特許第5705164号(P5705164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705164
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】スパークテスタ
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20060101AFI20150402BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150402BHJP
   H01B 13/16 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
   G01R31/12 B
   H01B13/00 C
   H01B13/16 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-109274(P2012-109274)
(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公開番号】特開2013-234980(P2013-234980A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】今西 将之
(72)【発明者】
【氏名】藤原 覚
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−040574(JP,U)
【文献】 実開昭56−059657(JP,U)
【文献】 特開2010−210386(JP,A)
【文献】 特開2004−156935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
H01B 13/00
H01B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁皮膜(10)を有する被検査電線(W)を、該被検査電線(W)の長手方向(Na)に走行させ、走行する上記被検査電線(W)に、電圧を印加した電極ブラシ(2)を接触させて、上記絶縁皮膜(10)の異常を検出するスパークテスタに於て、
上記電極ブラシ(2)の毛材(21)の先端を、上記被検査電線(W)に直角に近い角度をもって接触させるための電極位置調整機構(7)を具備し、
上記電極ブラシ(2)を振動させる振動手段(3)を付設し、該振動手段(3)は、上記電極ブラシ(2)を直線往復移動自在に保持するように上記長手方向(Na)に沿って設けられたリニアガイド(5)と、該リニアガイド(5)に沿って上記電極ブラシ(2)を直線往復振動させるバイブレータ(6)と、を有し、
上記電極ブラシ(2)の直線往復振動によって、上記毛材(21)の先端が上記被検査電線(W)の長手一方向(K)側と長手他方向側へ交互に撓るように構成したことを特徴とするスパークテスタ。
【請求項2】
上記被検査電線(W)の走行軌跡直線(La)において、上記電極ブラシ(2)よりも走行上流側及び走行下流側に、上記振動手段(3)の振動による上記被検査電線(W)の振れを抑制するガイドシーブ(8)を、千鳥状に複数個配設した請求項1記載のスパークテスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパークテスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスパークテスタは、絶縁皮膜を有する被検査電線を長手方向に走行させて、走行する被検査電線に電圧を印加した電極ブラシを接触させ、ピンホール等の非絶縁部(異常皮膜部)が存在するか否かを、通電(電気抵抗の低下)によって検出していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電極ブラシを長期間使用すると、被検査電線の走行方向に電極ブラシの毛材先端が曲がった状態にクセ付けされて変形し、毛材の腹が被検査電線に接触することが多くなる。電荷は毛材の先端に集まるため、毛材の先端が接触する場合に比べて、毛材の腹が接触すると異常検出精度が低下するといった問題があった。また、小さいピンホールは検出できなくなるといった問題があった。つまり、不具合品の検査漏れが起こる虞があった。
また、変形した電極ブラシの交換や、変形したか否かの保守や点検を頻繁に行なう必要があった。つまり、電極ブラシの寿命が短いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、電極ブラシの毛材の変形を防止でき、確実かつ高精度に異常の検出が可能なスパークテスタの提供を目的とする。
また、電極ブラシの寿命が長く、保守や点検の手間を軽減可能なスパークテスタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のスパークテスタは、絶縁皮膜を有する被検査電線を、該被検査電線の長手方向に走行させ、走行する上記被検査電線に、電圧を印加した電極ブラシを接触させて、上記絶縁皮膜の異常を検出するスパークテスタに於て、上記電極ブラシの毛材の先端を、上記被検査電線に直角に近い角度をもって接触させるための電極位置調整機構を具備し、上記電極ブラシを振動させる振動手段を付設し、該振動手段は、上記電極ブラシを直線往復移動自在に保持するように上記長手方向に沿って設けられたリニアガイドと、該リニアガイドに沿って上記電極ブラシを直線往復振動させるバイブレータと、を有し、上記電極ブラシの直線往復振動によって、上記毛材の先端が上記被検査電線の長手一方向側と長手他方向側へ交互に撓るように構成したものである。
【0007】
また、上記被検査電線の走行軌跡直線において、上記電極ブラシよりも走行上流側及び走行下流側に、上記振動手段の振動による上記被検査電線の振れを抑制するガイドシーブを、千鳥状に複数個配設したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、毛材の変形を防止でき、毛材の先端しか検知できないようなピンホール等の小さな非絶縁部を確実に検出できる。電極ブラシの長寿命化が図れ、変形した電極ブラシの交換や、変形したか否かの保守や点検作業の頻度を少なくできる。異常検出精度を向上させると共に長期間の使用による異常検出精度の低下を防止し、検査漏れが起こる虞が殆ど無く、安定した品質の電線を製品として提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態を示す要部断面平面図である。
図2】本発明の実施の一形態を示す要部正面図である。
図3】実施の一形態を示す要部側面図である。
図4】実施の一形態を示す全体正面図である。
図5】要部断面平面図である。
図6】作用説明図である。
図7】比較例の作用を説明するための簡略正面図である。
図8】比較例の作用を説明するための簡略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係るスパークテスタは、図1に示すように、外周に絶縁皮膜10を有する被検査電線Wに、電圧を印加したカーボン製又はステンレス製の毛材21を接触させて、ピンホールや皮膜剥離又は極端に皮膜が薄い部分等の非絶縁部(異常皮膜部)が存在するか否かを、通電(電気抵抗の低下)によって、検出するものである。
【0011】
図2に於て、被検査電線Wをその長手方向Naの一方に向かって(長手一方向Kに)走行させる図示省略の電線走行手段と、走行する被検査電線Wに接触させるための毛材21を多数本(100本以上)有する電極ブラシ2と、を備えている。
【0012】
電極ブラシ2は、被検査電線Wが長手一方向Kに走行する予定の走行軌跡直線Laを挟んで、毛材21の先端が対面状となるように、長手方向Naの略同位置に一対設けている。 毛材21は、例えば、直径約10μmと極細形状である。
また、多数本の毛材21の基端部を挟持状に保持する毛材保持部材20を有している。毛材保持部材20は、導電性に優れた金属(アルミニウム)製の薄板材をU字状に折曲げて形成されている。
多数本の毛材21は、平行かつ横断面略一文字状に集められ(束ねられ)、矩形薄片状の平筆型に形成されている。また、毛材集合部は正面視で長手方向Naに沿った長方形状とも言える。なお、毛材21や被検査電線Wは、見やすくするため、実際よりも大きく図示している。
【0013】
図3に示すように、電極ブラシ2を、振動させる振動手段3を付設している。
振動手段3は、電極ブラシ2を直線往復移動自在に保持するリニアガイド5と、リニアガイド5に沿って電極ブラシ2を直線往復振動させるバイブレータ6と、を有している。
【0014】
リニアガイド5は、図示省略の基台(メインフレーム)に設けられる案内部材51と、案内部材51に直線往復移動自在に取着されるスライド部材52と、を備えている。
そして、スライド部材52とバイブレータ6を板バネ状の連結部材61を介して連結して、バイブレータ6の振動を、スライド部材52の直進往復移動に変換し、電極ブラシ2が長手方向Naに直線往復振動するように構成している。バイブレータ6は、振幅や振動周波数を変更可能なものである。
【0015】
なお、バイブレータ6は、1つの電極ブラシ2に対して1つ設けて、振動による一方の電極ブラシ2の移動方向と、振動による他方の電極ブラシ2の移動方向、が常に相違するように、又は、各々ランダムに、各電極ブラシ2,2を、振動させるように設けているのが望ましい。
或いは、1対の電極ブラシ2,2に対して、バイブレータ6を1つ設けて、振動による2つの電極ブラシ2の移動方向が、常に同方向となるように設けても良い。
【0016】
図2及び図3に於て、電極ブラシ2の毛材21の先端を、被検査電線Wに直角に近い角度をもって接触させるための電極位置調整機構7を備えている。
電極位置調整機構7は、電極ブラシ2の毛材保持部材20をネジ止め等の固定手段で保持するホルダ部22aを有するブラシ保持部材22と、ブラシ保持部材22を被検査電線Wに接近・離間する方向に螺進退によって往復移動させる位置決め用の調整ボルト24と、を備えている。ブラシ保持部材22と調整ボルト24はスライド部材52に付設されている。また、1つの電極ブラシ2に、上流側部を移動させるための上流位置用の調整ボルト24(24A)と、下流側部を移動させるための下流位置用の調整ボルト24(24B)を備えている。各調整ボルト24A,24Bを螺進退させて、ブラシ保持部材22を移動させて、毛材21の先端を、被検査電線Wに、直角に近い角度をもって接触(接近)可能としている。
【0017】
図6に示すように、被検査電線Wに直角に近い角度とは、走行軌跡直線Laと、毛材21の先端面21aと直交する毛材軸心Qの間の角度α、或いは、被検査電線Wの稜線(外縁)90と毛材軸心Qの間の角度θが、60度以上120度以下の角度である。
60度未満又は120度を越えて接触させると、毛材21の先端がピンホールの中に差し込まれない虞が高く、検出精度が低下し、検査漏れが発生する虞があるためである。
【0018】
図4に示すように、複数列の走行軌跡(予定)直線Laに、夫々対応するように、一対の電極ブラシ2,2を1組として、複数組(5組)備えている。つまり、複数本の被検査電線Wを略同時に検査可能に検査ラインを複数本設けている。
【0019】
1つ走行軌跡直線La(検査ライン)において、1組の電極ブラシ2,2よりも走行上流側及び走行下流側に、振動手段3による被検査電線Wの振れ(逃げ)を抑制するガイドシーブ(ガイドローラ)を、複数設けている。より具体的には、走行上流側に3つ、走行下流側に3つ、合計で6つ配設している。
電極ブラシ2の近傍で、複数のガイドシーブ8を、走行軌跡直線Laを跨いだ(挟んだ)千鳥状に配設し、振れによって被検査電線Wがガイドシーブ8から脱落するのを、又は捩じれや振れを、ガイドシーブ8同士で、相互に防止している。
【0020】
また、ガイドシーブ8は、ガイド用外周溝を、横断面U字状に形成している。
溝開口側から底側へ緩やかに溝幅が狭まることで、平溝状に形成した場合(溝幅一定の場合)に比べて、様々な種類(形状や大きさ)被検査電線Wに対応できる。つまり、1種類のガイドシーブ8を、様々な種類の被検査電線Wに適応させて交換する頻度を少なくしている。また、V字状溝に形成した場合は、被検査電線WがV字斜面に沿って大きく傾いて捩じれることが多いが、U字状では自然にセンタリングされやすく、安定した姿勢で走行させることができる。
【0021】
また、電極ブラシ2を固定とした(振動させない)場合に比べて、通電(電気抵抗の低下)を読み取る検出間隔(サンプリング周期やスキャンタイムとも呼ばれる)を、毛材21の先端と被検査電線Wの相対速度を考慮して、短く設定している。つまり、振動させることで1本の毛材21が、1箇所の非絶縁部に接触している時間が短くなっても、より高精度に検出できる(検出精度が低下しない)。具体的には、スキャンタイム(サンプリング周期)が0.1ms以下の検出器を用いている。
【0022】
また、1組の電極ブラシ2毎に(組別に)、電圧の印加をON―OFF可能な操作部9を備え、保守や段取り作業等を効率良く容易に行なえるようにしている。
【0023】
また、図1に示すように、被検査電線Wを平角線とし、幅方向平行両面Wa,Waに電極ブラシ2を、接触させているが、厚さ方向平行両面Wb,Wbに接触するように電極ブラシ2を設けても良い。
また、幅方向平行両面Wa,Waに接触する一対の電極ブラシ2,2と、厚さ方向平行両面Wb,Wbに接触する一対の電極ブラシ2,2と、を1つの検査ラインに設けても良い。つまり、1つの検査ラインに4つの電極ブラシ2を設けても良い。
【0024】
また、被検査電線Wが平角線(横断面矩形状)の場合、図5に示すように、電極ブラシ2を、被検査電線Wの幅方向Nbに振動させるように、振動手段3を設けても良い(幅方向振動用のリニアガイドやバイブレータを設けても良い)。
また、電極ブラシ2を、被検査電線Wの厚み方向Ncに振動させるように、振動手段3を設けても良い(厚み方向振動用のリニアガイドやバイブレータを設けても良い)。
そして、電極ブラシ2を、振動手段3にて、長手方向Naと幅方向Nbに、又は、長手方向Naと厚み方向Ncに、又は、長手方向Naと幅方向Nbと厚み方向Ncに、直線往復振動するように設けても良い。
【0025】
また、被検査電線Wが丸線(横断面円形状)の場合、電極ブラシ2を、丸線の外周を包囲するような円環状に、或いは、走行軌跡直線Laを中心線とした螺旋状に、配設し、横断面形状で(長手方向Naに沿った方向から見て)360度全周に電極ブラシ2が接触するように配設しても良い。
そして、電極ブラシ2を、丸線型の被検査電線Wの半径方向に振動させるように、振動手段3を設けても良い(半径方向振動用のリニアガイドやバイブレータを設けても良い)。
また、電極ブラシ2を、丸線型の被検査電線Wの接線方向に振動させるように、振動手段3を設けても良い(接線方向振動用のリニアガイドやバイブレータを設けても良い)。
そして、振動手段3にて、電極ブラシ2を、長手方向Naと半径方向に、又は、長手方向Naと接線方向に、又は、長手方向Naと半径方向と接線方向に、直線往復振動するように設けても良い。
【0026】
また、電極ブラシ2を、被検査電線Wの走行軌跡直線Laに対して所定の傾斜角度をもって振動するように、振動手段3を設けても良い(傾斜振動用リニアガイド及びバイブレータを設けても良い)。そして、上述の振動方向と夫々組み合わせて検査するように構成しても良い。
【0027】
次に、本発明のスパークテスタの使用方法(作用)について説明する。
図2乃至図4に於て、電極ブラシ2の位置(被検査電線Wや走行軌跡直線Laに対する角度や距離)を電極位置調整機構7によって調整する。
操作部9によって各電極ブラシ2に電圧(DC24V)を印加すると共に、振動手段3(バイブレータ6)による振動を開始し、被検査電線Wを長手一方向Kに走行させる。
振動手段3によって、電極ブラシ2は長手方向Naに直線往復振動する。
【0028】
図2に於て、一方の電極ブラシ2(2A)のように長手一方向Kに直進すると、毛材21の先端は反対(長手他方向)側に撓る。また、他方の電極ブラシ2(2B)のように、長手他方向に直進すると、毛材21の先端は反対(長手一方向K)側に撓る。
つまり、電極ブラシ2が、長手方向Naに直線往復振動(長手一方向Kと長手他方向への移動を繰り返す)することで、毛材21が被検査電線Wの長手他方向側と長手一方向K側へ交互に撓る。
【0029】
ここで、図7に示す比較例のように、電極ブラシ2´が固定であると(振動しないと)、毛材21´の先端は、被検査電線Wの進行方向K側に撓った状態が、検査の間、続くため、クセ付けされ変形してしまう。
このように変形してしまうと、毛材21´の先端が被検査電線Wに接触しなくなり、毛材21´の腹(先端以外)が、接触するようになり、毛材21´の先端しか検出できないような小さな非絶縁部の検出ができなくなる。
【0030】
しかし、図2に示すように、本発明は、電極ブラシ2を長手方向Naに振動させるため、毛材21の先端が円弧状に(撓んだ状態で)クセ付けされず、先端が常に被検査電線Wに接触し、小さな非絶縁部を確実に検出する。
【0031】
また、図8に示す比較例のように、電極ブラシ2´が固定であると、毛材21´は、走行する被検査電線Wの勢いによって弾かれて、毛材21´の先端が被検査電線Wから逃げるように外方へ弯曲突出した状態でクセ付けされ、小さな非絶縁部の検出ができなくなる虞がある。
【0032】
そこで、振動手段3を、図5に示すように、被検査電線Wの幅方向Nbに電極ブラシ2を振動させるように、或いは、被検査電線Wの厚み方向Ncに電極ブラシ2を振動させるように設けると、図8に示したような変形を防止でき、より確実に小さな非絶縁部を検出可能となる。
【0033】
また、毛材21の先端が、振動により直角に近い角度内の様々な角度(方向)をもって、被検査電線Wに接触し、検出精度が向上する。また、走行中の被検査電線Wの非絶縁部に1本の毛材21が接近して検知しようとする回数が、振動(往復運動)によって多くなり(電極ブラシ2を固定させた場合は、走行によって接近し離れて行くまでの1回)、より高精度に安定した検出が可能となる。
具体的には、被検査電線Wが、平角線であれば、厚み寸法Jが0.02mm〜1.0mm、幅寸法Eが0.2mm〜4.0mmのもの、丸線であれば、外径が0.09mm〜1.8mmのものを、(振動させない場合に比べて)高精度に検査可能となった。
【0034】
また、毛材21の変形が防止されることで、電極ブラシ2の寿命が延び、電極ブラシ2の交換作業や、変形しているか否かの保守点検作業が軽減され、長期間(時間)にわたって、連続的に、検査を行なうことが可能となる。
【0035】
なお、本発明は、設計変更可能であって、バイブレータ6に代わる振動源として、偏芯カムを用いた振動機構とするも良い。また、バイブレータ6を直接的に電極ブラシ2に取着しても良い。1つの検査ラインにおいてガイドシーブ8を7つ以上設けても良い。
また、位置調整後の電極ブラシ2を固定するための電極位置固定機構は、調整ボルト24をロックするナット等のロック部材や、ブラシ保持部材22を固定する押さえ部材等自由である。
【0036】
以上のように、本発明のスパークテスタは、絶縁皮膜10を有する被検査電線Wを、被検査電線Wの長手方向Naに走行させ、走行する被検査電線Wに、電圧を印加した電極ブラシ2を接触させて、絶縁皮膜10の異常を検出するスパークテスタに於て、電極ブラシ2を振動させる振動手段3を付設したので、毛材21の変形を防止でき、毛材21の先端しか検知できないようなピンホール等の小さな非絶縁部を確実に検出できる。電極ブラシの長寿命化が図れ、変形した電極ブラシ2の交換や、変形したか否かの保守や点検作業を軽減できる。異常検出精度を向上させると共に長期間の使用による異常検出精度の低下を防止し、検査漏れが起こる虞が殆ど無く、安定した品質の電線を製品として提供できる。
【0037】
また、振動手段3は、電極ブラシ2を直線往復移動自在に保持するリニアガイド5と、リニアガイド5に沿って電極ブラシ2を直線往復振動させるバイブレータ6と、を有するので、電極ブラシ2が不規則に振動するのを防止できる。検出精度を安定させることができる。振幅や振動周波数の変更(設定)等の制御を様々な種類の被検査電線Wに容易に対応させることができる。
【0038】
また、リニアガイド5を被検査電線Wの長手方向Naに沿って設けて、電極ブラシ2が長手方向Naに直線往復振動するように構成したので、走行方向Kに倣うように毛材21が変形するのを防止でき、確実に毛材21の先端を被検査電線Wにより確実に接触させることができると共に電極ブラシ2の寿命を確実に延ばすことができる。
【0039】
また、電極ブラシ2の毛材21の先端を、被検査電線Wに直角に近い角度をもって接触させるための電極位置調整機構7を具備するので、毛材21の先端を、小さなピンホールを確実に検知可能に、被検査電線Wに接触させることができる。磨耗等により毛材21が短くなっても容易に調整でき、電極ブラシ2の交換作業を削減できる。毛材21の先端が、直角に近い角度内の様々な角度(方向)をもって、被検査電線Wに接触し、検出精度を向上できる。
【0040】
また、被検査電線Wの走行軌跡直線Laにおいて、電極ブラシ2よりも走行上流側及び走行下流側に、振動手段3の振動による被検査電線Wの振れを抑制するガイドシーブ8を、千鳥状に複数個配設したので、振動によって、被検査電線Wが毛材21の先端から逃げるように振れるのを、或いは、被検査電線Wが多数本の毛材21の中に埋もれるように走行するのを、防止して、確実に異常検出を行なうことができる。安定した異常検出精度を得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
2 電極ブラシ
3 振動手段
5 リニアガイド
6 バイブレータ
7 電極位置調整機構
8 ガイドシーブ
10 絶縁皮膜
21 毛材
W 被検査電線
Na 長手方向
La 走行軌跡直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8