(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1に係る搬送前処理装置について説明する。
まず、上記搬送前処理装置の概略について説明する。
この搬送前処理装置は、段ボールなどの被搬送物を搬送ラインで搬送する前に、当該被搬送物に付着した塵(ゴミ)を除去することで、被搬送物に付着したゴミが上記搬送ライン(搬送手段である)に巻き込まれることを防ぎ、当該搬送ラインを保護するものである。また、上記搬送前処理装置は、被搬送物を移送しながら、そのゴミを除去するように構成されており、上記搬送ラインの上流側に接続されて、ゴミが除去された被搬送物を搬送ラインに供給するものである。言い換えれば、上記被搬送物は、搬送前処理装置に移送されながらゴミが除去された後に、搬送ラインに供給される。なお、上記被搬送物が段ボールであれば、この段ボールは上記搬送前処理装置で移送される前に結束用のビニール紐が取り外されたものであるから、上記ゴミは主に上記ビニール紐から生じる紐ゴミである。
【0016】
次に、上記搬送前処理装置を
図1〜
図4に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、この搬送前処理装置1は、被搬送物Cを搬入する搬入部2と、この被搬送物Cを除塵する除塵部3と、搬入部2および除塵部3の各機器を制御する制御部(
図4に示す)4とを具備する。また、上記搬送前処理装置1における除塵部3の下流側には、ローラコンベヤなどの公知の搬送ラインLが接続されている。上記搬入部2および搬送ラインLの両上下流方向は、平行で且つ逆向きである。また、上記除塵部3の上下流方向は、上記搬入部2および上記搬送ラインLの両上下流方向と直交する向きである。
【0017】
図1に示すように、上記搬入部2は、被搬送物Cを自重により滑らせて搬入する傾斜搬入路11と、傾斜搬入路11の下流側に配置されて当該傾斜搬入路11からの被搬送物Cを搬入する搬入コンベヤ(搬入装置の一例である)13と、この搬入コンベヤ13で搬入された被搬送物Cを上記搬入コンベヤ13から上記搬送ラインLまで移送させる移送装置21とが備えられている。
【0018】
上記傾斜搬入路11は、
図1に示すように、被搬送物Cを自重により上流側から下流側まで滑らせるものであるから、当然ながら、上流側が高くなるように傾斜している。また、上記搬入コンベヤ13は、上下流方向に多数並列して配置された水平のモータローラ14と、これらモータローラ14の両端を支持する枠体16と、
図2に示すように、これらモータローラ14に電力を供給して当該モータローラ14を回転させる電源部17とを有する。上記枠体16は、リップ溝形鋼からなり、そのウェブ16Wにモータローラ14の端部を挿入する穴部16Hが形成されるとともに、リップ16Lでモータローラ14の軸15を受けている。これら穴部16Hは、いずれも挿入されたモータローラ14の端部の外径よりも僅かに大きい内径にされて、モータローラ14の中央部のゴミが枠体16の内部に入り込まないようにされている。言い換えれば、上記搬入コンベヤ13は、モータローラ14の中央部上の被搬送物Cを搬入するとともに、被搬送物Cからモータローラ14の中央部に落下したゴミが軸15に巻き込まれないように構成されている。なお、上記ウェブ16Wの上端にはテーパ(上側のフランジに亘っている)tが形成されて、当該ウェブ16Wがモータローラ14から被搬送物Cの移送を妨げないように構成されている。このテーパtは、傾斜した平面として図示するが、横断面が円弧状の曲面であってもよい。さらに、上記移送装置21は、
図1および
図2に示すように、先端部が上記搬入コンベヤ13の上方から上記搬送ラインLの上方まで突出するロッドレスシリンダ22と、このロッドレスシリンダ22の先端部に取り付けられて被搬送物Cを押して移送させ得る当接体23とを有する。このため、上記移送装置21は、
図2の両矢印に示すように、ロッドレスシリンダ22を引退させて搬入コンベヤ13の被搬送物Cを迎え入れ、ロッドレスシリンダ22を突出させて当接体23により被搬送物Cを搬送ラインLまで押して移送させるものである。当然ながら、この移送により、被搬送物Cは、搬入コンベヤ13と搬送ラインLとの間にある除塵部3上を通過する。また、上記移送装置21には、被搬送物Cを迎え入れたことを検出するための光電センサ(
図1を参照)24が、搬入コンベヤ13の上方における当接体23の上流側に設けられている。
【0019】
図2に示すように、上記除塵部3は、略水平の上面に多数の通気孔32が形成された除塵ボックス(除塵通路の一例である)31と、この除塵ボックス31の下面に一方の端部群が接続された分岐管37と、この分岐管37の他方の端部に接続されたブロワ38とを備えている。
【0020】
上記除塵ボックス31は、
図3に示すように、一方の側面が開口した箱体33であり、この開口した側面から引き出し可能な引出部34を有する。
図3に示すように、この引出部34は、除塵ボックス31の開口した側面を塞ぎ得る側板34Sと、断面視がL字形となるように側板34Sの下端に垂設されて上記除塵ボックス31の下面に摺動し得る底板34Bと、この底板34B上に配置された交換式のフィルタ34Fとを具備する。また、図示しないが、この引出部34は、除塵ボックス31の開口した側面を側板34Sで塞ぐように配置された状態(つまり使用状態である)において、上記開口と側板34Sとの隙間からの空気の漏れを防止する気密ゴムが、側板34Sの上端縁および側端縁に取り付けられている。さらに、
図2および
図3(b)に示すように、上記除塵ボックス31の下面および上記引出部34の底板34Bには、上記分岐管37の一方の端部群に連通する連通口36がそれぞれ形成されている。すなわち、上記除塵部3は、ブロワ38で吸引すると、除塵ボックス31の内部が負圧になり、上記通気孔32から除塵ボックス31の内部に空気を吸引する(
図2を参照)一方、ブロワ38で吐出すると、除塵ボックス31の内部が正圧になり、上記通気孔32から空気を吐出するものである。言い換えれば、上記除塵部3は、多数の通気孔32のいくつかが塞がれると、塞がれていない通気孔32における吸引力または吐出力が向上するようにされている。
【0021】
図4に示すように、上記制御部4は、光電センサ24による被搬送物Cの検出を認識する検出部41と、この検出部41が被搬送物Cを検出するとロッドレスシリンダ22を突出させる移送作動部42と、上記検出部41が被搬送物Cを検出するとブロワ38を作動させる除塵作動部43とを有する。
【0022】
以下、上記搬送前処理装置1の使用方法について説明する。なお、以下では簡単のため、被搬送物Cが段ボールである場合について説明する。
まず、被搬送物Cから結束用のビニール紐を取り外した後、この被搬送物Cを、紐ゴミなどが付着したままでもよいので、傾斜搬入路11に載置する。すると、被搬送物Cは、傾斜搬入路11を滑って搬入コンベヤ13の上流側まで達する。
【0023】
搬入コンベヤ13は、被搬送物Cから落下したゴミをモータローラ14の軸15に巻き込むことなく、モータローラ14により被搬送物Cを下流側に搬入する。搬入コンベヤ13の下流側に搬入された被搬送物Cは、光電センサ24に検出されると、ロッドレスシリンダ22が突出し始めることで、当接体23により押され、まずは除塵部3を通過する。
【0024】
除塵部3では、被搬送物Cが光電センサ24に検出されたことでブロワ38が作動し、通気孔32から除塵ボックス31の内部に空気を吸引する。ここで、多数の通気孔32のいくつかが被搬送物Cに塞がれるので、塞がれていない通気孔32における吸引力が向上する。したがって、被搬送物Cの通過に伴い、被搬送物Cの底面のゴミは主として、塞がれた通気孔32に吸引され、被搬送物Cの側面および上面のゴミは主として、吸引力が向上した通気孔32に吸引される。
【0025】
そして、そのままロッドレスシリンダ22の突出に従い、被搬送物Cが当接体23に押されて搬送ラインLまで移送される。ロッドレスシリンダ22が突出し終えると、このロッドレスシリンダ22は引退し始めるとともに、自動的にブロワ38の作動が停止する。
【0026】
このようにして、上記搬送前処理装置1は、次々に被搬送物Cからゴミを除去し、ゴミが除去された被搬送物Cを搬送ラインLに供給していく。ここで、除塵ボックス31の内部のフィルタ34Fにゴミ溜まって通気孔32における吸引力が弱くなれば、引出部34を箱体33から引き出して、フィルタ34Fの清掃または交換を行う。
【0027】
このように、上記実施例1に係る搬送前処理装置1によれば、被搬送物Cに付着したゴミがロッドレスシリンダ22に侵入せず、また、搬入コンベヤ13はゴミをモータローラ14の軸15に巻き込まないので、被搬送物Cに付着したゴミが巻き込まれることなく、故障の発生を抑えることができる。
【0028】
また、被搬送物Cの底面の下からゴミを吸引するので、従来のように送風機で被搬送物Cを吹き付ける方式では十分に吹き飛ばすことができなかった底面においても、確実にゴミを除去することができる。
【0029】
また、光電センサ24で被搬送物Cを検出してからブロワ38を作動させるので、消費電力を削減するとともに、フィルタ34Fの清掃または交換の頻度を下げて、運用コストを低減させることができる。
【実施例2】
【0030】
本実施例2に係る搬送前処理装置1は、上記実施例1に係る搬送前処理装置1に比べ、より確実にゴミを除去することができる構成としたものである。
以下、本発明の実施例2に係る搬送前処理装置1について
図5〜
図7に基づき説明するが、上記実施例1と異なる除塵ボックス31に着目して説明するとともに、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
本実施例2に係る除塵ボックス31は、
図5および
図7に示すように、各通気孔32の周囲に、被搬送物Cの底面に付着したゴミを掻き落し得るブラシ35が、それぞれ輪形に設けられたものである。また、上記除塵ボックス31は、
図6に示すように、その上面が搬入コンベヤ13の上面(搬入路である)よりも低い位置hに配置されている。すなわち、上記除塵ボックス31は、その上面に移送された被搬送物Cを落下させて、その落下の振動により被搬送物Cからゴミを振り落とすように構成されている。
【0032】
以下、上記実施例2に係る除塵ボックス31の使用方法について、上記実施例1と異なる点に着目して説明する。
除塵部3に達した被搬送物Cは、除塵ボックス31の上面に落下し、その落下の振動により多くのゴミを振り落とすとともに、振り落とされたゴミを除塵ボックス31の内部に吸引させる。被搬送物Cの底面では、振り落とされなかったゴミが、当該被搬送物Cの通過に伴い、ブラシ35に掻き落されて除塵ボックス31に吸引される。ここで、上記実施例1と同様に、多数の通気孔32のいくつかが被搬送物Cに塞がれるので、塞がれていない通気孔32における吸引力が向上する。したがって、被搬送物Cの通過に伴い、被搬送物Cの底面のゴミは主として、塞がれた通気孔32の周囲のブラシ35で描き落とされて当該通気孔32に吸引され、被搬送物Cの側面および上面のゴミは主として、吸引力が向上した通気孔32に吸引される。
【0033】
このように上記実施例2に係る搬送前処理装置1によれば、除塵ボックス31の上面に被搬送物Cが落下した振動により、被搬送物Cに付着したゴミが振り落とされるので、より確実にゴミを除去することができる。
【0034】
また、被搬送物Cに塞がれた通気孔32では、その周囲のブラシ35によりゴミを掻き落して吸引するとともに、被搬送物Cに塞がれていない通気孔32では、吸引力が向上してゴミを吸引するので、より確実にゴミを除去することができる。
【実施例3】
【0035】
本実施例3に係る搬送前処理装置1は、上記実施例1または2に係る搬送前処理装置1に比べ、より一層確実にゴミを除去することができる構成としたものである。
以下、本発明の実施例3に係る搬送前処理装置1について
図8および
図9に基づき説明するが、上記実施例1または2と異なる除塵部3’に着目して説明するとともに、上記実施例1または2と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
本実施例3に係る搬送前処理装置1は、上記実施例1または2のように1つの除塵ボックス31ではなく、
図8に示すように、2つの除塵ボックス31を備えたものである。具体的には、本実施例3の除塵部3’は、上流側の除塵ボックス31(上流部の一例である)と、下流側の除塵ボックス31(下流部の一例である)とを備えている。
図6に示すように、これら上流側の除塵ボックス31および下流側の除塵ボックス31は、両上面が面一で且つ、搬入コンベヤ13側が高くなるように(搬出ライン側が低くなるように)に傾斜している。すなわち、本実施例2に係る除塵ボックス31は、その上面で被搬送物Cを自重により滑りやすくして、ロッドレスシリンダ22が小さな力でも被搬送物Cを移送させ得るようにされている。また、除塵ボックス31の上面は、上記実施例2と同様に、搬入コンベヤ13の上面よりも低い位置hに配置されている。さらに、上流側の除塵ボックス31は空気を吐出するためのものであり、下流側の除塵ボックス31は空気を吸引するためのものである。このため、上流側の除塵ボックス31の内部には、フィルタ34Fが不要である。
【0037】
以下、上記実施例3に係る除塵ボックス31の使用方法について、上記実施例1または2と異なる点に着目して説明する。
除塵ボックス31に落下した被搬送物Cは、落下した振動により、実施例1と同様に、ゴミが振るい落とされる。しかし、実施例3では、被搬送物Cが空気の吐出を受けて、被搬送物Cと上流側の除塵ボックス31との衝撃を緩和する。また、落下の振動により、被搬送物Cに付着したゴミには下方へ振り落とされる方向に力が作用するが、上流側の除塵ボックス31における通気孔32の吐出により、これらゴミには上方へ吹き飛ばされる方向に力が作用する。
【0038】
その後、被搬送物Cが下流側の除塵ボックス31を通過すると、この下流側の除塵ボックス31における通気孔32の吸引により、これらゴミには下方へ引き込まれる方向に力が作用する。したがって、除塵部3を通過する被搬送物Cに付着したゴミには、作用する力の方向が下方、上方、下方と順次反転するので、ゴミの靡(なび)く方向が反転する勢いにより、当該被搬送物Cからゴミが離れやすくなる。
【0039】
このように、上記実施例3に係る搬送前処理装置1によれば、被搬送物Cに付着したゴミに作用する力の方向を反転させるので、当該被搬送物Cからゴミが離れやすく、より一層確実にゴミを除去することができる。
【0040】
また、除塵ボックス31の上面で被搬送物Cを自重により滑りやすくしているので、より小さな力で被搬送物Cを移送させることができ、消費電力を削減して、運用コストを低減させることができる。
【0041】
さらに、上流側の除塵ボックス31が通気孔32からの空気の吐出により、被搬送物Cとの衝突を緩和するので、被搬送物Cの損傷を防止することができる。
ところで、上記実施例1および2では、除塵ボックス31の上面が略水平であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、上記実施例3のように搬入装置側を高くして傾斜させてもよい。また、逆に、上記実施例3では、除塵ボックス31の上面が傾斜しているとして説明したが、これに限定されるものではなく、上記実施例1または2のように水平にしてもよい。
【0042】
さらに、上記実施例3では、上流側の除塵ボックス31は通気孔32から吐出し、下流側の除塵ボックス31は通気孔32から吸引するものとして説明したが、上流側の除塵ボックス31は通気孔32から吸引し、下流側の除塵ボックス31は通気孔32から吐出するものであってもよい。
【0043】
また、上記実施例1〜3では、搬入部2について説明したが、この搬入部2は必須の構成ではなく、搬入部2を具備しなくてもよい。
また、上記実施例1〜3では、当接体23がロッドレスシリンダ22の先端に取り付けられたものとして説明したが、
図10(a)および(b)に示すように、ロッドレスシリンダ22の先端下面に取り付けられたものであってもよい。この場合、搬入コンベヤ13で搬入される被搬送物Cの上方にロッドレスシリンダ22が位置するので、
図10(b)に示すように、ロッドレスシリンダ22が突出しても被搬送物Cの搬入を妨げない。このため、被搬送物C同士の搬入間隔を小さくできるので、搬入効率を向上させることができる。
【0044】
また、上記実施例1〜3では、移送装置21が、ロッドレスシリンダ22と、当接体23とを有するものとして説明したが、この構造に限定されるものではない。例えば
図11に示すように、移送装置21’が、上下流方向の2つの回転軸(少なくとも一方が駆動軸である)124,125と、両回転軸124,125をそれぞれ回転中心に設けた2つのスプロケット131,132と、両スプロケット131,132間に巻回した無端チェーン133と、この無端チェーン133に設けられた当接体23と、この無端チェーン133の移動を案内するガイド体140と、上記両回転軸124,125および両スプロケット131,132を覆ってごみが入り込まないようにするカバー(図示省略)とを有するものであってもよい。このガイド体140は、昇降自在に設けられているとともに、圧縮ばね147により下降付勢力を受けるものである。したがって、この移送装置21’は、当接体23に噛み込みなどが発生して上昇力が作用すると、この上昇力が圧縮ばね147の下降付勢力に抗して、当接体23がガイド体140とともに上昇する。このように、この例による搬送前処理装置1によれば、当接体23に噛み込みなどが発生しても当接体23を上昇させて逃がし得るので、被搬送物Cの損傷や移送装置21’の損傷を防止することができる。