特許第5704504号(P5704504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5704504エネルギー供給状態のシミュレーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704504
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】エネルギー供給状態のシミュレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20150402BHJP
【FI】
   G06Q50/06
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-34827(P2011-34827)
(22)【出願日】2011年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-173957(P2012-173957A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木下 博之
【審査官】 吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−182865(JP,A)
【文献】 特開2001−204139(JP,A)
【文献】 特開2007−219912(JP,A)
【文献】 山田 利広,効率的な社会インフラシステムを実現する数理最適化技術,東芝レビュー,株式会社東芝,2010年11月 1日,第65巻 第11号,7−10ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムにおいて、
最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段と、
直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量、前記エネルギー変換効率および前記合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出する算出手段と、
を備え
前記受付手段を介して入力される前記エネルギー需要量は、時刻により変化するパラメータであり、
前記算出手段は時刻ごとに前記必要エネルギー供給量を算出することを特徴とするシミュレーションシステム。
【請求項2】
エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムにおいて、
最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段と、
直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量、前記エネルギー変換効率および前記合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出する算出手段と、
を備え、
エネルギー合流点における合流比は、当該エネルギー合流点におけるエネルギー量の実測値に基づいて取得され、前記受付手段を介して入力されることを特徴とするシミュレーションシステム。
【請求項3】
エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムにおいて、
最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段と、
直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量、前記エネルギー変換効率および前記合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出する算出手段と、
を備え、
前記受付手段は、エネルギー単価の入力を受け付け、
前記算出手段は、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー単価と、算出された前記必要エネルギー供給量に基づいてエネルギーコストを算出することを特徴とするシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記受付手段を介して入力される前記エネルギー単価は、時刻により変化するパラメータであり、
前記算出手段は時刻ごとに前記エネルギーコストを算出することを特徴とする請求項3に記載のシミュレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に工場等の製造部門をはじめとするエネルギー消費側では、電力、蒸気、温水、冷水などの複数のエネルギー種別を使用している。
【0003】
下記の非特許文献1には、現実のエネルギー使用量を計測し、現実のエネルギー使用状態、供給状態、および消費部門における個々のエネルギーコストを算出するシステムが開示されている。このシステムでは、エネルギーの流れをエネルギーフローとして作図し、構築する。エネルギーフローを構成する主な要素は、エネルギー使用量を計測するメーター、エネルギーを変換するデバイス、エネルギー接続線の3種類である。実際にエネルギーが流れている各ポイントにおいて電力計や流量計などの計器を使用してエネルギー使用量を計測し、これをエネルギーフローの各メーターに割り当てる。エネルギー変換デバイスでは、デバイスに入力されるエネルギー量とデバイスから出力されるエネルギー量の差からエネルギーロス量が算出され、入出力の比からエネルギー変換効率(COP)が算出される。また、エネルギーの受入部においてはエネルギー使用量とエネルギー単価からエネルギーコストが算出される。受入部において発生した全コストは変換部における合流と分岐とその使用量を考慮してコスト配分計算を行い、最終的には全コストを消費側の末端メーターに配分する、これによって消費部門における正確なエネルギーコストが算出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「工場エネルギー操業支援システムEnerizeE3」横河技術報Vol.53 2010 省エネ特集号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のシステムでは、例えば、省エネルギー対策を目的とした活動として、
(1)エネルギー需要量を削減した場合の、供給側でのエネルギーコスト削減量の試算
(2)エネルギー供給設備の更新、改修、保守等を行った場合の、エネルギーコスト削減量の試算
(3)エネルギー源の使用比率を変更した場合の、エネルギーコストの試算
などの擬似的なエネルギー供給状態の試算を行うことができない。
【0006】
省エネルギー対策を行うには改善活動や設備投資といったコストが発生する。省エネルギー対策のための投資を行う前提として、対策を行った場合に予測される効果を見積もり、費用対効果を算出し、投資に見合った効果があることを事前に確認することが求められる。
【0007】
そのためには、現実のエネルギー使用状態、供給状態、運転状態を変更することなく、省エネルギー対策を行った場合の擬似的なエネルギー使用状態、供給状態を算出するシミュレーションが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、エネルギー使用状態や供給状態を適切にシミュレーションできるシミュレーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシミュレーションシステムは、エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムにおいて、最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段と、直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量、前記エネルギー変換効率および前記合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出する算出手段と、を備え、前記受付手段を介して入力される前記エネルギー需要量は、時刻により変化するパラメータであり、前記算出手段は時刻ごとに前記必要エネルギー供給量を算出することを特徴とする。
このシミュレーションシステムによれば、直前段のエネルギー変換デバイスから与えられるべきエネルギー供給量を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出するので、エネルギー使用状態や供給状態を適切にシミュレーションできる。
【0010】
本発明のシミュレーションシステムは、エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムにおいて、最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段と、直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量、前記エネルギー変換効率および前記合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出する算出手段と、を備え、エネルギー合流点における合流比は、当該エネルギー合流点におけるエネルギー量の実測値に基づいて算出され、前記受付手段を介して入力されることを特徴とする
【0011】
本発明のシミュレーションシステムは、エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムにおいて、最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段と、直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量、前記エネルギー変換効率および前記合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出する算出手段と、を備え、前記受付手段は、エネルギー単価の入力を受け付け、前記算出手段は、前記受付手段を介して入力された前記エネルギー単価と、算出された前記必要エネルギー供給量に基づいてエネルギーコストを算出することを特徴とする
【0012】
前記受付手段を介して入力される前記エネルギー単価は、時刻により変化するパラメータであり、前記算出手段は時刻ごとに前記エネルギーコストを算出してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシミュレーションシステムによれば、直前段のエネルギー変換デバイスから与えられるべきエネルギー供給量を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、エネルギー需要量を満たすための必要エネルギー供給量を算出するので、エネルギー使用状態や供給状態を適切にシミュレーションできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シミュレーションシステムの構成を示すブロック図。
図2】シミュレーションシステムの動作を示すフローチャート。
図3】エネルギーフローを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるシミュレーションシステムの一実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のシミュレーションシステムの構成を示すブロック図、図2は本実施形態のシミュレーションシステムの動作を示すフローチャート、図3はシミュレーションの対象となるエネルギーフローを例示する図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のシミュレーションシステム1は、最後段におけるエネルギー需要量、各エネルギー変換デバイスのエネルギー変換効率、および各エネルギー合流点における合流比の入力を受け付ける受付手段11と、直前段から与えられるべきエネルギー供給量を、受付手段11を介して入力されたエネルギー需要量、エネルギー変換効率および合流比に基づいて算出する処理を、最後段から最前段に向けてすべてのエネルギー変換デバイスについてエネルギーフローの段数分だけ繰り返すことにより、受付手段11を介して入力された上記エネルギー需要量を満たすためのエネルギー供給量を算出する算出手段12と、を構成する。
【0018】
次に、図2を参照してシミュレーションシステム1の動作について説明する。
【0019】
図2のステップS1〜ステップS5は、シミュレーションに必要なデータの入力から、入力されたデータを用いた算出処理および算出結果の出力までの一連の手順を示している。
【0020】
図2のステップS1では、受付手段11を介して、シミュレーションに必要なデータの入力を受け付ける。図1に示すように、ステップS1において入力されるデータは、エネルギー需要量、エネルギーフロー情報、エネルギー合流比、エネルギー変換デバイスの効率特性(COP)、演算対象期間、およびエネルギー単価を含んでいる。必要な場合、その他のデータを入力することもできる。
【0021】
受付手段11を介して入力されるエネルギー需要量は、最後段におけるエネルギー需要量であり、例えば、図3に示すエネルギーフローの例では、「A工場電力量」、「A工場蒸気量」など、最終的に消費されるエネルギー量である。エネルギー需要量は通常、時刻により変動するパラメータであるため、時刻の関数として受付手段11に与えてもよい。また、このエネルギー需要量の変動をシミュレーションする機能をミュレーションシステム1、あるいは別のシステムに設け、生産量の変動等によるエネルギー需要量の変化を算出してもよい。この場合にはエネルギー需要量の算出結果を受付手段11に与えることができる。
【0022】
受付手段11を介して入力されるエネルギーフロー情報は、図3に例示するようなエネルギーの流れ、すなわち、エネルギーの合流や分岐を含むエネルギー変換デバイスの配置をエネルギーの流れ方とともに示す情報である。
【0023】
受付手段11を介して入力されるエネルギー合流比は、エネルギーフローにおけるエネルギーの合流点に、上流側の複数のエネルギー変換デバイスから流れ込む個々のエネルギー量の比率である。例えば、2つのエネルギー変換デバイスから1つのエネルギー変換デバイスに向けてエネルギーが流れ込む場合に、エネルギー合流比を例えば、1:2などの比率として定義することができる。また、エネルギー合流点における実際のエネルギー量(実績値)からエネルギー使用比率(合流比)の特性を定式化し、エネルギー使用比率(合流比)特性式およびそのパラメータを算出する機能を受付手段11に設けてもよい。この場合には、図1に示すデータベース21からエネルギー使用比率(実績量)を取得することにより、エネルギー合流比を入力することが可能となる。
【0024】
受付手段11を介して入力されるエネルギー変換デバイスの効率特性(COP)は、各エネルギー変換デバイスの効率特性である。例えば、図3のエネルギーフローの例では、変圧器51、メイン分電52、ガスタービンコジェネ53および蒸気ヘッダ54がエネルギー変換デバイスに相当する。エネルギー変換デバイスの効率特性は、
「エネルギーの出力量/エネルギーの入力量」
として定義される。エネルギー変換デバイスの効率特性をプラントにおける実際のエネルギー入出力量(実績量)から定式化し、エネルギー変換特性式およびそのパラメータを算出する機能を受付手段11に設けてもよい。この場合には、図1に示すデータベース21からエネルギー入出力量(実績量)を取得することにより、エネルギー変換デバイスの効率特性を入力することが可能となる。
【0025】
受付手段11を介して入力される演算対象期間は、シミュレーションの対象となる期間である。例えば、エネルギー単価は時刻(例えば、季節や日中、夜間など)によって異なるため、演算対象期間がシミュレーションに必要なデータとなる。また、エネルギー需要量についても同様である。
【0026】
受付手段11を介して入力されるエネルギー単価は、電力、ガス等の購入単価である。上記のようにエネルギー単価は時刻により変動するため、例えば、時刻の関数として受付手段11に与えられる。
【0027】
次に、図2のステップS2では、算出手段12においてエネルギー供給量を算出する。エネルギー供給量は最後段におけるエネルギー需要量を得るために必要なエネルギーの受入量であり、図3に示す例では、受電量およびガス受入量に相当する。
【0028】
図2におけるステップS21〜ステップS25は、エネルギー供給量を算出する手順(ステップS2)を示している。
【0029】
図2のステップS21では、演算対象を最後段のエネルギー変換デバイスに設定する。例えば、図3に示すエネルギーフローにおけるメイン分電52および蒸気ヘッダ54が最後段のエネルギー変換デバイスに対応する。
【0030】
次に、ステップS22では、直前段から供給されるべきエネルギー量を算出する。例えば図3のエネルギーフローの例では、メイン分電52から出力される電力は、「A工場電力量」、「事務棟電力量」および「UTY棟電力量」の総和である。そして、メイン分電52に与えられるべき電力は、この電力量の総和と、メイン分電52のエネルギー変換デバイスの効率特性(COP)から算出される。これらの値は、いずれも受付手段11を介して与えられている。エネルギー変換デバイスの効率特性(COP)は通常1より小さい値をとるため、メイン分電52に与えられるべき電力は、上記の電力量の総和より大きくなる。ただし、ヒートポンプや排熱回収を行うデバイスの効率特性(COP)は1より大きくなることがある。
【0031】
次に、ステップS23では、算出対象であるエネルギー変換デバイスの入力側がエネルギーの合流点となっているか否かを判断し、判断が肯定されればステップS24へ進み、判断が否定されればステップS25へスキップする。この判断は受付手段11を介して入力されたエネルギーフロー情報に基づいて行われる。例えば図3のエネルギーフローの例では、メイン分電52に供給されるエネルギーは変圧器51からの変電電力量および、ガスタービンコジェネ53からのコジェネ電力量である。したがって、この場合にはステップS23の判断が肯定され、ステップS24へ進む。
【0032】
ステップS24では、受付手段11を介して入力されたエネルギー合流比に基づいて、前段のエネルギー変換デバイスから供給されるべきエネルギー量をデバイスごとに算出する。例えば、例えば図3のエネルギーフローの例で、メイン分電52に供給されるエネルギーは変圧器51からの変電電力量と、ガスタービンコジェネ53からのコジェネ電力量との比が1:2であれば、その合流比に従って、変圧器51からの変電電力量および、ガスタービンコジェネ53からのコジェネ電力量が算出される。一方、ステップS23の判断が否定される場合には、すでにステップS22において前段から供給されるべきエネルギー量は確定していることになる。例えば、蒸気ヘッダ54はガスタービンコジェネ53からのコジェネ蒸気量のみの供給を受けるため、ステップS22において前段から供給されるべきエネルギー量は確定する。
【0033】
次に、ステップS25では、最前段のエネルギー変換デバイスまでのすべてのデバイスについて、ステップS22〜ステップS24の処理が終了したか否か判断し、判断が肯定されればリターンしてステップS3へ進み、判断が否定されればステップS26へ進む。例えば図3のエネルギーフローの例で、メイン分電52に供給されるエネルギーの算出を行っていた場合、メイン分電52の前段に変圧器51およびガスタービンコジェネ53が存在するため、計算は継続されるべきであり、したがってこの場合にはステップS25の判断は否定される。
【0034】
ステップS26では、演算の対象となるエネルギー変換デバイスを1段前のものに切り替えて、ステップS22へ進む。例えば図3のエネルギーフローの例で、メイン分電52に供給されるエネルギーの算出を行っていた場合には、算出対象となるデバイスは、変圧器51およびガスタービンコジェネ53となる。
【0035】
その後、変圧器51についての演算処理(ステップS22〜ステップS24)を行うことで図3の受電量が、ガスタービンコジェネ53についての演算処理(ステップS22〜ステップS24)を行うことで図3のガス受入量が、それぞれ算出される。この場合、ステップS22の演算において、すでにステップS22およびステップS24において得られている変電電力量、コジェネ電力量およびコジェネ蒸気量が使用される。
【0036】
このように、演算の対象を、順次、前段のエネルギー変換デバイスに移動することにより、エネルギーの受入量を求めることができる。
【0037】
次に、ステップS3では、算出手段12においてエネルギーコストが算出される。
【0038】
エネルギーコストの算出手順は、図2のステップS31〜ステップS34に示される。
【0039】
図2のステップS31では、ステップS2で算出されたエネルギー供給量(エネルギーの受入量)が取得される。図3のエネルギーフローの例では、受電量およびガス受入量に相当する。
【0040】
次に、ステップS32では、受付手段11を介して入力されたエネルギー単価を取得する。
【0041】
次に、ステップS33では、エネルギーコストを算出する。ここでは、ステップS31において取得されたエネルギー供給量(エネルギーの受入量)と、ステップS32において取得されたエネルギー単価との積が算出される。図3のエネルギーフローの例では、受電量と電力単価の積、ガス受入量とガス単価の積、およびこれらの積の総和などが算出される。また、ここで算出されたエネルギーコストを、最終的なエネルギー消費量の比率に従って分配することにより、各消費部門におけるエネルギーコストを算出することができる。
【0042】
次に、ステップS34では、必要な演算が終了したか否か判断し、判断が肯定されればリターンしてステップS4へ進み、判断が否定されればステップS31へ戻り、演算処理を繰り返す。
【0043】
次に、ステップS4では、受付手段11を介して入力されたすべての演算対象期間について、算出処理(ステップS2〜ステップS3)が終了したか否か判断し、判断が肯定されればステップS5へ進み、判断が否定されればステップS2へ戻って異なる期間について算出処理(ステップS2〜ステップS3)を繰り返す。
【0044】
ステップS5では、算出処理(ステップS2〜ステップS3)における算出結果を算出結果格納部22(図1)に出力し、処理を終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のシミュレーションシステムによれば、エネルギー変換デバイスにおけるエネルギー供給量を、プロセスを1段ずつ遡りつつ算出することにより、エネルギー需要量に対応するエネルギー供給量(エネルギーの受入量)およびエネルギーコストを算出できる。このため、例えば、現実のエネルギー使用状態、供給状態、運転状態を変更することなく、省エネルギー対策を行った場合の擬似的なエネルギー使用状態、供給状態を算出することができる。
【0046】
なお、最終的に算出手段12により算出されたエネルギー使用状態、供給状態に基づいて、CO排出量や一次エネルギー換算熱量を算出手段12において算出するようにしてもよい。
【0047】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、エネルギーの供給状態をシミュレーションするシミュレーションシステムに対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 シミュレーションシステム
11 受付手段
12 算出手段
図1
図2
図3