(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアクセスポイント100の要部を示す構成図である。
図2は、
図1のアクセスポイントが行う通信を説明するための図である。
【0015】
無線通信機器としてのアクセスポイント100は、例えばIEEE802.11nの規格にオプションとして規定されている40MHzの通信帯域を有する。通信相手の無線LAN子機200も40MHzの通信帯域を有するのであれば、
図2に示すように、帯域がそれぞれ40MHzのストリームS1,S2,S3,S4の4ストリームを用いて通信相手の無線LAN子機200とMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)方式の通信を行うことができる。
【0016】
アクセスポイント100は、
図1に示すように、送受信データ及び各種データを一時的に記憶する記憶部110と、プログラムにしたがって動作し、各種データ処理や必要な演算を行うと共に、記憶部110に対する送受信データの書き込と読み出しを行い、アクセスポイント100の全体の動作を制御するCPU120と、RFベースバンド部130と、4個の送受信部140,150,160,170とを備えている。
【0017】
RFベースバンド部130は、CPU120から順次与えられた時系列の送信データを4つのストリームS1〜S4に対応させて4つの送信データ列に分割し、送受信部140〜170に並列に与える。また、RFベースバンド部130は、送受信部140〜170から与えられたデータを時系列の受信データに変換して、CPU120に与える。更に、RFベースバンド部130は、送受信部140〜170の通信帯域及び送受信部140〜170の通信周波数を変更し、動作制御を行う。
【0018】
送受信部140は、周波数制御部141と無線部142とを備えている。無線部142には、アンテナ143が接続されている。無線部142は、変復調アンテナ143を介してデータを送受信し、変復調を行う。周波数制御部141は、RFベースバンド部130の指示に基づいて無線部142における通信帯域及び通信周波数を制御する。
【0019】
送受信部150は、周波数制御部151と無線部152を備えている。無線部152には、アンテナ153が接続されている。無線部152は、変復調アンテナ153を介してデータを送受信し、データの変復調を行う。周波数制御部151は、RFベースバンド部130の指示に基づいて無線部152における通信帯域及び通信周波数を制御する。
【0020】
送受信部160は、周波数制御部161と無線部162とを備えている。無線部162には、アンテナ163が接続されている。無線部162は、変復調アンテナ163を介してデータを送受信し、データの変復調を行う。周波数制御部161は、RFベースバンド部130の指示に基づいて無線部162における通信帯域及び通信周波数を制御する。
【0021】
送受信部170は、周波数制御部171と無線部172とを備えている。無線部172には、アンテナ173が接続されている。無線部172は、変復調アンテナ173を介してデータを送受信し、データの変復調を行う。周波数制御部171は、RFベースバンド部130の指示に基づいて無線部172における通信帯域及び通信周波数を制御する。
【0022】
図3は、無線LAN子機の要部を示す構成図である。
無線LAN子機200も、アクセスポイント100と同様の構成であり、送受信データ及び各種データを一時的に記憶する記憶部210と、CPU220と、RFベースバンド部230と、4個の送受信部240,250,260,270とを備えている。記憶部210、CPU220、RFベースバンド部230は、アクセスポイント100の記憶部110、CPU120、RFベースバンド部130と同様に機能する。
【0023】
送受信部240は、周波数制御部241と無線部242とを備え、無線部242にアンテナ243が接続されている。
【0024】
送受信部250は、周波数制御部251と無線部252とを備え、無線部252にアンテナ253が接続されている。
【0025】
送受信部260は、周波数制御部261と無線部262とを備え、無線部262にアンテナ263が接続されている。
【0026】
送受信部270は、周波数制御部271と無線部272とを備え、無線部272にアンテナ273が接続されている。
【0027】
送受信部240,250,260,270も、アクセスポイント100の送受信部140,150,160,170と同様に機能する。
【0028】
次にアクセスポイント100の動作を説明する。
アクセスポイント100は、電波干渉つまり干渉波を検出しない状態では、4本のアンテナ143,153,163,173を利用し、異なるデータを40MHzの帯域で空間分割多重(Space Division Multiplexing)してデータを送受信して、無線LAN子機200とMIMO方式の通信を行う。
【0029】
まず、干渉波を検出していない状態でアクセスポイント100がデータを送信する場合の動作を説明する。
送信データを送信する場合、CPU120は記憶部110から送信データを順次読み出し、送信データ列を形成し、RFベースバンド部130へ与える。RFベースバンド部130は、送信データ列に対して誤り訂正符合化処理を行い、誤り訂正符号化された時系列の送信データを、各ストリームS1,S2,S3,S4に分配するために4分割し、4分割したデータ列を送受信部140,150,160,170に与える。
【0030】
図4は、サブキャリアの説明図である。
アクセスポイント100は、ストリームS1,S2,S3,S4を形成するために、アクセスポイント100の通信帯域の40MHz内に配置された異なる周波数の複数のサブキャリアを用いる。ストリームS1,S2,S3,S4は、それぞれ複数のサブキャリアで形成される。ストリームS1でデータを送信するために用いるサブキャリアと、ストリームS2でデータを送信するために用いるサブキャリアと、ストリームS3でデータを送信するために用いるサブキャリアと、ストリームS4でデータを送信するために用いるサブキャリアとは、互いに周波数が異る。
【0031】
送受信部140の無線部142は、ストリームS1を形成するための複数のサブキャリアを作成する。無線部142は、RFベースバンド部130から順次与えられるデータを並列データに変換し、並列データの各データで、ストリームS1を形成するために作成した複数のサブキャリアを同時に変調する。
【0032】
無線部142は、変調された複数のサブキャリアに逆離散フーリエ変換を行って、時間軸上の連続信号に変換する。無線部142は、時間軸上の連続信号に対してガードインターバルを付加すると共に、アナログ信号に変換する。無線部142は、そのアナログ信号を高周波の信号に変換し、アンテナ143を介して送信する。
【0033】
送受信部150の無線部152は、ストリームS2を形成するための複数のサブキャリアを作成する。無線部152は、RFベースバンド部130から順次与えられるデータを複数の並列データに変換し、並列データの各データで、ストリームS2を形成するために作成した複数のサブキャリアを同時に変調する。
【0034】
無線部152は、変調された複数のサブキャリアに対して所定の遅延を付加する。無線部152は、遅延された複数のサブキャリアに逆離散フーリエ変換を行って、時間軸上の連続信号に変換する。無線部152は、時間軸上の連続信号に対してガードインターバルを付加すると共に、アナログ信号に変換する。無線部152は、そのアナログ信号を高周波の信号に変換して、アンテナ153を介して送信する。送受信部150の各処理は、送受信部140の各処理と並行して行われる。
【0035】
送受信部160の無線部162は、ストリームS3を形成するための複数のサブキャリアを作成する。無線部162は、RFベースバンド部130から順次与えられるデータを並列データに変換し、並列データの各データで、ストリームS3を形成するために作成した複数のサブキャリアを同時に変調する。
【0036】
無線部162は、変調された複数のサブキャリアに対して所定の遅延を付加する。無線部162は、遅延された複数のサブキャリアに逆離散フーリエ変換を行って、時間軸上の連続信号に変換する。無線部162は、時間軸上の連続信号に対してガードインターバルを付加すると共に、アナログ信号に変換する。無線部162は、そのアナログ信号を高周波の信号に変換して、アンテナ163を介して送信する。送受信部160の各処理は、送受信部140の各処理と並行して行われる。
【0037】
送受信部170の無線部172は、ストリームS4を形成するための複数のサブキャリアを作成する。無線部172は、RFベースバンド部130から与えられるデータを並列データに変換し、並列データの各データで、ストリームS4を形成するために作成した複数のサブキャリアを同時に変調する。
【0038】
無線部172は、変調された複数のサブキャリアに対して所定の遅延を付加する。無線部172は、遅延された複数のサブキャリアに逆離散フーリエ変換を行って、時間軸上の連続信号に変換する。無線部172は、時間軸上の連続信号に対してガードインターバルを付加すると共に、アナログ信号に変換する。無線部172は、そのアナログ信号を高周波の信号に変換して、アンテナ173を介して送信する。送受信部170の各処理は、送受信部140の各処理と並行して行われる。
【0039】
送受信部140,150,160,170から送信される信号の帯域は、無線部142,152,162,172でそれぞれ作成する複数のサブキャリアの帯域と同じである。無線部142,152,162,172でそれぞれ作成する複数のサブキャリアの帯域が、最大40MHzの場合、送受信部140,150,160,170から送信される信号の帯域、つまり通信帯域は、40MHzとなる。送受信部140,150,160,170の送信する信号が空間分割多重され、4つのストリームS1〜S4として、無線LAN子機200に送信される。
【0040】
無線LAN子機200が、干渉波のない状態でデータを送信する場合も、無線LAN子機200の記憶部210、CPU220、RFベースバンド部230及び送受信部240,250,260,270が、アクセスポイント100の記憶部110、CPU120、RFベースバンド部130及び送受信部140,150,160,170と同様に動作し、送信データが4つのストリームS1〜S4に空間分割多重され、アクセスポイント100に送信される。
【0041】
電波干渉のない状態で、アクセスポイント100がデータを受信する動作を説明する。
無線LAN子機200が送信した信号は、アンテナ143,153,163,173によって受信される。
【0042】
無線部140の無線部142は、アンテナ143を介した受信信号をダウンコンバートして周波数を低くし、サンプリングしてデジタルのデータ列に変換する。無線部142は、そのデジタルのデータ列からガードインターバルの部分を除去した後、離散フーリエ変換を行う。この変換により、複数の周波数のサブキャリア毎の変調データに分離される。
【0043】
無線部142は、サブキャリア毎の変調データを復調し、サブキャリア毎の復調データ列を形成する。無線部142は、サブキャリア毎の復調データ列の並べ替えを行い、時系列の復調データ列を形成し、RFベースバンド部130に与える。
【0044】
無線部150の無線部152は、アンテナ153を介した受信信号をダウンコンバートして周波数を低くし、サンプリングしてデジタルのデータ列に変換する。無線部152は、そのデジタルのデータ列からガードインターバルの部分を除去した後、離散フーリエ変換を行う。この変換により、複数の周波数のサブキャリア毎の変調データに分離される。
【0045】
無線部152は、サブキャリア毎の変調データを復調し、サブキャリア毎の復調データ列を形成する。無線部152は、サブキャリア毎の復調データ列の並べ替えを行い、時系列の復調データ列を形成し、RFベースバンド部130に与える。
【0046】
無線部160の無線部162は、アンテナ163を介した受信信号をダウンコンバートして周波数を低くし、サンプリングしてデジタルのデータ列に変換する。無線部162は、そのデジタルのデータ列からガードインターバルの部分を除去した後、離散フーリエ変換を行う。この変換により、複数の周波数のサブキャリア毎の変調データに分離される。
【0047】
無線部162は、サブキャリア毎の変調データを復調し、サブキャリア毎の復調データ列を形成する。無線部162は、サブキャリア毎の復調データ列の並べ替えを行い、時系列の復調データ列を形成し、RFベースバンド部130に与える。
【0048】
無線部170の無線部172は、アンテナ173を介した受信信号をダウンコンバートして周波数を低くし、サンプリングしてデジタルのデータ列に変換する。無線部172は、そのデジタルのデータ列からガードインターバルの部分を除去した後、離散フーリエ変換を行う。この変換により、複数の周波数のサブキャリア毎の変調データに分離される。
【0049】
無線部172は、サブキャリア毎の変調データを復調し、サブキャリア毎の復調データ列を形成する。無線部172は、サブキャリア毎の復調データ列の並べ替えを行い、時系列の復調データ列を形成し、RFベースバンド部130に与える。
【0050】
RFベースバンド部130は、送受信部140,150,160,170から並行して順次与えられる復調テ−タを合成したデータ列を形成し、誤り復号化を行い、受信データ列を形成してCPU120に与える。
CPU120は、受信データ列を形成を記憶部110に順次書込む。
【0051】
無線LAN子機200が、電波干渉のない状態でデータを受信する場合も、無線LAN子機200の記憶部210、CPU220、RFベースバンド部230及び送受信部240,250,260,270が、アクセスポイント100の記憶部110、CPU120、RFベースバンド部130及び送受信部140,150,160,170と同様に動作する。
【0052】
アクセスポイント100のRFベースバンド部130は、無線LAN子機200とのデータ通信中に、定期的に電波環境を監視し、干渉波の存在を確認する。例えば、干渉波が存在すると受信データの誤り率が高くなるので、これを検出することにより、干渉波の有無及び干渉波のレベルを確認できる。アクセスポイント100は、干渉波を検出した場合に、ストリーム数を変更するとともに干渉波を避けるように通信の最適化を行う。
【0053】
図5は、アクセスポイントが行う通信の最適化を示すフローチャートである。
アクセスポイント100は、干渉波がない状態では、送受信部140、送受信部150、送受信部160、送受信部170を用いて無線LAN子機200とストリーム数が4のMIMO方式の通信を行っている(ステップST401)。
【0054】
アクセスポイント100のRFベースバンド部130が定期的に通信帯域内の電波環境を監視し、干渉波の存在を確認する(ステップST402)。干渉波が存在しない場合、無線LAN子機200とデータ通信を継続する(ステップST403:NO)。
【0055】
干渉波を検出した場合(ステップST403:YES)、干渉波のレベルが低く、スループットの低下が無ければ、(ステップST404:NO)無線LAN子機200とのデータ通信を継続する。
【0056】
干渉波のレベルが高く、スループットの低下が起きると(ステップST404:YES)、RFベースバンド部130がアクセスポイント100の通信帯域内をスキャンし、干渉波の周波数および、干渉波の存在しない周波数を確認する(ステップST405)。
【0057】
そして、MIMO
方式の通信のストリーム数を1に変更し(ステップST406)、アクセスポイント100の通信帯域内をスキャンしたデータをもとに、干渉波の周波数を避けるように通信周波数を配置する(ステップST407)。
【0058】
具体的には、各送受信部140,150,160,170の通信帯域をそれぞれ40MHzから10MHzに変更し、さらに、各送受信部140,150,160,170の通信帯域同士が重ならず、且つ、各送受信部140,150,160,170の通信帯域が干渉波と重ならないように、送受信部140,150,160,170の通信周波数を変更する。
【0059】
送受信部140,150,160,170の通信帯域の変更及び通信周波数の変更は、RFベースバンド部130が周波数制御部141,151,161,171に指示を出し、送受信部140,150,160,170で作成するサブキャリアの周波数を変化させることで実現される。
【0060】
例えば、干渉波がなく、各送受信部140,150,160,170の送受信信号が空間分割多重されたストリーム数が4のMIMO通信を行っているときに、
図6(a)に示すように、干渉波310及び干渉波320が発生し、その干渉波レベルが高く、スループットの低下が起きた場合、サブキャリアの周波数を変化させることで送受信部140,150,160,170の通信帯域をそれぞれ40MHzから10MHzに変更し、さらに、各送受信部140,150,160,170の通信帯域が干渉波310,320の周波数と重ならないように、送受信部140,150,160,170の通信周波数を変更する。
【0061】
図6(b)の例では、送受信部140の通信周波数が干渉波310の周波数よりも低くなり、送受信部150,160の通信周波数が干渉波310と干渉波320の周波数の間になり、送受信部170の通信周波数が干渉波320よりも高くなるように変更している。
【0062】
送受信部140,150,160,170の通信帯域及び通信周波数の変更により、送受信部140,150,160,170は、通信帯域が
10MHzの
4ストリームで無線LAN子機200との通信が可能な状態となる。
【0063】
尚、RFベースバンド部130は、送受信部140,150,160,170の通信帯域の変更及び通信周波数の変更を行う前に、無線LAN子機200に通信帯域の変更及び通信周波数の変更を行うことをパイロット信号等で示しておくことが望ましい。
【0064】
通信帯域の変更及び通信周波数の変更をパイロット信号で示すことにより、無線LAN子機200で、送受信部240,250,260,270の通信帯域及び通信周波数の変更が行われる。パイロット信号には、複数のサブキャリアのうちの特定のサブキャリアが用いられてもよい。
【0065】
送受信部140,150,160,170の通信帯域の変更及び通信周波数の変更を行った後、アクセスポイント100は、ストリーム数が1のMIMO方式で無線LAN子機200とデータ通信を行い(ステップST408)、その通信の終了後、再び電波環境をスキャンし(ステップST402)、干渉波が存在しなければ(ステップST403:NO)、MIMO
方式の通信のストリーム数を4に戻し、無線LAN子機200とデータ通信を行う(ステップST401)。
【0066】
以上のように、本実施形態では、干渉波310,320が発生した場合に、
MIMO方式の通信のストリーム数を1に減じるので、安定した通信が可能である。また、各送受信部140,150,160,170の通信周波数が干渉波310,320に重ならないようにしたので干渉波310,320の影響を避けることができる。そのため、電波環境に応じて、安定した通信環境を得ることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係るアクセスポイントの要部を示す構成図であり、
図1中の要素と共通する要素には、共通の符合を付している。
【0068】
このアクセスポイント500は、特定優先電波検出部510を設けたものであり、他の構成は、
図1のアクセスポイント100と同様である。特定優先電波検出部510は、アクセスポイント500の通信帯域を監視し、気象レーダ等の特定優先電波を検出した場合に、RFベースバンド部130に特定優先電波を検出したこと及びその周波数或いはチャネルを知らせる機能を有する。
【0069】
IEEE802.11a及びEEE802.11nに準拠する無線通信機器では、5.25〜5.35GHz帯及び5.5〜5.7GHz帯のチャネル(20MHz帯域)が利用可能である。今後、規格化が予定されているIEEE802.11acについても、5.25〜5.35GHz帯及び5.5〜5.7GHz帯のチャネルが利用可能である。
しかし、その周波数帯を利用する場合、気象レーダー等の特定優先電波が存在する可能性があるため、アクセスポイントとして機能する無線通信機器には、電波法上、動的周波数選択(DFS:Dynamic Frequency Selection)が義務づけられている。
【0070】
DFSの一つにCAC(Channel Available Check)がある。これは通信を開始する前に、利用チャネルの周波数を対象として、1分間、特定優先電波の検出を行い、特定優先電波が運用されていないことを確認する機能である。つまり、データ通信の途中で、5.25〜5.35GHz帯で使用するチャネル或いは5.5〜5.7GHz帯で使用するチャネルを変更した場合、特定優先電波検出のために、1分間、データ通信を始めることができない。また、特定優先電波を検出してから30分の間、特定優先電波が検出されたチャンネルの電波の送信を行ってはならないと、電波法で定められており、特定優先電波を検出すると、使用可能な通信チャンネルが一定時間制限されてしまう。
【0071】
本実施形態のアクセスポイント500は、通信帯域に特定優先電波を検出した場合に、ストリーム数を変更するとともに特定優先電波が含まれるチャネルを避けるように通信帯域の最適化を行う。特定優先電波を検出した時の動作を
図8〜
図10を参照しつつ説明する。
【0072】
図8は、
図7のアクセスポイントが行うMIMO通信を説明するための模式図である。
図9は、アクセスポイントの通信帯域と特定優先電波との関係を説明する図である
図10は、
図7のアクセスポイントが行う通信の最適化のフローチャートである。
【0073】
IEEE802.11acでは、スループットを向上させるために、160MHzの広い通信帯域でデータ通信を行うことができる。本実施形態では、アクセスポイント500がIEEE802.11acに準拠し、無線LAN子機200とが、
図8に示すように、160MHzの通信帯域でストリーム数が4のMIMO方式でデータ通信を行うものとして説明する。
【0074】
干渉波がなく、さらに、特定優先電波を検出しない状態では、アクセスポイント500がRFベースバンド部130の指示により、
図8の示すように送受信部140,150,160,170の通信帯域を最大160MHzに設定し、無線LAN子機200も送受信部240,250,260,270の通信帯域を最大160MHzに設定し、アクセスポイント500と無線LAN子機200とが、5500MHz〜5660MHzの160MHzの通信帯域でストリーム数が4のMIMO方式によりデータ通信を行う(ステップST601)。
【0075】
RFベースバンド部130が干渉波を検出した場合、RFベースバンド部130が、MIMO通信のストリーム数を1に減じ、干渉波を避けるように各送受信部1140,150,160,170の通信帯域及び通信周波数を変更するが、その動作は第1の実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0076】
特定優先電波検出部510が特定優先電波を検出しなければ(ステップST602:NO)、その時点でのデータ通信がストリーム数が4のMIMO方式で行われていたか否かを判断し、データ通信がストリーム数が4のMIMO方式で行われていた場合には(ステップST603:YES)、ストリーム数が4のMIMO式式でのデータ通信を継続する。
【0077】
データ通信がストリーム数が4のMIMO通方式で行われていない場合には(ステップST603:NO)、アクセスポイント500の通信帯域の160MHzの全体について、30分間を越えて特定優先電波が検出されていなかったことを確認する。通信帯域の160MHzの全体について、30分間以上特定優先電波が検出されていなかった場合には(ステップS604:YES)、処理をステップST601に戻し、5500MHz〜5660MHzの160MHzの通信帯域でストリーム数が4のMIMO通信によりデータ通信を行う。
【0078】
通信帯域の160MHzの全体について、30分間以内に特定優先電波が検出されていた場合には(ステップS604:NO)、処理をステップST602に戻し、特定優先電波の検出を継続する。
【0079】
図9(a)に示すように、アクセスポイント500の通信帯域160MHzに、例えば特定優先電波710,720が含まれると、特定優先電波検出部510が特定優先電波710,720を検出する。特定優先電波検出部510は、特定優先電波710,720を検出したことと、特定優先電波710,720の含まれるチャネルをRFベースバンド部130に知らせる(ステップST602:YES)。
【0080】
特定優先電波を検出したチャンネルは送信を停止しなければならない。そこで、RFベースバンド部130は、MIMO方式の通信のストリーム数を1に設定し(ステップST605)、特定優先電波710,720を検出したチャンネルを避けるように、周波数制御部141,151,161,171に指示を出し、
図9(b)に示すように、送受信部140,150,160,170の通信帯域及び通信周波数を設定する(ステップST606)。また、この送受信部140,150,160,170の通信帯域及び通信周波数の設定では、それまでの30分以内に特定優先電波が検出されたチャネルも避けるように設定される。
【0081】
図9(b)の例では、特定優先電波710,720を含むチャンネルの帯域をそれぞれ20MHzとし、送受信部140の通信帯域を20MHzに変更し、送受信部140の送受信信号の周波数が特定優先電波710を含むチャネルより低くなるように、送受信部140の通信周波数を設定している。
【0082】
また、送受信部150の通信帯域を60MHzに変更し、特定優先電波710を含むチャネルと特定優先電波720を含むチャネルの間に、送受信部150の送受信信号の周波数が入るように送受信部150の通信周波数を設定している。
【0083】
また、送受信部160の通信帯域を40MHzに変更し、送受信部160の送受信する信号の周波数が特定優先電波720を含むチャネルよりも高くなるように、送受信部160の通信周波数を設定している。
【0084】
また、送受信部170の通信帯域を40MHzに変更し、送受信部170の送受信信号の周波数が送受信部160の送受信信号の周波数よりも高くなるように、送受信部170の通信周波数を設定している。
【0085】
送受信部140,150,160,170の通信帯域の変更及び通信周波数の設定は、RFベースバンド部130が周波数制御部141,151,161,171に指示を出し、無線部142,152,162,172で作成するサブキャリアの周波数を変化させることで実現される。
【0086】
送受信部140,150,160,170の通信帯域の変更及び通信周波数の設定後、送受信部140,150,160,170の通信帯域の合計は160MHzである。ここで、RFベースバンド部130は、送受信部140,150,160,170の通信帯域に新規の通信帯域があるか否かを確認する(ステップST607)。
図9(b)の例では、無線部142、無線部152、無線部162は、通信帯域として5500MHz〜5660MHzの周波数帯を使用するが、これらは既に通信で使用していた周波数帯であるため(ステップST607:NO)、1分間、特定優先電波の検出を行う必要はなく、すぐにデータ通信を始めることが出来る。
【0087】
これに対し、無線部172は新たに5660MHz〜5700MHzの2チャンネル分の周波数を通信帯域として使用する(ステップST607:YES)。当該2チャンネル分の周波数を対象として、1分間、特定優先電波の検出を行い(ステップST608)、特定優先電波が運用されていないことを確認する(ステップST609)。
【0088】
ステップST609の確認で、特定優先電波を1分間検出しなかった場合(ステップST609:YES)、無線部172に5660MHz〜5700MHzの帯域を使用させ、送受信部140,150,160,170を使用してストリーム数が1のMIMO方式でデータ通信を開始する(ステップST610)。無線部172が特定優先電波を検出した場合(ステップST609:NO)、使用する通信周波数を変更し(ステップST611)、処理をステップST607に戻す。使用する通信周波数がすべて決定した後、すべての送受信部140,150,160,170を使用して、ストリーム数1のMIMO方式でデータ通信を行う(ステップST610)。
【0089】
ここで、ステップST606の通信周波数の設定で、無線部172がそれまで通信に用いられていた5500MHz〜5660MHz帯の周波数を使用するように設定した場合、ステップST608で、1分間、2チャンネル分の周波数を対象に特定優先電波が運用されていないことを確認する必要はなく(ステップST607:NO)、すぐに無線部172の使用する通信周波数を使用できるので、すべての送受信部140,150,160,170を使用して、ストリーム数が1のMIMO方式でデータ通信を行う(ステップST610)。
ストリーム数が1のMIMO通信でデータ通信を開始した後、処理をステップST602に戻す。
【0090】
このように、本実施形態のアクセスポイント500では、特定優先電波を検出したとき、1分間データ通信が止まることなく、特定優先電波が存在する通信周波数を避けて通信することが出来るという効果が期待できる。また、特定優先電波が存在するチャンネルを避けて通信周波数を配置するため、効率的に広い帯域を使用することが出来るという効果が得られる。
【0091】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、第1の実施形態では、4つの送受信部140,150,160,170を備えたアクセスポイント100の構成例を説明したが、送受信部は2つ以上であれば、異なる周波数の通信帯域を2種類以上使用できるので干渉波の周波数を避けて配置でき、それらの通信帯域を用いて1ストリームを形成でき、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0093】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、MIMO通信のストリーム数を4から1に変更したが、MIMO通信のストリーム数は、有している送受信部140,150,160,170の数の半分以下に設定すれば、送受信部140,150,160,170の通信周波数を2種類以上使用して干渉波を避けるようにして配置することが出来るため、同様の効果が期待できる。
【0094】
また、第1の実施形態では、各送受信部140,150,160,170の通信帯域を一律10MHzに設定してストリーム数を減じたが、10MHz以外の自由な帯域に設定してもよい。さらに、各送受信部140,150,160,170の通信帯域は等しくなくてもよい。
【0095】
また、第1の実施形態では、ストリーム数を減じた後の各送受信部140,150,160,170の通信帯域の合計が40MHzとなっているが、帯域の合計は、アクセスポイント100に定められた帯域内であれば20MHzや80MHzでもよい。
【0096】
また、第1の実施形態では、干渉波の有無で、各送受信部140,150,160,170の通信帯域を配置したが、干渉波のレベルによって各送受信部140,150,160,170の通信帯域やその帯域の周波数を決定してもよい。 また、第1の実施形態では、アクセスポイント100が通信帯域内の電波環境をスキャンし、干渉波の存在を確認したが、無線LAN子機200が通信帯域内の電波環境をスキャンし、干渉波の存在を確認してもよい。
【0097】
また、第2の実施形態では、ストリーム数を減じた後の送受信部140,150,160,170の通信帯域の合成が160MHzとなっているが、これに限定されるものではない。
【0098】
また、第2の実施形態では、アクセスポイント500を、第1の実施形態と同様に干渉波を検出した場合に干渉波を避ける構成としたが、干渉波を避ける機能を持たないアクセスポイントでもよい。この場合でも、特定優先電波を検出したとき、1分間データ通信が止まることなく、特定優先電波が存在する通信周波数を避けて通信することが出来るという効果が期待できる。
【0099】
尚、本発明は上記した機能をコンピューターに実現させるためのプログラムを含むものである。これらのプログラムは、記録媒体から読み取られてコンピュータに取り込まれてもよいし、通信ネットワークを介して伝送されてコンピュータに取り込まれてもよい。
【0100】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【0101】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0102】
(付記1)
無線空間に送信信号を送信し、無線空間にストリームを形成する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナに対応して設けられ、対応するアンテナから送信する送信信号を発生して該対応するアンテナに与えるとともに、該送信信号の通信帯域及び周波数をそれぞれ設定する複数の送信部と、
前記複数の送信部に対応して設けられ、対応する前記送信部を制御し、該対応する送信部が設定する前記送信信号の通信帯域及び周波数をそれぞれ変化させる複数の周波数制御部と、
前記無線空間の電波環境を監視する監視手段とを備え、
前記複数の周波数制御部は、
前記監視手段が特定の電波を検出していない第1の期間に、前記無線空間に複数のストリームが形成されるように前記対応する送信部をそれぞれ制御し、
前記監視手段が特定の電波を検出したときには、前記無線空間に前記第1の期間よりも少ない数のストリームが形成され、且つ、前記送信信号の周波数と前記特定の電波の周波数とが重ならないように前記対応する送信部をそれぞれ制御する、
ことを特徴とする無線通信機器。
【0103】
(付記2)
前記複数の周波数制御部は、
前記監視手段が特定の電波を検出したときには、前記無線空間に形成されるストローム数が1となるように、前記対応する送信部を制御する、
ことを特徴とする付記1に記載の無線通信機器。
【0104】
(付記3)
前記特定の電波は、干渉波を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の無線通信機器。
【0105】
(付記4)
前記特定の電波は、所定のレーダー送信電波を含むことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の無線通信機器。
【0106】
(付記5)
複数のアンテナに対応して設けられ、対応するアンテナから送信する送信信号を発生して該対応するアンテナに与えるとともに、該送信信号の通信帯域及び周波数をそれぞれ設定する複数の送信処理と、
前記複数の送信処理に対応して設けられ、該対応する送信処理で設定する前記送信信号の通信帯域及び周波数をそれぞれ変化させる複数の周波数制御処理と、
無線空間の電波環境を監視する監視処理とを備え、
前記複数の周波数制御処理では、
前記監視処理で特定の電波を検出していない第1の期間に、前記無線空間に複数のストリームが形成されるように前記対応する送信処理をそれぞれ制御し、
前記監視処理で特定の電波を検出したときには、前記無線空間に前記第1の期間よりも少ない数のストリームが形成され、且つ、前記送信信号の周波数と前記特定の電波の周波数とが重ならないように前記対応する送信処理をそれぞれ制御する、
ことを特徴とする無線通信方法。
【0107】
(付記6)
無線空間に送信信号を送信し、無線空間にストリームを形成する複数のアンテナを備えるコンピュータに、
前記複数のアンテナに対応して設けられ、対応するアンテナから送信する送信信号を発生して該対応するアンテナに与えるとともに、該送信信号の通信帯域及び周波数をそれぞれ設定する複数の送信機能、
前記複数の送信機能に対応して設けられ、対応する前記送信機能を制御し、該対応する送信部が設定する前記送信信号の通信帯域及び周波数をそれぞれ変化させる複数の周波数制御機能、
前記無線空間の電波環境を監視する監視機能を実現させ、
前記複数の周波数制御機能では、
前記監視機能が特定の電波を検出していない第1の期間に、前記無線空間に複数のストリームが形成されるように前記対応する送信機能をそれぞれ制御し、
前記監視機能が特定の電波を検出したときには、前記無線空間に前記第1の期間よりも少ない数のストリームが形成され、且つ、前記送信信号の周波数と前記特定の電波の周波数とが重ならないように前記対応する送信機能をそれぞれ制御する機能を実現させるためのプログラム。