特許第5704182号(P5704182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5704182光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704182
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/24 20060101AFI20150402BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20150402BHJP
【FI】
   C07D307/24CSP
   !C07B57/00 346
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-43958(P2013-43958)
(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公開番号】特開2014-172820(P2014-172820A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2014年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104950
【弁理士】
【氏名又は名称】岩見 知典
(72)【発明者】
【氏名】平賀 悠文
(72)【発明者】
【氏名】森本 正雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 朋晃
【審査官】 清水 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−171994(JP,A)
【文献】 特開平01−216983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 307/24
C07B 57/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】
で表される(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物とベンジルアミンを作用させて、炭素数2〜4の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4の脂肪族アルコールを含む混合溶媒中で晶析精製することにより、一般式
【化2】
(式中、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される99.0%e.e.以上の光学純度を有する(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法であって、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物の光学純度が、90.0%e.e.以上である光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法。
【請求項2】
炭素数2〜4の脂肪族アルコールが、2−プロパノールである請求項1に記載の光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法。
【請求項3】
一般式
【化3】
で表される(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩。
【請求項4】
一般式
【化4】
で表される(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬中間体原料として重要な光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の工業的製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸は、医薬等産業上有用な化合物として知られており、例えば、β−ラクタム抗生物質の中間体原料として使用されていることが報告されている(特許文献1参照)。
【0003】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法としては、例えば、
(1)ラセミ体のテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を光学活性芳香族アミンまたは光学活性アミノ酸アミドを用いて光学分割して光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法(特許文献2参照)、
(2)ラセミ体のテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を(R)−フェニルエチルアミンで光学分割して(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法(特許文献3参照)、
(3)低純度の光学活性を有する(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸をアキラルアミンであるジシクロヘキシルアミンを用いて光学精製して高純度の光学活性を有するテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する方法(特許文献4参照)などが知られている。
【0004】
しかしながら、上記(1)の方法は、高価な光学分割剤を使用している点、その光学分割剤が不安定なため、回収利用時に光学純度低下を避けるのに煩雑な精製工程を必要とする点、また上記(2)の方法は、工程中に光学分割剤である(R)−フェニルエチルアミンを由来とする不純物としてアセトフェノンを副生し、これが製品中に残存してしまう点、また上記(3)の方法は、高価な光学精製剤を使用しているにもかかわらず、光学精製工程の収率が非常に低い点とそれぞれ問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−207387号公報
【特許文献2】特開平9−143101号公報
【特許文献3】中国公開101429180号
【特許文献4】特開2002−171994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
99.0%以上の化学純度を有し、且つ99.0%e.e.以上の光学純度を有する高光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を高い生産性で効率的に製造する方法の創出が強く望まれている。
【0007】
本発明の目的は、医薬原料として重要な高光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を、安価で入手容易な原料を使用して工業的に適した製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を見出すに至った。即ち、本発明は、一般式
【0009】
【化1】
【0010】
で表される(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物とベンジルアミンを作用させて、炭素数2〜4の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4の脂肪族アルコールを含む混合溶媒中で晶析精製することにより、一般式
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される99.0%e.e.以上の光学純度を有する(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法であって、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物の光学純度が、90.0%e.e.以上である光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を医薬原料として用いる場合、高純度の光学活性を有することが強く求められている。本発明により、医薬原料として重要な高純度テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を安価で入手容易な原料から、高い生産性で効率的に工業的に適した方法で製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、一般式
【0016】
【化3】
【0017】
で表される(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物とベンジルアミンを作用させて、炭素数2〜4の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4の脂肪族アルコールを含む混合溶媒中で晶析精製することにより、一般式
【0018】
【化4】
【0019】
(式中、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される99.0%e.e.以上の光学純度を有する(R)−または(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を製造する光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法であって、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物の光学純度が、90.0%e.e.以上である光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の製造方法である。
【0020】
本発明では、低純度の光学活性を有するテトラヒドロフラン−2−カルボン酸を出発原料とした場合であっても、ベンジルアミンを光学精製剤に用い、1回の晶析操作によって所望の高光学活性を有するテトラヒドロフラン−2−カルボン酸の塩を効率的に優先晶析させる。
【0021】
本発明で使用する(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物の光学純度は、90.0%e.e.以上、好ましくは、95.0%e.e.以上である。
【0022】
本発明で使用する光学精製剤は、ベンジルアミンである。低光学純度の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸にベンジルアミンを作用させた場合、晶析操作を実施することで高光学純度の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を得ることができる。一方、低光学純度の(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を用いた場合は、同様にして高光学純度の(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を得ることができる。
【0023】
ベンジルアミンの使用量は、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸に対して、好ましくは、0.8〜1.2モル倍、さらに好ましくは1.0〜1.1モル倍である。
【0024】
本発明で使用する炭素数2〜4の脂肪族アルコールとしては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールが挙げられるが、好ましくは、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、さらに好ましくは、2−プロパノールである。
【0025】
本発明で使用する炭素数2〜4の脂肪族アルコールを含む混合溶媒としては、溶媒における上記アルコールの割合が80重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは、90重量%以上である。アルコール以外の成分として各種の溶媒を用いることができる。例えば、水、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒等が挙げられるが、好ましくは水である。
【0026】
本発明における混合順序は、好ましくは、炭素数2〜4の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4の脂肪族アルコールを含む混合溶媒、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物を仕込んだ後、ベンジルアミンを添加する。ベンジルアミンの添加温度は、室温付近の場合、一気に結晶化が進行し、撹拌不能となるおそれがあるので、好ましくは、50〜80℃であり、さらに好ましくは、60〜70℃である。
【0027】
本発明の昇温熟成の温度は、好ましくは、50〜80℃であり、さらに好ましくは、60〜70℃である。本発明は、一度、均一溶液にすることが好ましい。均一溶液の場合、降温して種晶を添加し十分に熟成してから、さらに降温する。その温度は、好ましくは、10〜30℃であり、さらに好ましくは、15〜25℃である。熟成時間は、好ましくは、30分〜24時間、さらに好ましくは、1〜12時間である。
【0028】
このようにして1回の晶析操作によって得られた光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩は、99.0%e.e.以上の高い光学純度を有している。析出した塩は、ろ過や遠心分離等の固液分離操作により、母液中の塩と分離することができる。
【0029】
光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩は、一般式
【0030】
【化5】
【0031】
で表される(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩、または、
一般式
【0032】
【化6】
【0033】
で表される(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を含有し、99.0%e.e.以上の高い光学純度を有している。
【0034】
本工程で得られた光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩から、一般的な回収プロセスによって、光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を単離することができる。すなわち、結晶として単離した光学活性テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を、水中で塩基によってアルカリ性にした後、トルエン、ヘキサン、ジクロロメタン等の一般的な有機溶媒での洗浄によりベンジルアミンを除去し、次いで残った水層に酸を加えてフリー化してからジクロロメタン、メチルエチルケトン等の一般的な有機溶媒で抽出後、最後に濃縮して有機溶媒を留去することにより光学活性ニペコチン酸誘導体を取得することができる。
【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明を説明する。
【0036】
実施例中の光学純度は以下に示す方法で測定した。
【0037】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:SUMICHIRAL OA−6000 4.6mmφ×250mm,5μm(住化分析センター)
移動相:2mM硫酸銅(II)水溶液/アセトニトリル=90/10(v/v)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
保持時間:5.4分((R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸)
7.9分((S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸)。
【0038】
実施例1
(晶析精製工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,96.2%e.e.(R))、2−プロパノール700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、65℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、20℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩337.2gを得た。その塩の光学純度は、99.5%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、89.6%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm: 7.43−7.27(m,5H),4.02(m,1H),3.89(s,2H),3.75(m,1H),3.64(m,1H),1.98(m,1H),1.73(m,3H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:176.4,137.1,128.4,127.7,78.3,67.5,42.9,30.0,25.0
m.p.:134−135℃。
【0039】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩の水溶解液に、苛性ソーダ水、トルエンを加え、ベンジルアミンをトルエン層側に抽出除去した。ベンジルアミンが除去されたことを確認した後、水層に濃硫酸を滴下してフリー化し、目的物をメチルエチルケトンで抽出した。最後に濃縮、蒸留を実施して、光学純度:99.5%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0042】
実施例
(晶析精製工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,94.5%e.e.(R))、エタノール700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、45℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、20℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩231.2gを得た。その塩の光学純度は、99.3%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、61.9%であった。
【0043】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:99.3%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0044】
実施例
(晶析精製工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,94.5%e.e.(R))、1−プロパノール700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、41℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、17℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩209.6gを得た。その塩の光学純度は、99.5%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、56.1%であった。
【0045】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:99.5%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0046】
実施例
(晶析精製工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,94.5%e.e.(R))、1−ブタノール700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、55℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、18℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩253.5gを得た。その塩の光学純度は、99.5%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、67.9%であった。
【0047】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:99.5%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0048】
実施例
(晶析精製工程)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、(R)−および(S)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸の混合物200g(1.72モル,94.5%e.e.(R))、97重量%の2−プロパノールと3重量%の水を混合した溶媒700gを加え、65℃まで昇温した。60〜70℃でベンジルアミン203g(1.90モル)を滴下し、完溶後、65℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、20℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で1時間熟成してから析出結晶をろ過し、減圧乾燥後、(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩292.3gを得た。その塩の光学純度は、99.7%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、78.3%であった。
【0049】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:99.7%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0050】
比較例1
(晶析精製工程)
実施例1の晶析精製工程において、溶媒を、98重量%の2−プロパノールと2重量%の水を混合した溶媒に、光学精製剤を苛性ソーダに変えた以外は実施例1と同様に操作をおこなった。得られた塩296.5gの光学純度は、94.0%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、77.3%であった。
【0051】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ナトリウム塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:94.0%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0052】
比較例2
実施例1の晶析精製工程において、光学精製剤をN,N−ジメチルベンジルアミンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。20℃まで冷却後も結晶化せず、塩は得られなかった。
【0053】
比較例3
実施例1の晶析精製工程において、光学精製剤をN,N−ジメチルアニリンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。20℃まで冷却後も結晶化せず、塩は得られなかった。
【0054】
比較例4
実施例1の晶析精製工程において、光学精製剤をアニリンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。20℃まで冷却後も結晶化せず、塩は得られなかった。
【0055】
比較例5
実施例1の晶析精製工程において、溶媒をメタノールに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。5℃まで冷却後も結晶化せず、塩は得られなかった。
【0056】
比較例6
(晶析精製工程)
実施例1の晶析精製工程において、溶媒をメチルエチルケトンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。得られた塩281.2gの光学純度は、93.3%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、73.0%であった。
【0057】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:93.3%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0058】
比較例7
(晶析精製工程)
実施例1の晶析精製工程において、溶媒をテトラヒドロフランに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。得られた塩368.8gの光学純度は、95.2%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、96.7%であった。
【0059】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:95.2%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。
【0060】
比較例8
(晶析精製工程)
実施例1の晶析精製工程において、溶媒をアセトンに変えた以外は実施例1と同様の操作をおこなった。得られた塩382.2gの光学純度は、94.5%e.e.であり、仕込みテトラヒドロフラン−2−カルボン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、99.9%であった。
【0061】
(回収工程)
晶析精製工程で得た(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸・ベンジルアミン塩を用いて実施例1の回収工程と同様の操作をおこない、光学純度:94.5%e.e.の(R)−テトラヒドロフラン−2−カルボン酸を得た。