(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、1)成形体、2)成形体の製造方法、並びに、3)電子デバイス用部材及び電子デバイスに項分けして詳細に説明する。
【0016】
1)成形体
本発明の成形体は、ポリカルボシラン化合物を含む層に、イオンが注入されて得られる層(以下、「イオン注入層」という。)を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に用いるポリカルボシラン化合物は、分子内の主鎖に、(−Si−C−)結合を含む繰り返し単位を有する高分子化合物である。なかでも、本発明に用いるポリカルボシラン化合物としては、下記式(1)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0019】
式中R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。複数のR
1、R
2は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0020】
前記R
1、R
2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の炭素数1〜10の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜10の環状アルキル基;が挙げられる。
【0021】
アリール基としては、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0022】
アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0023】
1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。
1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。
【0024】
また、R
1、R
2で表される基が、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、又は1価の複素環基である場合、これらの基は、任意の位置に、メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基;4−メチルフェニル基;アリール基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;等の置換基を有していてもよい。
【0025】
R
3は、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
R
3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0026】
アリーレン基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
【0027】
2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。
【0028】
2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基;2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基;2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。
【0029】
なお、R
3のアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等の置換基を有していてもよい。これらの具体例としては、前記R
1、R
2のアリール基等の置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、本発明に用いるポリカルボシラン化合物は、式(1)において、R
1、R
2がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、R
3がアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むものが好ましく、R
1、R
2がそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、R
3がアルキレン基である繰り返し単位を含むものがより好ましく、R
1、R
2がそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、R
3が炭素数1〜6のアルキレン基である繰り返し単位を含むものが特に好ましい。
【0031】
式(1)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン化合物の重量平均分子量は、通常400〜12,000である。
【0032】
ポリカルボシラン化合物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、ポリシランの熱分解重合により製造する方法(特開昭51−126300号公報)、ポリ(ジメチルシラン)の熱転位により製造する方法(Journal of Materials Science,2569−2576,Vol.13,1978)、クロロメチルトリクロロシランのグリニャール反応によりポリカルボシラン化合物を得る方法(Organometallics,1336−1344,Vol.10,1991)、ジシラシクロブタン類の開環重合により製造する方法(Journal of Organometallic Chemistry,1−10,Vol.521,1996)、ジメチルカルボシランとSiH基含有シランの構造単位を有する原料ポリマーに、塩基性触媒の存在下で水及び/又はアルコールを反応させることにより製造する方法(特開2006−117917号公報)、末端にトリメチルスズ等の有機金属基を有するカルボシランを、n−ブチルリチウム等の有機典型金属化合物を開始剤として重合反応させて製造する方法(特開2001−328991号公報)等が挙げられる。
【0033】
ポリカルボシラン化合物を含む層は、ポリカルボシラン化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
【0034】
ポリカルボシラン化合物を含む層中の、ポリカルボシラン化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有するイオン注入層を形成できる観点から、50重量%以上であるのが好ましく、70重量%以上であるのがより好ましい。
【0035】
ポリカルボシラン化合物を含む層を形成する方法としては、特に制約はなく、例えば、ポリカルボシラン化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を、適当な支持体の上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0036】
塗工装置としては、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。
【0037】
得られた塗膜の乾燥、成形体のガスバリア性向上のため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱は80〜150℃で、数十秒から数十分行う。
【0038】
形成されるポリカルボシラン化合物を含む層の厚みは、特に制限されないが、通常20nm〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、ポリカルボシラン化合物を含む層の厚みがナノオーダーであっても、充分なガスバリア性能を有する成形体を得ることができる。
【0039】
本発明の成形体において、イオン注入層は、ポリカルボシラン化合物の少なくとも一種を含む層であって、該層中にイオンが注入されてなるものであれば特に制約はない。
【0040】
前記イオン注入層は、ポリカルボシラン化合物を含む層にイオンが注入されてなるものである。
イオンの注入量は、形成する成形体の使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
【0041】
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンなどの希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH
4)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
【0042】
有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルアルコキシシラン;
ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のジシロキサン;
ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、テトラキスジメチルアミノシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン等のアミノシラン;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン;
テトライソシアナートシラン等のイソシアナートシラン;
トリエトキシフルオロシラン等のハロゲノシラン;
ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のアルケニルシラン;
ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ベンジルトリメチルシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルシラン;
ビス(トリメチルシリル)アセチレン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン等のシリルアルキン;
1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン等のシリルアルケン;
フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン等のアリールアルキルシラン;
プロパルギルトリメチルシラン等のアルキニルアルキルシラン;
ビニルトリメチルシラン等のアルケニルアルキルシラン;
ヘキサメチルジシラン等のジシラン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン;
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド;
ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;
等が挙げられる。
これらのイオンは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性、透明性を有するイオン注入層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0044】
イオンを注入する方法は特に限定されず、例えば、ポリカルボシラン化合物を含む層を形成した後、該ポリカルボシラン化合物を含む層にイオンを注入する方法が挙げられる。
【0045】
イオン注入法としては、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性の成形体が得られることから、後者のプラズマ中のイオンを注入する方法が好ましい。
【0046】
プラズマイオン注入は、例えば、希ガス等のプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ポリカルボシラン化合物を含む層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、ポリカルボシラン化合物を含む層の表面部に注入して行うことができる。
【0047】
イオン注入層が形成される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、ポリカルボシラン化合物を含む層の厚み、成形体の使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、10〜1000nmである。
【0048】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0049】
本発明の成形体の形状は、特に制限されず、例えば、フィルム状、シート状、直方体状、多角柱状、筒状などが挙げられる。後述するごとき電子デバイス用部材として用いる場合には、フィルム状、シート状であることが好ましい。該フィルムの厚みは、目的とする電子デバイスの用途によって適宜決定することができる。
【0050】
本発明の成形体は、イオン注入層のみからなるものであってもよいし、さらに他の層を含むものであってもよい。また、他の層は単層であっても、同種又は異種の2層以上であってもよい。他の層としては、例えば、ポリカルボシラン化合物以外の材料からなる支持体、無機薄膜層、導電体層、衝撃吸収層、プライマー層等が挙げられる。
【0051】
前記支持体の素材は、成形体の目的に合致するものであれば特に制限されず、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステルがより好ましい。
【0053】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
【0054】
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレン−シクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。
【0055】
支持体の厚さは特に限定されないが、通常5〜1000μm、好ましくは、10〜300μmである。
【0056】
無機薄膜層は、無機化合物の一種又は二種以上からなる層である。無機化合物としては、一般的に真空成膜可能で、ガスバリア性を有するもの、例えば無機酸化物、無機窒化物、無機炭化物、無機硫化物、これらの複合体である無機酸化窒化物、無機酸化炭化物、無機窒化炭化物、無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
【0057】
無機薄膜層の厚みは、通常10nm〜1000nm、好ましくは20〜500nm、より好ましくは20〜100nmの範囲である。
【0058】
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
【0059】
導電体層の形成方法としては特に制限はない。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。
【0060】
導電体層の厚さはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nm〜50μm、好ましくは20nm〜20μmである。
【0061】
衝撃吸収層を形成する素材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系材料等が挙げられる。
また、粘着剤、コート剤、封止剤等として市販されているものを使用することもでき、特に、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤が好ましい。
【0062】
衝撃吸収層の形成方法としては特に制限はなく、例えば、前記ポリシラン化合物を含む層の形成方法と同様に、前記衝撃吸収層を形成する素材(粘着剤等)、及び、所望により、溶剤等の他の成分を含む衝撃吸収層形成溶液を、積層すべき層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等して形成する方法が挙げられる。
また、別途、剥離基材上に衝撃吸収層を成膜し、得られた膜を、積層すべき層上に転写して積層してもよい。
衝撃吸収層の厚みは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0063】
プライマー層は、支持体とポリカルボシラン化合物を含む層との層間密着性を高める役割を果たす。プライマー層を設けることにより、層間密着性及び表面平滑性に極めて優れる成形体を得ることができる。
【0064】
プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む光重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
プライマー層は、プライマー層を構成する材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなるプライマー層形成用溶液を、支持体の片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。
【0066】
プライマー層形成用溶液を支持体に塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0067】
プライマー層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。プライマー層の厚みは、通常、10〜1000nmである。
【0068】
また、得られたプライマー層に、後述する、イオン注入する層にイオンを注入する方法と同様な方法によりイオン注入を行ってもよい。プライマー層にもイオン注入を行うことにより、よりガスバリア性に優れる成形体を得ることができる。
【0069】
本発明の成形体が他の層を含む積層体である場合、イオン注入層の配置位置は特に限定されず、また、イオン注入層は1層でも複数層であってもよい。
【0070】
本発明の成形体は、優れたガスバリア性を有し、また、その形状がフィルム状又はシート状(以下、「フィルム状」という。)の場合、耐折り曲げ性に優れ、かつ折り曲げなどを行ってもガスバリア性を維持するものが好ましい。
【0071】
本発明の成形体が優れたガスバリア性を有していることは、本発明の成形体の水蒸気等のガスの透過率が、イオンが注入されていないものに比して、格段に小さいことから確認することができる。例えば、水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、0.30g/m
2/day以下が好ましく、0.25g/m
2/day以下がより好ましい。
なお、成形体の水蒸気等の透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0072】
本発明の成形体が優れた透明性を有していることは、本発明の成形体の可視光透過率が高いことから確認することができる。可視光透過率は波長550nmにおける透過率であり、78%以上が好ましい。成形体の可視光透過率は、公知の可視光透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0073】
本発明の成形体が耐折り曲げ性に優れ、折り曲げなどを行ってもガスバリア性を維持できることは、フィルム状の成形体をふたつに折り曲げて圧力をかけ、再び開いた後においても水蒸気透過率がほとんど低下しないことから確認することができる。本発明のフィルム状の成形体は、同じ厚みの無機膜に比較して、折り曲げ後もガスバリア性を維持することに優れている。
【0074】
また、本発明の成形体は表面平滑性にも優れる。本発明の成形体が表面平滑性に優れることは、例えば、測定領域1×1μmにおける表面粗さRa値(nm)を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することにより確認することができる。1×1μmにおけるRa値は、0.25nm以下であるのが好ましい。
【0075】
2)成形体の製造方法
本発明の成形体の製造方法は、ポリカルボシラン化合物を含む層を表面部に有する成形物の、前記ポリカルボシラン化合物を含む層に、イオンを注入する工程を有することを特徴とする。
【0076】
本発明の成形体の製造方法においては、前記イオンを注入する工程が、ポリカルボシラン化合物を含む層を表面部に有する長尺の成形物を一定方向に搬送しながら、前記ポリカルボシラン化合物を含む層にイオンを注入する工程であるのが好ましい。
この製造方法によれば、例えば、長尺の成形物を巻き出しロールから巻き出し、それを一定方向に搬送しながらイオンを注入し、巻き取りロールで巻き取ることができるので、イオンが注入されて得られる成形体を連続的に製造することができる。
【0077】
長尺の成形物の形状はフィルム状であり、ポリカルボシラン化合物を含む層のみでもよいし、他の層を含むものであってもよい。他の層としては、ポリカルボシラン化合物以外の材料からなる支持体が挙げられ、前述の支持体と同様のものを使用することができる。
【0078】
成形物の厚さは、巻き出し、巻き取り及び搬送の操作性の観点から、1μm〜500μmが好ましく、5μm〜300μmがより好ましい。
【0079】
ポリカルボシラン化合物を含む層に、イオンを注入する方法は、特に限定されない。なかでも、プラズマイオン注入法により前記層の表面部にイオン注入層を形成する方法が特に好ましい。
【0080】
プラズマイオン注入法は、プラズマ中に曝した、ポリカルボシラン化合物を含む層を表面に有する成形物に、負の高電圧パルスを印加することにより、プラズマ中のイオンを前記層の表面部に注入してイオン注入層を形成する方法である。
【0081】
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法が好ましい。
【0082】
前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一なイオン注入層を形成することができ、耐折り曲げ性、ガスバリア性を兼ね備えたイオン注入層を効率よく形成することができる。
【0083】
前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。
【0084】
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、均一なイオン注入層をより簡便にかつ効率よく形成することができる。
【0085】
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1kV〜−50kV、より好ましくは−1kV〜−30kV、特に好ましくは−5kV〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時に成形体が帯電し、また成形体への着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0086】
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
【0087】
層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)ポリカルボシラン化合物を含む層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001-26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
【0088】
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
以下、前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0089】
図1は、前記(γ)のプラズマイオン注入装置を備える連続的プラズマイオン注入装置の概要を示す図である。
図1(a)において、1aはポリカルボシラン化合物を含む層を表面部に有する長尺のフィルム状の成形物(以下、「フィルム」という。)、11aはチャンバー、20aは油拡散ポンプ、3aはイオン注入される前のフィルム1aを送り出す巻き出しロール、5aはイオン注入されたフィルム(成形体)1bをロール状に巻き取る巻取りロール、2aは高電圧印加回転キャン、6aはフィルムの送り出しロール、10aはガス導入口、7aは高電圧パルス電源、4はプラズマ放電用電極(外部電界)である。
図1(b)は、前記高電圧印加回転キャン2aの斜視図であり、15は高電圧導入端子(フィードスルー)である。
【0090】
用いるポリカルボシラン化合物を含む層を表面部に有する長尺のフィルム1aは、支持体(その他の層)上に、ポリカルボシラン化合物を含む層を形成したフィルムである。
【0091】
図1に示す連続的プラズマイオン注入装置においては、フィルム1aは、チャンバー11a内において、巻き出しロール3aから
図1中矢印X方向に搬送され、高電圧印加回転キャン2aを通過して、巻き取りロール5aに巻き取られる。フィルム1aの巻取りの方法や、フィルム1aを搬送する方法等は特に制約はないが、本実施形態においては、高電圧印加回転キャン2aを一定速度で回転させることにより、フィルム1aの搬送を行っている。また、高電圧印加回転キャン2aの回転は、高電圧導入端子15の中心軸13をモーターにより回転させることにより行われる。
【0092】
高電圧導入端子15、及びフィルム1aが接触する複数の送り出し用ロール6a等は絶縁体からなり、例えば、アルミナの表面をポリテトラフルオロエチレン等の樹脂で被覆して形成されている。また、高電圧印加回転キャン2aは導体からなり、例えば、ステンレスで形成することができる。
【0093】
フィルム1aの搬送速度は適宜設定できる。フィルム1aが巻き出しロール3aから搬送され、巻き取りロール5aに巻き取られるまでの間にフィルム1aの表面部(ポリカルボシラン化合物を含む層)にイオン注入され、所望のイオン注入層が形成されるだけの時間が確保される速度であれば、特に制約されない。フィルムの巻取り速度(搬送速度)は、印加電圧、装置規模等にもよるが、通常0.1〜3m/min、好ましくは0.2〜2.5m/minである。
【0094】
まず、チャンバー11a内をロータリーポンプに接続された油拡散ポンプ20aにより排気して減圧とする。減圧度は、通常1×10
−2Pa以下、好ましくは1×10
-3Pa以下である。
【0095】
次に、ガス導入口10aよりチャンバー11a内に、窒素等のイオン注入用のガス(以下、「イオン注入用ガス」ということがある。)を導入して、チャンバー11a内を減圧イオン注入用ガス雰囲気とする。なお、イオン注入用ガスはプラズマ生成ガスでもある。
【0096】
次いで、プラズマ放電用電極4(外部電界)によりプラズマを発生させる。プラズマを発生させる方法としては、マイクロ波やRF等の高周波電力源等による公知の方法が挙げられる。
【0097】
一方、高電圧導入端子15を介して高電圧印加回転キャン2aに接続されている高電圧パルス電源7aにより、負の高電圧パルス9aが印加される。高電圧印加回転キャン2aに負の高電圧パルスが印加されると、プラズマ中のイオンが誘因され、高電圧印加回転キャン2aの周囲のフィルムの表面に注入され(
図1(a)中、矢印Y)、フィルム状の成形体1bが得られる。
【0098】
前述のように、イオン注入する際の圧力(チャンバー11a内のプラズマガスの圧力)は、0.01〜1Paであるのが好ましく、イオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましく、高電圧印加回転キャン2aに負の高電圧を印加する際の印加電圧は、−1kV〜−50kVであるのが好ましい。
【0099】
次に、
図2に示す連続的プラズマイオン注入装置を使用して、ポリカルボシラン化合物を含む層を表面部に有するフィルムの、前記ポリカルボシラン化合物を含む層にイオン注入する方法を説明する。
【0100】
図2に示す装置は、前記(δ)のプラズマイオン注入装置を備える。このプラズマイオン注入装置は、外部電界(すなわち、
図1におけるプラズマ放電用電極4)を用いることなく印加する高電圧パルスによる電界のみでプラズマを発生させるものである。
【0101】
図2に示す連続的プラズマイオン注入装置においては、フィルム(フィルム状の成形物)1cは、前記
図1の装置と同様に高電圧印加回転キャン2bを回転させることによって巻き出しロール3bから
図2中矢印X方向に搬送され、巻き取りロール5bに巻き取られる。
【0102】
図2に示す連続的プラズマイオン注入装置では、前記フィルムのポリカルボシラン化合物を含む層の表面部へのイオン注入は次のように行われる。
【0103】
まず、
図1に示すプラズマイオン注入装置と同様にしてチャンバー11b内にフィルム1cを設置し、チャンバー11b内をロータリーポンプに接続されている油拡散ポンプ20bにより排気して減圧とする。そこへ、ガス導入口10bよりチャンバー11b内に、窒素等のイオン注入用ガスを導入して、チャンバー11b内を減圧イオン注入用ガス雰囲気とする。
【0104】
イオン注入する際の圧力(チャンバー11b内のプラズマガスの圧力)は、10Pa以下、好ましくは0.01〜5Pa、より好ましくは0.01〜1Paである。
【0105】
次に、フィルム1cを、
図2中Xの方向に搬送させながら、高電圧導入端子(図示せず)を介して高電圧印加回転キャン2bに接続されている高電圧パルス電源7bから高電圧パルス9bを印加する。
【0106】
高電圧印加回転キャン2bに負の高電圧が印加されると、高電圧印加回転キャン2bの周囲のフィルム1cに沿ってプラズマが発生し、そのプラズマ中のイオンが誘因され、高電圧印加回転キャン2bの周囲の成形体フィルム1cの表面に注入される(
図2中、矢印Y)。フィルム1cのポリカルボシラン化合物を含む層の表面部にイオンが注入されると、フィルム表面部にイオン注入層が形成され、フィルム状の成形体1dが得られる。
【0107】
高電圧印加回転キャン2bに負の高電圧を印加する際の印加電圧、パルス幅及びイオン注入する際の圧力は、
図1に示す連続的プラズマイオン注入装置の場合と同様である。
【0108】
図2に示すプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、フィルムのポリカルボシラン化合物を含む層の表面部にプラズマ中のイオンを注入し、イオン注入層を連続的に形成し、フィルムの表面部にイオン注入層が形成された成形体を量産することができる。
【0109】
3)電子デバイス用部材及び電子デバイス
本発明の電子デバイス用部材は、本発明の成形体からなることを特徴とする。従って、本発明の電子デバイス用部材は、優れたガスバリア性を有しているので、水蒸気等のガスによる素子の劣化を防ぐことができる。また、光の透過性が高いので、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ部材;太陽電池用バックシート;等として好適である。
【0110】
本発明の電子デバイスは、本発明の電子デバイス用部材を備える。具体例としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池等が挙げられる。
本発明の電子デバイスは、本発明の成形体からなる電子デバイス用部材を備えているので、優れたガスバリア性と耐折り曲げ性を有する。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0112】
用いたプラズマイオン注入装置、水蒸気透過率測定装置及び測定条件、可視光透過率測定装置及び測定条件、折り曲げ試験方法、表面平滑性評価方法、並びに密着性評価方法は以下の通りである。
【0113】
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
【0114】
(水蒸気透過率の測定)
折り曲げ試験前後の水蒸気透過率を測定した。
透過率測定器:LYSSY社製、「L80−5000」
測定条件:相対湿度90%、40℃
【0115】
(可視光透過率の測定)
紫外可視近赤外分光透過率計:島津製作所社製、「UV3600」
測定条件:波長550nm
【0116】
(折り曲げ試験)
得られた成形体のイオン注入面(比較例2はポリカルボシラン化合物を含む層側、比較例4は窒化ケイ素膜側)を外側にし、中央部分で半分に折り曲げてラミネーター(フジプラ社製、「LAMIPACKER LPC1502」)の2本のロール間を、ラミネート速度5m/min、温度23℃の条件で通した。
尚、成形体の内側に1mm厚の台紙を介在させ上記折り曲げ試験を行った。
【0117】
(表面平滑性評価方法)
原子間力顕微鏡(AFM)(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、「SPA300 HV」)を用いて測定領域1×1μm(1μm□)における表面粗さRa値(nm)を測定した。
【0118】
(密着性評価方法)
支持体とポリカルボシラン化合物を含む層との密着性を、セロハンテープを用いたクロスカット試験により評価した(JISK5600-5−6)。密着性は、良好な場合を0、非常に悪い場合を5として、6段階で評価した。
【0119】
(実施例1)
支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、「PET38 T−100」、厚さ38μm、以下、「PETフィルム」という。)に、ポリカルボシラン化合物として、前記式(1)においてR
1=CH
3、R
2=H、R
3=CH
2である繰り返し単位を含むもの(日本カーボン社製、ニプシTypeS、Mw=4,000)をトルエン/エチルメチルケトン混合溶媒(トルエン:エチルメチルケトン=7:3、濃度5wt%)に溶解した溶液を塗布し、120℃で1分間加熱してPETフィルム上に厚さ100nm(膜厚)のポリカルボシラン化合物を含む層(以下、「ポリカルボシラン層」という。)を形成して成形物を得た。次に、
図2に示すプラズマイオン注入装置を用いてポリカルボシラン層の表面に、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入して成形体1を作製した。
【0120】
プラズマイオン注入の条件を以下に示す。
・ガス(アルゴン)流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min
【0121】
(実施例2)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えてヘリウム(He)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体2を作製した。
【0122】
(実施例3)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えて窒素(N
2)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体3を作製した。
【0123】
(実施例4)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えてクリプトン(Kr)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体4を作製した。
【0124】
(実施例5)
プラズマ生成ガスとしてアルゴンに代えて酸素(O
2)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体5を作製した。
【0125】
(実施例6)
イオン注入を行う際の印加電圧を−15kVとした以外は、実施例1と同様にして成形体6を作製した。
【0126】
(実施例7)
イオン注入を行う際の印加電圧を−20kVとした以外は、実施例1と同様にして成形体7を作製した。
【0127】
(実施例8)
ポリカルボシラン化合物として、実施例1で用いたポリカルボシラン化合物の低分子量品(日本カーボン社製、ニプシTypeL、Mw=800)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体8を作製した。
【0128】
(実施例9)
ポリカルボシラン化合物として、前記式(1)において、R
1=CH
3、R
2=CH
2CH
2CH
3、R
3=C
6H
4である繰り返し単位を含むもの(Mw=3,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして成形体9を作製した。
【0129】
(比較例1)
PETフィルムをそのまま成形体10とした。
(比較例2)
実施例1と同様にしてPETフィルム上にポリカルボシラン層を形成し、成形体11を作製した。
【0130】
(比較例3)
ポリカルボシラン層を形成しない以外は、実施例1と同様にして成形体を作製した。すなわち、PETフィルムに実施例1と同様にしてイオン注入し、成形体12とした。
【0131】
(比較例4)
PETフィルムに、スパッタリング法により、厚さ50nmの窒化ケイ素(SiN)の膜を成膜し、成形体13を作製した。
【0132】
(比較例5)
ポリカルボシラン層に代えて、膜厚1μmのウレタンアクリレート層(ウレタンアクリレート575BC、荒川化学工業社製)を形成し、これに実施例1と同様にしてイオン注入して成形体14を作製した。
【0133】
実施例1〜9、比較例3、5で得られた成形体のそれぞれについて、XPS(アルバックファイ社製、Quantum2000)を用いて、表面から10nm付近の元素分析測定を行うことにより、それぞれのイオンが注入されたことを確認した。
【0134】
実施例1〜9、及び比較例1〜5で得られた成形体1〜14について、水蒸気透過率の測定、可視光透過率の測定、表面粗さRa値の測定、及び密着性試験を行った。測定結果及び評価結果を下記第1表に示す。
【0135】
次に、成形体1〜14について折り曲げ試験を行い、試験後における成形体1〜14について、水蒸気透過率を測定した。結果を第1表に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
第1表から、実施例1〜9の成形体1〜9は、比較例1〜5の成形体10〜14に比して、水蒸気透過率が小さく、高いガスバリア性を有していることがわかる。また、成形体1〜9は、透明性、表面平滑性及び密着性にも優れていた。さらに、折り曲げ試験後においても水蒸気透過率の上昇が少なく、耐折り曲げ性に優れていることがわかる。