特許第5703900号(P5703900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5703900
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】塵埃の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20150402BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20150402BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   G01N1/02 D
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-75618(P2011-75618)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-208080(P2012-208080A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 広美
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−138285(JP,A)
【文献】 実開昭62−058735(JP,U)
【文献】 特開2005−065624(JP,A)
【文献】 実開昭62−073244(JP,U)
【文献】 特開平11−248655(JP,A)
【文献】 実開昭55−000010(JP,U)
【文献】 特開2005−009919(JP,A)
【文献】 特表平07−509779(JP,A)
【文献】 米国特許第05356751(US,A)
【文献】 特開2003−035654(JP,A)
【文献】 特開2009−036716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
B32B 27/00
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造環境に存在する微小塵埃を捕集し、その塵埃の評価を行う方法であって、
偏光機能を有している基材シートと、微小塵埃を十分な固定力で且つ再剥離できる保持力で付着させる弱粘着性を有し、前記基材シート上に固定された粘着シート層と、前記粘着シートの表面を清浄に保つために該粘着シート層を覆って設けられた非粘着性の保護シートとを備えた塵埃モニター用キットを用い、
前記キットを、前記保護シートを剥ぎ取って前記粘着シート層の表面を露出させた状態で前記環境内に設置することにより、前記環境内の微小塵埃を前記粘着シート層に付着させて捕集し、その捕集塵埃を前記粘着シート層に付着したまま観察するか、或いは前記粘着シート層から再剥離して各種分析を行い、
前記捕集塵埃の前記粘着シート層に付着したままでの観察及び再剥離を、前記捕集塵埃を視認する光路に偏光部材を介在させて行うことにより、前記観察及び再剥離を行う際の視認性を高めることを特徴とする塵埃の評価方法。
【請求項2】
前記基材シートが着色された塵埃モニター用キットを用い、前記捕集塵埃の前記粘着シート層に付着したままでの観察及び再剥離を行う際の視認性を高めることを特徴とする請求項1に記載の塵埃の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃モニター用キット及びそれを用いた評価方法に関するもので、環境内に存在する微小塵埃の捕集に際し、通常の塵埃捕集装置やパーティクルモニター装置の設置が困難な狭い空間における塵埃の捕集を比較的安価にかつ容易に行い、塵埃を効率よく評価しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
例えば製造環境内に存在する塵埃は、製品に付着して汚染の原因となるほか、製造装置の動作不良や不具合をも引き起こすなど、品質管理における大きな問題になっている。
【0003】
特に、シリコンウエハー、IC及びLSI等の半導体製品、HD等の電子部品、精密機械製品、光学製品、液晶表示装置等は、極く微小な異物が極く微量付着した場合でも障害が起こるため、清浄度の高いクリーンルーム内での製造や保管が必須である。
【0004】
また、上記分野以外の大部分の製品、例えば包装材料、産業資材等は必ずしもクリーンルームレベルの清浄環境で製造されているわけではないが、そのような製品であっても、異物の付着は品質に悪影響を及ぼすため、微小な異物の付着も年々問題視される傾向にある。しかし、全工業製品の全工程をクリーンルーム化するということは現実的でなく、実用上は、コストとの兼ね合いを見ながら、製造・保管工程で特に塵埃による汚染が問題となる部分を限定的にクリーンブースとしたり、パーティション等を設置したりすることが一般的である。
【0005】
このような汚染防止対策を効率的に行うには、環境内に存在する塵埃の数や濃度といった「定量的」な事項以上に、どのような種類の塵埃が存在するかという「定性的」な事項を工程の各部分と結びつけて把握する必要がある。
【0006】
特に、環境の汚染源を特定するためには、塵埃の形状や組成をも含めた分析が重要で、そのために様々な評価方法が講じられている。
【0007】
一方,汚染物質の評価方法には、汚染物質の種類(有機溶剤や窒素酸化物等の揮発性物質、アンモニア等のイオン性物質、微生物、塵埃など)、評価の目的、環境の大きさなどによって多岐にわたり、一部JISで詳細に評価法が定められているものもあるが、塵埃のような固形の微小物の定性についての明確な規定はなく、大まかには、(1)その場で塵埃の捕集と評価を行う方法、(2)塵埃を一定期間捕集した後に、その捕集塵埃を評価する方法、の2つがある。
【0008】
(1)の方法は、塵埃の捕集部分と計測部分が一体になっているもので、定量的にはパーティクルカウンターとして普及している方法であるが、定性的には、計測部分に蛍光X線やラマン分光など高価なものが用いられることが多く、一般的ではない。
【0009】
(2)の方法は、フィルターや粘着シートにより塵埃を捕集した後に、顕微鏡観察や各種分析を行なう方法であり、実際の評価の主流となっている。この方法は、捕集後に必要に応じて様々な評価手段をとり得るという利点を有している。(特許文献1、2参照)
しかし、フィルターによる塵埃の捕集は、吸引ポンプは必要であり、その設置に必要な空間が無い場合は利用できない。また環境内の複数箇所において塵埃を捕集する場合は、その個所毎に捕集システムを設置しなければならないため、相応の費用がかかる。一方、粘着シートによる塵埃の捕集は安価に行えるが、捕集後の観察や再剥離を行なう際の取り扱いが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−232196号公報
【特許文献2】特開2009−79980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の問題を鑑み、製造環境に存在する微小塵埃、特に空気中で自然落下する程度の大きさ以上のものを対象とした評価を行うに当り、僅かな隙間にも設置可能で、取り付けや移動、捕集後の取り扱いも容易であり、測定箇所の増加にも安価に対応できることに加え、さらに捕集塵埃の観察や再剥離などの分析操作を効率的になし得る塵埃の捕集用キットと、それを用いた評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様にかかる発明は、製造環境に存在する微小塵埃を捕集し、その塵埃の評価を行う方法であって、
偏光機能を有している基材シートと、微小塵埃を十分な固定力で且つ再剥離できる保持力で付着させる弱粘着性を有し、前記基材シート上に固定された粘着シート層と、前記粘着シート層の表面を清浄に保つために該粘着シート層を覆って設けられた非粘着性の保護シートとを備えた塵埃モニター用キットを用い、
前記キットを、前記保護シートを剥ぎ取って前記粘着シート層の表面を露出させた状態で前記環境内に設置することにより、前記環境内の微小塵埃を前記粘着シート層に付着させて捕集し、その捕集塵埃を前記粘着シート層に付着したまま観察するか、或いは前記粘着シート層から再剥離して各種分析を行い、
前記捕集塵埃の前記粘着シート層に付着したままでの観察及び再剥離を、前記捕集塵埃を視認する光路に偏光部材を介在させて行うことにより、前記観察及び再剥離を行う際の視認性を高めることを特徴とする。
【0015】
他の態様に係る発明は、前記基材シートが着色された塵埃モニター用キットを用い、前記捕集塵埃の前記粘着シート層に付着したままでの観察及び再剥離を行う際の視認性を高めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造環境に存在する微小塵埃、特に空気中で自然落下する程度の大きさ以上のものを対象とした評価を行うに当り、僅かな隙間にも設置可能で、取り付けや移動、捕集後の取り扱いも容易であり、測定箇所の増加にも安価に対応できることに加え、さらに捕集塵埃の観察や再剥離などの分析操作を効率的になし得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による塵埃モニター用キットの分解斜視図。
図2】前記キットの断面図。
図3】前記キットの使用方法を示す図。
図4】前記キットにより捕集した塵埃の第1の観察例を示す図。
図5】前記キットにより捕集した塵埃の第2の観察例を示す図。
図6】前記キットにより捕集した塵埃の第3の観察例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態による塵埃モニター用キットの分解斜視図、図2は前記キットの断面図である。
【0020】
この塵埃モニター用キットは、製造環境に存在する微小塵埃、特に空気中で自然落下する程度の大きさ以上のものを捕集するためのものであり、基材シート1と、微小塵埃を十分な固定力で且つ再剥離できる保持力で付着させる弱粘着性を有し、基材シート1上に固定された粘着シート層2と、この粘着シート層2の表面を清浄に保つために該粘着シート層2を覆って設けられた非粘着性の保護シート7とを備えている。
【0021】
基材シート1は、該基材シート1上の粘着シート層2及びその上の保護シート7を、反り、撓み等を生じさせることなく平坦な状態に保つことができるシート材からなっている。本実施例では、基材シート1として、透明なシート材を正方形状または長方形状にカットしたものを用いている。さらに、この基材シート1は、粘着シート層2の表面に付着した捕集塵埃の視認性を高めるための機能を有している。この基材シート1としては、着色されたもの、或いは偏光機能を有しているものが望ましく、好ましくは、偏光機能を有し、さらに着色されたものが望ましい。
【0022】
粘着シート層2は、前記弱粘着性を有する粘着シート3を複数枚(例えば5枚程度)積層した多層シートからなっている。この粘着シート3は、例えば透明フィルム上に弱粘着性の粘着層を設けたものであり、各粘着シート3は、それぞれの粘着面(粘着層の表面)を粘着シート層2の表面側に向けて積層されている。この各粘着シート3は、一枚ずつ容易に剥がすことが可能である。
【0023】
この粘着シート層2は、粘着シート3を所定の巻き数でロール状に巻いたもの、或いは粘着シート3を所定枚数積層したものを、基材シート1と同じ外形(正方形状または長方形状)にカットしたものである。
【0024】
そして、粘着シート層2は、基材シート1の上に、接着剤或いは両面粘着テープからなる接合層4を介して貼り付けられている。この接合層4は、可能な限り透明で気泡等が無く、かつ厚みが一様であることが望ましい。
【0025】
さらに、粘着シート層2には、所定の塵埃捕集領域、例えば粘着シート層2の中央の領域5を囲んで、該領域5の表面側の粘着シート3を剥ぎ取るための切り込み6が設けられている。この切り込み6は、粘着シート層2の表面、つまり最表面の粘着シート3の表面から、粘着シート層2の全厚にわたって設けられている。
【0026】
また、保護シート7は、粘着シート3の粘着面に対して非粘着性で、且つ、それ自体から二次汚染の可能性のある飛散物等が無く、また所定の形状への加工が可能なシート材からなっており、粘着シート層2の外形と同じ形状にカットされ、粘着シート層2の表面に押し付けて密着されている。
【0027】
この塵埃モニター用キットは、保護シート7を剥ぎ取り、さらに粘着シート層2の塵埃捕集領域5の表面側の粘着シート3を剥ぎ取って、製造環境に存在する微小塵埃の捕集に使用される。保護シート7の剥ぎ取り及び粘着シート層2の塵埃捕集領域5の表面側の粘着シート3を剥ぎ取りは捕集開始直前に行う。
【0028】
図3は前記塵埃モニター用キットの使用方法を示しており、粘着シート層2の塵埃捕集領域5の表面側の粘着シート3を剥ぎ取りは、保護シート7を剥ぎ取った後に、図3(a)のように、粘着シート層2に設けられた切り込み6の一部にカッターナイフの刃8等を差し込んで、表面側の一枚または二枚程度の粘着シート3の切り込み6よりも内側の部分、つまり塵埃捕集領域5内の部分の縁部を図3(a)に二点鎖線で示したように浮き上がらせ、その後に、ピンセット等により表面側の粘着シート3の塵埃捕集領域5内の部分を図3(b)のように取り出すことにより行う。
【0029】
このように、表面側の粘着シート3の塵埃捕集領域5内の部分を剥ぎ取ると、粘着シート層2の塵埃捕集領域5の表面が、粘着シート層2の他の部分、つまり塵埃捕集領域5の周囲の部分の表面よりも、剥ぎ取った粘着シート3の厚さ分だけ低くなり、その低くなった面、すなわち、剥ぎ取った粘着シート3の下の粘着シート3の粘着面が、塵埃を付着させる捕集面2aになる。
【0030】
なお、前記粘着シート層2は、弱粘着性を有する複数枚の粘着シート3を積層したものであり、各粘着シート層3を一枚ずつ容易に剥がすことができるため、露出された塵埃捕集面2aにゴミ等が付着して清浄度が失われたときには、次の粘着シート3の塵埃捕集領域5内の部分を剥ぎ取ることにより、清浄な捕集面2aを表出させることができる。
【0031】
塵埃捕集面2aを表出させた塵埃モニター用キットを製造環境内の所定箇所に設置して環境内の塵埃の捕集を行った後は、必要に応じて、図3(c)のように、二次汚染を防ぐための非粘着性の捕集後保護シート9により塵埃モニター用キットの表面全体を覆う。
【0032】
このとき、塵埃捕集面2aの高さは、その周囲の部分の表面よりも低くなっているため、捕集後保護シート9が捕集面2aに直接接触することは無い。そのため、塵埃を捕集した後の捕集塵埃の観察や再剥離に際して捕集後保護シート9を剥ぎ取ったときに、捕集面2a上の捕集塵埃aが捕集後保護シート9に保着して持ち去られることもない。
【0033】
塵埃aを捕集した塵埃モニター用キットは、捕集塵埃aの粘着シート層2に付着したままでの観察、或いは、粘着シート層2から再剥離して異成分の判別等の各種分析を行う塵埃評価に供される。
【0034】
図4は塵埃モニター用キットにより捕集した塵埃aの第1の観察例を示しており、捕集塵埃aの観察は、捕集後保護シート9を剥ぎ取り、前記キットに基材シート1側から光Lを照射して、粘着シート層2の表面側から、捕集面2aに付着した捕集塵埃aを光学顕微鏡10により観察することにより行う。
【0035】
このとき、塵埃モニター用キットの基材シート1が着色されていれば、捕集塵埃aが白色、無色あるいは半透明といった視認しに難いものでも、塵埃aの視認性を高め、塵埃aの形状等を容易に観察することができると共に、異成分の簡易判別を行うことができる。
【0036】
図5及び図6は塵埃モニター用キットにより捕集した塵埃aの第2及び第3の観察例を示している。この第2及び第3の観察例は、塵埃モニター用キットの基材シート1が偏光機能を有している場合に利用できる。
【0037】
すなわち、第2及び第3の観察例は、捕集塵埃aの粘着シート層2に付着したままでの観察を、光学顕微鏡10により捕集塵埃aを視認する光路に偏光フィルム等の偏光部材11を介在させて行うものであり、図5に示した第2の観察例は、光学顕微鏡10の接眼レンズ側に偏光部材11を配置した例、図6に示した第3の観察例は、光学顕微鏡10の対物レンズ側に偏光部材11を配置した例である。
【0038】
このように、基材シート1が偏光機能を有している塵埃モニター用キットを用い、捕集塵埃の粘着シート層2に付着したままでの観察及を、前記捕集塵埃aを視認する光路に偏光部材11を介在させて行うことにより、塵埃aの視認性を高め、塵埃aの形状等を容易に観察することができると共に、異成分の簡易判別を行うことができる。
【0039】
この第2及び第3の観察例の場合、光学顕微鏡10は、偏光観察機能のない安価な実体顕微鏡でも、或いはルーペでもよい。すなわち、この観察例によれば、塵埃モニター用キットの基材シート1の偏光作用及び光学顕微鏡10の接眼レンズ側または対物レンズ側に配置した偏光部材11の偏光作用と、塵埃aの結晶状態や厚み及び光学的性質の差異により、塵埃捕集面2aと塵埃a、或いは塵埃相互の観察像が異なったものになるため、偏光顕微鏡のような高価な設備を用いることなく、塵埃aの視認性を向上させると共に、異成分の簡易判別を可能にすることができる。
【0040】
また、捕集塵埃aを粘着シート層2から再剥離して異成分の判別等の各種分析を行う塵埃評価に供する場合の捕集塵埃aの再剥離は、上記第1〜第3の何れかの観察例により塵埃aを視認しながら塵埃aを剥離する。この場合も、捕集塵埃aを視認性良く判別して再剥離することができる。
【0041】
なお、捕集塵埃aを再剥離させて各種分析を行う際、捕集塵埃の数が多い場合には、ある程度形状の似たものをグルーピングし、詳しい分析はそのグループ内で典型的と思われるものに絞って実施し効率化を図ることが多いが、外見での区別が難しいものはこの方法を採ることが難しい。しかし、上記第1〜第3の何れかの観察例によれば、塵埃aの形状を的確に視認できるため、捕集塵埃を形状の似たもの毎にグルーピングするのも容易である。
【0042】
前記塵埃モニター用キットは、製造環境に存在する微小塵埃、特に空気中で自然落下する程度の大きさ以上のものを対象とした評価を行うに当り、僅かな隙間にも設置可能で、取り付けや移動、捕集後の取り扱いも容易である。そのため、測定箇所の増加にも安価に対応できることに加え、さらに捕集塵埃の観察や再剥離などの分析操作を効率的になし得る
【実施例】
【0043】
以下に本発明の実施例を示す。
【0044】
基材シート1には、粘着シート層2と非粘着性の保護シート7を固定した場合に、反り、撓みを生じることなく平坦な状態を保ち、更に、加工、入手も容易な素材として、厚さが200μmの市販の偏光フィルムを用いた。
【0045】
また、粘着シート3には、アクリル系の低粘着層が設けられた市販のマスキングシートを用いた。このマスキングシートは画材用のもので、描画面に貼り付いた状態を保ち、しかも描画面を傷めずに再剥離できることを目的としているため、粘着性が極めて弱く、更に粘着剤の転移もほとんどない。
【0046】
この粘着シート3を複数枚積層した粘着シート層2の表面(粘着シート3の粘着面)に薄い非粘着性の保護シート7を貼った後、基材シート1の大きさに合わせて例えば1mm程度の厚さになるよう切り出し、粘着シート層2の保護シート7を貼った面とは反対側の面を、接合層4として接着剤を用いて基材シート1上に貼り付けた。
【0047】
次に、接着剤を硬化させて基材シート1に粘着シート層2を十分に固定させた後、この素材を、塵埃を捕集するために設置可能な空間の広さに合わせて例えば2×2cmの大きさに切り出し、塵埃モニター用キットを得た。
【0048】
なお、各粘着シート3の間や接合層4等に気泡があると、その気泡が、捕集した微小塵埃の観察及び再剥離に際する塵埃の視認性を妨げる要因になるめ、塵埃モニター用キットの作成においては、粘着シート3の積層及び基材シート1上への粘着シート層2の貼り付けを、各粘着シート3の間や、接合層4に極力気泡を発生させないようにして行う。
【0049】
このように作成した塵埃モニター用キットを、製造環境内の所定の箇所に、5mm角程度に小さく切った両面テープで固定し、使用直前に、保護シート7を剥がし、粘着シート層2の塵埃捕集領域5の表面側の粘着シート3を剥ぎ取って、粘着シート層2の他の部分(塵埃捕集領域5の周囲の部分)の表面よりも凹入した塵埃捕集面2aを表出させ、その状態で一定期間塵埃の捕集を行なった。
【0050】
捕集終了後は、捕集後保護シート9により粘着シート層2の表面を覆ってキットを回収し、その後に、上記第1〜第3の何れかの観察例による観察及び、捕集塵埃aを粘着シート層2から再剥離して異成分の判別等の各種分析を行った。
【0051】
なお、本実施例では、基材シート1の材料として、安価で入手が容易であり、しかも加工しやすい200μm厚の市販の偏光フィルムを挙げたが、粘着シート層2と非粘着性の保護シート7を固定した場合に、反り、撓みを生じさせず平坦な状態に保つことが可能なある程度の強度をもち、且つ基材シート自体から二次汚染の可能性のある飛散物等がなく、所定の形への加工が可能で、捕集した塵埃の視認性を高めるための機能をもつ材質であれば、価格や入手の容易さに応じて、どのような素材を用いてもよい。また基材シート1自体に捕集した塵埃の視認性を高めるための機能がなくとも、観察操作時に貼り付けるなどして後から付与する形でもよい。
【0052】
また粘着シート3も、微小塵埃を保持するに十分な固定力を備えつつ再剥離も容易な極めて弱い粘着性を有し、更に塵埃への粘着剤の転移がほとんどないものである限り、自由に設定してよい。
【0053】
さらに、基材シート1に粘着シート層2を固定するための手段も、反り、たわみを生じさせず十分に安定して固定でき、更には可能な限り透明で気泡等がなく、かつ厚みが一様であるならば、どのような方法、材質を用いても良い。
【0054】
また、非粘着性の保護シート7及び捕集後保護シート9も、それ自体から二次汚染の可能性のある飛散物等がなく、所定の形への加工が可能なものであれば、価格や入手の容易さに応じてどのような素材を用いてもよい。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 製造環境に存在する微小塵埃を捕集するためのモニター用キットであって、
基材シートと、微小塵埃を十分な固定力で且つ再剥離できる保持力で付着させる弱粘着性を有し、前記基材シート上に固定された粘着シートと、前記粘着シートの表面を清浄に保つために該粘着シートを覆って設けられた非粘着性の保護シートとを備え、前記保護シートを剥ぎ取って微小塵埃の捕集に使用されることを特徴とする塵埃モニター用キット。
[2] 前記粘着シート層は、前記弱粘着性を有する粘着シートを複数枚積層した多層シートからなっており、この粘着シート層に、所定の塵埃捕集領域を囲んで、該領域の表面側の粘着シートを剥ぎ取るための切り込みが設けられていることを特徴とする[1]に記載の塵埃モニター用キット。
[3] 製造環境に存在する微小塵埃を捕集し、その塵埃の評価を行う方法であって、
基材シートと、微小塵埃を十分な固定力で且つ再剥離できる保持力で付着させる弱粘着性を有し、前記基材シート上に固定された粘着シート層と、前記粘着シートの表面を清浄に保つために該粘着シート層を覆って設けられた非粘着性の保護シートとを備えた塵埃モニター用キットを用い、
前記キットを、前記保護シートを剥ぎ取って前記粘着シート層の表面を露出させた状態で前記環境内に設置することにより、前記環境内の微小塵埃を前記粘着シート層に付着させて捕集し、その捕集塵埃を前記粘着シート層に付着したまま観察するか、或いは前記粘着シート層から再剥離して各種分析を行うことを特徴とする塵埃の評価方法。
[4] 前記基材シートが着色された塵埃モニター用キットを用い、前記捕集塵埃の前記粘着シート層に付着したままでの観察及び再剥離を行う際の視認性を高めることを特徴とする[3]に記載の塵埃の評価方法。
[5] 前記基材シートが偏光機能を有している塵埃モニター用キットを用い、前記捕集塵埃の前記粘着シート層に付着したままでの観察及び再剥離を、前記捕集塵埃を視認する光路に偏光部材を介在させて行うことにより、前記観察及び再剥離を行う際の視認性を高めることを特徴とする[3]に記載の塵埃の評価方法。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、製造環境に存在する微小塵埃について、通常の塵埃捕集装置やパーティクルモニター装置の設置が困難な狭い空間においてもその捕集を行うことを可能とし、その後の観察、組成分析等の評価を容易にすることで、製造工程の清浄化、品質管理を効率化し、製品の信頼性向上や長寿命化に寄与することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…基材シート
2…粘着シート層
2a…捕集面
3…粘着シート
4…接合層(接着剤或いは両面粘着テープ)
5…塵埃捕集領域
6…切り込み
7…保護シート
9…捕集後保護シート
10…光学顕微鏡
11…偏光部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6