(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704352
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-234814(P2012-234814)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-85251(P2014-85251A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2013年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 高明
(72)【発明者】
【氏名】柏木 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】福岡 誠二
【審査官】
續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−008050(JP,A)
【文献】
特開平01−227071(JP,A)
【文献】
特開2000−258464(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/107018(WO,A1)
【文献】
特開2011−149827(JP,A)
【文献】
特開2012−026966(JP,A)
【文献】
特開平10−073570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に搭載された感磁素子と、第1及び第2の磁性体とを備え、前記基板の一方の面にスペーサーが配置され、前記第1及び第2の磁性体は前記基板と前記スペーサーとを挟み込んだ状態で固定部品により相互に固定され、前記基板の他方の面にグランドパターンが露出し、前記第1及び第2の磁性体の一方と前記グランドパターンとが相互に接触して電気的に接続され、前記第1及び第2の磁性体が前記固定部品により相互に電気的に接続されている、電流センサ。
【請求項2】
前記スペーサーが前記感磁素子の周りを囲む請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
被測定電流の経路となる導体パターンが前記基板に設けられている請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項4】
被測定電流の経路となるバスバーが前記スペーサーに保持され又は一体化されている請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項5】
被測定電流の経路となるバスバーを挿通する貫通孔が前記スペーサーに形成されている請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記スペーサーが分割構造であって被測定電流の経路となるバスバーを挟み込んでいる請求項1又は2に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感磁素子を用いて被測定電流を非接触で検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電流センサでは、一般に、磁性体や感磁素子等の部材は、ケースに収容されて樹脂等の封止材により封止されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構成では、部材を固定するためのケースが必須でコストが高くなりやすい。また、封止により磁性体と感磁素子に応力が加わるという問題もある。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、磁性体と感磁素子を固定するためのケース及び封止が不要な電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電流センサである。この電流センサは、基板と、前記基板に搭載された感磁素子と、第1及び第2の磁性体とを備え、前記基板の一方の面にスペーサーが配置され、前記第1及び第2の磁性体は前記基板と前記スペーサーとを挟み込んだ状態で固定部品により相互に固定され
、前記基板の他方の面にグランドパターンが露出し、前記第1及び第2の磁性体の一方と前記グランドパターンとが相互に接触して電気的に接続され、前記第1及び第2の磁性体が前記固定部品により相互に電気的に接続されている。
【0008】
前記スペーサーが前記感磁素子の周りを囲んでもよい。
【0009】
被測定電流の経路となる導体パターンが前記基板に設けられていてもよい。
【0010】
被測定電流の経路となるバスバーが前記スペーサーに保持され又は一体化されていてもよい。
【0011】
被測定電流の経路となるバスバーを挿通する貫通孔が前記スペーサーに形成されていてもよい。
【0012】
前記スペーサーが分割構造であって
被測定電流の経路となるバスバーを挟み込んでいてもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁性体と感磁素子を固定するためのケース及び封止が不要な電流センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電流センサの分解斜視図。
【
図3】同電流センサの、第2の磁性体5を分解した状態の下方斜視図。
【
図5】本発明の実施の形態2に係る電流センサの斜視図。
【
図6】本発明の実施の形態3に係る電流センサの分解斜視図。
【
図11】本発明の実施の形態4に係る電流センサの分解斜視図。
【
図15】本発明の実施の形態5に係る電流センサの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1に係る電流センサの分解斜視図である。
図2は、同電流センサの組立後の上方斜視図である。
図3は、同電流センサの、第2の磁性体5を分解した状態の下方斜視図である。
図4は、同電流センサの正面図である。これらの図に示すように、本実施の形態の電流センサは、基板1と、感磁素子2と、スペーサー3と、第1の磁性体4と、第2の磁性体5とを備える。
【0018】
感磁素子2は、例えばホールICであり、基板1の一方の面に搭載される。スペーサー3は、例えば絶縁樹脂製であり、基板1の一方の面(感磁素子2の搭載面)に配置される。スペーサー3は、本実施の形態では枠状ないし筒状であって感磁素子2の周りを囲む。第1の磁性体4及び第2の磁性体5は、高透磁率磁性材(例えば珪素鋼板)を断面コの字型に折曲げ加工したものであり、先端面(両端縁)同士がギャップ7を有して相互に対向し、全体として外周面に2箇所のスリット(ギャップ7)が入った角筒状を成す。基板1の磁性体挿通孔8は、第2の磁性体5の先端部を通す又は位置させるために設けられる。
【0019】
基板1は絶縁体であり、基板1の相互に対向する縁部には表面実装用の端子部9がそれぞれ形成される。基板1の一方の面には端子部9同士を渡す導体パターン15(厚銅パターン)が設けられて被測定電流の経路を成す。被測定電流によって発生する磁界が感磁素子2に印加され、感磁素子2の出力信号によって被測定電流が測定される。なお、導体パターン15と感磁素子2との間には不図示のレジストが介在して絶縁が確保される。基板1には、感磁素子2の他に、必要に応じて各種の電子部品が搭載され、それに応じて所要の配線パターンが形成される。
【0020】
第1の磁性体4及び第2の磁性体5は、基板1とスペーサー3とを挟み込んだ状態でリベット等の固定部品6により相互に固定されている。すなわち、一対の固定部品6は、第1の磁性体4の一対の締結孔11、スペーサー3の一対の締結孔12、基板1の一対の締結孔13、及び第2の磁性体5の一対の締結孔14を貫通して先端がかしめられ、第1の磁性体4、スペーサー3、基板1、及び第2の磁性体5を締結し一体化する。固定部品6は、導電性を有する締結部品であり、リベットの他に例えばボルトとナットの組合せを用いてもよい。
【0021】
図3に示すように、基板1の他方の面(感磁素子2の非搭載面)にはグランドパターン10が露出している。
図4に示すように、グランドパターン10と第2の磁性体5とが相互に接触して電気的に接続される。また、第1の磁性体4及び第2の磁性体5は固定部品6により相互に電気的に接続される。
【0022】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0023】
(1) 基板1、感磁素子2、第1の磁性体4、及び第2の磁性体5を固定するためのケースが不要なため、従来と比較して部材コストを低減できる。
【0024】
(2) 電流センサの組立て工程は、例えばリフローによる基板1への部品実装と、固定部品6による第1の磁性体4及び第2の磁性体5の相互固定だけでよく、従来のようにケースへの収容と樹脂注型による封止を行ったりインサート成型する場合と比較して組立て工数を低減できる。
【0025】
(3) 従来のようにケースに収容して封止する場合は感磁素子2、第1の磁性体4、及び第2の磁性体5に応力が加わる問題があったが、本実施の形態ではそれらの部材の封止やインサート成型が不要なため、応力を低減できる。
【0026】
(4) 第1の磁性体4及び第2の磁性体5がグランドパターン10と導通しているため、それらが電気的に浮いている場合と比較して渦電流を小さくすることができ、ノイズが発生しにくい。また、第1の磁性体4及び第2の磁性体5のC結合により浮遊容量が発生してセンサ出力にノイズが乗ることを防止できる。
【0027】
(5) スペーサー3が感磁素子2の周りを囲むため、感磁素子2に対する防塵効果が得られる。
【0028】
(6) 感磁素子2の位置は、被測定電流により第1の磁性体4が磁化されたことにより発生する磁界と、前記被測定電流により第2の磁性体5が磁化されたことにより発生する磁界とが互いに弱め合う又は相殺される位置となっており、電流センサの検出出力のヒステリシスを原理的にゼロ(若しくはゼロ近傍)にすることが可能である。すなわち、電流センサのゼロアンペア測定精度の向上を図ることができる。
【0029】
(7) 第1の磁性体4及び第2の磁性体5を対向させた内側に感磁素子2を配置しているため、リング状の磁気コアの空隙に感磁素子を配置する従来構造と比較して感磁素子2に流れ込む外乱磁界が少なくなり、外乱ノイズ耐性が向上する。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態2に係る電流センサの斜視図である。この電流センサは、
図2に示した実施の形態1のものと比較して、ギャップ7が無くなって第1の磁性体4及び第2の磁性体5の先端面(両端縁)同士が接触している点で相違し、その他の点で一致する。スペーサー3の寸法を調節することで本実施の形態のようにギャップ7を無くすこともできる。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0031】
図6は、本発明の実施の形態3に係る電流センサの分解斜視図である。
図7は、同電流センサの組立後の斜視図である。
図8は、同電流センサのスペーサー3の斜視図である。
図9は、同スペーサー3の側面図である。
図10は、同電流センサの側面図である。本実施の形態では、実施の形態1と異なり、スペーサー3を通過するバスバー16が被測定電流の経路を成す。バスバー16はコの字型に折り曲げられた状態でスペーサー3にインサート成型される。なお、バスバー16は平板状でインサート成型によらずスペーサー3に保持されてもよい。スペーサー3は側面角部を丸めた直方体形状であって基板1との対向面に素子収容凹部17が設けられる。基板1に搭載された感磁素子2は素子収容凹部17内に位置する(
図10)。基板1には感磁素子2の他に電子部品18が実装される。第1の磁性体4及び第2の磁性体5の先端面(両端縁)の一方同士は基板1の外側で対向し、他方同士は基板1の磁性体挿通孔8の近傍で対向する。なお、図示は省略したが、本実施の形態においても実施の形態1と同様にグランドパターンを露出させて第2の磁性体5と接触させることにより、第1の磁性体4及び第2の磁性体5をグランド電位にすることができる。本実施の形態のその他の点は実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0032】
図11は、本発明の実施の形態4に係る電流センサの分解斜視図である。
図12は、同電流センサの組立過程1の斜視図である。
図13は、同電流センサの組立過程2の斜視図である。
図14は、同電流センサの組立後の斜視図である。この電流センサは、
図6及び
図7に示した実施の形態3のものと異なり、バスバー16は平板状でスペーサー3と別体である。バスバー16は両端部に設けられた取付孔22を介して被測定電流の経路を成すように取り付けられる。スペーサー3は略直方体形状でバスバー16を挿通するためのバスバー挿通孔24を有する。固定部品6は、バスバー16に形成された一対の締結孔19を他の締結孔11〜14と共に貫通する。バスバー挿通孔24の下部は、バスバー16と当接するベース部25であり、バスバー挿通孔24の前後に延長されている。ベース部25には一対の締結孔21が設けられ、バスバー16にはベース部25の締結孔21に対応する一対の締結孔20が設けられている。バスバー16の一対の締結孔20とベース部25の一対の締結孔21が一対の固定部品23(締結部品)により相互に締結され、バスバー16とスペーサー3とが相互に固定される。固定部品23はリベットでもよいしボルトとナットの組合せでもよい。本実施の形態のその他の点は実施の形態3と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0033】
図15は、本発明の実施の形態5に係る電流センサの分解斜視図である。
図16は、同電流センサの組立過程の斜視図である。
図17は、同電流センサの組立後の斜視図である。この電流センサは、
図11〜
図14に示した実施の形態4のものと比較して、スペーサー3が上部スペーサー3aと下部スペーサー3bとの分割構造であってバスバー16を挟み込む点で相違し、その他の点で一致する。上部スペーサー3aと下部スペーサー3bは共に断面コの字型であり、固定部品6により締結された状態でバスバー16を挟み込んで保持する。このため、実施の形態4と異なりバスバー16をスペーサー3に別途リベット留めしなくてよい。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0034】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0035】
感磁素子2はホールICに限らず磁気抵抗効果素子(MR素子)であってもよい。また電流検出の原理は磁気比例式に限らず磁気平衡式でもよい。実施の形態3〜5において、実施の形態2と同様にギャップ7を無くしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 基板、2 感磁素子、3 スペーサー、4 第1の磁性体、5 第2の磁性体、6 固定部品、7 ギャップ、8 磁性体挿通孔、9 端子部、10 グランドパターン、11〜14 締結孔(貫通孔)、15 導体パターン、16 バスバー、17 素子収容凹部、18 電子部品、19〜21 締結孔、22 取付孔、23 固定部品、24 バスバー挿通孔、25 ベース部