特許第5704789号(P5704789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5704789
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】耐アルコール性剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/38 20060101AFI20150402BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20150402BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20150402BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   A61K47/38
   A61K9/16
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K31/485
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/32
   A61P25/04
   A61P25/36
【請求項の数】29
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2007-552587(P2007-552587)
(86)(22)【出願日】2006年1月27日
(65)【公表番号】特表2008-528534(P2008-528534A)
(43)【公表日】2008年7月31日
(86)【国際出願番号】EP2006000727
(87)【国際公開番号】WO2006079550
(87)【国際公開日】20060803
【審査請求日】2008年9月2日
【審判番号】不服2012-25831(P2012-25831/J1)
【審判請求日】2012年12月27日
(31)【優先権主張番号】0501638.1
(32)【優先日】2005年1月28日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2005/050014
(32)【優先日】2005年2月11日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】60/670,506
(32)【優先日】2005年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/730,339
(32)【優先日】2005年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599108792
【氏名又は名称】ユーロ−セルティーク エス.エイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マニオン,リチャード,オー.
(72)【発明者】
【氏名】マッケナ,ウィリアム,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】オドネル,エドワード,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ダナゲル,ヘレン,カスリーン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,ジェフリー,ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】モハマド,ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】プラター,デレック,アラン
(72)【発明者】
【氏名】タンバー,ハルジット
(72)【発明者】
【氏名】ワルデン,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトナット,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】フライシャー,ウルフガング
(72)【発明者】
【氏名】アーン,ウド
(72)【発明者】
【氏名】シュピッツレー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】レウナー,クリスチャン
【合議体】
【審判長】 星野 紹英
【審判官】 冨永 保
【審判官】 新居田 知生
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−501067(JP,A)
【文献】 特表2005−500364(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/026262(WO,A2)
【文献】 特表2003−522144(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/064807(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/084504(WO,A2)
【文献】 特開平7−53361(JP,A)
【文献】 特表平10−508608(JP,A)
【文献】 特表平10−251149(JP,A)
【文献】 特表2000−510487(JP,A)
【文献】 特表2002−534460(JP,A)
【文献】 特開2002−193835(JP,A)
【文献】 特表2007−522196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00,47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての、及び、オピオイド塩のアルコール抽出に対する耐性を持たせるための、エチルセルロースの使用であって、放出制御マトリックス材料として前記エチルセルロースを有する前記製剤が、アルコール抽出試験において、同じ処方だが、前記エチルセルロースの代わりに他のマトリックス材料を完全にまたは部分的に用いた製剤と比較して少ないオピオイド塩を放出し、
前記エチルセルロースが、前記マトリックス製剤の5重量%より多く20重量%未満の量で使用され、
前記エチルセルロースが、少なくとも1つの可塑剤と併用され、またはC12−C36脂肪族アルコール及びC12−C36脂肪族酸から選択される第二の放出制御マトリックス材料と併用され、
前記アルコール抽出試験が、室温で40%エタノール中における前記製剤の15分間の振盪後に、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)と206mm波長でのUV(紫外線)によって、溶解したオピオイドの量を測定するものである、前記使用。
【請求項2】
オピオイド塩放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての、及び、オピオイド塩のアルコール抽出に対する耐性を持たせるための、エチルセルロースの使用であって、前記製剤が、室温、40%エタノール中で15分振盪した後、オピオイド塩の35%未満を放出し、
前記エチルセルロースが、前記マトリックス製剤の5重量%より多く20重量%未満の量で使用され、
前記エチルセルロースが、少なくとも1つの可塑剤と併用され、またはC12−C36脂肪族アルコール及びC12−C36脂肪族酸から選択される第二の放出制御マトリックス材料と併用される、前記使用。
【請求項3】
前記オピオイド塩が、薬学的に許容される塩の形態での、オピオイド作動薬、オピオイド作動薬との組み合わせでのオピオイド拮抗薬(この組み合わせは、鎮痛効果をもたらす)、および混合型オピオイド作動薬/拮抗薬部分オピオイド作動薬またはこれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記オピオイド塩が、薬学的に許容される塩の形態での、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロマイド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメヘプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール;ならびに前記のものの任意の混合物から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記オピオイド塩が、オピオイド作動薬塩とオピオイド拮抗薬塩の組み合わせ(この組み合わせは、鎮痛効果をもたらす)であり、前記オピオイド拮抗薬が、薬学的に許容される塩の形態での、ナロキソン、ナルトレキソンおよびナロルフィンの群から選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記エチルセルロースが、前記マトリックス製剤の10重量%以上20重量%未満の量で使用される、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記エチルセルロースが、ポリメタクリレートポリマー、または中性水不溶性ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)コポリマーから選択される少なくとも1つの追加の放出制御マトリックス材料と併用され、当該コポリマーが、前記マトリックス製剤の5重量%〜66重量%の重量で使用される、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記オピオイド塩が、塩酸オキシコドンまたは塩酸ヒドロモルホンである、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1つの結合剤が、前記マトリックス製剤に含まれる、請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記結合剤がヒドロキシアルキルセルロースである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記エチルセルロースの量が、前記マトリックス製剤の5重量%より多く15重量%未満である、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記第二の制御放出マトリックス材料が、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリン酸もしくはパルミチン酸またはこれらの混合物から選択される、請求項1から11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
記C12−C36脂肪族アルコールの量が、前記マトリックス製剤の少なくとも5重量%である、請求項1から12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
記C12−C36脂肪族アルコールの量が、前記マトリックス製剤の少なくとも10重量%である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
記C12−C36脂肪族アルコールの量が、前記マトリックス製剤の少なくとも15重量%である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
記C12−C36脂肪族アルコールの量が、前記マトリックス製剤の20〜25重量%である、請求項13に記載の使用。
【請求項17】
前記オピオイド塩が、塩酸オキシコドンと塩酸ナロキソンの2:1の量比での混合物である、請求項11から16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
前記マトリックス製剤が、中性水不溶性ポリ(エチルアクリレート、メチルアクリレート)コポリマーを含まない、請求項9から17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記マトリックス製剤が、ポリ(メタ)アクリレート トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライドコポリマーを含まない、及び/又は、溶融押出プロセスで調製される、請求項1から18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記放出制御マトリックス製剤が、室温で水中において15分振盪した後、15%未満のオピオイド塩を放出する、請求項1から19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記放出制御マトリックス製剤が、50℃で水中において5分放置し、その後、同温度で15分振盪した後、20%未満のオピオイド塩を放出する、請求項1から20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記放出制御マトリックス製剤が、75℃で5分放置し、その後、同温度で15分振盪した後、25%未満のオピオイド塩を放出する、請求項1から21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記放出制御マトリックス製剤が、100℃で5分放置し、その後、同温度で15分振盪した後、30%未満のオピオイド塩を放出する、請求項1から22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記放出制御マトリックス製剤の50℃、120分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量の、前記放出制御マトリックス製剤の室温、120分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量に対する比が、1.2以下である、請求項1から23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記放出制御マトリックス製剤の75℃、15分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量の、前記放出制御マトリックス製剤の室温、15分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量に対する比が、1.2以下である、請求項1から24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記放出制御マトリックス製剤の100℃、15分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量の、前記放出制御マトリックス製剤の室温、15分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量に対する比が、1.3以下である、請求項1から25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記放出制御マトリックス製剤の100℃、120分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量の、前記放出制御マトリックス製剤の室温、120分の振盪で放出されるオピオイド塩の重量%量に対する比が、2未満である、請求項1から26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記放出制御マトリックス製剤が、乳鉢および乳棒で乳棒を24回転させて磨砕し、900mlの水に37℃で45分間抽出した後、12.5%未満のオピオイド塩を放出する、請求項1から27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記放出制御マトリックス製剤が、2本のスプーンの間でまたはピルクラッシャーで粉砕し、スプーン上で沸騰するまで加熱した2mlの水に抽出した後、27.5%未満のオピオイド塩を放出する、請求項1から28のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年1月28日出願の英国特許出願第0501638.1号、2005年2月11日出願のPCT特許出願第PCT/GB2005/050014号、2005年4月13日出願の米国特許仮出願第60/670,506号および2005年10月26日出願の米国特許仮出願第60/730,339号の恩典を請求するものである。
【0002】
本発明は、アルコール抽出に対して耐性の放出制御製剤、特に、アルコール抽出に対して耐性のオピオイド放出制御製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬製品は、時として、乱用の対象となる。例えば、特定のオピオイド作動薬用量は、経口投与された同じ用量と比較して、非経口投与されたときのほうが強いことがある。一部の製剤は、それらの中に含有されるオピオイド作動薬を不正使用に供するために改ざんされることがある。放出制御オピオイド作動薬製剤は、経口または非経口投与すると中に含有されるオピオイドが直ちに放出されるようにするために、薬物乱用者により粉砕されたり、溶媒(例えばエタノール)で抽出されたりすることがある。
【0004】
エタノールに暴露されたときにオピオイドの一部を遊離し得る放出制御オピオイド作動薬剤形は、患者がその剤形の使用およびその剤形とアルコールの同時使用についての指示を無視した場合、意図されるよりずっと速くその用量を患者にもたらす結果となることもある。
【0005】
Purdue Pharma L.P.は、10、20、40および80mgの塩酸オキシコドンを含有する剤形の持続放出性オキシコドンを商品名OxyContinで、現在販売している。
【0006】
米国特許第5,266,331号、同第5,508,042号、同第5,549,912号および同第5,656,295号には、持続放出性オキシコドン製剤が開示されている。
【0007】
Purdue Pharma L.P.は、商品名パラドン(Palladone)(登録商標)の、12、16、24および32mgの塩酸ヒドロモルホンを含有する剤形の持続放出性ヒドロモルホンのNDAホルダーである。
【0008】
パラドン(登録商標)の開発中、インビトロ抽出および溶解試験は、この製剤のエタノールへの暴露が、ヒドロモルホンの放出を、水中での放出と比較して増加させることを示した。健常な被験者におけるその後の薬物動態試験は、エタノールとパラドン(登録商標)Capsuleの同時摂取が、その製剤からのヒドロモルホンの急速な放出および吸収を生じさせ得ることを示した。
【0009】
米国特許第5,958,452号、同第5,965,161号、同第5,968,551号、同第6,294,195号、同第6,335,033号、同第6,706,281号および同第6,743,442号には、持続放出性ヒドロモルホン製剤が開示されている。
【0010】
Maloneyらに付与された米国特許公開第2003/0118641号および同第2005/0163856号には、一般に入手可能な溶媒でのオピオイドの抽出に対して耐性であるといわれている疎水性マトリックスとイオン交換樹脂を併用するオピオイド製剤が記載されている。
【0011】
Hirshらに付与された米国特許公開第2004/0052731号には、薬物の不適当な投与の可能性を減少させるために使用することができるといわれている医薬組成物が記載されている。
【0012】
アルコールに暴露されたときに放出されるオピオイドが低減された、オピオイド作動薬を含む経口剤形が、当分野において必要とされ続けている。
【0013】
前述の特許、特許出願および優先権書類を含む、本明細書に引用するすべての参考文献は、それら全文、本明細書に参考として組み込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一定の実施形態の目的は、不正使用のためにオピオイド鎮痛薬を遊離させることを目的とした、特にエタノール溶液での一般的な抽出方法に対して耐性である、オピオイド鎮痛薬を含む経口放出制御剤形を提供することである。
【0015】
本発明の一定の実施形態の目的は、アルコールと同時使用されたとき、オピオイド鎮痛薬の放出に対して耐性である、オピオイド鎮痛薬を含む経口放出制御剤形を提供することである。
【0016】
本発明の一定の実施形態の目的は、硬度が増した、粉砕されにくい、オピオイド鎮痛薬を含む経口放出制御剤形を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一定の実施形態において、本発明は、オピオイド鎮痛薬および放出制御材料を含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量に対する比が、2:1以下または約2:1未満、1.5:1以下または約1.5:1未満、あるいは1:1以下または約1:1未満である剤形に関する。一定のこうした実施形態において、この比の下限は、0.5:1または1:1である。
【0018】
一定の実施形態において、本発明は、オピオイド鎮痛薬および放出制御材料を含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、30%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量に対する比が、4:1以下または約4:1未満、3:1以下または約3:1未満、あるいは2:1以下または約2:1未満である剤形に関する。一定のこうした実施形態において、この比の下限は、0.5:1または1:1または1.7:1である。
【0019】
一定の実施形態において、本発明は、オピオイド鎮痛薬および放出制御材料を含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、40%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量に対する比が、5:1以下または約5:1未満、4:1以下または約4:1未満、あるいは3:1以下または約3:1未満である剤形に関する。一定のこうした実施形態において、この比の下限は、0.5:1または1:1または2.6:1である。
【0020】
一定の実施形態において、本発明は、放出制御材料中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を含む複数のマトリックスを含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩の量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩の量に対する比が、約2:1未満である剤形に関する。より詳細には、一定のこうした実施形態において、本発明は、アルキルセルロース中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を含む複数の押出マトリックスを含む放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、エチルセルロース中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を含む複数の押出マトリックスを含む放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、アルキルセルロース中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を含む複数の押出マトリックスを含み、前記アルキルセルロースが、前記マトリックスの少なくとも50重量%(% w/w)である、放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、アルキルセルロース中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩から本質的に成る複数の押出マトリックスを含む放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、アルキルセルロース中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩、任意の結合剤および任意の可塑剤から本質的に成る複数の押出マトリックスを含む放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、アルキルセルロース中に分散されたヒドロモルホンまたはその薬学的に許容される塩を含む複数の押出マトリックスを含み、それらのマトリックスが、アクリル系ポリマーを含まない、放出制御剤形に関する。
【0021】
一定の実施形態において、本発明は、放出制御材料中に分散されたオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含むマトリックスを含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後にその25%未満のオピオイド塩が放出される剤形に関する。より詳細には、一定のこうした実施形態において、本発明は、放出制御材料中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含む複数のマトリックスを含む放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、例えば、薬学的に許容される賦形剤中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含むマトリックスと、そのマトリックスの周りに配置された放出制御材料を含む層とを含む、放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、薬学的に許容される賦形剤中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含む複数のマトリックスと、それらのマトリックスの各々の周りに配置された放出制御材料を含む層とを含む、放出制御剤形に関する。
【0022】
一定の実施形態において、本発明は、オピオイドのアルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御材料としての難透水性熱可塑性ポリマーまたは疎水性ポリマーの使用に関し、前記難透水性熱可塑性ポリマーまたは疎水性ポリマーを放出制御マトリックス材料として有する前記製剤は、アルコール抽出試験において、同じ処方だが、前記難透水性熱可塑性ポリマーまたは疎水性ポリマーの代わりに他のマトリックス材料を完全にまたは部分的に用いた製剤と比較して少ないオピオイドを放出する。
【0023】
一定の実施形態において、本発明は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての難透水性熱可塑性ポリマーの使用に関し、この場合、前記製剤は、1分当たり揺動数500〜600にセットしたStuart Scientific Flask Shaker Model SF1を使用して、室温で40%エタノール中で15分振盪した後、オピオイドの35%未満を放出する。一定のこうした実施形態において、前記製剤は、30%未満のオピオイド塩、さらに好ましくは25%未満のオピオイド塩、または15〜25%のオピオイド塩を放出する。
【0024】
一定の実施形態において、本発明は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての疎水性材料ポリマーの使用に関し、USP Apparatus I(バスケット)を使用して100rpm、37℃で操作する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中での前記製剤を含む剤形の1時間のインビトロ溶解後、前記オピオイドの25%未満が放出される。
【0025】
一定の実施形態において、本発明は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての疎水性材料の使用に関し、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する900および/または500mlの人工胃液中での前記製剤を含む剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイドの量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する900および/または500mlの人工胃液中での前記製剤を含む剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイドの量に対する比は、約2:1未満である。
【0026】
一定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示するような剤形をその必要がある患者に投与することを含む、疼痛の治療方法に関する。
【0027】
一定の実施形態において、本発明は、本明細書に開示するような剤形の調製を含む、オピオイド作動薬の乱用を阻止する方法に関する。
【0028】
本明細書に開示する製剤は、長期間にわたって薬物を放出して、治療効果をもたらすためのものである。一定の実施形態において、本放出制御製剤は、少なくとも12時間または24時間 治療効果をもたらす。
【0029】
用語「放出制御」は、それがオピオイド作動薬に適用される場合、本発明のために、通常の(すなわち、即時放出)製剤の1回量より長時間の作用をもたらす速度での製剤からのオピオイドの放出と定義する。例えば、4〜24時間の時間にわたって薬物を放出することができる放出制御経口製剤と比較して、即時放出経口剤形は、1時間の時間にわたって薬物を放出することができる。
【0030】
本発明のために、用語「オピオイド鎮痛薬」は、用語「オピオイド」と同義であり、ならびに1つの作動薬、または1つより多くのオピオイド作動薬の組み合わせを含み、混合型作動薬−拮抗薬;部分作動薬、およびオピオイド作動薬とオピオイド拮抗薬の組み合わせ(この場合の組み合わせは、鎮痛効果をもたらす);それらの立体異性体;それらのエーテルもしくはエステル;または前記のものの任意の混合物も含む。本発明の一定の実施形態に関して、用語「オピオイド作動薬」は、用語「オピオイド鎮痛薬」と同義であり、ならびに1つの作動薬、または1つより多くのオピオイド作動薬の組み合わせを含み、混合型作動薬−拮抗薬;部分作動薬;それらの立体異性体;それらのエーテルもしくはエステル;または前記のものの任意の混合物の使用も含む。
【0031】
本明細書に開示する本発明は、オピオイドの薬学的に許容される任意の塩の使用を包含するものとする。用語「オピオイド塩」は、オピオイドの薬学的に許容される塩を指す。オピオイドに言及する本発明の任意の実施形態は、オピオイド塩に言及するものでもある。
【0032】
薬学的に許容される塩としては、金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩など;アルカリ土類金属、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など;有機アミン塩、例えば、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩など;無機酸塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;有機酸塩、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩など;スルホン酸塩、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩など;アミノ酸塩、例えば、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明に従って使用されるオピオイドは、1つまたはそれ以上の不斉中心を有することがあり、エナンチオマー、ジアステレオマーまたは他の立体異性体形を生じさせることがある。本発明は、すべてのこうした可能な形ならびにそれらのラセミおよび分割形、ならびにそれらの混合物の使用に包含するものとする。本明細書に記載の化合物が、オレフィン性二重結合または他の幾何不斉中心を有する場合、それは、E幾何異性体とZ幾何異性体の両方を含むと解釈する。すべての互変異性体も本発明に包含されると解釈する。
【0034】
一定の実施形態において、本明細書に開示する剤形の単数のマトリックスまたは複数のマトリックスは、アルキルセルロース中に分散されたオピオイド鎮痛薬と任意の結合剤と任意の可塑剤とから本質的に成る。
【0035】
一定の実施形態において、本明細書に開示する剤形は、アクリル系ポリマーを含まない。一定の実施形態において、本明細書に開示する剤形の単数のマトリックスまたは複数のマトリックスは、アクリル系ポリマーを含まない。
【0036】
本明細書で用いる場合、用語「立体異性体」は、空間におけるそれらの原子の配向のみが異なる個々の分子のすべての異性体についての一般用語である。これは、エナンチオマー、および互いに鏡像でない、1つより多くのキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオマー)を含む。
【0037】
用語「キラル中心」は、4つの異なる基が結合している炭素原子を指す。
【0038】
用語「エナンチオマー」または「エナンチオマーの」は、その鏡像に重ね合わせることができない、従って光学活性である分子を指し、エナンチオマーは、一方の方向に偏光面を回転させ、その鏡像は、逆方向に偏光面を回転させる。
【0039】
用語「ラセミの」は、エナンチオマーの等しい部の混合物を指し、これは光学的に不活性である。
【0040】
用語「分割」は、分子の2つのエナンチオマー形の一方の分離または濃縮または枯渇を指す。
【0041】
用語「層」は、支持体(これは、それ自体、および例えばシールコートなどの1つまたはそれ以上の中間層を含む場合がある)の周りに配置された材料を意味し、これは、例えば塗料として塗布することができる。支持体の成層は、例えばスプレーコーティング、浸漬またはエンロービングをはじめとする当分野では公知の手順により行うことができる。
【0042】
用語「周りに配置される」は、粒子の周りに配置された層材料が、その物質とその粒子の間に1つまたは複数の中間層を伴い、または伴わず、その粒子の少なくとも一部を覆うことを意味する。一定の実施形態において、前記材料は、前記粒子の表面積の平均の少なくとも50%を覆う。一定の他の実施形態において、前記材料は、前記粒子を完全に覆う。
【0043】
最も広い意味で、用語「アルコール抽出に対する耐性」は、エタノールを含む溶液に暴露されたとき、比較製剤より少ないオピオイドを放出する製剤の能力を指すが、それにもかわらず、本発明の特定の実施形態に関しては、「アルコール抽出に対する耐性」が、別にまたはさらに定義されることがある。本発明の意味の中でのアルコール抽出に対する耐性は、本明細書で説明するようなエタノールを含む溶液への製剤の暴露を含む様々な「アルコール試験」により試験し、定義することができる。
【0044】
用語「放出制御マトリックス製剤」は、放出制御材料およびオピオイドを含む組成物を指す。特に指示がない限り、用語「放出制御マトリックス製剤」は、無傷の形態の前記製剤を指す。
【0045】
用語「放出制御剤形」は、例えば「放出制御マトリックス製剤」の形態または本明細書で言及するような任意の他の放出制御形態のような放出制御形態のオピオイドを含む投与形態を指す。特に指示がない限り、用語「放出制御剤形」は、無傷の形態での前記剤形を指す。前記剤形は、例えば、圧縮された放出制御マトリックス製剤を含む錠剤または多粒子の形態の放出制御マトリックス製剤を含むカプセルであり得る。
【0046】
アルコール抽出に対する耐性は、例えば、20%エタノールを含有する人工胃液(SGF)にその製剤を暴露することにより試験することができる。「20%エタノールを含有する900mlの人工胃液(SGF)」を得るための一般的な手法は、800mlのSGFを210mlの95%エタノール/水(これは、200ml エタノールを提供する)と混合し、その混合物の900mlを取る手法である。95%エタノールからの追加の10mlの水の影響は、900mlの混合物中のSGFおよびエタノールの百分率の中で極めてわずかである。アルコール抽出に対する耐性は、40%エタノールを含む水溶液を使用して試験することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
薬物乱用者は、時として、発現を速めるように薬物製剤を操作することにより陶酔効果を達成しようとする。
【0048】
これを達成する最も初歩的な方法は、活性成分をより多く入手できるようにしようとして剤形を微粉末に粉砕する方法である。経口的乱用者は、材料をかみおよび/または飲み込み、経鼻的乱用者は、鼻で吸うために製剤を粉砕する。
【0049】
時には、非経口または静脈内用に改ざんするために、粉砕した材料を加熱しながら水に溶解し、濾過して注射用の注射器に入れる。
【0050】
上述の「直接的改ざん」法に加え、より決然とした乱用者は、製剤マトリックスから活性成分を完全に単離しようとして様々な種類の「キッチン・ケミストリー」を用いることもある。1つの方法は、一般に入手可能な媒体、例えば水またはエタノールおよびこれらの混合物への一段階抽出を含む。
【0051】
一定の実施形態において、本発明は、放出制御材料中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含むマトリックスを含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に前記25%未満のオピオイド塩または20%未満のオピオイド塩を放出する剤形に関する。一定のこうした実施形態において、少なくとも5%または10% オピオイド鎮痛薬が、これらの溶解条件下で放出される。より詳細には、一定のこうした実施形態において、本発明は、放出制御材料中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含む複数のマトリックスを含む放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、薬学的に許容される賦形剤中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含むマトリックスと、そのマトリックスの周りに配置された放出制御材料を含む層とを含む、放出制御剤形に関する。一定のこうした実施形態において、本発明は、薬学的に許容される賦形剤中のオピオイド鎮痛薬の薬学的に許容される塩を含む複数のマトリックスと、それらのマトリックスの各々の周りに配置された放出制御材料を含む層とを含む、放出制御剤形に関する。
【0052】
一定のこうした実施形態において、前記放出制御剤形は、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびセトステアリルアルコールから成る群より選択されるC12−C36脂肪族アルコールを15(重量)%より多く含有しない、好ましくは20(重量)%より多く含有しない放出制御マトリックス製剤を含む。
【0053】
一定の実施形態において、本発明は、オピオイド鎮痛薬および放出制御材料を含む放出制御剤形であって、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中でのその剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイド鎮痛薬の量に対する比が、2:1以下または約2:1未満、1.5:1以下または約1.5:1未満、あるいは1:1以下または約1:1未満である剤形に関する。一定のこうした実施形態において、この比の下限は、0.5:1または1:1である。
【0054】
一定のこうした実施形態において、前記放出制御剤形は、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびセトステアリルアルコールから成る群より選択されるC12−C36脂肪族アルコールを15(重量)%より多く含有しない、好ましくは20(重量)%より多く含有しない放出制御マトリックス製剤を含む。
【0055】
一定の実施形態において、本発明は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての難透水性熱可塑性ポリマーの使用に関し、この場合、前記製剤は、1分当たり揺動数500〜600にセットしたStuart Scientific Flask Shaker Model SF1を使用して、室温で40%エタノール中で15分振盪した後、オピオイドの35%未満を放出する。一定のこうした実施形態において、前記製剤は、30%未満のオピオイド塩、さらに好ましくは25%未満のオピオイド塩、または15〜25%のオピオイド塩を放出する。
【0056】
一定の実施形態において、本発明は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての疎水性材料ポリマーの使用に関し、この場合、USP Apparatus I(バスケット)を使用して100rpm、37℃で操作する、20%エタノールを含有する500mlおよび/または900mlの人工胃液中での前記製剤を含む剤形の1時間のインビトロ溶解後、前記オピオイドの25%未満が放出される。
【0057】
一定の実施形態において、本発明は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるためのオピオイド放出制御マトリックス製剤の製造における放出制御マトリックス材料としての疎水性材料の使用に関し、この場合、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、20%エタノールを含有する900および/または500mlの人工胃液中での前記製剤を含む剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイドの量の、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用する、0%エタノールを含有する900および/または500mlの人工胃液中での前記製剤を含む剤形の1時間のインビトロ溶解後に放出されるオピオイドの量に対する比は、約2:1未満である。
【0058】
本明細書に開示するいずれの実施形態においても、本剤形は、オピオイド鎮痛薬および放出制御材料を含む1つのマトリックス;オピオイド鎮痛薬および放出制御材料を含む複数のマトリックス;オピオイド鎮痛薬および薬学的に許容される賦形剤を含む1つのマトリックスとそのマトリックスの周りに配置された放出制御材料を含む層;またはオピオイド鎮痛薬および薬学的に許容される賦形剤を含む複数のマトリックスとそれらのマトリックスの各々の周りに配置された放出制御材料を含む層、を含むことができる。この列挙に排他的な意味はない。
【0059】
一定の実施形態において、本剤形は、半透膜により包囲された浸透性コアの中にオピオイド鎮痛薬を含むことができる。この剤形は、投与されたときに浸透圧を利用してオピオイド鎮痛薬を送達するための任意の通路を有することができる。
【0060】
本発明の一定の実施形態において、本放出制御材料は、疎水性材料、好ましくはアルキルセルロース、最も好ましくはエチルセルロースを含む。本発明の一定の実施形態において、本放出制御材料は、難透水性熱可塑性ポリマー、好ましくはアルキルセルロース、最も好ましくはエチルセルロースを含む。
【0061】
本発明の一定の実施形態において、前記疎水性材料または前記難透水性熱可塑性ポリマーは、本明細書において説明するようなアルコール抽出に対する耐性を持たせるために使用される。以下に記載する実施形態は、アルコール抽出に対する耐性を持たせるための前記疎水性材料または前記難透水性熱可塑性ポリマーの使用についてのより詳細な説明を提供するものである。
【0062】
一定の実施形態において、エチルセルロースは、前記単数または複数のマトリックスの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%または少なくとも60%の重量で存在する。他の実施形態において、エチルセルロースは、前記単数または複数のマトリックスの多くとも70%、多くとも80%または多くとも90%の重量で存在する。
【0063】
一定の実施形態において、本発明は、その放出制御マトリックス製剤の5〜60(重量)%、好ましくは10〜50(重量)%、最も好ましくはその放出制御マトリックス製剤の20〜45(重量)%の量でのアルキルセルロース、好ましくはエチルセルロースの使用に関する。
【0064】
一定の実施形態において、本発明は、ポリメタクリレートポリマー、好ましくは中性水不溶性ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)コポリマーから選択される少なくとも1つの第二放出制御マトリックス材料とエチルセルロースの併用に関する。
【0065】
アルキルセルロースを含む一定の実施形態において、前記放出制御材料は、前記単数または複数のマトリックスの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%または少なくとも25%の重量でポリメタクリレートポリマーをさらに含む。他の実施形態において、前記ポリメタクリレートポリマーは、前記単数または複数のマトリックスの多くとも30%、または多くとも35%の重量で存在する。
【0066】
アルキルセルロース、好ましくはエチルセルロースを含む一定の実施形態において、前記放出制御マトリックス製剤は、その放出制御マトリックス製剤の5(重量)%〜66(重量)%、好ましくは15(重量)%〜55(重量)%、さらに好ましくは20〜45(重量)%、最も好ましくは25(重量)%〜45(重量)%の量で、ポリメタクリレートポリマー、好ましくは中性水不溶性ポリ(エチルアクリレート、メチルアクリレート)コポリマーをさらに含む。
【0067】
1つの態様において、本放出制御医薬製剤は、溶融押出により得ることができるまたは入手でき、それらは、中性ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)コポリマーおよび活性成分を含むことができる。このポリマーのゴム様特性により、一般には弾力性があり、破壊することなく圧縮することができ、好ましくは弾性である多粒子が得られる。
【0068】
1つの好ましい形態において、これらの多粒子は、手によって、2つの堅い表面、例えばコインとテーブルの上面の間、または2本のスプーンの間で、破壊することなく圧縮することができる。これらの多粒子は、変形させることができるが、破壊したり、粉砕したりすることはできず、理想的には、ある程度、それらの元の形を再び取り戻すことができる。
【0069】
ゴムのような特性は、耐改ざん性を持たせることに役立つ。耐改ざん性は、乱用の対象となるオピオイド鎮痛薬または他の活性成分を含有する製品には特に重要である。本発明の好ましい多粒子の耐改ざん性は、水および/またはエタノール、例えば40%エタノール中で投薬量の多粒子を振盪することにより、証明することができる。
【0070】
このように試験したとき、好ましい多粒子は、以下の活性物質放出特性のうちの少なくとも1つのを示すであろう:
水中、室温での15分の振盪:活性物質の15%未満、10%未満の放出、好ましくは活性物質の7.5%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の5%未満の放出、例えば活性成分の1.5〜4%の放出。
水中、50℃での5分の放置、その後の同温度での15分の振盪:活性物質の20%未満の放出、好ましくは活性物質の15%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の12%未満の放出、例えば活性成分の4〜12%の放出。
75℃で5分の放置、その後の同温度での15分の振盪:活性物質の25%未満の放出、好ましくは活性物質の20%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の15%未満の放出、例えば活性物質の10〜15%の放出。
100℃で5分の放置、その後の同温度での15分の振盪:活性物質の30%未満の放出、好ましくは活性物質の25%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の20%未満の放出、例えば活性物質の12〜20%の放出。
40%エタノール中、室温での15の振盪:活性物質の35%未満の放出、好ましくは活性物質の30%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の25%未満の放出、例えば活性物質の15〜20%の放出。
【0071】
あるいは、本発明の好ましい多粒子の耐改ざん性は、乳鉢および乳棒で乳棒を24回転させて投薬量の多粒子を磨砕し、その生成物を37℃で45分間、900mlの水に入れておくことにより、証明することができる。その後、抽出された活性物質の量を、HPLCおよび例えば210nmの波長での検出UVによって判定することができる。
【0072】
この方法を用いて試験したとき、本発明の好ましい多粒子は、以下の活性成分放出特性を示す:12.5%未満の放出物質、好ましくは活性物質の10%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の7.5%未満の放出、例えば活性物質の2〜7.5%の放出。
【0073】
さらなる方法において、本発明の好ましい多粒子の耐改ざん性は、2本のスプーン間で、またはピルクラッシャー、例えばApex Healthcare Productsが販売しているPill Pulverizerで投薬量の多粒子を粉砕し、その後、スプーンの上で沸騰するまで加熱した2mlの水に抽出し、濾過することによって証明することができる。その後、抽出された活性物質の量を、HPLCおよび例えば210nmの波長でのUVによる検出によって判定することができる。
【0074】
この方法を用いて試験したとき、本発明の好ましい多粒子は、以下の活性物質放出特性を示すであろう:活性物質の27.5%未満の放出、好ましくは活性物質の15%未満の放出、さらに好ましくは活性物質の5%未満の放出、例えば活性物質の1〜5%の放出。
【0075】
こうした耐改ざん性を持たせるために、本発明は、医薬製剤を調製する際に中性ポリ(エチルアクリレート、メチルアクリレート)コポリマーを使用して、耐改ざん性をもたらすことを含むことができる。中性ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)コポリマーは、この製剤中に活性成分を組み込むできる。
【0076】
本発明の一定の実施形態において、本剤形は、前記単数または複数のマトリックスの少なくとも1%、少なくとも3%または少なくとも5%の重量で結合剤をさらに含む。他の実施形態において、前記結合剤は、前記単数または複数のマトリックスの多くとも7%または多くとも10%の重量で存在する。一定の実施形態において、前記結合剤は、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0077】
本発明の一定の実施形態において、本剤形は、前記単数または複数のマトリックスの少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも15%または少なくとも25%の重量で可塑剤をさらに含む。他の実施形態において、前記可塑剤は、前記単数または複数のマトリックスの多くとも30%または多くとも40%の重量で存在する。
【0078】
一定の実施形態において、前記可塑剤は、少なくとも80℃の融点を有する。これは、その剤形に含有されているオピオイド鎮痛薬を遊離させようとして熱水にその剤形を溶解することを最小限にとどめるのに役立つ。一定の実施形態において、前記可塑剤は、硬化ヒマシ油である。
【0079】
熱水抽出試験は、次のように行うことができる:各薬物製品の1投薬単位を2つの別のガラスシンチレーションバイアルに入れ、バイアル1および2とラベルを貼る。10mLの抽出溶媒を各バイアルに添加する。指定されている場合には、指定温度(50、75または100℃)にセットした水浴に5分間、それらのバイアルを入れる。両方のバイアルを実験室用リストアクションシェーカーに載せ、15分後にバイアル1を120分後にバイアル2を除去する。室温でサンプルを直接そのシェーカーに載せる。
【0080】
一定のこうした実施形態において、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした50℃、120分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量の、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした室温、120分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量に対する比は、1.2以下、好ましくは1以下または0.9以下である。
【0081】
一定のこうした実施形態において、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした75℃、15分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量の、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした室温、15分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量に対する比は、1.2以下、好ましくは1以下または0.9以下である。
【0082】
一定のこうした実施形態において、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした100℃、15分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量の、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした室温、15分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量に対する比は、1.3以下、好ましくは1.2以下または0.9以下である。
【0083】
一定のこうした実施形態において、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした100℃、120分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量の、被検放出制御製剤または剤形中のオピオイドの総量を基準にした室温、120分の振盪で放出されるオピオイド鎮痛薬の重量%量に対する比は、2未満、好ましくは1.5以下または1以下または0.9以下である。
【0084】
一定の実施形態において、アルキルセルロース、好ましくはエチルセルロースの量は、その放出制御マトリックス製剤の20(重量)%未満、好ましくは15(重量)%未満、最も好ましくは10(重量)%未満だが、5(重量)%より多い。
【0085】
より詳細には、こうした一定の実施形態において、好ましくは、アルキルセルロース、特にエチルセルロースは、粒子または水性アルキルセルロース分散体の形態で使用される。
【0086】
エチルセルロース粒子の場合、そのセチルセルロースは、好ましくは、80%トルエンと20%アルコールの溶媒を用いてUbbelohde粘度計において25℃で、5%溶液で測定したとき、3〜110cPの範囲の粘度を有する。好ましくは、この粘度は、18〜110cPの範囲内であり、41〜49cPの範囲での粘度が最も好ましい。適するエチルセルロースは、商品名Ethocel(商標)Standard 45でDow Chemical Companyにより供給されている。代替エチルセルロースは、Ethocel(商標)Standard 7である。
【0087】
水性エチルセルロース分散体の場合、ジブチル/セバケート、水酸化アンモニウム、オレイン酸およびコロイド状無水シリカでのエチルセルロース 20cPの分散体が好ましく、これは、商品名Surlease(商標)E−7−7050で入手できる。
【0088】
一定の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの可塑剤または第二放出制御マトリックス材料(C12−C36脂肪族アルコールまたは対応する脂肪族系酸、好ましくは、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびセトステアリルアルコールならびに対応するステアリン酸およびパルミチン酸ならびにこれらの混合物から選択される)とのエチルセルロースの併用に関し、この場合、C12−C36脂肪族アルコールまたは脂肪酸の量は、その放出制御マトリックス製剤の、好ましくは少なくとも5(重量)%、さらに好ましくは少なくとも10(重量)%、さらに好ましくは少なくとも15(重量)%、最も好ましくは20(重量)%〜25(重量)%である。
【0089】
本発明のこうした一定の実施形態において、本剤形は、アルキル(エチル)セルロースおよび/または脂肪アルコールに加えて、充填剤および追加の物質、例えば造粒助剤、滑沢剤、染料、流動剤および可塑剤を含むことができる。
【0090】
ラクトース、グルコースまたはサッカロース、デンプンおよびそれらの加水分解物、微結晶性セルロース、セラトース(cellatose)、糖アルコール、例えばソルビトールまたはマンニトール、多価可溶性(polysoluble)カルシウム塩、例えばリン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウムまたは三カルシウムを充填剤として使用することができる。
【0091】
ポビドンを造粒助剤として使用することができる。
【0092】
高分散シリカ(Aerosil(登録商標))、滑石、コーンスターチ、酸化マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムまたはカルシウムを流動剤または滑沢剤として好適に使用することができる。
【0093】
ステアリン酸マグネシウムおよび/またはステアリン酸カルシウムを滑沢剤として好適に使用することができる。脂肪、例えば硬化ヒマシ油も好適に使用することができる。
【0094】
こうした一定の実施形態によると、エチルセルロース、ステアリルアルコール、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、充填剤としてラクトースおよび造粒助剤としてポビドンを含む製剤が、特に好ましい。
【0095】
本発明の一定のこうした実施形態において、本放出制御マトリックス製剤は、中性水不溶性ポリ(エチルアクリレート メチルアクリレート)コポリマーおよび/またはポリ(メタ)アクリレート トリメチルアンモニウムメチルアクリレートクロライドコポリマーを含まない。
【0096】
本発明の一定のこうした実施形態において、前記疎水性材料は、腸溶性ポリマーである。適する腸溶性ポリマーの例としては、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、メタクリル酸コポリマー、セラック、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、および前述のものの任意の混合物が挙げられる。
【0097】
本発明の剤形は、米国特許第5,266,331号、同第5,958,452号および同第5,965,161号の教示に従って、押出または造粒により調製することができる。
【0098】
一定の実施形態、特に、上で説明した脂肪アルコールまたは脂肪酸(すなわち、C12−C36脂肪族アルコールまたは対応する脂肪族系酸)との組み合わせでアルキルセルロース、例えばエチルセルロースを含む実施形態において、本発明によると、押出法による医薬製剤またはその前段階の製造が特に有利である。1つの好ましい実施形態において、医薬製剤またはその前段階は、2つのスクリューを具備する同方向または異方向回転押出機での溶融押出により製造される。もう1つのこうした好ましい実施形態は、1つまたはそれ以上のスクリューを具備する押出機での押出しによる製造である。これらの押出機は、混練要素を具備することもある。
【0099】
押出しは、製薬技術の中でよく確立された製造プロセスでもあり、当業者には周知である。当業者は、押出プロセス中に様々なパラメータ、例えば、供給量、スクリュー速度、(利用可能である場合には)異なる押出ゾーンの加熱温度、含水率などを変えて、所望の特性の生成物を製造できることをよく知っている。
【0100】
上述のパラメータは、使用される押出機の特定のタイプに依存するであろう。押出し中、本発明の製剤が溶融する加熱ゾーンの温度は、特に異方向回転二軸スクリュー押出機(例えば、Leistritz Micro 18 GGL)を使用する場合、40〜120℃の間、または40〜160℃の間、好ましくは50〜100℃の間、または好ましくは50〜135℃の間、さらに好ましくは50〜90℃の間、さらにいっそう好ましくは50〜70℃の間、最も好ましくは50〜65℃の間であり得る。当業者は、すべての加熱ゾーンを加熱しなければならないとは限らないことをよく知っている。特に、成分を混合するフィーダーの後ろは、約25℃に冷却する必要があり得る。スクリュー速度は、特に異方向回転二軸スクリュー押出機(例えば、Leistritz Micro 18 GGL)を使用する場合、1分に100〜500回転(rpm)の間、好ましくは100〜250rpmの間、さらに好ましくは100〜200rpmの間で変えることができ、最も好ましくは約150rpmである。ノズルの幾何学的配置および直径は、必要に応じて選択することができる。一般に使用される押出機のノズルの直径は、典型的には1〜10mmの間、好ましくは2〜8mmの間、最も好ましくは3〜5mmの間である。本発明の製品の製造に使用することができる押出機のスクリューの長さ対直径比は、典型的には約40:1である。
【0101】
一般に、加熱ゾーンの温度は、薬学的に活性な化合物を破壊し得る温度が発現しないように選択しなければならない。供給量およびスクリュー速度は、押出しにより製造される製品から、薬学的に活性な化合物が、持続的に、独立して、一様に放出されるように選択される。例えば、供給量を増加させる場合、その遅滞量を保障するために、それに応じてスクリュー速度を増加させなければはらない。
【0102】
上述のすべてのパラメータが、特定の製造条件(押出機のタイプ、スクリューの幾何学的配置、要素の数など)に依存すること、および押出しにより製造される製品が必要な放出の手立てとなるようにそれらのパラメータを合わせなければならないことは、当業者には公知である。
【0103】
こうした一定の実施形態によると、C12−C36脂肪族アルコールまたは脂肪族系酸溶は溶解し、エチルセルロースは、溶融押出プロセス中に前記C12−C36脂肪族アルコールまたは脂肪族系酸に溶解することができる。
【0104】
本発明において有用なオピオイド作動薬塩としては、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロマイド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメヘプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、フェンタニルおよび誘導体のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ナルブフェン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、トラマドール、これらの薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物、前述のものの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。一定の実施形態において、本剤形中のオピオイド作動薬の量は、約75ng〜750ngであり得る。
【0105】
上で説明したオピオイド作動薬またはそれらの薬学的に許容される塩との併用に有用なオピオイド拮抗薬またはそれらの薬学的に許容される塩は、ナロキソン、ナルトレキソンおよびナロルフィンまたはこれらの薬学的に許容される塩である。オキシコドンHClとナロキソンHClの2:1の量比での併用が好ましい。
【0106】
一定の実施形態において、前記オピオイドは、コデイン、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホンもしくはオキシモルホンまたはこれらの薬学的に許容される塩から選択される。
【0107】
一定の他の実施形態において、他の治療活性薬剤/活性物質を、オピオイドと併用でまたはオピオイドの代わりに、本発明に従って使用することができる。こうした治療活性薬剤の例としては、抗ヒスタミン剤(例えば、ジメンヒドリネート、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンおよびd−マレイン酸クロルフェニラミン)、非ステロイド系抗炎症薬(例えば、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン、スリンダク)、制吐薬(例えば、メトクロプラミド、メチルナルトレキソン)、抗癲癇薬(例えば、フェニトイン、メプロバメートおよびニトラゼパム)、血管拡張剤(例えば、ニフェジピン、パパベリン、ジルチアゼムおよびニカルジピン)、鎮咳薬および去痰薬(例えば、リン酸コデイン)、抗喘息薬(例えば、テオフィリン)、制酸薬、鎮痙薬(例えば、アトロピン、スコポラミン)、抗糖尿病薬(例えば、インスリン)、利尿薬(例えば、エタクリン酸、ベンドロフルチアジド)、抗低血圧薬(例えば、プロプラノロール、クロニジン)、抗高血圧薬(例えば、クロニジン、メチルドパ)、気管支拡張薬(例えば、アルブテロール)、ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、プレドニゾン)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン)、抗痔薬、催眠薬、向精神薬、止痢薬、粘液溶解薬、鎮静剤、うっ血除去薬、緩下薬、ビタミン、興奮薬(フェニルプロパノールアミンなどの食欲抑制薬を含む)、ならびにこれらの薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物が挙げられる。
【0108】
本発明は、例えばベンゾジアゼピン、バルビツレートまたはアンフェタミンなどの活性薬剤を利用する剤形にも関する。これらは、それぞれの拮抗薬と併用することができる。
【0109】
用語「ベンゾジアゼピン」は、ベンゾジアゼピン、および中枢神経系を抑制することができるベンゾジアゼピンの誘導体である薬物を指す。ベンゾジアゼピンとしては、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、メチルフェニデートならびに薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物ならびにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明において使用することができるベンゾジアゼピン拮抗薬としては、フルマゼニルならびに薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
バルビツレートは、バルビツール酸(2,4,6−トリオキソヘキサヒドロピリミジン)から誘導される催眠鎮静薬を指す。バルビツレートとしては、アモバルビタール、アプロバルボタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メトヘキシタール、メフォバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタールならびに薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物ならびにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明において使用することができるバルビツレート拮抗薬としては、アンフェタミンならびに薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
興奮薬は、中枢神経系を刺激する薬物を指す。興奮薬としては、アンフェタミン類、例えばアンフェタミン、デキストロアンフェタミン樹脂複合体、デキストロアンフェタミン、メトアンフェタミン、メチルフェニデートならびに薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物ならびにこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明において使用することができる興奮薬拮抗薬としては、本明細書において説明するような、ベンゾジアゼピンならびに薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
一定の実施形態において、オピオイドは、例えば、2mg、4mg、8mg、12mg、16mg、24mg、32mg、48mgまたは64mgの塩酸ヒドロモルホンの量での塩酸ヒドロモルホンである。
【0113】
一定の実施形態において、オピオイドは、例えば、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、45mg、60mg、80mg、90mg、120mgまたは160mgの塩酸オキシコドンの量での塩酸オキシコドンである。一定の実施形態、特に、脂肪アルコールとの組み合わせでアルキルセルロース、例えばエチルセルロースを含む実施形態において、塩酸オキシコドンは、上記の量で、塩酸ナロキソンと、2:1の量比で併用される。
【0114】
さて、付随する実施例を参照しながら本発明をより完全に説明しよう。しかし、以下の説明は、単に実例となるものであり、いかなる点においても本発明の限定と解釈すべきでないことは理解しなければならない。
【実施例】
【0115】

実施例1
(比較例)
【0116】
実施例1は、認可を受けたパラドン(持続放出性塩酸ヒドロモルホン)製剤であり、以下の成分を含有する:
ヒドロモルホンHCl 12.0mg
ユートラジット(Eudragit) RSPO* 76.5mg
エチルセルロース 4.5mg
ステアリルアルコール 27.0mg
*(ポリ(メタ)アクリレートと5%塩化メタクリル酸トリメチルアンモニウム)

この製剤は、以下の手順により調製した:
1.ステアリルアルコールを磨砕する。
2.ヒドロモルホンHCl、エチルセルロース、ユートラジット RSPOおよび磨砕されたステアリルアルコールを、V型ブレンダーを用いてブレンドする。
3.異方向回転スクリューおよび1mmダイプレートを取り付けたZSE−218押出機を使用して(1)からそのブレンドを押し出す。ペレット製造機を使用して、それらのストランドを切断して、長さ約1mm、直径約1mmの円筒形ペレットを調製する。
【0117】

実施例2
実施例2.1
実施例2.1の組成を以下にまとめる。
【0118】
【表a】
【0119】
サンプリング時の加工条件を以下にまとめる。

押出機:Listritz ZSE 27
スクリューの形状:異方向回転
【0120】
【表b】
【0121】
条件#1
トルク(%):25
溶融圧(psi):480
供給量(kg/時):2.9
スクリュー速度(rpm):90
ダイプレート穴径(mm):1.0(8穴ダイプレート)
【0122】
条件#2
トルク(%):25
溶融圧(psi):520
供給量(kg/時):4.2
スクリュー速度(rpm):90
ダイプレート穴径(mm):1.0(8穴ダイプレート)
【0123】
ヒドロモルホンHCl 12mgの溶融押出多粒子を製造するための加工段階は、次の通りである:
1.篩い分け:エチルセルロース、ヒドロモルホンHCl、ヒドロキシプロピルセルロースおよびグリセリルパルミトステアレートを(この順に)#20 USメッシュの篩により篩い分けした。
2.ブレンド:段階1で篩い分けした材料を、増圧棒を備えた8qt.V型ブレンダーに装填し、10分間、周囲温度でブレンドした。
3.押出し:段階2でブレンドした材料を、ダイスを取り付けた二軸スクリュー押出機に量り入れ、約1mmのストランドに加工した。この押出機は、15℃〜125℃の範囲のゾーン(バレル)温度で異方向回転にセットした。
4.冷却:それらのストランドをコンベヤーの上で、周囲温度で冷却した。
5.ペレット製造:冷却したストランドを、ペレット製造機を使用して長さ約1mmのペレットに切断した。
6.篩い分け:それらのペレットを、#16 USメッシュの篩および#20 USメッシュの篩により篩い分けした。#20 USメッシュの篩上に残留したペレットを回収した。

実施例2.2
【0124】
実施例2.2は、100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用して、現行のパラドン製剤および同濃度(19重量%)のヒドロモルホンを含有する実施例2.1の製剤に対する人工胃液(実施例1では500ml;実施例2.1では900ml)中の様々な濃度のエタノールの影響を比較するものである。現行のパラドン製剤は、主放出速度制御賦形剤としてメタクリル酸アンモニウムを含有し、これに対して実施例2.1の製剤は、エチルセルロースを含有する。結果を以下にまとめる。
【0125】
【表c】
【0126】
データは、実施例2.1の製剤のほうが、エタノールの存在下で薬物の放出が増加しにくいことを示している。例えば、現行のパラドン製剤については、SGF中20%のエタノール濃度により、1時間に放出されるヒドロモルホンの量が、SGFに放出される量と比較して8倍になった。速度制限ポリマーとしてエチルセルロースを含有する実施例2.1の製剤については、同じエタノール濃度により、ヒドロモルホン放出量が約1.5倍増加する。
【0127】

実施例3
実施例3.1
実施例3.1の組成を以下にまとめる。
【0128】
【表d】
【0129】
サンプリング時の加工条件を以下にまとめる。

押出機:Listritz ZSE 27
スクリューの形状:異方向回転
【0130】
【表e】
【0131】
条件#1(バレル温度 100℃)
トルク(%):46
溶融圧(psi):2000
供給量(kg/時):2.9
スクリュー速度(rpm):90
ダイプレート穴径(mm):1.0(8穴ダイプレート)
【0132】
条件#2(バレル温度 125℃)
トルク(%):25
溶融圧(psi):690
供給量(kg/時):2.9
スクリュー速度(rpm):90
ダイプレート穴径(mm):1.0(8穴ダイプレート)
【0133】
ヒドロモルホンHCl 12mgの溶融押出多粒子を製造するための加工段階は、次の通りである:
7.篩い分け:エチルセルロース、ヒドロモルホンHCl、ヒドロキシプロピルセルロースおよび硬化ヒマシ油を(この順に)#20 USメッシュの篩により篩い分けした。
8.ブレンド:段階1で篩い分けした材料を、増圧棒を備えた8qt.V型ブレンダーに装填し、10分間、周囲温度でブレンドした。
9.押出し:段階2でブレンドした材料を、ダイスを取り付けた二軸スクリュー押出機に量り入れ、約1mmのストランドに加工した。この押出機は、15℃〜125℃の範囲のゾーン(バレル)温度で異方向回転にセットした。
10.冷却:それらのストランドをコンベヤーの上で周囲温度で冷却した。
11.ペレット製造:冷却したストランドを、ペレット製造機を使用して長さ約1mmのペレットに切断した。
12.篩い分け:それらのペレットを、#16 USメッシュの篩および#20 USメッシュの篩により篩い分けした。#20 USメッシュの篩上に残留したペレットを回収した。
試験−室温および高温での水への抽出
手順

実施例3.2
【0134】
実施例3.2は、熱水抽出に対する耐性を比較するものである。各薬物製品の1投薬単位を2つの別のガラスシンチレーションバイアルに入れ、バイアル1および2とラベルを貼る。10mLの抽出溶媒を各バイアルに添加する。指定されている場合には、指定温度(50、75または100℃)にセットした水浴に5分間、それらのバイアルを入れる。両方のバイアルを実験室用リストアクションシェーカーに載せ、15分後にバイアル1を2時間後にバイアル2を除去する。室温でサンプルを直接そのシェーカーに載せる。この実験の設定を以下に列挙する。
【0135】
【表f】
【0136】
この抽出試験の結果を以下に示す:
【0137】
【表g】
【0138】

実施例4
実施例4は、エチルセルロースおよびポリメタクリレートを含む製剤に関する。

実施例4.1(裏づけ無し(Prophetic))
【0139】
実施例4.1では、次の製剤を調製することができる。この製剤は、次の成分の組合せから成る:薬物、エチルセルロース、ポリメタクリレートおよびヒドロキシプロピルセルロース。この製剤の一例を以下に示す。
【0140】
【表h】
【0141】
この製剤に用いることができる材料範囲は、他の放出制御剤、例えばメタクリル酸コポリマー(ユートラジット類)および他のセルロース系結合剤、例えばメチルセルロース(Methocel)またはヒドロキシエチルセルロース(Natrosol)を包含し得る。
【0142】
この製造プロセスは、標準的な/従来どおりの製薬プロセス:湿式造粒、乾燥、磨砕および圧縮を用いる。この造粒プロセスにより、典型的な造粒物(すなわち、それは易流動性粒状粉に似ている)が製造されるが、この造粒物を圧縮すると、顆粒が互いに融合して、耐改ざん性の堅い錠剤が作られる。この製造プロセスを以下に記載する。
a.エチルセルロース、API(またはプラシーボ評価のためのスプレー乾燥ラクトース)およびヒドロキシプロピルセルロースを低/高剪断ミキサーで乾式混合する。
b.混合中に、ポリメタクリレート(水性分散体)を添加し、造粒物が形成されるまでその低/高剪断ミキサーで混合し続ける。
c.流動層乾燥機でその湿潤した造粒物を乾燥させる(またはオーブントレーで篩い分けし、乾燥させる)。
d.要求されている要件を基に、その乾燥造粒物は、
・打錠機を使用して直接圧縮することができる。
・圧縮またはさらなるブレンド(例えば、滑沢剤、追加の結合剤)のために特定粒径画分が得られるように篩い分けすることができる。
・磨砕して粒径を減少させる(より均一な粒径プロフィール(粒径特性)を生じさせる)ことができ、それによって、直接圧縮することができる、または他の成分(例えば、滑沢剤、追加の結合剤)とブレンドすることができる、または圧縮もしくはさらなるブレンドのために特定粒径画分が得られるように篩い分けすることができる。
磨砕は、スクリーンミル(例えば、回転インペラまたは揺動バー)を使用して達成することができる。
e.回転式打錠機で錠剤を目的重量に圧縮する。
エチルセルロースおよびポリメタクリレートを含むさらなる実施例4.2〜4.8を以下に示す。

実施例4.2
【0143】
実施例4.2の組成は、下記のものである。
【0144】
【表i】
【0145】
これらのヒドロモルホンHCl錠を製造するための加工段階は、次の通りである:
f.エチルセルロース、ヒドロモルホンHCl、微結晶性セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを低/高剪断ミキサーで乾式混合する。
g.混合中に、ポリメタクリレート(水性分散体)を添加し、造粒物が形成されるまでその低/高剪断ミキサーで混合し続ける。
h.流動層乾燥機でその湿潤した造粒物を乾燥させる(またはオーブントレーで篩い分けし、乾燥させる)。
i.乾燥した造粒物を、スクリーンミル(例えば、回転インペラまたは揺動バー)を使用して磨砕する。
j.磨砕された造粒物を回転式打錠機で目的重量に圧縮する。
【0146】
12mg用量を目標にして、錠剤を120mgの重量に圧縮した。得られた錠剤の組成を以下に提供する。
【0147】
【表j】
【0148】
UPS Apparatus 2(パドル)を使用して、これらの錠剤を人工胃液中、人工腸液中、11%エタノールおよび35%エタノール中、インビトロで試験した。結果を以下に示す。
【0149】
【表k】
【0150】

実施例4.3〜4.5
【0151】
実施例4.3、4.4および4.5の組成を以下にまとめる。
【0152】
【表l】
【0153】
これらのヒドロモルホンHCl錠を製造するための加工段階は、次の通りである:
a.エチルセルロース、ヒドロモルホンHClおよびヒドロキシプロピルセルロースを低/高剪断ミキサーで乾式混合する。
b.混合中に、ポリメタクリレート(水性分散体)を添加し、造粒物が形成されるまでその低/高剪断ミキサーで混合し続ける。
c.流動層乾燥機でその湿潤した造粒物を乾燥させる(またはオーブントレーで篩い分けし、乾燥させる)。
d.乾燥した造粒物を、スクリーンミル(例えば、回転インペラまたは揺動バー)を使用して磨砕する。
e.磨砕された造粒物をシングルステーション打錠機で目的重量に圧縮する。
f.それらの錠剤をオーブンで硬化させる。
【0154】
以下に示すように、12mg用量を目標にして錠剤を120mgの重量に圧縮した。
【0155】
【表m】
【0156】
50rpm、37℃でUSP Apparatus 2(パドル)を使用して、これらの錠剤を900mlの人工胃液中、インビトロで試験して、薬物放出を評価した。薬物放出データは、280nmの波長でUV分光計フロースルーシステムを使用して収集した。結果を以下に示す。
【0157】
【表n】
【0158】
実施例4.6、4.7および4.8の組成を以下にまとめる。
【0159】
【表o】
【0160】
これらのオキシコドンHCl錠を製造するための加工段階は、次の通りである:
a.エチルセルロース、オキシコドンHClおよびヒドロキシプロピルセルロースを低/高剪断ミキサーで乾式混合する。
b.混合中に、ポリメタクリレート(水性分散体)を添加し、造粒物が形成されるまでその低/高剪断ミキサーで混合し続ける。
c.流動層乾燥機でその湿潤した造粒物を乾燥させる(またはオーブントレーで篩い分けし、乾燥させる)。
d.乾燥した造粒物を、スクリーンミル(例えば、回転インペラまたは揺動バー)を使用して磨砕する。
e.磨砕された造粒物をシングルステーション打錠機で目的重量に圧縮する。
【0161】
以下に示すように、10mg用量を目標にして錠剤を100mgの重量に圧縮した。
【0162】
【表p】
【0163】
50rpm、37℃でUSP Apparatus 2(パドル)を使用して、これらの錠剤を900mlの人工胃液中、インビトロで試験して、薬物放出を評価した。薬物放出データは、230nmの波長でUV分光計フロースルーシステムを使用して収集した。加えて、実施例4.8を40%エタノール/SGF中で試験して、薬物放出に対するエタノールの影響を評価した。結果を以下に示す。
【0164】
【表q】
【0165】

実施例5
実施例5の組成A〜Fを以下にまとめる。
【0166】
【表r】
【0167】
サンプリング時の加工条件を以下にまとめる:

押出機:Listritz ZSE 27
スクリューの形状:異方向回転
【0168】
【表s】
【0169】
条件
供給量(kg/時):4.2
スクリュー速度(rpm):90
ダイプレート穴径(mm):1.0(8穴ダイプレート)
【0170】
ヒドロモルホンHCl 12mgの溶融押出多粒子を製造するための加工段階は、次の通りである:
1.篩い分け:エチルセルロース、ヒドロモルホンHClおよびヒドロキシプロピルセルロースを#20 USメッシュの篩により篩い分けした。
2.ブレンド:段階1で篩い分けした材料を、増圧棒を備えた8qt.V型ブレンダーに装填し、10分間、周囲温度でブレンドした。
3.押出し:段階2でブレンドした材料を、ダイスを取り付けた二軸スクリュー押出機に量り入れ、約1mmのストランドに加工した。この押出機は、15℃〜135℃の範囲のゾーン(バレル)設定温度で異方向回転にセットした。
4.冷却:それらのストランドをコンベヤーの上で周囲温度で冷却した。
5.ペレット製造:冷却したストランドを、ペレット製造機を使用して長さ約1mmのペレットに切断した。
6.篩い分け:それらのペレットを、#16 USメッシュの篩および#20 USメッシュの篩により篩い分けした。#20 USメッシュの篩上に残留したペレットを回収した。
【0171】
100rpm、37℃でUSP Apparatus I(バスケット)装置を使用して、500ml 人工胃液中の様々な濃度のエタノール中で製剤A、CおよびFをインビトロで試験して、薬物放出に対するエタノールの影響を判定した。結果を以下に示す。
【0172】
【表t】
【0173】
上の結果は、製剤A、CおよびFからのヒドロモルホンの放出が、20% v/vを含む、20% v/vまでのエタノール濃度では不変であったことを示している。これは、これらの条件下でヒドロモルホン放出が8倍増加した実施例1(現行のパラドン製剤)に対する進歩である。30% v/vおよび40% v/v エタノールでは、製剤A、CおよびFについての放出が増加したが、SGF中での放出と比較した増加は、実施例1(原稿のパラドン製剤)で得られたものより低かった。
【0174】

実施例6
10mgの塩酸オキシコドンおよび5mgの塩酸ナロキソンを含む、オキシコドン/ナロキソン剤形
【0175】
【表u】
【0176】

実施例7
20mgの塩酸オキシコドンおよび10mgの塩酸ナロキソンを含む、オキシコドン/ナロキソン剤形
【0177】
【表v】
【0178】

実施例8
40mgの塩酸オキシコドンおよび20mgの塩酸ナロキソンを含む、オキシコドン/ナロキソン剤形
【0179】
【表w】
【0180】
【表x】
【0181】
上に記載した剤形を溶融押出により調製した。
塩酸オキシコドンおよび塩酸ナロキソンをポビドン、エチルセルロース、ステアリルアルコールおよびラクトースとブレンドし、そのブレンドを篩い分けして凝集塊を除去し、さらにブレンドする。そのブレンドを、熱スクリュー押出機を利用して溶融押出してストランドを形成し、それらを磨砕して顆粒を製造する。それらの顆粒をタルクおよびステアリン酸マグネシウムとブレンドし、カプセル形の錠剤に圧縮し、その後、それらをフィルムコーティングする。
【0182】

実施例9
溶解試験
【0183】
例えばUPS 23に記載されているようなUSP バスケット/100rpm/900ml溶解媒体法に従って、溶解装置を組み立てた。37.0±0.5℃にセットした浴温で、指定溶解媒体を各容器に移した。すべてのエタノール系媒体は、ペプシンを含有しないUSP人工胃液(SGF)に適切な量のエタノールを移し入れることにより調製した(すなわち、1%エタノール媒体については891mLのSGFと9mLのエタノール)。
【0184】
各容器に1個の錠剤を移し入れた。4つ(10、30、60および120分)の時点で各容器からサンプルを抜き取った。HPLC試験法を用いて、サンプルおよび(対応する)標準物質をそのカラムに注入して、溶解したオキシコドンHClおよびナロキソンHClの量を判定した。
【0185】
12の異なる濃度、0%、2%、4%、8%、12%、16%、20%、24%、28%、32%、36%および40%、のエタノールを試験した。

実施例9/実施例6の溶解結果
【0186】
【表y】
実施例9/実施例7の溶解結果
【0187】
【表z】
実施例9/実施例8の溶解結果
【0188】
【表A】
【0189】
実施例6〜8の溶解結果を図2および3に示す。図2は、実施例6(OX/N 10/5 PR)、実施例7(OX/N 20/10 PR)および実施例9(OX/N 20/40 PR)についての2時間後のオキシコドンの溶解(%)を示すものである。図3は、2時間後のナロキソンの対応する溶解(%)を示すものである。
【0190】
0%エタノールと20%エタノールの間では、放出される活性物質の量は一様に減少し、一方、20%エタノールと40%エタノールの間では、放出は安定する。これは、実施例6〜8の3つすべての剤形に関する塩酸オキシコドンおよび塩酸ナロキソンについて観察することができる。
【0191】

実施例10〜13
実施例10〜13の組成を以下に示す。
【0192】
【表B】
【0193】
ペレットの形態の実施例10〜13の多粒子を調製するための手順は、おおよそ次の通りである:
段階1.オキシコドンを、Gral 10 高剪断ミキサーで、5分間、エチルセルロースおよび/またはユートラジット RS PO/RL POおよびステアリルアルコールとブレンドした。
段階2.蠕動ポンプを利用して、ユートラジット NE 40D分散体を、そのGral 10 ミキシングボール内の段階1からのブレンドされた材料(実施例12および13については、29℃に予熱した)にゆっくりと添加し、この間、混合/剪断を継続した。
段階3.顆粒形成が起こるまで、ユートラジット NE 40Dの適用を継続した−すべてのユートラジット NE 40Dを添加した。
段階4.そのミキシングボールの側面のかき取りを可能ならしめるために、ユートラジット NE 40Dの適用を定期的に停止させた。
段階5.すべてのユートラジット NE 40Dを添加した後、それらの湿潤した顆粒を従来の押出機により押出し、その後、流動層乾燥機において約44℃で乾燥させた。
段階6.乾燥した顆粒を室温に冷却し、回収した。
段階7.その後、それらの顆粒を、1.0mm ダイプレートを取り付けたLeistritz Micro 18押出機、コンベヤーそしてペレット製造機に制御された速度で供給し、熱ステーション(ゾーン)トルクおよび溶融圧は次の通りであった。
【0194】
【表C】
【0195】
供給量は、2.0〜2.6kg/時であり、スクリュー速度は、100〜141rpmであった。押し出されたストランドをコンベヤーでダイヘッドから運び去り、円筒形の多粒子に切断した。
【0196】
仮説としては、別の切断手順を考えることができる。Leistritz押出機のダイヘッドのオリフィスから押出物が出てくる。それが圧力を受けてダイプレートのオリフィスから出てきて、まだ溶融している場合には、押し出された混合物を切断するために二枚刃のロータリーカッターを使用する。これらの刃は、ダイヘッドの表面を掃くように進んでオリフィスを通過する。それらは膨張し、冷却するので、切断された押出物粒子は、丸まった表面を形成する傾向がある。
【0197】
仮説としては、上記実施例ではLeistritz Micro 18押出機を使用したが、加工のためにより高いトルクが求められる材料を取り扱うために、より大きな押出機、例えばLeistritz Micro 27が好ましい場合がある。
【0198】

実施例14
実施例10〜13の多粒子を、それらの耐改ざん性の潜在能力を判定するために、次のように試験した:
【0199】
1)実施例10〜13の400mgの多粒子を、2本のスプーンの間で、またはピルクラッシャー、例えばApex Healthcare Productsが販売しているPill Pulverizerで粉砕し、その後、スプーンの上で沸騰するまで加熱した2mlの水中で抽出し、濾過した。その後、抽出されたオキシコドンの量をHPLC、および210nmの波長でのUVによる検出によって判定した。それらを図4のグラフおよび以下に示す。
【0200】
【表D】
【0201】
2)実施例10〜13からの400mgの多粒子を、乳鉢および乳棒で乳棒を24回転させて磨砕し、その生成物を37℃で45分間、900mlの水中に入れておいた。その後、溶解したオキシコドンの量を、上の1)において説明した方法により判定した。結果を図5のグラフおよび以下に説明する。
【0202】
【表E】
【0203】
3)抽出a)〜e)の各々において、実施例10〜13のうちの1つからの400mgの多粒子を、それぞれ次のように試験した:それらの多粒子をガラスフラスコ中の指示された溶媒に入れ、その後、そのフラスコを(加熱が指示されている場合には)水浴で加熱した。その後、1分当たり揺動数500〜600にセットしたStuart Scientific Flask Shaker Model SF1を使用して、そのフラスコを、指示された時間、振盪に付した。抽出後、溶解したオキシコドンの量を、1)において用いた方法により判定した。
a)10mlの水中、室温で15分の振盪;
b)10mlの水中、50℃で5分間の加熱、その後、15分の振盪;
c)10mlの水中、75℃で5分間の加熱、その後、15分の振盪;
d)10mlの水中、100℃で5分間の加熱、その後、15分の振盪;
e)10mlの40%エタノール中、室温で15分の振盪。
【0204】
試験結果を添付の図6の棒グラフおよび以下に示す。
【0205】
【表F】
【0206】

実施例15〜24
さらなる実施例15〜24を下の表1に示す。

実施例25
アルコール抽出試験および溶解プロフィール(溶解特性)
【0207】
実施例15〜21のうちの1つからの400mgの多粒子を室温で10mlの40%エタノールに入れ、1分当たり揺動数500〜600にセットしたStuart Scientific Flask Shaker Model SFを使用して15分間の振盪に付した。抽出後、溶解したオキシコドンの量を、HPLCと206mm波長でのUVによる検出で判定した。それらの抽出結果を表2および図7に提示する。溶解プロフィールは、場合により40%エタノールを含有する900mlのSGF中で、100rpm、37℃でPh.Eur.Basket Apparatusを使用して、およびHPLCと206nm波長でのUVによる検出を用いて判定した。40%エタノールを含有するSGF中での実施例15〜21の溶解結果を表3および図8に提示する。SGF中での実施例15〜21の溶解プロフィールを表4に提供し、実施例15〜20のものも図9に提供する。実施例22〜24についての40%エタノールを含有するSGF中およびSGF中での溶解結果を表5および6ならびに図10および11にそれぞれ提供する。
【0208】
【表1】
【0209】
【表2】
【0210】
【表3】
【0211】
【表4】
【0212】
【表5】
【0213】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0214】
図1】実施例5の組成A〜Fのインビトロ溶解の結果を示す図である。
図2】実施例9のインビトロ溶解の結果を示す図である。
図3】実施例9のインビトロ溶解の結果を示す図である。
図4】実施例14のピルクラッシャーまたはスプーンを使用する粉砕試験の結果を示す図である。
図5】実施例14の乳鉢及び乳棒を使用する粉砕試験の結果を示す図である。
図6】実施例14のアルコール抽出試験の結果を示す図である。
図7】実施例25において説明する実施例15〜21のアルコール抽出試験の結果を示す図である。
図8】実施例25において説明する実施例15〜21の40%アルコールを含有する人工胃液中での溶解プロフィールを示す図である。
図9】実施例25において説明する実施例15〜20の人工胃液中での溶解プロフィールを示す図である。
図10】実施例25において説明する実施例22〜24の人工胃液40%アルコール中での溶解プロフィールを示す図である。
図11】実施例25において説明する実施例22〜24の人工胃液中での溶解プロフィールを示す図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11