【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、従来から非水電解質二次電池の正極活物質として用いられている各種の材料について、その表面をアルミニウム及びホウ素を含む酸化物で被覆することによって、サイクル特性が改善されて、充放電サイクル時の容量維持率が大きく向上することを見出した。特に、アルミニウム及びホウ素を含む酸化物による被覆を形成する方法として、アルミニウムを含む化合物とホウ素を含む化合物を溶解した溶液中に正極活物質を分散させた後、溶媒を蒸発させ、その後、熱処理する方法を採用する場合には、析出物の偏析を防止して、正極活物質の表面に、アルミニウム及びホウ素を含む酸化物による被覆を均一に形成することができ、優れたサイクル特性を有する正極活物質が得られることを見出した。更に、この方法において、正極活物質を含む分散液の溶媒として、アルミニウムを含む化合物とホウ素を含む化合物に対する良好な溶解性を有する低沸点の非水溶媒と、これらの化合物についての溶解性が劣る高沸点の非水溶媒を混合して用いる場合には、溶媒を蒸発させる際に、原料化合物の溶解度が徐々に低下して分散液中に含まれる正極活物質の表面に析出し、均質性の良い被覆が形成されてサイクル特性が大きく向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果、完成されたものである。
【0014】
即ち、本発明は、下記の非水電解質二次電用正極活物質、その製造方法、及び該正極活物質を含む非水電解質二次電池を提供するものである。
項1. 非水電解質二次電池用正極活物質の表面に、アルミニウム及びホウ素を含む酸化物による被覆を有することを特徴とする、非水電解質二次電池用正極材料。
項2. アルミニウム及びホウ素を含む酸化物におけるアルミニウムとホウ素の原子比が、アルミニウム:ホウ素=1:0.05〜5である上記項1に記載の非水電解質二次電池用正極材料。
項3. 正極活物質が、含リチウム複合酸化物である上記項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極材料。
項4. アルミニウム及びホウ素を含む酸化物による被覆の量が、正極活物質100質量部に対して0.01〜15重量部である、上記項1〜3のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極材料。
項5. アルミニウム化合物、ホウ素化合物及び非水電解質二次電池用正極活物質を含む分散液から溶媒を蒸発させてアルミニウム化合物及びホウ素化合物を該正極活物質の表面に析出させた後、熱処理を行うことを特徴とする、上記項1〜4のいずれか一項に記載された非水電解質二次電池用正極材料の製造方法。
項6. アルミニウム化合物、ホウ素化合物及び非水電解質二次電池用正極活物質を含む分散液が、アルミニウム化合物及びホウ素化合物を非水溶媒中に溶解した溶液と、正極活物質を非水溶媒中に分散させた分散液を混合して得られるものであり、アルミニウム化合物及びホウ素化合物を溶解した溶液における非水溶媒が、正極活物質を分散させた分散液における非水溶媒と比較して、低沸点であって、極性が高い溶媒である、上記項5に記載の非水電解質二次電池用正極材料の製造方法。
項7. 上記項1〜4のいずれかに記載された正極材料を含む正極合剤層が集電体の片面又は両面に形成されていることを特徴とする、非水電解質二次電池用正極。
項8. 上記項7に記載の正極を構成要素として含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
項9. 上記項8に記載の非水電解質二次電池を有することを特徴とする機器。
【0015】
以下、本発明の非水電解質二次電用正極材料、及びその製造方法について具体的に説明する。
(1)非水電解質二次電用正極材料
本発明の非水電解質二次電池用正極材料は、非水電解質二次電池用正極活物質の表面の一部又は全体を、アルミニウム及びホウ素を含む酸化物で被覆したものである。この様な被覆を有する正極活物質を正極材料として用いた非水電解質二次電池は、従来の正極活物質を用いた二次電池と比較すると、サイクル特性が向上して、充放電時サイクル時に容量維持率が高い値を示す。この理由については、必ずしも明確ではないが、アルミニウム及びホウ素を含む酸化物による被覆は、均質性に優れたものであり正極活物質の表面を良好に被覆できることに加えて、該被覆が形成される際に低結晶性材料が形成され易く、正極活物質や非水電解質との界面の構造に影響を与え、これにより、正極活物質と非水電解質との反応が抑制されるものと推測される。
【0016】
アルミニウムとホウ素を含む酸化物において、アルミニウムとホウ素の比率については、特に限定的ではないが、通常、アルミニウムとホウ素の原子比として、アルミニウム:ホウ素=1:0.05〜5程度であることが好ましく、アルミニウム:ホウ素=1:0.2〜3程度であることがより好ましい。アルミニウムに対するホウ素の比率が高すぎる場合には容量が低下し易く、一方、アルミニウムに対するホウ素の比率が低すぎる場合には充放電特性が低下しやすいので、いずれも好ましくない。
【0017】
また、アルミニウムとホウ素を含む酸化物には、更に、アルミニウムとホウ素以外に、Li、Ni、Co、Mn、Fe、C等が含まれていてもよい。これらの元素の量については特に限定的ではないが、アルミニウムに対する原子比として、Liについては、0≦Li≦10程度の範囲、とすることができ、Co、Ni及びMnについては、その合計量として、0≦Co+Ni+Mn≦10程度の範囲とすることができ、Cについては0≦C≦10程度の範囲とすることができる。
【0018】
本発明の非水電解質二次電池用正極材料に用いる正極活物質の種類については、特に限定的ではなく、その目的に応じて、従来から非水電解質二次電池用正極活物質として用いられている材料を適宜選択して用いることができる。例えば、リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、リチウム基準で4.3V以下の電圧で使用されるLiCoO
2;リチウム基準で4.4V以上の電圧で使用し得る含リチウム複合酸化物(例えば、LiCoO
2のCoの一部を、Ti、Zr、Mg、Alなどの他の金属元素で置換したもの);リチウム基準で5V以上の電圧でも使用し得る含リチウム複合酸化物、例えば、マンガンサイトを他の金属元素で置換したリチウムマンガン酸化物[例えば、一般式LiNi
xM
yMn
2−x−yO
4(ただし、Mは、Ni、MnおよびLi以外の少なくとも1種の金属元素で、0.4≦x≦0.6、0≦y≦0.1である)で表される複合酸化物];などの含リチウム複合酸化物が挙げられる。前記一般式における金属元素Mは、例えば、Cr、Fe、Co、Cu、Zn、Ti、Al、Mg、Ca、Baなどが好ましく、これらの中でも、Fe、Coを用いたものが、より良好な特性が得られることからより好ましい。
【0019】
本発明の正極材料では、正極活物質に対するアルミニウムとホウ素を含む酸化物による被覆量については、特に限定的ではないが、上記した被覆による効果を十分に発揮するためには、正極活物質100重量部に対して、アルミニウムとホウ素を含む酸化物の量が0.01重量部程度以上であることが好ましく、0.05重量部程度以上であることがより好ましく、0.1重量部程度以上であることが更に好ましい。また、アルミニウムとホウ素を含む酸化物による被覆量が多くなりすぎると、相対的に正極活物質の量が減って容量低下を引き起こすことがある。このため、正極活物質100重量部に対して、アルミニウムとホウ素を含む酸化物の量が15重量部程度以下であることが好ましく、10重量部程度以下であることがより好ましく、8重量部程度以下であることが更に好ましい。
【0020】
アルミニウムとホウ素を含む酸化物の被覆量が上記した範囲内にある場合には、正極活物質の表面を良好に被覆してサイクル特性を向上させることができると共に、正極活物質表面でのイオンの移動が妨げられることが少なく、必要な電池反応が十分に進行する。
【0021】
尚、本発明の正極材料の表面に分布するアルミニウム、ホウ素などは、ICP発光分析装置や、蛍光X線分析法、オージェ電子分光法、X腺光電子分光法、2次イオン質量分析法などによって分析することが出来る。
【0022】
(2)
非水電解質二次電用正極材料の製造方法
本発明の非水電解質二次電池用正極材料の製造方法としては、上記した条件を満足するアルミニウムとホウ素を含む酸化物からなる被覆を正極活物質の表面に形成できる方法であれば特に限定はなく適用できる。
【0023】
例えば、気相法、固相法なども適用できるが、特に、コストや形成される被覆物の均質性を考慮すると、溶液から被覆を形成する溶液法を適用することが好ましい。
【0024】
溶液法の具体的な内容については、特に限定的はなく、アルミニウムを含む化合物とホウ素を含む化合物を溶解した溶液中に、正極活物質を分散させ、該分散液からアルミニウムとホウ素を含む化合物を正極活物質の表面に析出させた後、必要に応じて熱処理を行えばよい。この場合、溶媒としては、水や各種の非水溶媒、例えば、炭素水1〜4程度の低級アルコール等を単独又は適宜混合して用いることができる。特に、正極活物質中の金属成分が溶媒中へ溶出することを抑制するためには、非水溶媒を用いることが好ましい。非水溶媒を用いることによって、正極活物質表面からの金属成分の溶出を抑制して、初期特性の低下を防ぐことができる。
【0025】
本発明では、特に、アルミニウムを含む化合物とホウ素を含む化合物を含む原料化合物(「被覆化合物」という場合がある)を非水溶媒に溶解した溶液と、正極活物質を非水溶媒に分散させた分散液を混合して分散液とし、この分散液から溶媒を蒸発させて正極活物質の表面に被覆化合物を析出させた後、熱処理を行う方法によって被覆を形成することが好ましい。
【0026】
尚、アルミニウム及びホウ素に加えて、Li、Ni、Co、Mn、Fe、C等を含む被覆を形成する場合には、上記した被覆化合物を含む溶液中に、これらの元素を含む化合物を溶解させればよい。
【0027】
この場合、被覆化合物の溶液を調製するために用いる非水溶媒(以下、「良溶媒」ということがある)は、被覆化合物の溶解性が良好であって、正極活物質の分散液に用いる非水溶媒より低い沸点を有する溶媒であることが好ましい。
【0028】
一方、正極活物質の分散液に用いる非水溶媒(以下、「貧溶媒」ということがある)は、(1)被覆化合物の溶液に用いる非水溶媒(良溶媒)より沸点が高いこと、(2)被覆化合物に対する溶解性が低いこと、(3)正極活物質に対する溶解性が低いこと、(4)被覆化合物を含む溶液の非水溶媒(良溶媒)との相溶性が良好であること、等の条件を満足することが好ましい。
【0029】
上記した条件を満足する溶媒を組み合わせて用いることによって、被覆化合物の溶液と、正極活物質の分散液を混合した分散液から溶媒を蒸発させる際に、先ず、被覆化合物を溶解した良溶媒が蒸発して、被覆化合物の溶解度が低下し、正極活物質の表面に被覆化合物が徐々に被着して、均質な被覆が形成される。これにより、偏析物の少ない均質な被覆が得られる。この場合の偏析物とは、例えば、走査型顕微鏡(SEM)観察による粒径が2μm程度以上の析出物である。
【0030】
上記した条件を満足する非水溶媒の内で、被覆化合物を溶解するために用いる非水溶媒(良溶媒)としては、被覆化合物に対する良好な溶解性を有するために、極性が高い溶媒を用いることが好ましい。特に、比誘電率が18程度以上、具体的には、18〜40程度の高比誘電率の極性溶媒を用いることが好ましい。更に、該非水溶媒(良溶媒)の沸点は、室温〜200℃程度の範囲であることが好ましい。この様な非水溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、ブタノールなどの炭素水1〜4程度のアルコールを挙げることができる。
【0031】
上記した非水溶媒(良溶媒)を用いる場合には、被覆化合物としては、該良溶媒に対する溶解性が良好な化合物を用いればよく、例えば、アルミニウムを含む化合物として、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、塩基性酢酸アルミニウム等を用いることができ、ホウ素を含む化合物として、ホウ酸、塩化ホウ素などを用いることができる。
【0032】
正極活物質を分散させるための非水溶媒(貧溶媒)としては、被覆化合物を溶解するための非水溶媒(良溶媒)との相溶性を良好とするために極性溶媒を用いることが好ましいが、被覆化合物と正極活物質の両方に対する溶解性を低くするために、被覆化合物を溶解するための非水溶媒(良溶媒)と比較して極性が低い溶媒が好ましい。具体的には、比誘電率が2〜18程度の比較的極性が低い極性溶媒が好ましい。この様な比較的低い極性を有する極性溶媒は、正極活物質に対する溶解性が低いために、被覆化合物による被覆を形成する際に、正極活物質に含まれる金属成分を溶出させることが殆どなく正極活物質の性能低下を抑制できる。
【0033】
更に、正極活物質を分散させるための非水溶媒(貧溶媒)は、被覆化合物を溶解するために用いる非水溶媒(良溶媒)と比較して沸点が高いことが好ましい。具体的な沸点は、室温〜200℃程度の範囲内であって、良溶媒の沸点より高いことが好ましく、特に、良溶媒の沸点より20〜80℃程度高いことが好ましい。
【0034】
上記した条件を満足する貧溶媒は、被覆化合物に対する溶解性が低く、良溶媒と比較して沸点が高いために、被覆化合物を溶解した低沸点の良溶媒を蒸発させることにより、分散液中の被覆化合物の溶解度が徐々に低下して、被覆化合物による均質な被覆が正極活物質の表面に形成される。
【0035】
この様な非水溶媒(貧溶媒)の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなどを挙げることができる。
【0036】
上記した被覆化合物を溶解するために用いる非水溶媒(良溶媒)と正極活物質を分散させるための非水溶媒(貧溶媒)の組み合わせとしては、メタノール/トルエン、メタノール/メチルイソブチルケトン、1−プロパノール/メチルイソブチルケトンなどの組み合わせを例示できる。
【0037】
被覆化合物を溶解した溶液では、被覆化合物の濃度については特に限定はないが、被覆化合物の急激な析出を避けて均質な被覆を形成するためには、被覆化合物の濃度が低いことが好ましく、通常、0.1〜15重量%程度の濃度とすることが好ましい。尚、該溶液中のアルミニウムを含む原料とホウ素を含む原料の比率については、形成される被覆におけるアルミニウムとホウ素の原子比と同一の比率となるように設定すればよい。
【0038】
また、正極活物質の分散液については、正極活物質の濃度は、均一な分散液が形成される範囲とすればよく、通常は、正極活物質の濃度は10〜50重量%程度の範囲とすればよい。
【0039】
被覆化合物を溶解した溶液と、正極活物質の分散液の使用割合については、正極活物質の表面に形成する被覆化合物の量に応じて決めればよく、正極活物質の分散液に含まれる正極活物質の量と被覆化合物の溶液中に含まれる被覆化合物の量が目的とする比率となるように決定すればよい。
【0040】
アルミニウム及びホウ素を含む酸化物で被覆された本発明の正極材料を製造するには、上記した被覆化合物を溶解した溶液と正極活物質の分散液を混合して十分に撹拌した後、溶媒を徐々に蒸発させればよい。これによって、該分散液に含まれる被覆化合物の溶解度が低下して、正極活物質の表面に被覆化合物が均質に析出する。溶媒を蒸発させる条件については、特に限定的ではないが、溶媒の急激な蒸発を避けるために、1.0kPa〜0.1MPa程度の圧力範囲で、10〜200℃程度、好ましくは30〜80℃程度に加熱して、溶媒を徐々に蒸発させればよい。
【0041】
上記した方法で分散液から溶媒を蒸発させて、正極活物質を乾固させた後、200〜1000℃程度に加熱する。この際の雰囲気は、空気中などの含酸素雰囲気とすればよい。この熱処理によって、正極活物質の表面を均質に覆った被覆物が酸化されて、目的とするアルミニウム及びホウ素を含む酸化物による被覆が形成される。加熱時間については、通常、10分〜48時間程度とすればよい。
【0042】
(3)非水電解質二次電池
上記した方法で得られる、正極活物質の表面をアルミニウム及びホウ素を含む酸化物で被覆した本発明の正極材料は、非水電解質二次電池用の正極活物質として有効に用いることができる。
【0043】
非水電解質二次電池の構造については特に限定はなく、本発明の正極材料を含む正極を有するものであればよく、その他の構成及び構造については、従来から知られている非水電解質二次電池で採用されている構成及び構造を適用することができる。通常は、正極、負極、セパレーター及び非水電解質を少なくとも有する非水電解質二次電池とすればよい。
【0044】
例えば、本発明の正極材料を用いる正極は、該正極材料と必要に応じて添加される導電助剤に高分子バインダーを加え、これを溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製し(この場合、高分子バインダーはあらかじめ溶剤に溶解または分散させておいてもよい)、金属箔などからなる集電体の表面に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、必要に応じて加工する工程を経て製造することができる。
【0045】
導電助剤としては、通常の非水電解質二次電池と同様に、黒鉛;カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど)や表面に非晶質炭素を生成させた炭素材料などの非晶質炭素材料;繊維状炭素(気相成長炭素繊維、ピッチを紡糸した後に炭化処理して得られる炭素繊維など);カーボンナノチューブ(各種の多層または単層のカーボンナノチューブ)などを用いることができる。正極の導電助剤としては、前記例示のものを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
正極容量を高めるために正極合剤層の密度を大きくするには、正極活物質である含リチウム複合酸化物の平均粒径が0.05〜30μmであることが好ましく、導電助剤の平均粒径が、含リチウム複合酸化物の平均粒径以下であることが好ましい[すなわち、含リチウム複合酸化物の平均粒径をRm(nm)、導電助剤のRg(nm)としたとき、Rg≦Rmであることが好ましい]。
【0047】
正極に使用する高分子バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0048】
正極合剤層の組成については、例えば、正極活物質の表面をアルミニウム及びホウ素を含む酸化物で被覆してなる本発明の正極材料が70〜99質量%程度、高分子バインダーが1〜30質量%程度であることが好ましい。また、導電助剤を使用する場合には、正極合剤層における導電助剤の量は、1〜20質量%程度であることが好ましい。更に、正極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、1〜100μm程度であることが好ましい。
【0049】
正極の集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金からなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網などを用い得るが、通常、厚みが10〜30μm程度のアルミニウム箔が好適に用いられる。
【0050】
負極としては、負極活物質や高分子バインダーなどを含有する負極合剤層を、集電体の片面または両面に形成した構成のものを使用することができる。
【0051】
負極活物質としては、リチウムイオンをドープ・脱ドープできるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料が挙げられる。また、リチウムまたはリチウム含有化合物なども負極活物質として使用することができる。このリチウム含有化合物としては、例えば、錫酸化物、ケイ素酸化物、ニッケル−ケイ素系合金、マグネシウム−ケイ素系合金、タングステン酸化物、リチウム鉄複合酸化物などの他、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−インジウム、リチウム−ガリウム、リチウム−インジウム−ガリウムなどのリチウム合金が挙げられる。これら例示の負極活物質の中には、製造時にはリチウムを含んでいないものもあるが、充電時にはリチウムを含んだ状態になる。
【0052】
負極は、例えば、前記負極活物質と、必要に応じて添加される導電助剤(正極の場合と同様のもの)や前記正極の場合と同様の高分子バインダーとを混合して負極合剤とし、これを溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製し(高分子バインダーはあらかじめ溶剤に溶解または分散させておいてから用いてもよい)、この負極合剤含有ペーストを集電体の表面に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて加圧成形する工程を経ることによって作製される。なお、負極の製造方法は前記例示の方法に限定されず、他の方法を適用してもよい。
【0053】
負極の負極合剤層においては、例えば、負極活物質が70〜99質量%程度であり、高分子バインダーが1〜30質量%程度であることが好ましい。また、導電助剤を使用する場合には、負極合剤層における導電助剤の量は、1〜20質量%程度であることが好ましい。更に、負極合剤層の厚みは、集電体の片面あたり、1〜100μm程度であることが好ましい。
【0054】
負極の集電体には、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはそれらの合金などからなる箔、パンチドメタル、エキスパンドメタル、網などを用い得るが、通常、厚みが5〜30μm程度の銅箔が好適に用いられる。
【0055】
上記した正極と負極は、例えば、セパレータを介在させつつ積層した積層電極体や、更にこれを渦巻状に巻回した巻回電極体の形で用いられる。
【0056】
セパレータとしては、強度が十分で且つ電解液を多く保持できるものがよく、そのような観点から、厚さが10〜50μmで開口率が30〜70%の、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはエチレン−プロピレン共重合体を含む微多孔フィルムや不織布などが好ましい。
【0057】
本発明の非水二次電池において用いる非水電解質としては、通常、非水系の液状電解質(以下、これを「電解液」という)が用いられる。そして、その電解液としては有機溶媒にリチウム塩などの電解質塩を溶解させたものが用いられる。その有機溶媒としては、特に限定されることはないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネートなどの鎖状エステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの比誘電率の高い環状エステル;鎖状エステルと環状エステルとの混合溶媒;などが挙げられ、特に鎖状エステルを主溶媒とした環状エステルとの混合溶媒が適している。
【0058】
電解液の調製にあたって上記有機溶媒に溶解させる電解質塩としては、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiCF
3CO
2、Li
2C
2F
4(SO
3)
2、LiC
nF
2n+1SO
3(n≧2)、LiN(RfSO
2)(Rf’SO
2)、LiC(RfSO
2)
3、LiN(RfOSO
2)
2〔ここでRf、Rf’はフルオロアルキル基〕などが単独でまたは2種以上混合して用いられる。電解液中における電解質塩の濃度は、特に限定されることはないが、0.3mol/l以上であることが好ましく、0.4mol/l以上であることがより好ましく、また、1.7mol/l以下であることが好ましく、1.5mol/l以下であることがより好ましい。
【0059】
本発明の電池において、非水電解質としては、前記電解液以外にも、前記電解液をポリマーなどからなるゲル化剤でゲル化させたゲル状の電解質や、固体状の電解質も用いることができる。そのような固体状電解質としては、無機系電解質のほか、有機系電解質なども用いることができる。
【0060】
また、本発明の電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。