【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0031】
図1は、実施例に係る連続遠心分離機の全体を示す斜視図である。
図1に示されるように連続遠心分離機1は、ワクチン製造工程などに使用されるいわゆる連続超遠心分離機であり、遠心分離部100と制御装置部200とを備えている。遠心分離部100と制御装置部200との間は配線・配管群50で接続される。
【0032】
遠心分離部100は、遠心室となる円筒状のチャンバ101と、チャンバ101を支持するベース110と、チャンバ101の内部に出し入れ自由に収容されて高速回転するロータ120と、チャンバ101の上部に配置されてロータ120を吊り下げた状態でこれを回転駆動する駆動部130と、チャンバ101の下側に取り付けられる下部軸受部140と、駆動部130を上下および前後方向に移動させるためのリフト160及びアーム160Aと、ロータ120に試料または薬液(滅菌液)を連続的に供給・排出する試料循環部170(
図1及び2参照)を有して構成される。チャンバ101は、その内部に駆動部130に吊り下げられたロータ120が収容される。
【0033】
ロータ120は通常運転時は高速で回転駆動されるため、大気との風損や摩擦熱による発熱を抑える目的で遠心分離中はチャンバ101の内部を減圧された状態に保たれる。チャンバ101の内部を減圧された状態にするために、チャンバ101内の空気を排出する図示せぬ排出口がチャンバ101の胴部に形成される。チャンバ101は複数のボルト110Aでベース110に固定され、ベース110は複数のボルト110Bにより床面に固定される。
【0034】
制御装置部200には、チャンバ101内部の遠心室全体を冷却するための図示せぬ冷凍機、チャンバ101内部の遠心室を減圧された状態にするための図示せぬ真空ポンプ、ロータ120を所定の場所に移動させるための図示せぬリフト駆動装置、ロータ120を駆動制御する図示せぬ制御部等が収容され、上部に、操作・入力する箇所である操作パネル205が配置される。制御部は、図示しないマイクロコンピュータ、記憶装置を含んだ電子回路で構成され、ロータ120を駆動制御だけでなく連続遠心分離機全体の制御を行う。
【0035】
図2は
図1の遠心分離部100の詳細構造を示す断面図である。チャンバ101は、その内部に駆動部130に吊り下げられたロータ120が収容され、ロータ120の周囲を覆うように円筒形のエバポレータ(蒸発配管)102が設置され、エバポレータ102の外側には円筒形のプロテクタ103が設置される。プロテクタ103は、ロータ120が回転中に何らかの原因でロータ120が破壊されるようなことがあった場合であっても、その破片や試料が外部に飛び出すことなくチャンバ101内部に留めておくために設置され、防護壁の役割を果たすものである。エバポレータ102は、チャンバ101の内部を冷やすことができるように冷媒ガスを循環させる銅配管で構成されており、チャンバ101の内部を冷却可能である。
【0036】
ロータ120は、円筒形のロータボディ121と、ロータボディ121の上下にねじ込み式で取り付けられる上部ロータカバー123および下部ロータカバー122を含んで構成される。駆動部130は、リフト160(
図1参照)と一体の後述するアッパープレート161に取り付けられ、モータ131、軸受部132等で構成されている。モータ131は、アッパーシャフト123Aを回転軸とし、軸受部132は、モータ131の上下においてアッパーシャフト123Aを回転可能に支持する。アッパーシャフト123Aの下端部にナット123Bによって上部ロータカバー123が取り付けられるため、ロータ120は駆動部130から吊り下げられる。
【0037】
上部ロータカバー123および下部ロータカバー122のそれぞれの軸心位置には試料通過孔がそれぞれ形成されており、上部ロータカバー123および下部ロータカバー122には、回転軸部であるアッパーシャフト123Aとロアシャフト122Aとが取り付けられる。アッパーシャフト123Aとロアシャフト122Aとのそれぞれの軸中心には、上部通路および下部通路である試料通過孔がそれぞれ貫通しており、これらの試料通過孔は、上部ロータカバー123および下部ロータカバー122のそれぞれに形成された試料通過孔に連通する。駆動部130に含まれるモータ131の駆動によってアッパーシャフト123Aが高速回転されることにより、アッパーシャフト123Aに取り付けられるロータ120およびロータ120にナット122Bによって取り付けられるロアシャフト122Aが共に高速回転する。
【0038】
また、ロータ120の内部には、出し入れ可能なコア120Aが配置され、遠心分離を行なう際は、ロアシャフト122Aから注入される試料が、試料通過孔を通過してロータ120の内部に導入され、ロータ120内に導入された試料は、コア120Aによって高遠心力場へ移動されて沈殿と上清とに分離され、上清(廃液)は、アッパーシャフト123Aの試料通過孔から排出される。
【0039】
試料循環部170は、試料パイプ171と、試料タンク172と、試料供給ポンプ173と、廃液回収タンク176により主に構成される。試料パイプ171は、試料タンク172と下部軸受部140との間、および駆動部130と廃液回収タンク176との間を接続し、下部軸受部140との間に下側コネクタ171Bを有すると共に駆動部130との間に上側コネクタ175Bを有する。下部軸受部140は、ベース110のチャンバ101と当接する位置に設けられる。
【0040】
試料タンク172はロータ120で遠心分離する試料が蓄えられ、試料供給ポンプ173は、下部軸受部140に試料を圧送する。廃液回収タンク176はロータ120で分離された試料の上清(廃液)を貯留する。試料が試料タンク172から試料供給ポンプ173により下側パイプ171A内を圧送され、下部軸受部140を通過してロータ120内に流入して遠心分離された後に駆動部130から上側パイプ175Aを通り廃液回収タンク176までの間を試料循環ラインと定義する。尚、試料タンク172から試料供給ポンプ173の間、及び、上側コネクタ175Bと廃液回収タンク176の間には三方弁181、182が挿入される。三方弁181は通路181Aと通路181Bが連通しており、三方弁181は試料タンク172から下側パイプ171Aに試料が流れるように流路が形成される。三方弁182は通路182Aと通路182Bが連通しており、三方弁182は上側コネクタ175Bから上側パイプ175Aを介して廃液回収タンク176に遠心分離後の上澄み液が流れるように流路が形成される。尚、三方弁181は、通路181A、181B、181Cの3つのうち、任意の2つの通路を連通させることができる。同様に、三方弁182は、通路182A、182B、182Cの3つのうち、任意の2つの通路を連通させることができる。
【0041】
尚、
図2においてはロア側からアッパー側へ薬液を流す図としているが、薬液の流れを上下切り替えるための流路切替バルブを試料循環部170に配置して、薬液の流れを上下切り替えることによってもロータ120内の気泡を排出することが可能である。
【0042】
図3は操作パネル205での表示例を示す図である。操作パネル205には、本発明による洗浄モードの開始ボタンとなるCIPボタン216が配置される。本実施例においてCIPボタン216を押すことによって開始される“洗浄モード”とは、洗浄運転、滅菌運転、洗浄及び滅菌を含む運転のモードであり、試料を連続遠心分離する際の運転モードとは別の制御で行われる。操作パネル205は、例えばタッチセンサ式の液晶表示画面で構成され、表示部の上側には、ロータ120の回転数表示部211(単位:RPM)、経過時間表示部212(単位:時:分)、チャンバ内温度表示部213(単位:℃)、チャンバ内真空度表示部214(単位:Pa)等の各種情報が表示される。
【0043】
回転数表示部211、経過時間表示部212及びチャンバ内温度表示部213の各表示部には、左側に現在の状況を表示する領域と、右側に設定状況を表示する領域が設けられる。操作パネル205の中央部には、ロータ120の回転数と温度の推移を時間経過と対応させて表示するためのトレンド表示部215が設けられる。
図3では、横軸を時間とし、縦軸にロータの回転数とロータの温度としたグラフが表示された例を示している。このグラフ表示によって作業者は、ロータの回転数と温度が正常であるか否かを即座に認識できる。
【0044】
トレンド表示部215の下側の領域には、作業者へ伝達するメッセージを表示するためのメッセージ表示部217、何らかの異常が起こった際に作業者への警告を表示するためのアラーム表示部218が設けられる。
図3の例では、メッセージ表示部217に、洗浄モードでの運転中であることを示す“CIPモード運転中”とのメッセージが表示されており、これによって作業者は選択されたモードや運転中のモードを認識できる。さらに、操作パネル205の右下部には、チャンバ101内を減圧するため図示せぬ真空ポンプを駆動するための真空ボタン219と、ロータ120の回転を開始させるためのスタートボタン220と、回転中のロータ120を停止させるためのストップボタン221が表示される。
【0045】
次に
図4を用いて連続遠心分離機1の洗浄モードでの制御手順を説明する。
図4のフローチャートに示す制御は、制御装置部200内の図示しないマイクロコンピュータによって制御プログラムを実行することによりソフト的に制御する。まず、連続遠心分離機1を用いて作業を行う前に、作業者は操作パネル205を用いて運転モードを入力する(ステップ301)。
【0046】
作業者によってメニューボタン222(
図3参照)から、運転モードとして洗浄モードが選択された場合は、マイクロコンピュータは洗浄モードの制御手順を実行する(ステップ303、304)。洗浄モードとは試料ラインに薬液を流して滅菌や洗浄をするモードであり、通常の遠心分離運転が終了した後に、ロータ120をチャンバ101から取り出さず、以下のような操作を行なうことによって薬液による滅菌を行なう。
【0047】
まず滅菌液が入った試料タンク172を準備し、試料供給ポンプ173を運転してロータ120に滅菌液を供給する。次第にロータ120内は滅菌液で満たされていく。このまま暫く滅菌液を流し続ければロータ120内部は滅菌されることになるのだが、実際にはロータ120内部に気泡が残っており、気泡が留まった箇所は滅菌液がロータ120やコア120Aに触れず十分な滅菌ができていないことになる。次に、ロータ120内部が滅菌液で満たされたことを確認した後、滅菌液を流し続けたままの状態を保ち、作業者は操作パネル205にあるCIPボタン216を押すことにより洗浄モードによる運転をスタートさせる(ステップ304)。また、制御部は、洗浄運転の記録を開始するとともに、その状態をトレンド表示部215(
図3参照)に表示する。洗浄運転では、薬液の遠心分離の必要はないので、ロータ120を低速で回転させるようにモータ131の回転数を、例えば1000rpm程度に設定する。ロータ120は回転開始後、1000rpm(回転/分)まで加速して整定する。
【0048】
ここで、通常の遠心分離を行なう際の回転数は35000rpmから40000rpmであるのに対し、洗浄モード時の回転数は1000rpm程度であり十分に低速である。また、ロータ120の回転数が低速であり、風損で温度上昇を起こす恐れがないため、図示しない真空ポンプを運転しないで大気圧の環境下でロータ120を回転させることが可能である。ロータ120が回転することによって、ロータ120内部の滅菌液には遠心力が働き、内部に留まっていた気泡は滅菌液よりも当然軽いのでロータ120の中心に寄せられる。滅菌液は引き続き供給されているので、気泡はロア側からの滅菌液の流れに押されてアッパーシャフト123Aから上側コネクタ175Bを通過して流れ、廃液回収タンク176に回収される。
【0049】
十分な時間、滅菌液を流した後、再びCIPボタン216を押してロータ120を減速停止させる。洗浄が完了したら取得された洗浄運転の記録は制御装置部200内の記憶装置内に保存される(ステップ306)。作業者は、三方弁181の通路181Bと通路181Cを連通し、三方弁182の通路181Bと通路181Cを連通することにより、三方弁182の通路181Cからクリーンルーム内の大気が上側パイプ175A、下側パイプ171Aに流入することによりロータ120内の滅菌液を三方弁181の通路181Cから回収してロータ120内部を空の状態にして滅菌処理を終了する。なお、洗浄モードにおいては、1つの溶液で滅菌と洗浄を同時に行うようにしても良いし、一つの溶液で滅菌を行なった後に別の溶液を使用して洗浄処理を行なっても良い。別の溶液又は純水を使用して洗浄する場合は、滅菌液から洗浄液が入った試料タンク172に切り替えて上記と同様の処理を行なえばよい。また、三方弁182の通路182Cに、図示しないHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を取り付け、HEPAフィルタでろ過された大気(空気)をロータ120内に流入させたり、さらに大気(空気)の代わりに窒素ガスなどの不活性ガスを流入させ後、三方弁181及び182の通路181B及び通路182Bを遮断することにより、ロータ120内の滅菌状態を良好に維持することができる。
【0050】
ステップ302において、作業者によって指示された運転モードが、通常の遠心分離運転モードの場合は、ステップ307に進み、マイクロコンピュータは前回の運転モードの後に洗浄済みであるか否かを判断する(ステップ307)。この判断は、制御装置部200内の記憶装置に保存された遠心分離運転及び洗浄運転の記録を元に判断できる。洗浄済みでない場合は、洗浄を行うように作業者にアラームを発してステップ303に移る。洗浄済みの場合は、作業者からの遠心分離運転の条件、例えばロータ120の回転数、設定温度、真空度等の条件の入力を操作パネル205を介して受け付ける(ステップ308)。次に、作業者は操作パネル205のスタートボタン220を押すと、制御部は図示しない真空ポンプを稼働させてチャンバ101内を減圧させる。制御部は、通常運転の記録を開始するとともに、その状態をトレンド表示部215(
図3参照)に表示する。次に、制御部はチャンバ101内の気圧が100Pa以下になったか否かを監視し(ステップ310)、100Pa以下に達したらロータ120の回転を開始させて遠心分離運転を開始する(ステップ311)。
【0051】
次に、制御部は所定の遠心分離運転が終了したかどうか判断し(ステップ312)、遠心分離運転が完了したらロータ120の回転を停止させて取得された通常運転の記録を制御装置部200内の記憶装置に保存する(ステップ313)。次に作業者は真空ボタン219(
図3参照)を押して真空ポンプの駆動停止と真空開放バルブを“開”にすることでチャンバ101内部を大気状態にし(ステップ314)、処理を終了する。
【0052】
以上説明したように、本実施例によれば、試料ラインに薬液を流すことによってCIP滅菌を行なうことができる。さらに洗浄モードではロータを低速で回転させることによってロータ内に留まった気泡をロータから排出させるため、満遍なく確実な滅菌が可能となる。さらに洗浄モードにおいては真空ポンプを停止して行うので、大気圧から所定の真空度に達するまでに要する時間が不要であり、全体の運転時間が短くて済み、さらに省エネルギー化も達成できる。さらに、滅菌のための滅菌槽を準備する必要がなく、さらに、滅菌後のロータの内部が大気に暴露されることがないので、良好が滅菌状態を維持することも出来る。
【実施例2】
【0053】
次に
図5を用いて第2の実施例に係る連続遠心分離機1の洗浄モードでの制御手順を説明する。
図5のフローチャートは、
図4のステップ303〜ステップ305の部分を置き換えるものであり、図示していないその他の処理手順は
図4と同じである。第2の実施例では、洗浄モードにおいて真空ポンプを稼働させることが、第1の実施例とは異なる。洗浄モードにおいてはロータ120を高速回転する訳ではないので、通常の遠心分離を行なう上で運転可能な真空度の必要条件としている高真空状態(例えば120Pa以下)にする必要は必ずしもなく、洗浄モードでの真空度の条件を緩やかに設定することができる。例えば、270Pa以下程度にすれば、チャンバ101の内部が減圧されるまでの時間を短縮することができ、洗浄モードでの運転が完了するまでの総時間を短縮できる。
【0054】
洗浄モードの運転に先立って、作業者は、操作パネル205から洗浄モードでの運転条件を入力し(ステップ501)、真空ボタン219を押し、制御装置部200に配置された図示せぬ真空ポンプの駆動を開始しチャンバ101の内部の減圧を開始する(ステップ502)。次に滅菌液が入った試料タンク172を準備し、試料供給ポンプ173を運転してロータ120に供給する。次第にロータ120内は滅菌液で満たされていく。このまま暫く滅菌液を流し続ければロータ120内部は滅菌されることになるのだが、実際にはロータ120内部に気泡が残っており、気泡が留まった箇所は滅菌液がロータ120やコア120Aに触れず十分な滅菌ができていないことになる。
【0055】
そこで、作業者はチャンバ内の真空度が所定の真空度以下(例えば270Pa以下)になっていることを確認し、ロータ120内部が滅菌液で満たされたことを確認した後、滅菌液を流し続けたままの状態を保ち、操作パネル205にあるCIPボタン216を押してロータの運転を開始させる(ステップ504)。これによってロータ120は1000rpm(回転/分)まで加速し整定する。
【0056】
ロータ120が回転することによって、ロータ120内部の滅菌液には遠心力が働き、内部に留まっていた気泡は滅菌液よりも当然軽いのでロータ120の中心に寄せられる。滅菌液は引き続き供給されているので、気泡はロア側からの滅菌液の流れに押されてアッパーシャフト123Aから上側コネクタ175Bを通過して廃液回収タンク176に回収される。十分な時間、滅菌液を流した後、再びCIPボタン216を押してロータ120を減速停止させる。制御部は、運転終了の指示があったら(ステップ505)、運転記録を図示しない記憶手段に格納する(ステップ506)。ロータの回転が止まった後に、作業者は真空ボタン219を押して真空ポンプの駆動停止と真空開放バルブを“開”にし、チャンバ101内部を大気状態にする。最後に作業者はロータ120内の滅菌液を回収してロータ120内部を空の状態にして、滅菌及び/又は洗浄処理を終了する。
【0057】
以上説明したように、第2の実施例によれば通常の遠心分離運転ほど高い真空度にしていないものの、ロータ室をある程度の真空度まで減圧するので、比較的高めの回転数でロータを回転させながら滅菌及び/又は洗浄処理を行うことができる。
【0058】
尚、本実施例では、洗浄モードを設けてロータ120を回転させながら滅菌液を流すことによってロータ120内に留まった気泡を排出することによって確実な滅菌を提案しているが、上記したロータ120の回転数1000rpmは一例であって、十分に気泡が排出できるのであればさらに遅い回転数であってもよいし、当然ながら1000rpmから通常の遠心分離回転数(例えば35000rpmや40000rpm)の間の任意の回転数で回転させながら滅菌液を流しても同様な結果が得られることは明白である。
【実施例3】
【0059】
次に、
図6及び
図7を用いて本発明の第3の実施例を説明する。
図6は、第3の実施例に係る遠心分離部の詳細構造を示す断面図である。
図2で示した遠心分離部と同じ部分には同じ参照符号を付しており、その構造は同一であるので繰り返しの説明は省略する。第3の実施例で第1の実施例と異なるのは、試料タンク672及び廃液回収タンク676からロータ120への配管の構成である。本実施例では、試料タンク672から下側コネクタ671Bに至る配管の途中に試料供給ポンプ673と方向切替バルブ677と三方弁181を設けたことに特徴がある。
【0060】
試料タンク672はロータ120で遠心分離する試料が蓄えられ、試料供給ポンプ673によって試料を圧送する。洗浄モードにおける運転時には、試料タンク672には滅菌液又は洗浄液が収容される。試料供給ポンプ673によって圧送された試料は、方向切替バルブ677の方向設定によって下側パイプ671Aか上側パイプ675Aのいずれに接続される。方向切替バルブ677は、4つのポートを有し、入口側2つと出口側2つのポートの組み合わせを同時に切り替えることができる電磁切替弁を用いることができる。方向切替バルブ677のポートは、それぞれ、試料タンク672に接続する試料パイプ679、廃液回収タンク676に接続する廃液パイプ678、下側コネクタ671Bに接続される下側パイプ671A、及び、上側コネクタ675Bに接続される上側パイプ675A、に接続される。
【0061】
図6において方向切替バルブ677の設定は、試料タンク672から下側パイプ671Aに試料を圧送する向きに設定された状態を示している。この設定の場合、同時に上側パイプ675Aが廃液回収タンク676に接続される。これが方向切替バルブ677の第1の設定位置である。また、方向切替バルブ677の設定を変更してバルブ677aを図の位置から反時計回りに90度回転させることによって、試料タンク672と上側パイプ675Aを導通させ、同時に、廃液回収タンク676と下側パイプ671Aを導通させるように設定できる(第2の設定位置)。
【0062】
方向切替バルブ677のバルブ677aが
図6のように設定された状態において、試料タンク672から吸引されて方向切替バルブ677を通過した試料は、下部軸受部140を通過してロータ120内に流入して遠心分離され、ロータ120で分離された試料の上清(廃液)は、駆動部130を通り上側パイプ675Aに至り、方向切替バルブ677、廃液パイプ678を介して廃液回収タンク676に回収される。本実施例において、方向切替バルブ677と廃液回収タンク676の間には流量センサ680が設けられ、廃液パイプ678に流入する廃液の量を計量し、そのデータを制御装置部200(
図1参照)に送出する。
【0063】
方向切替バルブ677のバルブ677aが、
図6の状態から反時計回りに90度回転された第2の設定位置において、試料タンク672から吸引されて方向切替バルブ677を通過した試料は、上側パイプ675Aを経由して、アッパーシャフト123Aに至りロータ120内に流入する。すると、ロータ120で分離された試料の上清(廃液)は、ロアシャフト122Aを通過して下側パイプ671Aに流入し、方向切替バルブ677を通過して廃液回収タンク676に至る。この際、廃液回収タンク676に流れる流量は流量センサ680によって測定され、そのデータは制御装置部200(
図1参照)に送出される。
【0064】
以上のように、第3の実施例においては方向切替バルブ677を設けたことによって、試料、滅菌液、洗浄液をロータ120の下側から入れるか、上側から入れるかのいずれかを選ぶことができる。また、この選択をロータ120の回転中においても行うことができる。なお、下側パイプ671Aと上側パイプ675Aには三方弁181、182が挿入される。三方弁181は、通路181A、181B、181Cの3つの通路を有し、これらのいずれか2つの通路を連通させるように制御できる。同様に、三方弁182は、通路182A、182B、182Cの3つの通路を有し、これらのいずれか2つの通路を連通させるように制御できる。従って、方向切替バルブ677による試料(洗浄液)の送出に加えて、三方弁181、182を用いた試料や廃液の下側パイプ671A又は上側パイプ675Aからの排出を行うことができる。本実施例においては、方向切替バルブ677、三方弁181、182を用いた制御を行うことによって、様々な形態の洗浄作業や滅菌作業を実現できる。
【0065】
次に、
図7のフローチャートを用いて第3の実施例に係る連続遠心分離機1の洗浄モードでの制御手順を説明する。
図7のフローチャートは、
図4のステップ303〜305の部分を置き換えるものであり、図示していないその他の処理手順は
図4と同じである。第3の実施例では、洗浄モードにおいて、洗浄液をロータ120に流入させる方向を切り替えることに特徴がある。
【0066】
まず、洗浄モードの運転に先立ち作業者は、操作パネル205から洗浄モードでの運転条件である、流路切替え回数Nと洗浄時間Tを入力する(ステップ701)。ここで、流路切替え回数Nは、ロータ120の下からの供給と上からの供給を1つの洗浄動作として、この洗浄動作を何回繰り返すかを示す回数である。また、洗浄時間Tは、ロータ120の下からの供給又は上からの供給による洗浄の時間を示し、例えば秒または分で指示する。次に、制御装置部200は、ロータ120を低速で回転させる(ステップ702)。洗浄モードにおいてはロータ120を、通常の遠心分離を行なう回転数よりも少ない回転数、例えば最高回転数の1/10以下の回転数で回転させる。次に、制御装置部200は方向切替バルブ677をロータ120内の流路が「下から上」方向になるように、即ち、試料パイプ679と下側パイプ671Aを接続し、上側パイプ675Aと廃液パイプ678を接続する(ステップ703)。本明細書では、この接続状態を「Bottom Feed」と呼ぶ。
【0067】
次に、制御装置部200は洗浄時間Tが経過したかを判定し、未経過の場合は経過するまで待機する(ステップ704)。洗浄時間Tが経過したら、制御装置部200は方向切替バルブ677をロータ120内の流路が「上から下」方向になるように、即ち、試料パイプ679と上側パイプ675Aを接続し、下側パイプ671Aと廃液パイプ678を接続する(ステップ705)。本明細書ではこの接続状態を「Top Feed」と呼ぶ。
【0068】
次に、制御装置部200は洗浄時間Tが経過したかを判定し、未経過の場合は経過するまで待機する(ステップ706)。洗浄時間Tが経過したら、制御装置部200は流路切替回数Nを1だけ減らし(ステップ707)、Nが0になったか否かを判定し、0でなかったらステップ703に戻り、0になったら処理を終了する(ステップ708)。
【0069】
以上のように、第3の実施例の洗浄モードにおいては、洗浄液をロータ120の下から上に流すだけでなく、上から下方向にも流すように構成した。通常、薬液(滅菌液)をロータ120の下から入れるだけだと、ロータ120中で生じた気泡は軽いので回転中心側に集まる。そうすると、中心付近に集まった気泡は上に抜ける。しかしながら、ロータ120の下側の生じた気泡は、薬液を下から上方向に流すだけでは上側から抜けにくくなることがある。気泡の存在は、ロータ120の内壁に薬液が接するのを阻害することになり得るので、薬液による滅菌を完全に行うためには好ましくない。そこで本実施例では、ロータ120の下から上方向に薬液を流した後に、薬液を流す方向を切り替えて、ロータ120の上から下方向に所定時間流すようにして、ロータ120の下側の生じた気泡を効果的に排出するようにした。このように構成することにより、薬液がロータ120、ロアシャフト122A、アッパーシャフト123Aの壁面に良好に接することができるので、確実に滅菌することができるようになった。
【0070】
さらに、第3の実施例では薬液を流す方向の切替えを交互に1回以上切替えるようにしたので、ロータ120をチャンバ101から取り外すことなく洗浄・滅菌を行うことができる。尚、
図7のフローチャートにおいては、「Bottom Feed」と「Top Feed」を1組として、流路切替え回数Nをカウントするようにしたが、これらを別々にカウントしても良く、Bottom Feedをm回、Top Feedをn回(n=m±1)というように、設定しても良い。また、ステップ703で洗浄開始時に「Bottom Feed」で開始したが、これだけに限られずに「Top Feed」から開始するようにしても良い。
【0071】
さらに、
図7のフローチャートのステップ703から708のステップの実行中にロータ120を低速で回転させるようにしたが、部分的にあるいは全体的にロータ120を停止させるようにしても良いし、洗浄の進行具合によってロータ120の回転数を可変にするようにしても良い。さらに、方向切替バルブ677を切り替えるタイミングを時間ではなく、流量センサ680を使って、廃液回収タンク676に流れた液量を基に切り替えても良い。
【実施例4】
【0072】
次に、
図8〜
図9を用いて本発明の第4の実施例を説明する。第4の実施例においては、薬液を流す方向の切替えを4つのポートを有した一つの電磁切替弁たる方向切替バルブ677にて行うようにしたが、本実施例においては流路をブリッジ型に接続し、4つの独立した自動バルブ777A〜777Dを組み合わせて構成するようにしたことに特徴がある。
【0073】
図8において、入力側のポートとして、試料タンク672から接続される接続パイプ674と、上側パイプ675Aが割り当てられ、出力側のポートとして下側パイプ671Aと廃液パイプ678が割り当てられる。この状態、つまり「Bottom Feed」は、自動バルブ777Aを閉、777Bを開、777Cを閉、777Dを開にすることによって実現することができる。
【0074】
図9は、
図8で示した自動バルブ777A〜777Dの開閉状態を変更して、接続される流路を切り替えた状態を示す図である。ここでは、入力側のポートとして、試料タンク672から接続される接続パイプ674と、下側パイプ671Aが割り当てられ、出力側のポートとして上側パイプ675Aと廃液パイプ678が割り当てられる。また、自動バルブ777Aを開、777Bを閉、777Cを開、777Dを閉にすることによって「Top Feed」を実現することができる。
【0075】
以上のように、第4の実施例では方向切替バルブ677(
図6参照)の代わりに、それと同等の構成を成す自動バルブ777A〜777Dによって「Bottom Feed」と「Top Feed」を実現できるようにしたので、洗浄液をロータ120の下から上に流すだけでなく、上から下方向にも流すことができ、様々な形態の洗浄や滅菌を実現できる。
【0076】
尚、自動バルブ777A〜777Dは任意のタイプのものを用いることができ、自動バルブの種類としては電動バルブや空気圧バルブを使用しても良い。また、自動バルブだけでなく手動のバルブで実現して良い。
【0077】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。