により把持されているボーリングホルダ1が、工具径調整装置107の工具回転支持装置220の上方に移動する。ただし、この時点においては、ボーリングホルダ1の工具軸方向は水平方向のままである。
【0072】
続いて、図15の「No.4」の矢印にて示すように、アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ360により、ホルダ把持アーム350を90°回転させる。この動作により、ホルダ把持アーム350により把持されているボーリングホルダ1の工具軸方向が鉛直方向となり、工具径調整装置107の工具回転支持装置220の中心軸と同軸上に一致する状態となる。
【0073】
続いて、図15の「No.5」の矢印にて示すように、テーブル昇降シリンダ340により、旋回テーブル320を下降させる。この動作により、ホルダ把持アーム350により把持されているボーリングホルダ1が、工具径調整装置107の工具回転支持装置220に支持される。ボーリングホルダ1を工具径調整装置107から工具マガジン105の空ポケットへ搬送する場合には、上記の動作の逆の順序で行う。
【0074】
(工作機械の処理)
次に、工具径調整装置107を備える工作機械の処理について、図17図22を参照して説明する。ここで、図17図21に示すプログラムは、工作機械の主制御装置にて実行し、図22に示すプログラムは搬送制御装置109および工具径調整装置にて実行する。
【0075】
図17に示すように、工作機械の主制御装置において、加工プログラムを実行開始の初期であるか(「加工開始」と称する)、または、加工プログラムが工具準備待ちとして待機中(「加工プログラム待機中」と称する)であるか否かを判定する(ステップS1)。何れでもない場合には、加工プログラムの途中段階であって、加工プログラムの待機中でないことから、加工プログラムが終了したか否かを判定する(ステップS6)。加工プログラムが終了していなければ、ステップS1に戻り、加工プログラムが終了していれば、メインプログラムを終了する。
【0076】
一方、ステップS1において、加工開始か加工プログラム待機中の何れかの場合には、加工プログラムの現時点から最初の工具情報を読み込む(ステップS2)。続いて、読み込んだ工具について、ジョブセットプログラムを実行する(ステップS3)。ジョブセットプログラムは、詳細には後述するが、工具径の粗動調整が必要な工具に対して、工具径調整装置により工具径の調整を行うためのジョブとして記憶する処理である。続いて、最初の工具についてジョブセットプログラムの実行が終了すると、加工プログラムの次の工具情報を読み込む(ステップS4)。続いて、読み込んだ工具について、ジョブセットプログラムを実行する(ステップS5)。次の工具についてジョブセットプログラムの実行が終了すると、加工プログラムが終了したか否かを判定し(ステップS6)、終了していなければステップS1に戻り、終了していればメインプログラムを終了する。
【0077】
工作機械の主制御装置によるサブプログラムの処理について、図18を参照して説明する。サブプログラムの処理は、メインプログラムの処理と並列に実行される。まず、加工プログラムが実行中であるか否かを判定する(S11)。実行中である場合には、ジョブセットプログラムによって実行した工具の次の加工プログラムの工具を読み込む(ステップS12)。続いて、読み込んだ工具について、ジョブセットプログラムを実行する(ステップS13)。
【0078】
工作機械の主制御装置によるジョブセットプログラムの処理について、図19を参照して説明する。ジョブセットプログラムを実行する対象の工具について、指令工具径と現在当該工具のID情報として記憶している工具径(現在工具径)とが一致するか否かを判定する(ステップS21)。一致している場合には、ジョブセットプログラムの処理を終了する。
【0079】
一方、一致していない場合には、指令工具径と現在工具径との径差が、微動調整機構20による微動調整の可能な範囲か否かを判定する(ステップS22)。径差が微動調整可能範囲であれば、ジョブセットプログラムを終了する。つまり、指令工具径が現在工具径に一致する場合、もしくは、指令工具径と現在工具径との径差が微動調整可能範囲であれば、工具径調整装置107による工具径の粗動調整を行う必要がないため、工具径粗動調整ジョブをセットしない。そして、ステップS22において、径差が微動調整可能範囲でない場合には、工具径粗動調整ジョブをセットし、ジョブセットプログラムを終了する。
【0080】
工作機械の主制御装置による工具取出プログラムの処理について、図20を参照して説明する。工具取出プログラムは、工具径粗動調整の対象のボーリングホルダ1を、搬送装置108により、工具径調整装置107に移動する処理である。具体的には、ジョブセットプログラムによりセットされた工具径粗動調整ジョブが有るか否かを判定する(ステップS31)。ジョブがなければ、当該処理はリターンされる。一方、ジョブがあれば、工具交換装置106による工具マガジン105の制御中であるか否かを判定する(ステップS32)。制御中の場合とは、工具交換装置106により現在工具交換中である状態や、交換する次工具を呼び出して工具マガジン105を動作させている状態が含まれる。工具交換装置106により制御中の場合には、処理をリターンする。
【0081】
一方、工具交換装置106により制御中でない場合には、工具交換装置106による工具交換を実行するまでに、予め設定された時間以上存在するか否かを判定する(ステップS33)。設定時間以上存在しない場合には、処理をリターンする。一方、工具交換を実行するまでに設定時間以上存在する場合には、工具径調整装置107による工具径粗動調整が可能か否かを判定する(ステップS34)。つまり、現在、工具径調整装置107により別のボーリングホルダ1の工具径の粗動調整を行っているか否かを判定する。そして、工具径調整装置107により工具径粗動調整が不可であれば、処理をリターンする。
【0082】
一方、工具径調整装置107により工具径粗動調整が可能である場合には次に進む。つまり、工具交換装置106により工具マガジン105を制御中でなく、工具交換の実行までに設定時間以上存在しており、工具径調整装置107により工具径粗動調整が可能であれば、工具マガジン105における該当ボーリングホルダ1のポケットを工具径調整割出位置P2へ移動開始する(ステップS35)。工具マガジン105の該当ボーリングホルダ1のポケットの工具径調整割出位置P2への移動は、加工プログラムに実質的に影響を与えないように行っている。
【0083】
続いて、工具マガジン105における該当ボーリングホルダ1のポケットを工具径調整割出位置P2へ移動完了したか否かを判定し(ステップS36)、完了するまで継続する。続いて、搬送制御装置109および工具径調整装置107に対して、ボーリングホルダ1を工具マガジン105の工具径調整割出位置P2から取り出す要求を出力する(ステップS37)。そして、搬送装置108により、ボーリングホルダ1の工具マガジン105からの取出完了したか否かを判定し(ステップS38)、取出完了すると処理をリターンする。
【0084】
工作機械の主制御装置による工具戻しプログラムの処理について、図21を参照して説明する。工具戻しプログラムは、工具径調整装置107により工具径の粗動調整を行ったボーリングホルダ1を、搬送装置108により、工具マガジン105に戻す処理である。具体的には、搬送制御装置109によって、工具マガジン105に空ポケット呼出要求があるか否かを判定する(ステップS41)。呼出要求がなければ処理をリターンする。呼出要求があれば、工具交換装置106による工具マガジン105の制御中であるか否かを判定する(ステップS42)。制御中の場合とは、工具交換装置106により現在工具交換中である状態や、交換する次工具を呼び出して工具マガジン105を動作させている状態が含まれる。工具交換装置106により制御中の場合には、処理をリターンする。
【0085】
一方、工具交換装置106により制御中でない場合には、工具交換装置106による工具交換を実行するまでに、予め設定された時間以上存在するか否かを判定する(ステップS43)。設定時間以上存在しない場合には、処理をリターンする。一方、工具交換を実行するまでに設定時間以上存在する場合には、工具マガジン105の空ポケットを工具径調整割出位置P2へ移動を開始する(ステップS44)。つまり、工具マガジン105の空ポケットの工具径調整割出位置P2への移動は、加工プログラムに実質的に影響を与えないように行っている。
【0086】
続いて、工具マガジン105における空ポケットを工具径調整割出位置P2へ移動完了したか否かを判定し(ステップS45)、完了するまで継続する。続いて、空ポケットを工具径調整割出位置P2へ移動完了すると、搬送制御装置109および工具径調整装置107に対して、空ポケットの移動完了信号を出力する(ステップS46)。そして、搬送装置108により、工具径の粗動調整済みのボーリングホルダ1を、工具マガジン105へ戻し完了したか否かを判定する(ステップS47)。戻し完了すると、当該ボーリングホルダ1の工具ID情報を更新する(ステップS48)。具体的には、現在の工具径を記憶すると共に、微動調整量を記憶する。そして、処理をリターンする。
【0087】
次に、搬送制御装置109の処理および工具径調整装置107による工具径粗動調整の処理について、図22を参照して説明する。工具取出プログラムのステップS37において、ボーリングホルダ1を工具マガジン105の工具径調整割出位置P2から取出要求があるか否かを判定する(ステップS51)。取出要求がなければ、処理をリターンする。
【0088】
ボーリングホルダ1の取出要求があれば、工具マガジン105の工具径調整割出位置P2からボーリングホルダ1の取出動作を実行する(ステップS52)。つまり、搬送装置108により、図13図16に示す「No.1」から「No.5」の昇順に動作させる。続いて、工具径調整装置107により、ボーリングホルダ1の工具径の粗動調整動作を行う(ステップS53)。続いて、工具径調整装置107により、工具径の粗動調整済みのボーリングホルダ1の工具径を工具径計測装置240により計測する(ステップS54)。
【0089】
続いて、指令工具径と計測したボーリングホルダ1の工具径との差である微動調整量を算出する(ステップS55)。続いて、工作機械の主制御装置に対して、工具マガジン105の工具径調整割出位置P2に空ポケットの呼出要求を出力する(ステップS56)。続いて、工具マガジン105の空ポケットが工具径調整割出位置P2に移動完了したか否かを判定し(ステップS57)、移動完了するまで継続する。この移動完了の判定は、工具戻しプログラムのステップS46の移動完了信号が出力されるか否かにより行う。
【0090】
空ポケットが工具径調整割出位置P2に移動完了した場合には、搬送装置108により、ボーリングホルダ1を工具マガジン105の工具径調整割出位置P2に戻す動作を開始する(ステップS58)。つまり、搬送装置108により、図13図16に示す「No.5」から「No.1」の降順に動作させる。続いて、ボーリングホルダ1の工具マガジン105への戻し動作が完了した否かを判定し(ステップS59)、戻し動作が完了するまで継続する。そして、工作機械の主制御装置に対して、戻し完了信号を出力する(ステップS60)。
【0091】
以上説明した工作機械によれば、以下の効果を奏する。工具マガジン105において、工具径調整割出位置P2を工具交換割出位置P1と異なる位置としている。さらに、工具径調整装置107は、主軸装置102の動作および工具交換装置106の動作を行うための加工プログラムの実行に対して並列してボーリングホルダ1の工具径の粗動調整動作を行うことができる。さらに、搬送制御装置109は、工具交換装置106による工具交換処理の実行中であるか否かを判定し、工具交換処理の実行中でない場合に、搬送装置108によるボーリングホルダ1の工具マガジン105からの取出動作および工具径を調整したボーリングホルダ1の戻し動作を行う。これらによって、工具径調整装置107の動作、および、搬送装置108の動作は、加工プログラムの処理に影響を与えることなく実行できる。従って、ボーリングホルダ1の工具径を調整することがあっても、加工サイクルタイムが長くなることを抑制できる。
【0092】
さらに、工具交換処理の実行開始までの時間が設定時間以上ある場合に、搬送装置108による動作が行われるようにしている。従って、搬送装置108により、ボーリングホルダ1の工具マガジン105からの取出動作および工具径を調整したボーリングホルダ1の戻し動作を行っている最中に、工具交換装置106により工具交換を行う状態となることを抑制できる。つまり、搬送装置108による動作が、工具交換装置106による工具交換動作に影響を与えることなく実行できる。その結果、加工サイクルタイムに影響を与える工具交換時間が長くなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0093】
1:ボーリングホルダ、 2:主軸
10:被保持部、 20:微動調整機構、 50:粗動調整機構、 70:刃具
80:粗動調整ユニット
100:マシニングセンタ、 101:ベッド、 102:主軸装置、 103:コラム
104:テーブル、 105:工具マガジン、 106:工具交換装置
107:工具径調整装置、 108:搬送装置、 109:搬送制御装置
210:基台、 220:工具回転支持装置、 230:工具回転用モータ
240:工具径計測装置、 250:水平スライド装置、 260:高さ調整装置
310:基台、 320:旋回テーブル、 330:テーブル旋回用モータ
340:テーブル昇降シリンダ、 350:ホルダ把持アーム
360:アーム直動用兼工具軸方向変換用アクチュエータ
370:ホルダ抜差用直動シリンダ
P1:工具交換割出位置、 P2:工具径調整割出位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
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図20
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図22