特許第5704359号(P5704359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5704359アミド化合物製造用触媒およびアミド化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704359
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】アミド化合物製造用触媒およびアミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/34 20060101AFI20150402BHJP
   C07C 231/06 20060101ALI20150402BHJP
   C07C 235/06 20060101ALI20150402BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150402BHJP
【FI】
   B01J23/34 Z
   C07C231/06
   C07C235/06
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-503294(P2012-503294)
(86)(22)【出願日】2011年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2011055108
(87)【国際公開番号】WO2011108717
(87)【国際公開日】20110909
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-47916(P2010-47916)
(32)【優先日】2010年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内山 隆子
(72)【発明者】
【氏名】白井 慎洋
(72)【発明者】
【氏名】島 義和
(72)【発明者】
【氏名】竹本 眞規
(72)【発明者】
【氏名】野上 玄器
【審査官】 後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/037082(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/007633(WO,A1)
【文献】 特開平09−188656(JP,A)
【文献】 特開平07−228560(JP,A)
【文献】 特開平05−170720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 231/06
C07C 235/06
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマスに加えて更にイットリウムまたはバナジウムを含有するマンガン酸化物触媒からなる、ニトリル化合物と水とを反応させてアミド化合物を製造するためのアミド化合物製造用触媒。
【請求項2】
ビスマス/マンガンの原子比が0.001〜0.1である請求項1に記載のアミド化合物製造用触媒。
【請求項3】
イットリウム/マンガンの原子比が0.001〜0.1である請求項1または2に記載のアミド化合物製造用触媒。
【請求項4】
バナジウム/マンガンの原子比が0.001〜0.1である請求項1または2に記載のアミド化合物製造用触媒。
【請求項5】
(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比が0.002〜0.040である請求項1に記載のアミド化合物製造用触媒。
【請求項6】
ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比が0.05〜0.95である請求項1に記載のアミド化合物製造用触媒。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のアミド化合物製造用触媒の存在下、ニトリル化合物と水を液相で反応させることによるアミド化合物の製造方法。
【請求項8】
ニトリル化合物がアセトンシアンヒドリンである請求項7に記載のアミド化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリル化合物と水とを液相で反応させることにより、アミド化合物を製造するアミド化合物製造用触媒およびアミド化合物の製造方法に関し、特にアミド化合物を高効率で製造することができるアミド化合物製造用触媒およびアミド化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニトリル化合物の一つであるアセトンシアンヒドリンを水和することによって得られるヒドロキシカルボン酸アミドは、ヒドロキシカルボン酸エステル又は不飽和カルボン酸エステルの製造原料として重要な化合物である。そのために優れた性能のニトリル水和用触媒を開発することは工業的意義が大きく、これまでにニトリル水和用の高活性、高選択的、高寿命な触媒としてマンガン酸化物を主成分とする水和触媒、及びその調製方法、あるいはその水和触媒を用いたアミド化合物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1〜7参照)。
その中の特許文献2ではZn、Cd、Hg、特許文献3ではZr、V、Sn、特許文献4では元素周期律表3、4、5、13、14、15、16、8、9、10族元素より選択される元素、特許文献5ではNb、Ta、Cr、Mo、W、Si、Ge、Pb、As、Sbをそれぞれマンガン酸化物触媒に添加することにより触媒活性が向上することが開示されている。
しかしながら、これら触媒を工業的に用いた場合、触媒活性は十分とは言えず、さらなる活性向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭47−4068号公報
【特許文献2】特開昭63−57534号公報
【特許文献3】特開平3−93761号公報
【特許文献4】特開平5−170720号公報
【特許文献5】特開平6−340602号公報
【特許文献6】特開平11−319558号公報
【特許文献7】国際公開第07/007633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ニトリル化合物の水和によるアミド化合物の製造における有効な触媒を開発することである。上記に示した従来技術によるニトリル化合物の水和反応では、工業的に反応効率が十分とは言えず、高性能な触媒を用いることにより高効率な反応系の構築が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため検討した結果、マンガン酸化物を主成分とする触媒にビスマスを含有する化合物に加えて、更にイットリウムまたはバナジウムを含有する化合物を1種以上添加することにより、触媒活性が向上することを見出した。すなわち、本発明は、
1 ビスマスに加えて更に、イットリウムまたはバナジウムを含有するマンガン酸化物触媒からなる、ニトリル化合物と水とを反応させてアミド化合物を製造するためのアミド化合物製造用触媒。
2 ビスマス/マンガンの原子比が0.001〜0.1である上記1に記載のアミド化合物製造用触媒。
3 イットリウム/マンガンの原子比が0.001〜0.1である上記1または2に記載のアミド化合物製造用触媒。
4 バナジウム/マンガンの原子比が0.001〜0.1である上記1または2に記載のアミド化合物製造用触媒。
5 (ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比が0.002〜0.040である上記1に記載のアミド化合物製造用触媒。
6 ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比が0.05〜0.95である請求項1に記載のアミド化合物製造用触媒。
7 上記1〜6のいずれかに記載のアミド化合物製造用触媒の存在下、ニトリル化合物と水を液相で反応させることによるアミド化合物の製造方法。
8 ニトリル化合物がアセトンシアンヒドリンである上記7に記載のアミド化合物の製造方法。
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高活性なニトリル水和用触媒が得られる。この触媒を用いれば、例えば、アセトンシアンヒドリンからヒドロキシカルボン酸アミドを高効率で製造することができ、工業的な意義は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明のマンガン酸化物を主成分としてビスマスに加えて更に第3金属成分(イットリウムまたはバナジウム)を含有するニトリル水和用触媒は、マンガン酸化物に主として二酸化マンガンが使用されるが、二酸化マンガンは、一般にMnO1.7〜MnO2の間にあるマンガン酸化物である。二酸化マンガンは様々な結晶構造をとりうることが知られており、さらに各相間の転移や結晶化度の変化が起こる事から、その構造は極めて複雑かつ多種多様である。
【0008】
本発明で使用するマンガン酸化物は種々の公知の方法により調製できるが、例えば七価のマンガンを還元して調製する方法、二価のマンガンを酸化して調製する方法、又は前記それぞれの調製法を組み合わせる方法によって調製した物を用いるのが好ましい。七価のマンガンを還元することによって調製した酸化マンガンを使用する場合、その調製法としては、中性若しくはアルカリ性の条件下で過マンガン酸化合物を20〜100℃で還元する方法(Zeit.Anorg.Allg.Chem.,309,p1-32 and p121-150(1961))、過マンガン酸カリウム水溶液を硫酸マンガン水溶液に加える方法(O. Mancera, G. Rosenkranz, and F. Sondheimer, J.Chem. Soc., 2189,(1953))、過マンガン酸塩をハロゲン化水素酸で還元する方法(特開昭63−57535号公報)、過マンガン酸塩を多価カルボン酸若しくは多価アルコールで還元する方法(特開平9−24275号公報、特開平9−19637号公報)、過マンガン酸塩をヒドラジン、ヒドロキシカルボン酸、若しくはその塩で還元する方法(特開平6−269666号公報)で調製した物を用いることが好ましい。一方二価のマンガンを酸化することによって調製した酸化マンガンを使用する場合は、硝酸マンガン若しくは炭酸マンガンを熱分解する方法、又は硫酸マンガン水溶液を電解酸化する方法で調製した物を用いることが好ましい。
【0009】
本発明の、マンガン酸化物を主成分とし、ビスマスに加えて更に第3金属成分(イットリウムまたはバナジウム)を含有する酸化物触媒は、上記の方法により酸化マンガンを調製中あるいは調製後に、添加しようとする金属元素を含有する化合物を添加することにより調製される。添加方法としては含浸、吸着、混練、共沈等何れの方法も用いることができる。添加は添加する金属化合物を溶媒に溶かして行うことが好ましい。例えば、酸化ビスマス、第3金属化合物(イットリウム化合物またはバナジウム化合物)及び二価のマンガン化合物を含む混合液と過マンガン酸カリウムを含む溶液を混合し、反応させ、次いで反応を完結するための熟成を行い、生成したスラリー状の沈殿物を、濾過、洗浄して固液分離すれば、目的のマンガン、ビスマス、第3金属成分(イットリウムまたはバナジウム)を含む酸化物触媒を得ることができる。なお、触媒の結晶構造や比表面積、ビスマス及び第3金属成分(イットリウムまたはバナジウム)の含有量を調整するために、七価と二価のマンガンの割合、原料物質の溶液の濃度、混合時の温度、熟成の温度、及び時間を任意に選択することができる。
【0010】
以上の触媒調製の為に使用される二価のマンガン源としては水溶性の塩が選ばれ、その中で硫酸塩が特に好ましい。七価のマンガン源としても水溶性の塩が選ばれ、その中で過マンガン酸カリウムが特に好ましい。
第3金属成分(イットリウムまたはバナジウム)源としては、水溶性の塩やハロゲン化物が好ましく、その中でも硫酸塩、硝酸塩、金属酸塩、塩化物が特に好ましい。ビスマス源としては、硫酸ビスマス、硝酸ビスマスのような水溶性の塩のみならず酸化ビスマスも使用できる。
【0011】
また、ビスマス化合物の添加量は、ビスマス/マンガンの原子比で通常0.0001〜0.1、好ましくは0.001〜0.1、より好ましくは0.002〜0.05である。一方、第3金属成分であるイットリウムの添加量は、イットリウム/マンガンの原子比で通常0.0001〜0.1、好ましくは0.001〜0.1、より好ましくは0.002〜0.05である。また、同じく第3金属成分であるバナジウムの添加量は、バナジウム/マンガンの原子比で通常0.0001〜0.1、好ましくは0.001〜0.1、より好ましくは0.002〜0.05である。
さらに、(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比としては、通常0.002〜0.040、好ましくは0.003〜0.030、より好ましくは0.004〜0.022、特に好ましくは0.005〜0.020であり、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比としては、通常0.05〜0.95、好ましくは0.10〜0.90、より好ましくは0.15〜0.85、特に好ましくは0.20〜0.80、最も好ましくは0.25〜0.75である。
【0012】
本発明の製造方法に使用するニトリル化合物には、各種のカルボニル基を持つ化合物とシアン化水素から塩基性触媒の存在下で容易に製造されるシアンヒドリン類が挙げられ、さらに具体的なシアンヒドリンとしてアセトンシアンヒドリンが例示される。
【0013】
本発明の酸化マンガン触媒を用いた水和反応は液相で行われ、通常水が過剰の系で実施される。即ち、原料液中のニトリル化合物の割合は5〜80重量%、好ましくは20〜60重量%であるので、水の割合は20〜95重量%、好ましくは40〜80重量%である。反応温度は10〜100℃、好ましくは20〜90℃の範囲である。これより低い温度では反応速度が小さくなり、またこれより高い温度では副生成物が多くなる場合があるので好ましくない。反応圧力は、反応温度において反応原料が液相を保つのに十分な圧力があれば減圧、大気圧または加圧でも良い。
【0014】
ニトリル化合物としてケトンシアンヒドリンを用いる際はケトンシアンヒドリンの分解抑制のため、反応原料液にそのケトンシアンヒドリンの原料であるケトンをニトリル化合物に対して10〜300重量%の範囲で添加することが好ましい。例えば、アセトンシアンヒドリンを原料に用いる際には、特開昭52−222公報に開示されているように原料液にアセトンを添加すると良い。
【0015】
本発明においては、上記のように調製した酸化マンガン触媒を成型体として用いた固定床形式、或いは粉体、顆粒体または微小球状体として用いた懸濁床形式でのニトリル化合物の水和反応が行われる。触媒固定床形式を用いる際には、原料液であるニトリル化合物や水等は予め混合しても、各々を単独で反応器に供給しても良い。また反応液の反応器中の滞留時間は、ニトリル化合物が高転化率かつ高選択率で目的のアミド化合物になるように、適宜、設定できる。反応で得られたアミド化合物を含有する生成液を、蒸留精製することにより、目的のアミド化合物を高純度で得ることができる。次に、本発明の方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
次に、本発明の方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
(1−1)触媒の調製
触媒1
過マンガン酸カリウム62.96g(0.398mol)を水217.54mlに溶解し85℃で攪拌状態を保った液に対して、硫酸マンガン1水和物56.36g(0.333mol)、硫酸イットリウム8水和物2.45g(0.004mol)を水215.48mlに溶解し更に濃硫酸99.94g(1.019mol)と混合して55℃に保った液を速やかに注加した。注加終了後の反応混合物を70℃で2時間攪拌し、更に90℃で4時間攪拌し熟成させた後、その反応混合物に対して酸化ビスマス(III)1.90g(0.004mol)を水440mlに懸濁させた液を速やかに注加した。室温で30分間攪拌後、得られた沈殿物を濾過し、洗浄液の導電率が300μS/cmとなるまで洗浄して沈殿ケーキを得た。
得られたケーキを押し出し成型機(シリンダー径35mmφ、ノズル径1.5mmφ×24穴、開孔率4.4%、油圧式)で成型し、静置乾燥機にて110℃16時間乾燥後、1.0mmφ×3〜7mmの形状の成型触媒を約60g得た。
【0017】
触媒2
硫酸イットリウム8水和物の代わりに酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物1.85g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0018】
比較触媒1
硫酸イットリウム8水和物を添加しないこととした他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0019】
比較触媒2
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸ランタン9水和物2.93g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0020】
比較触媒3
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸セリウム4水和物3.25g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0021】
比較触媒4
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸エルビウム8水和物3.08g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0022】
比較触媒5
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸イッテルビウム3.13g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0023】
比較触媒6
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸チタン30wt%水溶液36.43g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0024】
比較触媒7
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸ジルコニウム・4水和物2.90g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0025】
比較触媒8
硫酸イットリウム8水和物の代わりに過レニウム酸アンモニウム(VII)2.16g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0026】
比較触媒9
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸鉄(II)7水和物2.27g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0027】
比較触媒10
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸鉄(III)1.66g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0028】
比較触媒11
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸コバルト7水和物2.26g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0029】
比較触媒12
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸ニッケル6水和物2.14g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0030】
比較触媒13
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸銅(II)5水和物2.04g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0031】
比較触媒14
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸銀(I)1.25g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0032】
比較触媒15
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸亜鉛7水和物2.31g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0033】
比較触媒16
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸アルミニウムn水和物(n=14〜18)2.53g(0.004mol、n=16で計算した)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0034】
比較触媒17
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硝酸アルミニウム9水和物3.02g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0035】
比較触媒18
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硝酸ガリウムn水和物(n=7〜9)3.22g(0.008mol、n=8で計算した)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0036】
比較触媒19
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸インジウム2.08g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0037】
比較触媒20
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸タリウム2.03g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0038】
比較触媒21
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸錫3.12g(0.0145mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0039】
比較触媒22
硫酸イットリウム8水和物の代わりにタングステン酸カリウム2.62g(0.008mol)を過マンガン酸カリウム水溶液中に添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0040】
(1−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒1、2、比較触媒1〜22
各触媒のアセトンシアンヒドリン水和反応に対する活性は以下の方法によるα−ヒドロキシイソ酪酸アミド(HBD)の収率で評価した。上記方法で調製した各触媒を長さ3〜4mmに折り、2.88gをジャケット付の内径10mmφのガラス製反応器に充填した。ジャケットには60℃の温水を流した。アセトンシアンヒドリン40重量%、アセトン10重量%、水50重量%の割合で混合した原料液を流速30g/hで反応管に通し、同時に空気を19mL/hで供給した。反応開始から2日後及び9日後に、反応器から出た反応液を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、HBDの収率及びHBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を求めた。ここでHBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量とは、反応開始2日目から9日目までの1日ごとのHBD生産量と収率から導き出す1次直線における収率55%時のHBD生産量を示す。それらの測定結果を表1及2に示す。
【0041】
Mn−Bi+各種金属触媒活性評価結果(1)
【表1】
【0042】
Mn−Bi+各種金属触媒活性評価結果(2)
【表2】
【0043】
(2−1)触媒の調製
触媒3
過マンガン酸カリウム62.96g(0.398mol)を水217.54mlに溶解し85℃で攪拌状態を保った液に対して、硫酸マンガン1水和物56.36g(0.333mol)、酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物1.56g(0.007mol)を水215.48mlに溶解し更に濃硫酸99.94g(1.019mol)と混合して55℃に保った液を速やかに注加した。注加終了後の反応混合物を70℃で2時間攪拌し、更に90℃で4時間攪拌し熟成させた後、その反応混合物に対して酸化ビスマス(III)0.48g(0.001mol)を水440mlに懸濁させた液を速やかに注加した。室温で30分間攪拌後、得られた沈殿物を濾過し、洗浄液の導電率が300μS/cmとなるまで洗浄して沈殿ケーキを得た。
得られたケーキを押し出し成型機(シリンダー径35mmφ、ノズル径1.5mmφ×24穴、開孔率4.4%、油圧式)で成型し、静置乾燥機にて110℃16時間乾燥後、1.0mmφ×3〜7mmの形状の成型触媒を約60g得た。
【0044】
触媒4
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.779g(0.003mol)、酸化ビスマス(III)を0.950g(0.002mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0045】
触媒5
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.390g(0.002mol)、酸化ビスマス(III)を1.90g(0.004mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0046】
比較触媒23
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を1.91g(0.008mol)とし、酸化ビスマス(III)を添加しないことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0047】
(2−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒3〜5、比較触媒23
(1−2)と同様の方法で、HBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を測定した。
各触媒における、ビスマス/マンガン、バナジウム/マンガン、(ビスマス+バナジウム)/マンガン、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比(%)とHBDの生産量(g/g cat)を表3に示す。
【0048】
Mn−Bi−V各種組成触媒活性評価結果(1)
【表3】
【0049】
表3の(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比を約1.2%に固定した場合の結果より、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比が25%〜85%の場合、特に高い生産量が得られることが分かる。
【0050】
(3−1)触媒の調製
触媒6
酸化ビスマス(III)を1.90g(0.004mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0051】
比較触媒24
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を3.12g(0.013mol)とし、酸化ビスマス(III)を添加しないことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0052】
比較触媒25
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を添加せず、酸化ビスマス(III)を2.85g(0.006mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0053】
(3−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒6、比較触媒24〜25
(1−2)と同様の方法で、HBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を測定した。
各触媒における、ビスマス/マンガン、バナジウム/マンガン、(ビスマス+バナジウム)/マンガン、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比(%)とHBDの生産量(g/g cat)を表4に示す。
【0054】
Mn−Bi−V各種組成触媒活性評価結果(2)
【表4】
【0055】
表4の(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比を約2%に固定した場合の結果より、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比が55%の場合、特に高い生産量が得られることが分かる。
【0056】
(4−1)触媒の調製
触媒7
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.346g(0.002mol)、酸化ビスマス(III)を0.340g(0.0007mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0057】
触媒8
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.779g(0.003mol)、酸化ビスマス(III)を0.950g(0.002mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0058】
触媒9
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を2.25g(0.010mol)、酸化ビスマス(III)を2.21g(0.005mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0059】
触媒10
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を3.12g(0.013mol)、酸化ビスマス(III)を2.85g(0.006mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0060】
(4−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒7〜10
(1−2)と同様の方法で、HBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を測定した。
各触媒における、ビスマス/マンガン、バナジウム/マンガン、(ビスマス+バナジウム)/マンガン、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比(%)とHBDの生産量(g/g cat)を表5に示す。
【0061】
Mn−Bi−V各種組成触媒活性評価結果(3)
【表5】
【0062】
表5のビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比を約50%に固定した場合の結果より、(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比が0.4%〜2.6%の場合、特に高い生産量が得られることが分かる。