(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の制御手段により微調整された絞りまたはフォーカスレンズの状態で撮像手段に撮像動作を実行させる撮影制御手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、従来技術は「撮影の即応性を改善できる」という利点を有するが、本願発明者らがその仕組みを仔細に検討したところ、まだ改良の余地が残っていることが判明した。
【0008】
この点について詳しく説明すると、従来技術の要点は、沈胴式のレンズ鏡筒に関わる一連の動作制御、すなわち、鏡筒の繰り出し制御(従来技術においては第1群レンズL1の制御)、ズームレンズの位置制御(同第2群レンズL2の制御)、像ぶれ補正レンズの位置制御(同第3群レンズL3の制御)、フォーカスレンズの位置制御(同第4群レンズL4の制御)を順次に行って撮影準備状態とし、その状態をもって、自動的に撮影を開始するという点にある。
【0009】
ここで、説明の便宜上、上記の「沈胴式のレンズ鏡筒に関わる一連の動作制御」に要する時間をAとすると、従来技術では、電源オン後、時間Aを経過した時点で自動的に撮影を開始するとしているが、実際の撮影開始、つまり、被写体像を電子的に撮像して記録を開始するには、さらに若干の時間を待たなければならない。以下、この待ち時間をBということにする。
【0010】
この時間Bは、撮影条件を決定するための時間であり、典型的には被写体の明るさ(いわゆる露出)を決めたり、被写体までの距離を測定したりするための時間である。もちろん、撮影条件を手動で設定する、いわゆるマニュアル撮影の場合は、この時間Bは生じないか、またはほぼ無視できる程度であるが、多くのデジタルカメラは自動的に撮影条件を設定するオートモードで使用されるから、相当量の時間Bは必ず生じるといって差し支えない。
【0011】
従来技術においては、この時間Bに関する明確な説明はないものの、文献全体を通して理解するに、CCDイメージセンサ等の撮像素子の出力信号(画像信号)に基づいて上記の撮影条件(露出や距離)を設定しているものと認められる。
【0012】
してみると、従来技術における起動時間は、単純計算で時間Aに時間Bを加えたものであるということができる。これは、撮像素子の出力信号(画像信号)に基づいて上記の撮影条件(露出や距離)を設定する場合、「沈胴式のレンズ鏡筒に関わる一連の動作制御」を完了した後でなければ、その設定を行うことができないからであり、したがって、時間A+時間B=起動時間になるからである。たしかに、時間Aと時間Bは、いずれもごくわずかな時間に過ぎないが、撮影の即応性の観点からすると、たとえわずかな時間であっても無視することができないので、可及的な短縮が求められることに疑いはない。
さらに、上記の時間Bは、暗い被写体を撮影する場合により一層長くなる。暗い被写体を撮影する場合は、その被写体をストロボで照明しなければならず、その準備(ストロボの充電)に相当の時間を要するからである。
【0013】
そこで、本発明の目的は、電源オン後の撮影開始可能時間をできるだけ短くしてより一層の即応性改善を意図した撮像装置、撮像制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、電源オンに応答して沈胴式レンズ鏡筒の沈胴を解除して沈胴解除状態に遷移させる処理を実行する沈胴解除手段と、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間にストロボを使用すべきか否かを判断する判断手段と、前記判断手段でストロボを使用すべきと判断された場合、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に前記ストロボの充電を行うストロボ充電手段と、を備えたことを特徴とする撮像装置である。
請求項2記載の発明は、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に被写体の明るさを検出する検出手段を更に備え、前記判断手段は、前記検出手段により検出された被写体の明るさに基づいてストロボを使用すべきか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
請求項3記載の発明は、電源オンに応答して沈胴式レンズ鏡筒の沈胴を解除して沈胴解除状態に遷移させる処理を実行する沈胴解除手段と、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出する第1の検出手段と、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に、前記第1の検出手段により検出された被写体の明るさまたは被写体までの距離に基づいて、絞りまたはフォーカスレンズの状態を第1の状態まで変化させる第1の制御手段と、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴解除状態への遷移完了に応答し、被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出する第2の検出手段と、記第2の検出手段により検出された被写体の明るさまたは被写体までの距離に基づいて、前記沈胴解除状態への遷移中に前記第1の状態まで変化した絞りまたはフォーカスレンズの状態を、前記第1の状態から更に変化させるように微調整する第2の制御手段と、
を備え、前記第2の検出手段は、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴状態に検出結果が影響を受ける撮像手段の出力信号を利用した検出方法で被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出し、前記第1の検出手段は、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴状態に検出結果が影響を受けないが前記撮像手段の出力信号を利用した検出方法よりも精度が低い検出方法に基づいて被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出することを特徴とする撮像装置である。
請求項4記載の発明は、前記第2の制御手段により微調整された絞りまたはフォーカスレンズの状態で撮像手段に撮像動作を実行させる撮影制御手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
請求項5記載の発明は、電源オンに応答して沈胴式レンズ鏡筒の沈胴を解除して沈胴解除状態に遷移させる処理を実行する沈胴解除処理と、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間にストロボを使用すべきか否かを判断する判断処理と、前記判断処理でストロボを使用すべきと判断された場合、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に前記ストロボの充電を行うストロボ充電処理と、を含むことを特徴とする撮像制御方法である。
請求項6記載の発明は、電源オンに応答して沈胴式レンズ鏡筒の沈胴を解除して沈胴解除状態に遷移させる処理を実行する沈胴解除処理と、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出する第1の検出処理と、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に、前記第1の検出手段により検出された被写体の明るさまたは被写体までの距離に基づいて、絞りまたはフォーカスレンズの状態を第1の状態まで変化させる第1の制御処理と、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴解除状態への遷移完了に応答し、被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出する第2の検出処理と、前記第2の検出処理により検出された被写体の明るさまたは被写体までの距離に基づいて、前記沈胴解除状態への遷移中に前記第1の状態まで変化した絞りまたはフォーカスレンズの状態を、前記第1の状態から更に変化させるように微調整する第2の制御処理と、
を含み、前記第2の検出処理は、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴状態に検出結果が影響を受ける撮像手段の出力信号を利用した検出方法で被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出し、前記第1の検出処理は、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴状態に検出結果が影響を受けないが前記撮像手段の出力信号を利用した検出方法よりも精度が低い検出方法に基づいて被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出することを特徴とする撮像制御方法である。
請求項7記載の発明は、撮像装置のコンピュータに、電源オンに応答して沈胴式レンズ鏡筒の沈胴を解除して沈胴解除状態に遷移させる処理を実行する沈胴解除手段、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間にストロボを使用すべきか否かを判断する判断手段、前記判断手段でストロボを使用すべきと判断された場合、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に前記ストロボの充電を行うストロボ充電手段、の各機能を実現させるためのプログラムである。
請求項8記載の発明は、撮像装置のコンピュータに、電源オンに応答して沈胴式レンズ鏡筒の沈胴を解除して沈胴解除状態に遷移させる処理を実行する沈胴解除手段、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出する第1の検出手段、前記沈胴式レンズ鏡筒が沈胴解除状態に遷移している間に、前記第1の検出手段により検出された被写体の明るさまたは被写体までの距離に基づいて、絞りまたはフォーカスレンズの状態を第1の状態まで変化させる第1の制御手段、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴解除状態への遷移完了に応答し、被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出する第2の検出手段、前記第2の検出手段により検出された被写体の明るさまたは被写体までの距離に基づいて、前記沈胴解除状態への遷移中に前記第1の状態まで変化した絞りまたはフォーカスレンズの状態を、前記第1の状態から更に変化させるように微調整する第2の制御手段、
の各機能を実現させるためのプログラムであって、前記第2の検出手段は、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴状態に検出結果が影響を受ける撮像手段の出力信号を利用した検出方法で被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出し、前記第1の検出手段は、前記沈胴式レンズ鏡筒の沈胴状態に検出結果が影響を受けないが前記撮像手段の出力信号を利用した検出方法よりも精度が低い検出方法に基づいて被写体の明るさまたは被写体までの距離を検出することを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源オン後の撮影開始可能時間をできるだけ短くしてより一層の即応性改善を意図した撮像装置、撮像制御方法およびプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、デジタルカメラへの適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、実施形態に係るデジタルカメラの全体構成図である。この図において、デジタルカメラ1はレンズ鏡筒2を備える。このレンズ鏡筒2はいわゆる「沈胴式」であり、電源オフの状態では鏡筒長を最小化してレンズ格納状態(沈胴状態)とする一方、電源オンの状態では鏡筒長を所定の長さに延ばしてレンズ使用可能状態(沈胴解除状態)とするものである。
【0018】
このレンズ鏡筒2の内部には複数のレンズ、たとえば、撮影レンズ3、ズームレンズ4およびフォーカスレンズ5が設けられているとともに、さらに、それらのレンズの光軸を絞って明るさを加減するための絞り羽根やシャッタ羽根などの羽根機構6が設けられている。なお、撮影レンズ3やズームレンズ4およびフォーカスレンズ5はそれぞれ一枚のレンズで構成されたものに限らず、複数のレンズからなるレンズ群で構成されたものあってもよい。
【0019】
レンズ鏡筒2の後端には、沈胴解除状態のレンズ鏡筒2を介して取り込まれた光学的な被写体像を電気信号に変換して二次元の撮像信号を出力するCCDやCMOS等の半導体イメージセンサからなる撮像部7が設けられており、この撮像部7から取り出された撮像信号は画像処理部8で所要の画像処理(ガンマ補正等)を施された後、構図確認用のプレビュー画像や記録保存用の撮影画像として制御部9に出力される。
【0020】
制御部9は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)9a、ROM(Read Only Member)9b、RAM(Random
Access Memory)9cおよびPROM(Programmable Read Only Member)9dならびに所要の周辺回路からなるマイクロコンピュータで構成されており、ROM9bに格納されている制御プログラムやPROM9dに適宜に書き込まれるユーザデータをRAM9cに展開し、その制御プログラムをCPU9aで実行することによって、このデジタルカメラ1の全体動作(撮影や再生に関わる一連の動作)を統括制御するものである。なお、ここでは、マイクロコンピュータを用いた制御部9、つまり、制御プログラム等のソフトウェアリソースと、CPU9aやROM9b、RAM9cおよびPROM9dならびに所要の周辺回路等のハードウェアリソースとの有機的な結合によってデジタルカメラ1の全体動作を統括制御する、いわゆるプログラム制御型の制御部9としているが、これに限定されない。たとえば、その制御の一部またはすべてをハードロジックで実現する態様であってもかまわない。
【0021】
このデジタルカメラ1は、上記の構成に加え、液晶ディスプレイ等の表示部10、フラッシュメモリやハードディスクまたは磁気ディスクなどの大容量記憶デバイスで構成された記憶部11、パーソナルコンピュータ等の外部機器との間で撮影画像等のデータのやり取りをするための外部インターフェース12、各種スイッチ類(電源スイッチ13、撮影/再生モードスイッチ14、シャッタボタン15、ズームレバー16・・・・)を含む操作部17を備えるとともに、さらに、繰り出し駆動部18、ズーム駆動部19、フォーカス駆動部20、羽根駆動部21、ストロボ発光部22、そのストロボ発光部22の充電部を含むストロボ駆動部23、および、撮影条件検出部24を備える。なお、図示を略すが、バッテリ等の電源部を備えることは当然である。
【0022】
操作部17の電源スイッチ13は、デジタルカメラ1の電源をオンオフするトグル方式(押すたびにオンとオフが交互に切り替わる方式のもの)のスイッチであり、また、撮影/再生モードスイッチ14は、画像を撮影するための「撮影モード」と撮影済み画像を表示部10に再生表示するための「再生モード」の二つのモード位置を有する切り替えスイッチであり、また、シャッタボタン15は、二段押し式の押しボタンスイッチであって、電源スイッチ13がオン状態で且つ撮影/再生モードスイッチ14が「撮影モード」にあるときに、1段目の半押しで露出決定とフォーカスロックを行い、2段目の全押しで撮影と記録を行うものであり、さらに、ズームレバー16は、撮影倍率(つまりズーム倍率)をユーザ指定するためのものである。
【0023】
繰り出し駆動部18は、制御部9からの指令に応答してレンズ鏡筒2の撮影レンズ3を光軸に沿って前進駆動して沈胴状態から沈胴解除状態への展開を行うためのものである。また、ズーム駆動部19は、制御部9からの指令に応答してレンズ鏡筒2のズームレンズ4を光軸に沿って前進または後進駆動して所要のズーム倍率を設定するものであり、沈胴解除直後のズーム倍率はシステム初期値(たとえば、等倍)または前回使用時のズーム倍率とすることができる。
【0024】
また、フォーカス駆動部20は、制御部9からの指令に応答してレンズ鏡筒2のフォーカスレンズ5を光軸に沿って前進または後進駆動して適正なフォーカス(撮像部7の撮像面に被写体25の象を結像させること)を設定するものであり、そのフォーカス設定における被写体25までの距離は、実施形態においては、撮影条件検出部24から与えられるようになっている。
【0025】
羽根駆動部21は、制御部9からの指令に応答してレンズ鏡筒2の羽根機構6の開閉を駆動する。
【0026】
また、ストロボ駆動部23は、制御部9からの指令に応答してストロボ発光部22の発光準備(電荷のチャージ、すなわち充電)と発光(チャージした電荷を放電管で急速に放電して発光すること)とを行うものである。
【0027】
ここで、撮影条件検出部24は、明るさ検出部26と測距部27とを含む。これらの明るさ検出部26と測距部27とを含む撮影条件検出部24は、制御部9からの指令に応答して被写体25の明るさ(いわゆる露出)と被写体25までの距離とを測定するものであり、ポイントとなる点は、レンズ鏡筒2等の各部の動作に関わらず、それらの露出や距離の検出を独立して行うことができる点にある。明るさ検出部26には、たとえば、フォトダイオード等の光電変換素子を使用することができ、また、測距部27には、たとえば、PSD(Position Sensitive Detector)等の光位置センサを使用することができる。PSDは光のスポットの光量の「重心」の位置を求めることができるセンサであり、これを用いると、三角測量の原理で被写体25までの距離を測定することができる。
【0028】
図2は、被写体までの距離測定概念図である。まず、先にPSDの原理を説明すると、PSDは抵抗体とフォトダイオードを組み合わせた素子で、フォトダイオードを横に長く延ばした構造を有しており、光の入射位置にキャリアが発生して電流が流れる仕組みになっている。光を電気信号に変換する作用は単体のフォトダイオードと同様であるが、二つの出力端子を有している点で相違する。光の入射位置から出力端子までの距離に比例する抵抗(抵抗体の抵抗値)によって、それぞれの出力端子から取り出される電流の大きさが変化する。この二つの電流の比から、PSD上での光スポットの重心位置を求めることができる。これを利用して、LEDなどの発光器と組み合わせ、レンズなどの適切な光学系を用いることにより、PSD上の光スポット重心位置、投光器からPSDまでの距離、および、レンズの焦点距離から三角測量の原理で被写体までの距離を測定することができる。
【0029】
つまり、実施形態の測距部27は、被写体25に向けてスポット光を照射する光源27aと、被写体25からの反射スポット光を受光するPSD27bと、光源27aとPSD27bの前面にそれぞれ設けられた光収束用のレンズ27c、27dとを備えており、PSD27b上の光スポットの重心位置から、光が反射した物体(被写体25)までの距離Lを式「L=B/fd」で求めることができる。ただし、Bは光源27aとPSD27bの距離、fはレンズ27dの焦点距離、dはPSD27上におけるスポット位置である。
【0030】
このように、撮影条件検出部24によって被写体25の明るさ(露出)と被写体25までの距離とを計測することができるのであるが、その計測は、上記のとおり、レンズ鏡筒2の沈胴解除動作に関わらず“独立”して行うことができるから、結局、当該沈胴解除動作と同時平行して、被写体25の明るさ(露出)と被写体25までの距離とを計測することができる。
【0031】
次に、作用を説明する。
図3は、制御部9の動作フローを示す図である。この動作フローは、制御部9で実行される制御プログラムの概略的な流れを示すものであり、当該制御プログラムは、デジタルカメラ1の電源オンに応答して、制御部9のROM9からRAM9cにロードされ、CPU9aで実行されるものである。
【0032】
この動作フローでは、まず、撮影/再生モードスイッチ14の現在位置からデジタルカメラ1の動作モードが画像の「撮影モード」であるか、または、撮影済み画像の「再生モード」であるかを判定し(ステップS11)、「再生モード」が選択されていた場合は所要の再生処理を実行する(ステップS12)。
【0033】
なお、この実施形態では、電源オン直後における撮影動作の即応性改善を意図しており、その特徴はもっぱら撮影モードの処理にある。したがって、この特徴に直接関係しない再生モード処理については、その要点のみを述べることとする。要するに、この再生モード処理は、記憶部11に保存されている撮影済み画像のサムネイルリストを表示部10に表示し、ユーザによるリストの選択に応答して、該当する画像を記憶部11から読み出し、表示部10に再生表示するというものである。
【0034】
一方、「撮影モード」が選択されていた場合は、次に、以下の三つの処理を同時並行的に実行する。なお、ここでいう“同時並行的”とは、その言葉どおり、各処理を同時に平行して実行することを意味するほか、仮想的な同時実行、つまり、各処理を時分割的に実行して、あたかも同時に実行しているが如き振る舞いをすることも意味する。ちなみに、後者の仮想的な同時実行環境(いわゆるマルチプロセス実行環境)は、今日の代表的なオペレーティングシステム(Windos(登録商標)等)の標準機能であるから、こうしたオペレーティングシステムの下で、
図3の制御プログラムを走らせることにより、以下の三つの処理を仮想的にせよ、同時並行的に実行させることができる。
【0035】
<レンズ鏡筒繰り出し処理(ステップS13)>
この処理では、レンズ鏡筒2の沈胴を解除して画像の撮影を可能とするまでの一連の処理を実行する。
図4は、レンズ鏡筒繰り出し処理の具体的な動作フローを示す図である。このフローでは、まず、鏡筒の繰り出しを行う(ステップS21)。鏡筒の繰り出しとは、繰り出し駆動部18を用いて、沈胴状態にあるレンズ鏡筒2を沈胴解除状態にすることをいい、詳しくは、同鏡筒内部の各レンズ(撮影レンズ3、ズームレンズ4、フォーカスレンズ5)や羽根機構6の位置を、互いに近接配置された格納位置から撮影可能位置、すなわち、撮影レンズ3を所定の位置に配置するとともに、ズームレンズ4とフォーカスレンズ5を撮影レンズ3の光軸上の初期位置に配置することをいう。
【0036】
次に、繰り出しの完了を判定し(ステップS22)、完了していなければ、所定時間(繰り出しに要する時間を十分上回る判定時間)の経過を判定(ステップS23)して、所定時間が経過してない場合は、そのまま繰り出し完了の判定を継続する一方、所定時間が経過していた場合は、繰り出し機構に何らかのトラブルが発生している旨を示すエラー表示(ステップS32)を行った後、フローを終了する。
【0037】
トラブルなく繰り出しが完了した場合は、次に、ズームレンズ4の移動処理を実行する(ステップS24)。この移動処理では、ズーム倍率の初期値(システム初期値または前回使用時のズーム倍率)に従い、ズーム駆動部19を用いて、ズームレンズ4を光軸上に前進させたり、または後進させたりする動作を実行する。
【0038】
次に、ズーム倍率が上記の初期値に達したか否かを判定し(ステップS25)、達していなければ、所定時間(ズームレンズ4の移動に要する時間を十分上回る判定時間)の経過を判定(ステップS26)して、所定時間が経過してない場合は、そのままズーム倍率の判定を継続する一方、所定時間が経過していた場合は、ズーム移動機構に何らかのトラブルが発生している旨を示すエラー表示(ステップS32)を行った後、フローを終了する。
なお、この図では、レンズ鏡筒の繰り出し完了後にズームレンズの移動を行っているが、これに限定されない。レンズ鏡筒の繰り出しとズームレンズの移動とを重複して行ってもよく、むしろ、「電源オン後の撮影開始可能時間をできるだけ短くしてより一層の即応性改善を図る」観点からは、そのようにすることが望ましい。
【0039】
トラブルなくズーム移動が完了した場合は、次に、「測距処理」の完了を判定する(ステップS27)。「測距処理」とは、
図3のステップS15の処理のことをいい、要するに、このレンズ鏡筒繰り出し処理と平行して実行される処理の一つのことである。
【0040】
測距処理の実際は測距部27で行われるようになっており、この測距部27は、前出の
図2に示すように、被写体25に向けてスポット光を照射する光源27aと、被写体25からの反射スポット光を受光するPSD27bと、光源27aとPSD27bの前面にそれぞれ設けられた光収束用のレンズ27c、27dとを備え、PSD27b上の光スポットの重心位置から、光が反射した物体(被写体25)までの距離Lを式「L=B/fd」で求めるというものである。
【0041】
このように、測距部27における測距処理は、もっぱらアナログ的に行われているから、その処理時間はほぼゼロである(瞬時に完了する)ということができる。したがって、この測距処理をレンズ鏡筒繰り出し処理とほぼ同時に開始した場合、レンズ鏡筒繰り出し処理の主処理要素(その処理に長い時間を要する鏡筒繰り出し処理/ステップS21)の実行中に測距処理を終えていることはほぼ確実であるから、前記のステップS27における判定(測距処理の完了判定)は、待ち時間なく即座に行われることになる。
【0042】
ステップS27で測距処理の完了判定が行われると、次に、その測距結果(被写体25までの距離)を取り込み(ステップS28)、次いで、その距離に従い、フォーカス駆動部20を用いてフォーカスレンズ5を動かし、撮像部7の撮像面に被写体25の像を結像(合焦)させる(ステップS29)。
なお、このフォーカスレンズの移動についても、レンズ鏡筒の繰り出しやズームレンズの移動と重複して行ってもよい。前記と同様に、「電源オン後の撮影開始可能時間をできるだけ短くしてより一層の即応性改善を図る」観点から、そのようにすることが望ましいからである。
【0043】
次に、フォーカスレンズ5の移動完了を判定し(ステップS30)、完了していなければ、所定時間(フォーカスレンズ5の移動に要する時間を十分上回る判定時間)の経過を判定(ステップS31)して、所定時間が経過してない場合は、そのままフォーカスレンズ5の移動完了の判定を継続する一方、所定時間が経過していた場合は、フォーカス機構に何らかのトラブルが発生している旨を示すエラー表示(ステップS32)を行った後、フローを終了し、フォーカスレンズ5の移動完了を判定すると、
図3の制御プログラムに復帰する。
【0044】
再び、
図3の制御プログラムにおいて、同時並行的に実行されていた三つの処理(レンズ繰り出し処理、明るさ検出処理、測距処理)のすべてが完了すると、次に、撮像処理を実行する(ステップS16)。ここで、上記の三つの処理のうち、最も長い時間を要する処理は「レンズ繰り出し処理」である。これは、鏡筒の繰り出しや各レンズ(撮影レンズ3、ズームレンズ4、フォーカスレンズ5)の移動といったメカ的な処理を行うからであり、明るさ検出処理や測距処理のような単純なアナログ処理に比べてはるかに長い時間を要するからである。なお、ストロボの充電に要する時間については後述する。
【0045】
したがって、「レンズ繰り出し処理」の完了判定(ステップS30のYES)の時点では、他の二つの処理(明るさ検出処理と測距処理)が間違いなく完了しているはずであるから、継続して、撮像処理を実行(ステップS16)しても支障がない。
【0046】
図5は、撮像処理の動作フローを示す図である。このフローでは、まず、自動撮影モード、すなわち、電源オン直後に撮影動作を自動実行するモードであるか否かを判定し(ステップS41)、自動撮影モードでなければ、ユーザによってシャッタボタン15の操作が行われるまでその判定をループする。
【0047】
一方、自動撮影モードの場合(または、自動撮影モードでない場合で且つユーザによってシャッタボタン15の操作が行われた場合)は、次に、
図3の明るさ検出処理(ステップS14)の検出結果、すなわち、
図1の明るさ検出部26の検出結果(被写体25の明るさ)を取り込み(ステップS43)、次いで、その検出結果に従い、羽根駆動部21を用いて羽根機構6の開度を調節し、撮影露出とシャッタ速度を設定(ステップS44)した後、その条件で撮影を実行する(ステップS45)。すなわち、画像処理部8を経由して撮像部7からの撮影画像を取り込み、記憶部11に保存するという一連の処理を実行する。
【0048】
<明るさ検出処理(ステップS14)>
この処理は、前記のとおり、
図1の明るさ検出部26で実行される処理であって、要するに、明るさ検出部26に、たとえば、フォトダイオード等の光電変換素子を用いた場合に、その光電変換素子によって被写体25の明るさ(露出)を検出する処理のことをいう。
【0049】
上記のとおり、この明るさ検出部26の処理は、単純なアナログ処理(光量を電気量に変換する処理)であり、上記のレンズ繰り出し処理のように、もっぱらメカ的処理を主体とするものに比べてきわめて短時間に処理を終えることができるから、レンズ繰り出し処理と同時に処理を開始した場合は、当然ながら、この明るさ検出処理の方が先に処理を終えることになる。
【0050】
<測距処理(ステップS15)>
この処理についても、先に説明したとおり、測距部27によって行われる処理であり、要するに、PSD27b上の光スポットの重心位置から、光が反射した物体(被写体25)までの距離Lを式「L=B/fd」で求めるというものであるが、この処理も、単純なアナログ処理であって、上記のレンズ繰り出し処理のように、もっぱらメカ的処理を主体とするものに比べてきわめて短時間に処理を終えることができるから、前記の明るさ検出処理と同様に、やはり、レンズ繰り出し処理と同時に処理を開始した場合は、当然ながら、この測距処理の方が先に処理を終えることになる。
【0051】
図6は、実施形態の効果を説明するための図であり、(a)は比較のために示す従来技術相当のもの、(b)は実施形態のものである。これらの図において、横軸は、電源スイッチ13をオンにしてから実際に撮影処理(
図5のステップS45)が行われるまでの時間(起動時間)の経過を示している。
【0052】
はじめに、(a)の従来技術相当について説明する。この場合は、まず、電源オン直後からレンズ鏡筒鏡筒繰り出し処理28を実行し、所定時間(時間A)の経過後に、露出測定やフォーカス合わせ等の撮影準備処理29を実行した後、実際の撮影処理が行われるが、露出測定やフォーカス合わせ等の撮影準備処理29に要する時間をBとすると、電源オンから撮影処理実行までの起動時間は単純計算で「A+B」になる。これは、冒頭の従来技術においては、露出測定やフォーカス合わせ等の処理を撮像素子から出力される画像信号に基づいて行っているからであり、この画像信号は、レンズ鏡筒鏡筒繰り出し処理28の完了後でなければ得られないからである。
【0053】
これに対して、実施形態では、(b)に示すように、レンズ鏡筒繰り出し処理30と平行して測距処理31や明るさ検出処理32を実行しており、しかも、これらの測距処理31や明るさ検出処理32は単純なアナログ処理であって、もっぱらメカ的処理を主体とするレンズ鏡筒鏡筒繰り出し処理31よりも早々に終了するから、第一に、レンズ鏡筒鏡筒繰り出し処理31を実行中に測距処理31の測距結果(被写体25までの距離)を用いてフォーカス合わせを行うことができ、第二に、レンズ鏡筒鏡筒繰り出し処理31の完了後に直ちに明るさ検出処理32の検出結果(被写体25の明るさ)を用いて露出設定33を行うことができる。
【0054】
したがって、前記の従来技術相当(a)と比較して、とりわけ、レンズ鏡筒繰り出し処理30の完了直後に実行する撮影準備処理(実施形態では露出設定33)の時間を短くすることができ、それだけ、電源オンから撮影処理実行までの起動時間の短縮化を図ることができる。ここで、実施形態のレンズ鏡筒繰り出し処理30の所要時間をA′とし、露出設定33の所要時間をCとすると、実施形態における電源オンから撮影処理実行までの起動時間は「A′+C」となる。
【0055】
実施形態の時間A′と従来技術相当の時間Aは、おのおのの構成が違うため一概に比較できないものの、どちらも同等のレンズ繰り出し処理を行っているから、「A′=A」の関係にあるということができるが、実施形態の時間Cと従来技術相当の時間Bについては、あきらかに相違しており、「C<B」の関係にあることは明白である。
【0056】
これは、実施形態の時間Cはもっぱら露出設定だけを行うための時間であるのに対して、従来技術相当の時間Bは、露出設定に加えて少なくともフォーカス合わせの処理を行うための時間でもあるからであり、このフォーカス合わせは、フォーカスレンズの移動というメカ的な処理(相当の時間を要する処理)が含まれるからである。
【0057】
以上のことから、実施形態においては、電源オンから実際の撮影が開始されるまでの起動時間を短縮することができ、したがって、撮影の即応性改善を図ることができるのである。このこと(撮影の即応性改善)は電源オン後に自動的に撮影を行う場合はもちろんのこと、手動で撮影を行う場合、つまり、シャッタボタン15の操作に応答して撮影を行う場合も同様である。シャッタボタン15を操作できるまでの時間が短くなるからである。
ここで、ストロボの充電について説明する。一般的にストロボを使用すべきか否かの判断は被写体25の明るさによって行われる。すなわち、絞りを開放しても十分な明るさが得られない場合や、シャッタ速度を手ぶれ限界以下にしても十分な明るさが得られない場合にストロボの使用を判断する。そして、ストロボの使用を判断すると、ストロボの充電を開始し、充電完了の時点で撮影可能状態となるが、この充電は、コンデンサに電荷を溜め込むものであって、コンデンサの容量に応じた長い時間を要するから、ストロボの使用を加味した場合、従来技術の時間Bは、さらにその充電に要する時間だけ大幅に延びることになる。
これに対して、実施形態においては、
図6(b)に示すように、被写体25の明るさ検出をレンズ鏡筒の繰り出し中に行っているので、ストロボを使用すべきか否かの判断(符号イ参照)と、その判断に基づくストロボの充電(符号ロ参照)の開始とを同様にレンズ鏡筒の繰り出し中に行うことができるようになる。
したがって、少なくとも、ストロボの充電期間(符号ロの期間)の一部をレンズ鏡筒の繰り出し期間(符号33の期間)に重複させることができるから、ストロボを使用する際の起動時間の短縮も図ることができる。
【0058】
なお、実施形態は、以上の説明に限らず、さまざまな発展例や変形例を包含することができ、たとえば、以下のように改良してもよい。
【0059】
たとえば、実施形態では、被写体25の明るさの検出と、被写体25までの距離の測定とを撮影条件検出部24で行っている。この撮影条件検出部24は、たとえば、フォトダイオード等の光電変換素子を用いて被写体25の明るさを検出し、且つ、PSD等の光位置センサを用いて被写体25までの距離を測定するというものであり、要するに、冒頭の従来技術のように撮像素子の出力信号(画像信号)に基づいてそれらの明るさ検出や距離測定を行うものに対して、当該画像信号とは関係なく、明るさ検出や距離測定を行っている点で根本的に相違する。
【0060】
ここで、従来技術の方法を便宜的に「画像検出法」といい、実施形態の方法を便宜的に「外部検出法」ということにする。
【0061】
外部検出法のメリットは、レンズ鏡筒2の繰り出しと平行して明るさ検出や距離測定を行うことができることにある。つまり、実施形態では、このメリットに着目して電源オンから実際の撮影が開始されるまでの起動時間を短縮し、撮影の即応性改善を図っている。
【0062】
しかし一方で、「画像検出法」は明るさの検出や距離測定の精度が「外部検出法」に比べて高いというメリットがある。これは、「画像検出法」は撮影画像そのものを用いて露出の決定とフォーカス合わせを行っているのに対して、「外部検出法」は外部的な測光と測距を行っているに過ぎず、両者を比べた場合、精度の点で前者の「画像検出法」が有利だからである。
【0063】
そこで、「外部検出法」と「画像検出法」とを組み合わせた改良例を提案する。
図7は、
図5の改良動作フローを示す図であり、
図5と同一の処理部分には同じステップ番号を付してある。この図において、ステップS44とステップS45の間に入れられた破線部分が改良点であり、この改良点では、上記の「画像検出法」、つまり、撮影画像そのものを用いて露出の決定とフォーカス合わせを行うことをあらかじめユーザが選択している場合(ステップS51のYES)に、撮像部7の出力信号から露出補正量を決定(ステップS52)するとともに、撮像部7の出力信号からフォーカス補正量を決定し(ステップS53)、次いで、それらの補正量に基づいて、羽根機構6の開きを増減して絞りの微修正(ステップS54)と、フォーカスレンズ5の位置の微修正(ステップS55)とを行っている。
【0064】
このようにすると、「画像検出法」のメリットを活かして露出とフォーカスの精度を高めることができ、撮影画像の画質改善を図ることができる。
【0065】
ただし、かかる改良例においては、実施形態のような「外部検出法」のみを採用するものと比べて起動時間が若干延びるというデメリットを生じるが、そのデメリットも、以下の理由より、冒頭の従来技術と比較して少ないといえるため、撮影の即応性改善を図る上での障害にはならない。
【0066】
これは、
図7のステップS54およびステップS55における絞りの修正とフォーカスレンズの位置修正は、あくまでも“微修正”であって、多くの場合、ごくわずかな修正で済むからで、それゆえ、修正にそれほどの時間を要しないからである。具体的にいえば、撮影の即応性に影響する部分は、もっぱらメカ的な駆動処理を必要とする、たとえば、フォーカスレンズ5の駆動や羽根機構6の駆動などであるが、これらの駆動のうち、特にフォーカスレンズ5の基本的な駆動は、レンズ繰り出し処理(
図4参照)のステップS29ですでに実行されているので、
図7のステップS55におけるフォーカスレンズの位置修正は、誤差を直す程度の微細なものでよく、したがって、たとえ、起動時間が延びたとしてもごくわずかな程度にしかならないからである。
なお、以上の説明では、レンズ鏡筒の繰り出し期間中に被写体の明るさ検出と、その被写体までの距離測定との双方を行うとしているが、これに限らない。いずれか一方を行うようにしてもよい。双方を行った場合は撮影の即応性改善の点でベストの効果を得ることができるが、いずれか一方を行ってもそれに次ぐ改善効果を得ることができるからである。