(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704656
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20150402BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K1/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-136800(P2012-136800)
(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-1780(P2014-1780A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2013年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】岡野 雄
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−282084(JP,A)
【文献】
特開2005−299836(JP,A)
【文献】
特開2011−202697(JP,A)
【文献】
特開昭51−108328(JP,A)
【文献】
特開2013−170622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04; 1/00− 1/54;39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって進退する弁軸の先端に弁体を取り付け、上記弁体を弁口に向かって進退させることによって上記弁口を通過する流体の流量を調節する流量調節弁であって、上記弁体の後端側外周にシール部材を装着すると共に、上記弁体の後端側を覆うシリンダ状の固定ハウジングを設け、上記固定ハウジングの内周面と上記弁体の後端面とで囲まれる背圧室を上記弁口の2次側に連通させるものにおいて、上記弁体を後退させ上記弁口の開度が所定の開度以上になった状態で、上記シール部材が上記固定ハウジングの内周面に押接する圧力が減少するように、上記固定ハウジングの内周面の後方部分を前方部分より拡径させ、上記シール部材が上記固定ハウジングの上記拡径された後方部分に位置する状態で、上記弁体の外周面を上記固定ハウジングの前方部分でガイドして上記弁体の振動を防止するようにしたことを特徴とする流量調節弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによって弁体が進退する流量制御弁であって、弁体の後方に背圧室を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量制御弁はモータによって進退する弁軸を備えており、その弁軸の先端に弁体が取り付けられている。その弁体を弁口に向かって前進させることにより弁口の開度を狭め、弁口を通過する流体の流量を減少させるように構成されている。また、逆に弁口の開度を狭めている状態から弁体を後退させることにより、弁口の開度を拡げ、弁口を通過する流体の流量を増加させている。
【0003】
弁体が弁口の開度を狭めている状態、もしくは弁口を閉鎖している状態では、弁体の背面に流体の1次圧が作用する。一方、弁体の前面は2次側に面しているので、1次圧と2次圧の差圧によって弁体は背面側から前方に押されることになる。この状態から弁体を後退させて弁口の開度を増加させるためには、弁軸を駆動するモータとして大きなトルクを発生できる大型のモータを用いる必要が生じる。ところが大型のモータは流量調節弁の小型化を阻害するばかりかコストが高くなると言う不具合が生じる。
【0004】
そこで、弁体の背面が臨む背圧室を設け、その背圧室を2次側に連通させることにより、弁体の背面に1次圧が作用しないように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、弁体の前面と背面とに同じ2次圧が作用して相殺するので、弁体が閉弁状態であっても、その状態から弁体を後退させ弁口の開度を増加させるために大きなトルクを必要としない。
【0005】
この背圧室は具体的には、シリンダ状の固定ハウジングを前方に向けて開口するように弁体の後方に取り付け、弁体はピストンのようにこの固定ハウジングの内部に進退自在に進入して弁体が進退移動しても背圧室が形成されるように構成されている。なお、弁軸は弁体を貫通しており、弁軸と弁体との間の隙間を介して背圧室が2次側に連通されている。また、1次側の流体が背圧室内に流入しないように、弁体の後端側外周にシール部材が装着されており、このシール部材が固定ハウジングの内周面に密着した状態で弁体が進退することにより、常に1次側の流体が背圧室内に流入しないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−139065号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のものでは、弁体が前後に移動する際、常にシール部材が固定ハウジングの内周面に密着しているので、弁体の摺動抵抗が常にモータの負荷として作用する。また、シール部材が擦れることによりシール部材の耐久性が低下するという問題も生じる。
【0008】
一方において、弁体が弁口を閉鎖している状態や開度を絞っている状態から弁体を後退する際に背圧室内が2次圧と同じになっていることによりモータの負荷が軽減されるが、弁体が後退して弁口の開度が所定の開度以上であると背圧室を1次側に対してシール部材でシールしていても、弁体の前面側に連通している背圧室内の圧力が1次圧に等しくなるので、シール部材によるシールの必要性がなくなる。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、弁体の摺動抵抗を可及的に減少させると共にシール部材の耐久性を損なうことのない流量制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明による流量制御弁は、モータによって進退する弁軸の先端に弁体を取り付け、
上記弁体を弁口に向かって進退させることによって
上記弁口を通過する流体の流量を調節する流量調節弁であって、
上記弁体の後端側外周にシール部材を装着すると共に、
上記弁体の後端側を覆うシリンダ状の固定ハウジングを設け、
上記固定ハウジングの内周面と
上記弁体の後端面とで囲まれる背圧室を
上記弁口の2次側に連通させるものにおいて、
上記弁体を後退させ
上記弁口の開度が所定の開度以上になった状態で、上記シール部材が
上記固定ハウジングの内周面に押接する圧力が減少するように、
上記固定ハウジングの内周面の後方部分を前方部分より拡径させ
、上記シール部材が
上記固定ハウジングの上記拡径された後方部分に位置する状態で、
上記弁体の外周面を上記固定ハウジングの前方部分でガイドして
上記弁体の振動を防止するようにしたことを特徴とする。
【0011】
弁口の開度が小さい状態もしくは弁口が閉鎖されている状態では、弁体は前方に位置している。弁体がその前方に位置している状態では、背圧室は1次側に対して隔絶されると共に2次側に連通させる必要がある。ところが、その状態から弁体を後退させ弁口の開度が所定の開度以上にあると、背圧室を1次側に対して隔絶しておく必要がなくなる。そこで、弁口の開度が所定の開度以上になれば、シール部材を固定ハウジングの内周面に密着させておく必要がないので、固定ハウジングの内周面の後方部分を前方部分より拡径させ、シール部材が密着することによる摺動抵抗を低下させると共に、シール部材自体の耐久性が損なわれないようにした。
【0012】
なお、このようにシール部材が固定ハウジングの内周面に密着しないと、弁体が流体の流れにより振動するおそれが生じる。そこで、上記シール部材が固定ハウジングの上記拡径された後方部分に位置する状態で、弁体の外周面を上記固定ハウジングの前方部分でガイドして弁体の振動を防止するようにした。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明は、背圧室を1次側に対して隔絶する必要性が低い範囲でシール部材が固定ハウジングの内周面に密着しないようにしたので、弁体の駆動トルクが軽減できると共に、シール部材の耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、1は本発明による流量調節弁の一例であり、給湯装置内に組み込まれ、熱交換器HEへ流れる流体である水の流量を調節するためのものである。この流量調節弁1にはステッピングモータ11が取り付けられており、このステッピングモータ11が正逆回転することにより弁軸21が、弁軸21の軸線方向に沿って往復移動するように構成されている。この弁軸21の先端部分には、樹脂製の弁体2が取り付けられている。弁体2には貫通孔が形成されており、その貫通孔に弁軸21が挿通されることにより弁体2が弁軸21に保持されるように構成されており、弁体2と弁軸21との間には連通路となる隙間22が形成されている。
【0016】
この弁体2は弁口12の開度を増減するものであり、開度が増減されると1次室13から2次室14を経て熱交換器HEへと流れる水の流量が増減調節される。なお、本実施の形態では弁体2が前進して弁口12の開度を狭めていくと、最終的に弁口12の開度をゼロ状態、すなわち弁口12を完全に閉塞しないタイプの流量調節弁を示したが、弁口12を完全に閉塞する流量調節弁であっても本発明を適用することができる。
【0017】
本実施の形態では、弁体2を前進させて弁口12の開度を最小に絞った状態では、1次室13内の圧力である1次圧が弁体2を2次室14側に押すように作用すると、弁体2を後退させるためにステッピングモータ11は大きなトルクを発生させる必要がある。ところが、図示のように、弁体2の後方に背圧室3を設け、弁体2が前進位置にある場合に、弁体2の背面に1次圧が作用しないようにした。なお、背圧室3は上記隙間22を介して2次室14側に連通しているので、背圧室3内の圧力は2次室14内の圧力である2次圧とほぼ等しくなる。すると、弁体2の前面と背面とにほぼ同じ圧力が作用することになり、その圧力による弁体2を押す力は相殺され、弁体2を後退させるために大きなトルクを必要としないように構成されている。
【0018】
背圧室3はシリンダ状の固定ハウジング4に円柱状の弁体2が嵌合することにより形成される。そして、その背圧室3を1次室13に対して隔絶するために、弁体2の外周面にシール部材であるOリング23が装着されている。
【0019】
弁体2が所定の開度より前方に位置している状態、すなわち、Oリング23がFで示す範囲内にある状態では、Oリング23が固定ハウジング4の内周面41に密着して、このOリング23によって背圧室3が1次室13に対して隔絶されるように構成されている。
【0020】
弁体2が上記所定の開度より後方に位置している状態、すなわち、Oリング23がRで示す範囲内にある状態では、Oリング23が内周面41に密着しないように、Rで示す範囲の内周面41の直径を、Fで示した範囲の内周面41の直径より大きくなるように設定している。
【0021】
また弁体2が上記所定の開度より後方に位置する状態では、上述のようにOリング23が内周面41に密着しない状態となり、流体の流れにより弁体2が振動するおそれが生じる。そこで、Oリング23がRで示す範囲に位置する状態になると、弁体2の外周面をFで示す範囲の内周面41で保持して、弁体2が振動しないようにした。
【0022】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0023】
1 流量調節弁
2 弁体
3 背圧室
4 固定ハウジング
11 ステッピングモータ
12 弁口
13 1次室
14 2次室
21 弁軸
22 隙間
23 Oリング
41 内周面
HE 熱交換器