【実施例】
【0016】
次に、本発明の方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
(1−1)触媒の調製
触媒1
過マンガン酸カリウム62.96g(0.398mol)を水217.54mlに溶解し85℃で攪拌状態を保った液に対して、硫酸マンガン1水和物56.36g(0.333mol)、硫酸イットリウム8水和物2.45g(0.004mol)を水215.48mlに溶解し更に濃硫酸99.94g(1.019mol)と混合して55℃に保った液を速やかに注加した。注加終了後の反応混合物を70℃で2時間攪拌し、更に90℃で4時間攪拌し熟成させた後、その反応混合物に対して酸化ビスマス(III)1.90g(0.004mol)を水440mlに懸濁させた液を速やかに注加した。室温で30分間攪拌後、得られた沈殿物を濾過し、洗浄液の導電率が300μS/cmとなるまで洗浄して沈殿ケーキを得た。
得られたケーキを押し出し成型機(シリンダー径35mmφ、ノズル径1.5mmφ×24穴、開孔率4.4%、油圧式)で成型し、静置乾燥機にて110℃16時間乾燥後、1.0mmφ×3〜7mmの形状の成型触媒を約60g得た。
【0017】
触媒2
硫酸イットリウム8水和物の代わりに酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物1.85g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0018】
比較触媒1
硫酸イットリウム8水和物を添加しないこととした他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0019】
比較触媒2
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸ランタン9水和物2.93g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0020】
比較触媒3
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸セリウム4水和物3.25g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0021】
比較触媒4
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸エルビウム8水和物3.08g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0022】
比較触媒5
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸イッテルビウム3.13g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0023】
比較触媒6
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸チタン30wt%水溶液36.43g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0024】
比較触媒7
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸ジルコニウム・4水和物2.90g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0025】
比較触媒8
硫酸イットリウム8水和物の代わりに過レニウム酸アンモニウム(VII)2.16g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0026】
比較触媒9
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸鉄(II)7水和物2.27g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0027】
比較触媒10
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸鉄(III)1.66g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0028】
比較触媒11
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸コバルト7水和物2.26g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0029】
比較触媒12
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸ニッケル6水和物2.14g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0030】
比較触媒13
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸銅(II)5水和物2.04g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0031】
比較触媒14
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸銀(I)1.25g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0032】
比較触媒15
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸亜鉛7水和物2.31g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0033】
比較触媒16
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸アルミニウムn水和物(n=14〜18)2.53g(0.004mol、n=16で計算した)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0034】
比較触媒17
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硝酸アルミニウム9水和物3.02g(0.008mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0035】
比較触媒18
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硝酸ガリウムn水和物(n=7〜9)3.22g(0.008mol、n=8で計算した)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0036】
比較触媒19
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸インジウム2.08g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0037】
比較触媒20
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸タリウム2.03g(0.004mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0038】
比較触媒21
硫酸イットリウム8水和物の代わりに硫酸錫3.12g(0.0145mol)を添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0039】
比較触媒22
硫酸イットリウム8水和物の代わりにタングステン酸カリウム2.62g(0.008mol)を過マンガン酸カリウム水溶液中に添加したことの他は触媒1と同様に調製した触媒。
【0040】
(1−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒1、2、比較触媒1〜22
各触媒のアセトンシアンヒドリン水和反応に対する活性は以下の方法によるα−ヒドロキシイソ酪酸アミド(HBD)の収率で評価した。上記方法で調製した各触媒を長さ3〜4mmに折り、2.88gをジャケット付の内径10mmφのガラス製反応器に充填した。ジャケットには60℃の温水を流した。アセトンシアンヒドリン40重量%、アセトン10重量%、水50重量%の割合で混合した原料液を流速30g/hで反応管に通し、同時に空気を19mL/hで供給した。反応開始から2日後及び9日後に、反応器から出た反応液を高速液体クロマトグラフィーにて分析し、HBDの収率及びHBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を求めた。ここでHBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量とは、反応開始2日目から9日目までの1日ごとのHBD生産量と収率から導き出す1次直線における収率55%時のHBD生産量を示す。それらの測定結果を表1及2に示す。
【0041】
Mn−Bi+各種金属触媒活性評価結果(1)
【表1】
【0042】
Mn−Bi+各種金属触媒活性評価結果(2)
【表2】
【0043】
(2−1)触媒の調製
触媒3
過マンガン酸カリウム62.96g(0.398mol)を水217.54mlに溶解し85℃で攪拌状態を保った液に対して、硫酸マンガン1水和物56.36g(0.333mol)、酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物1.56g(0.007mol)を水215.48mlに溶解し更に濃硫酸99.94g(1.019mol)と混合して55℃に保った液を速やかに注加した。注加終了後の反応混合物を70℃で2時間攪拌し、更に90℃で4時間攪拌し熟成させた後、その反応混合物に対して酸化ビスマス(III)0.48g(0.001mol)を水440mlに懸濁させた液を速やかに注加した。室温で30分間攪拌後、得られた沈殿物を濾過し、洗浄液の導電率が300μS/cmとなるまで洗浄して沈殿ケーキを得た。
得られたケーキを押し出し成型機(シリンダー径35mmφ、ノズル径1.5mmφ×24穴、開孔率4.4%、油圧式)で成型し、静置乾燥機にて110℃16時間乾燥後、1.0mmφ×3〜7mmの形状の成型触媒を約60g得た。
【0044】
触媒4
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.779g(0.003mol)、酸化ビスマス(III)を0.950g(0.002mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0045】
触媒5
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.390g(0.002mol)、酸化ビスマス(III)を1.90g(0.004mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0046】
比較触媒23
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を1.91g(0.008mol)とし、酸化ビスマス(III)を添加しないことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0047】
(2−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒3〜5、比較触媒23
(1−2)と同様の方法で、HBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を測定した。
各触媒における、ビスマス/マンガン、バナジウム/マンガン、(ビスマス+バナジウム)/マンガン、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比(%)とHBDの生産量(g/g cat)を表3に示す。
【0048】
Mn−Bi−V各種組成触媒活性評価結果(1)
【表3】
【0049】
表3の(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比を約1.2%に固定した場合の結果より、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比が25%〜85%の場合、特に高い生産量が得られることが分かる。
【0050】
(3−1)触媒の調製
触媒6
酸化ビスマス(III)を1.90g(0.004mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0051】
比較触媒24
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を3.12g(0.013mol)とし、酸化ビスマス(III)を添加しないことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0052】
比較触媒25
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を添加せず、酸化ビスマス(III)を2.85g(0.006mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0053】
(3−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒6、比較触媒24〜25
(1−2)と同様の方法で、HBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を測定した。
各触媒における、ビスマス/マンガン、バナジウム/マンガン、(ビスマス+バナジウム)/マンガン、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比(%)とHBDの生産量(g/g cat)を表4に示す。
【0054】
Mn−Bi−V各種組成触媒活性評価結果(2)
【表4】
【0055】
表4の(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比を約2%に固定した場合の結果より、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比が55%の場合、特に高い生産量が得られることが分かる。
【0056】
(4−1)触媒の調製
触媒7
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.346g(0.002mol)、酸化ビスマス(III)を0.340g(0.0007mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0057】
触媒8
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を0.779g(0.003mol)、酸化ビスマス(III)を0.950g(0.002mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0058】
触媒9
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を2.25g(0.010mol)、酸化ビスマス(III)を2.21g(0.005mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0059】
触媒10
酸化硫酸バナジウム(IV)・3.7水和物を3.12g(0.013mol)、酸化ビスマス(III)を2.85g(0.006mol)としたことの他は触媒3と同様に調製した触媒。
【0060】
(4−2)アセトンシアンヒドリンの水和性能の測定
触媒7〜10
(1−2)と同様の方法で、HBDの収率が55%に低下するまでに生産したHBDの量を測定した。
各触媒における、ビスマス/マンガン、バナジウム/マンガン、(ビスマス+バナジウム)/マンガン、ビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比(%)とHBDの生産量(g/g cat)を表5に示す。
【0061】
Mn−Bi−V各種組成触媒活性評価結果(3)
【表5】
【0062】
表5のビスマス/(ビスマス+バナジウム)の原子比を約50%に固定した場合の結果より、(ビスマス+バナジウム)/マンガンの原子比が0.4%〜2.6%の場合、特に高い生産量が得られることが分かる。