特許第5704377号(P5704377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5704377
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】浸水防御ネット
(51)【国際特許分類】
   B63B 43/16 20060101AFI20150402BHJP
   B63B 43/14 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   B63B43/16
   B63B43/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-103221(P2014-103221)
(22)【出願日】2014年5月19日
【審査請求日】2014年5月19日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712001195
【氏名又は名称】岡本 應守
(72)【発明者】
【氏名】岡本應守
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−079077(JP,A)
【文献】 特開2011−201462(JP,A)
【文献】 特開2004−098818(JP,A)
【文献】 特開2001−106181(JP,A)
【文献】 特開2008−069551(JP,A)
【文献】 特開2008−174949(JP,A)
【文献】 特表平06−501436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 43/16
B63B 43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動可能とする第一の推進手段を備えたネットと、前記ネットの下面に位置させるとともに水中を移動可能とする第二の推進手段を備えた防水シートからなる浸水防御ネットであって、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けた浸水防御ネットであって、前記浸水防御ネットは、持ち上げたい船舶の下面を保持することができるものであって、前記ネット同士や前記防水シート同士または前記ネットと前記防水シート自体が結合できることにより、船舶の破損個所の大きさや船舶自体の大きさに応じて調整利用できるものであり、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けたことを特徴とする浸水防御ネット。
【請求項2】
浸水防御ネットは、持ち上げたい船舶の下面を保持するものであって、前記浸水防御ネット及び防水シートと前記船舶との間に介在される水を排水する排水手段が取り付けられるようになっている請求項に記載した浸水防御ネット。
【請求項3】
前記浮力手段は、浮力手段同士が結合されて船舶全体の安定性を高めるようになっている請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載した浸水防御ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水防御ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今大型船舶による海難事故で、人命や物資の損失、環境汚染等甚大な被害が発生しているが、その対応策が依然と人命救助第一にしているものの、日本国内ではその後の環境汚染問題が多々発生しており、国外では依然人命救助が第一になっていない事例も目立っている状況である。
【0003】
日本国内での大型船舶による海難事故では、人員等ソフトウェア面にも充実感があり、人命救助第一にも問題はないが、作業に必要な用具等ハードウェア面において作業道具が依然とワイヤーを使用したもの等を使用して作業に従事しているために、海難事故の発生から船舶の引き上げ終了までの事故対応処理時間が長期に及んでいる。
【0004】
海難事故が発生して人命救助終了後、環境汚染対策を行ってから船舶の引き上げ作業に入っているが、引き上げ作業は船舶自体が沈没着底して動きが止まってから作業を行っているために、事故現場によっては経済活動にも支障が及んでいる。
【0005】
特許文献1や特許文献2の開示された内容やその他類似した浸水防御装置は、使用する際、十分に防御対応ができるかという疑問が残る。本発明は、それらの問題点を解決するためのものである。
【0006】
【特許文献1】特開平6−156367号公報
【特許文献2】特開平9−256352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように既存の浸水防御装置では、使用する際、十分に防御対応できるかという疑問が残るため、本発明は浸水を防御する対策の向上対策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明による浸水防御ネットは、水中 を移動可能とする第一の推進手段を備えたネットと、前記ネットの下面に位置させるとともに水中を移動可能とする第二の推進手段を備えた防水シートからなる浸水防御ネットであって、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けた浸水防御ネットであって、前記浸水防御ネットは、持ち上げたい船舶の下面を保持することができるものであって、前記ネット同士や前記防水シート同士または前記ネットと前記防水シート自体が結合できることにより、船舶の破損個所の大きさや船舶自体の大きさに応じて調整利用できるものであり、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、ネット同士や、前記ネットの下面に位置させる防水シート同士、また前記ネットと前記防水シート自体が結合することで大きさを変更できるようにしている請求項1に記載した浸水防御ネットにするのが望ましい。
【0010】
本発明においては、浸水防御ネットは、持ち上げたい物体の下面を保持するものであって、前記浸水防御ネットと前記物体との間に介在される水を排水する排水手段が取り付けられるようになっている請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載した浸水防御ネットにするのが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、水中を移動可能とする第一の推進手段を備えたネット と、前記ネットの下面に位置させるとともに水中を移動可能とする第二の推進手段を備えた防水シートからなる浸水防御ネットであって、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けた浸水防御ネットであって、前記浸水防御ネットは、持ち上げたい船舶の下面を保持することができるものであって、前記ネット同士や前記防水シート同士または前記ネットと前記防水シート自体が結合できることにより、船舶の破損個所の大きさや船舶自体の大きさに応じて調整利用できるものであり、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けたことを特徴とし、海難事故で発生した破損個所5をネット1、防水シート2、浮力手段3を使用して浸水の防御による沈没の防止又は沈没の遅延をさせることができるという効果を奏する。
【0012】
ネット1同士や、ネット1の下面に位置させる防水シート2同士、またネット1と防水シート2自体が結合できることにより、船舶の破損個所5の大きさや船舶自体の大きさに応じて調整利用ができるという効果を奏する。
【0013】
船舶の破損箇所5の大きさや破損数によっては、破損箇所5の浸水防御対策を講じるのとは別に、船舶の水没部全体をネット1、防水シート2で支持したのち、周囲を浮力手段3で水面に持ち上げて、外部より排水装置7を稼働させることで、浸水量の減少、逆に浮力の増加を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
海上に船舶を吊り上げるのではなく、浸水を防御して長時間海面に浮かせた状態で維持することを主体としているため、使用するネット1素材は、ワイヤーを使用したものほどではないが強靭であり、多様な海難事故で使用するために、静電気対策も兼ねて複合繊維素材のものが望ましい。例えば、ナイロンスリング等ベルト状の複合繊維素材のものを使用するのが望ましい。
【0015】
防水シート2もネット同様に強靭であるとともに、破損しにくいものを使用するのが望ましい。例えば、ヨットの帆布やテントの天幕、ウイングスーツ等に使用するようなシート生地が望ましい。
【0016】
防水シート2は、防水対策の補強材として船体の破損箇所5の周囲に直接接着することもあるので、防水シート2の端縁だけでなく、防水シート2面上に細分化されて多数の磁気固定手段13を収納する収納箇所12を設けて、使用する際は人力や遠隔操作等にて設置及び作動させる脱着可能な電磁石を利用した磁気固定手段13を併用する。
【0017】
水中を移動可能とする推進手段4a及び4bについては、ネット1及び防水シート2を牽引できるのであれば、人力でも機械でも良い。海難事故の状況に応じて例えば、人力や水中スクーター、船舶、高出力の遠隔操作無人機(通称ROV)等を使用して臨機応変に対応するのが望ましい。
【0018】
浮力手段3については、船舶を沈没から守るネット1及び防水シート2を水面から持ち上げる必要があるために、大きな浮力を発揮する浮力手段3を使用するのが望ましい。例えば、エアバックの水中版のような水中リフター等が望ましい。また海上では防水シート2が形成する壁の支えの役割も兼ねているため、水面下に沈み込んでいる面積が大きい円柱型や球型、枕型、気球型等の浮力手段3であり、併せて船舶全体の安定性を考慮して浮力手段3同士が互いに結合できるのが望ましい。
【0019】
ネット1、防水シート2、浮力手段3の素材については、多様な海難事故を考慮して、出来るだけ耐油性及び耐熱性、不燃性の高い素材を使用するのが望ましい。防火服のように素材自体を耐油性、耐熱性、不燃性の加工処理(例えば、アルミ箔等コーティング処理)された素材が望ましい。
【0020】
使用する船舶の大きさや破損個所5等に応じて、ネット1同士、ネット1の下面に位置させる防水シート2同士、またネット1と防水シート2自体が結合することにより大きさが変更できるのが望ましい。結合方法の例においては、ネット1と防水シート2の結合であれば面状ファスナー11、ボタン等、ネット1同士であれば主にシャックル9、フック等、防水シート2同士であれば防水シート2の端縁に防水ファスナー10、面状ファスナー11、防水シール等が望ましい。
【0021】
以下、本発明の動作について説明する。船舶の破損箇所5の状況を確認する。破損箇所5が小さければ、図5Aのように船体自体を直接防水対策の補強材として防水シート2で覆い、防水シート2に設けている脱着可能な磁気固定手段13を人力や遠隔操作等にて設置及び作動させることで船体と接着させて、ネット1で固定、浮力手段3で持ち上げて対応する(図4が完成形)。更に防水シート2と船体15の間に別の仮留めネット14を介在させてから防水シート2で覆い、磁気固定手段13で接着させ、ネット1で固定、浮力手段3で持ち上げた方法(図5B)は、先述の方法(図5A)より浸水の勢いをより強く止めるという効果が得られる。よって後述の(0023)以降と異なり、積層順や積層数が異なることもある。
【0022】
(0021)のように対応する場合は、空気漏れを少しでも防ぐために水面上にある排気口等も防水シート2で塞ぎ、防水シート2に設けている磁気固定手段13で船体と接着させて、ネット1で固定させる。
【0023】
船舶の破損箇所5の大きく、破損数も多数であれば、状況に応じて(0021)及び(0022)の浸水防御対策を講じながら、船舶全体の船底部に水中を移動可能とする第一の推進手段4aを備えたネット1を設置する。
【0024】
ネット1の下面に位置させるとともに水中を移動可能とする第二の推進手段4bを備えた防水シート2を設置して、面状ファスナー11を使用してネット1と結合する。この場合は、(0021)や(0022)のように磁気固定手段13を防水シート2に収納する必要はない。
【0025】
船舶の水没部全体をネット1、防水シート2で支持したのち、周囲を浮力手段3で水面に持ち上げて、外部より多数の排水装置7で防水シート2内の海水を排水する。尚、船舶自体の重量から来るネット1、防水シート2への負荷を軽減するために、船舶自体にも防水シート2内で浮力を残す必要性があるので、排水量は状況に応じて対応する。
【0026】
海難事故で発生した破損個所5をネット1と、ネット1の下面に位置させる防水シート2を使用して、浸水の防御による沈没の防止若しくは沈没の遅延をさせることができることにより、人命救助時間の延長ができる。
【0027】
浮力手段3の固定場所は、ネット1の網目部分1aに人力等で設置する。設置については船舶自体の前後左右のバランスを取る必要があるため、浮力手段3自体の内部気圧を調整する方法もあるが、それ以外に船舶自体の大きさによって数による浮力手段3の集中と分散による方法も用いることもできる。ネット1の網目部分であれば浮力手段3を自由に設置できるため、船舶の姿勢をある程度制御することができる。
【0028】
海難事故現場によって、潮流対策、浮遊物除去、水圧に関係する作業時間の制約、海水の透明度の維持等の懸案が発生するが、ネット1、防水シート2、浮力手段3、排水手段7を使用することにより懸案が減少することができる。
【0029】
浮力手段3は水面下に沈み込んでいる面積が大きいものを使用するため、海上に浮き出る部分も高くなることにより、ネット1、防水シート2が形成する壁も高くなり、浮力手段3同士が結合することで船舶全体の安定性が高まり、海上への流出物の拡散を減少させることができる。
【0030】
海難事故によってではあるが、ネット1、防水シート2を使用することにより船舶の水没部全体を支持することにより、フェンス対策としての応用ができるため、資材や燃料油や原料油の流出防止をすることができる。
【0031】
(0030)以外で、特に全加圧式のLNG船舶については、構造上の弱点であるLNGタンクが外れやすい問題についても対応することができる。
【0032】
ネット1と防水シート2を使用することにより、海上に吊り上げる水切り作業において負荷が分散されることで切れ難く、接触面積が大きいことによりズレが無く、安定性が高く、特に老朽船舶等の水切り作業で発生する船舶破損問題が解消される。
【0033】
海峡等交通の要所での海難事故で封鎖になった場合、経済流通の停滞等の懸案が発生するが、浮きドックや台船の代替利用ができるため、船舶自体をタグボート等別の船舶で曳航することにより海難事故現場を移動することができる。
【0034】
ネット1と防水シート2を使用することにより、作業することにあたり鮫等海洋生物からの危険性を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下、図1図6は本発明に係るユニット式防潮壁の構成例を示す図である。

図1】本発明に係る浸水防御ネットの船舶全体に浸水防御対策を講じる段階での設置準備正面図。浮力手段3作動前の図。
図2】本発明に係る浸水防御ネットの船舶全体に浸水防御対策を講じる段階での設置準備正面図。浮力手段3作動後の図。
図3】本発明に係る浸水防御ネットの船舶全体に浸水防御対策を講じる段階での設置準備平面図。浮力手段3作動後の図。
図4】本発明に係る浸水防御ネットの個別に浸水防御対策を講じる段階での側面図と平面図。
図5】本発明に係る浸水防御ネットの個別に浸水防御対策を講じる段階での断面図。
図6】本発明に係る浸水防御ネットの船舶全体に浸水防御対策を講じる段階での側面図と平面図。
図7】本発明に係る浸水防御ネットの船舶全体姿勢制御を示す正面図。
図8】本発明に係る浸水防御ネットのネットと防水シートの結合部分の断面図。
図9】本発明に係る浸水防御ネットの防水シートの平面図
【符号の説明】
【0036】
1 : ネット
2 : 防水シート
3 : 浮力手段と浮力手段の固定金具
4 : 水中を移動可能とする推進手段(a、b)
5 : 破損箇所
6 : 海面
7 : 排水装置
8 : 水中を移動可能とする推進手段の推進方向
9 : シャックル
10 : ファスナー
11 : 面状ファスナー
12 : 磁気固定手段を収納する収納箇所
13 : 磁気固定手段
14 : 仮留めネット
15 : 破損した船体部分





【要約】      (修正有)
【課題】海難事故において、浸水を防御する防水シートからなる浸水防御ネットを提供する。
【解決手段】水中を移動可能とする第一の推進手段4aを備えたネット1と、前記ネットの下面に位置させるとともに水中を移動可能とする第二の推進手段4bを備えた防水シート2からなる浸水防御ネットであって、前記ネット及び前記防水シートを水面方向に持ち上げる浮力手段を設けたことを特徴とする浸水防御ネットを構成した。海難事故で発生した破損個所5をネット、防水シート、浮力手段を使用して浸水の防御による沈没の防止又は沈没の遅延をさせることができる
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9