特許第5704196号(P5704196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704196
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】コネクタ端子および電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20150402BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20150402BHJP
【FI】
   H01R12/51
   H01R12/71
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-142065(P2013-142065)
(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公開番号】特開2015-28841(P2015-28841A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2013年7月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆吉
(72)【発明者】
【氏名】八木 境
(72)【発明者】
【氏名】武田 拓也
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4585017(JP,B2)
【文献】 特許第2567792(JP,B2)
【文献】 特開平02−066860(JP,A)
【文献】 特開2003−217770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/51
H01R 12/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された2枚のプリント基板のスルーホールに挿入される、複数の接触片により形成されたプレスフィット端子部が、両端部に形成されたコネクタ端子であって、
前記コネクタ端子は、前記それぞれのプレスフィット端子部を結ぶ仮想中心線のずれに応じて変形する緩衝部を、前記両端部のプレスフィット端子部の間に備え、
前記緩衝部は、複数の弾性片により形成され、前記複数の弾性片のそれぞれの端部を繋ぐ一対の連設部が前記仮想中心線を囲うように折り曲げられて形成されたコネクタ端子。
【請求項2】
前記複数の弾性片は、それぞれが等幅に形成されている請求項記載のコネクタ端子。
【請求項3】
前記複数の弾性片は、それぞれの端部で仮想中心線に接近して集束することで、仮想中心線に沿って平行に配置されている請求項記載のコネクタ端子。
【請求項4】
前記プレスフィット端子部と前記緩衝部との間に、弾性薄板が設けられている請求項1記載のコネクタ端子。
【請求項5】
前記請求項1からのいずれかの項に記載のコネクタ端子を、列状に非固定状態で拘束し、配列させる整列部が設けられ、
前記コネクタ端子には、前記コネクタ端子の仮想中心線方向の移動を規制する抜け防止部が形成されている電気コネクタ。
【請求項6】
前記整列部は、一対設けられたうちの少なくとも一方が前記コネクタ端子を非固定状態で拘束し、配列させており、
前記抜け防止部は、前記一対の整列部の外側同士または内側同士のいずれかに当接して、前記コネクタ端子の仮想中心線方向の移動を規制する一対の突起部で形成され、
前記突起部は、弾性薄板により形成されて前記緩衝部として機能するものである請求項記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向配置された2枚のプリント基板のスルーホールに、両端部のプレスフィット端子部がそれぞれ挿入されることで、基板同士を電気的に接続するコネクタ端子およびそれを用いた電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタとして、棒状のコネクタ端子が列状に配列され、一方の端部の端子部を一方のプリント基板のスルーホールに挿入させ、他方の端部の端子部を他方のプリント基板のスルーホールに挿入させて、2枚のプリント基板に実装された電気回路同士を電気的に接続するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のプリント基板用コネクタは、コネクタ端子(ポストコンタクト)の一端が、L字状に略90°に折り曲げられ、第1のプリント基板上にハンダ付けされ、他端が、第2のプリント基板に雌側コネクタを組み込んだものである。
【0004】
また、特許文献2に記載のプリント基板用ピンヘッダーでは、コネクタ端子(端子ピン)がボード部の上下各端に設けられた上側保持部と下側保持部により保持されていると共に、ボード中央部に設けられ、各コネクタ端子の隙間ごとに設けられた横並びの突起片がコネクタ端子を絶縁している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−29196号公報
【特許文献2】特開平7−230862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリント基板同士を、列状に配置されたコネクタ端子により電気的に接続する電気コネクタにおいては、プリント基板の位置関係が重要である。例えば、プリント基板に設けられたスルーホールにコネクタ端子の端子部を挿入してプリント基板同士を接続するときに、基板同士の位置関係がずれていると、一方の基板のスルーホールに端子部を挿入させられても、他方の基板のスルーホールが端子部から離れて位置するため、挿入できないおそれがある。特に、電気コネクタを複数使用する場合は、他方のプリント基板に挿入できないおそれが高くなる。また、コネクタ端子の弾性変形量を大きくするために、コネクタ端子の断面を小さくすると、コネクタ端子の許容電流が下がってしまう。
【0007】
特許文献1に記載のプリント基板用コネクタでは、一方の端子部が雌側コネクタを介してプリント基板と接続されるので、プリント基板の多少の位置ずれがあっても、雌側コネクタによりずれが吸収できるものと思われる。しかし、プリント基板の位置ずれ吸収のために雌側コネクタを設ける必要があるため、部品点数の増加が伴う。
【0008】
また、特許文献2に記載のプリント基板用ピンヘッダーでは、端子ピンを直接プリント基板に挿入するものの、上下各端に上側保持部と下側保持部によりしっかりと端子ピンが固定され、突起片は端子ピン同士を隔離しているだけである。従って、プリント基板同士の位置関係がずれていると、端子ピンの位置およびその間隔は上側保持部と下側保持部により規制されてしまっているため、一方の基板のスルーホールに端子部を挿入させられても、他方の基板のスルーホールに挿入できないおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、コネクタ端子の強度と許容電流を確保しつつ、プリント基板に端子部を確実に挿入することができることで、接続性を向上させることができるコネクタ端子および電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対向配置された2枚のプリント基板のスルーホールに挿入される、複数の接触片により形成されたプレスフィット端子部が、両端部に形成されたコネクタ端子であって、前記コネクタ端子は、前記それぞれのプレスフィット端子部を結ぶ仮想中心線のずれに応じて変形する緩衝部を、前記両端部のプレスフィット端子部の間に備え、前記緩衝部は、複数の弾性片により形成され、前記複数の弾性片のそれぞれの端部を繋ぐ一対の連設部が前記仮想中心線を囲うように折り曲げられて形成されたことを特徴とする。
【0011】
本発明のコネクタ端子によれば、2枚のプリント基板同士の位置関係がずれていても、プレスフィット端子部を結ぶ仮想中心線のずれに応じて変形する緩衝部が形成されているので、プレスフィット端子部に仮想中心線のずれによる過度な応力が掛からない。従って、一方のプレスフィット端子部をプリント基板へ挿入した状態で、なんら支障なく、他方のプレスフィット端子部をプリント基板へ挿入することができる。また、複数の弾性片のそれぞれを、仮想中心線の撓み方向に応じて変形させることができると共に、プリント基板間に流れる電流が大電流であっても導通を図ることができる。
【0012】
また、前記緩衝部は、前記複数の弾性片のそれぞれの端部を繋ぐ一対の連設部が仮想中心線を囲うように折り曲げられて形成されている。連設部により複数の弾性片が略U字状、略C字状、円弧状にまとまるので、剛性を確保しつつ、弾性片全体で各方向に偏りなく曲げることができる。
更に、前記複数の弾性片は、それぞれが等幅に形成されていると、弾性片の撓み位置が限定されず、弾性片全体でしなやかに撓ませることができる。
前記複数の弾性片は、それぞれの端部で仮想中心線に接近して集束することで、仮想中心線に沿って平行に配置されていることにより、弾性片を離間させて配置された状態と比較して、弾性変形が容易であるため、撓みやすい緩衝部とすることができる。
【0013】
前記プレスフィット端子部と前記緩衝部との間に、弾性薄板を設けることもできる。弾性薄板であれば板厚方向に仮想中心線がずれても弾性薄板を撓ませることができるので、コネクタ端子に、より柔軟性を持たせることができる。
【0014】
本発明の電気コネクタは、本発明のコネクタ端子を、列状に非固定状態で拘束し、配列させる整列部が設けられ、前記コネクタ端子には、前記コネクタ端子の仮想中心線方向の移動を規制する抜け防止部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の電気コネクタによれば、プリント基板同士の位置関係がずれていても、コネクタ端子が整列部に非固定状態で拘束されているため、プレスフィット端子部を電極用スルーホールの方向へ寄せることができるので、プレスフィット端子部をスルーホールに挿入することができる。このとき、コネクタ端子は抜け防止部により仮想中心線方向の移動が規制されているため、コネクタ端子が非固定状態であっても、プレスフィット端子部をプリント基板のスルーホールへ圧入することができる。
【0016】
前記整列部は、一対設けられたうちの少なくとも一方が前記コネクタ端子を非固定状態で拘束し、配列させており、前記抜け防止部は、前記一対の整列部の外側同士または内側同士のいずれかに当接して、前記コネクタ端子の仮想中心線方向の移動を規制する一対の突起部で形成され、前記突起部は、弾性薄板により形成されて前記緩衝部として機能するものであるのが望ましい。
【0017】
抜け防止部が、一対の整列部の外側同士または内側同士のいずれかに当接して、コネクタ端子の仮想中心線方向の移動を規制する一対の突起部で形成されていることで、コネクタ端子が整列部に非固定状態であっても仮想中心線方向へ移動しない。この突起部が弾性薄板により形成されて緩衝部として機能するものであると、プリント基板同士の位置関係がずれていても、プレスフィット端子部を結ぶ仮想中心線のずれに応じて弾性薄板が変形するので、プレスフィット端子部に仮想中心線のずれによる過度な応力が掛からない。従って、一方のプレスフィット端子部をプリント基板へ挿入した状態で、なんら支障なく、他方のプレスフィット端子部をプリント基板へ挿入することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、プレスフィット端子部を電極用スルーホールの方向へ寄せることができることにより、プリント基板同士の位置関係にずれがあっても、それぞれのプリント基板にプレスフィット端子部を確実に挿入することができるので、コネクタ端子の強度と許容電流を確保しつつ、接続性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1に係る電気コネクタにより2枚のプリント基板を接続した状態を示す斜視図である。
図2図1に示す電気コネクタの正面図である。
図3図2に示す電気コネクタの平面図である。
図4図2に示す電気コネクタの背面図である。
図5図2に示す電気コネクタのA−A線断面図である。
図6図2に示す電気コネクタのB−B線断面図である。
図7図5に示す電気コネクタの第1整列部の一部拡大図である。
図8図6に示す電気コネクタの第2整列部の一部拡大図である。
図9図1に示す電気コネクタのベース部を示す斜視図である。
図10図1に示す電気コネクタのコネクタ端子を示す斜視図である。
図11図10に示すコネクタ端子の正面図である。
図12図10に示すコネクタ端子の側面図である。
図13図11に示すコネクタ端子のC−C線断面図である。
図14図11に示すコネクタ端子を展開した状態の図である。
図15】コネクタ端子の仮想中心線が後方へ湾曲した状態を示す側方からの端子ピンの垂直断面図である。
図16】コネクタ端子の仮想中心線が後方へ湾曲した状態を示す整列部の位置の端子ピンの水平断面図である。
図17】コネクタ端子の仮想中心線が前方へ湾曲した状態を示す側方からの端子ピンの垂直断面図である。
図18】コネクタ端子の仮想中心線が前方へ湾曲した状態を示す整列部の位置の端子ピンの水平断面図である。
図19】コネクタ端子の仮想中心線が左方向へ湾曲した状態を示す正面からの端子ピンの垂直断面図である。
図20】コネクタ端子の仮想中心線が左方向へ湾曲した状態を示す整列部の位置の端子ピンの水平断面図である。
図21】コネクタ端子の仮想中心線が右方向へ湾曲した状態を示す正面からの端子ピンの垂直断面図である。
図22】コネクタ端子の仮想中心線が右方向へ湾曲した状態を示す整列部の位置の端子ピンの水平断面図である。
図23】本発明の実施の形態2に係る電気コネクタのコネクタ端子を示す斜視図である。
図24図23に示すコネクタ端子の正面図である。
図25図23に示すコネクタ端子の側面図である。
図26図23に示すコネクタ端子を展開した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る電気コネクタを図面に基づいて説明する。図1および図2に示す電気コネクタ10は、対向配置された2枚のプリント基板P1、P2を電気的に接続する車載用の電気コネクタである。
電気コネクタ10は、略棒状のコネクタ端子20と、列状に配置されるコネクタ端子20を支持してプリント基板P1,P2に固定するベース部30とを備えている。
【0021】
図10から図13に示すコネクタ端子20は、両端部に形成され、それぞれのプリント基板P1、P2に形成された電極用スルーホール(図示せず)に挿入されるプレスフィット端子部21と、コネクタ端子20の仮想中心線L方向の移動を規制する抜け防止部として機能する突起部22と、プレスフィット端子部21を結ぶ仮想中心線Lのずれに応じて変形する緩衝部23とを備えている。コネクタ端子20は、図14に示す弾力性を有する1枚の金属板210に曲げ加工を施すことによって形成される。
【0022】
プレスフィット端子部21(第1プレスフィット端子部21a,第2プレスフィット端子部21b)は、半田付けなしにプリント基板P1,P2と接続することができるプレスフィット形状に形成された端子である。プレスフィット端子部21は、図10に示すように、横断面がU字形状をなす中軸部211と、く字形状をなす複数の接触片212の長手方向が中軸部211の長手方向に沿うように、かつ外に凸をなす状態で中軸部211を囲繞するように等間隔に配置して形成された接触部213とを備えている。中軸部211の周囲にて樽形状をなす接触部213は、弾性的に縮径・拡径可能な構造をなしている。また、接触部213を構成する複数の接触片212の先端側および基端側にはそれぞれ、中軸部211を包囲する断面C字形状の連設部214,215が設けられている。
【0023】
突起部22(第1突起部22a,第2突起部22b)は、図10から図13に示すように、それぞれのプレスフィット端子部21の基端側に隣接する位置で、プレスフィット端子部21より幅方向に突出したものであって、ベース部30の後述する整列部の外側となる位置に当接するように設けられている。プリント基板P1側の一方の第1突起部22aは、プリント基板P2側の他方の第2突起部22bよりも長さ方向が長く、幅方向は同じであり、弾性薄板により形成されることで、緩衝部としても機能するものである。
【0024】
緩衝部23は、両端部に設けられたプレスフィット端子部21の間で、コネクタ端子20の中央部となる位置に形成されている。緩衝部23は、図10および図14に示すように、等幅で、等間隔に平行に配置した複数の弾性片231と、複数の弾性片231の両端部に設けられた連設部232,233とにより形成されている。
緩衝部23は、連設部232,233が断面U字形状に仮想中心線Lを囲うように折り曲げられて形成される。複数の弾性片231が、それぞれの端部231aで仮想中心線Lに接近して集束することで、仮想中心線Lに沿って平行に配置されている。
【0025】
複数の弾性片231により形成された緩衝部23は、長さが厚みの2倍以上とするのが、弾性を伴う変形しやすさを確保するという観点から望ましい。
図13に示すように、連設部232,233が断面U字形状となるように折り曲げて3枚の弾性片231を緩衝部23としているため、緩衝部23の厚みは、弾性片231の2枚分である。本実施の形態では、1枚の弾性片231の板厚を約0.4mmとしているため、緩衝部23の厚みは約0.8mmである。従って、緩衝部23の長さは、約1.6mm以上とするのが望ましく、図11に示す例では、緩衝部23の長さは、幅の約4倍としている。
【0026】
なお、本実施の形態では、3本の弾性片231が連設部232,233に連設されており、それぞれの弾性片231を接近させ、集束した状態で緩衝部23を形成している。そのため、連設部232,233をU字状に折り曲げることで、3本の弾性片231を連設部232,233の各辺に均等に配置している。
例えば、弾性片231が4本であれば、連設部232,233を断面四角形状にしたり、弾性片231が5本であれば断面五角形にしたり、更に連設部232,233をC字状や円弧状としたりすることができる。そうした場合でも、弾性片231を、それぞれの端部231aで仮想中心線Lに接近させ、集束させることで、仮想中心線Lに沿って平行に配置するのが望ましい。
【0027】
ここで、コネクタ端子20の製造方法について、図14に基づいて説明する。
まず、両端部の中軸部211を、仮想中心線Lを中心として、横断面がU字形状をなすように折り曲げた後、中軸部211と接触部213との間に位置する折り返し部24を、横切る折り返し位置241を中心にして、U字形状をなした中軸部211を接触部213に向かって180度折り曲げる。
この後、仮想中心線Lと交差する方向に位置する接触部213の辺縁部である連設部214,215がC字形状となるように曲げ加工を施し、仮想中心線Lと平行をなす接触片212がく字形状となるように曲げ加工を施し、接触部213が中軸部211を囲繞する樽形状をなすようにする。
そして、弾性片231の中央部を直線状に維持した状態で端部231aに折り目を入れた後、仮想中心線Lと交差する方向に位置する緩衝部23の辺縁部である連設部232,233がU字形状となるように曲げ加工を施して、仮想中心線Lと平行をなす弾性片231をまとめれば、図10から図13に示すコネクタ端子20が完成する。
図14に示すように、展開状態の複数の弾性片231が、等幅で、等間隔に平行であり、図10から図13に示すように、連設部232,233を折り曲げたときの弾性片231が、端部231aで、仮想中心線Lに接近して集束することで、複数の弾性片231が、折れ曲がることなく、仮想中心線Lに沿って当接する程度に接近した状態で平行に配置される。
【0028】
図3から図9に示すように、ベース部30は、樹脂成形により略H字形状に形成されている。ベース部30は、列状に配置されたコネクタ端子20の一端から他端まで列方向に沿う支持部31と、コネクタ端子20を列状に配列させる一対の整列部32と、整列部32に差し込まれたコネクタ端子20を固定状態としたり、非固定状態としたりする凸部33(図7および図8参照)と、プリント基板P1,P2に固定するための固定脚部34とにより形成されている。
【0029】
支持部31は、略矩形状に形成されている。
整列部32(第1整列部32a,第2整列部32b)は、コネクタ端子20の配列数に対応させて等間隔に列状に配置された一対の爪部321と、緩衝部23を間に位置させる一対のガイド壁322とにより形成されている。
【0030】
一対の爪部321は、支持部31から突出してコネクタ端子20が差し込まれるときに弾性変形する腕部321aと、腕部321aの先端部に形成され、奥側に向かうに従って間隔が狭くなる楔部321bとを備えている。一対の爪部321の間隔が拡がった奥部(腕部321aの間)がコネクタ端子20を収容する略矩形状の空間である収容室Rとなっている。
第1整列部32a(プリント基板P1側)の一対の爪部321(図2においては上側)は、図7に示すように、コネクタ端子20の差し込み方向の腕部321aの内壁とコネクタ端子20との間に、隙間ができるように形成されている。
第2整列部32b(プリント基板P2側)の一対の爪部321(図2においては下側)は、図8に示すように、差し込み方向の腕部321aの内壁がコネクタ端子20に当接して隙間ができないように、出っ張りが形成されている。
【0031】
凸部33(第1凸部33a,第2凸部33b)は、一対の爪部321の腕部321aの間の支持部31から爪部321の先端側へ向かって突出させている。
第1整列部32a(プリント基板P1側)の第1凸部33aは、図7に示すように、緩衝部23の連設部233が収容室Rに収容されても、差し込み方向と交差する方向の楔部321bの内壁とコネクタ端子20との間、およびコネクタ端子20と第1凸部33aの先端面とのいずれかまたは両方の間に隙間ができた状態となることで、コネクタ端子20を非固定状態としている。
第2整列部32b(プリント基板P2側)の第2凸部33bは、図8に示すように、緩衝部23の連設部232が収容室Rに収容されると、コネクタ端子20の差し込み方向と交差する方向の楔部321bの内壁と第2凸部33bの先端面とでコネクタ端子20を挟持した状態となることで、固定状態としている。
【0032】
固定脚部34は、支持部31の両端部に設けられている。固定脚部34は、プリント基板P1,P2に形成された案内用スルーホール(図示せず)に挿入されることで、プリント基板P1,P2の間隔を維持してベース部30をプリント基板P1,P2の間に固定すると共に、コネクタ端子20を補強する機能を備えている。固定脚部34は、段差を有する両端面の突出側の先端面がプリント基板P1,P2の基板面に当接することで、プリント基板P1,P2の間隔を確保する当接部341と、当接部341の両端部のそれぞれから、仮想中心線L方向に突出した挿入部342とから形成されている。
挿入部342は、一対の半円筒形状を対向させて円筒形とし、プリント基板P1,P2に挿入されたときに案内用スルーホールの開口縁に係止する楔部が先端に形成された構成である。
【0033】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る電気コネクタの使用状態について、図面に基づいて説明する。
まず、図2に示すように、プリント基板P2の案内用スルーホールに一方の挿入部342を挿入すると共に、プリント基板P2に列状に形成された電極用スルーホールに、それぞれの第2プレスフィット端子部21bを圧入する。
【0034】
また、プリント基板P2側の第2プレスフィット端子部21bを電極用スルーホールに圧入するために仮想中心線L方向に力が掛かっても、プリント基板P2側の第2突起部22bが爪部321に引っ掛かるため、コネクタ端子20は仮想中心線L方向への移動が規制される。従って、コネクタ端子20は仮想中心線L方向へ移動しないため、プリント基板P2側の第2プレスフィット端子部21bをプリント基板P2の電極用スルーホールへ圧入することができる。
【0035】
次に、プリント基板P1を電気コネクタ10の上方に位置させ、他方の挿入部342をプリント基板P1の案内用スルーホールに挿入すると共に、プリント基板P1に列状に形成された電極用スルーホールに、他方のそれぞれの第1プレスフィット端子部21aを挿入する。
【0036】
第1プレスフィット端子部21aおよび第2プレスフィット端子部21bが、図14に示すように、中軸部211を中心として、接触片212を囲繞させて形成され、U字形状とした中軸部211が芯となって補強しているため、図10に示すプレスフィット端子部21の仮想中心線Lが湾曲することなく、プレスフィット端子部21をプリント基板P1に挿入することができる。また、弾性変形した接触片212の復帰力によりプリント基板P1の電極用スルーホールの内周面に半田付けなしに密着した状態で接触させることができるので、しっかりと導通を図ることができる。
【0037】
このとき、プリント基板P1,P2の位置関係がずれ、プリント基板P1の電極用スルーホールの位置がプリント基板P2の電極用スルーホールの位置と少しずれていても、プリント基板P1側(図1においては上側)の第1整列部32aの収容室Rでは、図7に示すように、コネクタ端子20が非固定状態で拘束されているため、第1プレスフィット端子部21aを電極用スルーホールの方向へ寄せることができるので、第1プレスフィット端子部21aを電極用スルーホールに挿入することができる。
図2に示すコネクタ端子20はプリント基板P1,P2の位置関係がずれたまま挿入されると、コネクタ端子20の仮想中心線Lがずれ、仮想中心線Lの曲がりが生じる。
しかし、コネクタ端子20に緩衝部23が形成されているため、緩衝部23の弾性片231(図14参照)がプリント基板P1側の一方の第1プレスフィット端子部21aとプリント基板P2側の他方の第2プレスフィット端子部21bとの仮想中心線Lのずれに応じて変形することで、第1プレスフィット端子部21aまたは第2プレスフィット端子部21bに過度な応力が掛からない。緩衝部23は、複数の弾性片231により形成したものであるため、仮想中心線Lのずれの方向に応じて変形させることができると共に、プリント基板P1,P2間に流れる信号が大電流であっても導通を図ることができる。
【0038】
例えば、第1整列部32a(プリント基板P1側)の第1プレスフィット端子部21aが挿入される電極用スルーホールが、プリント基板P2側の電極用スルーホールに対して、支持部31側(後方)へずれていた場合には、図15および図16に示すように、コネクタ端子20が第1整列部32aの収容室R内で、収容室Rの後壁となる第1凸部33aに当接する範囲まで、緩衝部23を撓ませることができるので、コネクタ端子20を後方へ向かって湾曲させることができる。
【0039】
また、第1整列部32a(プリント基板P1側)の電極用スルーホールが、プリント基板P2側の電極用スルーホールに対して、支持部31と反対側(前方)へずれていた場合には、図17および図18に示すように、コネクタ端子20が第1整列部32aの収容室R内で、収容室Rの前壁となる楔部321bに当接する範囲まで、緩衝部23を撓ませることができるので、コネクタ端子20を前方へ向かって湾曲させることができる。
【0040】
また、第1整列部32a(プリント基板P1側)の電極用スルーホールが、プリント基板P2側の電極用スルーホールに対して、前後方向と交差する一方の方向(例えば、左方向)へずれていた場合には、図19および図20に示すように、コネクタ端子20が第1整列部32aの収容室R内で、収容室Rの左壁となる一方の腕部321aの内側壁に当接する範囲まで、緩衝部23を撓ませることができるので、コネクタ端子20を左方向へ向かって湾曲させることができる。
【0041】
更に、第1整列部32a(プリント基板P1側)の電極用スルーホールが、プリント基板P2側の電極用スルーホールに対して、前後方向と交差する他方の方向(例えば、右方向)へずれていた場合には、図21および図22に示すように、コネクタ端子20が第1整列部32aの収容室R内で、収容室Rの右壁となる他方の腕部321aの内側壁に当接する範囲まで、緩衝部23を撓ませることができるので、コネクタ端子20を右方向へ向かって湾曲させることができる。
このように、プリント基板P1,P2の位置関係が相対的に前後左右方向へずれていても、このずれに対応させてコネクタ端子20をプリント基板P1,P2のそれぞれに挿入させることができる。
【0042】
特に、複数の弾性片231が、それぞれの端部231aで仮想中心線Lに接近して集束して、仮想中心線Lに沿って平行に配置されていることにより、弾性片が離間した状態と比較して、弾性変形が容易であるため、撓みやすい緩衝部23とすることができる。
【0043】
また、プリント基板P1側の第1プレスフィット端子部21aを電極用スルーホールに圧入するために仮想中心線L方向に力が掛かっても、第1突起部22aが第1整列部32aの爪部321に引っ掛かるため、コネクタ端子20は仮想中心線L方向への移動が規制される。従って、コネクタ端子20が第1整列部32aの収容室Rにて非固定状態であっても、コネクタ端子20は仮想中心線L方向へ移動しないため、第1プレスフィット端子部21aをプリント基板P1の電極用スルーホールへ圧入することができる。
従って、第2プレスフィット端子部21bをプリント基板P2へ挿入した状態で、なんら支障なく、第1プレスフィット端子部21aをプリント基板P1へ挿入することができる。
【0044】
特に、プリント基板P1とプリント基板P2とに複数の列状に形成された電極用スルーホールが平行に形成され、これらの電極用スルーホールを複数の電気コネクタ10で導通接続する場合には、列状の電極用スルーホール同士の間隔や、それぞれの電極用スルーホールの間隔に少しのずれがあると、これらが累積され、大きなずれとなる。このような場合でも、第1整列部32aの収容室Rではコネクタ端子20が非固定状態で拘束されており、コネクタ端子20に緩衝部23が形成されているため、プレスフィット端子部21(第1プレスフィット端子部21a,第2プレスフィット端子部21b)のそれぞれの向きが1ピンごとにずれていても、プレスフィット端子部21をずれた方向へ寄せることができるので、コネクタ端子20を双方のプリント基板P1,P2に無理なく挿入することができる。
このように、電気コネクタ10は、双方のプリント基板P1.P2にプレスフィット端子部21を確実に挿入することができるので、コネクタ端子の強度と許容電流を確保しつつ、接続性を向上させることができる。
また、コネクタ端子20が、平行に対向配置されたプリント基板P1,P2に対しての仮想中心線Lを傾斜させた状態で挿入されても、接触片212が更に弾性変形してスルーホールへの過度な応力が掛かることを軽減することができる。
【0045】
また、一対の整列部32の間に緩衝部23を位置させて、コネクタ端子20を一対の爪部321の間の隙間に差し込み、一対の爪部321を弾性変形させながら、コネクタ端子20の仮想中心線Lと交差する方向となる奥側へ進めることで、収容室Rへ案内することができるので、ベース部30を成形した後にコネクタ端子20を装着することができる。従って、ベース部30を成形する際にコネクタ端子20を一緒に成形型内にセットしてなくてもよい。
また、収容室Rは凸部33(第1凸部33a,第2凸部33b)の長さと腕部321aの間隔とにより、コネクタ端子20を固定状態としたり、非固定状態としたり、また非固定状態でも揺動範囲を決定したりすることができるので、容易に固定状態を調整することができる。
【0046】
図12から図22に示す例では、緩衝部23が仮想中心線Lのずれに応じて変形していたが、第1突起部22aが、幅方向より長さ方向が長い弾性薄板により形成されているため、板厚方向に仮想中心線Lがずれても弾性薄板を撓ませることができるので緩衝部として機能させることができる。従って、コネクタ端子20により柔軟性を持たせることができる。
【0047】
車両搭載の電子機器に使用されるプリント基板などでは−20〜80℃という幅広い温度変化により熱による膨張収縮が生じる。電気コネクタを半田付けによりプリント基板に接続する場合では、プリント基板の膨張収縮により半田に大きな応力が掛かり、この応力の繰り返しにより半田にクラックが発生し、最終的に導通不良を招く。しかし、電気コネクタ10は、プレスフィット端子部21がプレスフィット端子により形成されているため、プリント基板P1,P2に挿入するだけで、半田付けなしに接続を完了させることができる。従って、プリント基板の膨張収縮による、導通不良を抑制することができる。
【0048】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るコネクタ端子を図面に基づいて説明する。なお、図23から図25においては図10から図12と、図26においては図14と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
コネクタ端子20xは、第2突起部22bxが、第1突起部22aと同じ大きさに形成されていることを特徴とするものである。
【0049】
第2突起部22bxが、図10に示す第2突起部22bより大きく形成され、幅方向より長さ方向が長い弾性薄板により形成されているため、第2突起部22bxにおいても、板厚方向に仮想中心線Lがずれるような作用が加わっても、弾性薄板を撓ませることができるので緩衝部として機能させることができる。従って、実施の形態1に係るコネクタ端子20より、更に、コネクタ端子20xに柔軟性を持たせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、2枚の基板にそれぞれ設けられた端子であるスルーホールに、列状に配置されたコネクタ端子の両端部のプレスフィット端子部が挿入されることで、基板同士を電気的に接続する電気コネクタに好適であるため、プリント基板と嵌合する各種電気・電子機器用のコネクタ、あるいは車載用のコネクタとして、電気・電子産業や自動車産業などの分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 電気コネクタ
20,20x コネクタ端子
21 プレスフィット端子部
21a 第1プレスフィット端子部
21b 第2プレスフィット端子部
210 金属板
211 中軸部
212 接触片
213 接触部
214,215 連設部
22 突起部
22a 第1突起部
22b,22bx 第2突起部
23 緩衝部
231 弾性片
231a 端部
232,233 連設部
24 折り返し部
241 折り返し位置
30 ベース部
31 支持部
32 整列部
32a 第1整列部
32b 第2整列部
321 爪部
321a 腕部
321b 楔部
322 ガイド壁
33 凸部
33a 第1凸部
33b 第2凸部
34 固定脚部
341 当接部
342 挿入部
R 収容室
P1,P2 プリント基板
L 仮想中心線
図1
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