(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、モータの中心軸方向における
図1の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸に平行または略平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係るスピンドルモータ(以下、単に「モータ」という)を含むディスク駆動装置1の縦断面図である。ディスク駆動装置1は、いわゆるハードディスク駆動装置である。ディスク駆動装置1は、例えば、情報を記録する3枚の円板状のディスク11と、モータ12と、アクセス部13と、クランパ151と、ハウジング14と、を含む。モータ12は、ディスク11を保持しつつ回転する。アクセス部13は、ディスク11に対して、情報の読み出しおよび/または書き込みを行う。なお、ディスク11の数は3以外でもよい。
【0011】
ハウジング14は、無蓋箱状の第1ハウジング部材141と、板状の第2ハウジング部材142と、を含む。ハウジング14には、ディスク11、モータ12、アクセス部13およびクランパ151が収容される。ディスク駆動装置1では、第1ハウジング部材141に第2ハウジング部材142が例えば溶接等の手段で接合されて、ハウジング14が形成される。ハウジング14の内部空間143は密閉され、塵や埃が極度に少ない。また、ハウジング14内には、好ましくはヘリウムガスが充填される。
【0012】
3枚のディスク11は、スペーサ152により、軸方向に等間隔に並び、クランパ151によりモータ12にクランプされる。アクセス部13は、6つのヘッド131と、ヘッド131を支持する6つのアーム132と、ヘッド移動機構133とを含む。ヘッド131はディスク11に近接して、情報の読み出しおよび/または書き込みを磁気的に行う。ヘッド移動機構133はアーム132を移動することにより、ヘッド131をディスク11に対して相対的に移動させる。これらの構成により、ヘッド131は、回転するディスク11に近接した状態にて、ディスク11の所要の位置にアクセスし、情報の読み出しおよび/または書き込みを行う。
【0013】
図2は、モータ12の縦断面図である。モータ12は、アウタロータ型のモータである。モータ12は、固定組立体である静止部2と、回転組立体である回転部3と、流体動圧軸受機構4(以下、「軸受機構4」という)と、を含む。軸受機構4は静止部2に取り付けられる。回転部3は、軸受機構4を介してモータ12の中心軸J1周りを静止部2に対して回転可能に支持される。モータ12の中心軸J1は、静止部2、回転部3および軸受機構4の中心軸でもある。
【0014】
静止部2は、ベース部の一例であるベースプレート21と、環状のステータ22と、配線24と、を含む。ベースプレート21は、
図1の第1ハウジング部材141の一部に含まれる。ステータ22は、ベースプレート21の円筒状のホルダの周囲に固定される。ステータ22は、ステータコア221と、ステータコア221に巻回されたコイル222と、を含む。配線24は、ベースプレート21の内底面211、すなわち、
図1に示すハウジング14の内部空間143側の面に沿って配置される。配線24は、コイル222から破線にて示すコネクタ161に向かって延びる。配線24の一方の端部は、コネクタ161に接続され、他方の端部は、
図2に示すコイル222の引出線222aに接続される。配線24は一例としてFPC(フレキシブルプリント基板)である。配線24は、引出線222aと連続する線であってもよい。
【0015】
図1中に破線にて示すように、ベースプレート21には、1つの貫通孔162のみが設けられる。貫通孔162にコネクタ161が配置される。貫通孔162は、コネクタ161、および接着剤等の手段により密閉される。コネクタ161は、ハウジング14外部にて外部回路163に接続される。
【0016】
図2に示すように、回転部3は、ロータハブ31と、磁性部材32とを含む。ロータハブ31は、ハブ本体311と、円筒部312と、ディスク載置部313と、を含む。円筒部312は、ハブ本体311の外縁部から下方へと突出する。ディスク載置部313は、円筒部312の下部から径方向外方に広がる。磁性部材32は、略円筒状のロータマグネット321と、バックアイアン322と、を含む。ロータマグネット321は、バックアイアン322を介在させつつ円筒部312の内側に固定される。ロータマグネット321は、ステータ22と径方向に対向する。ステータ22とロータマグネット321との間にてトルクが発生する。
【0017】
ハブ本体311の中央には、軸方向に延びる孔部311aが形成される。以下の説明では、孔部311aを含む中心軸J1近傍の部位5を「スリーブ部5」という。孔部311aの周囲では、軸方向に延びるとともにスリーブ部5を上下方向に連通する連通孔51が設けられる。
【0018】
軸受機構4は、シャフト41と、第1コーン部421と、第2コーン部422と、第1カバー部材431と、第2カバー部材432と、潤滑油49と、を含む。軸受機構4のシャフト部であるシャフト41は、スリーブ部5の孔部311aに挿入される。また、シャフト41は、ベースプレート21に固定されることにより、中心軸J1に沿って上下方向を向いて静止する。シャフト41には、中心軸J1に沿って延びる貫通孔411が設けられる。第1コーン部421は、スリーブ部5の下側にてシャフト41に固定される。第1コーン部421の外側面の上部は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜し、外側面の下部は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。第2コーン部422は、スリーブ部5の上側にてシャフト41に固定される。第1コーン部421と同様に、第2コーン部422の外側面の上部は、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜し、外側面の下部は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。
【0019】
図3は、軸受機構4を拡大して示す図である。スリーブ部5の孔部311aでは、内側面52の下部が、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。内側面52の上部は、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する。
【0020】
第1カバー部材431は、スリーブ部5の下部に取り付けられ、第1コーン部421の外側面に対向する。第2カバー部材432は、スリーブ部5の上部に取り付けられ、第2コーン部422の外側面および上端を覆う。軸受機構4では、第1カバー部材431と第1コーン部421との間の間隙61、および、第2カバー部材432と第2コーン部422との間の間隙62にて、潤滑油49の界面が形成される。
【0021】
スリーブ部5の内側面52の下部と第1コーン部421の外側面の上部との間に、下方に向かうに従って径方向外方に傾斜する第1傾斜間隙64が形成される。スリーブ部5の内側面52の上部と第2コーン部422の外側面の下部との間に、上方に向かうに従って径方向外方に傾斜する第2傾斜間隙65が形成される。
【0022】
モータ12の駆動時には、第1傾斜間隙64および第2傾斜間隙65にて潤滑油49による流体動圧が発生する。これにより、スリーブ部5がシャフト41に対して回転可能に支持される。潤滑油49は、シャフト41とスリーブ部5の中央部との間のラジアル間隙63、第1傾斜間隙64、連通孔51および第2傾斜間隙65に充填されている。
【0023】
モータ12では、スリーブ部5がシャフト41に支持される部位として、軸受機構4の一部となっている。すなわち、スリーブ部5が、回転部3の一部と軸受機構4の一部とを兼ねている。
【0024】
図4は、モータ12のシャフト41の下部412近傍を拡大して示す図である。ベースプレート21には、
図4における上側、すなわち、
図1の内部空間143側に下方に向かって窪む凹部23が配置される。シャフト41の下部412は、凹部23内に接着および圧入にて固定される。具体的には、凹部23の内側面231の開口側の領域231aと、シャフト41の下部412の一部とが接着される。領域231aは、好ましくは中心軸J1を中心とする円筒状の領域である。接着には熱硬化性の接着剤7が用いられる。以下、当該領域231aを「接着領域231a」と呼ぶ。また、接着領域231aの下側の領域231bは、接着領域231aよりも僅かに径が小さく、シャフト41の下部412の先端である下端部412aが領域231bにて圧入される。以下、中心軸J1を中心とする円筒状の領域231bを「圧入領域231b」と呼ぶ。
【0025】
なお、接着領域は、凹部23の開口から連続する必要はなく、開口近傍にて接着剤7が存在しなくてもよい。圧入領域も、接着領域と連続しなくてもよい。
【0026】
図4に示すように、シャフト41の下端部412aは、凹部23の底面232から離間する。シャフト41の下端部412a、凹部23の内側面231および底面232に囲まれる空間144は、シャフト41に形成された貫通孔411を介して
図1のハウジング14の内部空間143と連続する。
【0027】
軸方向において、圧入領域231bの幅は、好ましくは接着領域231aの幅の10%以上50%以下である。接着領域231aとシャフト41の下部412の外側面413との間の距離は、好ましくは20μm以上40μm以下であり、より好ましくは、25μm以上35μmm以下である。また、シャフト41の凹部23への固定前における圧入領域231bの半径とシャフト41の外側面413の半径との差である締め代は好ましくは2μm以上20μm以下であり、より好ましくは、5μm以上15μm以下である。
【0028】
図5は、モータ12の組み立ての流れを示す図である。まず、
図2の静止部2が組み立てられ、回転部3および軸受機構4が一つの組立体121として組み立てられる(ステップS11,S12)。静止部2の組み立ては、組立体121の組み立ての後または並行して行われてもよい。以下の他の実施形態においても同様である。
図6は、組立体取付装置8の構成を簡略化して示す図である。
図6では、二点鎖線にて、静止部2、並びに、回転部3および軸受機構4を含む組立体121の輪郭のみを示している。組立体取付装置8では、ステージ81上に静止部2が載置される。ステージ81の上方には、上下左右方向に移動可能な移動機構82が設けられ、組立体121は移動機構82のチャック821に把持される。移動機構82には、静止部2のベースプレート21の凹部23と同じ径のピン822が固定される。
【0029】
静止部2に組立体121が固定される際には、まず、ピン822が凹部23のおよそ上方に位置するように、静止部2の位置が調整される。次に、移動機構82が下降してピン822が凹部23に挿入されることにより、ピン822の中心軸と凹部23の中心軸J3とが精度よく合わされる。
【0030】
ピン822と凹部23との位置合わせが完了すると、移動機構82は上方に移動する。組立体121およびピン822は、矢印820にて示すように水平移動可能であり、組立体121が移動前のピン822の位置に正確に配置される。これにより、組立体121のシャフト41の中心軸J2が、凹部23の中心軸J3とほぼ一致する。また、凹部23の内側面231の開口近傍には、熱硬化性の接着剤が塗布される(ステップS13)。そして、移動機構82が下降し、軸受機構4の下部であるシャフト41の下部412が凹部23に挿入される。
【0031】
このとき、
図7に示すように、シャフト41の移動に伴って、接着剤7が接着領域231a上を広がり、さらに、シャフト41の下端部412aが圧入領域231bに圧入される。換言すれば、シャフト41が凹部23に挿入されることにより、シャフト41と凹部23との間に接着剤7が存在する接着領域が構成され、シャフト41が凹部23の内側面231に当接する圧入領域が構成される。
図7では、接着領域231aと圧入領域231bとの間の段差を誇張して示している。以下の
図10においても同様である。
【0032】
接着剤7は潤滑剤としての役割を果たし、シャフト41の挿入を容易に行うことができる。なお、接着剤7の一部が、圧入領域231bに広がってもよい。以下の他の実施形態においても同様である。シャフト41が凹部23に圧入されることにより、軸受機構4がベースプレート21に仮固定される(ステップS14)。
【0033】
次に、軸受機構4が静止部2に仮固定された状態にて、ベースプレート21を基準として回転部3のディスク載置部313の傾きおよび高さが測定される。ディスク載置部313の傾きの測定は、ベースプレート21に対するシャフト41の直角度の測定に対応する。
【0034】
そして、ディスク載置部313の傾きおよび高さが許容範囲内であるか否か、すなわち、シャフト41の直角度、および、シャフト41の下端部412aの高さが許容範囲内であるか否かが判定される(ステップS15)。許容範囲内である場合は、静止部2および組立体121が加熱部に搬入されてベースプレート21が加熱され、接着剤7が硬化される。接着剤7の硬化によりシャフト41が凹部23に本固定される(ステップS17)。これにより、組立体121とベースプレート21との締結強度を十分に確保することができる。
【0035】
ディスク載置部313の傾きまたは高さが許容範囲外である、すなわち、シャフト41の直角度または軸方向の位置が許容範囲外である場合、ディスク載置部313の傾きおよび高さがベースプレート21に対して許容範囲内となるように修正される(ステップS16)。これにより、シャフト41の直角度や軸方向の位置が修正される。再度の測定により、ディスク載置部313の傾きおよび高さが許容範囲内であることが確認されると(ステップS15)、加熱部にてベースプレート21が加熱される。接着剤7が硬化することにより、軸受機構4が本固定される(ステップS17)。以上の流れにより、モータ12の組立作業が終了する。
【0036】
以上、第1の実施形態に係るモータ12の構造および組立作業について説明したが、ディスク駆動装置1内には、分子が極めて小さく、拡散係数が大きいヘリウムガスが充填されるのが好ましい。したがって、ベース部に設けられた貫通孔にシャフトが固定されるモータの場合、貫通孔とシャフトとの間の密閉性を十分に確保することが容易ではない。これに対し、モータ12では、ベースプレート21の凹部23、すなわち、非貫通の穴部にシャフト41が固定されることにより、ヘリウムガスの流出を防止することができる。ヘリウムガスが封止されることにより、ディスク駆動装置1の信頼性および耐久性を向上することができる。
【0037】
モータ12の組み立て時には、シャフト41がベースプレート21への圧入により仮固定されるため、シャフト41とベースプレート21とを接着剤のみにて固定する場合のように、加熱部において静止部2と組立体121との相対位置を大がかりな治具で固定する必要がない。その結果、モータ12の組立作業を容易に行うことができる。
【0038】
軸方向において、シャフト41と凹部23との間の接着領域231aの幅が、圧入領域231bの幅よりも広いことにより、接着剤7を硬化させる前に、ディスク載置部313のベースプレート21に対する高さや傾きの調整作業を容易に行うことができる。さらに、シャフト41が凹部23の底面232から離間することによりシャフト41を上下にずらしたり、傾けても、下端部412aが底面232に接触しないため、ディスク載置部313の調整作業を精度よく行うことができる。
【0039】
凹部23では、圧入領域231bが1つのみである、すなわち、内側面231に2以上の圧入領域が上下方向に分かれて設けられないことから、回転部3の調整作業をより容易に行うことができる。径が大きい接着領域231aが、圧入領域231bよりも凹部23の開口側に位置することにより、切削等により凹部23を容易に形成することができる。
【0040】
軸受機構4では、シャフト41の凹部23への挿入時に、シャフト41の貫通孔411を介してシャフト41および凹部23により囲まれる空間144内の空気が排出されるため、空間144の気圧が過度に上昇することが防止される。また、ハウジング14内にヘリウムガスを充填する際に、貫通孔411を介して空間144内の空気を除去することができる。
【0041】
ハウジング14内部に充填される気体として、ヘリウムガス以外に水素ガスが利用されてよい。また、ヘリウムガスと水素ガスとの混合気体が利用されてもよく、ヘリウムガス、水素ガス、または、上記混合気体のいずれかと空気との混合気体が利用されてもよい。以下の他の実施形態においても同様である。貫通孔411を介して空間144の空気を除去する手法は、特に、ハウジング14の内部空間143にヘリウムガス、水素ガス、または、これらの混合気体が充填される場合により好ましい。
【0042】
モータ12の組み立て時において、接着剤7は、シャフト41の外側面413に塗布されてもよく、シャフト41の外側面413および凹部23の内側面231の両方に塗布されてもよい。すなわち、接着剤7は、シャフト41の外側面413または凹部23の内側面231に塗布される。
【0043】
接着剤7が熱硬化性接着剤である。とりわけ、接着剤7がエポキシ系の熱硬化性接着剤であることから、嫌気性のみを有するものや紫外線硬化性のみを有するものに比べて、シャフト41とベースプレート21とを高い締結強度にて固定することができる。モータ12では、少なくとも熱硬化性を有するのであれば、嫌気性や紫外線硬化性を兼ね備えた種々の接着剤が利用されてよい。以下の他の実施形態においても同様である。
【0044】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るモータの一部を拡大して示す図である。モータ12aでは、円筒状の環状部材47がシャフト41の下部412の外側面413に固定される。以下、シャフト41と環状部材47とをまとめて「シャフト部41a」と呼ぶ。モータ12aの他の構造は、第1の実施形態とほぼ同様である。同様の構成には、同符号を付して説明する。
【0045】
ベースプレート21には、凹部23が形成される。環状部材47は、内側面231の開口側の接着領域231a、および、接着領域231aの下側の圧入領域231bに接着および圧入にて固定される。シャフト41の下端部412aおよび環状部材47の下端部472、すなわち、シャフト部41aの下端部は、凹部23の底面232から離間している。
【0046】
モータ12aの組み立ての流れは、第1の実施形態とほぼ同様である。すなわち、まず、静止部2が組み立てられ、回転部3および軸受機構4が一つの組立体121として組み立てられる(ステップS11,S12)。組立体121の組み立て時には、環状部材47が、シャフト41に圧入にて固定される。
【0047】
次に、
図5と同様の組立体取付装置8において、ステージ81上に載置されたベースプレート21の凹部23の内側面231に熱硬化性の接着剤が塗布される(ステップS13)。接着剤7は、環状部材47の外側面471に塗布されてもよく、外側面471および内側面231の両方に塗布されてもよい。
【0048】
組立体121は、移動機構82により静止部2に向かって移動され、軸受機構4の下部である環状部材47およびシャフト41の下部412が凹部23に挿入される。このとき、環状部材47の下端部472が圧入領域231bに圧入され、軸受機構4がベースプレート21に仮固定される(ステップS14)。
【0049】
次に、回転部3のディスク載置部313の傾きおよび高さが許容範囲内であるか否かが判定され(ステップS15)、許容範囲内である場合は、軸受機構4がベースプレート21に本固定される(ステップS17)。許容範囲外である場合は、ディスク載置部313の傾きおよび高さが修正され(ステップS16)、その後、傾きおよび高さが再確認されて軸受機構4が本固定される(ステップS15,S17)。
【0050】
第2の実施形態においても、凹部23にシャフト部41aが固定されることにより、ディスク駆動装置1内に充填されたヘリウムガスの流出を防止することができる。モータ12aでは、環状部材47が設けられることにより、ベースプレート21の凹部23の直径を大きくすることができる。これにより、接着領域231aに多くの接着剤7を塗布することができ、軸受機構4とベースプレート21との締結強度をより向上することができる。静止部2と組立体121とが仮固定されることにより、モータ12の組立作業を容易に行うことができる。軸方向において、接着領域231aを圧入領域231bよりも広くすることにより、ディスク載置部313の高さや傾きの調整作業を容易に行うことができる。
【0051】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態に係るモータを示す図である。モータ12bは、静止部2aと、回転部3aと、軸受機構4aとを含む。静止部2aは、ベースプレート21と、ステータ22と、配線24と、を含む。ベースプレート21には、
図1のハウジング14の内部空間143側に大きな凹部23aが設けられる。静止部2aの他の構造は、
図2の静止部2と同様である。
【0052】
凹部23aでは、内側面231の開口側の領域が接着領域231aであり、接着領域231aの下側の領域が圧入領域231bである。軸方向において、圧入領域231bの幅は、好ましくは接着領域231aの幅の10%以上50%以下である。軸受機構4aの凹部23内に位置する部位(以下、軸受機構4aの「下部40」という)は、接着領域231aおよび圧入領域231bにて接着および圧入によりベースプレート21に固定される。凹部23aの内側面231には上下方向に延びる溝233が形成される。
【0053】
回転部3aは、ロータハブ33と、磁性部材34と、を含む。ロータハブ33の外縁部には、二点鎖線にて示すディスク11が載置されるディスク載置部331が設けられる。磁性部材34は、
図2の磁性部材32とほぼ同様である。
【0054】
軸受機構4aは、シャフト部44と、有底略円筒状のスリーブ部45と、を含む。シャフト部44は、シャフト441と、シャフト441の先端に固定されるスラストプレート442と、を含む。スリーブ部45は、多孔質焼結金属であるスリーブ451と、有底円筒状のスリーブハウジング452と、シールキャップ453と、を含む。スリーブ451の内側にはシャフト441が挿入される。スリーブハウジング452には、スリーブ451が挿入され、スリーブ451に含浸された潤滑油49が保持される。シールキャップ453は、スリーブ451の上方に配置される。なお、スリーブハウジング452とスリーブ451とが単一の部材から構成されてもよい。
【0055】
モータ12bでは、シャフト部44とスリーブ部45との間にて潤滑油49による流体動圧が発生し、これにより、回転部3aが、軸受機構4aを介して静止部2aに対して中心軸J1周りを回転可能に支持される。スリーブハウジング452と凹部23aとの間の空間144は、溝233を介してハウジング14の内部空間と連続する。
【0056】
モータ12bが組み立てられる際には、まず、静止部2aが組み立てられ、回転部3aおよび軸受機構4aが一つの組立体121aとして組み立てられる(ステップS11,S12)。次に、
図10に示すように、凹部23aの接着領域231aの開口近傍に、熱硬化性の接着剤7が塗布される(ステップS13)。ただし、接着剤7は、スリーブハウジング452の外側面462、すなわち、軸受機構4aの下部40の外側面に塗布されてもよく、外側面462および接着領域231aの両方に塗布されてもよい。
【0057】
そして、軸受機構4aの下部40が中心軸J3に沿って凹部23aに挿入される。このとき、スリーブハウジング452の外側面462の底部461側の部位が、圧入領域231bに圧入されることにより、軸受機構4aがベースプレート21に仮固定される(ステップS14)。スリーブハウジング452の挿入時には、スリーブハウジング452の底部461と凹部23aとの間の空気が、凹部23aの内側面231にて上下方向に延びる溝233を介して排出される。
【0058】
次に、ディスク載置部331の傾きおよび高さが測定され、ディスク載置部331の傾きおよび高さが許容範囲内であるか否かが判定される(ステップS15)。すなわち、シャフト41の直角度および軸方向の位置が許容範囲内であるか否かが確認される。許容範囲内である場合は、加熱部にて接着剤7が硬化され、軸受機構4aがベースプレート21に本固定される(ステップS17)。
【0059】
ディスク載置部331の傾きまたは高さが許容範囲外である、すなわち、シャフト41の直角度または軸方向の位置が許容範囲外である場合、ディスク載置部331の傾きおよび高さがベースプレート21に対して許容範囲内となるように修正される(ステップS16)。これにより、シャフト41の直角度または軸方向の位置が修正される。その後、ステップS15の確認工程を経て加熱部にて接着剤7が硬化されて軸受機構4aが本固定される(ステップS17)。
【0060】
第3の実施形態では、ベースプレート21の凹部23aにスリーブハウジング452が固定されることにより、ヘリウムガスの流出を防止することができる。第1および第2実施形態と同様に、静止部2aと組立体121aとが仮固定されることにより、モータ12bの組立作業を容易とすることができる。軸方向において、接着領域231aの幅が圧入領域231bの幅よりも広いことから、回転部3aの調整作業を容易に行うことができる。圧入領域231bが1つのみであることから、回転部3aの調整作業をより容易に行うことができる。
【0061】
凹部23aに溝233が設けられることにより、第1の実施形態と同様に、軸受機構4aの凹部23aへの挿入時に、空間144の気圧が過度に上昇することが防止される。また、ハウジング14内にヘリウムガスを充填する際に、溝233を介して空間144内の空気を除去することができる。溝233に代えて、スリーブハウジング452の外側面462、すなわち、軸受機構4aの外側面に上下方向に延びる溝が形成されてもよい。
【0062】
溝233を設けずに、接着剤7を軸受機構4aの外側面または凹部23aの内側面231に塗布する際に、周方向の一部に塗布しないようにしてもよい。すなわち、平面視した際にC字状に接着剤7を塗布することにより、軸受機構4aを凹部23aに挿入する際に、空間144の空気が排出されてもよい。この場合であっても、接着剤7は硬化時に粘度が下がり、軸受機構4aの外周にて環状に繋がる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、凹部23,23aの内側面231の接着領域231aは、圧入領域231bの下側に設けられてもよい。第1の実施形態では、シャフト41が、ベースプレート21の凹部23に対して焼きばめによる圧入状態にて仮固定されてもよい。同様に、第2および第3の実施形態において、環状部材47およびスリーブハウジング452が凹部23,23aに焼きばめにて仮固定されてよい。また、第2の実施形態では、環状部材47が、シャフト41に接着されてもよい。
【0064】
第1の実施形態では、
図11に示すように、ベース部として、ブラケットタイプのものが利用さてもよい。ベース部21aは、無蓋箱状の第1ハウジング部材141に設けられた孔部141aに嵌め合わされ、ベース部21aと孔部141aとの間が密閉される。この場合においても、ベース部21aは、密閉された内部空間143を形成するハウジング14の一部である。
図11においても、ベース部21aの凹部23に軸受機構4のシャフト41が固定されるため、ベース部21aとシャフト41との間からヘリウムガスが流出することが防止される。他の実施形態においても、ブラケットタイプのベース部が利用されてよい。
【0065】
ベース部の凹部に軸受機構の下部を固定する手法は、密閉された内部空間を形成するハウジングを有する様々なディスク駆動装置に適用可能である。上記実施形態のモータでは、コイル222からの引出線222aが、ベースプレート21の内底面211上をコネクタに向かって延びる配線としてコネクタ161に直接接続されてもよい。
【0066】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。