(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チューリッポシド類を含有する植物組織は、チューリップ(Tulipa spp.)、アルストロメリア(Alstromeria spp.)、セリバオウレン(Coptis japonica)、ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、シジミバナ(Spiraea prunifolia)、ピンクユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)のうち、いずれかの植物体からの植物組織であることを特徴とする請求項1記載のα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、植物体に有するチューリッポシド−A又はB及びその類縁体から、α−メチレン−γ−ブチロラクトン又はα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを製造する点に特徴があり、類縁体には例えば化学式(6)(Phytochemistry 65(2004)731−739;Plant Growth Regulation(2005)46:125−131)、化学式(7)(Biosci.Biotechnol.Biochem.,63(1),152−154,1999)、、化学式(8)(Natural Medicines 51(3),244−248(1997))、化学式(9)及び(10)(Phytochemistry,Vol.40 No.1 49−51(1995))等が例として挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【実施例1】
【0010】
(チューリップ球根粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ(Tulipa spp.):「紫水晶」の球根2g(生重量)をビーズショッカーにて破砕し、10mMリン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH 7.0)を20ml加えてボルテックスで撹拌後、低温室にて1時間静置した。
遠心分離(21,500×g,15min,4℃)後、上清を10mM KPBにて平衡化したDEAE−Toyopearlカラム(ゲル3ml)にかけ、10mM KPB及び100mM KPB(0.1MNaCl)で溶出し、活性のあるフラクションを回収後、セントリプレップにて濃縮(4,000×g,40min,4℃)した。
これにより、100U/mgの比活性を有する粗酵素500Uを得ることができた。
酵素活性の測定法は以下に示す手法にて行った。
0.5M KPB(pH6.5)を5μl、酵素液を10μl、H
2Oを30μl、基質として6−Tuliposide A(10mg/ml)5μlを加え、全量を50μlとし、室温にて10分間静置、酵素反応を行った。
10分後、メタノール100μl、0.5M H
3PO
4 50μl、H
2O 300μlを加えて反応を停止し、25μlをHPLCにインジェクションして活性を測定した。
HPLC分析は、流速:0.65ml/min、検出:208nm、カラム:RP−18GP 250×4.6(関東化学製)、溶媒:20%メタノール(10mM H
3PO
4)の条件で行った。
タンパク量は、ブラッドフォード法(Bio Rad Protein Assay Kit)を用いて定量した。
タンパク溶液10μlにブラッドフォード試薬250μlを加え、30分後、595nmの吸光度を測定した。
規定濃度溶液(1.44mg/ml)のBSAを用いて各々の濃度と吸光度の検量線を作成した。
これを元に、球根無細胞抽出液中のタンパク含量を定量した。
【実施例2】
【0011】
(チューリップ花弁組織からのα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の抽出)
チューリップ:「紫水晶」の花弁100mg(生重量)に1mlの冷水を加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10回)で破砕抽出した。
綿ろ過後、抽出液490μlを量りとり、10mM KPB(pH7.0)5μl、実施例1にて得られた粗酵素液(3100U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、各溶媒(トルエン、酢酸ブチル、酢酸プロピル、ヘキサン、キシレン)200μlで2回、100μlで1回の計3回で溶媒抽出してHPLC分析にて抽出効率を求めた。
なお、HPLC分析については、流速:0.35ml/min、検出:208nm、カラム:TSKgel ODS−100V 5mm 4.6mm×15cm(東ソー株式会社製)、溶媒:10%メタノール(10mM H
3PO
4)、イソクラティックの条件で行った。
ここで抽出効率は、
図1〜4にそれぞれ示すような既知の濃度に基づいて検量線を作成し、チューリッポシド−A又はBがα−メチレン−γ−ブチロラクトン又はα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンに変換後、酵素反応液から溶媒抽出できた割合を示す。
【表1】
抽出溶媒として非極性溶媒を用いたので、ヒドロキシ基を有するα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの抽出効率が低かった。
【実施例3】
【0012】
(チューリップ花弁組織からのα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の分別抽出)
チューリップ:「紫水晶」花弁100mg(生重量)に1mlの冷水を加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕抽出した。
綿ろ過後、抽出液490μlを量りとり、10mM KPB(pH7.0)5μl、実施例1にて得られた粗酵素液(580U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出した。
残りの水層より、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを各溶媒(ブタノール、酢酸エチル、2−プロパノール、酢酸プロピル、イソアミルアルコール)にて200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出、HPLC分析にて抽出効率を算出した。
【表2】
α−メチレン−γ−ブチロラクトンを非極性溶媒で抽出した後に極性溶媒を用いてα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを抽出したので抽出効率が向上した。
【実施例4】
【0013】
(チューリップ根粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の根1.3g(乾燥重量)を乳鉢にて破砕し、10mMリン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH7.0)を150ml加えて低温室にて1時間攪拌した。
ガーゼにて組織を濾別後、遠心分離(21,500×g,15min,4℃)した上清に10mM KPBにて平衡化したDEAE−Toyopearl 4gを加え、低温室にて1.5時間攪拌した。懸濁液を25mlの注射筒に流し入れゲルを回収した。
このゲルより各20mlの10mM KPB、100mM KPB、100mM KPB(0.1M NaCl)にて順次酵素を溶出し、活性のあるフラクションを回収後、セントリプレップ(4,000×g,40min,4℃)及びセントリコン(10,000×g,20min,4℃)にて濃縮した。
これにより、18.7U/mgの比活性を有する粗酵素約17Uを得ることができた。
【実施例5】
【0014】
(チューリップ茎粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の茎2.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、11.1U/mgの比活性を有する粗酵素約12Uを得ることができた。
【実施例6】
【0015】
(チューリップ葉粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の葉2.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、15.4U/mgの比活性を有する粗酵素約63Uを得ることができた。
【実施例7】
【0016】
(チューリップ花弁粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の花弁1.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、68.0U/mgの比活性を有する粗酵素約60Uを得ることができた。
【実施例8】
【0017】
(チューリップ葯粗酵素液の調製)
凍結乾燥した「紫水晶」の葯2.0g(乾燥重量)から実施例B−1と同様の手法で精製を行い、42.1U/mgの比活性を有する粗酵素約72Uを得ることができた。
【実施例9】
【0018】
(チューリップ雌しべ粗酵素液の調製)
凍結乾燥したチューリップ:「紫水晶」の雌しべ1.2g(乾燥重量)から実施例4と同様の手法で精製を行い、11.4U/mgの比活性を有する粗酵素約17Uを得ることができた。
【実施例10】
【0019】
(チューリップ各組織由来粗酵素を用いたα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の調製)
チューリップ:「紫水晶」の花弁(乾重量1g)を乳鉢で破砕し、冷メタノール50mlを加え低温室(4℃)にて30分間撹拌抽出した。
ろ過後、ろ液をシロップ状になるまで減圧濃縮し、メタノールと同量の冷水(4℃)に再溶解して抽出液とした。
このものを均等に分け、酵素反応に供した。
抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、各組織由来粗酵素液(球根1000U/ml、葉630U/ml、茎123U/ml、根171U/ml、葯719U/ml、花弁601U/ml、雌しべ167U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα−メチレン−γ−ブチロラクトン及びα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表3に示す。
ここで変換率は、チューリッポシド−A又はBがα−メチレン−γ−ブチロラクトン又はα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンに変換した割合を示し、抽出効率は酵素反応液から溶媒抽出できた割合を示す。
【表3】
【0020】
(比較例1)
(市販リパーゼを用いたα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の調製)
実施例10同様の抽出液を用い、このものを均等に分け、酵素反応に供した。
抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、各種リパーゼ10mgを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα−メチレン−γ−ブチロラクトン及びα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表4に示す。
【表4】
この結果、チューリップ組織から抽出したチューリッポシド変換酵素の方が市販のリパーゼよりも優れていることが明らかになった。
【実施例11】
【0021】
(チューリップ各組織中からのα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の調製)
チューリップ:「紫水晶」の各組織(球根250mg、葉100mg、茎100mg、根100mg、葯50mg、花弁100mgいずれも生重量)に冷水1mlを加え、ビーズショッカー(2500 rpm、4℃、30秒×10回)で破砕抽出した。
綿ろ過後、抽出液490μlを量りとり、10mM KPB(pH7.0)5μl、粗酵素液(1000U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200 μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα−メチレン−γ−ブチロラクトン及びα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表5に示す。
【表5】
【実施例12】
【0022】
(アルストロメリア抽出液の調製)
アルストロメリア(Alstromeria spp.)植物体60mg(乾燥重量)より冷メタノール3mlにて、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕することで抽出物を得た。
綿ろ過後、ろ液を集め減圧濃縮し、ろ液と同量の冷水に再溶解して抽出液とした。
このものを均等に分け、酵素反応に供した。
なお、抽出にはラピッドスター、マリレーン、エラの3栽培品種を用いた。
【0023】
(セリバオウレン抽出液の調製)
セリバオウレン(Coptis japonica)植物体600mg(乾燥重量)を乳鉢で破砕後冷メタノール30mlを加え、室温にて30分間撹拌した。
ろ過後、ろ液をシロップ状になるまで減圧濃縮し、冷水3mlに再溶解して抽出液とした。このものを均等に分け、酵素反応に供した。
【0024】
(各植物体からのα−メチレン−γ−ブチロラクトン類の生成及び抽出)
上記で調製した抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5ml、球根粗酵素液(1,063U/ml)5mlまたはH
2Oを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)にて抽出し、HPLCにてα−メチレン−γ−ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素変換により生成したα−メチレン−γ−ブチロラクトンの濃度及び抽出効率を表6に示す。
【表6】
【実施例13】
【0025】
紫水晶の各組織(球根、葉、茎、根、葯、花弁、雌しべ)100mg(生重量、但し球根は250mg、葯は50mg)に1mlのメタノールを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕し、綿ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、1mLの冷水(4℃)に再溶解して抽出液とした。
抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、球根粗酵素液(1,063U/ml)5μlを添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出した。
残りの水層より、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンをブタノール:アセトン= 1:1にて200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出した。
4つの段階(抽出直後、2時間反応後、トルエン抽出後の水層、混合溶媒抽出後の水層)に分け、HPLC分析を行った。
なお、HPLC分析条件は実施例2と同条件である。
分析結果を表7に示す。
ここで濃度は、酵素反応液における両化合物の濃度を、変換率は、チューリッポシド−A又はBがα−メチレン−γ−ブチロラクトン又はα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンに変換した割合を示し、抽出効率は酵素反応液から溶媒抽出できた割合を示す。
【表7】
【0026】
これにより、植物体の各組織からの破砕抽出にメタノールを用いてもα−メチレン−γ−ブチロラクトン類を効率よく得られることが明らかになった。
【実施例14】
【0027】
チューリップの各品種(アーリーグローリー、ありさ、アルビノ、ウエディングベールエンパイヤステート、カーニバルデリオ、黄小町、クインオブナイト、グリーンランド、ゲリットファンデルボルク、ゴールデンエンパイヤステート、ゴールデンメロディー、コンプリメント、白雪姫、紫雲、ジュディレスター、スターファイター、デザインインプレッション、初桜、ハミルトン、春乙女、春万葉、バレリーナ、ピンクダイヤモンド、ピンクレディパーロット、ファンシーフリル、フライアウェイ、フランソワーゼ、紫水晶、フレーミングパーロット、メセアポゼラン、ラリベラ、ランバダ、レーンファンデルマーク、レッドウィング、レッドファボリット、ワシントン)の花弁100mg(生重量)に1mLのメタノールを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕し、綿ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、1mLの冷水(4℃)に再溶解して抽出液とした。
上記、抽出液490μlを量りとり、実施例13と同様に反応を行い、抽出、定量を行った結果を表8に示す。
なお、濃度、変換率、抽出効率の定義は、実施例13と同様である。
【表8】
【0028】
これにより、チューリップの品種によらずにα−メチレン−γ−ブチロラクトン類が得られることが明らかになった。
【実施例15】
【0029】
シジミバナ(Spiraea prunifolia)、ユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、ピンクユキヤナギ(Spiraea thunbergii)、カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)植物体50mg(乾燥重量)に冷メタノール1mlを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10)で破砕し、綿ろ過後、ろ液を集め減圧濃縮し、ろ液と同量の冷水に再溶解して抽出液とした。
植物抽出液490μlを量りとり、実施例13と同様に反応を行い、抽出、定量を行った結果を表9に示す。
なお、濃度、抽出効率の定義は、実施例13と同様である。
【表9】
【0030】
これにより、植物組織中にチューリッポシド−β及びその類縁体が存在すると、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを得ることができることも明らかになった。
【実施例16】
【0031】
実施例10で調製した紫水晶花弁抽出液490μlに、10mM KPB(pH7.0)5μl、実施例1にて得られた粗酵素液(580U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加、無添加下で、各種溶媒にて200μlで各回数抽出することで、α−メチレン−γ−ブチロラクトン類を溶媒抽出した。
HPLC分析にて抽出効率を算出した結果を表10に示す。
【表10】
【実施例17】
【0032】
実施例13と同様の酵素反応後、ベンゾトリフルオリドにてα−メチレン−γ−ブチロラクトンを抽出(NaCl無添加、200μl×5回抽出)した残りの水層にNaClを飽和量添加し、2,2,2−トリフルオロエタノールまたは2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールにて200μlで2回、100μlで1回溶媒抽出したところ、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンを94.7及び95.8%の効率で抽出できた。
【実施例18】
【0033】
アルストロメリア(Alstromeria spp.)植物体200mg(乾燥重量)を乳鉢にて破砕し、10mMリン酸カリウム緩衝液(KPB)(pH7.0)を15ml加えて低温室にて1時間攪拌した。
ガーゼにて組織を濾別後、遠心分離(21,500×g,15min,4℃)した上清に10mM KPBにて平衡化したDEAE−Toyopearl 1gを加え、低温室にて1.5時間攪拌した。
懸濁液を10mlの注射筒に流し入れゲルを回収した。
このゲルより各5mlの10mM KPB、100mM KPB、100mM KPB(0.1M NaCl)にて順次酵素を溶出し、活性のあるフラクションを回収後、セントリプレップ(4,000×g,40min,4℃)及びセントリコン(10,000×g,20min,4℃)にて濃縮した。
これにより、8.9U/mgの比活性を有する「エラ」粗酵素約5.6U、7.5U/mgの比活性を有する「マリレーン」粗酵素約 2.3U、3.5U/mgの比活性を有する「ラピッドスター」粗酵素約1.2Uを得ることができた。
【実施例19】
【0034】
カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)、キバナカタクリ(Erythronium grandiflorum Pursh.)植物体50mg(乾燥重量)に1mlの10mM KPBを加え、ビーズショッカー(2500rpm、4℃、30秒×10回)で破砕抽出した。
綿ろ過後、得られた酵素液をマイクロコン(8,000×g,20min,4℃)にて濃縮した。
これにより、85.3U/mgの比活性を有するカタクリ粗酵素約4.9U、126U/mgの比活性を有するキバナカタクリ粗酵素約 7.7Uを得ることができた。
【実施例20】
【0035】
実施例10に用いた抽出液490μlを量りとり、1M KPB(pH7.0)5μl、各植物由来粗酵素液(アルストロメリア「エラ」112U/ml、アルストロメリア「マリレーン」47U/ml、アルストロメリア「ラピッドスター」24U/ml、カタクリ92U/ml、キバナカタクリ153U/ml)5μlを各々添加し、常温にて2時間静置した。
このものにNaClを飽和量添加し、α−メチレン−γ−ブチロラクトンをトルエン(200μl 2回、100μl 1回)、α−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンをブタノール/アセトン=1/1(200μl 2回、100μl 1回)にて分別抽出し、HPLCにてα−メチレン−γ−ブチロラクトン及びα−メチレン−β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンの濃度を求めた。
酵素による変換率と抽出効率を表11に示す。
【表11】
【0036】
これにより、チューリッポシド変換酵素はチューリップのみならず、アルストロメリア、カタクリ、キバナカタクリ等の植物組織にも存在することが明らかになった。