【文献】
古田尚正、他1名,シルセスキオキサン誘導体「光硬化型SQシリーズ」,東亞合成グループ研究年報 TREND,2009年,第27-30頁,[retrieved on 2012-01-08].Retrieved from the Internet:<URL:http://www2.toagosei.co.jp/develop/trend/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]
絶縁膜用組成物
本発明の
絶縁膜用組成物は、特定のポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン(A)」ともいう)と、有機高分子化合物(以下、「有機高分子(B)」ともいう)と、を含有する。
【0012】
(1−1)ポリシロキサン(A)
上記ポリシロキサン(A)は、オキセタニル基を有するカゴ型シルセスキオキサン(以下、「OX基含有カゴ型シルセスキオキサン」ともいう。)、及び前述の式(1)で表されるオキセタニル基を有するケイ素化合物(以下、「OX基含有ケイ素化合物」ともいう。)のうちの少なくとも一方である。
【0013】
<OX基含有カゴ型シルセスキオキサン>
上記OX基含有カゴ型シルセスキオキサンは、公知のカゴ型シルセスキオキサン[例えば、(a)略四角柱体における8個の各頂点にSiが存在してなる六面体、(b)略五角柱体における10個の各頂点にSiが存在してなる七面体、(c)略六角柱体の12個の各頂点にSiが存在してなる八面体等]を主骨格としており、且つオキセタニル基を有するものであれば特に限定されない。このような、カゴ型の構造のものは合成時に通常残存シラノールが発生せず、得られる薄膜の平滑性や疎水性に影響を与えないため好ましい。
なかでも、下記式(A1)で表される化合物[主骨格;上記(a)]であることが好ましい。更には、式(A1)で表される化合物のなかでも、下記式(A1−1)で表されるものが特に好ましい。
式(A1)[特に式(A1−1)]で表される化合物を用いた場合、膜表面の疎水性及び平滑性に優れており且つ電気安定性に優れる絶縁膜を容易に形成できるため好ましい。更には、得られる組成物をより低温(特に150〜200℃)で硬化させることが可能となるという観点から好ましい。
【0014】
【化2】
〔式(A1)において、R
10は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基、を有する一価の有機基を表す(但し、各R
10のうちの少なくとも1つは、オキセタニル基を有する一価の有機基である。)。上記一価の有機基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、又はオキシ基で置換されていてもよい。各R
10は同一であってもよいし、異なっていてもよい。〕
【0015】
【化3】
〔式(A1−1)において、R
11は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はオキセタニル基、を有する一価の有機基を表す(但し、各R
11のうちの少なくとも1つは、オキセタニル基を有する一価の有機基である。)。上記一価の有機基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、又はオキシ基で置換されていてもよい。各R
11は同一であってもよいし、異なっていてもよい。〕
【0016】
上記式(A1)のR
10及び上記式(A1−1)のR
11における一価の有機基は、それぞれ、単に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はオキセタニル基であってもよい。
また、R
10及びR
11の一価の有機基における、アルキル基、アラルキル基、アリール基、及びオキセタニル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、及びオキシ基(=O)のうちの少なくとも1つ以上で置換されていてもよい。
R
10及びR
11における炭素数1〜6のアルキル基、及び、炭素数7〜10のアラルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環構造を有していてもよい。
R
10及びR
11における炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R
10及びR
11における炭素数7〜10のアラルキル基としては、フェニルアルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
R
10及びR
11における炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
R
10及びR
11におけるオキセタニル基を含む一価の有機基としては、下記式(x)で表される基、又はこの基を含むものが好ましい。
【0018】
式(x)において、R
13は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
14は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
R
13としては、水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
R
14としては、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0019】
本発明において、上記OX基含有カゴ型シルセスキオキサンは、上記式(A1−1)で表される化合物であって、全てのR
11が上記式(x)で表される基であるものが特に好ましい。
【0020】
OX基含有カゴ型シルセスキオキサンのGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は、1000〜5000であることが好ましく、より好ましくは1000〜3000、更に好ましくは1500〜2500である。
【0021】
尚、本発明の有機半導体絶縁膜用組成物には、上記ポリシロキサン(A)として、OX基含有カゴ型シルセスキオキサンが1種のみ含有されていてもよいし、2種以上含有されていてもよい。
【0022】
また、上記OX基含有カゴ型シルセスキオキサンの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。具体的には、「オキセタニル基を有するカゴ型シルセスキオキサンの(OX−Q
8)合成と物性」(東亞合成グループ研究年報 TREND 2008 第11号 第33〜39ページ)に記載の製造方法を適用することができる。
【0023】
<OX基含有ケイ素化合物>
上記OX基含有ケイ素化合物は、前述の式(1)で表される化合物である。
尚、本明細書においては、式(1)におけるSiO
4/2単位を「Q単位」、R
1−SiO
3/2単位を「T単位」、(R
2)
2SiO
2/2単位を「D単位」、(R
3)
3SiO
1/2単位を「M単位」ともいう。
【0024】
上記式(1)におけるR
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基、を有する一価の有機基を表す。但し、R
1、R
2及びR
3のうちの少なくとも1つは、オキセタニル基を有する一価の有機基である。
尚、上記一価の有機基は、単に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基であってもよい。また、各R
2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。更に、各R
3は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
また、R
1、R
2及びR
3の一価の有機基における、アルキル基、アラルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基及びオキセタニル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、及びオキシ基(=O)のうちの少なくとも1つ以上で置換されていてもよい。
R
1、R
2及びR
3における炭素数1〜6のアルキル基、及び、炭素数7〜10のアラルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環構造を有していてもよい。
R
1、R
2及びR
3における炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
R
1、R
2及びR
3における炭素数7〜10のアラルキル基としては、フェニルアルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
R
1、R
2及びR
3における炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0026】
R
1、R
2及びR
3における(メタ)アクリロイル基を含む一価の有機基としては、下記式(2)で表される基が好ましい。尚、本発明において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を意味する。
【0028】
式(2)において、R
5は水素原子又はメチル基を表し、R
6は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
R
6としては、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0029】
R
1、R
2及びR
3におけるエポキシ基を含む一価の有機基としては、グリシジルオキシアルキル基が好ましい。
R
1、R
2及びR
3におけるオキセタニル基を含む一価の有機基としては、下記式(3)で表される基が好ましい。
【0031】
式(3)において、R
7は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
8は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
R
7としては、水素原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、エチル基がより好ましい。
R
8としては、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0032】
また、式(1)におけるR
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜10のアラルキル基、炭素数6〜10のアリール基、(メタ)アクリロイル基を有する一価の有機基、エポキシ基を有する一価の有機基、オキセタニル基を有する一価の有機基、炭素数1〜6のハロアルキル基、及び炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれる基であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数7〜8のアラルキル基、炭素数6〜8のアリール基、(メタ)アクリロイル基を有する一価の有機基、オキセタニル基を有する一価の有機基、炭素数1〜6のハロアルキル基、及び炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれる基である。更に好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、上記式(2)で表される基、及び上記式(3)で表される基よりなる群から選ばれる基である。特に好ましくは、メチル基、上記式(2)で表される基、及び上記式(3)で表される基よりなる群から選ばれる基である。
【0033】
また、上記式(1)におけるw
及びxは正の数を表す。即ち、式(1)で表されるOX基含有ケイ素化合物は、少なくともT単位
及びD単位を有する。
更に、式(1)における
v及びyはそれぞれ独立に、0又は正の数を表す。
式(1)において、vは、wを1とした場合に0〜5であることが好ましく、より好ましくは0〜4、更に好ましくは0〜3である。
xは、wを1とした場合に
0.1〜10であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.2〜3である。
yは、wを1とした場合に0〜5であることが好ましく、より好ましくは0〜3、更に好ましくは0〜1である。
【0034】
尚、式(1)で表されるOX基含有ケイ素化合物におけるQ単位、T単位、D単位及びM単位の各単位は、それぞれ2種以上含まれていてもよい。
【0035】
また、式(1)で表されるOX基含有ケイ素化合物は、炭素原子、水素原子、酸素原子及びケイ素原子からなる化合物であることが好ましい。
【0036】
本発明において、上記OX基含有ケイ素化合物は、膜表面の疎水性及び平滑性に優れており且つ電気安定性に優れる絶縁膜を容易に形成できるという観点から、T単位及びD単位からなるものが好ましい。更には、撥水性により優れる(即ち、膜表面の疎水性により優れる)絶縁膜を得られるという観点から、T単位及びD単位からなり、且つT単位がオキセタニル基を備えるものが特に好ましい。
【0037】
OX基含有ケイ素化合物のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は、500〜5000であることが好ましく、より好ましくは1000〜3000、更に好ましくは1500〜2500である。
【0038】
尚、本発明の
絶縁膜用組成物には、上記ポリシロキサン(A)として、OX基含有ケイ素化合物が1種のみ含有されていてもよいし、2種以上含有されていてもよい。
【0039】
また、上記OX基含有ケイ素化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、特許第3653976号公報、特許第4016495号公報、及び国際公開第2004/076534号パンフレットに記載されている方法等が挙げられる。
具体的には、原料として、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等の加水分解性基を1つ以上有するケイ素化合物、ジシロキサン化合物や加水分解性基を1つ以上有するシリコーン化合物を用い、これらの化合物を加水分解及び縮合して得る方法等が挙げられる。
また、OX基含有ケイ素化合物は、製造に使用したモノマー由来の未反応のアルコキシ基やシラノールを含んでいてもよい。このアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
更に、OX基含有ケイ素化合物は、製造に使用したモノマー由来の側鎖官能基のうち、オキセタニル基に酸等が付加して開環した基を含んでいてもよく、また、(メタ)アクリルロイル基を有する一価の有機基が分解して生成したヒドロキシアルキル基を含んでいてもよい。
【0040】
また、本発明の
絶縁膜用組成物においては、組成物の低温硬化(例えば、300℃以下、特に150〜250℃、更には150〜200℃)が可能となるという観点から、ポリシロキサン(A)として、上記OX基含有カゴ型シルセスキオキサンが含有されていることが好ましい。
【0041】
本発明の
絶縁膜用組成物において、ポリシロキサン(A)の含有割合は、
絶縁膜用組成物全体を100質量%とした場合に、10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。この含有割合が、上述の範囲である場合には、得られる絶縁膜の疎水性と平滑性が良好であるため好ましい。
【0042】
(1−2)有機高分子(B)
上記有機高分子(B)としては、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド等が挙げられる
が、これらのなかでも、有機半導体の製膜時における有機溶剤に対する耐溶剤性に優れており、且つ製膜の際に高温の熱処理を必要としないという観点から、
本発明では、PVP
である。
【0043】
有機高分子(B)のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量は、500〜200000であることが好ましく、より好ましくは1000〜100000、更に好ましくは1000〜10000である。
【0044】
本発明の
絶縁膜用組成物において、有機高分子(B)の含有割合は、上記ポリシロキサン(A)及び有機高分子(B)の含有割合の合計を100質量%とした場合に、10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。この含有割合が、上述の範囲である場合には、表面エネルギーの低いポリシロキサンが表面に偏析しやすく、疎水性及び平滑性により優れた絶縁膜を形成できるため好ましい。
【0045】
(1−3)硬化触媒
本発明の
絶縁膜用組成物には、上記ポリシロキサン(A)及び有機高分子(B)以外に、硬化触媒が含有されていてもよい。
上記硬化触媒としては、例えば、重合開始剤等が挙げられる。なかでも、カチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0046】
上記カチオン重合開始剤は特に限定されず、紫外線等の光が照射されてカチオンを生成する公知の化合物(光カチオン重合開始剤)や、加熱されてカチオンを生成する公知の化合物(熱カチオン重合開始剤)を用いることができる。
【0047】
上記光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。これらのなかでも、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が好ましい。
光カチオン重合開始剤がヨードニウム塩又はスルホニウム塩である場合、対アニオンとしては、例えば、BF
4−、AsF
6−、SbF
6−、PF
6−、B(C
6F
5)
4−等が挙げられる。
【0048】
上記ヨードニウム塩としては、(トリクミル)ヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム・テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
また、上記ヨードニウム塩は、市販品を用いることもでき、具体的には、例えば、GE東芝シリコーン(株)製「UV−9380C」、ローディア社製「RHODOSIL PHOTOINITIATOR2074」、和光純薬工業(株)製「WPI−016」、「WPI−116」及び「WPI−113」等が挙げられる。
【0049】
上記スルホニウム塩としては、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
また、上記スルホニウム塩は、市販品を用いることもでき、具体的には、例えば、ダウ・ケミカル日本(株)製「サイラキュアUVI−6990」、「サイラキュアUVI−6992」及び「サイラキュアUVI−6974」、(株)ADEKA製「アデカオプトマーSP−150」、「アデカオプトマーSP−152」、「アデカオプトマーSP−170」及び「アデカオプトマーSP−172」、和光純薬工業(株)製「WPAG−593」、「WPAG−596」、「WPAG−640」及び「WPAG−641」等が挙げられる。
【0050】
上記ジアゾニウム塩としては、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボーレート等が挙げられる。
【0051】
また、上記熱カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらのなかでも、スルホニウム塩が好ましい。
熱カチオン重合開始剤における対アニオンとしては、例えば、AsF
6−、SbF
6−、PF
6−、B(C
6F
5)
4−等が挙げられる。
【0052】
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素等が挙げられる。
また、上記スルホニウム塩は、市販品を用いることもでき、具体的には、例えば、(株)ADEKA製「アデカオプトンCP−66」及び「アデカオプトンCP−77」、三新化学工業(株)製「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−80L」及び「サンエイドSI−100L」等が挙げられる。
【0053】
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
上記第四級アンモニウム塩としては、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
【0054】
硬化触媒の含有割合は特に限定されず、使用する種類に応じて適宜調整することができる。具体的には、例えば、上記ポリシロキサン(A)を100質量部とした場合に、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは1〜5質量部である。この含有割合が、上述の範囲である場合には、硬化が速やかに進行するため好ましい。
【0055】
(1−4)溶剤
本発明の
絶縁膜用組成物には、上記ポリシロキサン(A)及び有機高分子(B)以外に、溶剤が含有されていてもよい。
上記溶剤は特に限定されないが、ポリシロキサン(A)、有機高分子(B)及びその他の成分を溶解可能なものが好ましい。
上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;トルエン及びキシレン等の芳香族化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン;ジブチルエーテル等のエーテル;並びにN−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
上記溶剤としては、ポリシロキサン(A)の合成の際における反応溶媒を、そのまま組成物の溶剤として用いてもよい。この場合、製造コストを低減できるという長所がある。
【0057】
また、
絶縁膜用組成物に溶剤が含まれる場合、ポリシロキサン(A)及び有機高分子(B)の固形分濃度の合計は、0.1質量%以上であることが好ましい。
尚、本発明の
絶縁膜用組成物は、無溶剤系の組成物とすることもできる。
【0058】
(1−5)他の成分
本発明の
絶縁膜用組成物には、上記ポリシロキサン(A)及び有機高分子(B)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の成分を含有させてもよい。
具体的な他の成分としては、例えば、重合性不飽和化合物、ラジカル重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、有機ポリマー、フィラー、金属粒子、顔料、重合開始剤、増感剤等が挙げられる。これらの他の成分は、それぞれ、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(1−6)
絶縁膜用組成物の調製
本発明の
絶縁膜用組成物は、原料成分を混合することにより得ることができる。混合の際には、公知の混合機等を用いればよい。具体的には、反応用フラスコ、チェンジ缶式ミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー、ヘンシェルミキサー、ニーダー、インクロール、押出機、3本ロールミル、サンドミル等が挙げられる。
【0060】
[2]
絶縁膜
本発明の絶縁膜は、前述の
絶縁膜用組成物を用いてなることを特徴とする。
以下、
絶縁膜を形成する方法について、具体的に説明する。
まず、上述の
絶縁膜用組成物を、基板上に塗布する。この際における塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーティング法、回転成形(spin casting)法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の方法を挙げることができる。
次いで、得られた塗膜を乾燥させ、硬化させることにより絶縁膜を得ることができる。この際における乾燥方法は特に限定されないが、例えば、加熱処理することにより行うことができる。また、硬化方法も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプや放射線等による露光処理や加熱処理等により行うことができる。
【0061】
このように形成された
絶縁膜は、基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、有機活性層、ソース・ドレイン電極を備える有機電界効果トランジスタ等において、ゲート絶縁層として用いることができる。
【0062】
上記トランジスタの構造は特に限定されず、従来から知られている全ての構造に適用可能である。
上記基板は特に限定されないが、例えば、ガラス、シリコンウェハ、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。
また、上記有機活性層を形成する材料は特に限定されないが、例えば、ペンタセン、銅フタロシアニン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、及びこれらの誘導体等を用いることができる。
更に、上記ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極としては、それぞれ、通常、用いられる金属又は伝導性高分子を使用することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム錫酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、PEDOT/PSS等を用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
[1]
絶縁膜用組成物の調製
<実施例1>
下記式(A−1)で表されるOX基含有カゴ型シルセスキオキサン(以下、「OX−Q8」ともいう。数平均分子量;2000)226mgと、ポリビニルフェノール(PVP)224mgと、をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)1.76gに溶解させ、混合溶液を得た(固形分濃度;20wt%)。更に、この溶液に、光酸発生剤(光重合開始剤、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)45mgを混合した後、フィルター(孔径;450nm)でろ過することにより、実施例1の
絶縁膜用組成物を調製した。
尚、上記OX基含有カゴ型シルセスキオキサンは、「オキセタニル基を有するカゴ型シルセスキオキサンの(OX−Q
8)合成と物性」(東亞合成グループ研究年報 TREND 2008 第11号 第33〜39ページ)に記載の製造方法を用いて得た。
【0065】
【化7】
【0066】
<実施例2>
表1で表される組成[w及びxについては、前述の式(1)参照]のOX基含有ケイ素化合物(以下、「OX−SQ SI−20」ともいう)225mgと、ポリビニルフェノール(PVP)225mgと、をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)1.75gに溶解させ、混合溶液を得た(固形分濃度;20wt%)。更に、この溶液に、光酸発生剤(トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)45mgを混合した後、フィルター(孔径;450nm)でろ過することにより、実施例2の
絶縁膜用組成物を調製した。
尚、上記OX基含有ケイ素化合物は、特許第3843575号公報に記載されている方法を用いて得た。
【0067】
<比較例1>
表1で表される組成[w及びxについては、前述の式(1)参照]のOX基含有ポリシロキサン(以下、「OX−SQ TX−100」ともいう)226mgと、ポリビニルフェノール(PVP)225mgと、をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)1.76gに溶解させ、混合溶液を得た(固形分濃度;20wt%)。更に、この溶液に、光酸発生剤(トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)44mg混合した後、フィルター(孔径;450nm)でろ過することにより、比較例1の
絶縁膜用組成物を調製した。
尚、上記OX基含有ケイ素化合物は、特許第3653976号公報に記載されている方法を用いて得た。
【0068】
【表1】
【0069】
尚、表1に記載のポリシロキサン構造における略記は、以下の通りである。
【化8】
【0070】
[2]
絶縁膜用組成物の評価
実施例1〜2及び比較例1の各
絶縁膜用組成物を用いて以下の性能試験及び性能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0071】
(2−1)薄膜形成能
シリコンウェハ上に、各
絶縁膜用組成物を、半導体製造装置(型式名「1H−DXII」、ミカサ社製)を使用して、500rpmで10秒間、更に1500rpmで30秒間の条件でスピンコートした。その後、高圧水銀ランプを用いて、30秒間露光した後、150℃で1時間加熱を行うことにより、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。
この際、薄膜を問題なく形成できた場合を「○」とし、形成できなかった場合を「×」とした。
【0072】
(2−2)パターン形成能
上記(2−1)と同様にして、各
絶縁膜用組成物をシリコンウェハ上にスピンコートした。その後、250μmのライン・アンド・スペースパターンが得られるようにフォトマスクを介して、高圧水銀ランプを用いて、30秒間露光した後、150℃で2分間加熱を行った。冷却後、酢酸ブチルを現像液として現像を行い、リンスした。その後、150℃で1時間加熱することで、ライン・アンド・スペースパターンを得た。
この際、250μmのライン・アンド・スペースパターンを問題なく形成できた場合を「○」とし、形成できなかった場合を「×」とした。
【0073】
(2−3)耐溶剤性
上記(2−1)と同様に、各
絶縁膜用組成物を用いて、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。
そして、下記のようにして耐溶剤性を評価した。
評価方法;有機溶剤として、アセトン及び酢酸ブチルを用い、薄膜上に有機溶媒を滴下し、目視により確認した。
この際、両者の溶剤に不溶であった場合を「○」とし、可溶であった場合を「×」とした。
【0074】
(2−4)透明性
上記(2−1)と同様に、各
絶縁膜用組成物を用いて、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。
そして、下記のようにして透明性を評価した。
評価方法;石英基板ごと紫外可視吸収スペクトルにより透過率を測定した。
この際、可視領域全体での透過率が95%以上の場合を「○」とし、95%未満であった場合を「×」とした。
【0075】
(2−5)撥水性(疎水性)
上記(2−1)と同様に、各
絶縁膜用組成物を用いて、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。
そして、下記のようにして薄膜の水接触角を測定し、撥水性を評価した。
評価方法;純水を滴下し5回測定を行い、その平均値とした。
この際、水接触角が90度以上の場合を「○」とし、90度未満であった場合を「×」とした。
尚、参考までに、従来の絶縁膜に用いられているPVPのみからなる薄膜の同条件による水接触角は59度であった(参考例1)。
【0076】
(2−6)平滑性
上記(2−1)と同様に、各
絶縁膜用組成物を用いて、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。
そして、下記のように、原子間力顕微鏡(島津製作所社製、型名「SPM−9600」)を用いて薄膜の平滑性を評価した。
この際、最大凹凸差が10nm以下であり、且つ平均面粗さが0.5nm以下の場合を「○」とし、最大凹凸差が10nmを超える場合、又は平均面粗さが0.5nmを超える場合を「×」とした。
【0077】
(2−7)電気的性質
ガラス基板(寸法;30×30×1.8mm)の表面にアルミニウムを蒸着し(膜厚;0.1〜0.3μm)、その後、上記(2−1)と同様にして、各
絶縁膜用組成物を用いて、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。次いで、薄膜上にアルミニウムを更に蒸着(膜厚;0.1〜0.3μm)することで、サンドイッチ電極を作製した。
そして、得られた各電極を用いて、インピーダンスアナライザー(HEWLETT PACKARD社製、型名「4284A PRECISION LCR METER」)により誘電率測定を行った。その結果を表1及び
図1に示す。
この際、低周波数領域から高周波数領域において、誘電率の周波数依存が少ない場合を「○」とし、周波数依存が認められる場合を「×」とした。
【0078】
【表2】
【0079】
表2から明らかなように、実施例1及び実施例2の各組成物を用いた場合には、薄膜形成能、パターン形成能、耐溶剤性、及び透明性に優れる絶縁膜を形成できることが確認できた。特に、実施例1の組成物によれば、150℃という低温で薄膜を形成することができた。
更に、実施例1及び実施例2の各組成物を用いた場合には、膜表面の疎水性及び平滑性優れる絶縁膜を形成できることが確認できた。
特に、従来の絶縁膜に用いられているPVPのみからなる薄膜(参考例1)の同条件による水接触角が59度であることを考慮すると、各実施例の組成物を用いた絶縁膜が非常に疎水性に優れていることが分かる。これは、ポリシロキサンとPVPのハイブリット材料である実施例1及び2において、PVPにおけるヒドロキシル基と、ポリシロキサンにおけるオキセタニル基とが反応することにより、上記ヒドロキシル基が減少することに起因していると推測できる。
【0080】
また、比較例1の組成物を用いた場合には疎水性に劣っていたが、これは、ポリシロキサンを製造する際における縮合反応時の残存シラノール量が多かったためと推測できる。
尚、実施例1のポリシロキサンは、比較例1と合成方法が異なり、完全なカゴ型構造であるために残存シラノールが無いことも水接触角が高いことに起因していると考えられる。また、実施例2のように、撥水的なポリシロキサン骨格(D単位シリコーン)が導入されている場合には、表面エネルギーの低い官能基が表面偏析することにより、高い水接触角が得られていると考えられる。
【0081】
更に、表2及び
図1によれば、実施例1、実施例2及び比較例1の各組成物を用いて得られた各薄膜の誘電率(1KHz)は、それぞれ、5.9、5.5及び5.9であり、低周波数領域で若干の誘電率の増加は見られたものの、誘電率の周波数依存性はなく、イオン不純物が少ない薄膜であることが確認できた。
【0082】
以上より、実施例1及び実施例2の組成物を用いて得られる薄膜(絶縁膜)は、膜表面の疎水性及び平滑性に優れており且つ電気安定性に優れることが確認できた。
これに対して、比較例1の組成物を用いた場合は、ポリシロキサン合成時における残存シラノール量が多いために、膜表面の疎水性が劣る結果となった。尚、比較例1の組成物を用いて絶縁膜を形成した場合には、十分な疎水性を有しておらず、表面の極性基が電荷をトラップしてしまい、ヒステリシス等の不具合の原因となると考えられる。
【0083】
[3]トランジスタ特性
実施例1の
絶縁膜用組成物を用いて、
図2に示す構成のトランジスタ1を下記のように作製し、トランジスタ特性を評価した。
まず、厚み300nmのシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハ2上に、上記(2−1)と同様にして、実施例1の
絶縁膜用組成物を用いて、薄膜(膜厚;1.5μm)を作成した。その後、薄膜を30秒間露光した後、150℃で1時間加熱することにより硬化させ、絶縁膜3を形成した。
次いで、絶縁膜3上に、ポリ3−ヘキシルチオフェンの1wt%クロロホルム溶液を、500rpmで10秒間、更に2000rpmで20秒間の条件でスピンコートし、膜厚0.1〜0.2μmの半導体層4を形成した。
その後、100℃で1時間加熱した後、チャネル長50μm、チャネル幅が3mmとなるように金を蒸着することにより、ソース−ドレイン電極51,52を形成し、試験用のトランジスタ1を作製した。
尚、この構成のトランジスタ1においては、シリコンウェハ2全体がゲート電極となっている。
【0084】
<トランジスタの出力特性>
測定方法;ゲート電圧を0から−30V、ドレイン電圧を10から−30Vと変えることでソース・ドレイン間の電流値を測定した。
尚、この結果を
図3に示す。
【0085】
<トランジスタの伝達特性>
測定方法;ドレイン電圧を−30Vとし、ゲート電圧を0から−30Vと変え、電流値を測定した。
尚、この結果を
図4に示す。
【0086】
図3(出力特性)に示すように、ゲート電圧を0から−30Vに変えたところ加電圧の増加に伴い、ソース・ドレイン間に流れる電力が増加し、トランジスタとして機能していることが確認できた。
更に、
図4(伝達特性)に示すように、電圧を加えた時と加えていないときで電流の変化が確認でき、スイッチングとして機能していることが確認できた。
尚、電圧を10Vから−30Vと変化させた場合と、−30Vから0Vへと変化させた場合での電流の変化は見られず、ヒステリシスは見られなかった。このことは、実施例1の組成物から得られる薄膜(絶縁膜)の誘電率の周波数依存性から確認したように、イオン不純物が少ないことが起因していると考えられる。更には、接触角測定から確認したように絶縁膜表面には電荷をトラップする極性基が、カゴ型構造であるために極めて少ないことが起因していると考えられる。
また、以上のトランジスタ特性の測定データから算出した電界効果型移動度は6.2×10
−4cm
2V
−1s
−1、閾値が5.9V、オンオフ比は2×10
2となった。
【0087】
以上のように、実施例1の組成物は、膜表面の疎水性及び平滑性に優れており且つ電気安定性にも優れており、有機半導体における絶縁膜として十分に機能することが確認できた。
また、実施例2の組成物も、膜表面の疎水性及び平滑性に優れており且つ電気安定性にも優れているため、有機半導体における絶縁膜として十分に機能すると考えられる。
また、実施例1及び2の各組成物から得られる絶縁膜は、有機高分子と無機高分子をハイブリッド化したものであるため、新しい物性の付与や制御が可能となる。