(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持機構は、前記盛上り板部の下方に配置された板状部材と、この板状部材に固定されて下端部が前記板状部材より下方に向かって突出した支持棒部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の免震床構造。
【背景技術】
【0002】
従来の免震床構造としては、
図17に示すように、コンクリートスラブ上に平らな基礎床面3を形成し、その基礎床面3の上に配置された免震床構造2があった。この免震床構造2は、そのボールベアリング10が基礎床面3に対して水平移動可能に設けられているため、地震等により生じた建築物の水平方向の振動や変位が、ボールベアリング10上に固定されたフレーム6や、このフレーム6の上方に配置された支持脚18や不図示の床板等に直接そのまま伝達されるのを防止することができた(特許文献1参照)。
【0003】
上記従来の免震床構造2は、
図18に示すように、各々角筒状のパイプから形成されたそれぞれ複数のフレーム6と8が、縦横に組み合わされて、互いの接触部分近傍を溶接により接合されることにより、格子状の枠体が構成されていた。
【0004】
フレーム6は、互いの長さ方向(
図18中左右方向)が略平行になるように、その幅方向(同図中上下方向)に間隔をおいて、それぞれが並列に並んで配置されていた。そして、フレーム8は、その長さ方向がフレーム6の長さ方向と直角方向に伸びるように、フレーム6それぞれの間に設けられ、フレーム6の長さ方向に間隔をおいて複数並んで配置されていた。
【0005】
そして、フレーム6の、両側の側部にフレーム8が接合された位置(
図18中ナット14が設けられた位置)のそれぞれには、ボールベアリング10(
図17参照)が設けられていた。このボールベアリング10は、フレーム6の下板部6bに形成された貫通孔6cを挿通しており、フレーム6の上板部6aの下方に配置されていた。
【0006】
ボールベアリング10は、その上端部よりオネジ部10aが上方に突出しており、このオネジ部10aは、その下端部の軸線部にメネジ部が形成された止めネジ16のそのメネジ部にねじ込まれて取り付けられていた。また、止めネジ16の外周にはオネジ部が形成されており、止めネジ16の下端部は、フレーム6の上板部6aの下面に溶接によって固定されたナット12にねじ込まれていた。
【0007】
止めネジ16は、そのフレーム6の上板部6aの上面より上方のオネジ部にナット14が締結されることにより、ボールベアリング10をフレーム6の略内部に収納するように固定していた。
【0008】
そして、止めネジ16の上端部にはすり割り16aが形成されていた。上記従来の免震床構造2は、ナット14を緩めて、すり割り16aに入れたドライバを用いて止めネジ16を回転させることにより、ボールベアリング10の高さ寸法を変化させることができた。
【0009】
また、上記従来の免震床構造2は、ボールベアリング10のボール体10bが基礎床面3に接触して転がるようになっているため、ボールベアリング10が保持されたフレーム6は基礎床面3上をどの水平方向にも自由に動くことができた。
【0010】
また、フレーム6や8で構成された上記枠体の四角部に、不図示のダンパやコイルバネが取り付けられることにより、地震等による建築物の振動や変位によって上記枠体が水平方向に建築物に対して相対的に移動したとしても、ダンパやコイルバネが復元力を発揮して、上記枠体を建築物に対して元の位置に戻すことができた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る免震床構造を実施するための形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0023】
図1から
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る免震床構造40について説明するために参照する図である。
【0024】
本実施の形態に係る免震床構造40の免震フレーム42は、
図2に示すように、フレーム46、カバー48及び連結フレーム50を備えており、
図1に示すように、これらの下面は基礎床面41から上方に間隔を置いて配置されている。
【0025】
そして、
図1に示すように、免震床構造40は免震支持部44を備えており、この免震支持部44は、主に連結部材52、ボールベアリング60、ボルト58、支持機構を構成する板状部材54及び支持棒部材56を有して、基礎床面41上に複数配置されており、免震フレーム42を下側から支持している。
【0026】
ここで、免震支持部44から連結部材52を除いた他の構成部材、すなわち、板状部材54、支持棒部材56、ボルト58及びボールベアリング60をまとめて免震脚部というものとする。
【0027】
免震フレーム42は、
図2に示すように、複数のフレーム46が、互いの長さ方向(図中左右方向)に直列に並ぶと共に、互いに略平行方向に並列に並ぶようにして、その長さ方向及び幅方向(図中上下方向)に間隔をおいて配置されている。
【0028】
図3に示すフレーム46は、内部に中空部46aを有する四角筒状に形成されており、その長さ方向において互いに隣り合う2つのフレーム46は、それぞれの開口端部がカバー48と連結部材52の平板部52aの間に上下から挟まれて、互いの開口端部同士が対向して配置されて連結されている。
【0029】
カバー48は、不図示の断面形状が、基礎床面41寄りの下方が開口したコの字状に形成されており、
図1,3に示すように、その長さ方向の両端部が上記隣り合う2つのフレーム46の互いに対向する開口端部それぞれの、上側と両側の3つの外側面を覆って重なるように配置されている。
【0030】
連結フレーム50は、
図2中左右方向に伸びて互いに平行に配置された複数のカバー48の側部間に、その長さ方向がフレーム46の長さ方向に対して略垂直方向に伸びて配置されている。
【0031】
そして、その連結フレーム50は、中空部50aを有する四角筒状に形成されており、
図3に示すように、その長さ方向において互いに隣り合う2つの連結フレーム50それぞれの端部が、連結部材52の平板部52a上に固定され、その長さ方向においてカバー48を挟んで、互いの開口端部同士が対向して配置されている。
【0032】
連結部材52は、
図4に示すように、外形形状が略正方形状の平板部52aの、四隅部に切欠部52dが形成されており、互いに隣り合う切欠部52d間に伸びた四つの辺部より上下・左右方向の外側に伸びていた板状部は、図中紙面奥側に向かって略垂直に折り曲げられた折曲板部52e(
図5参照)に形成されている。
【0033】
連結部材52の平板部52aには、その四辺のそれぞれに沿って合計12個のネジ孔52c(
図4参照)が形成されている。
【0034】
連結部材52の平板部52aの中央部の
図4中上下2ヶ所には、上下方向に互いに離れて、同図中左右方向に長さを有する2つの長孔52fが、互いに平行に形成されている。そして、平板部52aの2つの長孔52f間に挟まれた部分は、プレス等により平板部52aより上方に(
図4中手前側に)盛上がって、
図5に示すように、2つの傾斜部52gと、平板部52aの上面52bに対して略平行な上面52iを有する盛上り板部52hが形成されている。
【0035】
図4に示すように、連結部材52中央部の盛上り板部52hには、その板厚方向に貫通する貫通孔52jが形成されており、また、その貫通孔52jの周囲を囲む4つの位置には貫通孔52kが形成されている。
【0036】
図1に示すように、フレーム46には、その開口端部近傍の図中上側の板部と下側の板部それぞれを貫通する貫通孔46bが形成されている。また、カバー48の両端部には、一対のフレーム46の開口端部のそれぞれの3つの外側面を覆った際に、フレーム46の図中上側の貫通孔46bと重なりあう位置に、貫通孔48aが形成されている。
【0037】
フレーム46及びカバー48は、ボルト47のオネジ部がそれらの貫通孔46b,48a(
図3参照)を挿通して、そのオネジ部の先端部を連結部材52のネジ孔52c(
図4参照)にネジ締結されることにより、連結部材52の平板部52aに固定されている。また、連結フレーム50も略同様にして連結部材52の平板部52aに固定されている。
【0038】
図1及び
図3に示すように、後述する支持棒部材56の上端部のオネジ部56aが、盛上り板部52h(
図4参照)の貫通孔52jに
図1中下側から挿通されて、その後オネジ部56aにナット62がネジ締結されるが、支持棒部材56は、後述するように、板状部材54に一体的に固定されているため、盛上り板部52h(
図5参照)の下面52mに板状部材54の上面54aを接触させて、上記ネジ締結されることにより、支持棒部材56は盛上り板部52hに固定される。
【0039】
板状部材54は、
図8に示すように、外形形状が略正方形状に形成されており、その四隅部それぞれの近くに貫通孔54cが形成されている。この貫通孔54cは、板状部材54を盛上り板部52hにその下側から重ね合わせた際に、連結部材52の貫通孔52k(
図4参照)と同軸上となる位置に形成されており、その貫通孔52kよりも径寸法が小さく形成されている。
【0040】
図7に示すように、板状部材54は、その中央部に形成された貫通孔54dに支持棒部材56を挿通させて、その上面54aと支持棒部材56の外周面との間の隅部を溶接することにより、支持棒部材56と一体的に構成されている。
【0041】
支持棒部材56は、板状部材54の上面54aから
図7中上方に突出する部分の外周にオネジ部56aが形成されている。また、支持棒部材56の、板状部材54の下面54bから下方に突出する円柱状の突出部56bの先端部には、凸球面部56cが形成されている。
【0042】
図6においては、支持棒部材56下端部の突出部56b先端部の凸球面部56cは、ボールベアリング60のボールガイド74の上面74aに当接している。
【0043】
そして、ボルト58のオネジ部58aは、板状部材54の上面54a側から貫通孔54cに挿通して、板状部材54の下方に突出したその先端部が、ボールベアリング60のボールガイド74の上面74aに形成された、
図10に示すような4ヶ所のメネジ部74cにネジ締結されて、ボールベアリング60に固定されている。
【0044】
板状部材54は、基礎床面41との間隔の変化に応じて、ボルト58の頭部下面が板状部材54の上面54aに係合又は離脱するようになっているので、板状部材54はボールベアリング60に対して遊びを持った状態で緩く連結されている。
【0045】
すなわち、
図6に示すように、基礎床面41と板状部材54の下面54bの間隔が短くなって、ボルト58の頭部下面と板状部材54の上面54aが離れているときは、ボールベアリング60はボルト58を介して板状部材54と係合してない(離脱した)状態になっている。
【0046】
一方、基礎床面41やボールベアリング60と、板状部材54の下面54bとの間隔が広がって、ボルト58の頭部下面と板状部材54の上面54aが接触したときは、ボールベアリング60はボルト58を介して板状部材54と係合した状態となる。
【0047】
したがって、ボルト58は、通常は、そのオネジ部58aの先端部がボールガイド74のメネジ部74cにネジ締結された際に、その頭部の下面が板状部材54の上面54aと間隔をおいて対向するような長さを有しているが、基礎床面41の一部の高さが基礎床面41の他の部分よりも低くなっていることにより、ボールベアリング60のボールガイド74の高さが他のボールベアリング60より下降したときは、ボルト58の頭部下面が板状部材54の上面54aに接触すると共に、ボールガイド74と板状部材54は最も離隔した状態となる。
【0048】
ところで、ボルト58の頭部は、そのオネジ部58aが板状部材54の貫通孔54cに挿通した状態で、
図1に示すように、連結部材52の盛上り板部52h(
図4,5参照)の貫通孔52kに下側から嵌入されて組立てられている。
【0049】
基礎床面41の状態によりボールベアリング60とボルト58が、支持棒部材56に対して所定角度回動した際において、ボルト58の頭部が貫通孔52kの内周面に接触しないように、盛上り板部52hの貫通孔52k(
図4,5参照)はその径寸法が、ボルト58の頭部の径寸法よりも大きく形成されている。
【0050】
上記盛上り板部52hの貫通孔52kと同様に、基礎床面41の状態によりボールベアリング60とボルト58が、支持棒部材56に対して所定角度回動した際において、ボルト58のオネジ部58aが貫通孔54cの内周面に接触しないように、板状部材54の貫通孔54cもその径寸法が、ボルト58のオネジ部58aの径寸法よりも大きく形成されている。
【0051】
そして、板状部材54とボールベアリング60は、前述のようにボルト58を介して互いに係合又は離脱するようになっており、その離脱している場合は板状部材54はボールベアリング60に対して遊びを持った状態で緩く連結されているため、略静止状態の支持棒部材56に対してボールベアリング60の上面74aは所定角度までその回動を許容されるようになっている。
【0052】
また、ボルト58の頭部の下面が板状部材54の上面54aに係合又は離脱するようになっているので、ボルト58の頭部下面が板状部材54の上面54aに係合しているとき以外は、板状部材54に対してボルト58はその軸方向に自由に上下動することができる。
【0053】
したがって、
図1における免震フレーム42を支持する複数の免震支持部44の内の、任意の免震支持部44が載置された基礎床面41に傾斜面が形成されていたり、他の免震支持部44が載置された基礎床面41よりもその高さ位置が低いような場合には、ボルト58が板状部材54に対して下方に移動して、支持棒部材56に対してボールベアリング60が回動したり、ボールベアリング60の上面74aが板状部材54の下面54bからの間隔を広げるようにその高さが下降して、そのボール体70すべてを基礎床面41に均一に接触させることが可能になっている。
【0054】
図9に示すように、ボールベアリング60は、多数のボール体70と、ボールシート72と、ボールガイド74とを備えて構成されている。そして、ボールベアリング60は、ボールシート72とボールガイド74の間に形成された隙間Sを通って、ボール体70を循環転動させるようガイドできるようになっている。
【0055】
ボールシート72は、その外周部に凸球面部72bを有する円盤状に形成されており、その上側中央部には同図中上方に突出する円柱部72aが一体的に形成されている。この円柱部72aは、凸球面部72bより外径寸法が小さく形成されており、その上面72cには、4つのメネジ部72eが形成されている。
【0056】
ボールガイド74は、略円柱状に形成されており、その内側には、ボールシート72の凸球面部72bに対応する凹球面部74eが形成されている。そして、ボールガイド74の底面74bには凹球面部74eの開口部が形成されており、その開口部の上方には
図9中上方に凹んだ段差凹部74gが形成されている。
【0057】
そして、ボールガイド74の上面74aの中央部には、その上面74aから段差凹部74gの天井面に貫通する4つのザグリ孔74dが形成されている。
【0058】
ボールガイド74の段差凹部74gの水平方向内側にボールシート72の円柱部72aを嵌合させて、皿ネジ76のオネジ部76aをボールガイド74のザグリ孔74dの中央部に挿し込んで、その先端部をボールシート72のメネジ部72eにネジ締結させることにより、ボールガイド74はボールシート72に固定されている。
【0059】
このとき、ボールガイド74の凹球面部74eとボールシート72の凸球面部72bの間には、金属製の球体であるボール体70が転動可能な、
図9に示すような湾曲した隙間Sが形成されている。この隙間Sのボールガイド74における高さ中央部は、不図示の水平断面において環状に形成されている。
【0060】
また、ボールガイド74の底面74bの基礎床面41からの高さと、ボールシート72の底面72dの基礎床面41からの高さとの間には、ボール体70の外径寸法よりも短い寸法差が設けられている。
【0061】
このため、ボールシート72の底面72dの下方の基礎床面41の上にボール体70を敷き詰めると、ボールシート72の底面72dと基礎床面41との間に挟まれたボール体70の一部が、ボールガイド74の底面74bより下側に露出するように配置されている。
【0062】
ボール体70は、ボールシート72の底面72dの下方だけでなく、ボールガイド74の凹球面部74eとボールシート72の凸球面部72bの間に形成された隙間Sにも、略互いに隣接して充填されている。
【0063】
そして、
図9に示すボールベアリング60が基礎床面41に対して水平移動すると、ボールシート72の底面72dの下側において、水平移動の進行側とは反対側に位置していたボール体70は、上記隙間S内に入り込んで循環転動し、水平移動の進行側に位置していたボール体70は、その進行側とは反対側に向かって移動するようになっている。
【0064】
このため、多数のボール体70は、ボールベアリング60を基礎床面41に接触させて水平移動させると、その水平移動に追従して循環転動するようになっており、ボールベアリング60が、ボール体70をこのように動作させることにより、免震フレーム42は基礎床面41上をいずれの水平方向にも自由に動くことができる。
【0065】
また、
図11に示すように、基礎床面41が水平面に対して傾斜していると、その上に配置されるボールベアリング60のボールガイド74は、板状部材54に対して下降すると共に、支持棒部材56に対して所定角度回動して、多数のボール体70のすべてを、基礎床面41が傾斜していないときと同様に、基礎床面41に均一に接触させることができる。
【0066】
このような本実施の形態に係る免震床構造40においては、互いの端部同士が対向して配置された一対のフレーム46同士を連結する連結部材52を備えているため、前記従来の免震床構造2におけるフレーム6のように、フレーム46や連結フレーム50に強度低下の原因となるような大きな貫通孔を設けなくても済むので、免震床構造40の支持強度が低下することを防止することができる。
【0067】
また、連結部材52の、一対のフレーム46の端部間が上方に盛上がった盛上り板部52hの下方に、免震脚部を構成する板状部材54、支持棒部材56、ボルト58及びボールベアリング60が配置されることにより、免震床構造40の高さ寸法が大きくなるのを防止することができる。
【0068】
また、基礎床面41の傾斜面に応じて、ボールベアリング60は、板状部材54に対して下降すると共に、支持棒部材56に対してボールベアリング60のボールガイド74の相対角度を変化させることができるため、基礎床面41に傾斜面が形成された部分があっても、ボールベアリング60のすべてのボール体70を基礎床面41に均一に接触させることができる。
【0069】
また、基礎床面41の高さの変化に応じて板状部材54とボールベアリング60との上下方向の間隔を変化させることができるため、基礎床面41に他の大部分と高さが異なる部分があっても、ボールベアリング60のすべてのボール体70を基礎床面41に均一に接触させることができる。
【0070】
また、基礎床面41に傾斜面が形成された部分や、場所によって高さが異なる部分があっても、ボールベアリング60のすべてのボール体70を基礎床面41に均一に接触させることができるので、地震等により生じた建築物の水平方向の振動や変位に対して効果的な免震動作を十分に行なうことができる。
【0071】
また、免震フレーム42を構成するフレーム46、カバー48及び連結フレーム50が、連結部材52に固定されるようになっていると共に、免震支持部44が主に、連結部材52、板状部材54、支持棒部材56、ボルト58及びボールベアリング60により構成されているので、免震床構造40はその構造が簡単であり、その組立てが簡単であるため、その材料費や製造費を安価にすることができる。
【0072】
したがって、以上に説明したように、本実施の形態に係る免震床構造40によれば、免震床構造40の支持強度が低下することを防止することができると共に、免震床構造40の高さ寸法が大きくなるのを防止することができる。
【0073】
図12から
図16は、本発明の第2の実施の形態に係る免震床構造80について説明するために参照する図である。
【0074】
本実施の形態に係る免震床構造80の免震支持部82は、
図12に示すように、主に連結部材52、ボールベアリング60、ボルト58、支持機構を構成する第1板状部材84、支持棒部材86、第1丸棒部材88、第2板状部材90及び第2丸棒部材92を有しており、この免震支持部82は基礎床面41上に複数配置されて、免震フレーム42を下側から支持している。
【0075】
ここで、免震支持部82から連結部材52を除いた他の構成部材、すなわち、支持棒部材86、第1板状部材84、第1丸棒部材88、第2板状部材90、第2丸棒部材92、ボルト58及びボールベアリング60をまとめて免震脚部というものとする。
【0076】
図12に示すように、後述する支持棒部材86のオネジ部86aがその盛上り板部52hの貫通孔52j(
図4参照)に図中下側から挿通されて、その後オネジ部86aにナット62がネジ締結されるが、後述するように支持棒部材86は、第1板状部材84に一体的に固定されているため、盛上り板部52hの下面52m(
図5,12参照)に第1板状部材84の上面84aを接触させて、上記ネジ締結されることにより、支持棒部材86は盛上り板部52hに固定される。
【0077】
第1板状部材84は、
図15に示すように、外形形状が略正方形状に形成されており、その四隅部それぞれの近くに貫通孔84cが形成されている。この貫通孔84cは、第1板状部材84を盛上り板部52hにその下側から重ね合わせた際に、盛上り板部52hの貫通孔52k(
図4参照)と同軸上となる位置に形成されており、その貫通孔52kよりも径寸法が小さく形成されている。
【0078】
図14に示すように、第1板状部材84は、その上面84aの中央部の上に支持棒部材86の下端面を接触させて、その上面84aと支持棒部材86の下端部外周面との間の隅部を溶接することにより、支持棒部材86と一体的に構成されている。
【0079】
このように支持棒部材86は、第1板状部材84の上面84aから上方に突出するよう設けられていると共に、その外周にはオネジ部86aが形成されている。
【0080】
図13に示す第1板状部材84においては、その下面84bに接触する第1丸棒部材88が配置されており、その下面84bと第1丸棒部材88の外周面との間を溶接することにより、第1板状部材84は第1丸棒部材88と一体的に構成されている。
【0081】
図14に示すように、第1板状部材84と第1丸棒部材88の下方には、同様の構成を有する第2板状部材90と第2丸棒部材92が、互いに重ね合わされるように配置されている。
【0082】
第1丸棒部材88は、第2板状部材90の上面90a上に載置されており、その第1丸棒部材88の外周面が第2板状部材90の上面90aに、限られた角度内で転がり可能に接触している。
【0083】
第2板状部材90も、
図15に示すように、第1板状部材84と同様の外形形状を有しており、その外形形状は第1板状部材84と揃うように、かつ上下方向に間隔を置いて、上下方向に重なるように配置されている。
【0084】
すなわち、第2板状部材90は、
図15に示すように、外形形状が略正方形状に形成されており、その四隅部それぞれの近くに貫通孔90cが形成されている。この貫通孔90cは、第2板状部材90が第1板状部材84と揃うように配置されたときに、第1板状部材84の貫通孔84cと同一軸線上となる位置に形成されており、その径寸法は貫通孔84cと略同一に形成されている。
【0085】
図14に示す第2板状部材90の下面90bには第2丸棒部材92が接触して配置されており、その下面90bと、第2丸棒部材92の外周面との間を溶接することにより、第2板状部材90は第2丸棒部材92と一体的に構成されている。
【0086】
図15に示すように、第1丸棒部材88は、その軸線が第1板状部材84の図中上下方向中央部で図中左右方向に伸びるように配置されていると共に、第1板状部材84の下面84b(
図14参照)に固定されている。
【0087】
これに対して、第2丸棒部材92は、その軸線が第2板状部材90の
図15中左右方向中央部で
図15中上下方向に伸びるように配置されていると共に、第2板状部材90の下面90b(
図14参照)に固定されている。
【0088】
このため、
図15に示すように、第1丸棒部材88と第2丸棒部材92は、上方から見て互いの軸線が直交するように配置されている。
【0089】
図12、
図13においては、第2丸棒部材92は、その外周面がボールベアリング60のボールガイド74の上面74aに、限られた角度内で転がり可能に接触している。
【0090】
そして、ボルト58のオネジ部58aは、第1板状部材84の上面84a側から、その貫通孔84cと第2板状部材90の貫通孔90cに挿通して、その下方に突出した先端部が、ボールベアリング60のボールガイド74の上面74aに形成された、
図10に示すような4ヶ所のメネジ部74cにネジ締結されて、ボールベアリング60に固定されている。
【0091】
第1板状部材84は、基礎床面41との間隔の変化に応じて、ボルト58の頭部下面が第1板状部材84の上面84aに係合又は離脱するようになっているので、第1板状部材84はボールベアリング60に対して遊びを持った状態で緩く連結されている。
【0092】
すなわち、
図13に示すように、基礎床面41と第1板状部材84の下面84bの間隔が短くなって、ボルト58の頭部下面と第1板状部材84の上面84aが離れているときは、ボールベアリング60はボルト58を介して第1板状部材84と係合してない(離脱した)状態になっている。
【0093】
一方、基礎床面41やボールベアリング60と、第1板状部材84の下面84bの間隔が広がって、ボルト58の頭部下面と第1板状部材84の上面84aが接触したときは、ボールベアリング60はボルト58を介して第1板状部材84と係合した状態となる。
【0094】
したがって、ボルト58は、通常は、そのオネジ部58aの先端部がボールガイド74のメネジ部74cにネジ締結された際に、その頭部の下面が第1板状部材84の上面84aと間隔をおいて対向するような長さを有しているが、基礎床面41の一部の高さが基礎床面41の他の部分よりも低くなっていることにより、ボールベアリング60のボールガイド74の高さが他のボールベアリング60より下降したときは、ボルト58の頭部下面が第1板状部材84の上面84aに接触すると共に、ボールガイド74と第1板状部材84は最も離隔した状態となる。
【0095】
ところで、ボルト58の頭部は、そのオネジ部58aが第1板状部材84の貫通孔84cに挿通した状態で、
図12に示すように、連結部材52の盛上り板部52h(
図4,5参照)の貫通孔52kに嵌入されて組立てられている。
【0096】
基礎床面41の状態によりボールベアリング60の上面74aとボルト58が、丸棒部材88と92の一方又は双方の転がり動作を介して、第1板状部材84や第2板状部材90に対して所定角度回動した際において、ボルト58の頭部が貫通孔52kの内周面に接触しないように、盛上り板部52hの貫通孔52kはその径寸法が、ボルト58の頭部の径寸法よりも大きく形成されている。
【0097】
第1板状部材84の貫通孔84c(
図13参照)と第2板状部材90の貫通孔90cも、ボールベアリング60の上面74aとボルト58が、丸棒部材88と92の一方又は双方の転がり動作を介して、第1板状部材84や第2板状部材90に対して所定角度回動した際において、ボルト58のオネジ部58aが貫通孔84cや貫通孔90cの内周面に接触しないように、その径寸法がボルト58のオネジ部58aの径寸法よりも大きく形成されている。
【0098】
そして、第1板状部材84とボールベアリング60は、前述のようにボルト58を介して互いに係合又は離脱するようになっており、その離脱している場合は第1板状部材84と第2板状部材90は、ボールベアリング60に対して遊びを持った状態で緩く連結されているため、略静止状態の第1板状部材84に対して、第1丸棒部材88、第2板状部材90及び第2丸棒部材92を介してボールベアリング60は所定角度までその回動を許容されるようになっている。
【0099】
また、基礎床面41が
図16中左右方向において、水平面に対して傾斜していると、ボールベアリング60のボールガイド74は第1丸棒部材88を介して第1板状部材84に対してその傾斜角度分回動する。
【0100】
また、基礎床面41が同図中紙面前後方向において、水平面に対して傾斜していると、ボールベアリング60のボールガイド74は第2丸棒部材92を介して第2板状部材90に対してその傾斜角度分回動する。このようにして、多数のボール体70を、基礎床面41が傾斜していないときと同様に、基礎床面41に均一に接触させることができる。
【0101】
また、基礎床面41が
図16中左右方向又は紙面前後方向以外の方向において、水平面に対して傾斜していると、ボールベアリング60のボールガイド74は丸棒部材88と92の両方の転がり動作を介して、第1板状部材84と第2板状部材90の両方に対してその傾斜角度分回動して、多数のボール体70を、基礎床面41が傾斜していないときと同様に、基礎床面41に均一に接触させることができる。
【0102】
このような本実施の形態に係る免震床構造80においては、前記第1の実施の形態と同様に、互いの端部同士が対向して配置された一対のフレーム46の端部同士を連結する連結部材52を備えているため、前記従来の免震床構造2におけるフレーム6のように、フレーム46や連結フレーム50に強度低下の原因となるような大きな貫通孔を設けなくても済むので、免震床構造80の支持強度が低下することを防止することができる。
【0103】
また、連結部材52の、一対のフレーム46の端部間が上方に盛上がった盛上り板部52hの下方に、免震脚部を構成する支持棒部材86、第1板状部材84、第1丸棒部材88、第2板状部材90、第2丸棒部材92、ボルト58及びボールベアリング60が配置されることにより、免震床構造80の高さ寸法が大きくなるのを防止することができる。
【0104】
また、基礎床面41に傾斜面が形成された部分や、場所によって高さが異なる部分があっても、基礎床面41に傾斜面が形成された部分や高さが異なる部分が無いときと同様に、ボールベアリング60のすべてのボール体70を基礎床面41に均一に接触させることができるので、地震等により生じた建築物の水平方向の振動や変位に対して効果的な免震動作を十分に行なうことができる。
【0105】
また、免震フレーム42を構成するフレーム46、カバー48及び連結フレーム50が、連結部材52に固定されるようになっていると共に、免震支持部82が主に、連結部材52、第1板状部材84、支持棒部材86、第1丸棒部材88、第2板状部材90、第2丸棒部材92、ボルト58及びボールベアリング60により構成されているので、免震床構造80はその構造が簡単であり、その組立てが簡単であるため、その材料費や製造費を安価にすることができる。
【0106】
したがって、以上に説明したように、本実施の形態に係る免震床構造80によれば、免震床構造80の支持強度が低下することを防止することができると共に、免震床構造80の高さ寸法が大きくなるのを防止することができる。
【0107】
なお、前記第1の実施の形態に係る免震床構造40においては、支持棒部材56の突出部56bの先端部に凸球面部56cが形成されていたが、その凸球面部56cの代りに、その先端部の角部を略45度に削り取った面取部を、又はその先端部の角度にR面部を形成するようにしてもよい。
【0108】
また、前記免震床構造40における支持棒部材56は、その長さ中央部が板状部材54の貫通孔54dを挿通する略単一の部品により構成されるようになっていたが、板状部材54の上面54aから上方に突出した部分と、その下面54bから下方に突出した部分がそれぞれ別部材の複数の部材により構成されるようになっていてもよい。
【0109】
また、前記免震床構造40における免震脚部は板状部材54、支持棒部材56、ボルト58及びボールベアリング60により構成されており、前記免震床構造80における免震脚部は支持棒部材86、第1板状部材84、第1丸棒部材88、第2板状部材90、第2丸棒部材92、ボルト58及びボールベアリング60により構成されていたが、免震脚部は基礎床面41に載置され、かつ連結部材52に連結されて免震動作をするようになっていればよく、前記免震床構造40、80の構成に限定されるものではない。
【0110】
また、前記第2の実施の形態に係る免震床構造80においては、第1板状部材84と第1丸棒部材88、第2板状部材90と第2丸棒部材92の2組が重ね合わされて配置されていたが、例えば、第1板状部材84と第1丸棒部材88の1組のみの構成が配置されるようになっていてもよい。
【0111】
前記免震床構造40、80における連結部材52は、前記免震床構造40、80に記載された外形形状にのみ限定されるものではなく、フレーム46間において上方に盛上がって形成された盛上り板部52hを有しており、かつ盛上り板部52hの下方に免震脚部を配置できるようになっていれば、他のどのような外形形状になっていてもよい。