特許第5704252号(P5704252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704252
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】プリノン誘導体塩酸塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/34 20060101AFI20150402BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   C07D473/34 321
   C07D473/34CSP
   A61P43/00 111
   A61P37/08
   A61P37/02
   A61P29/00
   A61P7/02
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K31/522
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-547190(P2013-547190)
(86)(22)【出願日】2012年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2012080769
(87)【国際公開番号】WO2013081016
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-259662(P2011-259662)
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】山本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 敏男
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504324(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/152351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩。
【請求項2】
6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩の結晶。
【請求項3】
6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩を含有してなる医薬組成物。
【請求項4】
Btk阻害剤である請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、血栓塞栓性疾患、または癌から選択されるBtk関連疾患の予防および/または治療剤である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
癌が、非ホジキンリンパ腫である請求項5記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Btk阻害活性を有し、自己免疫疾患、癌等の治療薬として有用な、6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オンの塩酸塩(以下、本発明化合物と略記することがある。)、その結晶およびその医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルトン型チロシンキナーゼ(Bruton’s tyrosine kinase;以下、Btkと略記する。)は、非受容体型チロシンキナーゼであるTecファミリーキナーゼに属し、B細胞系および骨髄球系の細胞に選択的に発現する。Btkは、B細胞のシグナル伝達に重要な役割を担い、B細胞の生存、分化、増殖および活性化等に寄与する因子である。B細胞抗原受容体(B-cell antigen receptor;BCR)を介したB細胞のシグナルは、広範囲に亘る生物学的な反応を誘導し、そのシグナル伝達が異常な場合には、B細胞の異常な活性化や病原性の自己抗体の形成等が引き起こされる。BtkはこのBCRを介したB細胞へのシグナル伝達経路の一部を担っていると考えられている。そのため、ヒトBtk遺伝子の欠損により、B細胞の異常分化が誘導され、免疫グロブリンの産生が著しく低下するため、X連鎖性無ガンマグロブリン血症(XLA)が発症することが知られている(非特許文献1参照)。この疾患の症状としては、末梢血においてB細胞が著しく減少することや、細菌感染に対する感受性が増加すること等が挙げられる。また、Btkは肥満細胞の活性化や血小板の生理機能に関与することも知られている。そのため、Btk阻害活性を有する化合物は、B細胞や肥満細胞が関与する疾患、例えば、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、血栓塞栓性疾患、癌等の治療に有用である(非特許文献2参照)。
【0003】
ところで、本発明の先行技術として、以下の化合物が知られている。
Btk阻害活性を有する化合物として、一般式(A)
【化1】
(式中、Lは、CH、O、NHまたはSを表し、;Arは、置換または無置換のアリール、または置換または無置換のヘテロアリールを表し、;Yは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される任意の置換基を表し、;ZはCO、OCO、NHCO、CSを表し、;R7−AおよびR8−Aは独立して、H、無置換のC1−C4アルキル、置換されたC1−C4アルキル、無置換のC1−C4ヘテロアルキル、置換されたC1−C4ヘテロアルキル、無置換のC3−C6シクロアルキル、置換されたC3−C6シクロアルキル、無置換のC2−C6ヘテロシクロアルキル、および置換されたC2−C6ヘテロシクロアルキルを表し、;またはR7−AおよびR8−Aは一緒になって結合手を形成する、;R6−Aは、H、置換または無置換のC1−C4アルキル、置換または無置換のC1−C4ヘテロアルキル、C1−C6アルコキシアルキル、C1−C8アルキルアミノアルキル、置換または無置換のC3−C6シクロアルキル、置換または無置換のアリールを表す(但し、各基の定義は抜粋した。)。)で示される化合物が知られている(特許文献1、2および3参照)。
【0004】
一方、プリノン骨格を有する化合物としては、例えば、一般式(B)
【化2】
(式中、Q1BおよびQ2Bは独立して、CX1B、CX2Bおよび窒素から選択され;Q3BはNまたはCHを表し、;X1BおよびX2Bは独立して水素、(C1−C6)アルキル、シアノおよびハロ等からなるグループから選択され、;R1Bは、水素および(C1−C6)アルキルからなるグループから選択され;yBは0または1〜3の整数を表し、;R2BおよびR3Bは独立して、水素および(C1−C6)アルキルから選択され、;R4Bはアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリール等からなるグループから選択され、;R5Bは、アルキル、ヘテロシクリル、および置換されたヘテロシクリルからなるグループから選択される(但し、各基の定義は抜粋した。)。)で示される化合物が知られている(特許文献4参照)。
【0005】
また、一般式(C)
【化3】
(式中、Xは、窒素およびCR8Cからなる群から選択され、R8Cは水素、ハロゲン、および置換または無置換のアルキル等からなる群から選択され、;Q1Cは、O、S等からなる群から選択され、Zは、酸素、硫黄、およびNY5Cからなる群から選択され、Y5Cは水素、および置換または無置換のアルキル等からなる群から選択され、;Q2C、Q3CおよびQ4Cは独立して、水素、置換または無置換のアルキル、および置換または無置換のアリール等からなる群から選択され、;R2Cは、水素および置換または無置換のアルキルからなる群から選択され、;nCは0、1、2、3または4を表す(但し、各基の定義は抜粋した。)。)で示される化合物が知られている(特許文献5参照)。
【0006】
さらに、特許文献6には、プリノン骨格を有する化合物が、式20として開示されている(段落0028参照)。
【0007】
本発明は、6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オンの塩酸塩に関し、当該塩酸塩がBtk選択的な阻害作用を有し、代謝安定性に優れることに加え、遊離塩基に対して溶解性、吸収性に優れることについて、いずれの先行技術文献にも記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−504324号公報
【特許文献2】国際公開第2008/121742号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2010/009342号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/060301号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2007/142755号パンフレット
【特許文献6】特表2003−509427号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ネイチャー(Nature)、第361巻、226−233ページ、1993年
【非特許文献2】アンチキャンサー・エージェンツ・イン・メディシナル・ケミストリー(Anticancer Agents in Medicinal Chemistry)、第7巻、第6号、624−632ページ、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、安全性に優れたB細胞や肥満細胞が関与する疾患の治療剤を提供するため、Btk選択的な阻害活性を有し、代謝安定性に優れることに加え、遊離塩基に対して溶解性、吸収性に優れた化合物を開発することにある。さらに、医薬品原薬として安定性に優れ、長期保存が可能な結晶化し得る化合物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明化合物が、Btk選択的な阻害活性を有し、代謝安定性に優れることに加え、遊離塩基に対して溶解性および吸収性に優れ、結晶化し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、
[1] 6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩、
[2] 6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩の結晶、
[3] 粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.11、8.43、11.57、12.73、13.85、14.20、14.67、14.91、15.94、16.64、18.06、19.74、20.42、21.05、22.57、23.21、23.85、および24.70度から選択される2θで少なくとも2つ以上のピークを有する前記[2]記載の結晶、
[4] 粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.11、8.43、14.20、14.67、14.91および23.21度2θにピークを有する前記[2]または[3]記載の結晶、
[5] 粉末X線回折スペクトルにおいて、約8.11、8.43、11.57、12.73、13.85、14.20、14.67、14.91、15.94、16.64、18.06、19.74、20.42、21.05、22.57、23.21、23.85、および24.70度2θにピークを有する前記[2]乃至[4]のいずれかに記載の結晶、
[6] 図3に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする前記[2]乃至[5]のいずれかに記載の結晶、
[7] 示差走査熱量測定において、ピーク温度が約216℃の吸熱ピークを有する前記[2]乃至[6]のいずれかに記載の結晶、
[8] 図4に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする前記[2]乃至[7]のいずれかに記載の結晶、
[9] 6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩を含有してなる医薬組成物、
[10] Btk阻害剤である前記[9]記載の医薬組成物、
[11] Btk関連疾患の予防および/または治療剤である前記[10]記載の医薬組成物、
[12] Btk関連疾患が、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、血栓塞栓性疾患、骨関連疾患または癌である前記[11]記載の医薬組成物、および
[13] 癌が、非ホジキンリンパ腫である前記[12]記載の医薬組成物等に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明化合物は、Btk選択的な阻害活性を有し、代謝安定性に優れることに加え、遊離塩基に対して溶解性、吸収性に優れた化合物であるため、安全性に優れた非ホジキンリンパ腫等のB細胞や肥満細胞が関与する疾患の治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オンの結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを表す。(図1中、縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)
図2】6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オンの結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す。
図3】6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩の結晶の粉末X線回折スペクトルチャートを表す。(図3中、縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)
図4】6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩の結晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「Btk選択的な阻害活性を有する」とは、Btk以外のチロシンキナーゼ、特にLck、Fyn、LynAに対してBtk選択的な阻害活性を有することを意味する。この特性により、他のチロシンキナーゼを阻害することによって引き起こされる予期できない副作用を回避できる。
【0016】
本発明において、6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン(以下、化合物Aと略記することがある。)とは、以下の構造式
【化4】
(式中、記号
【化5】
は、β配置を表す。)で示される化合物を意味する。
【0017】
[化合物Aの酸付加塩の検討]
後記する実施例8で製造した化合物Aと種々の酸性カウンターを用いて、以下の方法で化合物Aの酸付加塩のカウンタースクリーニングを行った。化合物Aのモル用量と同量の種々の酸性カウンターとを混合して得られる非晶質の粉末に、工程(1)としてメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を加えた後、ミクロスパーテルで擦り、工程(2)として前記工程(1)で結晶が析出しなかった場合はメタノールを加えて、自然乾燥させた。このスクリーニングにより、結晶が得られた場合には、下記の条件で物性データを測定した。なお、予め化合物Aの結晶について、下記の条件で物性データを取得し、前記スクリーニングで得られた結晶の物性データとの比較を行った。
【0018】
[1]粉末X線回折スペクトル
<測定条件>
装置:BRUKER axs製BRUKER D8 DISCOVER with GADDS、
ターゲット:Cu、
フィルター:なし、
電圧:40kV、
電流:40mA、
露光時間:3min。
【0019】
[2]示差走査熱量測定(DSC)
<測定条件>
装置:METTLER TOLEDO製DSC 822e、
試料量:1〜2mg、
試料セル:アルミパン40μL、
窒素ガス流量:40mL/min、
昇温速度:10℃/min(25〜240℃)。
【0020】
化合物Aの結晶の粉末X線回折スペクトルを図1に、示差走査熱量測定(DSC)チャートを図2にそれぞれ示す。また、粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θおよび相対強度を以下の表1に示す。
【表1】
【0021】
また、化合物Aの結晶は、図2に示す通り、約169℃のオンセット温度および約172℃のピーク温度で示される融解に対応する吸熱ピークを示した。
【0022】
以下の表2に示す通り、18種類の酸性カウンターを用いて、前記スクリーニングを行った。
【表2】
【0023】
その結果、工程(1)からはいずれも結晶が析出せず、工程(2)において10種の酸性カウンター(酢酸、クエン酸、(+)−酒石酸、リン酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、1−ヒドロキシ−2−ナフト酸、安息香酸、およびニコチン酸)から結晶が得られたものの、これらの結晶は、すべて化合物Aの結晶と粉末X線回折スペクトルチャートが一致したことから、塩を形成していないことがわかった。一方、残り8種の酸性カウンター(塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、(−)−カンファースルホン酸、(+)−カンファースルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸)からは結晶性の粉末は得られなかったが、化合物Aの結晶が析出しなかったことから、塩を形成していると考えられた。よって、これら8種の酸性カウンターについては、さらに次の結晶化検討を行った。
【0024】
[化合物Aの塩の結晶化検討]
酸性カウンターとして、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸を用い、溶媒としてメタノール、2−プロパノール、アセトン、トルエン、酢酸エチル、アセトニトリル、MTBE、n−ヘプタンを用い、自動結晶化装置(Freeslate製Core Module(X))を用いて、化合物Aの塩の結晶化を検討した。結晶化方法として、スラリー法(50℃〜室温まで自然放冷)、冷却法(50℃〜10℃、−10℃/h)、沈殿法(50℃溶解、室温析出)、蒸発濃縮法(50℃溶解、室温蒸発)の4条件を設定し、溶媒・結晶化方法を組み合せて、各塩に対して72通りの結晶化条件を設定した。その結果、いずれの塩からも結晶性の粉末が得られなかった。
【0025】
一方、酸性カウンターとして塩酸を用い、同様の結晶化検討を行ったところ、溶媒として1,2−ジメトキシエタン(DME)を用いた場合に、結晶性の粉末が得られ、前記の条件下で粉末X線回折測定を行ったところ、化合物Aの結晶とは異なるピーク形状であり、H−NMRおよび元素分析の結果から化合物Aの塩酸塩の結晶であることがわかった。また、後記する実施例9の方法でも、粉末X線回折スペクトルパターンが一致したことから、化合物Aの塩酸塩の結晶が得られることがわかった。実施例9で製造した化合物の結晶の粉末X線回折スペクトルを図3に、示差走査熱量測定(DSC)チャートを図4にそれぞれ示す。また、粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θおよび相対強度を以下の表3に示す。なかでも、8.11、8.43、14.20、14.67、14.91および23.21度の回折角2θに特徴的なピークを示した。
【0026】
【表3】
【0027】
また、実施例9で製造した化合物の結晶は、図4に示す通り、約201℃のオンセット温度および約216℃のピーク温度で示される融解に対応する吸熱ピークを示した。
【0028】
[異性体]
本発明における光学異性体は、100%純粋なものだけでなく、50%未満のその他の光学異性体が含まれていてもよい。
【0029】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【化6】
は紙面の手前側(すなわちβ配置)に結合していることを表し、
【化7】
はα配置、β配置またはそれらの任意の比率の混合物であることを表す。
【0030】
本発明化合物は、溶媒和物に変換することもできる。溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば、水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)との溶媒和物が挙げられる。
【0031】
また、本発明化合物のプロドラッグは、生体内において酵素や胃酸等による反応により、本発明化合物に変換する化合物をいう。本発明化合物のプロドラッグとしては、例えば、本発明化合物がアミノ基を有する場合、該アミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、本発明化合物のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert−ブチル化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。また、本発明化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。また、本発明化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163〜198頁に記載されているような、生理的条件で本発明化合物に変化するものであってもよい。さらに、本発明化合物は同位元素(例えば、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、18F、36Cl、123I、125I等)等で標識されていてもよい。
【0032】
[毒性]
本発明化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として安全に使用することができる。
【0033】
[医薬品への適用]
本発明化合物は、選択的なBtk阻害作用を有するため、Btk関連疾患、すなわちB細胞や肥満細胞が関与する疾患、例えば、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、血栓塞栓性疾患、骨関連疾患、癌、移植片対宿主病等の予防および/または治療剤として有用である。また、本発明化合物は、B細胞の活性化を選択的に阻害する作用も有するため、B細胞活性化阻害剤として有用である。
【0034】
本発明において、アレルギー性疾患としては、例えば、アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎等が挙げられる。
【0035】
本発明において、自己免疫疾患としては、例えば、炎症性腸疾患、関節炎、ループス、リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節炎、スティル病、若年性関節炎、I型糖尿病、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、オード甲状腺炎、バセドー病、シェーグレン症候群、多発性硬化症、ギランバレー症候群、急性播種性脳脊髄炎、アディソン病、オプソクローヌス−ミオクローヌス症候群、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性肝炎、セリアック病、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、視神経炎、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、ライター病、高安動脈炎、側頭動脈炎、温式自己免疫性溶血性貧血、ヴェグナー肉芽腫、乾癬、全身性脱毛症、バーチェット病、慢性疲労症候群、自律神経障害、子宮内膜症、間質性膀胱炎、ミオトニー、外陰部痛、全身性エリテマトーデス等が挙げられる。
【0036】
本発明において、炎症性疾患としては、例えば、喘息、虫垂炎、眼瞼炎、細気管支炎、気管支炎、滑液包炎、子宮頚炎、胆管炎、胆嚢炎、大腸炎、結膜炎、膀胱炎、涙腺炎、皮膚炎、皮膚筋炎、脳炎、心内膜炎、子宮内膜炎、腸炎、上顆炎、精巣上体炎、筋膜炎、結合組織炎、胃炎、胃腸炎、肝炎、汗腺膿瘍、喉頭炎、乳腺炎、髄膜炎、脊髄炎、心筋炎、筋炎、腎炎、卵巣炎、精巣炎、骨炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、肺炎、直腸炎、前立腺炎、腎盂腎炎、鼻炎、耳管炎、副鼻腔炎、口内炎、滑膜炎、腱炎、へんとう炎、ブドウ膜炎、膣炎、血管炎、外陰炎等が挙げられる。
【0037】
本発明において、血栓塞栓性疾患としては、例えば、心筋梗塞、狭心症、血管形成後の再閉塞、血管形成後の再狭窄、大動脈冠動脈バイパス後の再閉塞、大動脈冠動脈バイパス後の再狭窄、脳梗塞、一過性虚血、末梢血管閉塞症、肺塞栓、深部静脈血栓症等が挙げられる。
【0038】
本発明において、骨関連疾患としては、例えば、骨粗鬆症、歯周炎、癌の骨転移、変形性関節症、高カルシウム血症、骨折、ベーチェット病等が挙げられる。
【0039】
本発明において、癌としては非ホジキンリンパ腫が含まれ、中でもB細胞性非ホジキンリンパ腫が好適であり、例えば、バーキットリンパ腫、AIDS関連性リンパ腫、辺縁体B細胞リンパ腫(節性辺縁体B細胞リンパ腫、節外性辺縁体B細胞リンパ腫、脾性辺縁体B細胞リンパ腫)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫病、濾胞性リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ性白血病、リンパ形質細胞性白血病/ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病が挙げられる。また、本発明における癌としては、非ホジキンリンパ腫以外の癌として膵内分泌腫瘍、多発性骨髄腫が含まれる。膵内分泌腫瘍としては、例えば、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ソマトスタチノーマ、VIP産生腫瘍(VIPoma)、PP産生腫瘍(PPoma)、GRF産生腫瘍等が挙げられる。
【0040】
本発明化合物は、他の薬物と組み合わせて、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
3)その化合物の副作用の軽減のために、併用薬として投与してもよい。
【0041】
本発明化合物と他の薬物の併用薬は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明化合物を先に投与し、他の薬物を後に投与してもよいし、他の薬物を先に投与し、本発明化合物を後に投与してもよい。それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0042】
上記併用薬により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0043】
本発明化合物のアレルギー性疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬、抗アレルギー薬、トロンボキサンA2受容体アンタゴニスト、トロンボキサン合成酵素阻害薬、ステロイド等が挙げられる。
【0044】
本発明化合物の自己免疫疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、免疫抑制薬、ステロイド、疾患修飾型抗リウマチ薬、エラスターゼ阻害薬、カンナビノイド−2受容体刺激薬、プロスタグランジン、プロスタグランジン合成酵素阻害薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、メタロプロテアーゼ阻害薬、接着分子阻害薬、抗TNF−α製剤、抗IL−1製剤、抗IL−6製剤等の抗サイトカインタンパク製剤、サイトカイン阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗CD20抗体等が挙げられる。
【0045】
本発明化合物の炎症性疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、ステロイド、エラスターゼ阻害薬、カンナビノイド−2受容体刺激薬、プロスタグランジン、プロスタグランジン合成酵素阻害薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、メタロプロテアーゼ阻害薬、接着分子阻害薬、抗ロイコトリエン薬、抗コリン薬、トロンボキサンA2受容体アンタゴニスト、トロンボキサン合成酵素阻害薬、キサンチン誘導体、去痰薬、抗菌薬、抗ヒスタミン薬、抗サイトカインタンパク製剤、サイトカイン阻害薬、フォルスコリン製剤、メディエーター遊離抑制薬、非ステロイド性抗炎症薬等が挙げられる。
【0046】
本発明化合物の血栓塞栓性疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、血栓溶解薬、ヘパリン、ヘパリン類縁体、低分子量ヘパリン、ワーファリン、トロンビン阻害薬、ファクターXa阻害薬、ADP受容体アンタゴニスト、シクロオキシゲナーゼ阻害薬等が挙げられる。
【0047】
本発明化合物の骨関連疾患に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、ビスホスホネート製剤、プロスタグランジン類、ビタミンD製剤、カルシウム製剤、エストロゲン製剤、カルシトニン製剤、イプリフラボン製剤、タンパク同化ステロイド薬、ビタミンK製剤、カテプシンK阻害薬、副甲状腺ホルモン、成長因子、カスパーゼ−1阻害薬、PTHrP誘導体、メタロプロテイナーゼ阻害薬、ファルソネイドX受容体作動薬、抗アンドロゲン薬、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)、プロゲステロン作動薬、カルシウム受容体アンタゴニスト(calcylitics)、ストロンチウム製剤、α−カルシトニン遺伝子関連ペプチド製剤、骨形成蛋白製剤、抗RANKL抗体、抗TNF−α抗体、抗IL−6抗体等が挙げられる。
【0048】
本発明化合物の非ホジキンリンパ腫に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬物としては、例えば、アルキル化薬、代謝拮抗薬、抗癌性抗生物質、植物性アルカロイド薬、ホルモン薬、白金化合物、抗CD20抗体、その他の抗癌剤等が挙げられる。
【0049】
抗ヒスタミン薬の例としては、例えば、塩酸アゼラスチン、エバスチン、塩酸エピナスチン、フマル酸エメダスチン、オーラノフィン、オキサトミド、塩酸オロパタジン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、フマル酸ケトチフェン、シメチジン、ジメンヒドリナート、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸セチリジン、デスロラタジン、テルフェナジン、ファモチジン、塩酸フェキソフェナジン、ベポタスチン、ベシル酸ベポタスチン、ミゾラスチン、メキタジン、フロ酸モメタゾン、ラニチジン、塩酸ラニチジン、ロラタジン、塩酸プロメタジン、塩酸ホモクロルシクリジン等が挙げられる。
【0050】
ロイコトリエン拮抗薬の例としては、例えば、プランルカスト水和物、モンテルカストナトリウム、ザフィルルカスト、アブルカスト、ポビルカスト、スルカスト、イラルカストナトリウム、ヴェルルカスト、リトルカスト、シナルカスト、ピロドマスト、トメルカスト、ドクアラスト等が挙げられる。
【0051】
抗アレルギー薬の例としては、例えば、アンレキサノクス、塩酸アゼラスチン、イスラパファント、イブジラスト、イミトロダストナトリウム、エバスチン、塩酸エピナスチン、フマル酸エメダスチン、オキサトミド、塩酸オザグレル、塩酸オロパタジン、クロモグリク酸、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェン、セラトロダスト、塩酸セチリジン、トシル酸スプラタスト、タザノラスト、テルフェナジン、ドミトロバンカルシウム水和物、トラニラスト、ネドクロミル、フェキソフェナジン、塩酸フェキソフェナジン、ペミロラストカリウム、メキタジン、ラマトロバン、レピリナスト、ロラタジン等が挙げられる。
【0052】
トロンボキサンA2受容体阻害薬の例としては、例えば、セラトロダスト、ドミトロバンカルシウム水和物、ラマトロバン等が挙げられる。
トロンボキサン合成酵素阻害薬の例としては、例えば、イミトロダストナトリウム、塩酸オザグレル等が挙げられる。
【0053】
ステロイドの例としては、例えば、アムシノニド、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、メチルコハク酸プレドニゾロンナトリウム、シクレソニド、ジフルプレドナート、プロピオン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン、デフラザコート、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ハルシノニド、パルミチン酸デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、ブチル酢酸プレドニゾロン、ブデソニド、硫酸プラステロン、フロ酸モメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルニソリド、プレドニゾロン、プロピロン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸フルチカゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンスレプタネート、メチルプレドニゾロンナトリウムスクシネート、リン酸デキサメタゾンナトリウム、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸プレドニゾロンナトリウム、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸トリアムシノロン、酢酸パラメサゾン、酢酸ハロプレドン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン等が挙げられる。
【0054】
免疫抑制薬の例としては、例えば、アザチオプリン、アスコマイシン、エベロリムス、サラゾスルファピリジン、シクロスポリン、シクロホスファミド、シロリムス、タクロシムス、ブシラミン、メトトレキサート、レフルノミド等が挙げられる。
【0055】
疾患修飾型抗リウマチ薬の例としては、例えば、D−ペニシラミン、アクタリット、オーラノフィン、サラゾスルファピリジン、ヒドロキシクロロキン、ブシラミン、メトトレキサート、レフルノミド、ロベンザリットナトリウム、オーロチオグルコース、マレイン酸オーロチオナトリウム等が挙げられる。
【0056】
エラスターゼ阻害薬の例としては、例えば、ONO−5046、ONO−6818、MR−889、PBI−1101、EPI−HNE−4、R−665、ZD−0892、ZD−8321、GW−311616、DMP−777、L−659286、L−680833、L−683845、AE−3763等が挙げられる。
【0057】
プロスタグランジン類(以下、PGと略記する。)としては、例えば、PGE1製剤(例:アルプロスタジルアルファデクス、アルプロスタジル等)、PGI2製剤(例:ベラプロストナトリウム等)、PG受容体アゴニスト、PG受容体アンタゴニスト等が挙げられる。PG受容体としては、PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGD受容体(DP、CRTH2)、PGF受容体(FP)、PGI2受容体(IP)、TX受容体(TP)等が挙げられる。
【0058】
プロスタグランジン合成酵素阻害薬の例としては、例えば、サラゾスルファピリジン、メサラジン、オルサラジン、4−アミノサリチル酸、JTE−522、オーラノフィン、カルプロフェン、ジフェンピラミド、フルノキサプロフェン、フルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、メロキシカム、オキサプロジン、パルサルミド、ピプロキセン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ザルトプロフェン、プラノプロフェン等が挙げられる。
【0059】
ホスホジエステラーゼ阻害薬の例としては、例えば、ロリプラム、シロミラスト、Bay19−8004、NIK−616、ロフルミラスト(BY−217)、シパムフィリン(BRL−61063)、アチゾラム(CP−80633)、ONO−6126、SCH−351591、YM−976、V−11294A、PD−168787、D−4396、IC−485等が挙げられる。
接着分子阻害薬の例としては、例えば、α4インテグリンアンタゴニスト等が挙げられる。
【0060】
抗TNF−α製剤の例としては、例えば、抗TNF−α抗体、可溶性TNF−α受容体、抗TNF−α受容体抗体、可溶性TNF−α結合タンパク質が挙げられ、特に、インフリマキシブ、エタネルセプト等が挙げられる。
【0061】
抗IL−1製剤の例としては、抗IL−1抗体、可溶性IL−1受容体、抗IL−1Raおよび/またはIL−1受容体抗体が挙げられ、特に、アナキンラが挙げられる。
抗IL−6製剤の例としては、抗IL−6抗体、可溶性IL−6受容体、抗IL−6受容体抗体等が挙げられ、特に、トシリズマブが挙げられる。
【0062】
サイトカイン阻害薬の例としては、例えば、トシル酸スプラタスト、T−614、SR−31747、ソナチモド等が挙げられる。
抗コリン薬の例としては、例えば、トリヘキシフェニジル、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ビペリデン、ビペリデン塩酸塩等が挙げられる。
【0063】
キサンチン誘導体としては、例えば、アミノフィリン、テオフィリン、ドキソフィリン、シパムフィリン、ジプロフィリン等が挙げられる。
去痰薬としては、アンモニア・ウイキョウ精、炭酸水素ナトリウム、塩酸ブロムヘキシン、カルボシステイン、塩酸アンブロキソール、塩酸メチルシステイン、アセチルシステイン、L−塩酸エチルシステイン、チロキサポール等が挙げられる。
【0064】
抗菌薬の例としては、例えば、セフロキシムナトリウム、メロペネム三水和物、ネチルマイシン硫酸、シソマイシン硫酸、セフチブテン、PA−1806、IB−367、トブラマイシン、PA−1420、ドキソルビシン、アストロマイシン硫酸、セフェタメットピボキシル塩酸塩等が挙げられる。
【0065】
メディエーター遊離抑制薬の例としては、例えば、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム、アンレキサノクス、レピリナスト、イブジラスト、ダザノラスト、ペミロラストカリウム等が挙げられる。
【0066】
血栓溶解薬の例としては、例えば、アルテプラーゼ、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、ナサルプラーゼ、ナテプラーゼ、t−PA、パミテプラーゼ、モンテプラーゼ、プロルキナーゼ、ストレプトキナーゼ等が挙げられる。
【0067】
ヘパリン類縁体の例としては、例えば、フォンダパリヌクスが挙げられる。
低分子量ヘパリンの例としては、例えば、ダナパロイドナトリウム、エノキサパリン(ナトリウム)、ナドロパリンカルシウム、ベミパリン(ナトリウム)、レビパリン(ナトリウム)、チンザパリン(ナトリウム)等が挙げられる。
トロンビン阻害薬の例としては、例えば、アルガトロバン、キシメラガトラン、メラガトラン、ダビガトラン、ビバリルジン、レピルジン、ヒルジン、デシルジン等が挙げられる。
【0068】
ADP受容体アンタゴニストの例としては、例えば、チクロピジン塩酸、クロピドグレル硫酸等が挙げられる。
シクロオキシゲナーゼ阻害薬の例としては、例えば、アスピリン等が挙げられる。
【0069】
ビスホスホネート製剤としては、例えば、アレンドロン酸ナトリウム水和物、イバンドロン酸、インカドロン酸二ナトリウム、エチドロン酸二ナトリウム、オルパドロネート、クロドロン酸ナトリウム水和物、ゾレドロン酸、チルドロン酸二ナトリウム、ネリドロネート、パミドロン酸二ナトリウム、ピリドロネート、ミノドロン酸水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、YM175等が挙げられる。
【0070】
ビタミンD製剤としては、例えば、アルファカルシドール、ファレカルシトリオール、カルシトリオール、1α,25−ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール、ST−630、KDR、ED−71、ロカルトール、タカルシオール、マキサカルシトール等が挙げられる。
【0071】
カルシウム製剤としては、例えば、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、L−アスパラギン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。
【0072】
エストロゲン製剤としては、例えば、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、エストラジオールシピオナート、エストラジオールジプロピオナート、エストラジオールエナンタート、エストラジオールヘキサヒドロベンゾアート、エストラジオールフェニルプロピオナート、エストラジオールウンデカノアート、吉草酸エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、メストラノール等が挙げられる。
【0073】
カルシトニン製剤としては、例えば、カルシトニン、サケカルシトニン、ニワトリカルシトニン、セカルシフェロール、エルカトニン、TJN−135等が挙げられる。
イプリフラボン製剤としては、例えば、イプリフラボン等が挙げられる。
【0074】
タンパク同化ステロイド薬としては、例えば、オキシメトロン、スタノゾロール、デカン酸ナンドロロン、フェニルプロピオン酸ナンドロロン、シクロヘキシルプロピオン酸ナンドロロン、酢酸メテノロン、メスタノロン、エチルエストレノール、カルステロン等が挙げられる。
【0075】
ビタミンK製剤としては、例えば、メナテトレノン、フィトナジオンが挙げられる。
カテプシンK阻害薬としては、例えば、ONO−5334、AAE581、SB462795、オダナカチブ等が挙げられる。
【0076】
副甲状腺ホルモン(PTH)としては、例えば、乾燥甲状腺、レボチロキシンナトリウム、リオチロニンナトリウム、プロピルチオウラシル、チアマゾール、酢酸テリパラチド等が挙げられる。
成長因子としては、例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インシュリン様成長因子(IGF)等が挙げられる。
【0077】
カスパーゼ−1阻害薬としては、例えば、ニトロフルルビプロフェン、プラルナカサン等が挙げられる。
PTHrP誘導体としては、例えば、hPTHrP、RS−66271等が挙げられる。
ファルネソイドX受容体作動薬としては、例えば、SR−45023A等が挙げられる。
【0078】
抗アンドロゲン薬としては、例えば、酢酸オサテロン等が挙げられる。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)としては、例えば、TSE−424、WJ−713/MPA、酒石酸ラソフォキシフェン、塩酸ラロキシフェン、クエン酸タモキシフェン等が挙げられる。
プロゲステロン作動薬としては、例えば、トリメゲストン等が挙げられる。
【0079】
カルシウム受容体アンタゴニスト(calcylitics)としては、例えば、NPS−423557等が挙げられる。
ストロンチウム製剤としては、ラネリック酸ストロンチウム等が挙げられる。
抗RANKL抗体としては、例えば、デノスマブ等が挙げられる。
【0080】
骨形成蛋白製剤としては、例えば、YM484等が挙げられる。
アルキル化薬の例としては、例えば、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、チオテパ、カルボコン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ダカルバジン、ラニムスチン等が挙げられる。
【0081】
代謝拮抗薬の例としては、例えば、メトトレキサート、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、フルオロウラシル、テガフール、テガフール・ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、シタラビン、エノシタビン、テガフール・ギメスタット・オタスタットカリウム、塩酸ゲムシタビン、シタラビンオクホスファート、塩酸プロカルバジン、ヒドロキシカルバミド等が挙げられる。
【0082】
抗癌性抗生物質の例としては、例えば、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、ネオカルチノスタチン、塩酸ピラルビシン、(塩酸)エピルビシン、塩酸イダルビシン、クロモマイシンA3、(塩酸)ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、テラルビシン、ジノスタチン・スチマラマー等が挙げられる。
【0083】
植物性製剤の例としては、例えば、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、塩酸イリノテカン、エトポシド、フルタミド、酒石酸ビノレルビン、ドセタキセル水和物、パクリタキセル等が挙げられる。
【0084】
ホルモン剤の例としては、例えば、リン酸エストラムスチンナトリウム、メピチオスタン、エピチオスタノール、酢酸ゴセレリン、ホスフェストロール(リン酸ジエチルスチルベストロール)、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、塩酸ファドロゾール水和物、酢酸メドロキシプロゲステロン、ビカルタミド、酢酸リュープロレリン、アナストロゾール、エクセメスタン等が挙げられる。
【0085】
白金化合物の例としては、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチン等が挙げられる。
抗CD20抗体の例としては、例えば、リツキシマブ、イブリツモマブ、オクレリズマブ等が挙げられる。
【0086】
その他の抗癌剤の例としては、例えば、L−アスパラギナーゼ、酢酸オクトレオチド、ポルフィマーナトリウム、ミトキサントロン酢酸等が挙げられる。
【0087】
また、本発明化合物と組み合わせる併用薬としては、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0088】
本発明化合物は、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0089】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、本発明化合物を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0090】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、本発明化合物を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0091】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は本発明化合物を基剤に研和、または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、及びかぶれ防止剤から選ばれるいずれか1種を単独で、または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0092】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば本発明化合物を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0093】
本発明化合物の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、経口剤であれば、好ましくは1〜100mg、より好ましくは5〜30mgを1日1〜数回(例えば、1〜3回)投与すればよい。または、一回につき、50μgから500mgの範囲で一日1〜数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0094】
もちろん前記したように、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて必要な場合もある。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
NMRデータは特に記載しない限り、H−NMRのデータである。
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
【0097】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、Advanced Chemistry Development社のACD/Name(登録商標)を用いるか、または、IUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0098】
実施例1:N,N−ジベンジル−6−クロロ−5−ニトロピリミジン−4−アミン
4,6−ジクロロ−5−ニトロピリミジン(10g)のジクロロメタン(70mL)溶液に、氷浴下でジクロロメタン(30mL)溶液のジベンジルアミン(10.2g)を滴下した後、トリエチルアミン(14.4mL)を加え、1時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮することで下記物性値を有する標題化合物(19.2g)を得た。
TLC:Rf 0.50(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)。
【0099】
実施例2:tert−ブチル (3R)−3−{[6−(ジベンジルアミノ)−5−ニトロピリミジン−4−イル]アミノ}ピロリジン−1−カルボキシラート
実施例1で製造した化合物(19g)を用い、tert−ブチル (3R)−3−アミノピロリジン−1−カルボキシラート(10.5g)をジオキサン(58mL)に溶解させ、トリエチルアミン(8.1mL)を加えた後、50℃で5時間攪拌した。反応混合物を室温に戻した後、溶媒を留去し、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、下記物性値を有する標題化合物(27.0g)を得た。
TLC:Rf 0.29(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)。
【0100】
実施例3:tert−ブチル (3R)−3−{[5−アミノ−6−(ジベンジルアミノ)ピリミジン−4−イル]アミノ}ピロリジン−1−カルボキシラート
氷浴下、亜鉛(23.3g)と3.0M塩化アンモニア水溶液(11.4g)の混合液に酢酸エチル(360mL)溶液の実施例2で製造した化合物(17.5g)を滴下し、すぐに室温へと昇温した。2時間攪拌後、反応混合物をセライト(商品名)でろ過し、溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、下記物性値を有する標題化合物(12.4g)を得た。
TLC:Rf 0.69(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)。
【0101】
実施例4:tert−ブチル (3R)−3−[6−(ジベンジルアミノ)−8−オキソ−7,8−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル]ピロリジン−1−カルボキシラート
実施例3で製造した化合物(8.4g)と1,1’−カルボニルジイミダゾール(5.9g)をテトラヒドロフラン(120mL)に溶解させた後、60℃で15時間攪拌した。反応混合物の溶媒を留去した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、下記物性値を有する標題化合物(7.8g)を得た。
TLC:Rf 0.28(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)。
【0102】
実施例5:tert−ブチル (3R)−3−(6−アミノ−8−オキソ−7,8−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル)ピロリジン−1−カルボキシラート
実施例4で製造した化合物(7.8g)をメタノール(240mL)と酢酸エチル(50ml)に溶解させた後、20%パールマン触媒(Pd(OH)/C)(8.0g、100wt%)を加え、水素置換をし、60℃で7.5時間攪拌した。反応混合物をセライト(商品名)でろ過し、溶媒留去することで下記物性値を有する標題化合物(5.0g)を得た。
TLC:Rf 0.50(酢酸エチル)。
【0103】
実施例6:tert−ブチル (3R)−3−[6−アミノ−8−オキソ−7−(4−フェノキシフェニル)−7,8−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル]ピロリジン−1−カルボキシラート
室温において実施例5で製造した化合物(2.5g)のジクロロメタン(200mL)懸濁液にp−フェノキシフェニルホウ酸(2.1g)と酢酸銅(II)(1.48g)、モレキュラーシーブス4A(2.5g)、ピリジン(0.82ml)を加えた後、21時間攪拌した。反応液をセライト(商品名)でろ過し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、下記物性値を有する標題化合物(1.3g)を得た。
TLC:Rf 0.18(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)。
【0104】
実施例7:(3R)−6−アミノ−9−ピロリジン−3−イル−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 二塩酸塩
室温において実施例6で製造した化合物(1.3g、2.76mmol、1.0当量)のメタノール(13mL)懸濁液に4N塩酸/ジオキサン(13mL)を加え1時間攪拌した。溶媒留去することで下記物性値を有する標題化合物(1.5g)を得た。
TLC:Rf 0.50(ジクロロメタン:メタノール:28%アンモニア水=9:1:0.1)。
【0105】
実施例8:6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン(化合物A)
【化8】
【0106】
実施例7で製造した化合物(100mg)のジメチルホルムアミド(3mL)溶液に2−ブチン酸(34mg)と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC)(78mg)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(62mg)、トリエチルアミン(114μl)を加えた後、室温において3時間攪拌させた。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール:28%アンモニア水=90:10:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する標題化合物(75mg)を得た。
TLC:Rf 0.68(酢酸エチル:メタノール=9:1);
1H-NMR(CDCl3):δ 1.94-2.03, 2.23-2.39, 2.80-3.01, 3.50-3.63, 3.67-3.80, 3.86-4.02, 4.03-4.18, 4.23-4.33, 4.42-4.51, 5.11-5.25, 7.04-7.23, 7.34-7.45, 8.20-8.23。
【0107】
実施例9:6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩
【化9】
【0108】
300mLの3径ナスフラスコに、実施例8で製造した化合物(3.0g)を入れ、酢酸エチル(30mL)と1−プロパノール(4.5mL)を加えた後、外温を70℃(内温61℃)にした。実施例8で製造した化合物が完全に溶解したのを確認した後、10%塩酸/メタノール(3.5mL)を加え、結晶析出確認後、外温70℃で30分、外温60℃で30分、外温50℃で60分、外温40℃で30分、室温で30分、氷冷下で30分熟成させて結晶を熟成させた。得られた結晶はろ過し、酢酸エチル(6mL)で洗浄後、50℃で減圧乾燥することで、下記物性値を有する標題化合物(2.76g)を白色結晶として得た。
TLC:Rf 0.55(ジクロロメタン:メタノール=9:1);
1H-NMR (CD3OD):δ 1.97-2.07, 2.38-2.52, 2.63-2.80, 3.51-3.63, 3.77-3.94, 4.00-4.19, 4.27-4.35, 5.26-5.38, 7.08-7.23, 7.38-7.52, 8.44-8.47。
【0109】
[薬理実験例]
生物学的実施例1:Btk阻害活性およびBtkに対する選択性の測定(in vitro試験)
Btk酵素阻害活性の測定は、以下の試薬(Tyr−1ペプチド、Thy−1ホスホ−ペプチド、5×キナーゼバッファー、ATP、発色試薬B、発色バッファー、および反応停止試薬)を含むZ’−LYTETMキナーゼアッセイキット−Tyr1ペプチド(IInvitrogen社)およびBtk(Invitrogen社)を用い、添付の説明書に準じて実施した。
【0110】
被験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に希釈した溶液、またはDMSOを、それぞれ5μL/ウェル、および基質/酵素混合溶液を10μL/ウェル、96−ウェルアッセイプレートに添加し、30℃で20分間反応させた。基質/酵素混合溶液は、Tyr−1ペプチドが終濃度4μM、およびBtkが終濃度5nMとなるよう、キナーゼバッファー(DL−ジチオスレイトール(DTT;2.7mM)、1.33×キナーゼバッファー)で希釈し、作成した。次に、アデノシントリホスファート(ATP;終濃度36μM)を5μL/ウェルで添加し、30℃で1時間反応させた。反応終了後、発色試薬Bを発色バッファーで128倍に希釈した発色溶液を10μL添加し、さらに30℃で1時間反応させた。その後、反応停止液を10μL添加し、酵素反応を停止させた。蛍光プレートリーダー、Fusion Universal Microplate Analyzer(PerkinElmer社)を用いて、各ウェル445nmおよび520nmの蛍光強度を測定した。リン酸化の比率は、キットの添付の説明書に従い、520nm(フルオロセイン発色)に対する445nm(クマリン発色)での発色比率によって決定した。
【0111】
被験化合物の阻害率(%)は、以下の式を用いて算出した。:
【数1】
【0112】
被験化合物の50%阻害率の値(IC50値)は、被験化合物の各濃度における阻害率に基づく阻害曲線から算出した。
他のキナーゼ(例えば、Lck、Fyn、LynA(いずれもIInvitrogen社)の阻害活性の測定は、Btkの代わりに各種キナーゼを用いて上記した方法と同様に行った。
【0113】
その結果、実施例9で製造した化合物のIC50値は0.0021μMであった。
また、実施例9で製造した化合物の他のキナーゼ、特にLck、Fyn、LynAに対するBtk選択的な阻害活性比は、各種キナーゼのIC50値に基づいて算出したところ、以下の表4に示す通りであった。
【0114】
【表4】
その結果、本発明化合物はBtk阻害活性を有するだけでなく、他のキナーゼに対するBtk選択的な阻害活性を有することがわかった。
【0115】
生物学的実施例2:イヌ血中動態
絶食下の雄性ビーグル犬を用いて、化合物Aおよびその塩(実施例9で製造した化合物)の血中動態プロファイルを評価した。実施例8で製造した化合物Aについては、静脈内投与、経口溶液投与および経口懸濁投与を行い、実施例9で製造した化合物については、経口カプセル投与を行った。静脈内投与および経口溶液投与には、化合物Aを60℃に加温したwellsolve(株式会社セレステ)に溶解した可溶化液を用いた。当該可溶化液を用い、1mg/1mL/kgの用量で注射器を用い、前肢橈側皮静脈より急速静脈内投与を行い、1mg/5mL/kgの用量でカテーテルを用いて強制経口投与を行った。静脈内投与は投与前、投与2、5、15及び30分、1、2、4、6、8及び24時間後に、経口投与は投与前、投与5、15及び30分、1、2、4、6、8及び24時間後に、頚静脈より約300μLずつ採血した。得られた血液は氷冷し、12,000rpmで3分間遠心分離後、血漿を分取した。血漿中の化合物Aの濃度は、LC/MS/MS(UPLC/Xevo、Waters)を用いて測定した。得られた血漿中濃度から、曲線下面積(AUC、ng・h/mL)、最高血中濃度(Cmax、μg/mL)およびクリアランス(CL、mL/hr/kg)を算出した。また、化合物Aの生物学的利用能(BA)は、経口投与のAUCおよび静脈内投与のAUCから算出した。その結果、可溶化液を用いて算出した化合物AのBAは114.6%であった。
【0116】
また、経口懸濁投与には、化合物Aを微粉砕後、0.5%メチルセルロース水溶液を用いて懸濁した溶液を用いて、3および10mg/kgの用量で上記と同様に強制経口投与を行った。実施例9の化合物については、当該化合物とD−マンニトールを1:1の比で3mg/kgの用量となるように混合して4号カプセル(クオリカプス株式会社)に封入し、3mg/1カプセルで噛み砕かないように喉奥にカプセルを置き、口を閉じた後、歯の隙間から50mLの注射用水を飲水させることにより、経口カプセル投与を行った。各投与方法の血漿の採取タイミングおよび化合物Aの血漿中濃度の測定は、上記した可溶化液を用いた化合物Aの経口投与と同様の方法で行った。各投与方法および各濃度で算出したBAについて、可溶化液を用いた化合物AのBAを100%として、相対的BAを算出した。その結果を以下の表5に示す。
【0117】
【表5】
【0118】
その結果、投与量の増加に伴い、化合物Aの微粉砕懸濁液の相対的BAは低下した。一方、同じ用量の化合物Aの微粉砕懸濁液に対し、実施例9で製造した化合物は相対的BAが高かった。したがって、本発明化合物は、化合物Aより吸収性が向上することがわかった。
【0119】
生物学的実施例3:溶解度の測定
化合物A(JetMill粉砕機により微粉砕化)と実施例9で製造した化合物の各々について、0.5mg〜2.5mgを37℃の各溶媒(局方崩壊試験第I液、局方溶出試験第II液、薄めたMcIlvaine緩衝液(pH4.0、pH7.4)、精製水、人工腸液(FaSSIF、FeSSIF))2.5mLに投入し、マグネチックスターラーにより700回転/分で攪拌しながら、試験開始から30分後、及び24時間後に試験懸濁液から約1mLをサンプリングし、孔径0.2μmのフィルターでろ過後、化合物Aの溶解度を下記の条件下で高速液体クロマトグラフィー法により測定した。下記の表6に化合物Aと実施例9で製造した化合物との溶解度の比較を示した。
【0120】
<HPLC測定条件>
装置:Agilent製HPLC 1100series、
カラム:YMC-Pack ODS-AM AM-302(4.6mm内径×150mm長)、
カラム温度:25℃、
移動相成分:20mM リン酸二水素カリウム水溶液(pH3.0)/アセトニトリル(60:40、定組成)、
UV:210nm
流速:1.0mL/分、
サンプルラック温度:25℃、
サンプル注入量:10μL、
測定時間:12分、
保持時間:8.9分。
【0121】
【表6】
以上から、本発明化合物は化合物Aと比較して、いずれの溶媒においても、溶解性に優れていることがわかった。
【0122】
生物学的実施例4:ラットおよびヒト肝ミクロソーム中での安定性評価
(1)被験化合物溶液の調製
被験化合物(10mmol/L DMSO溶液、5μL)を50%アセトニトリル水溶液(195μL)で希釈し、0.25mmol/L溶液を作製した。
【0123】
(2)反応0分のサンプル調製
あらかじめ37℃に温めた反応用容器に0.5mg/mLラットおよびヒト肝ミクロソーム(Xenotech社)およびNADPH-Co-factor(BD Biosciences社)を含む0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)245μLを添加して5分間プレキンキュベーション後、先の被験化合物溶液(5μL)を加えて反応を開始した。開始直後に20μLを採取し、内部標準物質(ワルファリン)を含むアセトニトリル180μLに添加して反応を停止した。この溶液20μLを除タンパク用フィルター付プレート上で50%アセトニトリル水溶液180μLと攪拌後、吸引ろ過してろ液を標準サンプルとした。
【0124】
(3)反応15分のサンプル調製
先の反応溶液を37℃にて15分間インキュベーション後、20μLを冷アセトニトリル(内部標準物質ワルファリンを含む)180μLに添加し、反応を停止した。この20μLを除タンパク用フィルター付プレート上で50%アセトニトリル水溶液180μLと攪拌後、吸引ろ過してろ液を標準サンプルとした。
【0125】
(4)評価方法および結果
残存率(%)は、試料溶液1μLをLC−MS/MSに注入し、反応サンプルのピーク面積比(被験化合物のピーク面積/内部標準物質のピーク面積)を標準サンプルのピーク面積比で除した値を100倍して算出した。
【0126】
[製剤例]
製剤例1
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得た。
・6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩
… 100g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤) … 20g
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) … 10g
・微結晶セルロース … 870g
【0127】
製剤例2
以下の各成分を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mlずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得た。
・6−アミノ−9−[(3R)−1−(2−ブチノイル)−3−ピロリジニル]−7−(4−フェノキシフェニル)−7,9−ジヒドロ−8H−プリン−8−オン 塩酸塩
… 200g
・マンニトール … 20g
・蒸留水 … 50L
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明化合物は、Btk選択的な阻害活性を有することに加え、代謝安定性に優れ、遊離塩基に対して溶解性および吸収性に優れ、結晶化し得る化合物であるため、非ホジキンリンパ腫等のB細胞や肥満細胞が関与する疾患の治療剤として有用である。
図1
図2
図3
図4