(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記着火パルス出力動作を行う期間内において、前記プリパルスの出力間隔は任意に設定自在であることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置のプラズマ着火方法。
前記プリパルスのパルス出力の電力は、当該パルス出力により発生する反射電力の平均反射電力が高周波電源を構成する電力素子の許容損失以下又は未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波電源装置のプラズマ着火方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記したプラズマ着火に関する先行技術には以下の問題がある。
(a)イグナイタ電源を用いる場合には、定常状態で電力供給を行う電源に加えてイグナイタ電源を別途用意する必要があるためコストが増加するという問題がある他、パルス駆動を行う際のパルス信号の周波数が高くなると、イグナイタ電源は高周波に対応できなくなるため別の着火機能が必要となるという問題がある。
(b)電極間の距離を部分的に縮める技術では、電極の電界強度を部分的に高くして放電しやすい電極形状が必要であり、電極形状の開発にコストがかかるという問題の他、部分的に縮めた電極間に電界が集中するために破壊電界を考慮しなければならないという問題がある。
(c)整合器において、マッチングポイントからずれたインピーダンス条件で整合処理を行う場合には、インピーダンス整合に要する時間が長くなるため、プロセスが短いプラズマ処理やパルス駆動には適していないという問題の他、着火前のプラズマインピーダンスが着火時の値と大幅に異なる場合は着火できないという問題がある。
(d)プラズマ発生装置内の圧力調整には時間がかかる他、プラズマ処理に支障が生じるおそれがあるという問題がある。
【0012】
なお、(e)の平均進行波電力の抑制は、整合回路の不要な整合動作を不要とし、プラズマ負荷を安定化させることを目的とするものであって(特許文献5、段落[0015])、デューティー比の増加によって反射波も増加するようなプラズマ負荷を対象とするものではないため、プラズマ着火における高周波電源の保護を目的とするものではない。
【0013】
上記したように、プラズマ着火では、反射波電力から高周波電源を保護するために進行波電力を低下させるとプラズマの着火が難しくなるという問題があり、このプラズマ着火の困難性に対して従来提案されている技術は、パルス駆動によるプラズマ着火に適していないという問題がある。
【0014】
そこで、本願発明は前記した従来の問題点を解決し、パルス駆動によるプラズマ着火において、反射波電力から高周波電源を保護するために進行波電力を低下させるとプラズマの着火が難しくなるという問題点を解決し、反射波電力から高周波電源を保護するとともにプラズマの確実な着火を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明は、上記課題に鑑み、高周波電源装置から高周波電力を印加してプラズマを着火させるプラズマ着火において、高周波電源装置はプラズマ着火するパルス電力を供給するプラズマ着火工程と、発生したプラズマを維持する駆動電力を供給する駆動電力供給工程とを備え、プラズマ着火の動作において本願発明が特徴的に備える着火パルス出力動作によって課題を解決し、反射波電力から高周波電源を保護するとともにプラズマの確実な着火を行う。
【0016】
本願発明のプラズマ着火工程は、着火パルス出力動作において、未着火時に発生する平均反射波電力が、反射波電力に対する高周波電源装置の許容損失を超えないように抑制する。この平均反射波電力の許容損失内の抑制は、着火パルス出力動作で印加する着火パルスを、着火を促すメインパルスと、メインパルスの前段階で印加され、メインパルスよりも低電力のプリパルスとによって構成することで行う。
【0017】
プリパルスの平均電力は、プリパルスを構成するパルス出力のデューティー比によって調整することができる。デューティー比による平均電力の調整は、プリパルスによって生成される反射波電力が、着火パルス出力動作中に許容される電力素子の平均許容損失を超えない程度となるように行う。着火動作時の不整合状態における平均反射波電力を抑制することによって、反射波電力から高周波電源を保護する。
【0018】
また、本願発明は、着火パルス出力動作において、メインパルスによる着火動作の前段階でメインパルスよりも低電力のプリパルスを印加することによって、負荷に供給する電力を低減させて平均反射波電力を抑制すると共に、プラズマが着火し易い雰囲気を形成し、プラズマ着火の確実性を向上させる。
【0019】
[高周波電源装置のプラズマ着火方法]
本願発明の高周波電源装置のプラズマ着火方法は、高周波電源装置から高周波電力のパルス出力を印加してプラズマを着火させるプラズマ着火方法であり、プラズマ着火工程において、時間的に断続出力するパルス出力によってプラズマを着火し、このプラズマ着火工程によりプラズマ着火した後、プラズマ駆動電力供給工程において、着火したプラズマを維持する駆動電力を供給し、プラズマ維持を行う。
【0020】
プラズマ着火工程は、プラズマを着火させるための着火パルスを出力する着火パルス出力動作を有する。着火パルス出力動作で出力する各着火パルスは、メインパルスよりも小さい電力であってメインパルスの前段階で出力する任意の個数のプリパルスと、プリパルス後に出力する最初のメインパルスを有する。着火パルス動作に加えて、着火パルスおよび駆動パルスを所定時間の間だけ出力しない出力停止動作を有する構成としても良い。着火パルス出力動作と出力停止動作とを有する場合には、一回目の着火パルス出力動作の後、プラズマ未着火のときに出力停止動作と着火パルス出力動作とを繰り返す。
【0021】
プリパルスは、着火パルス出力動作において、メインパルスの前段階においてプリパルスを印加することによって、プラズマが着火し易い雰囲気を形成してプラズマ着火の確実性を向上させる。また、プリパルスの電力はメインパルスよりも低電力であり、負荷に供給する電力を低減させて平均反射波電力を抑制する。
【0022】
プリパルスの電力はデューティー比によって調整することができる。プリパルスのデューティー比は、プリパルスのパルス出力によって発生する全反射波電力の着火パルス出力動作当たりの平均反射波電力を、高周波電源装置を構成する電力素子の着火パルス出力動作当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満とする範囲に収まるように設定する。
【0023】
着火パルス出力動作を行う期間内において、プリパルスの出力間隔は任意に設定することができる。着火パルス出力動作内において、プリパルスに続いて1回のメインパルスのパルス出力を出力する。メインパルスのパルス出力は、このメインパルスによって発生する全反射波電力の一着火パルス出力動作当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子の着火パルス出力動作当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満に設定することによって、電力素子を反射波電力から保護することができる。
【0024】
プラズマ着火工程によりプラズマが着火した後、着火したプラズマを維持する駆動電力を供給するプラズマ駆動電力供給工程に移行する。
【0025】
プラズマ駆動電力供給工程において、プラズマが着火した状態においてプラズマ負荷に対して、駆動パルス又は連続出力によってプラズマを維持する駆動電力を供給する。駆動パルスのパルス出力のデューティー比は任意に選定できるが、一般的には、着火パルス出力動作中に出力する着火パルスのデューティー比の平均よりも大きなデューティー比を選定する。また、連続出力は、デューティー比を100%として連続駆動することで行う。
【0026】
高周波電源装置は、着火パルス出力動作を含むパルス着火工程、およびプラズマ駆動電力供給工程の各工程を実行してプラズマの着火および維持を行う。
【0027】
パルス着火工程は、着火パルスを出力する着火パルス動作に加えて、着火パルスおよび駆動パルスを出力しない出力停止動作(遮断動作)を備えることができる。着火判定時において、着火パルス出力動作による着火状態においてプラズマが未着火状態であると判定したときには、出力停止動作と着火パルス出力動作とを繰り返す。繰り返し処理の回数は、設定動作回数Nによって設定する。
【0028】
着火パルス出力動作と出力停止動作との繰り返しにおいて、着火パルス出力動作を実行する回数を設定動作回数Nで制限し、着火パルス出力動作を設定動作回数N回分だけ実行した後、プラズマが未着火であるときには着火異常であるとする。着火パルス出力動作を設定動作回数N回繰り返す前に、プラズマが着火状態となった場合には、着火異常を判定することなく駆動電力を供給し、プラズマを維持する。
【0029】
出力停止動作の時間幅は着火パルス出力動作の時間幅と同じ幅に限らず、任意に設定することができる。プラズマ着火工程において、着火パルス出力動作の間でのみ着火パルスを形成し、出力停止動作の間はパルス出力を停止する。
【0030】
出力停止動作の間におけるパルス出力の停止は、着火パルスおよび駆動パルスの形成を停止することによって行う他、着火パルス出力動作および出力停止動作の間、着火パルスおよび駆動パルスの形成を継続して行い、出力停止動作の間は、この間で形成した着火パルスおよび駆動パルスの出力を遮断することによって行うことができる。
【0031】
[高周波電源装置]
本願発明の高周波電源装置は、高周波電力を印加してプラズマを着火させる高周波電源装置であり、高周波出力のパルス出力を出力するパルス出力部を備える。
【0032】
パルス出力部は、時間的に断続出力するパルス出力によってプラズマを着火する着火パルスを形成する着火パルス形成部と、着火パルスによりプラズマ着火した後、着火したプラズマを維持する駆動電力を供給する駆動パルスを形成する駆動パルス形成部とを備える。
【0033】
着火パルス形成部が形成する各着火パルスは、メインパルスよりも小さい電力であってメインパルスの前段階で出力する任意の個数のプリパルスと、プリパルス後に出力する最初のメインパルスとを有し、プリパルスを印加することによってプラズマが形成され易い雰囲気とした後、メインパルスを印加することでプラズマ着火を行う。
【0034】
また、プリパルスの電力はメインパルスよりも低電力とし、負荷に供給する電力を低減させて平均反射波電力を抑制する。着火パルス形成部は、プリパルスのパルス出力の電力において、このパルス出力により発生する反射電力の平均反射電力を、高周波電源を構成する電力素子の許容損失以下又は未満とする。
【0035】
また、メインパルスは、着火パルス出力動作内においてプリパルスに続いて1回のパルス出力を出力する。メインパルスのパルス出力は、このメインパルスによって発生する全反射波電力の一着火パルス出力動作当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子の着火パルス出力動作当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満とする。
【0036】
プリパルスおよび未着火状態のメインパルスの電力を低電力化することによって、電力素子を反射波電力から保護することができる。
【0037】
パルス出力部は、着火パルスおよび駆動パルスの出力を所定時間の間だけ停止する出力停止部を備える構成としても良い。出力停止部は、着火パルス形成部で形成した着火パルスを印加した後、プラズマ着火に失敗した場合に所定の時間だけ着火パルスの出力を停止する。
【0038】
パルス出力部が出力停止部を備える構成では、着火パルス形成部と出力停止部とは、着火パルス形成部で形成した一回目の着火パルスの出力の後、プラズマ未着火のときに、出力停止部による着火パルスおよび駆動パルスの出力停止と、着火パルス形成部で形成した着火パルスの出力とを繰り返し、パルス着火動作を複数回行ってプラズマを着火させる。
【0039】
駆動パルス形成部は、着火パルスによりプラズマが着火した後、着火したプラズマを維持する駆動電力を供給する。
【0040】
着火パルス形成部と出力停止部とは、着火パルス出力と出力停止との動作の繰り返しにおいて、着火パルス出力の動作回数を設定動作回数で制限し、設定動作回数分の着火パルス出力動作を実行した後、プラズマが着火されないときには着火動作を停止する。
【0041】
着火パルス形成部は、着火パルスの形成において、プリパルスの出力間隔を任意に設定することができる。
【0042】
出力停止部は、出力を停止する時間幅を任意に設定することができる。着火パルス形成部は、着火パルス出力動作の間でのみ着火パルスを形成し、出力停止部の指令によって出力停止の時間幅の間は着火パルスおよび駆動パルスの形成を停止することによって着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止する。
【0043】
出力停止部は別の態様によって着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止することができる。出力停止部は、出力停止において、出力を停止する時間幅を着火パルスが形成される時間幅に対して任意に設定でき、着火パルス形成部は、着火パルス形成部が着火パルスを形成する間、および出力停止部が出力を停止する間の何れの間においても着火パルスおよび駆動パルスの形成を継続して行い、出力を停止する間はその間で形成した着火パルスおよび駆動パルスの出力を遮断することによって着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止する。
【0044】
本願発明によれば、高周波電源装置は、着火パルス出力動作において、メインパルスによる着火動作の前段階でメインパルスよりも低電力のプリパルスを印加することによって、負荷に供給する電力を低減させて平均反射波電力を抑制して、反射波電力から高周波電源を保護する機能を備えると共に、プラズマが着火し易い雰囲気を形成してプラズマ着火の確実性を向上させ、イグナイタ電源装置を要することなく着火を行うことができる。
【0045】
プラズマ着火動作で供給するパルス電力のデューティー比を調整し、着火パルス期間内で出力するパルス出力のパルス数を設定パルス数で規定することによって、着火パルス期間で発生する反射波電力の着火動作期間当たりの平均反射波電力を許容損失内に抑制して、反射波電力から高周波電源を保護する機能を備え、イグナイタ電源装置を要することなく着火を行うことができる。
【0046】
着火前のプラズマ負荷に低電力の着火パルスを供給することによって、着火パルス期間において、プラズマ未着火によって発生する反射電力をプラズマ電源装置の反射波電力に対する許容損失を超えない状態で印加することでプラズマ着火の雰囲気を形成し、その後にメインパルスによってプラズマを着火させ、プラズマが着火した後、駆動電力供給動作に移行する。
【0047】
プラズマ着火動作において、着火が行われない場合は、着火動作の工程を繰り返すことで着火を促す。
【0048】
本願発明による高周波電源装置の動作は、運転開始時だけでなく、運転中にプラズマ負荷の異常などで電源遮断が発生した後の再起動においても適用することができる。
【発明の効果】
【0049】
以上説明したように、本願発明の高周波電源装置のプラズマ着火方法,および高周波電源装置によれば、反射波電力から高周波電源を保護するとともにプラズマの確実な着火を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本願発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
以下では、本願発明の高周波電源装置によるプラズマ着火について、
図1〜
図3を用いて概略動作を説明し、
図4を用いて高周波電源装置の概略構成を説明し、
図5を用いて高周波電源装置が備える電力制御部の概略構成を説明する。
図6〜
図18は本願発明の高周波電源装置によるプラズマ着火の2つの動作例を説明するためのフローチャートおよび信号図である。
図6〜
図14は着火動作期間の終了時に着火状態を判定して、設定着火動作回数の着火動作期間の動作を繰り返す例を示し、
図15〜
図18は着火動作期間内において着火状態を判定して、設定着火動作回数の着火動作期間の動作を繰り返す例を示している。
図19は着火動作期間においてソフトスタートを適応した場合を説明するための図であり、
図20〜23は着火状態を判定する一構成例を説明するための図である。
【0052】
本願発明の高周波電源装置によるプラズマ生成の動作において、高周波電源装置が出力するパルス出力として、着火パルス出力工程においてプラズマを着火させるパルス出力の着火パルス、および、プラズマ駆動電力供給工程においてプラズマ着火後の定常的なプラズマ生成を行う駆動パルスを備える。着火パルスのパルス出力は、メインパルスと、メインパルスの前段階で出力されるプリパルスを含む。
【0053】
[高周波電源装置のプラズマ着火の概略動作]
半導体製造装置や電子デバイス製造装置等のプラズマ処理装置、あるいはCO
2レーザ加工機等のプラズマ発生装置のプラズマ負荷に対して、高周波電源(RF電源)装置から高周波出力(RF出力)をパルス駆動により供給する。パルス駆動は所定周期のパルス信号によってオン/オフする制御信号によって制御し、オン時間内に高周波電力を負荷に供給し、オフ時間内に高周波電力の供給を停止し、オン/オフのデューティー比(時間比率)によって負荷に供給する電力を制御する。パルス駆動の制御は、電力制御部によって行われる。パルス駆動のパルス信号の周期は、プラズマ負荷に供給する高周波出力(RF出力)の周波数に応じて設定することができる。
【0054】
高周波電源(RF電源)装置によるプラズマ負荷のパルス駆動において、プラズマ負荷のプラズマの着火状態の判定は、高周波電源(RF電源)とプラズマ負荷との間にパワーセンサを接続し、このパワーセンサによって、高周波電源(RF電源)装置からプラズマ負荷に向かう進行波電力の電圧(進行波電圧V
f)とプラズマ負荷から高周波電源(RF電源)装置に戻る反射波電力の電圧(反射波電圧V
r)を検出することで行うことができる。
【0055】
高周波電源装置の電力制御部は、パワーセンサで検出した進行波電圧V
fと反射波電圧V
rに基づいてパルス駆動を制御する。例えば、プラズマが正常な着火状態である場合には、パワーセンサで検出した進行波電圧V
fに基づいて進行波電圧V
fが所定電圧となるようにデューティー比を制御する。一方、プラズマが異常状態である場合には、電力制御部は高周波出力を垂下させる制御を行う他、出力を一時停止させる制御を行うことによって、高周波電源装置を反射波電力による損傷から防ぐことができる。
【0056】
図1〜
図3は、高周波電源装置から高周波電力を印加してプラズマを着火させる際の動作を示す図である。なお、(SA)〜(SC)、(SA1a)、(SA1b)、(SA2)、(SA3)等の符号は
図1〜
図3に示す各動作を示している。
図2(a)は着火パルス期間および出力停止期間の動作状態におけるパルス出力のデューティー比を示し、
図2(b)はパルス出力を示し、
図2(d)は反射波を示し、
図2(e)は着火判定を示している。
【0057】
なお、
図2は未着火状態の後に着火状態となった場合を示し、
図3は着火パルス出力動作工程をN回繰り返した後にプラズマ着火することなく未着火状態となり、未着火状態の判定に基づいて異常状態として検出する場合を示している。
【0058】
本願発明の高周波電源装置は、プラズマ負荷に対する電力供給において、プラズマ着火工程(SA)によってプラズマの着火を行い、プラズマ駆動電力供給工程(SB)によって着火したプラズマに駆動電力を供給しプラズマを維持する。着火異常時には着火異常処理工程(SC)によって電力の供給停止や異常表示を行う。プラズマ着火異常処理工程(SC)は、プラズマ着火工程(SA)に限らずプラズマ駆動電力供給工程(SB)の工程においても適用することができる。
【0059】
プラズマ着火工程(SA)は、パルス着火工程(SA1)と着火判定工程(SA2)と動作回数判定工程(SA3)とを含む。パルス着火工程(SA1)は、高周波電力を時間的に断続出力させたパルス出力を、プラズマを着火する着火パルスとして印加するパルス着火出力動作(SA1a)、および着火パルスの出力を停止する出力停止動作(SA1b)を備える。着火パルス出力動作(SA1a)は着火パルス期間において着火パルスを出力し、出力停止工程(SA1b)は出力停止期間において着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止し、負荷に対してパルス出力を行わない(
図2(b))。なお、
図2(b)に示すパルス出力において、着火パルス出力動作(SA1a)中のメインパルスのパルス幅は駆動パルスのパルス幅よりもより小さい。図中では、メインパルスを実線で示し、駆動パルスに相当するパルスを破線で示している。また、同じく
図2(b)において、出力停止動作(遮断動作)(SA1b)中の破線で示すパルスは、出力が停止された状態の駆動パルスを示している。以下、
図8〜14,16,18〜19においても、着火パルス出力動作および出力停止動作(遮断動作)中の実線および破線は、
図2(b)と同様に、メインパルスおよび駆動パルスを示している。
【0060】
プラズマ着火工程(SA)において、着火パルス出力動作(SA1a)が着火パルス期間内で出力する着火パルスは、所定のデューティー比で断続出力する高周波電力を一つのパルス出力とし、プリパルスおよびメインパルスを備える。プリパルスはメインパルスよりも低電力であり、メインパルス前段階において出力される。プリパルスおよびメインパルスの電力は、パルス出力のデューティー比(
図2(a))によって調整することができる。
【0061】
プリパルスは、着火パルス期間内において予め定められた設定パルス数nのパルス出力で構成することができる。設定パルス数nは任意に設定することができ、各プリパルスの出力周期も任意に設定することができる。
【0062】
プリパルスの設定パルス数nは0以上とすることができる。設定パルス数nとして"0"を設定した場合には、着火パルス期間内で出力される着火パルスは一つのメインパルスのみとなる。メインパルスは、プラズマ駆動電力供給工程(SB)で出力される駆動パルスと同じ電力とする他、反射波電力が電力素子を損傷しない範囲内であれば、駆動パルスよりも大きな電力とすることもできる。メインパルスおよび駆動パルスの電力は、プリパルスと同様に、パルス出力のデューティー比によって調整することができる。
【0063】
設定パルス数nとして"1"を設定した場合には、着火パルスとして一つのプリパルスと一つのメインパルスが出力される。設定パルス数nとして2以上のパルス数を設定した場合には、着火パルスとして複数のプリパルスと一つのメインパルスが出力される。
【0064】
着火パルスを構成するプリパルスおよびメインパルスのデューティー比は、設定パルス数nのパルス出力によって発生する全反射波電力の着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定し、これによって反射波電力による電力素子の損傷を防ぐと共に、プラズマ着火を容易とすることができる。
【0065】
平均反射波電力は、着火パルス期間内に出力されるパルス出力によって発生する反射波電力の着火パルス期間内における平均である。平均反射波電力とデューティー比の増減は正の関係にあり、デューティー比が大きくなれば平均反射波電力は大きくなり、デューティー比が小さくなれば平均反射波電力は小さくなる。
【0066】
平均損失は、着火パルス期間内に出力されるパルス出力によって生じる高周波電源装置が備える高周波電力素子の損失分の着火パルス期間内における損失の平均であり、平均許容損失は、高周波電力素子が許容し得る平均損失である。
【0067】
平均反射波電力が平均許容損失を超える場合には、高周波電源装置は反射波電力によって破損するおそれがある。デューティー比によって平均反射波電力が平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定することで、着火パルス期間の着火パルス出力動作において、未着火状態で生じる反射波電力によって高周波電源装置の電力素子が損傷することを防ぐことができる。
【0068】
本願発明は、着火パルス期間の着火パルス出力動作の結果、プラズマが未着火状態であることを判定した場合には、着火パルス期間に続く出力停止期間(遮断期間)において着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止する。この着火パルス期間に続いて出力停止期間(遮断期間)を設けることによって、着火パルス期間を単位として着火動作を行うことができるため、パルス出力を連続して出力した場合に反射波電力が累積して許容損失を超えることで高周波電源装置の電力素子が破損するという課題を回避することができる。
【0069】
出力停止動作(遮断動作)(SA1b)を行う出力停止期間(遮断期間)は、着火パルス期間と同じ時間幅とする他、任意の時間幅とすることができる。遮断動作は、遮断期間においても着火パルス期間と同様にプリパルスおよびメインパルスを形成しておき、形成されたプリパルスおよびメインパルスの出力を遮断すると共に、この間に形成された駆動パルスの出力を遮断する動作、あるいは、遮断期間の間プリパルス、メインパルス、および駆動パルスの形成を停止する動作であり、これによって負荷への着火パルスの印加を停止する。
【0070】
着火パルス出力動作による着火の有無は、例えばパルスによる反射波で判定することができる。プラズマが着火状態であることを判定したとき(SA2)(
図2(d))の着火判定の2回目の判定時には、プラズマ着火工程(SA)からプラズマ駆動電力供給工程(SB)に移行し、プラズマ負荷に対して駆動パルスを出力して、プラズマを維持するプラズマ駆動電力を供給する。プラズマ駆動電力供給工程(SB)では、プラズマ負荷から高周波電源装置側に戻る反射波電圧に基づいてデューティー比制御を行うことによってプラズマ駆動電力を制御する。
【0071】
着火判定において、着火パルス出力動作(SA1a)においてプラズマが未着火状態であることを判定したとき(SA2)(
図2(d))の未着火状態には、出力停止動作によって着火パルスおよび駆動パルスの出力を遮断し(SA1b)、その後、着火パルス出力動作(SA1a)を再度行う。着火判定は、再度行った着火パルスの内メインパルスによる反射波(
図2(c))の電力に基づいて行うことができる。
【0072】
着火パルス出力動作(SA1a)と出力停止動作(SA1b)を繰り返して実行し、着火パルス出力動作の回数を最大で設定動作回数Nだけ行う(SA2)(
図3(b),(c))。設定動作回数Nの着火動作の結果が連続して未着火状態であると判定したときには(
図3(b))、プラズマ着火工程(SA)を終了し、プラズマ着火異常を出力する(SC)(
図3(c))。
【0073】
プラズマ駆動電力供給工程(SB)において、プラズマを維持する駆動電力の供給は、着火パルス期間内の着火パルスのデューティー比の平均よりも大きなデューティー比のパルス出力を駆動パルスとして出力するパルス駆動、あるいは100%のデューティー比に相当する連続出力を出力する連続駆動とすることができ、プラズマの着火状態の判定結果に基づいて、プラズマ着火したプラズマ負荷に対して、プラズマを維持する駆動電力を駆動パルス又は連続出力を印加する。
【0074】
以下の表は、上記したプラズマ着火の概略動作における着火動作、着火判定、および駆動電力供給動作の関係を概略的に示している。
【表1】
【0075】
上記表において、プリパルスの設定パルス数nが"0"である場合は一つのメインパルスを着火パルスとして出力し、設定パルス数nが"1以上"である場合はn個のプリパルスと一つのメインパルスを着火パルスとして出力する。着火パルスによる着火判定においてプラズマが着火状態であることを判定した場合には、駆動パルスを出力して駆動電力を供給する。一方、着火パルスによる着火判定においてプラズマが未着火状態であることを判定した場合には、出力停止と再着火とを繰り返し、設定動作回数Nの着火動作によってもプラズマが着火しないときには、再着火を行うことなく異常処理を行う。
【0076】
[高周波電源装置の概略構成]
図4は本願発明の高周波電源装置の一構成の概略を説明する。高周波電源装置1は、パルス出力の高周波出力を出力する高周波出力部2を備え、インピーダンスを整合する整合器101を介して負荷102に高周波出力を出力する。負荷102は、例えば、チャンバー内で生成されるプラズマ負荷とすることができる。
【0077】
高周波出力部2はパルス出力部20を備え、高周波出力(RF出力)をパルス駆動により供給する。パルス駆動は所定周期のパルス信号によってオン/オフする制御信号によって制御し、オン時間内に高周波電力を負荷に供給し、オフ時間内に高周波電力の供給を停止し、オン/オフのデューティー比(時間比率)によって負荷に供給する電力を制御する。パルス駆動の制御は、電力制御部3によって行われる。
【0078】
高周波出力は、直流電力をパルス変調することによって生成することができる。直流電力は、直流電源から得る他、交流電力をAC/DC変換して得ることができる。高周波出力部2と負荷102との間の電力の移動は双方向で行われ、高周波出力部2から負荷102に向かって進行波電力が供給され、負荷102から高周波出力部2に向かって反射波電力が戻される。この進行波電力と反射波電力との差し引きによって、高周波出力部2から負荷102に向かって負荷電力が供給される。
【0079】
高周波電源装置1は、高周波を生成する通常の構成として、高周波出力部2の高周波出力を制御する電力制御部3、および電力制御部3が行うデューティー制御のデューティー比を制御するデューティー制御部4を備える。また、高周波電源装置1は、上記構成の他に、進行波電力を検出する進行波電力検出部6と、反射波電力を検出する反射波電力検出部7と、進行波電力と反射波電力とを分離して取り出す方向性結合器5を備える。
【0080】
方向性結合器5は進行波電力と反射波電力とを分離し、進行波電力を進行波電力検出部6に入力し、反射波電力を反射波電力検出部7に入力する。デューティー制御部4は反射波電力検出部7から入力した反射波電力に基づいてデューティー比を制御する。電力制御部3は進行波電力検出部6から入力した進行波電力、およびデューティー制御部4から入力した制御信号に基づいて高周波出力部2をデューティー制御する。
【0081】
本願の高周波電源装置1は、プラズマ着火の着火状態を判定する構成として着火判定部10を備え、デューティー制御部4は着火判定部10で判定した判定結果に基づいてデューティー制御を行い、プラズマ着火動作の継続あるいはプラズマ着火動作からプラズマ駆動電力供給動作への移行を行う。また、パルス出力部20は、着火判定部10で判定した着火あるいは未着火の判定結果に基づいて、パルス着火動作から処理停止動作あるいはプラズマ駆動電力供給工程への動作切り換えを行う。
【0082】
図5は、本願発明の高周波電源装置1が備える電力制御部の一構成例を説明するための概略図である。電力制御部3は、平均進行波電力制御部3a、ピーク進行波電力制御部3b、および平均処理部3cを備える構成とすることができる。
【0083】
平均処理部3cは、進行波電力検出部6で検出したピーク進行波電力から平均進行波電力を求め、求めた平均進行波電力を平均進行波電力制御部3aにフィードバックする。
【0084】
進行波電力検出部6は検出したピーク進行波電力値をピーク進行波電力制御部3bに送ると共に、検出したピーク進行波電力値を平均処理部3cに送る。平均処理部3cは求めた平均進行波電力を平均進行波電力制御部3aに送る。
【0085】
反射波電力検出部7は検出したピーク反射波電力値をデューティー制御部4に送り、デューティー制御部4は、反射波電力の変動に応じて平均進行波電力制御部3aで行うデューティー制御のデューティー比を変更する。
【0086】
平均進行波電力制御部3aは、平均処理部3cからの平均進行波電力値をフィードバック値として平均進行波電力指令値と比較し、平均進行波電力値が平均進行波電力指令値となるようにデューティー制御を行う。
【0087】
平均進行波電力制御部3aは、通常状態では、デューティー比(ONデューティーDon)を100%として連続出力制御を行い、デューティー制御部4から送られた制御信号によってデューティー制御を調整して、連続出力制御とパルス出力制御とを切り換える。ここで、連続出力制御は、デューティー制御においてデューティー比(ONデューティーDon)を100%とする制御形態であり、パルス出力制御は、デューティー制御においてデューティー比(ONデューティーDon)を100%より小さな値で行う制御形態である。
【0088】
このデューティー制御の調整は、例えば、ピーク反射波電力が増加した場合に、デューティー比(ONデューティーDon)を100%から100%よりも小さな所定値に切り換えることによって連続出力制御からパルス出力制御に切り換えることによって、平均反射波電力を抑制して電源を保護する。このデューティー制御の調整において、ピーク進行波電力は一定に制御されるため、整合器101の整合動作は安定となり、チャンバーへの電力注入は安定する。
【0089】
以下、高周波電源装置の着火動作の動作例について、プラズマの着火状態の判定時期を異にする第1の動作例と第2の動作例について説明する。
【0090】
第1の動作例はプラズマの着火判定をメインパルスによる反射波で行う例であり、メインパルスによる反射波によってプラズマが着火状態にあることを判定した場合にはプラズマ駆動電力供給工程に移行して駆動パルスを出力し、プラズマが未着火状態にあることを判定した場合には出力停止動作に移行し、その後再度パルス着火工程を行い、着火パルス出力動作の実行回数が予め定められた設定動作回数Nに達したときには異常処理を行う。
【0091】
第2の動作例はプラズマの着火判定をプリパルスおよびメインパルスによる反射波で行う例であり、プリパルスによる反射波によってプラズマが着火状態にあることを判定した場合には、メインパルスの出力を待つこと無く、プラズマ駆動電力供給工程に移行して駆動パルスを出力し、プラズマが未着火状態にあることを判定した場合には出力停止動作に移行し、その後再度パルス着火工程を行い、着火パルス出力動作の実行回数が予め定められた設定動作回数Nに達したときには異常処理を行う。なお、以下は、高周波(RF)出力が開始された後の動作を示している。
【0092】
[高周波電源装置の着火動作の第1の動作例]
第1の動作例はプラズマの着火判定をメインパルスによる反射波で行う例である。高周波電源装置の着火動作の第1の動作例を、
図6のフローチャート、
図7の構成図、および
図8〜
図14の信号図を用いて説明する。
図7はプリパルスおよびメインパルスを形成する構成例を説明するための構成図であり、
図8〜
図10はn個のプリパルスを出力する場合を説明するための信号図であり、
図11〜
図13はプリパルスを出力しない場合を説明するための信号図である。
図14はプリパルスの出力動作を説明するための信号図である。
【0093】
図6のフローチャートにおいて、高周波(RF)出力が開始された後、プラズマ着火工程(SA)によってプラズマの着火動作を行い、プラズマが着火した後はプラズマ駆動電力供給工程(SB)によって生成されたプラズマを維持し、設定回のパルス着火動作の後にプラズマ着火が失敗した場合にはプラズマ着火異常処理(SC)を行う。
【0094】
プラズマ着火工程(SA)において、パルス着火工程を開始し(S1)、着火パルス出力動作(SA1a)を開始する(S2)。着火パルス信号動作では、予め定められた時間幅の着火パルス期間内において所定の設定パルス数のプリパルスと一つのメインパルスを出力する。着火パルスのパルス出力は、高周波の出力を予め定められた所定のデューティー比でオン/オフすることで形成される。プリパルスのパルス出力のデューティー比は、設定パルス数のパルス出力によって発生する全反射波電力の着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定し、また、メインパルスのパルス出力のデューティー比についても、メインパルスのパルス出力によって発生する全反射波電力の着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定することで、電力素子の反射波電力による損傷を防ぐことができる。
【0095】
プリパルスの設定パルス数nとして"0"が設定された場合には(S3)、プリパルスを出力することなくメインパルスによって着火動作を行う。メインパルスのデューティー比は、プラズマ駆動電力供給動作における駆動パルスと同じデューティー比に限らず、プリパルスのデューティー比よりも大きければ任意に設定することができる(S6)。
【0096】
プリパルスの設定パルス数nとして1以上の個数が設定された場合には、設定された回数のプリパルスを出力する(S4)。
【0097】
設定パルス数のプリパルスを出力し、着火パルス期間の最後の時点でメインパルスを出力し(S6)、プラズマの着火状態を判定する。着火判定工程(SA2)によるプラズマの着火状態の判定は、例えば反射波電圧に基づいて行うことができる(S7)。
【0098】
着火判定工程(SA2)において、プラズマが着火状態にあることを判定したときには、プラズマ駆動電力供給工程(SB)によってプラズマ状態の負荷に駆動パルスを印加してプラズマ駆動電力を供給する。一方、プラズマが着火状態にないことを判定した場合には、パルス着火工程(SA)を繰り返す(S8)。
【0099】
パルス着火工程(SA)を繰り返して行う際、着火パルス出力動作は、最大で予め定められた設定動作回数N分を繰り返す(S8)。動作回数判定工程(SA3)において、着火パルス出力動作の実行回数が予め定められた設定動作回数Nに達した場合には、プラズマ着火が失敗したとしてプラズマ着火異常時の処理(SC)を行う。
【0100】
着火パルス出力動作の実行回数が予め定められた設定動作回数Nに満たない場合には(S8)、着火パルスおよび駆動パルスの出力の形成、あるいは形成されたパルスの出力を停止する出力停止動作(遮断動作)を行い(S9)、予め定められた出力停止期間(遮断期間)が経過した後(S10)、S1〜S8の動作を再度行う。
【0101】
プラズマ駆動電力供給工程(SB)において、駆動パルスを継続出力してプラズマ負荷にプラズマ駆動電力を供給する(S11)。駆動パルスの継続出力中において、プラズマが未着火の状態となった場合には(S12)、駆動パルスの出力を停止する(S13)。その後、再着火を行う場合には(S14)、プラズマ着火工程(SA)に戻ってプラズマの再着火を行う。
【0102】
プラズマ着火異常処理工程(SC)では、プラズマ着火工程(SA)を停止し(S21)、着火異常を表示する(S22)。
【0103】
図7は、プリパルスとメインパルスの着火パルス、および駆動パルスを形成するパルス出力部20の構成例を説明するための構成図である。
図7では3つの構成例を示している。
【0104】
図7(a)に示すパルス出力部20Aは、着火パルス形成部22で形成した着火パルスをゲート信号に基づいて出力する構成である。着火パルス形成部22は、プリパルス形成手段22aとメインパルス形成手段22bを備える。プリパルスは、プリパルス形成手段22aで形成したプリパルス出力を、プリパルストリガ形成手段21aのトリガ信号に基づいてパルスゲート手段23aで出力制御されることによって出力される。また、メインパルスは、メインパルス形成手段22bで形成したメインパルス出力を、メインパルストリガ形成手段21bのトリガ信号に基づいてパルスゲート手段23bで出力制御されることによって出力される。プリパルス、メインパルスおよび駆動パルスの出力停止動作は、出力停止手段(遮断手段)24からの制御信号に基づいて行うことができる。駆動パルスは、駆動パルス形成手段22cで形成した駆動パルス出力を、プラズマ着火の判定結果に基づいてパルスゲート手段23cで出力制御することによって出力される。
【0105】
図7(b)に示すパルス出力部20Bは、着火パルス形成部22によって着火パルスおよび駆動パルスを形成する構成である。着火パルス形成部22は、プリパルス形成手段22aとメインパルス駆動パルス形成手段22dを備える。プリパルスは、プリパルス形成手段22aで形成したプリパルス出力を、プリパルストリガ形成手段21aのトリガ信号に基づいてパルスゲート手段23aで出力制御することによって出力される。
【0106】
メインパルスおよび駆動パルスは、メインパルス駆動パルス形成手段22dで形成される。メインパルスは、メインパルス駆動パルス形成手段22dで形成されたメインパルスを、メインパルストリガ形成手段21bのトリガ信号に基づいてパルスゲート手段23bで出力制御することによって出力される。また、駆動パルスは、メインパルス駆動パルス形成手段22dで形成された駆動パルスを、プラズマの着火判定に基づいてパルスゲート手段23bで出力制御することによって出力される。プリパルス、メインパルス、および駆動パルスの出力停止動作は、出力停止手段(遮断手段)24からの制御信号に基づいて行うことができる。
【0107】
図7(c)に示すパルス出力部20Cは、パルス形成手段25によって着火パルス、メインパルス、および駆動パルスを形成する構成である。パルス形成手段25は、プリパルス出力、メインパルス出力、および駆動パルス出力を形成し、形成した各パルス出力をパルストリガ形成手段21で形成したトリガ信号に基づいて制御する。
【0108】
プリパルス、メインパルス、および駆動パルスの出力停止動作は、出力停止手段(遮断手段)24からの制御信号に基づいて行い、駆動パルスは、プラズマの着火判定に基づいてパルス形成手段25のパルス形成処理を制御することで出力される。
【0109】
以下、n個のプリパルスを出力する場合について
図8〜
図10を用いて説明する。
図8はプラズマ未着火の状態を示し、
図9はプラズマ着火の状態を示し、
図10は異常検出の状態を示している。
【0110】
図8は、着火パルス出力動作を行った結果、プラズマが未着火状態となった場合の動作例を示している。
図8(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図8(b)はパルス出力を示し、
図8(c)は反射波を示し、
図8(d)は着火判定を示している。
【0111】
図8は着火パルスが複数のプリパルスと一つのメインパルスで構成される例を示している。着火パルスを構成する複数のプリパルスのパルス出力のデューティー比は、着火パルス期間内で出力される設定パルス数のパルス出力によって発生する全反射波電力について、着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定する。
【0112】
また、プリパルスの後に出力するメインパルスのパルス出力のデューティー比は、プリパルスのパルス出力のデューティー比よりも大きく設定する。例えば、駆動パルスと同程度のデューティー比とすることができる。メインパルスのパルス出力のデューティー比は、パルス出力によって発生する全反射波電力について、着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定する。
【0113】
なお、プリパルスとメインパルスのデューティー比は、着火パルス期間内においてプリパルスとメインパルスの両パルス出力によって発生する全反射波電力について、着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定してもよい。
【0114】
着火パルス期間中に出力するパルス出力おいて、着火パルス期間中のパルス出力による反射波(
図8(c))に基づいて着火状態を判定する(
図8(d))。着火判定からプラズマが未着火状態にあることを判定した場合には、着火パルス期間を終了して出力停止動作(遮断動作)に移行し、着火パルスおよび駆動パルスのパルス出力の出力を停止する。出力停止期間(遮断期間)が経過した後、次の着火パルス期間によってプラズマ着火動作を再開する。
【0115】
図9は、着火パルス出力動作を行った結果、プラズマが着火状態となった場合の動作例を示している。
図9(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図9(b)はパルス出力を示し、
図9(c)は反射波を示し、
図9(d)は着火判定を示している。
【0116】
着火パルス期間中に出力する着火パルスおいて、着火パルス期間中のパルス出力による反射波(
図9(c))に基づいて着火状態を判定する(
図9(d))。プラズマが着火状態にあることを判定した場合には、着火パルス出力動作を終了してプラズマ駆動電力供給工程に移行し、プラズマ負荷に駆動電力を供給する。
【0117】
図10は、着火パルス出力動作をN回行い、N回目のメインパルスを出力した結果、プリパルスが依然として未着火状態にある場合の動作例を示している。
図10(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図10(b)はパルス出力を示し、
図10(c)は反射波を示し、
図10(d)は着火判定を示し、
図10(e)は異常検出信号を示している。
【0118】
着火パルス出力動作と信号停止動作とを繰り返し、設定動作回数であるN回目の着火パルス出力動作においてメインパルスによる反射波によってプラズマが未着火状態にあると判定した場合には、プラズマ発生において何らかの異常があるものと判定して異常検出信号を出力する。
【0119】
図8〜
図10は着火パルスがプリパルスと一つのメインパルスで構成される例であるのに対して、
図11〜
図13は着火パルスが一つのメインパルスで構成される例である。
【0120】
図11はプラズマ未着火の状態を示し、
図12はプラズマ着火の状態を示し、
図13は異常検出の状態を示している。
【0121】
図11(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図11(b)はパルス出力を示し、
図11(c)は反射波を示し、
図11(d)は着火判定を示している。
【0122】
着火パルスは着火パルス期間内に一つのメインパルスを有し、デューティー比は例えば駆動パルスのデューティー比と同程度とすることができる。
【0123】
1つのメインパルスの着火パルスによる着火動作の結果、プラズマが未着火状態にあることを判定した場合には、
図8の例と同様に出力停止期間(遮断期間)を経た後にメインパルスを再度出力する。出力停止期間(遮断期間)は任意の時間幅とすることができ、着火パルス期間と同期間とする他、着火パルス期間よりも長い時間幅としてもよい。
【0124】
図12は、着火パルス出力動作を行った結果、プラズマが着火状態となった場合の動作例を示している。
図12(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図12(b)はパルス出力を示し、
図12(c)は反射波を示し、
図12(d)は着火判定を示している。
【0125】
着火パルス期間中に出力する着火パルスおいて、着火パルス期間中のパルスによる反射波(
図12(c))に基づいて着火状態を判定する(
図12(d))。プラズマが着火状態にあることを判定した場合には、着火パルス出力動作を終了してプラズマ駆動電力供給工程に移行し、プラズマ負荷に駆動電力を供給する。
【0126】
図13は、着火パルス出力動作をN回行い、N回目のメインパルスを出力した結果、プラズマが依然として未着火状態にある場合の動作例を示している。
図13(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図13(b)はパルス出力を示し、
図13(c)は反射波を示し、
図13(d)は着火判定を示し、
図13(e)は異常検出信号を示している。
【0127】
着火パルス出力動作と信号停止動作とを繰り返し、設定動作回数であるN回目の着火パルス出力動作においてメインパルスによる反射波によってプラズマが未着火状態にあると判定した場合には、プラズマ発生において何らかの異常があるものと判定して異常検出信号を出力する。
【0128】
図14は、プリパルスの出力動作例を示している。
図14(a)〜(c)は複数のプリパルスを出力する場合を示し、
図14(d)〜(f)はプリパルスを出力しない場合を示し、
図14(g)〜(i)はプリパルスのパルス間隔を任意に設定する場合を示している。
【0129】
図14(a)〜(c)に示す動作例では、着火パルス期間において、プリパルストリガ(
図14(b))に基づいてプリパルスを形成して出力し、メインパルストリガ(
図14(c))に基づいてメインパルスを形成して出力する。一方、出力停止期間では、プリパルストリガおよびメインパルストリガを出力しないことによってプリパルスおよびメインパルスの出力を停止する。また、出力停止期間では、駆動パルスについても出力を停止する。
図14(a)では、各パルスの出力停止状態を破線で示している。
【0130】
図14(d)〜(f)に示す動作例では、着火パルス期間において、プリパルストリガ(
図14(e))を出力しないことによってプリパルスを不出力とし、メインパルストリガ(
図14(f))に基づいてメインパルスを形成して出力する。一方、出力停止期間では、プリパルストリガおよびメインパルストリガを出力しないことによってプリパルスおよびメインパルスの出力を停止する。また、出力停止期間では、駆動パルスについても出力を停止する。
図14(d)では、各パルスの出力停止状態を破線で示している。
【0131】
図14(g)〜(i)に示す動作例では、着火パルス期間において、プリパルストリガ(
図14(h))を任意に設定することによって、任意の周期あるいは任意の時間間隔のプリパルスを出力し、メインパルストリガ(
図14(i))に基づいてメインパルスを形成して出力する。一方、出力停止期間では、プリパルストリガおよびメインパルストリガを出力しないことによってプリパルスおよびメインパルスの出力を停止する。また、出力停止期間では、駆動パルスについても出力を停止する。
図14(g)では、各パルスの出力停止状態を破線で示している。
【0132】
[高周波電源装置の着火動作の第2の動作例]
第2の動作例はプラズマの着火状態の判定を着火パルス期間内のメインパルス出力時およびプリパルス出力時で行う例である。高周波電源装置の着火動作の第2の動作例を、
図15のフローチャート、および
図16〜
図18の信号図を用いて説明する。
図16〜
図18は着火パルスが複数のプリパルスを含む例を示している。なお、第2の動作例では、プラズマ着火状態の判定を判定トリガに基づいて行う例を示している。
【0133】
高周波(RF)出力が開始された後、プラズマ着火工程(SA)によってプラズマの着火動作を行い、プラズマ着火後はプラズマ駆動電力供給工程(SB)によって生成されたプラズマを維持し、設定回数のプラズマ着火動作の後にプラズマ着火が失敗した場合にはプラズマ着火異常時の処理(SC)を行う。
【0134】
プラズマ着火工程(SA)において、プラズマ着火動作を開始した後(S1)、着火パルスの出力を開始する(S2)。
【0135】
着火パルスは、予め定められた時間幅の着火パルス期間内において、所定の設定パルス数のプリパルスと一つのメインパルスのパルス出力を出力する(S3)。パルス出力は、高周波の出力を予め定められた所定のデューティー比でオン/オフすることで形成される。プリパルスは、このパルス出力を着火パルス期間内で所定の設定パルス数だけ出力する。パルス出力のデューティー比は、設定パルス数のパルス出力によって発生する全反射波電力の着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子の着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定する。
【0136】
メインパルスのパルス出力のデューティー比は、パルス出力によって発生する全反射波電力について、着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定する。
【0137】
なお、プリパルスとメインパルスのデューティー比は、着火パルス期間内においてプリパルスとメインパルスの両パルス出力によって発生する全反射波電力について、着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子が着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定してもよい。
【0138】
プリパルスの設定パルス数nが"0"の場合にはメインパルスを出力し(S3,S6a)、プラズマ着火状態を判定する(S7a)。プラズマが着火状態であることを判定した場合には、プラズマ駆動電力供給工程(SB)に移行する。プラズマが未着火状態であることを判定した場合には、着火パルス工程の実行回数が設定動作回数Nとなるまで(S8)、出力停止動作によって着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止し(S9)、出力停止期間が経過した後にパルス着火工程(S1)に戻る。
【0139】
プリパルスの設定パルス数nが"1以上"の場合にはプリパルスを出力する(S4)。プリパルスの出力回数が設定パルス数n未満であるとき(S5)は、各プリパルスによる反射波でプラズマの着火を判定する。プラズマの着火判定は、例えば反射波電圧に基づいて行うことができる(S7b)。このときプラズマが着火状態であることを判定した場合には、プラズマ駆動電力供給工程(SB)に移行し、プラズマが未着火状態であることを判定した場合には、残りのプリパルスを出力する(S4)。
【0140】
(S5)のプリパルスによる着火状態の判定において、プリパルスの出力回数が設定パルス数nに達したとき(S5)には、メインパルスを出力し(S6b)、メインパルスによる反射波でプラズマの着火を判定する(S7c)。このときプラズマが着火状態であることを判定した場合には、プラズマ駆動電力供給工程(SB)に移行し、プラズマ未着火状態であることを判定した場合には、 着火パルス工程の実行回数が設定動作回数Nとなるまで(S8)、出力停止動作によって着火パルスおよび駆動パルスの出力を停止し(S9)、出力停止期間が経過した後にパルス着火工程(S1)に戻って、プラズマの着火動作を再度行う。
【0141】
プラズマ着火動作を予め定められた設定動作回数Nだけ繰り返し(S8)、実行回数が予め定められた設定動作回数Nに達した場合には、プラズマ着火が失敗したとしてプラズマ着火異常時の処理(SC)を行う。
【0142】
プラズマ駆動電力供給工程(SB)において、駆動パルスを継続出力してプラズマにプラズマ駆動電力を供給する(S11)。駆動パルスの継続出力中において、プラズマが未着火の状態となった場合には(S12)、駆動パルスの出力を停止する(S13)。その後、再着火を行う場合には(S14)、パルス着火工程(S1)に戻ってプラズマの再着火を行う。
【0143】
プラズマ着火異常時の処理(SC)において、プラズマ着火工程(SA)を停止し(S21)、着火異常を表示する(S22)。
【0144】
以下、n個のプリパルスを出力する場合について
図16〜
図18を用いて説明する。
図16はプラズマ未着火の状態を示し、
図17はプラズマ着火の状態を示し、
図18は異常検出の状態を示している。
【0145】
図16は、着火動作の結果、未着火状態となった場合の動作例を示している。
図16(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図16(b)はパルス出力を示し、
図16(c)は反射波を示し、
図16(d)は着火判定を示し、
図16(e)は着火判定を行う判定トリガを示している。
【0146】
着火パルス期間中に出力するパルス出力において、プリパルスおよびメインパルスのパルス出力を出力する時点で判定トリガを出力し(
図16(e))、各時点の反射波(
図16(c))に基づいて着火状態を判定する(
図16(d))。プラズマが未着火状態にあることを判定した場合には、着火パルス出力動作を終了して出力停止動作(遮断動作)に移行し、パルス出力の出力を停止する。出力停止期間(遮断期間)が経過した後、次の着火パルス期間においてプラズマ着火動作を再開する。
【0147】
図17は、着火動作の結果、着火状態となった場合の動作例を示している。
図17(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図17(b)はパルス出力を示し、
図17(c)は反射波を示し、
図17(d)は着火判定を示し、
図17(e)は着火判定を行う判定トリガを示している。
【0148】
着火パルス期間中に出力するパルス出力おいて、各パルス出力を出力する時点で判定トリガを出力し(
図17(e))、各時点の反射波(
図17(c))に基づいて着火状態を判定する(
図17(d))。プラズマが着火状態にあることを判定した場合には、着火パルス期間を終了してプラズマ駆動電力供給動作に移行し、プラズマ負荷に駆動電力を供給する。
【0149】
図18は、着火パルス出力動作をN回行い、N回目のメインパルスを出力した時点において、プラズマが依然として未着火状態にある場合の動作例を示している。
図18(a)はパルス出力のデューティー比を示し、
図18(b)はパルス出力を示し、
図18(c)は反射波を示し、
図18(d)は着火判定を示し、
図18(e)は着火判定を行う判定トリガを示し、
図18(f)は異常検出信号を示している。
【0150】
着火パルス出力動作と信号停止動作とを繰り返し、設定動作回数であるN回目の着火パルス出力動作においてメインパルスを出力した時点においてもプラズマが未着火状態にある場合には、プラズマ発生において何らかの異常があるものと判定して異常検出信号を出力する。
【0151】
図19は各着火パルス期間の着火パルスにおいて、パルス出力のデューティー比を漸次増加させる例を示している。
図19に示す例は、
図8で示した例においてパルス出力のデューティー比を漸次増加させたものである。
【0152】
このデューティー比を漸次増加させる場合においても、プリパルスのパルス出力のデューティー比は、設定パルス数のパルス出力によって発生する全反射波電力の着火パルス期間当たりの平均反射波電力が、高周波電源装置を構成する電力素子の着火パルス期間当たりの平均許容損失以内又は平均許容損失未満となるように設定し、着火パルス期間の最後の時点で出力するメインパルスのパルス出力のデューティー比をプリパルスのデューティー比よりも大きく設定する。メインパルスのデューティー比は、プラズマ駆動電力供給期間で出力する駆動パルスのデューティー比となるように設定することができる。着火パルス期間内において、プリパルスのパルス出力のデューティー比を漸次増加させることで、着火をし易くすることができる。
【0153】
[本願発明のプラズマの着火判定の概略構成]
本願発明のプラズマの着火判定について、
図20〜
図22を用いて概略構成を説明し、
図23のフローチャートを用いて概略工程を説明する。
【0154】
本発明のプラズマ着火判定は、プラズマ負荷から高周波電源に向かう反射波電圧V
rから得られる反射波の発生状態に基づいてプラズマ負荷のプラズマの着火状態、未着火状態を判定する。
【0155】
図20は本願発明の未着火判定の概略構成を示している。着火判定部10は、反射波電圧V
rの波高値および変動状態に基づいて、高周波電源のRF電力増幅素子に印加される熱量に対応する換算量を求める換算手段11と、換算手段11で求めた換算量とRF電力増幅素子の許容熱量に対応するしきい値とを比較する比較手段12とを備える。
【0156】
換算手段11は、第1換算手段11Aと第2換算手段11Bと第3換算手段11Cとを備える。
【0157】
第1換算手段11Aは、パワーセンサで検出した反射波電圧V
r(
図23のS1)を入力し、反射波電圧V
rおよび反射波電圧V
rの継続時間に基づいて、高周波電源のRF電力増幅素子に付加される熱量に対応する第1換算値(加熱換算値)を求める(
図23のS2)。
【0158】
第2換算手段11Bは、パルス駆動の各周期において、反射波電圧V
rの波高値が零となってからの経過時間、又はパルス出力の印加開始からの経過時間に基づいて、高周波電源のRF電力増幅素子から放出される放熱量に対応する第2換算値を求める。
【0159】
反射波電圧V
rの波高値が零となってからの経過時間に基づいて第2換算値を求める態様では、RF電力増幅素子からの放熱量は、RF電力増幅素子への反射波の印加が停止した状態からの放熱が主であり、RF電力増幅素子に反射波が印加されている間の放熱量はわずかであるとして換算している。
【0160】
一方、パルス出力の印加開始からの経過時間に基づいて第2換算値を求める態様では、RF電力増幅素子に反射波が印加されている間の放熱量も考慮して換算している(
図23のS3)。
【0161】
第3換算手段11Cは、第1換算値と第2換算値との差分に基づいて、高周波電源のRF電力増幅素子に蓄熱される蓄熱量に対応する第3換算値(蓄熱換算量)を求める(
図23のS4)。
【0162】
比較手段12は、第3換算手段11Cで求めた第3換算値とRF電力増幅素子の許容熱量に対応するしきい値とを比較する。しきい値はRF電力増幅素子の保護するデバイス保護検知レベルに相当し、第3換算値がしきい値を超えたときには、RF電力増幅素子に蓄積される熱量がRF電力増幅素子のデバイス保護検知レベルを超えたと判断し(
図23のS5)、プラズマが未着火状態であることを判定する(
図23のS6)。
【0163】
プラズマが未着火状態であることを判定した場合には、電力制御部によって高周波出力(RF出力)を垂下あるいは停止する制御を行って保護動作を行う(
図23のS7)。
【0164】
パルス駆動の一周期内において、印加された加熱量が放熱された結果、周期の終了時点で蓄熱量が残留しているか否かに基づいて、高周波電源からのパルス駆動による電力供給は低周波パルスモードと高周波パルスモードの二つのパルスモードで説明することができる。
【0165】
低周波パルスモードは、パルス駆動の周期間隔が、印加された加熱量が放熱されるための時間幅が十分に長く、パルス駆動の周期の終了時点において蓄熱量が残留しないパルスモードであり、蓄熱換算量は零である。低周波パルスモードで換算される蓄熱換算量は、パルス駆動の各周期において初期値が零から積算が開始される。
【0166】
一方、高周波パルスモードは、パルス駆動の周期間隔が、印加された加熱量が全て放熱されるための時間幅が足りず、パルス駆動の周期の終了時点において蓄熱量が残留するパルスモードであり、蓄熱換算量は残存している。高周波パルスモードで換算される蓄熱換算量は、パルス駆動の各周期において前周期の終了時点での蓄熱換算値を初期値として積算が開始される。
【0167】
パルス出力のデューティー比が等しく、反射波の波高値が等しいパルス駆動の条件下においては、パルス駆動の一周期Tの長さが長く一周期の終了時点で残存する蓄積熱量が零である場合には低周波パルスモードとなり、パルス駆動の一周期Tの長さが短く一周期の終了時点で蓄熱量が残存す場合には高周波パルスモードとなる。
【0168】
以下、
図21の信号図を用いて着火状態における低周波モードと高周波モードを説明し、
図22の信号図を用いて未着火状態における低周波モードと高周波モードを説明する。
【0169】
プラズマ着火状態において、
図21(a)〜(d)は低周波パルスモードにおける進行波電圧V
f、反射波電圧V
r、蓄熱換算量H
ac、および着火判定信号V
failを示し、
図21(e)〜(h)は高周波パルスモードにおける進行波電圧V
f、反射波電圧V
r、蓄熱換算量H
ac、および着火判定信号V
failを示している。なお、ここでは、着火判定信号Vfailは、プラズマが未着火であることを判定したときに出力される。
【0170】
進行波電圧V
fは、一周期内において時間幅をt
1とするRF
on区間で所定周波数のパルス出力を出力する(
図21(a),
図21(e))。プラズマが正常な着火状態にある場合には、パルス出力の立ち上がりおよび立ち下がりにおける不整合によってパルス状の反射波電圧V
rが発生する(
図21(b),
図21(f))。
【0171】
図21(c),
図21(g)において、蓄熱換算量H
acは、反射波電圧VrがRF電力増幅素子に加わることで蓄積される熱量の換算値を示し、一点鎖線はRF電力増幅素子の熱破損に対する許容量を示し、RF電力増幅素子を反射波による破損から保護するデバイス保護検知レベルを示している。
【0172】
プラズマが着火状態にある場合には、低周波モードおよび高周波モードの何れのモードにおいても、蓄熱換算量H
acは駆動モードの各一周期内においてはデバイス保護検知レベルに達すること無く零に戻るため、着火判定信号V
fail(
図21(d),(h))は出力されず、未着火の判定は行われない。
【0173】
一方、プラズマ未着火状態において、
図22(a)〜(d)は低周波パルスモードにおける進行波電圧V
f、反射波電圧V
r、蓄熱換算量H
ac、および着火判定信号V
failを示し、
図22(e)〜(h)は高周波パルスモードにおける進行波電圧V
f、反射波電圧V
r、蓄熱換算量H
ac、および着火判定信号V
failを示している。なお、ここでは、プラズマ着火状態の判定を判定トリガに基づいて行う例を示している。
【0174】
進行波電圧V
fは、一周期内において時間幅をt
1とするRF
on区間で所定周波数のパルス出力を出力する(
図22(a),
図22(e))。プラズマが未着火状態にある場合には、パルス出力が出力されているRF
on区間では、矩形状に反射波電圧V
rが発生する((
図22(b),
図22(f))。
【0175】
図22(c),
図22(g)において、蓄熱換算量H
acは、反射波電圧VrがRF電力増幅素子に加わることで蓄積される熱量の換算値を示し、一点鎖線はRF電力増幅素子の熱破損に対する許容量を示し、RF電力増幅素子を反射波による破損から保護するデバイス保護検知レベルを示している。
【0176】
プラズマが未着火状態にある場合には、低周波モードでは、蓄熱換算量H
acは駆動モードの周期内においてはデバイス保護検知レベルに達し(
図22(c))、着火判定信号V
failを出力する(
図22(d))。なお、
図22(c)では、RF
on区間の終了時点で蓄熱換算量H
acがデバイス保護検知レベルに達する状態を示しているが、反射波電圧V
rの波高値が大きい場合には、RF
on区間の終了時点に至る前の時点で蓄熱換算量H
acがデバイス保護検知レベルに達し、着火判定信号V
failが出力される。着火判定信号V
failの出力はプラズマが未着火状態であることを示している。
【0177】
また、高周波モードでは、複数の周期において蓄熱を切り返すことによって蓄熱換算量H
acはデバイス保護検知レベルに達し(
図22(g))、着火判定信号V
failを出力する(
図22(h))。なお、
図22(g)では、5回目の周期で蓄熱換算量H
acがデバイス保護検知レベルに達する状態を示しているが、蓄熱換算量H
acがデバイス保護検知レベルに達する周期数は反射波電圧V
rの波高値およびデューティー比に依存して変化する。
【0178】
着火判定の装置構成は、ハード回路で構成する他、DSPやFPGA等のデジタル演算処理によって構成することも可能であり、ソフトウエアで行う場合にはCPUや着火判定部の処理をCPUに指示するプログラムを格納したメモリ等で構成することができる。
【0179】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本願発明に係るプラズマの着火状態判定に係る動作および装置の一例であり、本願発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本願発明の範囲から排除するものではない。
【課題】パルス駆動によるプラズマ着火において、反射波電力から高周波電源を保護するために進行波電力を低下させるとプラズマの着火が難しくなるという問題点を解決し、反射波電力から高周波電源を保護するとともにプラズマの確実な着火を図る
【解決手段】高周波電源装置はプラズマ着火するパルス電力を供給するプラズマ着火工程と、発生したプラズマを維持する駆動電力を供給する駆動電力供給工程とを備え、プラズマ着火工程において、着火パルス出力動作で印加する着火パルスを、着火を促すメインパルスと、メインパルスの前段階で印加され、メインパルスよりも低電力のプリパルスとによって構成し、反射波電力から高周波電源を保護するとともにプラズマの確実な着火を行う。