(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の周波数帯での他の無線装置の検出をパッシブ検出とし,前記第2の周波数帯での他の無線装置の検出をパッシブ検出またはアクティブ検出とするように,前記測定要求において指示する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は,本発明の実施形態に係る無線システムを表す模式図である。
図2は,無線システム中,ネットワークNWに接続される機器の内部構成を表すブロック図である。
【0011】
図1に示すように,この実施形態のシステムは,免許を要し正式に所定の周波数(帯)が割当てられたプライマリシステムPSが使用する周波数帯と重複する周波数帯を用いている。プライマリシステムPSは,例えば正規に免許されたテレビ放送システムなどであり,電波を送信する送信装置PSTXと,当該電波を受信する受信装置PSCLとにより構成されている。
【0012】
実施形態に係る二次システム(Secondary System)SS1,SS2は,アクセスポイント装置AP1,AP2と,アクセスポイント装置AP1,AP2それぞれと通信するステーション装置STA1(1)〜STA1(n1),STA2(1)〜STA2(n2)により構成される。
【0013】
アクセスポイント装置AP1,AP2およびステーション装置STA1(1)〜STA1(n1),STA2(1)〜STA2(n2)は,TVWSを利用する無線装置(TVBD)であり,プライマリシステムPSと重複する周波数帯を使用する。
【0014】
これらTVBDは,電波監理上プライマリシステムPSに対して混信を与えてはならない。そのため,アクセスポイント装置AP1,AP2およびステーション装置STA1(1)〜STA1(n1),STA2(1)〜STA2(n2)は,プライマリシステムPSが実際に使用していない(あるいは割当てられていない)周波数(帯)を選択して使用している。
【0015】
このように複数の二次システムSS1,SS2が存在すると,二次システムSS1,SS2間で混信等の通信障害が生じる可能性がある。例えば,ステーション装置STA2(1)が,アクセスポイント装置AP1からの電波により混信を受けることが考えられる。本実施形態では,後述のように,共存イネーブラCE,共存マネージャCM,共存発見情報サーバCDISを用いることで,このような混信等を防止し,TVBDの共存の確実性を向上している。
【0016】
この実施形態のシステムでは,アクセスポイント装置AP1,AP2,共存管理サーバCMS,共存発見情報サーバ(Coexistence Discovery and Information Server:CDIS)およびTVWS−DBが,インターネットなどのネットワークNWを介して相互に接続されている。
【0017】
アクセスポイント装置AP1,AP2は,プライマリシステムPSの周波数帯と重複した周波数(帯)を利用する二次システムSS1,SS2それぞれに属するWLANのアクセスポイント装置であり,無線通信装置として機能する。
【0018】
アクセスポイント装置AP1は,アンテナ11,無線通信部12,インタフェース部(I/F部)13,アクセスポイント管理部(AP管理部)14,記憶部15,共存イネーブラCE1を備える。なお,アクセスポイント装置AP2は,アクセスポイント装置AP1と同様の構成を有することから,説明を省略する。
【0019】
無線通信部12は,ステーション装置STA1(1)〜STA1(n1)からの電波をアンテナ11を介して受信し,所定の方式で復調してインタフェース部13を介してネットワークNWに送る。一方,ネットワークNWからの情報は,インタフェース部13を介して無線通信部12に送られ,無線通信部12が,当該情報を無線信号に変換してアンテナ11を介してステーション装置STA1(1)〜STA1(n1)に送信する。すなわち,無線通信部12およびインタフェース部13は,ステーション装置STA1(1)〜STA1(n1)を管理するWLANのアクセスポイントとして機能し,アクセスポイント管理部14は,これらの機能を制御する。
【0020】
無線通信部12は,例えば,IEEE802.11規格に準拠したシステムを用いて実現することができる。無線通信部12は,第1の無線システム(プライマリシステムPS)と重複する第1の周波数帯および前記第1の無線システムと重複しない第2の周波数帯で無線通信可能な無線通信部に対応する。
【0021】
なお,無線通信部12が使用する周波数帯は,プライマリシステムPSが使用する周波数帯と少なくとも一部が重複している。そのため,AP管理部14は,プライマリシステムPSが実際には使用していないか割当てのない周波数(帯)を利用周波数(チャンネル)として選択する。また,アクセスポイント管理部14は,プライマリシステムPSに妨害を与えないため,無線通信部12の周波数(帯)および送信電力を制御する機能をも有している。
【0022】
記憶部15は,情報を格納するメモリである。記憶部15は,例えばフラッシュメモリやハードディスクドライブなどにより実現することができる。
【0023】
共存イネーブラCE1は,アクセスポイント装置AP1と,対応する共存マネージャCMとの間の通信を実現するインタフェースとして機能する機能要素である。
【0024】
本実施形態では,共存イネーブラCE1は,二次システムSS1に属するアクセスポイント装置AP1内にハードウェアまたはソフトウェアとして配設されている。
但し,共存イネーブラCE1は,アクセスポイント装置AP1とは別の無線装置内や当該二次システム内に配設しても良い。この場合,共存イネーブラCE1は,対応する二次システムに属するTVBDと有線または無線により接続される。
【0025】
共存イネーブラCE1,CE2は,以下に対応する。
・管理装置から送信された測定要求に基づいて,前記第1の周波数帯での干渉測定または前記第1,第2の周波数帯での他の無線装置の検出の少なくとも何れかを前記通信部に実行させる第1の制御部
・前記管理装置に,前記干渉測定または前記検出の結果を通知する通知部
・前記管理装置から送信された,他の無線装置のチャンネル(周波数)および位置を含む第1の共存情報に基づいて,チャンネルおよび最大パワーレベルを決定し,前記無線通信部を制御する第2の制御部
・前記管理装置から送信された,利用可能な1以上のチャンネルおよび最大パワーレベルを含む第2の共存情報に基づいて,前記無線通信部を制御する第3の制御部
・前記管理装置から送信された許可解除情報に基づいて,前記第1,第2の周波数帯の少なくとも一部における,前記無線通信部での無線通信を停止させる第4の制御部
・前記第1の周波数帯での干渉測定または前記第1,第2の周波数帯での他の無線装置の検出の少なくとも何れかを前記通信部に自発的に実行させる第5の制御部
・前記管理装置に,前記干渉測定または前記検出の結果を通知する第3の通知部
・前記無線通信の停止を前記管理装置に通知する第2の通知部
・前記第1の周波数帯での干渉測定または前記第1,第2の周波数帯での他の無線装置の検出の少なくとも何れかを前記通信部に自発的に実行させる第5の制御部
・前記管理装置に,前記干渉測定または前記検出の結果を通知する第3の通知部
【0026】
共存管理サーバCMSは,アクセスポイント装置AP1,AP2に対応する共存イネーブラCE1,CE2を管理する共存管理装置である。共存管理サーバCMSは,第1の無線システムと重複する第1の周波数帯および前記第1の無線システムと重複しない第2の周波数帯で無線通信可能な無線通信装置を管理する管理装置に対応する。
共存管理サーバCMSは,インタフェース部(I/F部)31,記憶部32,共存マネージャCMを有する。
【0027】
インタフェース部31は,共存管理サーバCMSをネットワークNWと接続するためのインタフェースである。インタフェース部31は,以下に対応する。
・第1の周波数帯での干渉測定または前記第1,第2の周波数帯での他の無線装置の検出の少なくとも何れかの測定要求を前記無線通信装置に送信する第1の送信部
・前記測定要求に対応する,前記干渉測定または前記検出の結果を受信する第1の受信部
・決定された,前記第1の共存情報,または前記第2の共存情報のいずれかを送信する第2の送信部
【0028】
記憶部32は,情報を格納するメモリである。記憶部32は,例えばフラッシュメモリやハードディスクドライブなどにより実現することができる。
【0029】
共存マネージャCMは,二次システムによるプライマリシステムとの共存要求(利用周波数の共有要求)や共存許可(利用周波数の共有許可)などの制御通信を行う管理装置である。共存マネージャCMは,二次システムSS1,SS2がプライマリシステムの周波数帯と重複する周波数(帯)を使用する場合に,TVWS−DBや他の共存マネージャと情報の授受および調整を行うインタフェースとして機能する。
【0030】
本実施形態では,共存マネージャCMは,共存管理サーバCMS内にハードウェアまたはソフトウェアとして配設されている。
但し,共存マネージャCMは,共存管理サーバCMSとは別の装置内やインターネットなどのネットワークNW上に配設しても良い。この場合,共存マネージャCMは,共存イネーブラCE1,CE2等と有線または無線により接続される。
【0031】
共存マネージャCMは,以下に対応する。
・前記干渉測定または前記検出の結果および前記共存情報要求に対応して,他の無線装置のチャンネルおよび位置を含む第1の共存情報,または利用可能な1以上のチャンネルおよび最大パワーレベルを含む第2の共存情報のいずれかを決定する決定部
・前記干渉測定または前記検出の結果に基づいて,他の無線通信装置に許可解除を指示する指示部
【0032】
共存発見情報サーバ(Coexistence Discovery and Information Server:CDIS)は,プライマリシステムPSと利用する周波数(帯)が重複し当該プライマリシステムPSよりも当該周波数(帯)を利用する優先順位が低いシステム,すなわち二次システムを登録したデータベースサーバである。共存発見情報サーバCDISは,ネットワークNWと接続され,共存マネージャCMからの問い合わせに応じて,対応するTVBDの位置等における通信環境(周波数利用状況,共存イネーブラCEからの測定報告等)を回答する機能を有する。すなわち,共存発見情報サーバは,プライマリシステムPSの周波数帯と重複する周波数(帯)を利用する二次システムの情報を蓄積し,問い合わせに応じて当該情報を提供する。
【0033】
共存発見情報サーバCDISは,ネットワークNWと接続するインタフェース部(I/F部)41,データベースエンジンとして機能するアクセス部42および二次システムに関する通信環境の情報を格納した通信環境データベース42を備える。後述のように,通信環境データベース42は,共存イネーブラCEからの測定報告を蓄積する。
【0034】
TVWSデータベース(TVWS−DB)は,プライマリシステムPSおよび当該プライマリシステムPSに割当てられた周波数(帯)を管理するデータベースサーバである。TVWS−DBは,ネットワークNWと接続するインタフェース部51,データベースエンジンとして機能するアクセス部52およびプライマリシステムPSおよび割当てられた周波数等を格納した周波数データベース53を備える。
【0035】
プライマリシステムPSが実際に利用する周波数(帯)あるいは監督官庁によりプライマリシステムPSに割当てられている周波数(帯)は,TVWSデータベース(TVWS−DB)により管理され,インターネットなどのネットワークNWを介して一般に提供されている。
【0036】
アクセスポイント装置AP1,AP2(およびステーション装置STA1(1)〜STA1(n1),STA2(1)〜STA2(n2))は,TVWS−DBにアクセスして,プライマリシステムPSが実際には使用していない(あるいは割当てられていない)周波数(帯)を選択する。
【0037】
(本実施形態に係る無線システムの動作)
以下,本実施形態に係る無線システムの動作につき説明する。
図3は,共存イネーブラCEと共存マネージャCM間での送受信を表す図である。
【0038】
(1)ピアリング(peering)
共存イネーブラCEと共存マネージャCM間での接続を設定するためTVBD共存ピアリング手続(TVBD coexistence peering procedure)が用いられる。共存イネーブラCEは,TVWSにおいて,共存ピアリングプロトコルを用いて,TVBD共存ピアリング手続に従い,共存マネージャCMへの接続を確立する。
【0039】
具体的には,共存イネーブラCEは共存マネージャCMに共存ピアオープンフレームを送信する。
共存マネージャCMは,ピアを許可するか否かを決定する。共存マネージャCMは,ピアを許可する場合,成功(SUCCESS)に設定された理由結果コード(reason result code)を含む共存ピア確認フレーム(Coexistence Peer Confirm frame)を送信する。共存マネージャCMは,ピアを許可しない場合,要求が拒否または否定に設定された状態コード(Status code)を含む共存ピア確認フレーム(Coexistence Peer Confirm frame)を送信する。
ピア開放が共存マネージャCMに許可されると,ピアリング手続は成功して終了する。
【0040】
要求が拒否または否定された場合,共存イネーブラCEは,他の共存マネージャCMに共存ピアオープンフレームを送信し,接続の設定を再試行できる。
【0041】
共存ピア確認フレーム(Coexistence Peer Confirm frame)中のCM識別フィールド中の共存マネージャCMがより効率的に共存イネーブラCEに共存サービスを提供できる場合,共存マネージャCMは,共存イネーブラCEにその共存マネージャCMへの接続を推奨しても良い。この場合,共存マネージャCMはこの共存マネージャCMのアドレスに設定されたCM識別フィールドを備える共存ピア確認フレームを送信する。共存イネーブラCEはこのアドレスを用いて共存マネージャCMとの接続を試行できる。
もし,推奨された共存マネージャCMが推奨した共存マネージャCM程に良くない場合,共存イネーブラCEは推奨した共存マネージャCMにピアの許可の再考を問い合わせても良い。
【0042】
ピアリングは,後の測定要求,測定報告,共存情報要求,共存情報応答等の前提である。ピアリングが未了の場合,測定要求等は実行されない。
【0043】
(2)測定要求(Measurement Request)
共存マネージャCMは,1以上の測定要求を含む測定要求フレームを用いて,1以上の共存イネーブラCEにTVWSの測定要求(干渉測定(interference measurement),TVBD検出(TVBD Detection) の要求)を送信する。
測定要求は個別宛先アドレスまたはグループ宛先アドレスを用いて共存イネーブラCEに送信される。個別宛先アドレスは,共存イネーブラCEを個別に指定するアドレスである。グループ宛先アドレスは,共存イネーブラCEのグループを指定するアドレスである。グループ宛先アドレスを用いることで,複数の共存イネーブラCEへの測定要求が容易になる。
【0044】
図4Aは,測定要求フレームの構成の一例を表す図である。測定要求フレームは,共存フレーム・ヘッダ,情報タイプ,ダイアログ・トークン,測定要求要素を含む。情報タイプフィールドは,例えば,3に設定される(測定要求)。ダイアログ・トークンは,測定要求フレームを識別し,後述の測定報告との対応関係を表すためのものである。即ち,後述のように,測定報告フレームのダイアログ・トークンは,測定要求フレームのダイアログ・トークンの値がコピーされる。測定要求要素フィールドは,1以上の測定要求要素を含む。測定要求要素は,TVBDが実行する測定内容を表す。
図4Bに示すように,測定要求要素フィールドは,データ長,測定タイプ,測定要求を含む。
図4Cに示すように,測定タイプフィールドでは,干渉測定,TVBD検出を指定できる。
【0045】
図4Dは,干渉測定要素の測定要求フィールドの詳細を示す。測定回数は,測定/報告の回数を表す。この値が0の場合,1回の測定を表す。測定開始時間は,測定が開始される時間を表す。この値が0の場合,即時の測定を表す。測定継続時間は,測定が継続される時間を表す。測定インターバルは,測定間の時間を表す。TVチャンネル番号(周波数)は,測定対象とするTVチャンネル番号を表す。チャンネル番号はそれぞれの国や地域で異なって定義される。そのTVBDの位置またはその付近の特定の位置で利用可能/利用不能なチャンネル番号が指定される。
【0046】
図4Eは,TVBD検出要素の測定要求フィールドの詳細を示す。測定開始時間は,測定が開始される時間を表す。この値が0の場合,即時の測定を表す。測定継続時間は,測定が継続される時間を表す。測定インターバルは,測定間の時間を表す。TVチャンネル番号は,測定対象のTVチャンネル番号を表す。チャンネル番号はそれぞれの国や地域で異なって定義される。
【0047】
共存マネージャCMは,自己の管理する区域での通信環境の適切な把握が可能となるように,共存発見情報サーバCDISの通信環境データベース42を参照して,測定要求で要求する測定の内容を決定できる。例えば,そのTVBDの近傍での測定報告の豊富さに応じて,測定内容を調節できる(そのTVBDの近傍での測定報告が乏しい場合に詳細な測定(例えば,全チャンネルでの干渉測定,TVBD検出)を要求する等)。
また,通信環境データベース42の内容と共存イネーブラCEからの測定報告とが矛盾するような場合に,その矛盾する内容に特化した測定を要求できる。例えば,隣接する位置での通信環境に大きな相違がある場合に,その近傍に配置されるTVBDでの測定を要求できる。
【0048】
(3)測定報告(Measurement Report)
測定要求を受け取った共存イネーブラCEは,TVWSを用いて1以上のチャンネルで測定する。なお,非動作中のチャンネルでの測定が動作中のチャンネルでの動作を阻害する可能性があることから,共存イネーブラCEはサービスロード,電力状態,動作条件を考慮する必要がある。
【0049】
1)干渉測定(Interference Measurement)
測定要求フレームが干渉測定要求を含む場合,共存イネーブラCEは干渉測定(電界強度の測定)を行う。測定要求フレームのチャンネル番号フィールドに特定のチャンネル番号が挿入されている場合,共存イネーブラCEは指定されたチャンネルで干渉測定を行う。
【0050】
2)TVBD検出(TVBD Detection)
測定要求フレームがTVBD検出要求を含む場合,共存イネーブラCEはTVBD検出を行う。測定要求フレームのチャンネル番号フィールドに特定のチャンネル番号が挿入されている場合,共存イネーブラCEは指定されたチャンネルで他のTVBDを検出する。
【0051】
チャンネル番号は,測定を実行するTVBD(ここでは,アクセスポイントAP)で利用不能なチャンネル番号を指定できる。このときの検出には,パッシブ検出が用いられる。アクティブ検出は認められない。パッシブ検出によって,利用が認められていないチャンネルでの混信等を防止できる。なお,パッシブ検出は,他のTVBD(アクセスポイントAP等)から送信される電波(例えば,アクセスポイントAPからのビーコン)を受信して,他のTVBDを検出することをいう(検出のための送信は行わない)。アクティブ検出は,他のTVBDに対して応答を要求する信号を送信し,他のTVBDからの応答信号(例えば,ACK)を受信することで,他のTVBDを検出することをいう。
一方,測定を実行するTVBD(ここでは,アクセスポイントAP)で利用可能なチャンネルでの検出には,パッシブ検出,またはアクティブ検出が用いられる。
【0052】
測定の結果は,測定要求に対応する1以上の測定報告要素を含む測定報告フレームを用いて,大きな遅延無く,共存イネーブラCEから共存マネージャCMに送信される。
【0053】
図5Aは,測定報告フレームの構成の一例を表す図である。測定報告フレームは,共存フレーム・ヘッダ,情報タイプ,ダイアログ・トークン,測定報告要素を含む。情報タイプフィールドは,例えば,4に設定される(測定報告)。既述のように,ダイアログ・トークンフレームは,測定要求フレームに対応する同一のダイアログ・トークン値を含む。測定報告要素フィールドは,1以上の測定報告要素を含む。測定報告要素は,TVBDが実行する測定内容を表す。
図5Bに示すように,測定報告要素フィールドは,データ長,測定タイプ,測定報告を含む。
【0054】
図5Cは,干渉測定報告要素の測定報告フィールドの詳細を示す。実測定開始時間は,測定が開始される時間を表す。測定継続時間は,測定が継続される時間を表す。測定TVBDアドレスは,測定したTVBDのMACアドレスを利用できる。TVBD検出報告サブ要素は,測定された干渉レベルを含む。
図5Dは,干渉測定報告サブ要素フィールドの詳細を示す。RCPIは,dBm単位での受信チャンネルパワーを表す。TVチャンネル番号は,測定対象のTVチャンネル番号を表し,測定要求のTVチャンネル番号と対応する。
【0055】
図5Eは,TVBD検出要素の測定報告フィールドの詳細を示す。実測定開始時間は,測定が開始された時間を表す。測定継続時間は,測定が継続される時間を表す。測定方法は,測定に用いられた方法を表す(0:パッシブ検出,1:アクティブ検出)。測定TVBDアドレスは,測定したTVBDのMACアドレスを利用できる。
【0056】
図示していないが,TVBD検出報告サブ要素は,誤動作(または不正)TVBDフィールドおよびチャンネル番号フィールドを有する。指定されたチャンネル上で動作するTVBDのアドレスおよび対応するチャンネル番号が,誤動作(または不正)TVBDフィールドおよびチャンネル番号フィールドそれぞれに含められる。即ち,共存イネーブラCEは,TVWS−DBを参照して,TVWS−DBで認められていないチャンネルまたはパワーレベルのTVBDを抽出できる。TVBD検出要求で測定するチャンネルが指定されていない場合,チャンネル番号フィールドに実際に検出されたチャンネル番号が挿入される。
【0057】
・自発的測定報告
共存イネーブラCEは,共存マネージャCMからの測定要求が無くても,自発的に測定結果を送信できる。この場合,ダイアログ・トークン・フィールドを0とした測定報告フレームが送信される。例えば,バックグランド測定によって通信環境の変化が検出された場合に,自発的に測定結果が送信される。
【0058】
例えば,次のa,bのような自発的測定報告が可能である。
a.共存イネーブラCEが,スケジュールに従って,測定報告を行う。具体的には,測定内容,測定の日時や周期(スケジュール)を予め決めておき,決められた日時等が到来したときに,測定および共存マネージャCMへの報告を行う。
【0059】
b.共存イネーブラCEが,通信環境の変化に対応して,測定報告を行う。具体的には,受信信号のエラー率,干渉レベル等により,通信環境の悪化を検知したときに,測定報告を行う。エラー率あるいはその時間的変化が所定の値より大きくなったことにより,通信環境の悪化を検知できる。
この場合,通信環境が変化したチャンネルと,測定報告の対象となるチャンネルを異ならせても良い。例えば,干渉レベルが大きくなったチャンネルと隣接するチャンネルでの測定報告を行っても良い。
【0060】
測定の報告を受け取った共存マネージャCMは,そのチャンネルの状態が良くない(例えば,高干渉)場合に,再度の測定を要求できる。このことは,共存マネージャCMの決定の基礎とする情報が正確でなかったり,共存イネーブラCEが正規に動作していない可能性が高かったりすることを意味する。
【0061】
(4)測定報告の集積
共存イネーブラCEからの測定報告は,共存マネージャCMで受信され,共存発見情報サーバCDISに送られる。即ち,共存イネーブラCEからの測定報告に基づいて,共存発見情報サーバCDISの通信環境データベース42が更新される。後述のように,共存マネージャCMは通信環境データベース42を参照することで,TVBDそれぞれのチャンネル,最大パワーレベルを指定し,混信等を防止することが可能となる。
【0062】
後述のように,TVBDの位置の誤りが生じる可能性がある。この場合,位置に誤りがあるTVBDでの測定報告は一種の誤情報となる。このような誤情報の集積を防ぐため,共存マネージャCMは通信環境データベース42上のデータと共存イネーブラCEからの測定報告に矛盾が無いかを確認し,訂正するのが好ましい。例えば,近接する複数のTVBDでの測定結果での食い違いが大きい場合に,他のTVBDでの測定を要求し,この測定報告に基づいて食い違いを訂正する。
【0063】
(5)共存情報要求(coexistence information request)
共存マネージャCMとのピアリングが成功した共存イネーブラCEは,共存マネージャCMに共存情報を要求する。この要求には,TVBDのデバイスタイプ,位置,利用可能なTVチャンネル,最大パワーレベル,要求する情報タイプが含まれる。最大パワーレベルはTVWS−DBから取得できる。
【0064】
TVBDデバイスタイプが含まれるのは,利用可能なTVチャンネル,最大パワーレベルを含むチャンネルリストがTVBDデバイスタイプによって変化するためである。利用可能なTVチャンネル,チャンネル毎の最大パワーレベルは,TVWS−DBから取得した最新の利用可能チャンネルリストと対応する必要がある。要求情報タイプが含まれるのは,TVBDにその状況に対応する選択肢を与えるためである。後述のように,情報タイプに応じて,共存イネーブラCEと共存マネージャCMの役割分担が変化する。
【0065】
もしTVWS−DBからTVBDが受け取る利用可能チャンネルリストが更新されたり,TVBDの位置が変化したりした場合,共存イネーブラCEは共存マネージャCMに共存情報を再度要求する。
【0066】
図6Aは,共存情報要求フレームの構成の一例を表す図である。共存情報要求フレームは,共存フレーム・ヘッダ,情報タイプ,ダイアログ・トークン,共存情報要求要素を含む。情報タイプフィールドは,例えば,5に設定される(共存情報要求)。共存情報要求要素フィールドは,1以上の共存情報要求を含む。
図6Bに示すように,共存情報要求要素フィールドは,データ長,情報タイプ,情報要求を含む。情報タイプは,
図6Cに示すように基本動作制御情報(Basic Operation Control Information),アドバンス動作制御情報(Advanced Operation Control Information),決定動作制御情報(Decisive Operation Control Information)に区分できる。
【0067】
情報タイプとして,基本動作制御情報を指定した場合,後述のように,そのTVBD(アクセスポイントAP)の位置付近で動作中のTVBDの位置,タイプ,使用するチャンネルの情報が共存情報として返信される。
【0068】
後述のように,指定する情報タイプに応じて,次のような共存情報が共存マネージャCMから返信される(共存情報応答)。
情報タイプとして,基本動作制御情報を指定した場合,そのTVBD(アクセスポイントAP)の位置付近で動作中のTVBDの位置,タイプ,使用するチャンネルの情報(その周囲の環境の情報)が共存情報として返信される。基本動作制御情報を受け取ったTVBDは,その周囲の環境を考慮して,自発的に使用するチャンネル,最大パワーレベルを決定する。
【0069】
情報タイプとして,アドバンス動作制御情報または決定動作制御情報を指定した場合,そのTVBD(アクセスポイントAP)で使用が認められるチャンネル,最大パワーレベルの情報が共存情報として返信される。アドバンス動作制御情報の場合,そのTVBDで使用の有無を選択可能な複数のチャンネル,最大パワーレベルの組み合わせが示される。一方,決定動作制御情報の場合,そのTVBDで使用するチャンネル,最大パワーレベルの組み合わせが示される。即ち,アドバンス動作制御情報の場合,示されたチャンネル,最大パワーレベルからの選択が可能であるが,決定動作制御情報の場合,示されたチャンネル,最大パワーレベルからの選択が不可能となっている。
【0070】
ここで,TVBDは共存情報要求フレームを用いて複数のチャンネルの利用を申請しても良い。このような場合,アドバンス動作制御情報または決定動作制御情報において,申請したチャンネルの数に対応するチャンネル,最大パワーレベルの組み合わせが選択可能な1まとまりの情報(情報のセット)として示される。即ち,TVBDが1つのチャンネルのみを用いる場合,チャンネルを単位として,チャンネル,最大パワーレベルが選択され,TVBDが複数のチャンネルを用いる場合,この複数のチャンネルを単位として,チャンネル,最大パワーレベルが選択される。
【0071】
以上から判るように,基本動作制御情報,アドバンス動作制御情報,決定動作制御情報の順に,共存イネーブラCE側の自由度が低くなっている。即ち,情報タイプを指定することで,共存マネージャCM,共存イネーブラCEでの役割分担を変更できる。共存イネーブラCEの機能(使用するチャンネル,最大パワーレベルの決定能力等)に応じて,情報タイプが選択される。例えば,共存イネーブラCE毎に指定する情報タイプを固定すれば良い。
【0072】
図6Dに示すように,情報要求フィールドは,データ長,TVBDデバイスタイプ,登録位置(TVBD位置),チャンネル番号,最大パワーレベルを含む。チャンネル番号,最大パワーは,TVWS−DBから取得した利用可能なTVチャンネルで設定される数nだけ繰り返すことができる。位置フィールドは,
図6Eに示すように,経度,緯度,標高の情報を含む。最大パワーレベルは,チャンネル番号に対応するdBm単位での許容される最大送信パワーを表す。
【0073】
(6)共存情報応答(coexistence information response)
共存情報を要求された共存マネージャCMは,共存情報応答フレームを送信する。
【0074】
1)基本動作制御情報が要求された場合,共存マネージャCMは現在動作中のTVBDの動作チャンネル,デバイスタイプ,認められるパワーレベル,および地理的位置を含む共存情報応答フレームを送信する。動作チャンネルは,共存イネーブラCEから受信された利用可能チャンネルのサブセットから構成される。
【0075】
2)アドバンス動作制御情報が要求された場合,共存マネージャCMは認められる動作チャンネル,パワーレベルを含む共存情報応答フレームを送信する。動作チャンネルおよびパワーレベルは,共存イネーブラCEから受信された利用可能チャンネルおよびパワーレベルのサブセットから構成される。
【0076】
3)決定動作制御情報が要求された場合,共存マネージャCMは認められる動作チャンネル,パワーレベルのサブセットを含む共存情報応答フレームを送信する。動作チャンネルおよびパワーレベルは,共存イネーブラCEから受信された利用可能チャンネルおよびパワーレベルのサブセットから構成される。
【0077】
動作チャンネル,パワーレベルは,共存イネーブラCEから得られた位置,利用可能チャンネルのような情報に基づき,共存マネージャCMによって算出される。共存情報要求が利用可能チャンネル,パワーレベルが含まれない場合,共存マネージャCMはTVWS−DBやCDISから得られた情報を利用できる。
【0078】
共存マネージャCMは,共存発見情報サーバCDISの通信環境データベース42を参照して,送信する動作制御情報を決定する。基本動作制御情報を送信する場合,通信環境データベース42からそのTVBDの位置近傍での通信環境の情報が抽出される。また,アドバンス動作制御情報あるいは決定動作制御情報を送信する場合,通信環境データベース42からそのTVBDの位置近傍での通信環境の情報が抽出され,そのTVBDの位置で混信が生じ難いチャンネル,パワーレベルが決定される。アドバンス動作制御情報の場合,そのTVBDで選択可能なチャンネル,パワーレベルが決定される。決定動作制御情報の場合,そのTVBDでの使用を指定するチャンネル,パワーレベルが決定される。
【0079】
図7Aは,共存情報応答フレームの構成の一例を表す図である。共存情報応答フレームは,共存フレーム・ヘッダ,情報タイプ,ダイアログ・トークン,共存情報応答要素を含む。情報タイプフィールドは,例えば,2に設定される(共存情報応答)。
図7Bに示すように,共存情報応答要素フィールドは,データ長,情報タイプ,情報応答を含む。情報タイプは,既述の
図6Cに示すように基本動作制御情報,アドバンス動作制御情報,決定動作制御情報に区分できる。
【0080】
1)基本動作制御情報応答
図7Cに示すように,基本動作制御情報の情報要求フィールドは,データ長,チャンネル番号,動作TVBDタイプ,動作TVBD位置を含む。チャンネル番号,動作TVBDタイプ,動作TVBD位置は繰り返すことができる。チャンネル番号は,共存イネーブラCEが動作可能なTVチャンネル番号に設定される。動作TVBDタイプ,動作TVBD位置は,現在動作中のTVBDのデバイスタイプおよび地理的位置を表す。
【0081】
2)アドバンス動作制御情報応答
図7Dに示すように,アドバンス動作制御情報の情報要求フィールドは,データ長,チャンネル番号,最大パワーレベルを含む。チャンネル番号,最大パワーレベルは繰り返すことができる。チャンネル番号は,共存イネーブラCEが動作可能なTVチャンネル番号に設定される。最大パワーレベルは,チャンネル番号に対応するdBm単位での許容される最大パワーレベルを表す。
【0082】
3)決定動作制御情報応答
図7Eに示すように,決定動作制御情報の情報要求フィールドは,データ長,チャンネル番号,最大パワーレベルを含む。チャンネル番号は,共存イネーブラCEが動作可能なTVチャンネル番号に設定される。最大パワーレベルは,チャンネル番号に対応するdBm単位での許容される最大パワーレベルを表す。
【0083】
なお,既述のように,TVBDが複数のチャンネルの利用を申請した場合,アドバンス動作制御情報または決定動作制御情報において,申請したチャンネルの数に対応するチャンネル,最大パワーレベルの組み合わせが選択可能な1まとまりの情報(情報のセット)として示される。アドバンス動作制御情報の場合,この情報のセットは複数であるが(複数セットからの選択可能),決定動作制御情報の場合,この情報のセットは1つのみとなる(選択不可)。即ち,TVBDが複数のチャンネルを用いる場合,この複数のチャンネルを単位として,チャンネル,最大パワーレベルが選択される。
【0084】
・自発的な共存情報応答
共存イネーブラCEからの共存情報要求と関係なく,共存マネージャCMは,非要求共存情報応答を送信できる。共存マネージャCMが共存情報を更新し,共存マネージャCMがその通知が必要と判断した場合に,非要求共存情報応答が利用される。共存情報の更新は,他の共存イネーブラCEとの新たな接続または測定結果の受信によって発生する。共存マネージャCMは,TVBDおよびプライマリシステムPSの測定結果としての動作(非動作)チャンネルを利用できる。
【0085】
(7)TVBDの設定
共存イネーブラCEは,共存マネージャCMから受信した動作チャンネルおよびパワーレベルがTVWS−DBから得た利用可能チャンネルとパワー限界と対応するかを確認する。対応しない場合,TVWS−DBからの動作チャンネルとパワーレベルとTVWS−DBから得た利用可能チャンネルとパワー限界との共通部分を得る。
【0086】
共存イネーブラCEは,共存情報応答フレーム中から動作チャンネルおよび送信パワーを選択する。選択したチャンネルが現在の動作チャンネルに含まれない場合,共存イネーブラCEは動的周波数選択の初期化によって,動作チェンネルを変更する。選択した送信パワーが現在の送信パワーに対応しない場合,共存イネーブラCEは送信パワー制御の初期化によって,送信パワーを変更する。
【0087】
(8)許可解除(deenablement)
許可解除(deenablement)は,不法TVBDに特定のチャンネルまたはTVバンド全域での動作を終了させるものである。共存マネージャCMは,1以上の共存イネーブラCEに許可解除コマンド(共存コマンドフレーム)を送信する。
許可解除の決定に,共存イネーブラCEからまたは共存マネージャCM自身によるTVBD検出報告,TVWS−DBまたは共存発見情報サーバCDISからの追加情報を利用できる。例えば,次のような場合に,許可解除が送信される。
・TVWS−DBで認められていないチャンネルあるいは最大パワーレベルで送信するTVBDが検出された場合
この場合,このTVBDからの不適切な送信を停止させるために,許可解除が送信される。
・近接する複数のTVBDが近接するチャンネルで送信することで,混信が生じやすい状態が発生している場合
この場合,複数のTVBDのいずれかまたは双方からの不適切な送信を停止させるために,許可解除が送信される。
【0088】
このような場合が起こる原因の一つとして,共存情報要求等に際して共存イネーブラCEから共存マネージャCMに送信されるTVBDの位置の誤りが挙げられる。TVBDの位置は,例えば,GPS(Global Positioning System)を用いて検出できるが,混信,GPS衛星からの電波が建物等により遮られたりすることで,位置検出に誤りが生じる可能性がある。位置に誤りがあると,共存マネージャCMからの共存情報がそのTVBDの本来の位置と対応せず,不適切なチャンネル,パワーレベルが選択される可能性がある。
【0089】
許可解除コマンドを受信した共存イネーブラCEは,許可解除を試みる。即ち,無線通信部12での無線通信の少なくとも一部(一部のチャンネル)が停止される。また,必要に応じて,ステーション装置STAでの送受信を停止させる。共存イネーブラCEは,停止許可解除に成功または失敗を表すCOEX許可解除応答を共存マネージャCMに送信する。
【0090】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。