(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が示す装置の構造では、回送位置にスクレーパを保持した状態で、例えば輸送車両等に転圧ローラを搭載して輸送する場合、振動等によりブラケットが回転し、係合部材が溝から外れるおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、転圧車両の輸送時等、スクレーパを回送位置に保持した状態で、車体が振動しても係合部材がブラケットの溝から外れてスクレーパが作業位置に移動してしまうことを防止することができる転圧車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、車輪を兼ねた転圧ドラムと、該転圧ドラムに付着した付着物を掻き落とすためのスクレーパと、前記スクレーパを回転移動可能に支持するスクレーパ支持装置とを備えた転圧車両において、前記スクレーパ支持装置は、前記スクレーパが固定されるブラケットと、該ブラケットを回転可能に支持し、車体側に固定されるブラケット支持体と、該ブラケット支持体に対して回転可能に支持される板状の係合部材とを有し、前記係合部材が回転し、複数の姿勢で前記ブラケットに係合
もしくは接することにより、前記ブラケットは複数の位置で固定され
る転圧車両を提供する
(請求項1)。
【0007】
さらに、請求項1の転圧車両は、前記係合部材が前記ブラケット支持体に取り付けられた回転軸廻りに回転可能に支持さ
れ、前記ブラケット
に前記係合部材の一端に嵌り込んで係合する溝を設けるとともに、前記係合部材
が前記回転軸を基点として折れ曲がり、前記係合部材の折れ曲がり部分の内縁側となる屈曲部を
有し、前記係合部材の一端が前記溝に嵌り込んで係合した状態で前記係合部材の両端部が前記屈曲部よりも前記車体側に配されるように前記係合部材を配置したことを特徴とす
る。
【0008】
好ましくは、前記ブラケット支持体及び前記ブラケットを連結する引張ばねとをさらに備え、前記スクレーパ支持装置は、該引張ばねに抗して前記スクレーパを前記転圧ドラムに当接させ、前記付着物を掻き落とすことができる状態の作業位置と、該作業位置から前記スクレーパ及びブラケットを前記転圧ドラムから離間する方向に回転させ、前記係合部材を前記溝に係合させて前記スクレーパの先端が前記転圧ドラムの端部に接する鉛直平面よりも前記転圧ドラムに対して内側であり、且つ前記スクレーパが前記転圧ドラムに非接触である状態の回送位置と、該回送位置から前記スクレーパをさらに前記転圧ドラムから離間する方向に回転させ、前記スクレーパの先端が前記鉛直平面よりも前記転圧ドラムに対して外側に位置した状態の整備位置とをそれぞれ前記スクレーパを保持することができる
(請求項2)。
【0009】
好ましくは、転圧車両には、前記ブラケット及び前記ブラケット支持体をそれぞれ貫通し、前記スクレーパが前記整備位置にあるときに、互いに連通する第1及び第2のピン孔と、前記互いに連通した第1及び第2のピン孔に挿通されるロックピンとがさらに備わっている
(請求項3)。
【0010】
また、本発明が提供する転圧車両の他の一例で
は、前記ブラケット支持体が回転軸を介して前記ブラケット
を支持し、
且つ車体か
ら張り出して
いて、該ブラケット支持体に固定され、前記回転軸が偏心した位置に回転自由に挿通された円板形状の軸板
をさらに有し、前記係合部材が該軸板廻りに回転可能に取付けら
れ、前記ブラケット支持体と前記スクレーパとの間に架け渡された引張りば
ねを有し、前記係合部材は前記軸板を基点として折れ曲がり、前記係合部材の折れ曲がり部分の内縁側となる屈曲部を
有するとともに、前記係合部材の回転中心からの距離が異なる少なくとも2つの端部を
有し、前記ブラケット
に前記係合部材の前記端部に嵌り込んで係合する受け片を設けるとともに、前記係合部材の前記屈曲部とは反対側の縁が前記車体側に位置し且つ前記係合部材の前記端部のうちいずれかが前記受け片に当接した状態で、前記ブラケットが前記転圧ドラム方向に向けて回転する際に、前記受け片に当接している前記係合部材の端部が描く回転軌跡が、前記スクレーパが前記転圧ドラムに当接市内一で前記受け片の当接部が描く回転軌跡よりも外側に張り出すことを特徴とする
(請求項4)。
【0011】
好ましくは、前記スクレーパ支持装置は、前記引張ばねに抗して前記スクレーパを前記転圧ドラムに当接させ、前記付着物を掻き落とすことができる状態の作業位置と、該作業位置から前記スクレーパ及びブラケットを前記転圧ドラムから離間する方向に回転し、前記係合部材の一端である第1端部を前記受け片に係合させて前記スクレーパが前記転圧ドラムに非接触とし、且つ前記引張りばねに抗した状態の回送位置と、該回送位置から前記スクレーパをさらに前記転圧ドラムから離間する方向に回転させ、前記引張りばねに抗し且つ前記係合部材の他端である第2端部を前記受け片に係合させた状態の整備位置とにそれぞれ前記スクレーパを保持できる
(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、係合部材をブラケットに係合
もしくは接触させることでブラケットを任意の位置に固定することができ、作業時や回送時、あるいは整備時にそれぞれ適した位置にブラケットを固定することができる。
【0013】
また、本発明によれば、スクレーパ支持装置を例えば車体前側に配した場合、係合部材が回転軸を基点とする屈曲部(係合部材の折れ曲がり部分の内縁側)を有し、係合部材が溝に係合した状態で屈曲部は係合部材の両端部よりも前方に位置している。このため、車体が振動してブラケットが回転しようとしても、溝から係合部材が外れにくい。すなわち、係合部材の重心が回転軸よりも後側に位置しているので、ブラケットが回転して係合部材の下端が溝から外れたとしても、係合部材の屈曲部より上側が前方に回転してしまうことはない。よって、再びブラケットが後方に回転して溝が係合位置に戻ったときに係合部材の下端に係合する。このため、転圧車両の輸送時等、スクレーパを回送位置に保持した状態で、車体が振動しても係合部材がブラケットの溝から外れてスクレーパが作業位置に移動してしまうことを防止することができる。
【0014】
また、引張ばねにより作業位置ではスクレーパがドラムに当接するように付勢されるので、効率よくドラムの泥を掻き落とすことができる。また、係合部材と溝によりスクレーパの先端がドラム前端を含む鉛直平面よりも後方となるようにドラムから離した回送位置にスクレーパを保持できるので、車体の輸送時等、ドラム前端よりも前方にスペースを設けることなく輸送車に搭載することができる。また、自走中であっても壁際までドラム前端がくるように運転できる。さらに、スクレーパが前方に突出するように前方及び上方に回転させて整備位置に保持することで、スクレーパが自重で作業位置に戻ることを防止し、安全にスクレーパ等の整備を行うことができる。また、このようにスクレーパの位置を3段階に保持できるため、用途に応じた適切な位置にスクレーパを移動させることにより、作業性を向上させることができる。
【0015】
本発明によれば、第1及び第2のピン孔にロックピンを挿通することにより、ブラケット及びブラケット支持体を互いに固定することができる。このため、スクレーパが整備位置にあるときに、ブラケットが回転することを防止できる。したがって、さらに安全にスクレーパ等の整備を行うことができる。
【0016】
また、本発明によれば、受け片に係合している係合部材の端部が描く回転軌跡の方が受け片の当接部が描く回転軌跡よりも、ブラケットが転圧ドラム方向に向けて回転する方向で外側に張り出している。すなわち、受け片は係合部材によって回転方向への回転を妨げられる。したがって、係合部材を受け片に
接触させることにより、スクレーパが回転方向に回転することを防止できるので、スクレーパを所望の位置に支持しておくことができる。
【0017】
また、本発明によれば、スクレーパ支持装置を例えば車体前側に配した場合、引張ばねにより作業位置ではスクレーパがドラムに当接するように付勢されるので、効率よくドラムの泥を掻き落とすことができる。回送位置では引張りばねに抗した状態であっても係合部材を用いてその位置に確実に保持することができる。このとき、スクレーパの先端がドラム前端を含む鉛直平面よりも後方となるような位置に配されれば、車体の輸送時等、ドラム前端よりも前方にスペースを設けることなく輸送車に搭載することができる。さらに、自走中であっても壁際までドラム前端がくるように運転できる。また、スクレーパが前方に突出するように前方及び上方に回転させて整備位置に保持することで、スクレーパが自重で若しくは外力が加わることにより作業位置に戻ることを防止し、安全にスクレーパ等の整備を行うことができる。また、このようにスクレーパの位置を3段階に保持できるため、用途に応じた適切な位置にスクレーパを移動させることにより、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まずは、本発明に係る転圧車両の概略について以下に説明する。
図1に示すように、車体1はフロントフレーム16及びリアフレーム17を有している。リアフレーム17はその後部に複数の後輪18を有する。一方、フロントフレーム16には転圧ドラム12が軸支されている。なお、フロント及びリアフレーム16、17はステアリングリンク19を介して関節方式により互いに連結されている。
【0020】
リアフレーム17の上部中央には運転席20が設けられている。この運転席20は、リアフレーム17の幅方向に延びるベンチシートである。
また、フロントフレーム16にはエンジンルーム(図示しない)が設けられており、このエンジンルームは開閉可能なエンジンカバー21を有する。また、エンジンルーム内にはディーゼルエンジン(図示しない)及びこのディーゼルエンジンの近傍に油圧ポンプ(図示しない)が配置されており、この油圧ポンプはディーゼルエンジンにより駆動され、転圧ドラム12を振動及び回転させる振動用及び走行用モータ等の油圧機器に向けて作動油を供給する。
【0021】
スクレーパ6は、スクレーパ支持装置2とともにフロントフレーム16及びリアフレーム17に備わり、例えば転圧ドラム12の前側及び後輪18の後側に当接する。スクレーパ6は、転圧ドラム12、後輪18と略等しい幅をそれぞれ有している。
【0022】
更に、車体1には散水装置(不図示)が備えられている。この散水装置は各スクレーパ6の近傍に配置された散水ノズル(不図示)を有している。これら散水ノズルから転圧ドラム12及び後輪18の周面や、地面に水を散水することがでる。このため、散水装置は、散水用の水を貯留する水タンク23及びこの水タンク23と散水ノズルとを接続する散水管22(
図2〜
図4参照)を有している。
【0023】
水タンク23はリアフレーム17の後端と運転席部
との間に配置され、車体1の車重とのバランスを取りつつ、可能な限り大容量であるのが望ましい。それ故、水タンク23はリアフレーム17の幅とほぼ同一の幅を有する一方、その上面がリアフレーム17の後端から運転席20に向かって徐々に高くなり、そして、その底が運転席20の座面下側まで入り込む形状となっている。
【0024】
一方、リアフレーム17の前端部、即ち、運転席20の前方には、操作スタンド24が設けられている。詳しくは、この操作スタンド24にはハンドル25が取り付けられている。このハンドル25を運転席20に着座した作業者が操作することで、フロントフレーム16がステアリングリンク19を介して操向される。
【0025】
図1、
図2、
図5に示すように、車体1の前方にスクレーパ支持装置2が取り付けられている。スクレーパ支持装置2は、ブラケット支持体3を有している。ブラケット支持体3は、車体に対してボルト4で固定されている。ブラケット支持体3には、ブラケット5が回転軸8廻りに回転可能に支持されている。ブラケット5には、スクレーパ6がボルト7を介して固定されている。したがって、スクレーパ6は回転軸8を中心として回転移動可能である。また一方で、ブラケット支持体3には回転軸9廻りに回転する係合部材10が支持されている。この回転軸9は例えばブラケット支持体3にレーザ等を用いて孔をあけ、ここに棒状の軸を溶接等で固定して簡便に設けることができる。この回転軸9を係合部材10に挿通させ、回転軸9の端部において例えば割ピン等により係合部材10が抜け落ちることを防止する。ブラケット5とブラケット支持体3は、さらに引張ばね11で連結されている。車体1の下側には、転圧ドラム12に散水するための散水管22が配設されている。
【0026】
図2は、スクレーパ6が作業位置にある状態を示している。引張ばね11に抗してスクレーパ6が転圧ドラム12に当接し、ドラム12に付着した付着物を効率よく掻き落とすことができる状態である。このような作業位置では、スクレーパ6はドラム12に当接することで、その位置が決められている。なお、転圧ドラム12は車体1に備わり、車輪を兼ねている。
【0027】
ここで、係合部材10は板状であり、回転軸9を基点とする屈曲部10’を有している。この屈曲部10’は、係合部材が折れ曲がった部分の内縁側のことである。すなわち、係合部材10は略ブーメラン形状に形成されている。したがって、スクレーパ6が作業位置にあるとき、係合部材10はその一端あるいは他端がブラケット5に当接した状態(図の実線及び二点鎖線)の間を自由に回転可能である。
【0028】
係合部材10を
図2の二点鎖線の位置に配置し、スクレーパ6を前側(転圧ドラム12から離間させる方向)に少し回転させると、係合部材10の
一端10aが下方に回転する。このとき、ブラケット5に設けられた溝13に
一端10aは嵌り込んで係合する。これにより、スクレーパ6はこの位置で
図3のように固定される。この位置は回送位置であり、この回送位置は、
図2で示した作業位置からスクレーパ6及びブラケット5を前方に回転させ、係合部材10を溝13に係合させてスクレーパ6の先端が転圧ドラム12の前端を含む鉛直平面Lよりも後方にし、且つスクレーパ6が転圧ドラム12に非接触である状態である。転圧車両は、その性質上、
転圧ドラム12を壁際
に近付ける位置まで運転することがある。また、輸送時には、スペースの問題上、
転圧ドラム12の前側に突出物がない方が好ましい。このため、スクレーパ6を使用しない自走時や、輸送時において、回送位置におけるスクレーパ6の位置が鉛直平面Lよりも後方にあることで、上記問題を解決できる。
【0029】
一方で、係合部材10を
図2の実線の位置(係合部材10の一端10aがブラケット5から離れた状態)に配置した場合は、ブラケット5を回転させても係合部材10は溝13に係合されない。このように、作業位置にて係合部材10の傾きを調整し、ブラケット5を回転させることにより回送位置に移動するのか否かを決定することができる。そして、このことは係合部材10の傾きを視認するだけで容易に認識できる。係合部材10は、ブラケット5の上側であって、且つブラケット支持体3の前側に配設されているため、視認しやすい。これにより、上記のように作業位置から回送位置への次なる移動の認識を確実にできるとともに、係合部材10が溝13に入っているか否かを目視することで容易にスクレーパ6の位置(現在作業位置なのか回送位置なのか)を認識することができる。また、係合部材10を手で回転させるときも、ブラケット支持体3の前側に配設されていることにより、手を汚さずに操作することができる。
【0030】
また、輸送時等、車体1が振動してブラケット5が回転しようとしても、溝13から係合部材10が外れにくい。すなわち、係合部材10の重心が回転軸9よりも後側に位置しているので、ブラケット5が振動により前方に回転して係合部材10の下端(一端10a)が溝13から一瞬離れたとしても、係合部材10の屈曲部10’より上側が前方に回転してしまうことはない。ブラケット5が振動により前方に回転したときは係合部材10の一端10aが溝13の壁面に沿って溝13内で移動するだけである。よって、再びブラケット5が引張ばね11のばね力により後方に回転して溝13が係合位置に戻ったときには、係合部材10の下端(一端10a)に係合する。このため、転圧車両の輸送時等、スクレーパ6を回送位置に保持した状態で、車体1が振動しても係合部材10がブラケット5の溝
13から外れてスクレーパ6が作業位置に移動してしまうことを防止することができる。
【0031】
ブラケット5を回送位置から前方及び上方に力を加えてさらに回転させ、スクレーパ6の先端を鉛直平面Lよりも前方に位置させると、
図4に示すような整備位置となる。この状態では、スクレーパ6やスクレーパ支持装置2等の整備を行うことができる。この整備位置から回送位置あるいは作業位置に戻すためには、引張ばね11に抗してブラケット5を回転させる必要がある。このため、スクレーパ6が自重により作業位置等に戻ることが防止され、安全に整備を行うことができる。一方で、ブラケット支持体3及びブラケット5には、第1及び第2のピン孔14,15が形成されている。この第1及び第2のピン孔14,15は、ブラケット支持体3及びブラケット5を貫通している。そして、スクレーパ6が
図4の整備位置にあるときに、この第1及び第2のピン孔14,15の位置は、互いに一致する。この第1及び第2のピン孔14,15にロックピン(不図示)を挿通することにより、ブラケット5及びブラケット支持体3を互いに固定することができる。このため、スクレーパ6が整備位置にあるときに、ブラケット5が回転することを防止できる。したがって、上記引張ばね11と相俟って、さらに安全にスクレーパ等の整備を行うことができる。
【0032】
本発明に係る転圧車両は、上述したようにスクレーパ6の位置を3段階(作業位置、回送位置、整備位置)にそれぞれ保持できるため、用途に応じた適切な位置にスクレーパを移動させることができ、作業性を向上させることができる。
【0033】
以下に本発明に係る別の転圧車両について説明する。転圧車両についての基本的な構造は上述した
図1と同様である。以下で説明するものは、上述したスクレーパ支持装置2の構造が異なっているものである。
【0034】
図6及び
図7に示すように、車体1(
図1参照)の前方にスクレーパ支持装置102が取り付けられている。スクレーパ支持装置102は、車体1の前方に張り出しているブラケット支持体103を有している。ブラケット支持体103は、車体1に対してボルト等(不図示)で固定されている。ブラケット支持体103には、ブラケット105が回転軸108廻りに回転可能に支持されている。
図8を参照すれば明らかなように、ブラケット105には円筒状の軸受け105aが備わっていて、回転軸108はこの軸受け105a内を挿通する。また、ブラケット105には、スクレーパ6がボルト107を介して固定されている。したがって、スクレーパ6は回転軸108を中心として回転移動可能である。このスクレーパ6は、車体1に備わる転圧ドラム12に付着した付着物を掻き落とすものである。
【0035】
また一方で、ブラケット支持体103の先端部103aには軸板126がナット127にて固定されている。この軸板126は円板形状であり、中心からずれた位置、すなわち偏心した位置に回転軸108が回転自由に挿通されている。したがって、回転軸108が回転しても軸板126はこれに伴って回転しない。この軸板126には板状の係合部材110が回転可能に取付けられている。この係合部材110は軸板126と同等の厚みを有している。また、係合部材110には軸板126と同径の貫通孔110aが形成され、この貫通孔110aに軸板126が配設される。これにより、係合部材110は軸板126の周側面に沿って回転可能となる。
【0036】
係合部材110は軸板126を基点として途中で折れ曲がり、当該部分を屈曲部110bとしている。この屈曲部110bは、係合部材が折れ曲がった部分の内縁側のことである。すなわち、係合部材110は略ブーメラン形状に形成され、回転中心からの距離が異なる少なくとも2つの端部を有している。また、ブラケット支持体103とスクレーパ6との間には引張りばね111が架け渡されている。また、ブラケット105には受け片128が備わっていて、この受け片128は、後述するように、係合部材110の端部と係合する。
【0037】
図6は、スクレーパ6が作業位置にある状態を示している。この状態は、引張ばね111に抗してスクレーパ6が転圧ドラム12に当接し、ドラム12に付着した付着物を効率よく掻き落とすことができる状態である。このような作業位置では、スクレーパ6はドラム12に当接することで、その位置が決められている。すなわち、スクレーパ6が作業位置にある状態では、引張りばね111は付勢された状態であり、さらにスクレーパ6を転圧ドラム12の方向(
図6の矢印A方向)に引張っている。
【0038】
図9は、スクレーパ6が回送位置にある状態を示している。スクレーパ6を回送位置にするためには、スクレーパ6
を作業位置にある状態からブラケット105とともに前方に回転させ、係合部材110の一端である第1端部110cを受け片128に係合させる。具体的には、ブラケット105を前方に回転させるとともに係合部材110も前方に回転させ、第1端部110cを受け片128に当接させる。この回送位置では、スクレーパ6が転圧ドラム12に非接触であり、且つブラケット105は引張りばね111に抗した状態で保持されている。
【0039】
この回送位置におけるスクレーパ6の保持機構について
図10を用いて詳細に説明する。上述したように、回送位置は、係合部材110の第1端部110cが受け片128に当接した状態である。すなわちこの状態は、係合部材の折れ曲がり部分の外縁側(係合部材110の折れ曲がり部分における屈曲部110bとは反対側の縁側)が後方に位置し且つ係合部材110の両端部のうち第1端部110cが受け片128に当接した状態である。この位置にあるブラケット105は、引張りばね111により転圧ドラム12の方向に引張られている(
図10の矢印B方向)。
【0040】
ここで、係合部材110の第1端部110cが受け片128に当接している当接部が描く回転軌跡をR1とする。また、受け片128が第1端部110cに当接している当接部が描く回転軌跡をR2とする。上述したように、軸板126の回転中心に対して回転軸108は偏心した位置にあるので、軸板126廻りに回転する係合部材110と回転軸108廻りに回転するブラケット105の回転軌跡は同心円とならない。したがって、回転軌跡R1とR2も同心円とならず、互いに2箇所で交わることになる。このうちの1箇所における交点で第1端部110cと受け片128が当接したときがスクレーパ6の回送位置となる。
【0041】
第1端部110c及び受け片128が当接した位置から、ブラケット105が転圧ドラム12方向に向けて回転する際の回転方向(後方向)に対してR1がR2より外側に張り出している。したがって、受け片128が後方向に回転しようとしても(受け片128の当接部が回転軌跡R2を描こうとしても)、その外側に張り出した回転軌跡R1を描く第1端部110cの当接部が妨げとなる(互いに当接した状態から交差しようとするため、両者がこの当接位置から回転軌跡を描いて後方向に移動できない)。すなわち、引張りばね111による矢印B方向への引張りがあっても、係合部材110が回転するにはR1
を描くだけの径が必要であるのに、受け片128が当接しているため、当接したまま回転するには係合部材110が回転するに必要なスペースが確保できない。
【0042】
このため、係合部材110はスクレーパ6を回送位置に保持するロック機構としての役割を担うことになる。なお、回送位置にて、スクレーパ支持装置102の先端を転圧ドラム12の前端を含む鉛直平面よりも後方となるような位置に配すれば、車体1の輸送時等、ドラム12の前端よりも前方にスペースを設けることなく輸送車に搭載することができる。さらに、自走中であっても壁際までドラム12の前端がくるように運転できる。
【0043】
ブラケット105を回送位置から前方及び上方に力を加えてさらに回転させると、
図11に示すような整備位置となる。この整備位置にスクレーパ6を移動させるには、ブラケット105
の回転の際に、引張りばね111に抗して回転させ、ブラケット105を上方に位置させる。さらに、係合部材110の他端である第2端部110dを受け片128に係合させる。この状態では、スクレーパ6やスクレーパ支持装置102等の整備を行うことができる。この整備位置から回送位置あるいは作業位置に戻すためには、引張ばね111に抗してブラケット105を下方に回転させる必要がある。このため、スクレーパ6が自重又は人がぶつかったりして外力が加わった場合に作業位置等に戻ることが防止され、安全に整備を行うことができる。車体1
の輸送時等、振動等により万が一引張りばね111に抗してスクレーパ6が下がってしまうことを確実に防止するため、第2端部110dが受け片128に当接している。したがって、上記引張ばね111と相俟って、さらに安全にスクレーパ等の整備を行うことができる。
【0044】
この整備位置におけるスクレーパ6の保持機構について
図12を用いて詳細に説明する。上述したように、整備位置は、係合部材110の第2端部110dが受け片128に当接した状態である。すなわちこの状態は、係合部材110の折れ曲がり部分の外縁側(係合部材110の折れ曲がり部分における屈曲部110bとは反対側の縁側)が後方に位置し且つ係合部材110の両端部のうち第2端部110dが受け片128に当接した状態である。この位置にあるブラケット105が転圧ドラム12の方向(
図12の矢印C方向)に回転するには、引張りばね111に抗する必要がある。
【0045】
ここで、係合部材110の第2端部110dが受け片128に当接している当接部が描く回転軌跡をR3とする。また、受け片128が第2端部110dに当接している当接部が描く回転軌跡をR2とする。第2端部110d及び受け片128が当接した位置から、ブラケット105が転圧ドラム12方向に向けて回転する際の回転方向(矢印C方向)に対してR3がR2より外側に張り出している。上述した理由と同様の理由により、受け片128の矢印C方向への回転は、第2端部110dにより妨げられる。
【0046】
すなわち、受け片128が矢印C方向に回転しようとしても(受け片128の当接部が回転軌跡R2を描こうとしても)、その外側に張り出した回転軌跡R3を描く第2端部110dの当接部が妨げとなる(互いに当接した状態から交差しようとするため、両者がこの当接位置から回転軌跡を描いて矢印C方向に移動できない)。係合部材110が矢印C方向に回転するにはR3が描くだけの径が必要であるのに、受け片128が当接しているため、当接したまま回転するには係合部材110が回転するに必要なスペースが確保できない。
【0047】
このため、係合部材110はスクレーパ6を整備位置に保持するロック機構としての役割も担うことになる。
【0048】
なお、上記のように係合部材110を回送位置及び整備位置のロック機構として用いるためには、回転軸108に対して軸板126の中心が車体1に対して後方且つ下側(
図10、
図12では右下)にあることが好ましい。この位置にあることで、係合部材110の当接部からドラム12方向(回送位置であれば後方、整備位置であれば下方)への回転軌跡R1、R3が受け片128の当接部の回転軌跡R2よりも外側に張り出すからである。回転軸108に対して軸板126の中心が車体1に対して前方且つ上側(
図10、
図12では左上)にあっても同様である。回転軸108に対して軸板126の中心が車体1に対して前方且つ下側である場合、第1端110cと受け片128が整備位置や回送位置以外の位置で当接してしまい、スクレーパ6の回転が妨げられてしまう。また、後方且つ上側である場合、整備位置にあるときに回転軌跡R3がR2より下側方向で外側に張り出さないので、スクレーパ6が自重により自由に回転してしまう。
【0049】
また、ブラケット105は途中で折れ曲がり、上部105bと下部105c(
図8参照)を有している。上述した軸受け105aは上部105bに備わっている。そして、スクレーパ6は下部105cに取付けられる。さらに受け片128は、下部105cであってスクレーパ6の取付け位置よりも上部105b側に取付けられることが好ましい。このような位置に受け片128を設けることで、係合部材110が受け片128から外れにくくなることが確認されている。
【0050】
また、係合部材110は、ブラケット支持体103の前側に配設されているため、視認しやすく、係合部材110の傾きを目視することで容易にスクレーパの位置を認識することができる。
【0051】
また、この例における転圧車両でも、上述したようにスクレーパ6の位置を3段階(作業位置、回送位置、整備位置)にそれぞれ保持できるため、用途に応じた適切な位置にスクレーパを移動させることができ、作業性を向上させることができる。
【0052】
なお、上述した例において、スクレーパ支持装置2、102を車体前方側(前輪ドラム)に取付けた場合として説明したが、
図1に示すように、例えばスクレーパ支持装置2’で示すように車体後方側(後輪ドラム)に取付けることも可能である。この場合は、スクレーパ6や係合部材10、110の向き等、車体1を基準として前方(前側)や後方(後側)と表現して説明した部分は前後が反対となる。