(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記恒常性維持機能レベル演算手段は、恒常性維持機能レベルを高活性状態から機能低下状態まで3〜10段階の範囲で区分して求め、前記出力手段は、高活性状態を最上部とし、機能低下状態を最下部として縦軸に3〜10段階の範囲に区分して表示させる請求項1記載の生体状態推定装置。
前記恒常性維持機能レベル演算手段は、恒常性維持機能レベルを高活性状態から機能低下状態まで5段階に区分して求め、前記出力手段は、高活性状態を最上部とし、機能低下状態を最下部として縦軸に5段階に区分して表示させる請求項2記載の生体状態推定装置。
前記判定手段は、前記出力手段により表示手段に表示されるグラフに、恒常性維持機能レベルの2段階以上の急低下が所定回数以上生じた場合に異常状態と判定する異常状態判定手段を有する請求項4記載の生体状態推定装置。
前記恒常性維持機能レベル演算手段により処理される前に、前記生体信号測定手段により得られる生体信号を、所定の周波数帯域でフィルタリングするフィルタリング手段をさらに有し、
前記フィルタリング手段が、前記生体信号測定手段により測定した静的環境下における生体信号の平均周波数を求め、該平均周波数を基準値として、フィルタリングする周波数帯域を設定する構成である請求項1〜6のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
前記生体信号測定手段は、人の背部に当接され、心臓の動きによる大動脈の揺れに伴って圧力が変動するエアパックを備えてなり、前記恒常性維持機能レベル演算手段は、前記エアパックの圧力変動を分析対象の前記生体信号として用いる請求項1〜7のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
前記生体信号測定手段は、人の背部に当接され、心臓の動きによる大動脈の揺れに伴って圧力が変動するエアパックを備えてなり、前記恒常性維持機能レベル演算手段は、前記エアパックの圧力変動を分析対象の前記生体信号として用いる請求項11記載の生体状態推定システム。
前記恒常性維持機能レベル演算ステップは、恒常性維持機能レベルを高活性状態から機能低下状態まで5段階に区分して求め、前記出力ステップは、高活性状態を最上部とし、機能低下状態を最下部として縦軸に5段階に区分して表示させる請求項15又は16記載のコンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る生体状態推定装置60の分析対象である生体信号、ここでは心臓の動きに伴う背部の大動脈の揺れによる圧力変動を採取する生体信号測定手段1を組み込んだ自動車用のシート500の外観を示した図である。なお、生体信号測定手段1と生体状態推定装置60とにより、生体状態推定システムが構成される。生体信号測定手段1は、シートバック部510に組み込まれて用いられる。ここで、生体信号測定手段1によって採取される圧力変動の検知信号には、ノイズ信号がより少ないことが望ましい。そこで、本実施形態の生体信号測定手段1は、以下に説明するように、自動車の走行中等の振動環境下においても、センサの出力信号自体に含まれるノイズ信号を少なくできるような工夫がなされている。
【0032】
生体信号測定手段1は、エアパックユニット100と、ビーズ発泡樹脂弾性部材20とを有して構成されている。エアパックユニット100は、収容体15と、該収容体15に収容した2つのエアパック10を備えて構成される。各エアパック10は、3つの小空気袋111が縦方向に連接されている一方、そのそれぞれは空気の流通がないように形成されている。各小空気袋111内には、復元力付与部材としての三次元立体編物112が配置されている。
【0033】
本実施形態では、このようなエアパック10が左右に配置される。左右に配置することにより、着座者の背への当たりが左右均等になり、違和感を感じにくくなる。また、左右のエアパック10,10のいずれか一方を構成するいずれかの小空気袋111にセンサ取付チューブ111aが設けられ、その内側に空気圧変動を測定するセンサ111bが固定されている。なお、センサ取付チューブ111aは密閉されている。小空気袋111は、このような生体信号による空気圧変動に敏感に反応させるために、大きさは、幅40〜100mm、長さ120〜200mmの範囲が好ましい。小空気袋111の素材は限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンエラストマー(例えば、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」)からなるシートを用いて形成することができる。センサ111bとしては、小空気袋111内の空気圧を測定できるものであればよく、例えば、コンデンサ型マイクロフォンセンサを用いることができる。
【0034】
小空気袋111を3つ連接した場合の全体の大きさとしては、自動車のシート500のシートバック部510に用いる場合、幅40〜100mm、全長400〜600mmの範囲とすることが好ましい。長さが短い場合、シートバック部510において、着座者が、腰部付近の一部分のみに異物感を感じるため、400mm以上の長さとして、できるだけ、着座者の背全体に対応させることが好ましい。
【0035】
空気圧変動を検出するセンサ111bは、本実施形態では、着座者の左側に配置されるエアパック10を構成する中央の小空気袋111に設けている。この小空気袋111の位置は、着座者の背部の大動脈(特に、「下行大動脈」)の心臓の動きに伴って生じる揺れを検知可能な領域に相当する。このような背部の大動脈の動きを検知可能な領域は、着座者の体格により一律ではないが、身長158cmの日本人女性から身長185cmの日本人男性までの様々な体格の被験者20名で測定したところ、該小空気袋111(幅60mm、長さ160mm)をシートバック部510の中心寄りの側縁と下縁の交差部P(
図2及び
図3参照)が、シートクッション部520の上面からシートバック部510の表面に沿った長さL:220mm、シートバック部510の中心からの距離M:80mmとなるように設定したところ、上記全ての被験者において大動脈の動きによる圧力変動を検知できた。小空気袋111の大きさが、幅40〜100mm、長さ120〜200mmの範囲の場合、交差部Pの位置を、シートクッション部520の上面からシートバック部510の表面に沿った長さで150〜280mm、シートバック部510の中心から60〜120mmの範囲に設定することが好ましい。
【0036】
上記した2つのエアパック10をシートバック部510において容易に所定の位置に設定できるようにユニット化しておくことが好ましい。従って、
図2〜
図4に示したような収容体15にエアパック10を装着したエアパックユニット100として構成とすることが好ましい。収容体15は、両側にエアパック10を収容する袋状のエアパック収容部151を有し、2つのエアパック収容部151間に接続部152を有している。
【0037】
2つのエアパック収容部151には、それぞれエアパック10が挿入される。また、エアパック収容部151には、エアパック10とほぼ同じ大きさの三次元立体編物40を、エアパック10の裏側エアパック12の背面側に重ねて挿入することが好ましい(
図3(d)参照)。三次元立体編物40を配置することにより、エアパック10が該三次元立体編物40によっていわば浮くように支持されるため、シートバック部510からの外部振動がエアパック内部の圧力変動として伝わりにくくなる。すなわち、三次元立体編物40を配置することにより、高周波小振幅の外部振動が入力された場合には、三次元立体編物40のパイルと空気圧の変動から、エアパック内にバネ定数の低い、バネ・マス・ダンパ系が作られる。そして、それが三次元立体編物40を内蔵したエアパック10において、低・高周波入力に対するフィルタ(ローパスフィルタ・ハイパスフィルタ)として作用し、該外部振動を減衰する。
【0038】
接続部152は、2つのエアパック部151を所定間隔をおいて支持できるものであればよく、幅60〜120mm程度で形成される。接続部152も、袋状に形成し、その内部に三次元立体編物45を挿入することが好ましい(
図3(d)及び
図4参照)。これにより、該接続部152を通じて入力される振動も、該三次元立体編物45を挿入することにより効果的に除振でき、センサ111bを備えたエアパック10への外部振動の伝達を抑制できる。
【0039】
なお、上記したように、小空気袋111は、例えば、ポリウレタンエラストマー(例えば、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」)からなるシートを用いて形成されるが、収容体15も同じ素材を用いて形成することが好ましい。また、小空気袋111、エアパック収容部151及び接続部152内に装填される各三次元立体編物は、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
【0040】
一方のグランド編地は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、2つのグランド編地間に編み込んだものである。
【0041】
ビーズ発泡樹脂弾性部材20は、シートバック部510の表皮部材とエアパック10を収容した収容体15(エアパックユニット100)との間に配設され、2つのエアパック10の全長に相当する長さを有し、2つのエアパック10の頂部間の長さに相当する幅を有している。従って、長さが400〜600mm、幅が250〜350mm程度の大きさのものを用いることが好ましい。これにより、2つのエアパック10が共に覆われるため、2つのエアパック10の凹凸を感じにくくなる。
【0042】
ビーズ発泡樹脂弾性部材20は、平板状に形成されたビーズ発泡体と、その外面に貼着される被覆材とから構成されている。ビーズ発泡体としては、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンのいずれか少なくとも一つを含む樹脂のビーズ法による発泡成形体が用いられる。なお、発泡倍率は任意であり限定されるものではない。被覆材は、ビーズ発泡体の外面に接着により貼着され、高い伸度と回復率を有する素材であり、好ましくは、伸度200%以上、100%伸長時の回復率が80%以上である弾性繊維不織布が用いられる。例えば、特開2007−92217号公報に開示された熱可塑性エラストマー弾性繊維が相互に溶融接着された不織布を用いることができる。具体的には、KBセーレン(株)製、商品名「エスパンシオーネ」を用いることができる。
【0043】
また、ビーズ発泡樹脂弾性部材20の外面を覆う被覆材として、例えば、熱可塑性ポリエステルからなる不織布を用いることもできる。具体的には、帝人(株)製のポリエチレンナフタレート(PEN)繊維(1100dtex)から形成した2軸織物(縦:20本/inch、横:20本/inch)を用いることができる。
【0044】
ビーズ発泡樹脂弾性部材20を構成するビーズ発泡体としては、厚さ約5〜6mm程度のものを用いることができ、その外面に、厚さ約1mm以下の上記した弾性繊維不織布や熱可塑性ポリエステルからなる不織布を貼着して形成される。なお、本実施形態では、ビーズ発泡樹脂弾性部材20の表皮部材511に対向する面とその反対面に、上記のエスパンシオーネ(商品名)を貼着している。これにより、生体信号の伝達性が向上する。
【0045】
本実施形態において人体支持手段を構成するシート500のシートバック部510は、表皮部材511と該表皮部材511の背面側に配設されるクッション支持部材512とを備えてなり、該表皮部材511とクッション支持部材512との間にエアパック10を保持した収容体15(エアパックユニット100)とビーズ発泡樹脂弾性部材20が組み込まれる。この際、クッション支持部材512側にまずエアパック10を保持した収容体15(エアパックユニット100)が配置され、その表面側にビーズ発泡樹脂弾性部材20が配置された上で、表皮部材511により被覆される。なお、クッション支持部材512は、例えば、三次元立体編物をシートバック部510の左右一対のサイドフレームの後端縁間に張って形成することもできるし、合成樹脂板から形成することもできる。表皮部材511は、例えば、三次元立体編物、合成皮革、皮革、あるいはこれらの積層体などを左右一対のサイドフレームの前縁間に張って設けることができる。
【0046】
このように、本実施形態においては、表皮部材511の裏面側に所定の大きさのビーズ発泡樹脂弾性部材20が積層して配置され、さらにその後方に左右一対のエアパック10を保持した収容体15(エアパックユニット100)が配置される構成であるため、着座者が背にエアパック10の凹凸を感じることがなくなり、生体信号を測定するためのエアパック10を有する構成でありながら、座り心地が向上する。なお、上記した説明では、ビーズ発泡樹脂弾性部材20を1枚用いたのみであるが、複数枚重ねて配置することも可能である。
【0047】
なお、上記した生体信号測定手段1は、エアパックユニット100をシート500のシートバック部510に組み込んでいるが、シートバック部510の表面に後付で取り付けるシート用クッションに組み込むようにしてもよい。また、エアパック10を形成する小空気袋111を3つ連接しているが、2つであってもよいし、1つであってもよい。また、背部の大動脈の揺動を捉えられる位置に配置して用いることができる限り、例えば、1つの空気袋からなるエアパック10のみから生体信号測定手段1を構成することもできる。また、上記したサイズは小空気袋111を3つ連接して用いた場合の適切な例であり、エアパック10のサイズ、エアパックユニット100のサイズは、背部の大動脈の揺動を捉えられる限り全く限定されるものではないことはもちろんである。
【0048】
次に、生体状態推定装置60の構成について
図6に基づいて説明する。生体状態推定装置60には、ハードディスク等の記憶部に設定されるコンピュータプログラムからなる恒常性維持機能レベル演算手段(恒常性維持機能レベル演算ステップ)61と、出力手段(出力ステップ)62とを有して構成される。なお、コンピュータプログラムは、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体へ記憶させて提供することもできるし、通信回線を通じて伝送することも可能である。
【0049】
恒常性維持機能レベル演算手段(恒常性維持機能レベル演算ステップ)61は、生体信号測定手段1により検出された背部の大動脈の動きによる圧力変動の信号(以下、場合により「エアパック信号」という)の時系列波形から人の状態を分析し、所定時点における人の恒常性維持機能レベルを複数の段階に区分して求める手段である。人の状態は、上記したように、大きく高活性状態と機能低下状態とに分けられると共に、両者間は、さらに定常状態が含まれ、これら各状態間に遷移状態が存在する。但し、本実施形態では、高活性状態から機能低下状態までを5段階の恒常性維持機能レベルとして区分した。つまり、覚醒時における最も元気な疲労を感じていない状態(高活性状態)から、疲労に陥った状態(機能低下状態)までの間を5段階の恒常性維持機能レベルに区分した。本実施形態では5段階に区分したが、これに限定されるものではない。但し、2段階では、異常状態(入眠予兆信号)を検知する恒常性維持機能レベルの2段階以上の急激な低下を示すことができず、10段階を超えると細分過ぎて視覚的に把握しにくくなるため、3〜10段階の範囲で区分することが好ましい。より好ましくは5段階である。なお、恒常性維持機能レベル演算手段61による恒常性維持機能レベルの求め方の詳細については後述する。
【0050】
出力手段(出力ステップ)62は、恒常性維持機能レベルの各段階を縦軸として、時間を横軸としてなるプロットエリアを表示手段65に表示する。そして、このプロットエリアに、恒常性維持機能レベル演算手段61により求められる恒常性維持機能レベルを算出時間に対応して時系列にプロットし、折れ線グラフとして表示する。恒常性維持機能レベルを時系列にプロットしていくことにより、自律神経による恒常性を維持しようとするゆらぎと脳による賦活化の様子の周期関数が表される。
【0051】
縦軸の恒常性維持機能レベルは、
図11に示したように、本実施形態では5段階に区分されて表示される。具体的には、高活性状態(覚醒時の中でも最も元気な疲労を感じていない状態)が最上部に表示され、機能低下状態が最下部に表示され、両者の間に3段階の恒常性維持機能段階が表示される。ここでは、中央部(上から3つ目)を定常状態とし、上から2つ目を高活性状態と定常状態との間の状態、下から2つ目を定常状態と機能低下状態と間の状態とし、そのイメージを人の顔の様子を模した図で表示している。なお、説明の便宜上、最も元気な状態である最上部を恒常性維持機能段階1(高活性状態(調子の良い状態:「イイ調子」等と表示))とし、以下、下方に向かって順に、恒常性維持機能段階2(比較的良い状態:「大丈夫」等と表示)、恒常性維持機能段階3(定常(普通)状態)、恒常性維持機能段階4(やや機能低下状態:「運転注意」等と表示)、恒常性維持機能段階5(機能低下状態:「疲労状態」等と表示))と表現する。
【0052】
図11(a)〜(e)は、ドライバの恒常性維持機能レベルを求め、出力手段62により表示手段65に折れ線グラフで表示した例を示したものである。これは、複数の被験者の試験データをまとめてその傾向を示したグラフである。なお、表示手段65としては、自動車の運転席から見やすい位置に搭載した車載用モニタを用いることが好ましい。
【0053】
図11(a)の例は、基本的には、最も元気な状態である恒常性維持機能段階1の範囲でグラフが描かれていく一方で、5〜8分間毎に、恒常性維持機能段階2に一時的に移行し、再び恒常性維持機能段階1に戻ることを繰り返している。仮に人が長時間に亘って恒常性維持機能段階1を維持し続けるとすれば、これは緊張感を伴って元気な状態を維持しているものであるが、緊張して集中力の高い状態、あるいはリラックスして集中力が高く元気で快適な場合には、自律神経の働きによる恒常性維持機能により恒常性維持機能段階1と恒常性維持機能段階2との間をこのように揺らぐ波形となる。この間で、ゆらぎの回数が多いときはリラックス状態を示し、ゆらぎの少ないときは緊張状態を示す。
【0054】
図11(b)の例は、恒常性維持機能段階1から恒常性維持機能段階2に移行し、恒常性維持機能段階3、恒常性維持機能段階2、恒常性維持機能段階3、恒常性維持機能段階4、恒常性維持機能段階3、恒常性維持機能段階2というように各恒常性維持機能段階を順に行き来するゆらぎを伴いながら、徐々に疲労が増していく波形である。つまり、肉体疲労の進行により恒常性維持機能が順次低下し、やがては睡眠を伴う休息が必要となるケースである。いわば、極端な状態変化を伴わない通常の疲労の進行過程を示したものである。
【0055】
図11(c)の例は、運転スタート時の恒常性維持機能段階1から、恒常性維持機能段階2、恒常性維持機能段階3、恒常性維持機能段階5と一気に疲労が進行したケースである。恒常性維持機能段階5まで進行したため、交感神経の働き(代償作用)によって強制的に恒常性維持機能段階3まで戻す機能が働くが、その後、恒常性維持機能段階5と恒常性維持機能段階3との間で極めて短時間で変化している。これは、眠気と安静状態との間の漫然とした状態が生じていることを示すものであり、ヒューマンエラーが生じやすく、運転に注意が必要な状態と判定できる。
【0056】
図11(d)の例は、15分過ぎに交感神経代償作用によって恒常性維持機能段階3から恒常性維持機能段階1に戻しているものの、30分過ぎからはゆらぎがほとんど生じず恒常性維持機能段階1から恒常性維持機能段階5へとほぼ一方的に進行している。これは恒常性維持が難しくなっていることを示すものであり、早期の休憩が必要な状態と判定できる。
【0057】
図11(e)の例は、高活性状態である恒常性維持機能段階1の範囲でグラフが描かれていくが、ほとんどゆらぎがない。これは、過緊張して集中力の高い状態が継続し、ゆらぎが少なくなり、エアパックがゆらぎを検出していない状態、つまり脳の賦活化によって過緊張している状態を示すものである。ところが、
図11(e)のグラフ中、25分付近、40分付近、47分付近において、数秒から数十秒で恒常性維持機能レベルが2段階以上(この例では、恒常性維持機能段階1から恒常性維持機能段階4までの3段階)一気に低下して一気に元に戻る尖鋭な突出ラインが生じている。この尖鋭な突出ラインは過緊張の継続に対する反動であり、過緊張状態の中での疲労の進行に通じる。この実験において、尖鋭な突出ラインが複数回生じた後に、ドライバにマイクロスリープが生じているが、これは生体の恒常性維持機能の著しい低下と考えられることから、この尖鋭な突出ラインはマイクロスリープに至る直前の信号である入眠予兆を示すものと定義した。なお、入眠予兆信号のより正確な判定については、この恒常性維持機能レベルの急低下だけでなく、後述するように、方形波の正負、ゼロクロス法により求めた絶対値の優位性を考慮することが好ましい。よって、このような突出ラインが複数回生じた場合には、それを入眠予兆信号と判定し、速やかな休憩が必要な状態と判定する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、恒常性維持機能レベルを視覚的に明確に捉えることができる。すなわち、ドライバは、例えば、
図11(a)のグラフを視覚的に捉えた場合には、順調に運転できる状態であることを理解し、
図11(c)のグラフを視覚的に捉えた場合には、運転に注意しつつ比較的速やかに休憩した方がよい状態であることを理解し、
図11(e)のような突出ラインを視認した場合には、入眠予兆信号の可能性があることから、比較的早期に休憩を取る方がよいことを理解できる。つまり、このような表示手段65へのグラフによる表示は、短時間ではあるが、ドライバがそれを見て自らの状態を把握することで、ドライバの脳を刺激し賦活化が生じ、覚醒方向に誘導して、早めの休憩を促すことができるものである。
【0059】
本実施形態では、ドライバが表示手段65に表示されたグラフを見ることによって自らの状態がどのような状態であるかを容易に把握できるものであり、それにより脳への刺激を促すものであるが、休憩が必要な状態か、入眠予兆信号が出現したかなどを自動的に判定する判定手段(判定ステップ)63を組み込むこともできる。
【0060】
判定手段63は、上記した恒常性維持機能段階のグラフにける基線の動きを監視し、例えば、
図11(c)、(d)のように、恒常性維持機能段階3〜5の範囲に基線が移動して、疲労の回復が見られないようになった状態に至ったならば、音、振動などによる警告を発するようにすることができる。本実施形態は、恒常性維持機能段階を視覚的に把握することで脳の活性化が生じ覚醒方向に誘導されるものであるが、判定手段63によるいわば監視システムを含めることで、音、振動などの警告を併用することもできる。特に、
図11(e)のような入眠予兆信号が出現した場合、例えば、3回出現した段階で、それを異常状態と判定し、より大きな警告音などを発する異常状態判定手段を設けた構成とすると、居眠り運転をより確実に抑制するのに役立つ。
【0061】
ここで、上記出力手段62は、人の恒常性維持機能レベルを時系列に折れ線グラフで表示させるものであるが、表示手段65に、上記の折れ線グラフとは異なる表示を異なる画面で出力する別画面出力手段621を備える構成とすることができる。
図12(a)〜(e)は、この別画面出力手段621により表示手段65に出力された画像を示したものである。
【0062】
別画面出力手段621により表示される画面には、
図13に拡大して示した代表例のように、この実施形態では、恒常性維持機能段階1〜5に対応したイメージを中性的な人の顔の様子(上記折れ線グラフの縦軸の顔のイメージ図と同じ)を示した第1画像部622と時系列のグラフからなる第2画像部623とが表示される。第1画像部622は、中心に顔イメージ表示部622aと、その下部の心拍数表示部622bと、その上部の文字表示部622cと、右側に表示された入眠予兆信号表示部622dとを有している。顔イメージ表示部622aには、恒常性維持機能レベル演算手段61により求められる恒常性維持機能段階に応じて、別画面出力手段621が各恒常性維持機能段階に対応する顔のイメージを表示する。また、文字表示部622cには、別画面出力手段621が各恒常性維持機能段階に応じて設定した文字、例えば、「イイ調子」、「大丈夫」、「普通状態」、「運転注意」、「疲労状態」などを表示する。また、入眠予兆信号表示部622dは、5つの表示ランプを有しており、
図11(e)に示したような入眠予兆信号を生じた場合に、その出現個数が各表示ランプに点灯するようになっている。これにより、人は、表示ランプの点灯を見て、休憩が必要なタイミングを自覚することができる。
【0063】
第2画像部623には、その上部表示部623aに、生体信号測定手段1により検出された背部の大動脈の動きによる圧力変動の信号(エアパック信号)の時系列波形のグラフが表示され、下部表示部623bに、周波数の傾きの時系列波形のグラフが表示される。
【0064】
別画面出力手段621により表示される第1画像部622、第2画像部623の各画像部は、これらの表示に限定されるものではないが、特に、第1画像部622の顔イメージ表示部622a、文字表示部622c及び入眠予兆信号表示部622dをドライバが視認することにより、現在の状況を容易に把握できる。但し、第1画像部622の表示は、ある瞬間における状態を示すだけであるため、画面を見て、自らの状態変化を経時的に把握し、将来の自分の状態変化を予測することで、休憩の有無を強く意識しやすいことから、運転中は、
図11に示したような折れ線グラフの画面をドライバが視認できるようにすることが好ましい。
【0065】
なお、始動時において、
図11の折れ線グラフの画面を表示させるか、
図12の第1画像部622,第2画像部623の画面を表示させるかは任意に設定できるが、本実施形態では、初期画面として、
図12及び
図13に示した、第1画像部622,第2画像部623の画面を表示させ、「START」ボタンを押すと、測定が開始され、恒常性維持機能レベル演算手段61による演算が始まるようにしている。そして、「履歴」ボタンを押すと、
図11の折れ線グラフの画面が表示されるように設定している。すなわち、その瞬間における変化を
図12及び
図13に示した第1画像部622,第2画像部623からなる画面により表示し、過去の履歴を含んだ時系列の変化を
図11に示した折れ線グラフの画面により表示する。また、本実施形態では、運転中、
図11の折れ線グラフの画面が表示されるようにするために、「START」、「履歴」の各ボタンを操作するようにすることで手指の動きによって脳の活性化が図られるという利点もある。また、本実施形態によれば、
図11の折れ線グラフの画面、
図12の第1画像部622(特に心拍数の部分)、第2画像部623の合計3つの画面を視認することになるが、3つの画面を見ることで、3つの画面から総合的に自らの状態を把握しようとするため、そのことも脳の活性化につながる。3つより少ない場合には脳の活性化効果が低く、3つより多い場合には煩雑になりすぎる。なお、「START」、「履歴」の各ボタン操作は運転の支障にならないように、ハンドル付近に設けておくなどすることが好ましいことはもちろんである。
【0066】
次に、恒常性維持機能レベル演算手段(恒常性維持機能レベル演算ステップ)61に設定した具体的な演算手法について説明する。すなわち、恒常性維持機能レベル演算手段61は、周波数演算手段(周波数演算ステップ)611、周波数傾き時系列解析演算手段(周波数傾き時系列解析演算ステップ)612、周波数変動時系列解析演算手段(周波数変動時系列解析演算ステップ)613、微分手段(微分ステップ)614、積分手段(積分ステップ)615、方形波算出手段(方形波算出ステップ)616、記述関数算出手段(記述関数算出ステップ)617、絶対値処理手段(絶対値処理ステップ)618、恒常性維持機能段階算出手段(恒常性維持機能段階算出ステップ)619とを備えてなる。
【0067】
周波数演算手段611は、生体信号測定手段1から得られるエアパック信号の時系列データ(好ましくは後述のようにフィルタリング処理された所定の周波数領域のエアパック信号フィルタ波形)における周波数の時系列波形を求める。この時系列波形の求め方には2種類あり、第1の手法は、副交感神経機能の指標として用いられるHFに関するもので、第2の手法は、交感神経機能の指標として用いられるLF/HF(なお、LFは0.05−0.20Hzの周波数成分、HFは0.20−0.35Hzの周波数成分である)に関するものである。
【0068】
第1の手法は、エアパック信号の時系列波形を平滑化微分して極大値(ピーク)を用いて時系列波形を求める方法(以下、「ピーク検出法」という)である。ピーク検出法は、基本は、HFの機能に相当する時系列波形であり、LF/HFの代償機能に相当する波形が重畳されることもある時系列波形である。例えば、SavitzkyとGolayによる平滑化微分法により極大値を求める。次に、例えば5秒ごとに極大値を切り分け、その5秒間に含まれる時系列波形の極大値(波形の山側頂部)間の時間間隔の逆数を個別周波数fとして求め、その5秒間における個別周波数fの平均値を当該5秒間の周波数Fの値として採用する(
図9の[1]のステップ)。そして、この5秒毎に得られる周波数Fをプロットすることにより、周波数の時系列波形を求める(
図9の[2]のステップ)。
【0069】
第2の手法は、エアパック信号の時系列波形において、正から負に切り替わる地点(以下、「ゼロクロス地点」という)を用いて時系列波形を求める方法(以下、「ゼロクロス法」という)である。このゼロクロス法は、脈波の周波数の基本成分を捉えるもので、LF/HFに相当するものである。この方法では、まず、ゼロクロス地点を求めたならば、それを例えば5秒毎に切り分け、その5秒間に含まれる時系列波形のゼロクロス地点間の時間間隔の逆数を個別周波数fとして求め、その5秒間における個別周波数fの平均値を当該5秒間の周波数Fの値として採用する(
図9の[1]のステップ)。そして、この5秒毎に得られる周波数Fをプロットすることにより、周波数の時系列波形を求める(
図9の[2]のステップ)。
【0070】
周波数傾き時系列解析演算手段(周波数傾き時系列解析演算ステップ)612は、周波数演算手段611によって、ピーク検出法又はゼロクロス法を用いて得られたエアパック信号の周波数の時系列波形から、所定の時間幅の時間窓を設定し、時間窓毎に最小二乗法により該エアパック信号の周波数の傾きを求め、その時系列波形を出力する構成である。周波数傾き時系列解析演算手段612により得られる周波数傾き時系列波形は、交感神経及び副交感神経の発現のバランスを捉えた生体のゆらぎを示すものとして出力される。具体的には、まず、ある時間窓Tw1における周波数の傾きを最小二乗法により求めてプロットする(
図9の[3],[5]のステップ)。次に、オーバーラップ時間Tl(
図9の[6]のステップ)で次の時間窓Tw2を設定し、この時間窓Tw2における周波数の傾きを同様に最小二乗法により求めてプロットする。この計算(移動計算)を順次繰り返し、エアパック信号の周波数の傾きの時系列変化を周波数傾き時系列波形として出力する(
図9の[8]のステップ)。なお、時間窓Twの時間幅は180秒に設定することが好ましく、オーバーラップ時間Tlは162秒に設定することが好ましい。これは、本出願人による上記特許文献3(WO2005/092193A1公報)において示したように、時間窓Twの時間幅及びオーバーラップ時間Tlを種々変更して行った睡眠実験から、特徴的な信号波形が最も感度よく出現する値として選択されたものである。
【0071】
周波数変動時系列解析演算手段(周波数変動時系列解析演算ステップ)613は、周波数演算手段611により得られたエアパック信号の周波数の時系列波形(
図9の[2]のステップ)に、所定の時間幅の時間窓(好ましくは180秒)を設定し、周波数の平均値を求める(
図9の[3],[4]のステップ)。次に、所定のオーバーラップ時間(好ましくは162秒)で設定した所定の時間窓(好ましくは180秒)毎にエアパック信号の周波数の平均値を求める移動計算を行い、プロットする。そして、時間窓毎にプロットされた周波数の平均値の時系列変化を周波数変動時系列波形として出力する(
図9の[7]のステップ)。そして、周波数傾き時系列波形と周波数変動時系列波形とを併せて出力すると
図9[9]のステップのようになる。なお、周波数変動時系列波形から心拍数が求められる。
【0072】
ここで、ピーク検出法は、生体信号の波形の乱れ、波形の状態を検出しているのに対し、ゼロクロス法は周波数成分を検出している。すなわち、両者が一致している時は、周期関数に近似していることを意味し、乖離している時は、波形に複数の成分が重畳されていることを意味している。波形の乱れは、低周波成分に高周波成分が重畳されたり、低周波成分にさらに低周波成分が重畳されたりしている状態を示し、振幅の増大や減少となり、交感神経の亢進や低下に対応し、これが過緊張・我慢、放心、リラックス、慢然、賦活化の各状態に関係する。従って、ピーク検出法及びゼロクロス法のそれぞれにより求めた周波数傾き時系列波形を絶対値処理して両者を比較することにより、交感神経系が亢進した過緊張状態や我慢状態にあるか、副交感神経優位のリラックス状態にあるかの大雑把な状態判定を行うことができる。その一方、周波数傾き時系列波形から記述関数を求める場合、並びに、周波数変動時系列波形から心拍数の増減等を求める場合には、ゼロクロス法により得られる周波数の時系列波形を用いることが好ましい。これは、記述関数の算出目的が、波形の変化度合いを見ることで、活動代謝にあるか、安静代謝の中での変化の状態にあるか、あるいは、各代謝の中での活性度合・機能の低下度合を知ることにあるためである。
【0073】
微分手段(微分ステップ)614は、周波数傾き時系列解析演算手段612により求めた周波数傾きの時系列波形を微分し、周波数傾き時系列波形の瞬間的な変動率を見る。
【0074】
積分手段(積分ステップ)615は、周波数傾き時系列解析演算手段612により求めた前記周波数傾きの時系列波形を積分し、周波数傾き時系列波形の時間経過による累積を見る。
【0075】
方形波算出手段(方形波算出ステップ)616は、周波数傾き時系列解析演算手段612により求めた周波数傾きの時系列波形のピークを求め、包絡線を作成し、包絡線の傾きから増減傾向を求めて方形波を描く。すなわち、包絡線の傾きが増加傾向の区間はプラス、減少傾向の区間はマイナスとして方形波を描く。
【0076】
記述関数算出手段(記述関数算出ステップ)617は、任意に設定した第1時間帯における周波数傾き時系列波形を高速フーリエ変換すると共に、第1時間帯よりも後の第2時間帯における周波数傾き時系列波形を高速フーリエ変換して、「第2時間帯における高速フーリエ変換(a
2+i・b
2・・・(a
2は実数部、b
2は虚数部)/第1時間帯における高速フーリエ変換(a
1+i・b
1・・・(a
1は実数部、b
1は虚数部)」により両者間の記述関数(等価伝達関数)を求める手段である。つまり、第1時間帯における周波数傾き時系列波形を入力関数とし、第2時間帯における周波数傾き時系列波形を出力関数として、両者間の記述関数を求めることにより、基本の状態が相殺され、変化の様子が残り、第1時間帯と第2時間帯における人の恒常性維持機能の変化を捉えるものである。なお、第1時間帯及び第2時間帯は、各時間帯における周波数傾き時系列波形の関数を求めることができる時間幅であればよく限定されるものではなく、例えば、半周期分から3周期分(例えば約3分間から約20分間)の範囲で設定できる。統計的に所定の範囲に設定してもよいし、個人毎に第1時間帯及び第2時間帯の時間幅を設定できるようにしてもよい。
【0077】
得られた記述関数は「(a
1a
2+b
1b
2)/(a
12+b
12)+i(a
1b
2−a
2b
1)/(a
12+b
12)」で表される。そして、「(a
1a
2+b
1b
2)/(a
12+b
12)」=A、「i(a
1b
2−a
2b
1)/(a
12+b
12)」=Bとおき、「A
2+B
2」の平方根を記述関数振幅値として求める。そして、この記述関数振幅値により、2つの時間帯における状態変化を捉える。値の設定は任意であり個人毎に設定することもできるが、統計的に所定の値に設定するようにしてもよい。すなわち、所定の値あるいは値の範囲にある場合に、安静状態、漫然状態、交感神経代償作用の働いている状態等という設定を行うことができる。
【0078】
絶対値処理手段(絶対値処理ステップ)618は、周波数傾き時系列解析演算手段612により得られる周波数傾き時系列波形を絶対値処理して出力する。このとき、絶対値処理手段618は、ピーク検出法を用いた場合とゼロクロス法を用いた場合の双方で得られた周波数傾き時系列波形を絶対値処理して出力する。具体的には、周波数演算手段611が、ピーク検出法を用いて生体信号の周波数の時系列波形を求めると共に、ゼロクロス法を用いて生体信号の周波数の時系列波形を求める。そして、周波数傾き時系列解析演算手段612が、ピーク検出法及びゼロクロス法による各周波数の時系列波形のそれぞれについて、周波数傾き時系列波形を求め、各周波数傾き時系列波形について絶対値処理手段618が絶対値処理する(
図9[10]のステップ)。
【0079】
上記のように、ピーク検出法は低周波成分に高周波成分が付加された生体信号の波形の乱れを検出しているのに対し、ゼロクロス法は生体信号の低周波成分を検出しており、波形の乱れは少ない。すなわち、両者が一致している時は、重畳成分が少ないことを意味し、乖離している時は、重畳成分が多く含まれていることを意味している。従って、絶対値処理手段618により得られた2つのデータを比較することで、交感神経系が亢進した過緊張状態あるいは我慢状態にあるか、交感神経の低下により副交感神経優位となるか、交感神経の低下を伴わずに副交感神経が優位となりリラックス状態に誘導されるか、あるいは交感神経・副交感神経共に低下することによる機能低下状態又は休息必要状態にあるかの状態判定を行うことができる。すなわち、絶対値処理手段618により、ゼロクロス法を用いて算出した絶対値がピーク検出法を用いて算出した絶対値よりも高い場合には交感神経亢進の状態であり、逆の場合は副交感神経優位な状態であると判定できる(
図8(a)参照)。
【0080】
恒常性維持機能段階算出手段(恒常性維持機能段階算出ステップ)619は、周波数傾き時系列解析演算手段612により求めた周波数傾き、微分手段614により求めた微分値、積分手段615により求めた積分値、方形波算出手段617により求めた方形波の正負、記述関数算出手段618により求めた記述関数振幅値、及び絶対値処理手段619により求めた周波数傾き時系列波形の2つの絶対値のうち、少なくとも1つ以上を用いて恒常性維持機能レベルの段階を求める。これらの組み合わせにより、上記の恒常性維持機能段階1〜5のいずれに該当するかを求める。例えば、周波数傾きと積分値を用いて、所定以上の場合に「恒常性維持機能段階1」と判定し、あるいは、微分値が所定位置以下であって、方形波が「負」、記述関数振幅値が所定値以上、かつ、2つの絶対値のうちの「ピーク優位」の場合に「恒常性維持機能段階4」と判定するように設定できる。これらの組み合わせ、判定の際の閾値等は限定されるものではなく、複数の被験者のデータを統計処理して決定することもできるし、個人毎に設定することもできる。
【0081】
なお、恒常性維持機能段階算出手段619による状態判定は、各指標を次のように組み合わせて行うことが好ましい。
【0082】
(1)恒常性維持機能段階1の判定:
・ゼロクロス法による周波数傾き時系列波形が正の場合、
又は、
・ゼロクロス法による周波数傾き時系列波形の積分波形が正の場合
これらの波形が正の場合、人の交感神経活動が優位となっているため、高活性状態と判定するのに適しているからである。
【0083】
(2)恒常性維持機能段階2の判定:
・ゼロクロス法による周波数傾き時系列波形が負の場合において、今回の傾きと前回の傾きとの比が所定値以上で、この比の出現が所定回数以下の場合、
又は、
・積分波形が所定の値の範囲の場合
周波数傾き時系列波形が負の場合であっても、所定値以上であればあるいは積分波形が所定の値の範囲内であれば、ある程度の活性状態が維持されているからである。
【0084】
(3)恒常性維持機能段階3の判定:
・ゼロクロス法による周波数傾き時系列波形が負の場合において、今回の傾きと前回の傾きとの比が所定値以上で、この比の出現が所定回数以上の場合、
又は、
・積分波形が所定の値の範囲(恒常性維持機能段階2の場合よりも低い範囲)の場合、
又は、
・微分波形が所定の値以下の場合
これらの範囲で交感神経と副交感神経のバランスが良い状態を示すからである。
【0085】
(4)恒常性維持機能段階4の判定:
・微分波形が所定の値以下(恒常性維持機能段階3の場合よりも低い値)の場合、
又は、
・積分波形が所定の値の範囲(恒常性維持機能段階3の場合よりも低い範囲)の場合、
又は、
・傾き時系列波形の記述関数振幅値が所定値以上であって、方形波が負、かつ、ピーク検出法で算出した絶対値がゼロクロス法による絶対値よりも優位の場合
これらの範囲で、副交感神経活動が徐々に優位になる傾向を示すからである。
【0086】
(5)恒常性維持機能段階5の判定:
・微分波形が所定の値以下(恒常性維持機能段階4の場合よりも低い値)の場合、
又は、
・積分波形が所定の値以下(恒常性維持機能段階4の場合の下限値よりも低い値)の場合、
又は、
・傾き時系列波形の記述関数振幅値が所定値以上(恒常性維持機能段階4の場合よりも高い値)であって、方形波が負、かつ、ピーク検出法で算出した絶対値がゼロクロス法による絶対値よりも優位の場合
これらの範囲で、副交感神経活動が優位となり、機能低下によって疲労を感じるからである。
【0087】
(6)入眠予兆の判定:
・ゼロクロス法で算出した絶対値がピーク検出法による絶対値よりも優位の場合であって、方形波が正、かつ、恒常性維持機能段階を示すグラフが2段階以上下がる場合
ゆらぎの範囲を逸脱する大きな動きであり、このような現象が生じた後にマイクロスリープが出現するからである。
【0088】
ここで、本出願人が従来行っている周波数傾き時系列波形と周波数変動時系列波形とを用いた判定は、入眠予兆信号という人の代謝変化に起因する状態を主として判定するものであった。つまり、時間経過と共に一方的に肉体が疲れていく過程を主として見ているものであった。しかしながら、本実施形態の恒常性維持機能段階算出手段619により表示される
図11(a)〜(e)のような折れ線グラフによる表示は、上記したように、周波数傾き、微分値、積分値、方形波の正負、記述関数振幅値、及び絶対値の各指標を複数組み合わせて行われるため、代謝作用による人の状態変化だけでなく、各状態における恒常性維持機能の復元性能、減衰性能が示唆され、かつ、脳の刺激に伴う賦活化及び状態変化も併せて見ることができる。そのメカニズムを説明すると次の通りである。
【0089】
まず、睡眠状態は代謝のエネルギーが最少レベルにあり、平常・運動状態ではエネルギーレベルが高位の状態にあり、安静状態はその中間に位置する。リラックス状態での定常運転状態では安静状態に近いエネルギーレベルになる。一方、睡眠との戦い、周辺状況への配慮・注意、危険運転などでは心拍数が上昇し、平常・運動状態に近いものとなる。各状態における恒常性の維持は、個人の身体・精神能力によって決まるゆらぎ幅を逸脱しないように調整が行われている。
【0090】
人の状態変化は、低次元カオスによって、特徴抽出が可能であることが知られている。睡眠状態での恒常性維持機能のゆらぎはカオティックに変動し、平常・活動状態ではランダムあるいは周期的(以下、非カオス的と呼ぶ)に変動する。この非カオス的な変動を示している状態では、外的ストレスなどの環境変化への適用性が乏しくなる。ドライバーが車を運転している状態で、カオティックな変動を示している状況の下では、ドライバーは外部振動を知覚し難くなり、呼吸や心拍のゆらぎに影響を受け難い。すなわちカオティックな変動は恒常性維持のためのエネルギー消費量を最少限にし、疲労の進行を抑制する。この状態のドライバーはリラックス状態に誘導され、交感神経の過度な緊張が軽減される。一方、非カオス的な変動状態ではドライバーに外部振動が伝わりやすく、呼吸や心拍に影響を与え、各器官に無駄な力が入り、の抵抗疲労感を生む。この疲労感がエネルギー消費量を増大させ、疲労の進行の勾配が大きくなる。ここで人は、交感神経優位な状態となる。
【0091】
人体の恒常性維持機能をばね−マス−ダッシュポット系で置き換えて考えてみた。ばね系はエネルギーを蓄え力に変換する機能で、これを交感神経系とした。一方、ダッシュポット系はエネルギーを減衰させる機能で、これを副交感神経系とした。マスは、生命維持機能である心循環器系とした。生命維持機能の恒常性維持を受け持つ中枢系と、外界からの刺激を緩和する末梢系の恒常性維持機能の2つの機能で生体の制御を行うこととした。これら2つの機能の特性は非線形性を含むため、記述関数として表される。背部に置かれたエアパックセンサは、主に中枢系に近いところの状態を捕捉する。エアパックセンサで捉えられた信号は、心臓の動きによる大動脈の揺れである。
【0092】
人は恒常性の維持を自律神経系で制御する。副交感神経は、大きな変動は起こさない。従って、副交感神経優位は、交感神経の機能低下で生じる。つまり、心拍数の安定性は交感神経と副交感神経のバランスで制御される。心拍数の過度の上昇は副交感神経で抑制される(結果として迷走迷走神経反射が起こり、徐脈になる。)。人は交感神経と副交感神経のバランスのとれた自然体の状態、交感神経が亢進した緊張状態、交感神経も副交感神経も機能低下する疲労状態、副交感神経優位な回復期にあたるリラックス状態があり、これらの組み合わせが変化に対応する柔軟性を産み、恒常性を維持する助けとなる。
【0093】
これらのことから、人の状態を推定していくには、自律神経系の変化を逆問題として解いていくことであり、生体のゆらぎの微分情報、交感神経と副交感神経のゆらぎの出現度合いから、まず緊張状態かリラックス状態かを判定する(
図8(a))、次にゆらぎ波形の特徴のある変化を見て、活性状態、安静状態、機能低下状態あるいはそれらの遷移状態にあるかを判断する(
図8(b))。次いで、過去の状態の組み合わせから、その後の状態を推定する(
図8(c))。過去の状態の組み合わせとは、交感神経の亢進を表すゆらぎ波形の突出の状態とその出現回数、疲労の急激な進行(恒常性維持機能の急激な変化)の状態、その急激変化の回数、心拍の周波数の変動の傾向を表す方形波の情報である。これが入眠予兆現象などの推定に役立つ。
【0094】
一方、精神疲労と肉体疲労の寄与率に応じた疲労の仕方を考えた場合、従来、疲労の自然な進行として、疲労感を感じていない段階、疲労感を交感神経の代償作用で補い疲労感を感じていない状態、疲労感を覚え、ヒューマンエラーが発生する段階の3つの段階があると言われている。
【0095】
しかし、緊張状態では、精神疲労の寄与率が高く、リラックス状態では肉体疲労が疲労の進行を支配すると考えられる。ところが、従来の疲労の進行の考え方では、脳機能の活性化による疲労の抑制が考慮されていない。一般的な運転環境下では、疲労の進行度合いに拘わらず、脳機能の活性化が生じる。この脳機能の活性化には創造性や好奇心などがあり、これらは覚醒誘導をもたらす。
【0096】
このことは、
図11(a)〜(e)に示したように、生体ゆらぎ(代謝作用)による増減だけでなく、恒常性維持機能段階が急に元に戻る過程が生じたり、時間経過によっても恒常性維持機能段階がほとんど進行しない過程が見られることがわかる。つまり、単に、人の肉体が疲れている様を示しているのではなく、疲労に対する許容量の拡大過程をも示すグラフになっていると考えられる。疲労に対する許容量の拡大は、脳から指令によるもの、つまり脳の賦活化に起因する活性化によるものであり、このグラフは、代謝作用による人の状態変化だけでなく、脳の作用による人の状態(特に、「心のありさま(情態)」)の変化をも捉えているものと言える。従って、本発明において、「人(生体)の状態」の推定には、代謝作用に起因した状態変化だけでなく、恒常性維持機能のゆらぎの状態を通して、その性能劣化の様子から疲労の進行を推断すること、また、脳の賦活化に起因する再活性による状態変化を推定することも含む。
【0097】
上記生体状態推定装置60による状態推定過程を
図7のフローチャートに基づき説明すると、まず、生体信号測定手段1により背部の大動脈の動きによるエアパック信号を得る(S101)。なお、S101のエアパック信号は、エアパックの圧力変動の信号そのものではなく、所定のフィルタリング(生体信号以外のノイズ信号を低減するアナログフィルタリング処理)を施した後の信号である。このエアパック信号を周波数演算手段611により処理することもできるが、より精度を高めるために、このエアパック信号にさらにフィルタリング手段を施し(S102)、解析に必要な周波数領域の信号波形(エアパック信号デジタルフィルタ波形)を得ている(S103)。このさらなるフィルタリング手段(以下、「デジタルフィルタリング手段」という)は、自動車の走行時において車体フロアから入力される振動(ノイズ)をできるだけ除去するものである。そのため、このデジタルフィルタリング手段は、静的環境下(なお、本明細書でいう「静的環境下」には、エンジンが始動しておらず全く振動の入力がない測定環境のほか、実質的な静的環境下(すなわち静的相当環境下)と言えるアイドリング状態(走行時のように路面凹凸に起因する振動が入力されない状態)での測定環境下も含む意味である)において、数秒間から数十秒間、生体信号測定手段1により生体信号を測定して、その平均周波数を求め、該平均周波数を基準値としてフィルタリングする周波数帯域(下限周波数と上限周波数)を設定する構成である。これにより、走行時に路面から車体フロアを介して入力される振動波形の混入が少なくなり、人の恒常性維持機能段階が同じとした場合における、上記デジタルフィルタリング手段を適用した静的環境下において得られるエアパック信号フィルタ波形と走行時に得られるエアパック信号デジタルフィルタ波形とがほぼ同じ波形となる。
【0098】
なお、デジタルフィルタリング手段において基準となる平均周波数の求め方は限定されるものではないが、本実施形態では、生体信号測定手段1により得られた生体信号そのものの波形(すなわち圧力波形)を微分(好ましくは2階微分)し、微分波形に全波整流を適用し、さらにローパスフィルターを適用する。ローパスフィルターのフィルタリング周波数は、背部大動脈の動きによる生体信号の一般的な周波数である1〜3Hzの範囲で適宜に設定される。ローパスフィルターを適用した波形からピークを求め、さらにピークの時間間隔から平均周波数を求める。この手法によるフィルタリングを施して得られた波形を
図10(a),(b)に示す。
図10(a)は静的相当環境下であるアイドリング状態におけるエアパック信号波形とエアパック信号デジタルフィルタ波形との比較であり、
図10(b)は運転時(走行時)におけるエアパック信号波形とエアパック信号デジタルフィルタ波形との比較である。この図から、エアパック信号波形は、運転時(走行時)においては静的相当環境下であるアイドリング状態と異なり、上下に突出する乱れた波形を示しているのに対し、エアパック信号デジタルフィルタ波形の場合は、静的アイドリング状態と運転時(走行時)とにおいてほぼ同じ波形となっている。従って、走行前のアイドリング状態(静的相当環境下)で予め生体信号を測定し、それを基準としてフィルタリングすることは高い精度の測定結果を得るために非常に好ましい。
【0099】
S103において得られたエアパック信号フィルタ波形は、周波数演算手段611によって処理され、該エアパック信号フィルタ波形の周波数の時系列波形がゼロクロス法及びピーク検出法により求められる(S104)。次に、ゼロクロス法によるエアパック信号フィルタ波形の周波数の時系列波形を用いて、周波数傾き時系列波形、その微分波形(微分値)、積分波形(積分値)、方形波、記述関数(記述関数振幅値)を求めると共に、ゼロクロス法の周波数傾き時系列波形とピーク検出法による周波数傾き時系列波形を絶対値処理した波形を求める(S105)。次に、恒常性維持機能段階算出手段619により恒常性維持機能段階を判定し(S106)、出力手段62により表示手段65に出力する(S107)。
【0100】
(試験例1)
本実施形態に係るエアパック10を備えた生体信号測定手段1により検出された背部の大動脈の動きによる圧力変動の信号(エアパック信号)の有効性を検証する試験として、心電図との比較を行った。
【0101】
被験者は20歳代〜30歳代の計4名(男性2名、女性2名)である。測定項目は心電図と、人体各部位に当接したエアパックから得られた圧力変動の信号(エアパック信号)である。エアパック信号は、上記実施形態の自動車用シート500とベッド用マットレスを使用して、頸部、上腕、橈骨、大腿から採取した。実験は座位、仰臥位にてそれぞれ3分間計測して行った。
【0102】
図14は、30歳代女性被験者の心電図とエアパック信号の比較結果であり、
図14(a)はエアパック信号と心電図の原波形の一部を示す。心電図とエアパック信号の原波形を比較すると心電図のピーク値(R波)はエアパック信号の極小値とほぼ一致していることがわかる。
図14(b)はエアパック信号と心電図から算出した心拍周波数時系列波形を比較した結果を示す。心拍周波数は座位、仰臥位共に心電図と背部、頸部で波形の一致がみられる。他の3名も同様の結果であり、特に心電図と背部エアパック信号は安定した一致をみせた。また、仰臥位の状態においても、体動により一時的に乱れても、その後心電図との高い相関を示し、乱れたまま崩れていくことはなかった。
【0103】
背部エアパック信号は心臓に最も近い部位から得た生体信号であり、心電図との相関性も高いことから、背部に設けられたエアパックセンサは心臓の動きによる大動脈の揺れを捕捉していると考えられる。また、心電図とエアパック信号の原波形の極性反転は、心臓が収縮している収縮期の動脈血管の拡張と心臓が弛緩して、血液の流入により拡張している拡張期の動脈血管の収縮の関係に相当するものと考えられる。
図14(b)上のA,B,C部に示す心電図とエアパック信号の大きなずれは体動によるものである。つまりエアパック信号は、体動による変化も敏感に捉えることができると考えられる。そして、拘束性の高い自動車用シートの被験者の微小な体動は
図14(a)のA,B,C部のように捉えることはできないが、大きな運転動作による体動(体を前に大きくせり出した場合など)は
図14(b)のA,B,C部のように捉えることができる。これらの体動は、人が通常とは異なる不安定状態、あるいは異常状態になった時に生じることから、エアパックセンサにより信号を検知できなくなった途端に何らかの異常事態であると判定することもできる。
【0104】
(試験例2)
−解析例1−
(試験条件)
50歳代の男性被験者A、40歳代の女性被験者B及び40歳代の男性被験者Bの3名を、広島県東広島市から富山県黒部市まで自動車で3日間かけて往復させた。1泊目は黒部市に宿泊し、2泊目は京都市に宿泊した。1日目は、東広島市から黒部市に向かい、2日目は、黒部市から京都市に向かい、3日目は、京都市から大阪市に向かって打ち合わせを行った後に東広島市に向かった。また、3名の被験者は中途で適宜に運転を交代しながら試験した。試験に用いた車両の運転席には、本実施形態のエアパック10をシートバック部510に内蔵させたシート500を搭載した。結果を
図15〜
図30に示す。各図において(a)は、ゼロクロス法を用いた周波数傾き時系列解析演算手段612から得られた周波数傾き時系列波形(図では「エアパック脈波周波数傾き」と表示)と、周波数変動時系列解析演算手段613から得られた周波数変動波形(図では「エアパック脈波周波数変動」と表示」)を示した。(b)は、(a)の周波数傾き時系列波形を用いて、記述関数算出手段617により得られた記述関数(伝達関数)の推移を示し、(c)は、(a)の周波数傾き時系列波形を用いて、方形波算出手段616から得られた方形波の推移を示す。(d)は、(a)〜(c),(f)の各データ等を用いて、恒常性維持機能段階算出手段619により算出された恒常性維持機能段階の推移(判定結果)を示したものである。(e)は、絶対値処理手段618により得られたピーク検出法による絶対値とゼロクロス法による絶対値とをそれぞれ積分したグラフである。(f)は、絶対値処理手段618により得られたピーク検出法による絶対値とゼロクロス法による絶対値との時系列の推移を示したものでる。(g)は、周波数傾き時系列波形の積分波形を示したものである。
【0105】
(考察)
主として、各図の(d)に示した判定結果と各被験者の実際の様子とを基に説明する。
(1)男性被験者A 黒部方面1(往路)(
図15)
計測開始〜2000秒前後までは疲労感はあるものの、比較的調子の良い状態が続いている。疲労感の軽減は生体ゆらぎによるもので、交感神経の代償作用は生じていないと思われる。その後入眠予兆現象が発現し、疲労が進行して行った。そして、3000秒強で眠気が発生し運転を交代した。
【0106】
(2)女性被験者B 黒部方面2(往路)(
図16)
1800〜3000秒間は調子の良い状態が続いた。それ以外は混雑(追い越し車線をのろのろ走行の車に車線をふさがれて)でイライラ運転であった。4200秒強で眠気の発生が認められる。
【0107】
(3)男性被験者A 黒部方面3(往路)(
図17)
最初の600秒間は調子の良い状態が続いたが、その後渋滞が発生し疲労状態に入った。この間の疲労は精神的なものが大きく、5100秒強で最初の入眠予兆信号が発現した。その後は交感神経の代償作用が機能し、9600秒強で二回目の入眠予兆信号が生じた。渋滞のイライラと夜間運転と緊張による疲労感で、2回の入眠予兆信号の発現で夕食をとった。
【0108】
(4)男性被験者A 黒部方面4(往路)(
図18)
夕食後元気が出たが、その元気は長続きせずに1200秒強で眠気に対抗する交感代償作用が発現した。その後は2000秒までは交感神経の亢進で元気な状態が続いた。途中交感神経のレベルが下がって副交感優位な状態になり、1回目の入眠予兆信号が生じた。2300秒以降は緊張感の低下と共に、自然な疲労の進行が認められた。
【0109】
(5)女性被験者B 黒部方面5(往路)(
図19)
計測開始時から交感代償作用が発現し、緊張を伴った疲労状態にある。1000秒強から1850秒の間で、リラックス状態で脳機能の活性が生じたと思われる区間があり、その後疲労が回復傾向になり、やや疲労感があるものの高活性状態に誘導されている。これは脳機能の活性がリラックス状態に誘導し、疲労の回復を促したと思われる。
【0110】
(6)男性被験者A 黒部方面6(往路)(
図20)
助手席における睡眠の効果があり1200秒強までの間、疲労感を感じていない状態がある。その後自然な覚醒度の低下があるが、これはサーカディアンリズムの低下に連動するものと思われる。
【0111】
(7)男性被験者A 京都方面1(復路)(
図21)
開始より700秒間は、前日の疲れの影響がある。その後は、道に迷ったために色々と考えている。この思慮による効果で脳機能の活性化が生じたものと思われる。脳機能の活性が収まると、反動で疲労が進行していった。
【0112】
(8)男性被験者A 京都方面2(復路)(
図22)
打ち合わせ後の疲労感が生体ゆらぎを大きくし、一気に疲労状態に陥っている。男性被験者Aは空腹感を覚えていたが、1100秒付近でパン屋を発見したことに起因し、一気に覚醒度が上昇している。
【0113】
(9)男性被験者A 京都方面3(復路)(
図23)
パンを食することで注意散漫になり、運転注意が表示された。その後リラックス状態の中で緩やかに疲労感が軽減されていった。途中交感神経のレベルが下がり、二度ほど眠気が生じた。その後生体ゆらぎが生じ再度覚醒方向に振れていった。
【0114】
(10)女性被験者A 京都方面4(復路)(
図24)
運転開始直後から疲労感があり、交感神経の亢進が認められる。緊張状態が続き、運転終了間際に眠気が生じた。
【0115】
(11)男性被験者A 京都方面5(復路)(
図25)
当初から疲れがあり、ゆらぎながら恒常性を維持しようとしている。機能低下が認められ交感代償作用が2400秒前後から発現した。その後、眠気が生じたが、交感代償作用により持ち直した。その後、緊張が解けてリラックス状態になることにより、疲労感が出てきたものと思われる。
【0116】
(12)男性被験者A 京都方面6(復路)(
図26)
休憩後運転を再開したが休憩中仕事上の電話を受けていた。運転開始当初は、休憩前の状態にすばやく戻っていった。その後は、電話内容に起因すると思われるイライラが続いている。4600秒以降は交感神経が亢進したままで、急速な機能低下と眠気が各一回生じた。
【0117】
(13)男性被験者A 京都方面7(復路)(
図27)
休憩後運転を再開した。休憩後、緊張と交感神経の亢進が解けて、一気に疲労感生じた。その疲労感の解消にリラックス状態の中で栄養ドリンクを飲むことで一時的に回復したが、その後は生体ゆらぎの幅が大きくなり、疲労感を軽減していった。栄養ドリンクはリラックス方向に誘導しながらの生体ゆらぎによる回復を促すと考えられる。
【0118】
(14)男性被験者B 東広島方面1(復路)(
図28)
疲労の蓄積は無い。揺らぎをうまく使いながら、緊張状態の中で疲労感に対処している。2550秒を超えたところで眠気が発生している。その後の機能低下は走行車線をふさぐ低速走行の車にイライラさせられることで生じた。
【0119】
(15)男性被験者B 東広島方面2(復路)(
図29)
食事と休息で疲労感が解消され、元気な状態になった。緊張感の反動で、眠気と大きな揺らぎが生じたが、交感代償作用による緊張状態で疲労感を感じていない状態にもどった。
【0120】
(16)男性被験者B 東広島方面3(復路)(
図30)
1200秒を過ぎたところで急激に疲労感が出てきた。交感代償作用で一時的にもどるが、長続きしない。最後は到着に対する期待感で緊張状態になり、疲労感が小さくなった。
【0121】
上記のことから、各被験者の実際の様子と、各図の(d)に示した判定結果から判断できる様子とがよく一致していると言える。
【0122】
(試験例3)
−解析例2−
(試験条件)
上記実施形態のエアパック10を内蔵したクッションを大型トラックの運転席のシートバック部に取り付けて、夜間の長距離運転によるドライバの状態推定に関する実験を行った。実験は東京−大阪間の約500kmの高速道路の往復路で実施した。午後10時頃東京を出発し、中間地点付近のサービスエリアで、1時間程度の休憩を取り、その後、大阪へ向けて実験を再開した。午前5時頃大阪に到着後、6〜8時間程度の睡眠を取り、午後10頃に東京へ向けて復路の実験を行った。復路も往路同様に、中間地点付近のサービスエリアで、1時間程度の休憩を取った。被験者は30歳代〜40歳代の健康な男性計4名である。計測に使用した生体信号は、背部から採れる圧力波形である。
【0123】
(考察)
図31(a)〜(d)は、被験者Aの東京−大阪間の往復で行われた疲労実験の結果を示す。縦軸は恒常性維持機能段階1〜5(図では正常(高活性状態)〜異常(機能低下状態))を示し、横軸は時間軸を示す。
図31(a)は往路の被験者Aの東京−美合間の恒常性維持機能の変化の様子を示す。ゆらぎの中心軸は、恒常性維持機能段階2ないし3にあり、それを基準にしてゆらぎが生じている。また、恒常性維持機能段階1の占める割合が全行程の52.5%になり、交感神経優位な緊張状態で頑張って運転していることが分かる。
【0124】
図31(b)は、復路の被験者Aの大阪−小笠間の疲労進行度合を示す。
図31(a)と同様に
図31(b)の被験者Aは、恒常性維持機能段階2ないし3を基準にしてゆらぎが生じている。異なるのは、恒常性維持機能段階1にある時間帯が少なくなる事である。確実に疲労の進行が早くなっており、長時間睡眠による完全な疲労回復に至っていないものと思われる。
【0125】
図31(c)は往路で休息後の被験者Aの美合−大阪間の疲労進行度合を示す。この行程では、休息前の状態とほぼ同様の様相を示した。したがって、休息は疲労回復に効果があるものと思われる。
図31(d)は復路で休息後の被験者Aの小笠−東京間の恒常性維持機能の変化の様子を示す。この行程では、
図31(c)の往路とは異なる現象を示すことから、休息は一時的な疲労回復に効果があるものの、蓄積された疲労には改善効果が無いことが伺われる。これら4つの事例から、往路で一時的であるが休息を挟む事によって恒常性維持機能の活性化が期待できることが示唆される。復路の休息は、疲労の蓄積により、改善効果は認められないものの、疲労の抑制効果は有るものと思われる。他の3名についても同様な結果が得られた。
【0126】
なお、時間経過と共に疲労が進行している場合であっても、恒常性維持機能レベルを時系列にプロットして示されるグラフが、生体のゆらぎに対応したゆらぎの範囲である場合(その時点のゆらぎのほぼ中心位置に対して、恒常性維持機能レベルで1段階から2段階の範囲)には、特に問題はない。そこで、その範囲であるか否かを視覚的に把握することを容易にするため、
図32(a),(b)に示したように、ゆらぎの範囲を明示するようにすることが好ましい。
図32(a)は中心に対するゆらぎの範囲を上下に伸びる矢印で示したものであり、
図32(b)は、上限を示すAラインと下限を示すBラインとにより取り囲んで示したものである。
【0127】
また、
図32(c)に示したように、入眠予兆信号が生じたことを時系列のグラフ中に明確に表示するため、恒常性維持機能段階1〜5の下に、「入眠予兆」の段階を表示する構成とすることもできる。グラフの急低下が生じ、判定手段63の異常状態判定手段により入眠予兆と判定された場合、そのときのグラフの下端を最下段に表示された「入眠予兆」段階まで引き延ばして表示する。これにより、入眠予兆信号が生じたタイミングを視覚的に容易に把握することができる。
【0128】
なお、生体信号測定手段としては、上記したエアパック10を用いたものに限らず、
図33に示したものを用いることもできる。
図33に示した生体信号測定手段200は、三次元立体編物210、三次元立体編物支持部材215、フィルム216、板状発泡体221,222、振動センサ230を有して構成される。
【0129】
三次元立体編物210は、
図1等に示した生体信号測定手段1と同様のものを用いることができる。三次元立体編物210は、厚み方向の荷重−たわみ特性が、測定板上に載置して直径30mm又は直径98mmの加圧板で加圧した際に、荷重100Nまでの範囲で、人の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性に近似したバネ定数を備えることが好ましい。具体的には直径30mmの加圧板で加圧した際の当該バネ定数が0.1〜5N/mmの範囲、又は、直径98mmの加圧板で加圧した際の当該バネ定数が1〜10N/mmであるものを用いることが好ましい。人の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性に近似していることにより、三次元立体編物と筋肉とが釣り合い、生体信号が伝播されると、三次元立体編物が人の筋肉と同様の振動を生じることになり、生体信号を大きく減衰させることなく伝播できる。
【0130】
板状発泡体221,222は、ビーズ発泡体により構成することが好ましい。ビーズ発泡体としては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンのいずれか少なくとも一つを含む樹脂のビーズ法による発泡成形体が用いることができる。ビーズ発泡体からなる板状発泡体221,222は、個々の微細なビーズを構成している発泡により形成された球状の樹脂膜の特性により、微小な振幅を伴う生体信号を膜振動(横波)として伝播する。この膜振動(横波)が三次元立体編物に弦振動として伝わり、これらの膜振動(横波)と弦振動が重畳され、生体信号は、膜振動(横波)と弦振動が重畳されることによって増幅された機械振動として、後述する振動センサ230により検出される。従って、生体信号の検出が容易になる。
【0131】
板状発泡体221,222をビーズ発泡体から構成する場合、発泡倍率は25〜50倍の範囲で、厚さがビーズの平均直径以下に形成されていることが好ましい。例えば、30倍発泡のビーズの平均直径が4〜6mm程度の場合では、板状発泡体221,222の厚さは3〜5mm程度にスライスカットする。これにより、板状発泡体221,222に柔らかな弾性が付与され、振幅の小さな振動に共振し、フィルム上を伝わる横波に減衰が生じにくくなる。なお、板状発泡体221,222は、本実施形態のように、三次元立体編物210を挟んで両側に配置されていても良いが、いずれか片側、好ましくは、シートバック側のみに配置した構成とすることもできる。
【0132】
ここで、三次元立体編物210は、幅40〜100mm、長さ100〜300mmの範囲の短冊状のものが用いられる。この大きさのものだと、三次元立体編物210に予備圧縮(連結糸に張力が発生する状態)を生じやすくなり、人と三次元立体編物210との間で平衡状態が作りやすい。本実施形態では、人が背部が当接した際の違和感軽減のため、脊柱に対応する部位を挟んで対象に2枚配設するようにしている。三次元立体編物210を簡単に所定位置に配置するようにするため、三次元立体編物210は三次元立体編物支持部材215に支持させた構成とすることが好ましい。三次元立体編物支持部材215は、板状に成形され、脊柱に対応する部位を挟んで対称位置に、縦長の配置用貫通孔215a,215aが2つ形成されている。三次元立体編物支持部材215は、上記板状発泡体221,222と同様に、板状に形成されたビーズ発泡体から構成することが好ましい。三次元立体編物支持部材215をビーズ発泡体から構成する場合の好ましい発泡倍率、厚さの範囲は上記板状発泡体221,222と同様である。但し、生体信号により膜振動(横波)をより顕著に起こさせるためには、三次元立体編物210,210の上下に積層される板状発泡体221,222の厚さが、三次元立体編物支持部材215の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0133】
三次元立体編物支持部材215に形成した配置用貫通孔215a,215aに、2つの三次元立体編物210,210を挿入配置した状態で、三次元立体編物210,210の表側及び裏側にフィルム216,216を積層する。なお、配置用貫通孔215a,215aの形成位置(すなわち、三次元立体編物210,210の配設位置)は、心房と大動脈(特に、「下行大動脈」)の拍出に伴う動きによって生じる揺れ及び大動脈弁の動き(心部揺動波)を検知可能な領域に相当する位置とすることが好ましい。この結果、三次元立体編物210,210は、上下面が板状発泡体221,222によりサンドイッチされ、周縁部が三次元立体編物支持部材215によって取り囲まれており、板状発泡体221,222及び三次元立体編物支持部材215が共振箱(共鳴箱)の機能を果たす。
【0134】
また、三次元立体編物支持部材215よりも、三次元立体編物210,210の方が厚いものを用いることが好ましい。つまり、三次元立体編物210,210を配置用貫通孔215a,215aに配置した場合には、三次元立体編物210,210の表面及び裏面が、該配置用貫通孔215a,215aよりも突出するような厚さ関係とする。これにより、フィルム216,216の周縁部を配置用貫通孔215a,215aの周縁部に貼着すると、三次元立体編物210,210は厚み方向に押圧されるため、フィルム216,216の反力による張力が発生し、該フィルム216,216に固体振動(膜振動(横波))が生じやすくなる。一方、三次元立体編物210,210にも予備圧縮が生じ、三次元立体編物の厚さ形態を保持する連結糸にも反力による張力が生じて弦振動が生じやすくなる。なお、フィルム216,216は、三次元立体編物210,210の表側及び裏側の両側に設けることが好ましいが、いずれか少なくとも一方に設けた構成とすることも可能である。フィルム216,216としては、例えば、ポリウレタンエラストマーからなるプラスチックフィルム(例えば、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」)等を用いることができる。
【0135】
振動センサ230は、上記したフィルム216,216を積層する前に、いずれか一方の三次元立体編物210に固着して配設される。三次元立体編物210は一対のグランド編地と連結糸とから構成されるが、各連結糸の弦振動がグランド編地との節点を介してフィルム216,216及び板状発泡体221,222に伝達されるため、振動センサ230は感知部230aを三次元立体編物210の表面(グランド編地の表面)に固着することが好ましい。振動センサ230としては、マイクロフォンセンサ、中でも、コンデンサ型マイクロフォンセンサを用いることが好ましい。本実施形態では、マイクロフォンセンサを配置した部位(すなわち、三次元立体編物210を配置した配置用貫通孔215a)の密閉性を考慮する必要がないため、マイクロフォンセンサのリード線の配線は容易に行うことができる。生体信号によって生じる人の筋肉を介した体表面の振動は、三次元立体編物210だけでなく、板状発泡体221,222、フィルム216にも伝播され、それらが振動(弦振動、膜振動(横波))して減衰を防止しつつ重畳されて増幅する。よって、振動センサ230は、三次元立体編物210に限らず、振動伝達経路を構成する板状発泡体221,222及びフィルム216に、その感知部230aを固定することもできる。
【0136】
生体信号測定手段200としては、
図33に示したものに限定されず、例えば、
図34(a)に示したように、2つの三次元立体編物210,210の両方を覆うことのできる大きさのフィルム217を少なくとも一方に用いても良い。また、
図34(b)に示したように、略長方形の三次元立体編物を両端縁から中央部に向かって折り曲げ、重なり合った部分の中央部を縫い合わせたランバーサポート218を配置するようにしてもよい。ランバーサポート218は、三次元立体編物支持部材215に面ファスナ等を用いて固定される。ランバーサポート218をこのようにして設けることにより、狭いスペース中でストローク感を高めるのに寄与する。
【0137】
上記した生体信号測定手段200は、例えば、
図35に示したように、自動車用シート1000のシートバックフレーム1100に被覆される表皮1200の内側に配置される。なお、配置作業を容易にするため、生体信号測定手段200を構成する三次元立体編物210、三次元立体編物支持部材215、フィルム216、板状発泡体221,222、振動センサ230等は予めユニット化しておくことが好ましい。
【0138】
上記した生体信号測定手段200によれば、生体信号により、筋肉の荷重−たわみ特性に近似する荷重−たわみ特性をもつ板状発泡体221,222やフィルム216に膜振動(横波)が生じると共に、人の筋肉の荷重−たわみ特性に近似した荷重−たわみ特性を有する三次元立体編物210に弦振動が生じる。そして、三次元立体編物210の弦振動は再びフィルム216等の膜振動(横波)に影響を与え、これらの振動が重畳して作用する。その結果、生体信号に伴って体表面から入力される振動は、減衰することなく弦振動と膜振動(横波)との重畳によって増幅された固体振動として直接振動センサ230により検出されることになる。
【0139】
図1等に示したエアパック10内の空気圧変動を検出する生体信号測定手段1の場合、体積と圧力が反比例関係にあるため、密閉袋の体積を小さくしないと圧力変動を検出しにくい。これに対し、
図33〜
図35に示した生体信号測定手段200によれば、空気圧変動ではなく、上記のように、機械的増幅デバイス(三次元立体編物210、板状発泡体221,222、フィルム216又はフィルム217)に伝播される増幅された固体振動を検出するものであるため、その容積(体積)が検出感度の観点から制限されることはほとんどなく、心部揺動波という振幅の小さな振動を感度良く検出できる。このため、多様な体格を有する人に対応できる。従って、
図33〜
図35に示した生体信号測定手段200は、乗物用シートのように、多様な体格を有する人が利用し、さらに多様な外部振動が入力される環境下においても感度良く生体信号を検出できる。