特許第5705126号(P5705126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5705126熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法およびフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705126
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法およびフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20150402BHJP
   C08J 3/11 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   C08J3/12 ZCEW
   C08J3/11
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2011-538471(P2011-538471)
(86)(22)【出願日】2010年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2010069134
(87)【国際公開番号】WO2011052669
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2013年7月26日
(31)【優先権主張番号】特願2009-250651(P2009-250651)
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 民人
(72)【発明者】
【氏名】坂部 宏
(72)【発明者】
【氏名】菅原 絵美
(72)【発明者】
【氏名】武藤 慎太郎
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−295271(JP,A)
【文献】 特開2007−273445(JP,A)
【文献】 特開平04−282559(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/088227(WO,A1)
【文献】 特開平04−020534(JP,A)
【文献】 特開平10−298298(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/047969(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28;99/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアン径が1〜250μmであり、フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを90モル%以上有する(但し、全モノマーユニットを100モル%とする)未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末に、該重合体粉末が125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満となる温度で熱処理を施すことを特徴とする、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理における、熱処理時間が10秒〜20時間であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法。
【請求項3】
前記未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量が20万以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、非プロトン性極性溶媒に溶解することを特徴とするフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、N−メチル−2−ピロリドンに溶解することを特徴とするフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、液温が35〜130℃のN−メチル−2−ピロリドンに溶解することを特徴とするフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法。
【請求項7】
請求項のいずれか一項に記載の製造方法により得られるフッ化ビニリデン系重合体溶液を、活物質と混合することを特徴とする蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末と活物質とを混合し、得られた混合物を、非プロトン性極性溶媒と混合することを特徴とする蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法。
【請求項9】
請求項またはに記載の製造方法により得られる蓄電デバイス用電極スラリーを集電体に塗布・乾燥することを特徴とする蓄電デバイス用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法およびフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法に関する。詳しくは、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒に対する分散性、溶解性に優れる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法、該重合体粉末を用いるフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池用の結着剤として、フッ化ビニリデン系重合体粉末を、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPとも記す)に溶解することにより得られるフッ化ビニリデン系重合体溶液が使用されている。
【0003】
一般に、フッ化ビニリデン系重合体粉末の分子量が大きいほど、結着剤として用いた際の結着力が大きくなるが、分子量が大きいほどNMPに溶解する際に要する時間が長くなり、生産性を悪化させる。
【0004】
溶解する際に要する時間が長くなる理由としては、分子量が高くなるほど、それぞれのフッ化ビニリデン系重合体粉末自体が溶けにくくなること、およびNMP中で、フッ化ビニリデン系重合体粉末同士が粘着し、大きな塊(以下、ママコとも記す)を形成することが挙げられる。
【0005】
特に、NMP中でママコを形成すると、ママコ内部にはNMPが浸透しないため、フッ化ビニリデン系重合体粉末をNMPに溶解する際に要する時間が、非常に長くなる。
【0006】
フッ化ビニリデン系重合体の溶解方法としては、フッ化ビニリデン系重合体粉末を、まず貧溶媒中に分散させ、次いで良溶媒中で攪拌して溶解させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、アセトン、テトラヒドロフラン等を貧溶媒として用い、NMP等を良溶媒として用いることが記載されている。特許文献1に記載の方法では、極めて簡便な方法によりフッ化ビニリデン系重合体を溶解することが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、フッ化ビニリデン系重合体粉末を貧溶媒中に分散し、さらに良溶媒中で攪拌する必要がある為、操作が煩雑であり、生産性に劣る傾向があった。また、フッ化ビニリデン系重合体溶液から貧溶媒を除去する態様も記載されているが、貧溶媒を除去する工程を設けることは、コスト高の原因となる。
【0007】
また、NMPに対する溶解性に優れるフッ化ビニリデン系重合体粉末として、多孔質のフッ化ビニリデン系重合体粉末が知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載されたフッ化ビニリデン系重合体粉末は、フッ化ビニリデンモノマーを懸濁する工程と、超臨界重合する工程とを有する超臨界懸濁重合法により得ることができる。特許文献2に記載のフッ化ビニリデン系重合体粉末は、ママコの形成を抑制するものではないため、フッ化ビニリデン系重合体粉末の溶媒への分散方法が不適切であると、ママコを形成し、溶解性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−298298号公報
【特許文献2】国際公開第2009/047969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、従来よりもNMP等の非プロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れるフッ化ビニリデン系重合体粉末を製造する方法および、該方法により得られるフッ化ビニリデン系重合体粉末を用いた、フッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の条件で、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末を熱処理することにより得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末は、NMP等の非プロトン性極性溶媒に対して優れた溶解性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明の熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法は、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末に、該重合体粉末が125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満となる温度で熱処理を施すことを特徴とする。
【0012】
前記未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末が、フッ化ビニリデンに由来するモノマーユニットを80モル%以上有することが好ましい。
【0013】
前記熱処理における、熱処理時間が10秒〜20時間であることが好ましい。
【0014】
前記未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の、メディアン径が1〜250μmであることが好ましい。
【0015】
前記未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量が20万以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法は、前記製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、非プロトン性極性溶媒に溶解することを特徴とする。
【0017】
本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法は、好ましくは、前記製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、N−メチル−2−ピロリドンに溶解することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法は、より好ましくは、前記製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、液温が35〜130℃のN−メチル−2−ピロリドンに溶解することを特徴とする。
【0019】
本発明の蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法は、前記製造方法により得られるフッ化ビニリデン系重合体溶液を、活物質と混合することを特徴とする。
【0020】
本発明の蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法の別の態様としては、前記製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末と活物質とを混合し、得られた混合物を、非プロトン性極性溶媒と混合することを特徴とする。
【0021】
本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法は、前記製造方法により得られる蓄電デバイス用電極スラリーを集電体に塗布・乾燥することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明熱処理済のフッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法によって得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末は、従来のフッ化ビニリデン系重合体粉末と比べて、NMP等の非プロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れる。
【0023】
また、本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法は、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を用いることにより、容易に該粉末を溶解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明について具体的に説明する。
【0025】
<熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法>
本発明の熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法は、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末に、該重合体粉末が125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満となる温度で熱処理を施すことを特徴とする。
【0026】
本発明の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末は、従来のフッ化ビニリデン系重合体粉末と比べて、NMP等の非プロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れる。
【0027】
なお、本発明における熱処理とは、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が125℃以上、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の結晶融解温度(Tm)未満となる範囲で、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末を保持する処理である。すなわち、気流乾燥等の一時的な加熱では、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度は、熱風温度よりも低い温度となるが、本発明における熱処理とは、このようなフッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が充分に上がらない処理ではなく、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が、125℃以上、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の結晶融解温度(Tm)未満となる処理を意味する。
【0028】
〔未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末〕
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末について、以下説明する。本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末とは、後述の熱処理が施されていないフッ化ビニリデン系重合体粉末を意味し、従来公知のフッ化ビニリデン系重合体粉末を用いることができる。
【0029】
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末は、フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを有する重合体の粉末であればよい。フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを有する重合体としては、特に限定はないが、フッ化ビニリデンの単独重合体、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体、フッ化ビニリデンの単独重合体の変性物、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体の変性物が挙げられる。これらの重合体は通常は一種単独で用いられるが、二種以上を用いてもよい。
【0030】
前記他のモノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、カルボン酸無水物基含有モノマー、フッ化ビニリデンを除くフッ素含有モノマー、α‐オレフィン等が挙げられる。他のモノマーとしては、一種単独で用いても、二種以上で用いてもよい。
【0031】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸のモノエステル等が好ましく、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸のモノエステルがより好ましい。
【0032】
前記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸等が挙げられる。前記不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、前記不飽和二塩基酸のモノエステルとしては、炭素数5〜8のものが好ましく、例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル等を挙げることができる。
【0033】
中でも、カルボキシル基含有モノマーとしては、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステルが好ましい。
【0034】
前記カルボン酸無水物基含有モノマーとしては、不飽和二塩基酸の酸無水物が挙げられ、不飽和二塩基酸の酸無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0035】
フッ化ビニリデンを除くフッ素含有モノマーとしては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
【0036】
α‐オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1‐ブテン等が挙げられる。
【0037】
フッ化ビニリデンと他のモノマーの共重合体としては好ましくは、フッ化ビニリデンとマレイン酸モノメチルエステルとの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとマレイン酸モノメチルエステルとの共重合体等が挙げられる。
【0038】
フッ化ビニリデンと他のモノマーの共重合体は、フッ化ビニリデンと前記他のモノマーとを共重合することにより得られる。
【0039】
フッ化ビニリデンを単独重合する方法、フッ化ビニリデンと他のモノマーとを共重合する方法としては、特に限定はなく、例えば懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の重合法により得ることがでる。
【0040】
また、重合温度等の重合条件も任意に設定することができる。例えば懸濁重合を行う場合には、重合温度が通常は20〜120℃の範囲であり、好ましくは25〜100℃の範囲であり、最も好ましくは25〜75℃の範囲である。未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末として、重合温度が25〜75℃の範囲で懸濁重合を行うことにより得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末を用いると、本発明の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末のNMP等の非プロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れる傾向があり好ましい。
【0041】
重合法としては、粉末状態のフッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを有する重合体を得ることができる、懸濁重合、乳化重合が好ましく、懸濁重合がより好ましい。本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末は、フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを有する重合体を、粉末状態で得られる重合法によって得た場合には、該重合体そのものでもよく、該重合体を篩等によって選別することにより得られる、特定の粒子径の重合体でもよい。また、本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末は、フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを有する重合体を、バルク(塊)状態で得られる重合法によって得た場合には、該重合体を、例えば特開平6−108103号公報等に記載された液体窒素を用いた凍結粉砕等によって粉末状に成形した重合体であってもよい。
【0042】
また、フッ化ビニリデンの単独重合体の変性物、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体の変性物としては、前記フッ化ビニリデンの単独重合体またはフッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体を、変性することにより得ることができる。該変性としては、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基またはカルボン酸無水物基を有するモノマーを用いることが好ましい。
【0043】
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末としては、フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを80モル%以上有することが好ましく、90モル%以上有することがより好ましく、95モル%以上有することが最も好ましい(但し、全モノマーユニットを100モル%とする)。また、本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末としては、フッ化ビニリデン以外の他のモノマーに由来するモノマーユニットを20モル%以下有することが好ましく、10モル%以下有することがより好ましく、5モル%以下有することが最も好ましい(但し、全モノマーユニットを100モル%とする)。フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットが80モル%未満であると未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の融点が低下し、熱処理時に融着し易くなる場合があり、融着した場合には一般に製造が困難になる。フッ化ビニリデン由来のモノマーユニットおよび、他のモノマーに由来するモノマーユニットの量は、NMR、元素分析、酸素フラスコ燃焼法等の公知の方法により求めることができる。
【0044】
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が、20万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、50万以上であることが最も好ましい。ポリスチレン換算の重量平均分子量の上限としては、特に限定はないが、本発明の製造方法により得られる、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の、NMP等の非プロトン性極性溶媒への溶解性の観点から400万以下であることが好ましい。
【0045】
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末のメディアン径は、1〜250μmであることが好ましく、50〜230μmであることがより好ましい。前記範囲内では熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の溶解性とハンドリング性に優れるため、好適である。なお、メディアン径とは、粒径分布における累積曲線の50%にあたる粒子径であり、50%平均粒径(dp50)とも呼ばれる。本発明においてメディアン径は体積基準の粒径分布に基づいて導出されることとし、この場合はメディアン径の値よりも大きい粒径の粒子の総体積と小さい粒径の粒子の総体積とが等しくなる。
【0046】
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末のインヘレント粘度は、0.3〜10dl/gであることが好ましく、1〜5dl/gであることがより好ましい。前記範囲内では、得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体の機械特性が良好であり、溶液のハンドリング性も良好である。
【0047】
本発明に用いる未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の結晶融解温度(Tm)は、通常は130〜180℃である。結晶融解温度は、示差走査熱量測定(以下DSCとも記す)で得られるDSC曲線より求めることができる。なおDSC曲線において、複数の結晶融解ピーク(吸熱ピーク)が存在する場合には、ピーク面積が最大のピークに基づき結晶融解温度(Tm)を決定する。
【0048】
なお、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末としては、市販品を用いてもよい。
【0049】
〔熱処理〕
本発明の熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法では、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末に、該重合体粉末が125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満となる温度で熱処理を施す。
【0050】
本発明における熱処理とは、前記未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が、125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満となる温度で、前記重合体粉末を保持する処理である。すなわち、気流乾燥等の一時的な加熱では、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度は、熱風温度よりも低い温度となるが、本発明における熱処理とは、このようなフッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が充分に上がらない処理ではなく、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が、125℃以上、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の結晶融解温度(Tm)未満となる処理を意味する。
【0051】
熱処理における、熱処理温度は、前述のように125℃以上、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末の結晶融解温度(Tm)未満であるが、130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましい。また、180℃未満であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましい。前記範囲内では熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末は、溶解時にママコを形成せず、溶解性に優れるため好ましい。
【0052】
熱処理における、熱処理時間としては特に限定はないが、通常は10秒〜20時間であり、60秒〜20時間であることがより好ましく、60秒〜5時間であることが最も好ましい。なお、本発明における熱処理時間とは、重合体粉末自体の温度が125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満である時間を意味する。未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末を、熱風循環炉やヘンシェルミキサー中に保持したとしても、熱風循環炉等に入れた直後は、前記重合体粉末自体の温度は、熱風循環炉の温度(加熱温度)よりも低い。本発明における熱処理時間とは、前記重合体粉末を、熱風循環炉等に入れ、保持した時間ではなく、重合体粉末自体の温度が125℃以上、結晶融解温度(Tm)未満で保持されていた時間を意味する。
【0053】
熱処理を行う際の雰囲気としても特に限定はなく、例えば空気雰囲気下、窒素雰囲気下で行うことができる。また、熱処理は減圧下、加圧下、常圧下のいずれでも行うことができるが、通常は常圧下で行われる。
【0054】
熱処理を行う方法としては特に限定はなく、熱風循環炉により行う方法、ヘンシェルミキサーにより行う方法、ギアオーブンにより行う方法等が挙げられる。熱処理を熱風循環炉で行う場合には、例えば熱風循環炉中に、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末を入れた箱を設置することにより行うことができる。また、熱処理をヘンシェルミキサーにより行う場合には、例えばヘンシェルミキサーに、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末を投入し、攪拌しながら加熱することにより行うことができる。
【0055】
〔熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末〕
本発明の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末は、未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末と比べて、NMP等の非プロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れる。
【0056】
なお、溶解性の指標は一つではないが、例えば、室温のNMPにフッ化ビニリデン系重合体粉末を投入した際に、フッ化ビニリデン系重合体粉末がNMP中に分散した場合には、フッ化ビニリデン系重合体粉末がママコを形成する場合と比べて溶解性に優れると判断することができる。別の指標としては、特定温度(例えば50℃)に加温したNMP中にフッ化ビニリデン系重合体粉末を投入し、攪拌した際にフッ化ビニリデン系重合体粉末が溶解するまでの時間が短いほど溶解性に優れると判断することができる。
【0057】
なお、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を非プロトン性極性溶媒で溶解した際には、得られるフッ化ビニリデン系重合体溶液は、透明な溶液となることが好ましいが、半透明の溶液となる場合がある。なお、半透明の液体となる場合でも、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末は、蓄電デバイス用電極スラリー、蓄電デバイス用電極を形成するために、問題なく用いることができる。
【0058】
<フッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法>
本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法は、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、非プロトン性極性溶媒に溶解することを特徴とする。
【0059】
本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法は、フッ化ビニリデン系重合体粉末として、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を用いることにより、従来のフッ化ビニリデン系重合体粉末を非プロトン性極性溶媒に溶解する場合よりも、速やかに溶解することができる。
【0060】
非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられ、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0061】
フッ化ビニリデン系重合体溶液を製造する際に用いる、非プロトン性極性溶媒の量としては特に限定はないが、通常は前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末100重量部に対して、400〜10000重量部、好ましくは550〜2400重量部の範囲で用いられる。
【0062】
フッ化ビニリデン系重合体溶液を製造する際には、通常非プロトン性極性溶媒に、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を投入し、攪拌することにより得られる。
【0063】
本発明のフッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法では、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、液温が35〜130℃の非プロトン性極性溶媒に溶解することが好ましく、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、液温が35〜130℃のN−メチル−2−ピロリドンに溶解することがより好ましい。また、非プロトン性極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンを用いた場合には、液温が45〜80℃であることが、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の溶解性の観点から特に好ましい。
【0064】
なお、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、液温が35〜130℃の非プロトン性極性溶媒に溶解する方法としては、35〜130℃に加熱した非プロトン性極性溶媒に、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を投入し、溶解する方法、室温の非プロトン性極性溶媒に、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を投入し、ヒーター等によって、35〜130℃に加熱して溶解する方法、室温の非プロトン性極性溶媒に、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を投入し、ホモジナイザーやディスパーミキサー等を用いて高速攪拌を行い、せん断発熱によって35〜130℃に加熱して溶解する方法等が挙げられる。
【0065】
また、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末を、非プロトン性極性溶媒に溶解する際には、ホモジナイザーやディスパーミキサー、プロペラ型翼等を用いた攪拌機、プライミクス社製T.K.フィルミックス、超音波振動等を用いることができる。また、必要に応じて加熱ジャケット等を備えた装置であっても良い。
【0066】
<蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法>
本発明の蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法は、前記フッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法により得られるフッ化ビニリデン系重合体溶液を、活物質と混合することを特徴とする方法(第一の方法)、前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の製造方法により得られる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末と活物質とを混合し、得られた混合物を、非プロトン性極性溶媒と混合することを特徴とする方法(第二の方法)が挙げられる。
【0067】
なお、蓄電デバイスとしては、非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン・ポリマー二次電池)、電気二重層キャパシタ等が挙げられる。本発明の製造方法により得られる蓄電デバイス用電極スラリーは、特に、非水電解質二次電池の正極を形成する際に用いられることが好ましい。
【0068】
第一の方法では、前記フッ化ビニリデン系重合体溶液を、活物質と混合することにより得られるが、混合の際にはプラネタリーミキサー、ニーダー、インターナルミキサー、プライミクス社製T.K.フィルミックス等を用いることができる。
【0069】
第二の方法では、まず前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末と活物質とを混合し、混合物を得るが、該混合の際にはプラネタリーミキサー、パドルミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー等を用いることができる。また第二の方法では、得られた混合物を非プロトン性極性溶媒と混合するが、該混合の際にはプラネタリーミキサー、ニーダー、インターナルミキサー、プライミクス社製T.K.フィルミックス等を用いることができる。
【0070】
なお、第二の方法で用いる非プロトン性極性溶媒としては、<フッ化ビニリデン系重合体溶液の製造方法>の項で記載した非プロトン性極性溶媒を用いることができる。また、第二の方法で用いる非プロトン性極性溶媒の量としては特に限定はないが、通常は前記熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末100重量部に対して、400〜10000重量部、好ましくは550〜2400重量部の範囲で用いられる。
【0071】
なお、蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法に用いられる活物質の量としては、特に限定はないが、通常はフッ化ビニリデン系重合体溶液を得る際に用いる熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(第一の方法)100重量部または、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(第二の方法)100重量部に対して、通常は100〜10000重量部であり、好ましくは900〜6400重量部である。
【0072】
また、活物質としては、炭素材料、金属・合金材料、金属酸化物などが挙げられるが、中でも金属酸化物が好ましい。
【0073】
<蓄電デバイス用電極の製造方法>
本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法は、前記蓄電デバイス用電極スラリーの製造方法により得られる蓄電デバイス用電極スラリーを集電体に塗布・乾燥することを特徴とする。
【0074】
集電体としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金が挙げられ、その形状としては例えば金属箔や金属網等が挙げられる。
【0075】
また、蓄電デバイス用電極スラリーを集電体に塗布する際には、前記集電体の少なくとも一面、好ましくは両面に塗布を行う。塗布する際の方法としては特に限定は無く、バーコーター、ダイコーター、コンマコーターで塗布する等の方法が挙げられる。
【0076】
また、塗布した後に行われる乾燥としては、通常50〜150℃の温度で1〜300分行われる。また、乾燥の際の圧力は特に限定はないが、通常は、大気圧下または減圧下で行われる。
【実施例】
【0077】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0078】
下記フッ化ビニリデン系重合体粉末および、実施例、比較例で得られた熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末の物性は、下記方法で測定、評価を行った。
【0079】
〔DSCの測定〕
下記フッ化ビニリデン系重合体粉末のDSC測定を、TAインスツルメント製MDSC(Q100)を用いて行った。
【0080】
アルミ製サンプルパンに試料(下記フッ化ビニリデン系重合体粉末)約2.0mgを精秤した。50mL/minの流量で窒素をフローしながら、30℃から230℃まで5℃/minの速度で昇温し、この間、±0.53℃/40secの温度変調をかけた。Q100付属のソフトウェア(Universal Analysis 2000)を用い、Integrate Peak Linearコマンドを用いて解析を行い、結晶融解温度(Tm)を求めた。
【0081】
〔インヘレント粘度の測定方法〕
1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに、下記フッ化ビニリデン系重合体粉末4gを添加し、80℃で8時間かけて溶解させることにより、フッ化ビニリデン系重合体溶液を調整した。この溶液を30℃に保持してウベローデ粘度計で対数粘度を測定し、下式によってインヘレント粘度を求めた。
【0082】
インヘレント粘度(対数粘度)[η]=ln(ηrel)/C
ここでηrel=試料溶液の落下秒数/溶媒の落下秒数、C=試料溶液の濃度(0.4g/dl)を表す。
【0083】
〔GPCによる分子量の評価〕
下記フッ化ビニリデン系重合体粉末の分子量は、フッ化ビニリデン系重合体粉末を濃度0.1重量%で溶解したN−メチル−2−ピロリドン溶液について、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(日本分光株式会社製;GPC−900、shodex KD−806Mカラム、温度40℃)を用いることにより、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定した。
【0084】
〔粒子径の測定方法〕
下記フッ化ビニリデン系重合体粉末0.5gをエタノール1gで良く湿潤させた後、水9gを加えて攪拌混合した。その後、サンノプコ株式会社製「SNウェット366」の1%希釈液を0.6g加え、良く混合した。該混合により得られた混合物のメディアン径(dp50)を、島津製作所製の粒度分布測定装置(SALD−3000S)を用いて測定した。
【0085】
〔分散状態の評価〕
内径35mmのサンプル瓶にNMP20gを秤量し、スターラーチップ(長さ30mm、中央部直径8mm、端部直径7mm)を使用して400rpmで攪拌しながら下記実施例、比較例で得られた熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(但し、比較例1、5〜10ではフッ化ビニリデン系重合体粉末)1gを投入し、1分間攪拌した。
【0086】
フッ化ビニリデン系重合体粉末同士が凝集し、数mm程度の大きさの凝集塊を形成した場合を「ママコ」、単一粒子と同程度もしくは数倍程度の粒子サイズに分散されている物を「分散」とした。
【0087】
なお分散状態の評価は、室温(23℃)で行った。
【0088】
〔溶解時間の評価〕
前記分散状態の評価を行った後、下記実施例、比較例で得られた熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(但し、比較例1、5〜10ではフッ化ビニリデン系重合体粉末)およびNMPの入ったサンプル瓶を50℃のウォーターバスにセットし、400rpmで攪拌を続けながら内容物の状態を目視で確認し、フッ化ビニリデン系重合体粉末由来の固形物やゲル状物が無くなった時点で溶解が完了したものとした。
【0089】
なお、フッ化ビニリデン系重合体粉末由来の固形物やゲル状物が無くなった時点とは、透明状態の溶液となった場合だけでなく、固形物やゲル状物が無く半透明状態の溶液となった場合も、溶解が完了したものとした。ウォーターバスにセットした時点から、溶解が完了するまでの時間を溶解時間とした。
【0090】
〔溶液の状態の評価〕
内径35mmのサンプル瓶にNMP20gを秤量し、スターラーチップ(長さ30mm、中央部直径8mm、端部直径7mm)を使用して400rpmで攪拌しながら下記実施例、比較例で得られた熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(但し、比較例1、5〜10ではフッ化ビニリデン系重合体粉末)1gを投入し、1分間攪拌した。次いでフッ化ビニリデン系重合体粉末およびNMPの入ったサンプル瓶を、所定温度(40、50、60、65、70℃)のウォーターバスにセットし、充分な時間を掛けて攪拌・溶解をさせた後、目視で溶液が透明であった物を「透明」、半透明状態であったものを「濁り」、沈降物があったものを「沈殿」とした。
【0091】
〔製造例1〕
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)の製造)
容積2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1118g、メチルセルロース0.4g、フッ化ビニリデンモノマー421g、クロロトリフロロエチレンモノマー9g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.5g、フロン225cbを2.5g、の各量を仕込み、28℃で12時間懸濁重合を行った。
【0092】
重合完了後、得られた重合体スラリーを95℃で30分熱処理した後、脱水、水洗し、更に80℃で20時間乾燥してフッ化ビニリデン系重合体粉末(1)を得た。
【0093】
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(1)のインヘレント粘度は2.2dl/g、重量平均分子量は77万、メディアン径が195μm、Tmが171℃であった。フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)について、JIS K7229に従い塩素含有量を分析し、クロロトリフルオロエチレンモノマー換算で1.1mol%が導入されていること、すなわち、フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)がフッ化ビニリデン由来のモノマーユニットを98.9mol%有する事を確認した。
【0094】
〔製造例2〕
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(2)の製造)
容積2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1026g、メチルセルロース0.2g、フッ化ビニリデンモノマー400g、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート2.4g、メタノール2.4g、酢酸エチル5.5gの各量を仕込み、重合温度を26℃、後に昇温して40℃で12時間懸濁重合を行った。
【0095】
重合完了後、得られた重合体スラリーを95℃で30分熱処理した後、脱水、水洗し、更に乾燥を行い、フッ化ビニリデン系重合体粉末(2)を得た。乾燥は気流乾燥機を用い、熱風入口温度140℃、熱風出口温度80℃の条件で行った。
【0096】
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(2)のインヘレント粘度は1.1dl/g、重量平均分子量は30万、メディアン径が210μm、Tmが173℃であった。
【0097】
〔製造例3〕
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(3)の製造)
容積2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1026g、メチルセルロース0.2g、フッ化ビニリデンモノマー400g、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート2.4g、メタノール2.4g、酢酸エチル2.0gの各量を仕込み、重合温度を26℃、後に昇温して40℃で11時間懸濁重合を行った。
【0098】
重合完了後、得られた重合体スラリーを95℃で30分熱処理した後、脱水、水洗し、更に乾燥を行い、フッ化ビニリデン系重合体粉末(3)を得た。乾燥は気流乾燥機を用い、熱風入口温度140℃、熱風出口温度80℃の条件で行った。
【0099】
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(3)のインヘレント粘度は1.3dl/g、重量平均分子量は35万、メディアン径が184μm、Tmが173℃であった。
【0100】
〔製造例4〕
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(4)の製造)
容積2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1024g、メチルセルロース0.2g、フッ化ビニリデンモノマー400g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート1.4g、フロン225cbを1.4g、酢酸エチル3.0gの各量を仕込み、26℃で16時間懸濁重合を行った。
【0101】
重合完了後、得られた重合体スラリーを95℃で30分熱処理した後、脱水、水洗し、更に乾燥を行い、フッ化ビニリデン系重合体粉末(4)を得た。乾燥は気流乾燥機を用い、熱風入口温度140℃、熱風出口温度80℃の条件で行った。
【0102】
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(4)のインヘレント粘度は2.2dl/g、重量平均分子量は77万、メディアン径が215μm、Tmが173℃であった。
【0103】
〔製造例5〕
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の製造)
容積2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1024g、メチルセルロース0.2g、フッ化ビニリデンモノマー400g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート0.6g、フロン225cbを0.6g、酢酸エチル1.9gの各量を仕込み、26℃で20時間懸濁重合を行った。
【0104】
重合完了後、得られた重合体スラリーを95℃で30分熱処理した後、脱水、水洗し、更に乾燥を行い、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)を得た。乾燥は気流乾燥機を用い、熱風入口温度140℃、熱風出口温度80℃の条件で行った。
【0105】
得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(5)のインヘレント粘度は3.1dl/g、重量平均分子量は110万、メディアン径が220μm、Tmが173℃であった。
【0106】
実施例、比較例では、下記の市販されているフッ化ビニリデン系重合体粉末も用いた。
【0107】
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(6))
フッ化ビニリデン系重合体粉末(6)として、ソルベイ・ソレクシス社製のPVDF粉末、商品名solef6020を用いた。solef6020のインヘレント粘度は1.85dl/g、重量平均分子量は60万、メディアン径が104μm、Tmが170℃であった。
【0108】
(フッ化ビニリデン系重合体粉末(7))
フッ化ビニリデン系重合体粉末(7)として、アルケマ社製のPVDF粉末、商品名kynar HSV900を用いた。kynar HSV900は、インヘレント粘度が1.0dl/g、重量平均分子量は66万、メディアン径が5μm、Tmが160℃であった。
【0109】
なお、上記フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)〜(7)は、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度が125℃以上となる熱処理が行われていないため、本発明における未熱処理フッ化ビニリデン系重合体粉末に相当する。
【0110】
〔実施例1〕
幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0111】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度125℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から5時間保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)を得た。
【0112】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0113】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0114】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度130℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から5分かけて130℃に昇温し、130℃で55分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(2)を得た。
【0115】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(2)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0116】
〔実施例3〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0117】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度130℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から5分かけて130℃に昇温し、130℃で19時間55分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(3)を得た。
【0118】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(3)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0119】
〔実施例4〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0120】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度135℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から1分かけて130℃に昇温し、さらに5分かけて135℃に昇温し、135℃で54分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(4)を得た。
【0121】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(4)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0122】
〔実施例5〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0123】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度140℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から30秒かけて130℃に昇温し、さらに48秒かけて135℃に昇温し、さらに5分かけて140℃に昇温し、140℃で53分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)を得た。
【0124】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0125】
〔実施例6〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0126】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度150℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から18秒かけて130℃に昇温し、さらに24秒かけて135℃に昇温し、さらに30秒かけて140℃に昇温し、さらに6分かけて150℃に昇温し、150℃で52分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(6)を得た。
【0127】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(6)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0128】
〔実施例7〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0129】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度160℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から12秒かけて130℃に昇温し、さらに18秒かけて135℃に昇温し、さらに18秒かけて140℃に昇温し、さらに1分かけて150℃に昇温し、さらに6分かけて160℃に昇温し、160℃で52分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(7)を得た。
【0130】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(7)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0131】
〔比較例1〕
製造例5で得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0132】
なお、製造例5で得られた熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c1)とも記す。
【0133】
〔比較例2〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0134】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度120℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が120℃となった時点から、120℃で54分間保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c2)を得た。
【0135】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c2)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0136】
〔比較例3〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0137】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度120℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が120℃となった時点から、120℃で20時間保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c3)を得た。
【0138】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c3)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0139】
〔比較例4〕
実施例1と同様に、幅10cm、長さ15cm、高さ3cmのクラフト紙製の箱の中に、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)10gを入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)の厚さが均一となるように、箱中に広げた。
【0140】
次いで、前記クラフト紙製の箱に、クラフト紙で蓋をし、温度180℃の熱風循環炉(ヤマト科学製、商品名FineOven DH410)の中に蓋をした箱を入れ、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から6秒かけて130℃に昇温し、さらに6秒かけて135℃に昇温し、さらに12秒かけて140℃に昇温し、さらに24秒かけて150℃に昇温し、さらに30秒かけて160℃に昇温し、さらに1分かけて170℃に昇温し、さらに6分かけて180℃に昇温し、180℃で51分保持した後、蓋をした箱を熱風循環炉から取り出し、室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c4)を得た。
【0141】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c4)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0142】
なお、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(c4)では、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)が熱処理により融着した。
【0143】
〔実施例8〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(1)に代えた以外は、実施例5と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(8)を得た。
【0144】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(8)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0145】
〔比較例5〕
製造例1で得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(1)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0146】
なお、製造例1で得られた熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(1)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c5)とも記す。
【0147】
〔実施例9〕
ヘンシェルミキサーとしては、三井鉱山社製、商品名FM10B/I型を用いた。
【0148】
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)1kgをヘンシェルミキサーに投入し、ブレードの回転数を1600rpmとし、25℃から、5℃/minの速度で140℃まで昇温した。
【0149】
すなわち、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から1分かけて130℃に昇温し、さらに1分かけて135℃に昇温し、さらに1分かけて140℃に昇温した。
【0150】
140℃に到達した時点でサンプリングを行い、得られたサンプルを室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(9)を得た。
【0151】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(9)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0152】
〔実施例10〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(2)に代えた以外は、実施例5と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(10)を得た。
【0153】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(10)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0154】
〔比較例6〕
製造例2で得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(2)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0155】
なお、製造例2で得られた熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(2)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c6)とも記す。
【0156】
〔実施例11〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(3)に代えた以外は、実施例5と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(11)を得た。
【0157】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(11)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0158】
〔比較例7〕
製造例3で得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(3)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0159】
なお、製造例3で得られた熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(3)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c7)とも記す。
【0160】
〔実施例12〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(4)に代えた以外は、実施例5と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(12)を得た。
【0161】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(12)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0162】
〔比較例8〕
製造例4で得られたフッ化ビニリデン系重合体粉末(4)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0163】
なお、製造例4で得られた熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(4)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c8)とも記す。
【0164】
〔実施例13〕
ヘンシェルミキサーとしては、三井鉱山社製、商品名FM10B/I型を用いた。
【0165】
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)1kgをヘンシェルミキサーに投入し、ブレードの回転数を1600rpmとし、25℃から、5℃/minの速度で130℃まで昇温した。
【0166】
すなわち、フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)自体の温度が125℃となった時点から1分かけて130℃に昇温した。
【0167】
130℃に到達した時点でサンプリングを行い、得られたサンプルを室温下で放冷することにより、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(13)を得た。
【0168】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(13)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0169】
〔実施例14〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(6)に代えた以外は、実施例2と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(14)を得た。
【0170】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(14)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0171】
〔実施例15〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(6)に代えた以外は、実施例5と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(15)を得た。
【0172】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(15)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0173】
〔比較例9〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(6)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0174】
なお、熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(6)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c9)とも記す。
【0175】
〔実施例16〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(5)をフッ化ビニリデン系重合体粉末(7)に代えた以外は、実施例6と同様に行い、熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(16)を得た。
【0176】
熱処理済フッ化ビニリデン系重合体粉末(16)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0177】
〔比較例10〕
フッ化ビニリデン系重合体粉末(7)の分散性、溶解時間、溶液の状態について前記方法に従って求めた。
【0178】
なお、熱処理の施されていない、フッ化ビニリデン系重合体粉末(7)を、フッ化ビニリデン系重合体粉末(c10)とも記す。
【0179】
実施例、比較例の結果を表1、2に示す。
【0180】
なお、前記実施例、比較例において、フッ化ビニリデン系重合体粉末自体の温度は、熱処理を熱風循環炉を用いて行う場合には、前記クラフト紙製の箱中のフッ化ビニリデン系重合体粉末から形成される層に熱電対を差し込むことにより測定した。また、熱処理をヘンシェルミキサーを用いて行う場合には、ヘンシェルミキサー内部のフッ化ビニリデン系重合体粉末中に熱電対を差込むことにより測定した。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】