特許第5705226号(P5705226)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705226
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】スライドファスナー
(51)【国際特許分類】
   A44B 19/26 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
   A44B19/26
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-528544(P2012-528544)
(86)(22)【出願日】2010年8月11日
(86)【国際出願番号】JP2010063666
(87)【国際公開番号】WO2012020491
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2012年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02575501(US,A)
【文献】 特開昭49−070740(JP,A)
【文献】 米国特許第02355987(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/26−19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のファスナーテープ(20)の対向するテープ側縁部(20a)に沿って複数のファスナーエレメント(31)を有するファスナーエレメント列(30)が設けられる一対のファスナーストリンガー(11L,11R)と、
前記ファスナーエレメント列に沿って摺動可能に取り付けられ、前記ファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダー(40)と、を備え、
前記一対のファスナーストリンガーに前記ファスナーテープの幅方向外側に向かう横引き力を加えることにより、一方の前記ファスナーストリンガー(11L)が前記スライダーから分離されるスライドファスナー(10)であって、
前記スライダーは、
上下方向に離間して平行配置される上翼板(51)及び下翼板(52)と、前記上翼板及び前記下翼板を前端部において連結する案内柱(53)と、前記上翼板の左右両側縁に沿って下方に向けて突設される上側フランジ(54a)と、前記下翼板の左右両側縁に沿って上方に向けて突設される下側フランジ(54b)と、前記上翼板の上面に設けられる引手取付部(58F,58R,70,80)と、を有する胴体(50)と、
前記引手取付部に対して回動自在に取り付けられる引手(60)と、を備え、
前記胴体の幅方向一方側の前記上側及び下側フランジの幅方向内側面を、幅方向内側から外側に向かうに従って次第に肉厚が大きくなる傾斜面(59a,59b)にそれぞれ形成し、
前記胴体(50)の幅方向一方側の前記上側及び下側フランジ間の間隙の上下方向寸法は、前記胴体の幅方向他方側の上側及び下側フランジ間の間隙の上下方向寸法より大きく、
前記横引き力が加えられた際に、前記ファスナーエレメントが前記傾斜面に当接し、前記上側及び下側フランジの間隔を押し広げることにより、前記一方の前記ファスナーストリンガーが前記スライダーから分離されることを特徴とするスライドファスナー。
【請求項2】
前記胴体(50)の幅方向他方側の前記上側及び下側フランジ(54a,54b)の幅方向内側面は、前記上翼板(51)及び前記下翼板(52)の上下方向内側面に対して垂直方向に延びる垂直面(59c,59d)を有することを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー。
【請求項3】
前記傾斜面(59a,59b)は、前記胴体(50)の肩口(55)側に形成される前部傾斜面(59af,59bf)、及び前記胴体の後口(56)側に形成される後部傾斜面(59ar,59br)を有し、
前記前部傾斜面の傾斜角度(α)は、前記後部傾斜面の傾斜角度(β)より小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドファスナーに関し、特には、一対のファスナーストリンガーに横引き力を加えることにより、一方のファスナーストリンガーがスライダーから分離されるスライドファスナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスライドファスナーとしては、上翼板を内側板と外側板の二重構造とし、引手を片側に倒して、内側板に対して外側板を緩めることにより、一方のファスナーストリンガーをスライダーから分離させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2681490号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のスライドファスナーでは、上翼板を内側板と外側板の二重構造とするため、構造が複雑で、製造コストが増加してしまう可能性があった。また、上翼板の外側板及び下翼板の左右両側縁にそれぞれ形成されるフランジ(サイドレール)の幅方向内側面が垂直面に形成されるため、分離の際にファスナーエレメントがフランジに引っ掛かり、一方のファスナーストリンガーをスライダーから分離し難かった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構造で、一方のファスナーストリンガーをスライダーから容易に分離させることができるスライドファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)一対のファスナーテープの対向するテープ側縁部に沿って複数のファスナーエレメントを有するファスナーエレメント列が設けられる一対のファスナーストリンガーと、ファスナーエレメント列に沿って摺動可能に取り付けられ、ファスナーエレメントを噛合・分離させるスライダーと、を備え、一対のファスナーストリンガーにファスナーテープの幅方向外側に向かう横引き力を加えることにより、一方のファスナーストリンガーがスライダーから分離されるスライドファスナーであって、スライダーは、上下方向に離間して平行配置される上翼板及び下翼板と、上翼板及び下翼板を前端部において連結する案内柱と、上翼板の左右両側縁に沿って下方に向けて突設される上側フランジと、下翼板の左右両側縁に沿って上方に向けて突設される下側フランジと、上翼板の上面に設けられる引手取付部と、を有する胴体と、引手取付部に対して回動自在に取り付けられる引手と、を備え、胴体の幅方向一方側の上側及び下側フランジの幅方向内側面を、幅方向内側から外側に向かうに従って次第に肉厚が大きくなる傾斜面にそれぞれ形成し、前記胴体の幅方向一方側の前記上側及び下側フランジ間の間隙の上下方向寸法は、前記胴体の幅方向他方側の上側及び下側フランジ間の間隙の上下方向寸法より大きく、前記横引き力が加えられた際に、前記ファスナーエレメントが前記傾斜面に当接し、前記上側及び下側フランジの間隔を押し広げることにより、前記一方の前記ファスナーストリンガーが前記スライダーから分離されることを特徴とするスライドファスナー。
(2)胴体の幅方向他方側の上側及び下側フランジの幅方向内側面は、上翼板及び下翼板の上下方向内側面に対して垂直方向に延びる垂直面を有することを特徴とする(1)に記載のスライドファスナー。
(3)傾斜面は、胴体の肩口側に形成される前部傾斜面、及び胴体の後口側に形成される後部傾斜面を有し、前部傾斜面の傾斜角度は、後部傾斜面の傾斜角度より小さいことを特徴とする(1)又は(2)に記載のスライドファスナー。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスライドファスナーによれば、胴体の幅方向一方側の上側及び下側フランジの幅方向内側面を、幅方向内側から外側に向かうに従って次第に肉厚が大きくなる傾斜面にそれぞれ形成するとともに、前記胴体の幅方向一方側の前記上側及び下側フランジ間の間隙の上下方向寸法は、前記胴体の幅方向他方側の上側及び下側フランジ間の間隙の上下方向寸法より大きいため、分離側のファスナーストリンガーのファスナーエレメントが上側及び下側フランジの傾斜面に当接して、横引き力が傾斜面を介して上翼板及び下翼板に効率よく伝達される。これにより、上側及び下側フランジ間の間隙を容易に押し広げることができるので、簡素な構造で、分離側のファスナーストリンガーをスライダーから容易に分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るスライドファスナーの一実施形態を説明する表面図である。
図2図1に示すスライダーの斜視図である。
図3図2に示すスライダーの平面図である。
図4図2に示すスライダーを後口側から見た後面図である。
図5図3のA−A線断面図である。
図6】上翼板を切り欠いた状態のスライドファスナーの拡大表面図である。
図7図6に示すスライドファスナーに横引き力が加わった状態を説明する拡大表面図である。
図8図7に示す分離側ファスナーストリンガーのエレメントがスライダーから抜け出し始めた状態を説明する拡大表面図である。
図9図8に示すエレメントがスライダーから更に抜け出した状態を説明する拡大表面図である。
図10図9に示すエレメントがスライダーから完全に抜け出した状態を説明する拡大表面図である。
図11】分離側ファスナーストリンガーのエレメントがスライダーのフランジの前部傾斜面に接した状態を説明する部分断面図である。
図12図11に示すエレメントが前部傾斜面を押しながら前部傾斜面に乗り上がり、上側及び下側フランジ間の間隙を押し広げる状態を説明する部分断面図である。
図13図12に示すエレメントが前部傾斜面を乗り越えて、スライダーから抜け出す状態を説明する部分断面図である。
図14】分離側ファスナーストリンガーのエレメントがスライダーのフランジの後部傾斜面に接した状態を説明する部分断面図である。
図15図14に示すエレメントが後部傾斜面を押しながら後部傾斜面に乗り上がり、上側及び下側フランジ間の間隙を押し広げる状態を説明する部分断面図である。
図16図15に示すエレメントが後部傾斜面を乗り越えて、スライダーから抜け出す状態を説明する部分断面図である。
図17】本発明に係るスライドファスナーの変形例を説明する図10に対応する拡大表面図である。
図18】本発明を逆開き具を有するスライドファスナーに適用した場合を説明する上翼板を切り欠いた状態の拡大表面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るスライドファスナーの一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以後の説明において、ファスナーテープに関しては、表側とは図1の紙面に対して手前側、裏側とは図1の紙面に対して奥側、上側とは図1の紙面に対して上側、下側とは図1の紙面に対して下側、左側とは図1の紙面に対して左側、右側とは図1の紙面に対して右側とし、スライダーに関しては、上側とは図1の紙面に対して手前側、下側とは図1の紙面に対して奥側、前側とは図1の紙面に対して上側、後側とは図1の紙面に対して下側、左側とは図1の紙面に対して左側、右側とは図1の紙面に対して右側とする。また、ファスナーテープ及びスライダーの左右方向は幅方向とも言う。また、ファスナーテープの上下方向は長さ方向とも言う。
【0010】
本実施形態のスライドファスナー10は、図1及び図6に示すように、左右一対のファスナーテープ20の対向するテープ側縁部20aに沿って複数のファスナーエレメント31を有するファスナーエレメント列30が設けられる左右一対のファスナーストリンガー11L,11Rと、ファスナーエレメント列30に沿って摺動可能に取り付けられ、ファスナーエレメント31を噛合・分離させるスライダー40と、左右一対のファスナーテープ20のテープ側縁部20aの上端部にそれぞれ形成される上止部12と、左右一対のファスナーテープ20のテープ側縁部20aの下端部に形成される開き具13と、を備える。
【0011】
開き具13は、右側のファスナーテープ20のテープ側縁部20aの下端部に形成される箱棒14及び箱体15と、左側のファスナーテープ20のテープ側縁部20aの下端部に形成され、箱体15に挿入可能な蝶棒16と、を備える。また、本実施形態では、蝶棒16が設けられる左側のファスナーストリンガー11Lがスライダー40から分離可能な分離側ファスナーストリンガーであり、箱棒14及び箱体15が設けられる右側のファスナーストリンガー11Rがスライダー40から分離不能な固定側ファスナーストリンガーである。
【0012】
ファスナーエレメント列30は、複数のファスナーエレメント31から構成されており、このファスナーエレメント31は、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂を用いて、ファスナーテープ20のテープ側縁部20aに射出成形されている。
【0013】
スライダー40は、図2図6に示すように、自動停止機能付きのスライダーであり、胴体50、引手60、停止爪体70、及び引手保持カバー80を備えている。
【0014】
胴体50は、上下方向に離間して平行配置される上翼板51及び下翼板52と、上翼板51及び下翼板52を前端部且つ幅方向中央部において連結する案内柱53と、上翼板51の左右両側縁に沿って下方に向けて突設される上側フランジ54aと、下翼板52の左右両側縁に沿って上方に向けて突設される下側フランジ54bと、を備える。これにより、胴体50の前部には案内柱53により分離された左右の肩口55が形成され、胴体50の後部には後口56が形成される。そして、上翼板51と下翼板52との間には、左右の肩口55と後口56とを連通する略Y字状のエレメント案内路57が形成され、このエレメント案内路57は、左右一対のファスナーエレメント列30を挿通させる通路を構成する。
【0015】
また、図4に示すように、胴体50の左側の上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙の上下方向寸法S1は、右側の上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙の上下方向寸法S2より大きく設定されている。これにより、左側のファスナーストリンガー11Lがスライダー40から分離可能となる。
【0016】
また、上翼板51の上面の案内柱53より右側(固定側ファスナーストリンガー11R側)には、引手保持カバー80を取り付けるための前部取付柱58F及び後部取付柱58Rが前後方向に並んで立設されている。そして、前部取付柱58Fと後部取付柱58Rとの間には、引手60のリンク部61及び停止爪体70が収容され、前部取付柱58F及び後部取付柱58Rには、引手保持カバー80が被せられると共にかしめにより固定されている。また、図5に示すように、上翼板51には、停止爪体70の停止爪71を挿入させるための爪挿入穴51bが形成されている。なお、本実施形態では、前部取付柱58F、後部取付柱58R、停止爪体70、及び引手保持カバー80により引手取付部が構成される。
【0017】
また、上記したように、前部取付柱58F及び後部取付柱58Rが上翼板51の案内柱53より右側に形成されているので、案内柱53より左側の上翼板51の剛性が僅かに低減され、撓み易くなっている。これにより、左側の上翼板51を容易に撓ませることが可能になるので、分離側ファスナーストリンガー11Lをスライダー40から容易に分離させることができる。
【0018】
さらに、前部取付柱58F及び後部取付柱58Rと共に停止爪体70も上翼板51の案内柱53より右側に配置されているので、図6に示すように、停止爪体70の停止爪71が固定側ファスナーストリンガー11R側のファスナーエレメント31間に挿入される。これにより、分離側ファスナーストリンガー11L側のファスナーエレメント31に停止爪71が接触することがないので、分離側ファスナーストリンガー11Lをスライダー40からスムーズに分離させることができる。
【0019】
また、図2図3、及び図6に示すように、上翼板51及び下翼板52に、案内柱53の左側の前部側面53aから幅方向外側(分離側ファスナーストリンガー11L側)に向かって延びる切欠部51a,52aがそれぞれ形成されている。このため、胴体50の左側の上側及び下側フランジ54a,54bの前後方向長さが、胴体50の右側の上側及び下側フランジ54a,54bより短くなるので、案内柱53より左側の上翼板51及び下翼板52の剛性が僅かに低減され、撓み易くなっている。これにより、左側の上翼板51及び下翼板52を容易に撓ませることが可能になるので、分離側ファスナーストリンガー11Lをスライダー40から容易に分離させることができる。
【0020】
また、切欠部51a,52aは、案内柱53の左側の前部側面53aと後部側面53bの境界から幅方向外方且つ後方に斜めに延びた後、中程で屈曲し幅方向外方且つ前方に斜めに延びるように形成される。
【0021】
また、図2及び図4に示すように、胴体50の左側の上側及び下側フランジ54a,54bの幅方向内側面を、幅方向内側から外側に向かうに従って次第に肉厚が大きくなる傾斜面59a,59bにそれぞれ形成している。さらに、傾斜面59a,59bは、図11及び図14に示すように、胴体50の肩口55側に形成される前部傾斜面59af,59bf、及び胴体50の後口56側に形成される後部傾斜面59ar,59brをそれぞれ有し、前部傾斜面59af,59bfの傾斜角度αは、後部傾斜面59ar,59brの傾斜角度βより小さく設定されている。また、本実施形態では、傾斜角度αは30°、傾斜角度βは45°に設定されている。なお、傾斜角度α,βは、α<βの条件を満たしていれば任意であり、好ましくは、傾斜角度αは20°〜40°、傾斜角度βは30°〜60°である。また、傾斜角度α,βを同一に設定して1つ傾斜面としてもよい。
【0022】
このため、図11及び図14に示すように、横引き力が加えられた分離側ファスナーストリンガー11Lのファスナーエレメント31の上下の角部が上側及び下側フランジ54a,54bの前部傾斜面59af,59bf及び後部傾斜面59ar,59brにそれぞれ当接するので、横引き力が前部傾斜面59af,59bf及び後部傾斜面59ar,59brを介して上翼板51及び下翼板52に効率よく伝達される。これにより、図12図13図15、及び図16に示すように、上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙を容易に押し広げることが可能になるので、分離側ファスナーストリンガー11Lをスライダー40から容易に分離させることができる。
【0023】
また、前部傾斜面59af,59bfの傾斜角度αが、後部傾斜面59ar,59brの傾斜角度βより小さく設定されているので、前部傾斜面59af,59bfの方が後部傾斜面59ar,59brよりファスナーエレメント31が乗り越え易くなっている。また、前部傾斜面59af,59bfを小さい角度の傾斜角度αに設定し、後部傾斜面59ar,59brを大きい角度の傾斜角度βに設定したので、前部傾斜面59af,59bfにおいてはファスナーエレメント31が抜け出し易く、後部傾斜面59ar,59brにおいてはファスナーエレメント31が抜け出し難くなる。このため、分離側ファスナーストリンガー11Lに少しの横引き力が加わったとしても、大きい角度の後部傾斜面59ar,59brによりファスナーエレメント31の不用意な抜け出しが防止される。これにより、分離側ファスナーストリンガー11Lをスライダー40から分離する機能とスライドファスナーとしての機能とを両立することが可能となる。
【0024】
また、図4に示すように、胴体50の右側の上側及び下側フランジ54a,54bの幅方向内側面は、上翼板51及び下翼板52の上下方向内側面に対して垂直方向に延びる垂直面59c,59dをそれぞれ有する。
【0025】
このように構成されたスライドファスナー10では、左右一対のファスナーストリンガー11L,11Rに幅方向外側に向かう横引き力が加えられることにより(図7参照)、分離側ファスナーストリンガー11Lのエレメント案内路57内の最も肩口55側に位置し噛合していない第1ファスナーエレメント31a(ファスナーエレメント31)が、上側及び下側フランジ54a,54bの前部傾斜面59af,59bfにそれぞれ当接し(図11参照)、上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙を押し広げると共に、上翼板51及び下翼板52の案内柱53より左側の部分を撓ませて(図8図9図12図13参照)、スライダー40から抜け出す。次いで、第1ファスナーエレメント31aの次の第2ファスナーエレメント31bは、第1ファスナーエレメント31aと同様にしてスライダー40から抜け出す。次いで、第2ファスナーエレメント31bの次の第3ファスナーエレメント31cは、上側及び下側フランジ54a,54bの後部傾斜面59ar,59brにそれぞれ当接し(図14参照)、上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙を押し広げると共に、上翼板51及び下翼板52の案内柱53より左側の部分を撓ませて(図15図16参照)、スライダー40から抜け出す。従って、第1〜第3ファスナーエレメント31a〜31cが上側及び下側フランジ54a,54bを乗り越え、スライダー40から順次抜け出すことにより、分離側ファスナーストリンガー11Lがスライダー40から分離される(図10参照)。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のスライドファスナー10によれば、胴体50の左側の上側及び下側フランジ54a,54bの幅方向内側面を、幅方向内側から外側に向かうに従って次第に肉厚が大きくなる傾斜面59a,59bにそれぞれ形成するため、分離側ファスナーストリンガー11Lのファスナーエレメント31が上側及び下側フランジ54a,54bの傾斜面59a,59bに当接して、横引き力が傾斜面59a,59bを介して上翼板51及び下翼板52に効率よく伝達される。これにより、上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙を容易に押し広げることができるので、簡素な構造で、分離側ファスナーストリンガー11Lをスライダー40から容易に分離させることができる。
【0027】
なお、本実施形態の変形例として、図17に示すように、上翼板51及び下翼板52に切欠部51a,52aを形成していなくてもよい。この場合、胴体50の左側の上側及び下側フランジ54a,54bの前後方向長さは、胴体50の右側の上側及び下側フランジ54a,54bと略同一となる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、自動停止機能付きのスライダーに本発明を適用した場合を例示したが、これに限定されず、前部取付柱58F及び後部取付柱58Rの部分に引手60を取り付けるための引手取付柱を代わりに立設した自動停止機能の付いていないスライダーに本発明を適用してもよい。
【0029】
また、本実施形態では、左右一対のファスナーテープ20の下端部に開き具13が設けられているが、これに限定されず、図18に示すように、開き具13の代わりに逆開き具90を設けてもよい。この逆開き具90は、上記スライダー40と同一構成の上側スライダー91と、上側スライダー91の下側に後口56を対向させて設けられる下側スライダー92と、右側のファスナーテープ20のテープ側縁部20aの下端部に形成される箱棒93と、左側のファスナーテープ20のテープ側縁部20aの下端部に形成され、上側及び下側スライダー91,92内に挿入可能な蝶棒94と、を備える。
【0030】
そして、この逆開き具90では、上側スライダー91を上方(下側スライダー92から離れる方向)に移動すると、分離状態の左右一対のファスナーエレメント列30が噛合し、下方(下側スライダー92に接近する方向)に移動すると、噛合状態の左右一対のファスナーエレメント列30が分離する。また、下側スライダー92を上方(上側スライダー91に接近する方向)に移動すると、噛合状態の左右一対のファスナーエレメント列30が分離し、下方(上側スライダー91から離れる方向)に移動すると、分離状態の左右一対のファスナーエレメント列30が噛合する。
【0031】
下側スライダー92は、下側スライダー92の前後方向の前側を案内柱53側としたとき、上側スライダー91と比較して、切欠部51a,52a、爪挿入穴51b、前部及び後部取付柱58F,58R、前後方向長さの短い上側及び下側フランジ54a,54b、及び傾斜面59a,59bなどが左右逆側に配置されている。
【0032】
また、この逆開き具90では、上側及び下側スライダー91,92の両方ともに、蝶棒94が挿入される側(分離側ファスナーストリンガー11L側)の上側及び下側フランジ54a,54b間の間隙からファスナーエレメント31が分離可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 スライドファスナー
11L ファスナーストリンガー(分離側ファスナーストリンガー)
11R ファスナーストリンガー(固定側ファスナーストリンガー)
20 ファスナーテープ
20a テープ側縁部
30 ファスナーエレメント列
31 ファスナーエレメント
40 スライダー
50 胴体
51 上翼板
51a 切欠部
52 下翼板
52a 切欠部
53 案内柱
53a 前部側面
54a 上側フランジ
54b 下側フランジ
58F 前部取付柱(引手取付部)
58R 後部取付柱(引手取付部)
59a 傾斜面
59af 前部傾斜面
59ar 後部傾斜面
59b 傾斜面
59bf 前部傾斜面
59br 後部傾斜面
59c 垂直面
59d 垂直面
60 引手
70 停止爪体(引手取付部)
80 引手保持カバー(引手取付部)
α 前部傾斜面の傾斜角度
β 後部傾斜面の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
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