特許第5704080号(P5704080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5704080-車両用樹脂ウィンドウ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704080
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】車両用樹脂ウィンドウ
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/44 20060101AFI20150402BHJP
   B60J 1/18 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B60Q1/44 A
   B60J1/18 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-6364(P2012-6364)
(22)【出願日】2012年1月16日
(65)【公開番号】特開2013-144522(P2013-144522A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大庭 達也
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】寺本 泰庸
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−145187(JP,A)
【文献】 特開2010−120630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00 − 1/56
B60J 1/00 − 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディに装着され、かつ前記ボディの外方へ光を照射するランプを取付けるためのランプ取付部が設けられた樹脂構造体からなる車両用樹脂ウィンドウであり、
前記樹脂構造体の車外側部分を構成する透明なアウタ樹脂部と、
二色成形により、前記アウタ樹脂部に車内側から一体に形成され、前記樹脂構造体の車内側部分を構成する不透明なインナ樹脂部と
を備え、
前記ランプ取付部が前記インナ樹脂部に車内側から一体に形成されるとともに、前記インナ樹脂部には、前記ランプからの光を透過する透過部が設けられており、
前記アウタ樹脂部は、前記車両のバックウィンドウに隣接した状態で前記ボディの側部に装着されるものであり、前記ボディから外側方へ突出し、同ボディとの間に空間を形成する突出部を有し、
前記インナ樹脂部の少なくとも一部は、前記空間内において前記突出部の車内側に形成され、
前記ランプ取付部は、前記空間内において前記インナ樹脂部に車内側から一体に形成され、
前記透過部は、前記空間内において前記インナ樹脂部に設けられていることを特徴とする車両用樹脂ウィンドウ。
【請求項2】
前記アウタ樹脂部は、前記突出部の前側に、前後方向に延びる平坦部を有しており、
前記突出部の少なくとも前記平坦部との境界部分は曲面状に形成されており、
前記突出部の外表面は前記平坦部の外表面に面一に連続して形成されている請求項に記載の車両用樹脂ウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボディに装着され、かつそのボディの外方へ光を照射するランプを取付けるためのランプ取付部が設けられた車両用樹脂ウィンドウに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のボディに装着されるウィンドウとしては、無機ガラスによって形成されたものが一般的であるが、近年では、透明な樹脂材料によって形成されたもの、いわゆる樹脂ガラス(有機ガラス)も用いられるようになっている。この車両用樹脂ウィンドウには、軽量で割れにくい等の特徴がある。
【0003】
さらに、上記車両用樹脂ウィンドウの一形態として、車両のボディの外方へ光を照射する機能を持たせたものも提案されている(特許文献1参照)。この車両用樹脂ウィンドウでは、ウィンドウ部分が透明な樹脂パネルによって形成されている。ランプ取付部は、樹脂パネルの車内側に一体に形成されている。
【0004】
さらに、上記車両用樹脂ウィンドウでは、樹脂パネルの車外側の面において、ランプ取付部に対応する箇所に不透明なフィルムが貼付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−301985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された車両用樹脂ウィンドウでは、車両の外部から車両用樹脂ウィンドウを見た場合、ランプ取付部の手前に不透明なフィルムが位置し、そのフィルムが、同フィルムよりも遠くにあるランプ取付部が見えるのを妨げる。そのため、ランプ取付部が見えることによる見栄えの低下を抑制することができる。
【0007】
ところが、上記車両用樹脂ウィンドウでは、フィルムを樹脂パネルの車外側の面に貼付ける構成を採っていることから、車両の外部から、フィルム自体や、フィルムの樹脂パネルとの貼付け部分等に対し、風雨、外力等の外的要因の作用が直接及ぶ。そのため、フィルムが上記外的要因の作用を受け続けることにより樹脂パネルから剥がれ、見栄えの低下を抑制する上記効果が失われるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ランプ取付部が車両の外部から見えないようにする機能を長期間にわたって維持することのできる車両用樹脂ウィンドウを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両のボディに装着され、かつ前記ボディの外方へ光を照射するランプを取付けるためのランプ取付部が設けられた樹脂構造体からなる車両用樹脂ウィンドウであり、前記樹脂構造体の車外側部分を構成する透明なアウタ樹脂部と、二色成形により、前記アウタ樹脂部に車内側から一体に形成され、前記樹脂構造体の車内側部分を構成する不透明なインナ樹脂部とを備え、前記ランプ取付部が前記インナ樹脂部に車内側から一体に形成されるとともに、前記インナ樹脂部には、前記ランプからの光を透過する透過部が設けられており、前記アウタ樹脂部は、前記車両のバックウィンドウに隣接した状態で前記ボディの側部に装着されるものであり、前記ボディから外側方へ突出し、同ボディとの間に空間を形成する突出部を有し、前記インナ樹脂部の少なくとも一部は、前記空間内において前記突出部の車内側に形成され、前記ランプ取付部は、前記空間内において前記インナ樹脂部に車内側から一体に形成され、前記透過部は、前記空間内において前記インナ樹脂部に設けられていることを要旨とする。
【0010】
上記の構成によれば、車両用樹脂ウィンドウが車両のボディに装着された状態では、同車両用樹脂ウィンドウの車内側から車外側へ向けて、ランプが取付けられたランプ取付部、インナ樹脂部及びアウタ樹脂部が順に位置する。そのため、車両の外方から車両用樹脂ウィンドウを見た場合、透明なアウタ樹脂部を通して、不透明なインナ樹脂部が見えるにとどまる。不透明なインナ樹脂部は、それよりも遠くにあるランプ取付部が見えるのを妨げる。その結果、ランプ取付部が見えることによる車両用樹脂ウィンドウの見栄えの低下が抑制される。
【0011】
また、樹脂構造体の車外側部分を構成するアウタ樹脂部は、風雨、外力等といった、車両の外方からの外的要因の作用を受け止め、外的要因の作用がインナ樹脂部に及ぶのを抑制する。
【0012】
さらに、上記インナ樹脂部は、アウタ樹脂部に対し、二色成形により車内側から一体に形成されていて、同アウタ樹脂部に対し、接着よりも強固に接合している。そのため、インナ樹脂部が上記外的要因によりアウタ樹脂部から剥がれることが生じにくい。その結果、見栄えの低下を抑制するインナ樹脂部の上記効果が長期間にわたって維持される。
【0013】
なお、上記ランプ取付部に取付けられたランプから光が照射されると、その光は、インナ樹脂部に設けられた透過部を透過した後、透明なアウタ樹脂部を通過する。このようにして、ランプからの光が車両の外方へ照射される。
【0015】
また、上記の構成によれば、車両走行時等には、アウタ樹脂部の突出部が、同車両のボディに沿って車両前方側から車両後方側へ流れる空気流を整流し、車両の空力特性を向上させる。
【0016】
さらに、上記ボディと突出部との間には空間が形成されるところ、この空間は、ランプ取付部設置のためのスペースとして利用されるため、同スペースを別途設けなくてもすむ。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記アウタ樹脂部は、前記突出部の前側に、前後方向に延びる平坦部を有しており、前記突出部の少なくとも前記平坦部との境界部分は曲面状に形成されており、前記突出部の外表面は前記平坦部の外表面に面一に連続して形成されていることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、平坦部の外表面と突出部の外表面との繋ぎ目には隙間や段差がないため、車両走行時等には、平坦部と突出部との境界部分における空気抵抗が少なく、空気が滑らかに流れる。その結果、車両の空力特性の向上、風切り音の低減等が図られる。空力特性の向上に伴いエネルギーの消費量が軽減し、車両の燃費が改善されるほか、走行性能、走行安定性等が向上する。また、平坦部と突出部との境界部分の外観も向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用樹脂ウィンドウによれば、透明なアウタ樹脂部の車内側に二色成形により不透明なインナ樹脂部を一体に形成し、さらにインナ樹脂部にランプ取付部を車内側から一体に形成する構成を採ったため、ランプ取付部が車両の外部から見えないようにする機能を長期間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を具体化した一実施形態を示す図であり、(A)は、車両用樹脂ウィンドウが装着された車両を斜め後方から見た状態を示す部分斜視図、(B)は、(A)におけるX−X線に沿った車両用樹脂ウィンドウの断面構造を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の車両用樹脂ウィンドウを、車両のリヤクォータウィンドウに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1(A)に示すように、車両用樹脂ウィンドウ10は、車両11のボディ12の後部であって、車幅方向(左右方向)についての両側部に装着されるものであり、全体が樹脂材料によって形成された樹脂構造体14からなる。図1(B)に示すように、樹脂構造体14は、大きくは、その車外側部分を構成するアウタ樹脂部15と、車内側部分を構成するインナ樹脂部20とからなる。アウタ樹脂部15及びインナ樹脂部20のいずれも、樹脂材料によって形成されている。
【0021】
車両用樹脂ウィンドウ10には、一般的な樹脂ガラス(有機ガラスとも呼ばれる)と同様、無機ガラス製の車両用ウィンドウにはない、次のような特徴がある。
・軽い(比重が小さい)。
【0022】
・耐衝撃性に優れ、割れにくい。
・成形が容易であり、形状(デザイン)の自由度が高い。
・着色が容易である。
【0023】
各車両用樹脂ウィンドウ10におけるアウタ樹脂部15は、車両11のバックウィンドウ13に隣接した状態でボディ12の側部に装着される。アウタ樹脂部15は、樹脂ガラス(有機ガラス)として一般的な樹脂材料、例えばポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等を用い、射出成形によって透明に形成されている。ここでの透明には、無色透明に限らず、透明ではあるが色を有するもの(着色透明であるもの)も含まれる。アウタ樹脂部15は、曲面状に湾曲した三次元形状をなしている。より詳しくは、アウタ樹脂部15の主要部は、上記ボディ12に沿って前後方向に延びる平坦部16と、平坦部16の後側に隣接し、かつ上記ボディ12から外側方へ突出する突出部17とを備えている。突出部17は、ボディ12との間に空間S1を形成している。
【0024】
突出部17の平坦部16との境界部分である前部17Fは、曲面状(緩やかな凹面状)に形成されている。突出部17の外表面は、平坦部16の外表面に面一に連続して形成されることで、同平坦部16の外表面に滑らかに繋がっており、平坦部16と突出部17との境界部分に隙間や段差が生じていない。このように、アウタ樹脂部15では、フラッシュサーフェス化が図られている。
【0025】
アウタ樹脂部15の車内側の前部及び後部には、同アウタ樹脂部15をボディ12に固定するための固定部(図示略)がそれぞれ設けられている。各固定部でのボディ12に対する固定構造は特に限定されず、本実施形態では一般的な構造が採られている。
【0026】
なお、上記アウタ樹脂部15がポリカーボネート(PC)によって形成される場合、そのアウタ樹脂部15の車外側の面には、傷付き抑制を目的として、ハードコート層が形成されてもよい。
【0027】
一方、インナ樹脂部20は、例えば黒色に着色されたポリカーボネート(PC)、又は黒色に着色され、かつポリカーボネート(PC)とポリエチレンテレフタレート(PET)とを混合した、いわゆるポリマーアロイを用い、二色成形(ダブルモールド)を行なうことによって不透明に形成されている。
【0028】
二色成形は、樹脂材料の成形方法の一態様であり、異材質(材料)同士を組合わせて一体に成形するものである。二色成形では、一次側となる部分(アウタ樹脂部15)を成形してから、同一金型内で二次側となる部分(インナ樹脂部20)を、上記一次側となる部分(アウタ樹脂部15)と一体で成形する。
【0029】
インナ樹脂部20は、アウタ樹脂部15に対し車内側から一体に形成されている。本実施形態では、インナ樹脂部20は、アウタ樹脂部15の周辺部分において全周にわたって設けられていて、環状をなしている。このインナ樹脂部20の前部と後部とを区別するために、前者を「前インナ樹脂部21」といい、後者を「後インナ樹脂部22」というものとする。
【0030】
前インナ樹脂部21は、少なくとも上述した前側の固定部の車外側となる箇所に設けられている。また、後インナ樹脂部22は、少なくとも上述した後側の固定部、及び後述するランプ取付部23の車外側となる箇所に設けられている。後インナ樹脂部22の一部は、上記空間S1内において突出部17の車内側に形成されている。
【0031】
アウタ樹脂部15の車内側にインナ樹脂部20が設けられた箇所では、樹脂構造体14は、アウタ樹脂部15及びインナ樹脂部20からなる積層構造となっている。アウタ樹脂部15のうちインナ樹脂部20が設けられていない箇所、すなわちインナ樹脂部20によって囲まれた箇所では、樹脂構造体14はアウタ樹脂部15のみからなる単層構造となっている。
【0032】
ランプ取付部23は、制動灯(ストップランプ)、方向指示器、後退灯等のランプ25を取付けるための箇所である。このランプ25としては、例えば、発光ダイオード(LED)によって構成されたものを用いることができる。また、ランプ25の数は「1」でも複数でもよい。複数の場合、ランプ25は例えば上下方向に列をなすように配置されてもよい。ランプ取付部23は、アウタ樹脂部15の上記突出部17とボディ12との間の上記空間S1内において後インナ樹脂部22に対し、車内側から一体に形成されている。なお、ランプ25のランプ取付部23に対する取付構造は特に限定されず、本実施形態では一般的な構造が採用されている。
【0033】
さらに、上記空間S1内において、後インナ樹脂部22には、ランプ25からの光を透過する透過部24が設けられている。透過部24は、樹脂によって成形されず、ランプ取付部23を形成する凹部の開口部分によって構成されてもよいし、後インナ樹脂部22を貫通する孔によって構成されてもよい。この透過部24は、インナ樹脂部20の成形時に一緒に形成される。これに加え、突出部17において上記透過部24に対応する箇所(最も車外側の箇所)は、ランプ25からの光を車両11の外側へ投光させる透光部26となっている。また、透光部26の車内側に、透過部24内に入り込む突部分を一体に設け、同透光部26をレンズとして作用させてもよい。
【0034】
次に、上記のようにして構成された本実施形態の車両用樹脂ウィンドウ10の作用について説明する。
車両用樹脂ウィンドウ10が車両11のボディ12に装着された状態では、同ボディ12と突出部17との間に空間S1が形成されるところ、この空間S1が、透過部24を有するインナ樹脂部20(後インナ樹脂部22)の形成のためのスペースとして利用されるほか、ランプ取付部23の設置のためのスペースとして利用される。
【0035】
上記装着状態では、車両用樹脂ウィンドウ10の後部では、車内側から車外側へ向けて、ランプ25が取付けられたランプ取付部23、ボディ12への固定部が設けられた後インナ樹脂部22、及びアウタ樹脂部15が順に位置する。また、車両用樹脂ウィンドウ10の前部では、車内側から車外側へ向けて、ボディ12への固定部が設けられた前インナ樹脂部21、及びアウタ樹脂部15が順に位置する。
【0036】
そのため、例えば、車両11の側方から車両用樹脂ウィンドウ10を見た場合、インナ樹脂部20によって囲まれた箇所では、透明なアウタ樹脂部15を通して車内が見える。また、インナ樹脂部20が設けられた箇所では、透明なアウタ樹脂部15を通して、不透明なインナ樹脂部20(前インナ樹脂部21、後インナ樹脂部22)が見えるにとどまる。さらに、車両11の後方から車両用樹脂ウィンドウ10を見た場合、透明なアウタ樹脂部15を通して、不透明な後インナ樹脂部22が見えるにとどまる。
【0037】
不透明なインナ樹脂部20(前インナ樹脂部21、後インナ樹脂部22)は、それよりも遠く(車内側)にあるランプ取付部23や、ボディ12への固定部が見えるのを妨げる。その結果、ランプ取付部23、固定部等が見えることによる車両用樹脂ウィンドウ10の見栄えの低下が抑制される。
【0038】
また、樹脂構造体14の車外側部分を構成するアウタ樹脂部15は、風雨、外力等といった、車両11に対し、外方から加わる外的要因の作用を受け止め、その外的要因の作用が上記インナ樹脂部20に及ぶのを抑制する。
【0039】
さらに、上記インナ樹脂部20は、アウタ樹脂部15に対し、二色成形により車内側から一体に形成されていて、同アウタ樹脂部15に対し、接着よりも強固に接合している。そのため、インナ樹脂部20が上記外的要因によりアウタ樹脂部15から剥がれることが生じにくい。その結果、見栄えの低下を抑制するという上記インナ樹脂部20(前インナ樹脂部21、後インナ樹脂部22)の上記効果が長期間にわたって維持される。
【0040】
なお、上記ランプ取付部23に取付けられたランプ25から光が照射されると、その光は、後インナ樹脂部22に設けられた透過部24を透過した後、透明なアウタ樹脂部15の透光部26を通過する。このようにして、ランプ25からの光が車両11の外方へ照射される。
【0041】
ところで、車両走行時等には、車両用樹脂ウィンドウ10の樹脂構造体14のうち車外側部分を構成するアウタ樹脂部15において、車両11のボディ12から外側方へ突出する突出部17が、外気(空気)の整流効果を発揮する。そのため、ボディ12に沿って車両前方側から車両後方側へ流れる空気流は、突出部17に沿って流れることで整流される。
【0042】
特に、平坦部16の外表面と突出部17(前部17F)の外表面との繋ぎ目には隙間や段差がない又は少ないため、車両走行時等には、平坦部16と突出部17との境界部分における空気抵抗が少なく、外気(空気)が滑らかに流れる。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)樹脂構造体14からなる車両用樹脂ウィンドウ10の車外側部分を透明なアウタ樹脂部15によって構成し、車内側部分を、二色成形によって形成された不透明なインナ樹脂部20によって構成する。ボディ12の外方へ光を照射するランプ25を車両用樹脂ウィンドウ10に取付けるためのランプ取付部23を、後インナ樹脂部22に車内側から一体に形成するとともに、同後インナ樹脂部22には、ランプ25からの光を透過する透過部24を設けている。
【0044】
そのため、樹脂パネルの車外側の面に不透明なフィルムを貼付ける特許文献1とは異なり、インナ樹脂部20がアウタ樹脂部15から剥がれることがなく、ランプ取付部23が車両11の外部から見えないようにするインナ樹脂部20の機能を長期間にわたって維持し、車両用樹脂ウィンドウ10の見栄えを良好に保つことができる。
【0045】
(2)車両11のボディ12から外側方へ突出し、かつ同ボディ12との間に空間S1を形成する突出部17をアウタ樹脂部15に設ける。上記空間S1内において、後インナ樹脂部22の一部を突出部17の車内側に形成する。空間S1内においてランプ取付部23を後インナ樹脂部22に車内側から一体に形成するとともに、同空間S1内において、透過部24を後インナ樹脂部22に設けている。
【0046】
そのため、ボディ12に沿って車両前方側から車両後方側へ流れる空気流を突出部17によって整流し、車両11の空力特性を向上させることができる。その結果、エネルギーの消費量を軽減し、車両11の燃費の改善を図ることができる。また、車両11の走行性能、走行安定性等の向上を図ることができる。さらに、車両11の走行時における車両用樹脂ウィンドウ10での風切り音を低減することができる。
【0047】
また、突出部17とボディ12との間の空間S1を、ランプ取付部23を設置するためのスペースとして利用しているため、同スペースを別途設けなくてもすむ。
(3)アウタ樹脂部15の突出部17の前側に、前後方向に延びる平坦部16を設ける。突出部17の平坦部16との境界部分である前部17Fを曲面状に形成する。そして、突出部17の外表面を平坦部16の外表面に面一に連続して形成している。
【0048】
そのため、突出部17と平坦部16との境界部分に段差があるものよりも、車両11の空力特性を向上させることができる。
さらに、平坦部16と突出部17との境界部分(前部17F)の見栄えの向上を図ることもできる。
【0049】
(4)上記(1)に関連するが、ランプ取付部23を後インナ樹脂部22に一体に形成していることから、ランプ取付部23をインナ樹脂部20の二色成形時に一緒に形成することができる。ランプ取付部23をインナ樹脂部20とは別に形成する場合とは異なり、同インナ樹脂部20の形成後に、ランプ取付部23をインナ樹脂部20(後インナ樹脂部22)に組付ける作業が不要となり、その分、車両用樹脂ウィンドウ10の製造コストを低減することができる。
【0050】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・本発明の車両用樹脂ウィンドウは、上述したリヤクォータウィンドウに限らず、フロントピラーの後側に設けられる三角窓にも適用可能である。この場合、車両用樹脂ウィンドウのランプ取付部には、例えばボディの外下方、すなわち、乗車しようとする車外の乗員の足元へ向けて光を照射するランプが取付けられてもよい。そして、夜間等にドアのロックが解除されることに連動してランプが点灯され、車外の乗員の足元が照らされるようにされてもよい。
【0051】
・インナ樹脂部20は、同インナ樹脂部20を通してそれよりも車内側に位置するもの(ランプ取付部23、固定部等)を見えにくくするものであることを条件に、黒色以外の色に着色されてもよい。
【0052】
・インナ樹脂部20は、アウタ樹脂部15の必ずしも全周にわたって設けられなくてもよく、ランプ取付部23や、固定部に対応する箇所にのみ設けられてもよい。
・突出部17は、平坦部16との境界部分(前部17F)のみにおいて曲面状に形成されてもよいし、同境界部分(前部17F)に加え、他の箇所でも曲面状に形成されてもよい。
【0053】
・後インナ樹脂部22は、少なくともその一部が空間S1内において突出部17の車内側に形成されればよい。従って、後インナ樹脂部22の全体が空間S1内において突出部17の車内側に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…車両用樹脂ウィンドウ、11…車両、12…ボディ、13…バックウィンドウ、14…樹脂構造体、15…アウタ樹脂部、16…平坦部、17…突出部、20…インナ樹脂部、21…前インナ樹脂部、22…後インナ樹脂部、23…ランプ取付部、24…透過部、25…ランプ、S1…空間。
図1