【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの要旨によれば、
(a)ガスストリームを加熱する工程、
(b)少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスおよび酸素含有ガスを、加熱されたガスストリームに添加して、組み合わされたストリーム(または結合されたストリーム、もしくは複合ストリーム)を提供する工程、
(c)組み合わされたストリームを触媒物質に通過させる工程
を少なくとも含む、触媒物質をエージングする方法が提供される。
【0013】
少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスおよび酸素含有ガスの使用は、本発明が、触媒物質からの出口ストリームの再循環を再利用のために最大にすることを許容するとともに、正確なC、H、およびOの割合が、組み合わされたストリームにおいて提供されることを維持して、触媒物質の実際の使用を再現する。
【0014】
本発明はまた、少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスおよび酸素含有ガスの燃焼の後に、それらが触媒物質と接触するときに生じる発熱反応によって、触媒物質と接触する前のガスストリームの加熱を減少させる。これは、本発明の方法を実行するのに必要とされる費用を減少させる。
【0015】
触媒物質は、ガスストリームおよび/または組み合わされたストリームを構成する1または複数の気体における化学変化を触媒することが意図された、任意の適当な単一の物質または複数の物質の組み合わせであってよい。1つの一般的な例は、自動車、単車、トラック等の車両における内燃機関の排気ストリームのための触媒コンバータにおいて用いられる触媒物質である。他の触媒物質プロセスおよび用途には、化学および石油化学産業、発電機、汎用エンジン、海洋用途、航空宇宙用途等におけるそれらが含まれ、実験室での化学反応が含まれる。
【0016】
触媒物質は一般的に、担体とともに提供され、必要に応じて、担体層に分散させられ、必要に応じて、先に説明した基体により支持されるが、それらに限定されない。本発明が当業者に公知の方式のエージングサイクル(または老化サイクル、もしくは経年劣化サイクル)において用いられる限りにおいて、本発明は、触媒物質の形状、寸法、支持体、特性、形態または供給(もしくは調達)によって制限されない。周知の触媒物質の例には、自動車のための三元触媒等、ディーゼル酸化触媒、LNT(リーンNOxトラップ)触媒、SCR触媒等が含まれる。
【0017】
本発明はまた、エンジン(または機関)の後処理要素(例えば種々のセンサ等)をエージングするのに用いられ、本発明は、本明細書で説明する同じ工程および形態を用いて、そのような要素を試験する方法および装置にまで及ぶ。
【0018】
ガスストリームは、任意の単一のガスまたは複数のガスの組み合わせを含んでよい。一般に、ガスストリームは、
使用中の触媒物質を通過するストリームの一部であることが知られている
、1または複数の成分を含む。例えば、自動車の触媒コンバータにおいて、エンジンの排ガスストリームは、一般に、炭素含有物質(例えば、一酸化炭素、炭化水素)および1または複数の窒素酸化物(NOx)と、バックグラウンドである、N
2、H
2OおよびCO
2との組み合わせを含む。
【0019】
本発明の1つの形態において、ガスストリームは、1または複数の合成ガス(例えば、二酸化炭素および窒素)であって、それらのガスの1または複数の供給源から供給される合成ガスを含む。合成または人工ガスは、当該分野において周知であり、それは使える状態にあるボンベ入りの形態で一般に供給される。
【0020】
ここで使用される「純粋な炭化水素ガス」という用語は、3%、または2%、または1%よりも多くない不活性の不純物(例えば、窒素またはアルゴン)を含み、0.5%、または0.4%、または0.3%、または0.2%、または0.1%よりも多くない、触媒物質に悪影響を与えることが知られている活性の不純物、即ち、油、鉛、硫黄または燐等の成分または剤を含む炭化水素ガスに関する。
【0021】
1または複数の純粋な炭化水素ガスは、加熱されたガスストリームに、加熱されたガスストリームの0.1体積%〜10体積%の量で、好ましくは0.1体積%〜5体積%の範囲で、より好ましくは0.3体積%〜1.5体積%の範囲で添加してよい。
【0022】
酸素含有ガスは、加熱されたガスストリームに、炭化水素ガスとの反応のための正確な、且つRATエージングプロトコルのリーンおよびリッチな(または薄い状態および濃い状態の)サイクリングを容易にする量で添加してよい。当業者は、炭化水素ガスの量を基準として必要とされる酸素含有ガスの量を知っている。
【0023】
本発明の好ましい形態において、ガスストリームは、工程(a)において300〜1000℃に加熱される。即ち、ガスストリームは、例えば、300〜1000℃の範囲内であるような、適切な温度に、燃焼させられることなく加熱される。
【0024】
また、好ましくは、本発明の工程(a)は、ガスストリームを電気的に加熱することを含み、ガスストリームは、当該分野において公知の1または複数の電気ヒータおよび/もしくは熱交換器、好ましくは電気炉加熱によって加熱してよい。このようにして、本発明は、US2005/0204804A1で用いられているような燃焼器またはガスタービンの直接的な使用を回避するとともに、他の燃焼ユニット、デバイスおよび装置の必要を回避する。これは、燃焼からのガスストリームの供給を伴う触媒エージング装置と比較して、本発明の方法を、有意に簡素化する。
【0025】
本発明の別の形態によれば、工程(a)は、部分的に、実質的に、または全体的に1または複数の合成ガスからなるガスストリームを電気的に加熱することを含み、合成ガスは、好ましくは二酸化炭素および窒素である。
【0026】
燃焼以外の1または複数の簡素化された形態でのガスの加熱を使用することはまた、ガスストリームの形成および構成が、より正確に提供されること、および決定されることを許容する。ガスストリームは、バルブ、レギュレータおよびフローコントローラのような制御機構を用いて、当該ガスまたは各構成ガスの1または複数の所定の供給源(またはソース)から構成されて、正確に各構成ガスの量および割合/比を決定して、最終のガスストリームを形成し得る。これは、燃料の燃焼を用いるときには、可能ではない。
【0027】
また、電気加熱を用いることによって、ガスストリームの温度がより良く制御され、それは、より優れた均衡および安定性をもたらし、特に、ガスストリームが触媒物質に向けて供給されるときの温度の変化をより小さくする。これは、全く又は主に燃料の燃焼によってガスストリームの高い温度が達成され、その温度変化が細かく制御され得ないことと比較される。
【0028】
ガスストリームの温度が
工程(b)の前に正確に提供され得、か
つ決定され得るために、工程(b)で添加される純粋な炭化水素ストリームの量の精密な及び/または細かい制御が可能となって、組み合わされたガスが触媒物質を通過するときに、それの所望の温度を達成することができる。したがって、本発明は、必要とされる添加炭化水素ガスが少なく、追加の燃焼が極めて少なく、触媒物質での全体的なプロセスおよび温度に関してより高い度合いの制御および安定性を維持する、非常に安定なシステムを提供し得る。
【0029】
本発明の他の形態において、組み合わされたストリームの触媒物質上の通過は、出口ストリームを提供し、本発明の方法はさらに、
(d)出口ストリームの>50体積%をガスストリームとして再循環させる工程
を含む。
【0030】
より好ましくは、出口
ストリームの少なくとも70体積%、80体積%、90体積%、さらにより好ましくは>95体積%、またはさらには>97体積%、>98体積%、もしくは>99体積%、または場合により全てが、ガスストリームとして再循環させられる。このようにして、本発明は、必要とされるガスストリームの量を有意に減少させることができ、したがって、本発明の方法および装置を運転する費用を有意に減少させる。なぜならば、CO
2/N
2混合物が連続的には製造されず、かつ廃棄されないからである。
【0031】
特に、ガスストリームは、複数回、例えば3〜20回またはそれ以上、再循環させられて、追加のガスの必要性を最小にする。
【0032】
前述した、少なくとも幾らかの出口ストリームの再循環を伴う、本発明の別の形態において、本発明の方法は、
(e)前記少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスおよび酸素含有ガスを選択して、工程(c)の後に、工程(d)の再循環の後の工程(b)における組み合わされたストリームの構成および/または温度における変化を最小にし得る1または複数の反応生成物を得る工程
をさらに含む。
【0033】
好ましくは、当該方法は、組み合わされたストリームの構成および温度の両方の変化を最小にし得る。好ましくは、組み合わされたストリームの混合物は、工程(b)に再循環させるために用いられる下流側混合物の組成を最小にして、安定な混合物を与えるように選択される。その場合、再循環および炉は、安定な温度を提供し得る。
【0034】
特に、本発明は、触媒物質テストのための安定な環境を維持することができ、触媒物質の完全なエージング試験に必要とされる費用を減少させる。本発明は、安定な環境を提供して、触媒物質に供給される組み合わされたストリームまたはフィード(または供給)ストリームの濃度および/または温度が、サイクルの間、一般には等温サイクルの間、好ましくは<±5%、または<±4%、または<±3%、または<±2%、または<±1%の変化を有するようにする。
【0035】
本発明はさらに、(触媒物質を通過させる)組み合わされたストリームを提供するための、加熱されたガスストリームへの1もしくは複数の純粋な炭化水素、酸素含有ガス、または両方の添加を制御することを含む、触媒物質のエージング方法であって、
(i)加熱されたガスストリーム、触媒、および触媒出口ストリームの温度をモニタする工程、および
(ii)加熱されたガスストリームに添加される、1もしくは複数の純粋な炭化水素ガス、酸素含有ガス、または両方の体積を制御して、触媒温度を所定の範囲内に維持する工程
を含む方法をさらに提供する。
【0036】
好ましくは、工程(ii)は、触媒物質からの出口ストリームの少なくとも幾らかを工程(a)のガスストリームに再循環させた後で、加熱されたガスストリームに添加される、1もしくは複数の純粋な炭化水素ガス、酸素含有ガス、または両方の体積を制御して、触媒温度を所定の範囲内に維持することを含む。
【0037】
触媒物質の所定の温度範囲は、エージングする触媒物質の特性および他の所望のプロセス条件に応じて決定されるが、一般に400〜1100℃の範囲内であり、おそらくは500〜1000℃の範囲であり、場合によりそれより高く、あるいはより高い最高点に達する。
【0038】
本発明がガスストリームを、当該ガスまたは各構成ガスの1または公知の供給源から供給し得ること、および最終ガスストリーム中のその量、割合および/または比を制御し得ることはまた、ガスストリームの当該ガスまたは各構成ガスが、公知のかつ単純な供給源から供給されることを許容する。そのような供給源は、常套のガスシリンダまたは他の公知の供給ユニットであり得、それらは、ガソリンのような燃料の供給と比較して、
安全性を提供
し、維持し、
かつ保つことがより容易である。燃料の供給および使用を回避すること、およびその燃焼を回避することは、運転コストを減少させ、かつ知られている事故(または危険)を減少させる。
【0039】
1または複数の純粋な炭化水素ガスは、メタン、エタン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ペンタン等、および一酸化炭素からなる群の1または複数を含んでよい。純粋な炭化水素ガスは、好ましくはプロパンである。
【0040】
酸素含有ガスは、酸素を含む任意の適当なガスであってよく、それには、純粋な酸素または空気が含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
ガスストリーム、ならびに少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスおよび酸素含有ガスは、当該分野において公知の任意の適当な方法および/または装置を用いて、混合してよい。これには、専用混合機または混合管(またはミキシングボリューム)、ならびに単純な配管(例えば、1または複数のT継手)が含まれ得る。
【0042】
本発明は、本明細書で説明される種々の形態または要旨の組み合わせをすべて含む。本発明の任意のまたはすべての形態は、任意の他の形態と併用して、本発明の追加の形態を説明してよいことが理解される。さらに、1つの形態のいずれかの要素は、他の追加の形態を説明するために、いずれかの実施の形態の任意のおよび全ての他の要素と組み合わされてよい。
【0043】
したがって、本発明の特定の形態は、触媒物質をエージングする方法であって、
(a)部分的に、実質的に、または全体が1または複数の合成ガスからなるガスストリームを電気的に加熱する工程、
(b)少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスおよび酸素含有ガスを加熱されたガスストリームに添加して、組み合わされたストリームを提供する工程、
(c)組み合わされたストリームを触媒物質に通過させる工程、および
(d)触媒物質からの出口ストリームの>50体積%を工程(a)のガスストリームに再循環させる工程
を少なくとも含む方法である。
【0044】
本発明の利点には、下記の一または複数が含まれる:
1.フローの再循環:
組み合わされたストリームの大部分、典型的には98体積%〜99体積%を再循環させることができ、正確な触媒物質温度プロファイルを達成するために、少量の追加の炭化水素ガスおよび例えば空気を添加することが必要とされるだけである。これは、エージング方法またはプロセスにおけるガスストリームが、通常数回、再利用され、単に生成されて、排気されるだけではないことを意味する。
【0045】
2.エージングプロセスは、開始点にて、CO
2および窒素のバックグラウンドガスの混合物で満たされ、それから、システムの温度が上昇させられると、完全に再循環させることができる。
【0046】
3.エージングプロセスが、バックグラウンド温度に達すると、炭化水素ガス/酸素(例えば空気)の混合物を添加して、所望の触媒発熱を触媒物質または床において生成することができる。炭化水素ガスおよび例えば空気を、均衡のとれた混合物として添加すると、正確なバックグラウンド濃度を、高性能なモニタリングおよび制御システム無しで、維持することができる。少量の混合物だけが、運転圧力を維持するために、抜き取られて、排気される必要があり得る。この状況の均衡反応式は下記のとおりである。
【0047】
【化1】
【0048】
4.エージングプロセスの制御を、熱い1または複数のガスと接触する制御バルブおよび移動機構を有しないように、設計することができる。プロセスは、本質的に安定なものとして設計することができる。なぜならば、炭化水素/空気を均衡して加えることができ、混合物の均衡(またはバランス)を(部分的に)変化させないからである。
【0049】
本発明は、公知のエージングサイクル(例えば、前述のZDAKWエージングサイクル、LNTエージングサイクル、およびSTRAWMANエージングサイクル)を含む、任意の適当なエージングレジームに適合させ得る、触媒のエージング方法を提供する。
【0050】
本発明の第2の要旨によれば、触媒物質をエージングする装置であって、
(a)ガスストリームを加熱する、1または複数のヒータ、
(b)少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスと酸素含有ガスを、加熱されたガスストリームに結合させて(または混合して)、組み合わされたストリームを提供する、結合器(またはコンバイナ;combiner)、および
(c)組み合わされたストリームを触媒物質に通過させる通路
を少なくとも含む、装置が提供される。
【0051】
好ましくは、当該装置は、
(a)部分的に、実質的に、または全体が1または複数の合成ガスからなる、ガスストリームを加熱する、1または複数の電気炉ヒータ、
(b)少なくとも1つの純粋な炭化水素ガスと酸素含有ガスを、加熱されたガスストリームに結合させて(または混合して)、組み合わされたストリームを提供する、結合器(またはコンバイナ)、
(c)組み合われたストリームを触媒物質に通過させる通路、および
(d)触媒物質からの出口ストリームの>50体積%を、工程(a)のガスストリームに再循環させる経路
を含む。