(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705228
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】広色域のためのRGBプライマリ生成システム及び方法、並びにRGBプライマリを用いたカラー符号化システム
(51)【国際特許分類】
H04N 9/64 20060101AFI20150402BHJP
【FI】
H04N9/64 F
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-529679(P2012-529679)
(86)(22)【出願日】2010年9月17日
(65)【公表番号】特表2013-505623(P2013-505623A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】KR2010006381
(87)【国際公開番号】WO2011034366
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年8月20日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0089049
(32)【優先日】2009年9月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン−テ
(72)【発明者】
【氏名】チェー,ソ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ホ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ドゥ−シク
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジ−ヨン
【審査官】
大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−200902(JP,A)
【文献】
特表2009−506358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00−1/40
G06T 3/00−5/50
G06T 9/00−9/40
G09G 5/00−5/36
G09G 5/377−5/42
H04N 1/40−1/409
H04N 1/46−1/48
H04N 1/52
H04N 1/60
H04N 9/44−9/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の色空間におけるデータ集合を用いてリファレンス色域の色域境界を設定する色域境界設定部と、
前記リファレンス色域とRGBプライマリに基づいたターゲット色域を用いて前記ターゲット色域の色域範囲が色域範囲閾値を満足するか否かを判断する色域範囲判断部と、
前記色域範囲が前記色域範囲閾値を満足すれば、前記ターゲット色域と前記リファレンス色域を用いて前記ターゲット色域の色域効率が最大であるか否かを判断する色域効率判断部と、
前記色域範囲判断部及び前記色域効率判断部のうち少なくとも一つの出力に基づいて、前記RGBプライマリを設定するRGBプライマリ設定部と、
を備え、
前記RGBプライマリは、前記特定の色空間に位置する各R(Red)、G(Green)、B(Blue)を意味し、
前記データ集合は、オブジェクトカラー及びディスプレイカラーのうち少なくとも一つを含み、
前記色域範囲判断部は、前記リファレンス色域と前記ターゲット色域との間にオーバラップされる色域範囲が前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断し、
前記色域効率は、
前記ターゲット色域が前記リファレンス色域より大きい場合は、
前記リファレンス色域に対する前記ターゲット色域の比であり、
その他の場合は、
前記ターゲット色域に対する前記リファレンス色域の比であることを特徴とするRGBプライマリ生成システム。
【請求項2】
前記色域境界設定部は、CIE−u’v’の平面上に位置するu’v’データ集合に対してv’軸に特定間隔をもって色域を分類し、v’軸の全ての間隔でu’値の最大値と最小値を連結して色域境界を設定することを特徴とする請求項1に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項3】
前記設定されたRGBプライマリが同一の色調として認知される軌跡を維持するための固有色調範囲に属するか否かを判断する固有色調判断部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項4】
前記固有色調判断部は、前記設定されたRGBプライマリに対してRedはMagentaとYellowとの間に属し、GreenはYellowとCyanとの間に属し、BlueはCyanとMagentaに属するか否かを判断することを特徴とする請求項3に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項5】
前記色域効率判断部は、前記ターゲット色域の色域効率が最大でありながら量子化の誤差が最小であるか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項6】
前記RGBプライマリがリアルカラーであるかを判断して前記色域範囲閾値を調整するRGB判断部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項7】
前記RGB判断部は、前記RGBプライマリがリアルカラーではない場合、前記色域範囲閾値を減少させることを特徴とする請求項6に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項8】
特定の色空間におけるデータ集合を用いてリファレンス色域の色域境界を設定するステップと、
前記リファレンス色域とRGBプライマリに基づいたターゲット色域を用いて前記ターゲット色域の色域範囲が色域範囲閾値を満足するか否かを判断するステップと、
前記色域範囲が前記色域範囲閾値を満足すれば、前記ターゲット色域と前記リファレンス色域を用いて前記ターゲット色域の色域効率が最大であるか否かを判断するステップと、
前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断するステップ及び前記色域効率が最大であるか否かを判断するステップのうち少なくとも一つの結果に基づいて、前記RGBプライマリを設定するRGBプライマリ設定ステップと、
を含み、
前記RGBプライマリは、前記特定の色空間に位置する各R(Red)、G(Green)、B(Blue)を意味し、
前記データ集合は、オブジェクトカラー及びディスプレイカラーのうち少なくとも一つを含み、
前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断するステップは、前記リファレンス色域と前記ターゲット色域との間にオーバラップされる色域範囲が前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断し、
前記色域効率は、
前記ターゲット色域が前記リファレンス色域より大きい場合は、
前記リファレンス色域に対する前記ターゲット色域の比であり、
その他の場合は、
前記ターゲット色域に対する前記リファレンス色域の比であることを特徴とする
RGBプライマリ生成方法。
【請求項9】
前記設定されたRGBプライマリが同一の色調として認知される軌跡を維持するための固有色調範囲に属するか否かを判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のRGBプライマリ生成方法。
【請求項10】
前記ターゲット色域の色域効率が最大であるか否かを判断するステップは、前記ターゲット色域の色域効率が最大でありながら量子化の誤差が最小であるか否かを判断することを特徴とする請求項8に記載のRGBプライマリ生成方法。
【請求項11】
前記RGBプライマリがリアルカラーであるかを判断して前記色域範囲閾値を調整するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のRGBプライマリ生成方法。
【請求項12】
前記RGBプライマリがリアルカラーであるかを判断して前記色域範囲閾値を調整するステップは、前記RGBプライマリがリアルカラーではない場合、前記色域範囲閾値を減少させることを特徴とする請求項11に記載のRGBプライマリ生成方法。
【請求項13】
請求項8〜請求項12のいずれか一項の方法を実行するためのプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータで読み出し可能な記録媒体。
【請求項14】
前記RGBプライマリそれぞれの色空間座標集合が{R、G、B}={(u1、v1)、(u2、v2)、(u3、v3)}である場合、{R、G、B}={(0.5399、0.5190)、(0.035、0.5859)、(0.165、0.1182)}である部分集合を含むことを特徴とする請求項1に記載のRGBプライマリ生成システム。
【請求項15】
前記設定されたRGBプライマリが同一の色調として認知される軌跡を維持するための固有色調範囲に属するか否かを判断する固有色調判断部と、
前記RGBプライマリがリアルカラーであるかを判断して前記色域範囲閾値を調整するRGB判断部と、
を備え、
前記RGBプライマリ設定部は、さらに、前記固有色調判断部及び前記RGB判断部の出力に基づいて、前記RGBプライマリを設定することを特徴とする請求項1に記載のRGBプライマリ生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下に開示する実施例に示すように、広色域のためのRGBプライマリ信号生成システム及び方法に関し、固有色調、色域範囲、色域効率を用いて広色域のためのRGBプライマリ生成システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の映像キャプチャー装置とビデオ装置に含まれるカラー符号化ではsRGBの色空間が用いられている。sRGBの色空間が整えられた当時にはアナログフィルムカメラ、CRTテレビ、モニターがディスプレイのほとんどを占めていることから色域の大きさがそれほど重要ではなかった。しかし、現在にはほとんどのビデオ入出力装置がデジタル化され、高性能のDSLRカメラはsRGBよりも広い色域をキャプチャーすることができ、ディスプレイ装置は広色域を出力可能である。しかし、今でもビデオ入出力装置のカラー符号化はsRGBになっているため、入力と出力の全てで広色域データはクリッピング(clipping)されて取得かつ出力されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、様々な条件が満足されるRGBプライマリを設定することによって、従来のsRGB色域が表現できなかった自然色を表現できる広色域が取得され得る装置及び方法を提供する。
【0004】
本発明は、色域効率が最大で量子化の効率は最小の色域を示すRGBプライマリを設定することによって、映像を表現するときグラデーション(gradiation)が滑らかに表現できる装置及び方法を提供する。
【0005】
本発明は、また固有色調を示すConstant Hueを満足するようにRGBプライマリを設定することによって、カラーのバランスを維持できる装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
RGBプライマリ生成システムは、
特定の色空間におけるデータ集合を用いてリファレンス色域の色域境界を設定する色域境界設定部と、
前記リファレンス色域
とRGBプライマリに基づいたターゲット色域を用いて前記ターゲット色域の色域範囲が色域範囲閾値を満足するか否かを判断する色域範囲判断部と、
前記色域範囲が前記色域範囲閾値を満足すれば、
前記ターゲット色域と前記リファレンス色域を用いて前記ターゲット色域の色域効率が最大であるか否かを判断する色域効率判断部と、
前記色域範囲判断部及び前記色域効率判断部のうち少なくとも一つの出力に基づいて、前記RGBプライマリを設定するRGBプライマリ設定部と、
を備え、
前記RGBプライマリは、前記特定の色空間に位置する各R(Red)、G(Green)、B(Blue)を意味し、
前記データ集合は、オブジェクトカラー及びディスプレイカラーのうち少なくとも一つを含み、
前記色域範囲判断部は、前記リファレンス色域と前記ターゲット色域との間にオーバラップされる色域範囲が前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断し、
前記色域効率は、
前記ターゲット色域が前記リファレンス色域より大きい場合は、
前記リファレンス色域に対する前記ターゲット色域の比であり、
その他の場合は、
前記ターゲット色域に対する前記リファレンス色域の比であることを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システムは、前記設定されたRGBプライマリが同一の色調として認知される軌跡を維持するための固有色調範囲に属するか否かを判断する固有色調判断部をさらに備えてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成方法は、
特定の色空間におけるデータ集合を用いてリファレンス色域の色域境界を設定するステップと、
前記リファレンス色域とRGBプライマリに基づいたターゲット色域を用いて前記ターゲット色域の色域範囲が色域範囲閾値を満足するか否かを判断するステップと、
前記色域範囲が前記色域範囲閾値を満足すれば、
前記ターゲット色域と前記リファレンス色域を用いて前記ターゲット色域の色域効率が最大であるか否かを判断するステップと、
前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断するステップ及び前記色域効率が最大であるか否かを判断するステップのうち少なくとも一つの結果に基づいて、前記RGBプライマリを設定するRGBプライマリ設定ステップと、
を含み、
前記RGBプライマリは、前記特定の色空間に位置する各R(Red)、G(Green)、B(Blue)を意味し、
前記データ集合は、オブジェクトカラー及びディスプレイカラーのうち少なくとも一つを含み、
前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断するステップは、前記リファレンス色域と前記ターゲット色域との間にオーバラップされる色域範囲が前記色域範囲閾値を満足するか否かを判断し、
前記色域効率は、
前記ターゲット色域が前記リファレンス色域より大きい場合は、
前記リファレンス色域に対する前記ターゲット色域の比であり、
その他の場合は、
前記ターゲット色域に対する前記リファレンス色域の比であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な条件が満足されるRGBプライマリを設定することによって、従来のsRGB色域が表現できなかった自然色を表現できる広色域を取得することができる。
【0012】
本発明によれば、色域効率が最大で量子化の効率が最小の色域を示すRGBプライマリを設定することによって、映像を表現するときグラデーションを滑らかに表現することができる。
【0013】
本発明によれば、固有色調を示すConstant Hueを満足するようにRGBプライマリを設定することによって、カラーのバランスを維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システム100の動作を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システムの細部構成を示すブロックダイアグラムである。
【
図3】CIE−u’v’の色空間でオブジェクトとディスプレイ色域を比較した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るデータ集合に対して色域境界を設定する過程を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態によって設定されたRGBプライマリがConstant Hueを満足するか否かを判断するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るリファレンス色域とターゲット色域を比較した結果を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態によって設定されたRGBプライマリを用いたカラー符号化システムの一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態によってBT.709RGBと互換可能なカラー符号化システムの一例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るRGBプライマリを設定する過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付された図面に記載された内容を参照して本発明に係る実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明が実施形態によって制限されたり限定されることはない。各図面に提示された同一の参照符号は同一の部材を示す。本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成方法はRGBプライマリ生成システムによって行われてもよい。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システムの動作を説明するための図である。
【0017】
本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システム100は、リファレンス色域について更に広いターゲット色域を設定する。一例として、リファレンス色域はsRGB色域であってもよく、ターゲット色域はsRGB色域の外部に存在するカラーを表現してもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、RGBプライマリ生成システム100は、(1)リファレンス色域に対する色域範囲は最大であり、(2)量子化の誤差は最小で色域効率は最大であり、(3)Constant Hueの範囲を満足するRGBプライマリを設定する。ここで、RGBプライマリは、特定の色空間に位置する各R(Red)、G(Green)、B(Blue)を意味する。
【0019】
すなわち、RGBプライマリから生成される色域の大きさは大きいほど好ましいが、デジタル信号を表現するためのビット数は限定されているため、量子化の誤差が増加してしまう恐れがある。また、sRGB色域のように大きさが小さい色域についてRGBプライマリを設定する場合、量子化の誤差を減らすことはできるものの、自然界に存在するオブジェクトカラーを表現できない状況が発生し得る。そして、RGBプライマリがCIE−u’v色空間で特定の基準に適して位置しない場合、カラーのバランスが取れないことから色を充分に表現することができない。したがって、本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システム100は、前記条件を満足するようにRGBプライマリを設定する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システムの細部構成を示すブロックダイアグラムである。
図2を参考すれば、RGBプライマリ生成システム100は、RGBプライマリ設定部201、色域境界設定部202、固有色調判断部203、色域範囲判断部204、色域効率判断部205、及びRGB判断部206を備える。
【0021】
RGBプライマリ設定部201は、特定の色空間に対して初期RGBプライマリを設定する。設定されたRGBプライマリは予め設定された条件が満足される範囲で変更され得る。
【0022】
色域境界設定部202は、特定の色空間におけるデータ集合(data set)を用いてリファレンス色域の色域境界を設定する。ここで、データ集合は、オブジェクトカラーまたはディスプレイカラーの少なくとも1つを含んでもよい。一例として、色域境界設定部202は、ポインタ(pointer)、SOCS、ディスプレイ(LCD、OLEDなど)などのデータサンプルからCIE−u’v’の色空間のデータ集合を設定する。そして、色域境界設定部202はデータ集合から色域境界を設定する。色域境界を設定する具体的な過程については
図4を参照して説明する。
【0023】
固有色調判断部203は、RGBプライマリが同一の色調として認知される軌跡を維持するための固有色調範囲に属するか否かを判断する。ここで、同一の色調として認知される軌跡はConstant Hue軌跡に定義され得る。Constant HueはR(Red)、G(Green)、B(Blue)、C(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)の色調に対して定義され得る。
【0024】
一例として、固有色調判断部203は、下記の式(1)によってRGBプライマリがConstant Hue軌跡を満足するかを判断する。
【0025】
【数1】
すなわち、固有色調判断部203は、RGBプライマリに対してRedはMagentaとYellowとの間に属し、GreenはYellowとCyanとの間に属し、BlueはCyanとMagentaに属するか否かを判断する。もし、初期に設定されたRGBプライマリがConstant Hueを満足しない場合、RGBプライマリ設定部201は再びRGBプライマリを再設定する。RGBプライマリがConstant Hueを満足する場合、色がわい曲されない自然カラーを表現することができる。
【0026】
色域範囲判断部204は、リファレンス色域とRGBプライマリに基づいたターゲット色域を用いてターゲット色域の色域範囲(gamut coverage)が色域範囲閾値を満足するか否かを判断する。ここで、色域範囲は、RGBプライマリによって決定されたターゲット色域が実際のオブジェクトカラーまたはディスプレイカラーのリファレンス色域を含むことができる程度を意味する。
【0027】
具体的に、色域範囲判断部204は、リファレンス色域とターゲット色域との間にオーバラップされる色域範囲が色域範囲閾値を超過するか否かを判断する。一例として、色域範囲判断部204は下記の式(2)によって色域範囲を算出してもよい。
【0028】
【数2】
もし、色域範囲が色域範囲閾値を超過しない場合、RGBプライマリ設定部201は再びRGBプライマリを再設定する。
【0029】
色域効率判断部205は色域範囲が色域範囲閾値を満足すれば、ターゲット色域とリファレンス色域を用いてターゲット色域の色域効率が最大であるかを判断する。一例として、色域効率判断部205は、ターゲット色域の色域効率が最大で量子化の誤差が最小であるかを判断する。
【0030】
一例として、色域効率判断部205は下記の式(3)によって色域効率が最大であるかを判断する。
【0031】
【数3】
前述したように、色域範囲は大きいであろうが、色域範囲が無理に大きく設定されれば、色域効率が減少して最大量子化の誤差(Max.Quantization Interval)が増加する。言い換えれば、RGBプライマリによって色域を大きく設定すれば、既存のsRGB色域他の色は表現できるものの、最大量子化の誤差が大きくなって、そのグラデーションを滑らかに表現することができず段差が発生し得る。ここで、最大量子化の誤差は、色空間の全てのコード値の1差異の組合せに対する色差値のうち最大値を意味する。最大量子化の誤差はターゲット色域の大きさが大きいほど比例して増加し、最大量子化の誤差が小さければディスプレイに適用される映像のグラデーションは滑らかに表現され得る。
【0032】
RGB判断部206は、RGBプライマリがリアルカラーであるかを判断して色域範囲閾値を調整する。もし、RGBプライマリがリアルカラーではない場合、色域範囲閾値を減少させる。減少された色域範囲閾値は色域範囲判断部204に適用されてもよい。
【0033】
図3は、CIE−u’v’の色空間でオブジェクトとディスプレイ色域とを比較した図である。
図3に示す灰色に表現された点はポインタとSCOCSデータを示し、四角形の三点によって表現される色域はオブジェクトであるBT.709、ディスプレイであるAMOLED、LCDの色域を意味する。本発明の一実施形態に係るリファレンス色域は、オブジェクトカラーまたはディスプレイカラーを含む色域であってもよい。システムの構成によってリファレンス色域はオブジェクトカラーのみを含むか、他のディスプレイ色域が加えられてもよい。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係るデータ集合に対して色域境界を設定する過程を説明するための図である。
【0035】
色域境界設定部202は、特定の色空間におけるデータ集合(data set)を用いてリファレンス色域の色域境界を設定する。一例として、CIE−u’v’の平面上に位置するu’v’データ集合に対して、v’軸に特定間隔をもって色域を分類し、v’軸の全ての間隔でu’値の最大値と最小値を連結して色域境界を設定する。
【0036】
CIE−u’v’の平面上に位置するu’v’データ集合401に対して色域境界設定部202はv’軸に特定間隔をもって色域を分類してもよい。ここで、間隔が小さいほど密度が大きい色域境界が設定され、間隔が大きいほど密度が小さい色域境界が設定される。そして、色域境界設定部202はv’軸方向に分けられたデータに対してu’値の最大値と最小値を求める。これによって、色域境界設定部202は、v’値の全ての区間に対して求めたu’値の最大値と最小値を連結して色域境界を設定する。
【0037】
図5は、本発明の一実施形態によって設定されたRGBプライマリがConstant Hueを満足するかを判断するための図である。
図5を参考にすれば、RGBプライマリ信号を設定するためのR、G、B、C、M、Yの色相に対するConstant Hueの軌跡を示している。前述したように、Constant Hueとは、R、G、B、C、M、Yプライマリのそれぞれに対する同一の色調として認知される地点を連結した軌跡501、502、503、504、505、506を意味する。ここで、RGBプライマリ設定部202によって設定されたRGBプライマリは、Constant Hueの軌跡を満足しなければならない。もし、RGBプライマリがConstant Hueを満足しなければ、カラーバランスを取ることができない。
【0038】
図5に示すように、Red502はMagenta506とYellow504との間に位置し、Green501はYellow504とCyan505の色の範囲、Blue503はCyan505とMagenta506との間に属する。
【0039】
図6は、本発明の一実施形態に係るリファレンス色域とターゲット色域とを比較した結果を示す図である。
【0040】
前述したように、本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成システム100は、オブジェクトカラーとディスプレイカラーに対するリファレンス色域602について更に広いターゲット色域を設定するためのRGBプライマリ601を設定する。ここで、RGBプライマリ生成システム100は、RGBプライマリによるターゲット色域がリファレンス色域を最大に含むようRGBプライマリを設定する。ただし、この場合、ターゲット色域は色域効率が最大であり、同時に量子化の誤差が最小でなければならない。また、ターゲット色域に対するRGBプライマリはConstant Hueを満足し、リアルカラーでなければならない。
【0041】
本発明の一実施形態によって設定されたRGBプライマリはCIE−u’v’の色空間で下記の表1のような値を有してもよい。しかし、これらは単なる一例に過ぎないもこれに限定するものではない。
【0042】
【表1】
図7は、本発明の一実施形態によって設定されたRGBプライマリを用いたカラー符号化システムの一例を示す図である。
図7を参考にすれば、例えばエンコーダはBT.709Gamma(y=0.45)を用いて入力RGBであるRu、Gu、Bu信号を非成形信号であるRu’Gu’Bu’信号を生成してもよい。そして、エンコーダは、本発明の一実施形態によって設定されたRGBプライマリに基づいたRGB−to−YCbCrマトリックスを用いて非成形信号であるRu’Gu‘Bu’信号をY’CbCr信号に変形してもよい。
【0043】
本発明の一実施形態に係るカラー符号化システムの場合、下記の表2により算出された結果を用いてもよい。ここで、Luma and colour−difference equationは本発明の一実施形態に係るRGBプライマリが適用された結果である。
【0044】
【表2】
デコーダはInverse−MatrixであるRGB−to−YCbCrを用いてY’CbCr信号からRu’Gu’Bu’信号を生成した後、ディスプレイに送信してもよい。ディスプレイは、エンコーダで用いられた同一のGamma値を用いてRu’Gu’Bu’信号を線形化して出力してもよい。
【0045】
図8は、本発明の一実施形態によってBT.709RGBと互換可能なカラー符号化システムの一例を示す図である。
【0046】
sRGB互換部はBT.709RGBとの互換のために
図7に示すデコーダの出力信号であるRu’Gu’Bu’の信号をBT.709Gamma(y=1/0.45)を用いて線形化し、RuGuBu信号を生成してもよい。そして、sRGB互換部は、RGB−XYZマトリックスを用いて線形化されたRuGuBu信号をXYZ信号に変換してもよい。その後、sRGB互換部は、XYZ−RGBマトリックスを用いてXYZ信号からRsuGsuBsu信号を生成し、BT.709Gammaを用いてRsu’Gsu’Bsu’の信号を生成してもよい。ここで、RGB信号は0よりも小さい負数値と1よりも大きい値が存在するクリッピングされない信号を意味する。ディスプレイはGammaを用いてRsu’Gsu’Bsu’信号を線形化してクリッピングした後RsGsBs信号を出力してもよい。
【0047】
図9は、本発明の一実施形態に係るRGBプライマリを設定する過程を示す図である。
【0048】
RGBプライマリ生成システム100は初期RGBプライマリを設定する(S901)。ここで、色域範囲閾値は100%に設定してもよい。
【0049】
RGBプライマリ生成システム100は、CIE−u’v’のデータ集合を設定する(S902)。ここで、CIE−u’v’のデータ集合はオブジェクトカラーまたはディスプレイカラーの少なくとも1つを含んでもよい。
【0050】
RGBプライマリ生成システム100は、CIE−u’v’におけるデータ集合を用いてリファレンス色域の色域境界を設定する(S903)。一例として、RGBプライマリ生成システム100は、CIE−u’v’の平面上に位置するu’v’のデータ集合に対してv’軸に特定の間隔をもって色域を分類し、v’軸の全ての間隔でu’値の最大値と最小値とを連結して色域境界を設定する。
【0051】
RGBプライマリ生成システム100は固有色調を設定する(S904)。ここで、固有色調は前述したR、G、B、C、M、Yの色相に対するConstant Hueを意味する。
【0052】
RGBプライマリ生成システム100は、RGBプライマリが同一の色調として認知される軌跡を維持するための固有色調範囲に属するか否かを判断する(S905)。一例として、RGBプライマリ生成システム100は、RGBプライマリに対してRedはMagentaとYellowとの間に属し、GreenはYellowとCyanとの間に属し、BlueはCyanとMagentaに属するかを判断する。もし、RGBプライマリが固有色調範囲に属しない場合、RGBプライマリ生成システム100はRGBプライマリを再設定する(S910)。
【0053】
RGBプライマリ生成システム100はターゲット色域の色域範囲を算出してもよい(S906)。色域範囲は、前記の式(2)によって算出されてもよい。
【0054】
RGBプライマリ生成システム100は、ターゲット色域の色域範囲が予め設定した色域範囲閾値(T)を満足するか否かを判断する(S907)。もし、色域範囲が色域範囲閾値を満足しない場合、RGBプライマリ生成システム100はRGBプライマリを再設定する(S910)。
【0055】
RGBプライマリ生成システム100はターゲット色域とリファレンス色域を用いてターゲット色域の色域効率を算出してもよい(S908)。色域効率を前記の式(3)によって算出されてもよい。
【0056】
RGBプライマリ生成システム100は、ターゲット色域の色域効率が最大であるかを判断する(S909)。ここで、RGBプライマリ生成システム100は、ターゲット色域の色域効率が最大で量子化の誤差が最小であるかを判断する。もし、ターゲット色域の色域効率が最大ではない場合、RGBプライマリ生成システム100はRGBプライマリを再設定する(S910)。
【0057】
RGBプライマリ生成システム100は、RGBプライマリがリアルカラーであるかを判断する(S911)。ここで、RGBプライマリがリアルカラーではない場合、RGBプライマリ生成システム100は色域範囲閾値を減少させる(S912)。
【0058】
図9で説明されていない部分は
図1〜
図8を参照して説明された事項を参考にされたい。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係るRGBプライマリ生成方法は、多様なコンピュータ手段を介して様々な処理を実行することができるプログラム命令の形態で実現され、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読取可能な媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などのうちの1つまたはその組合せを含んでもよい。媒体に記録されるプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計されて構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知のものであり、使用可能なものであってもよい。コンピュータ読取可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び磁気テープのような磁気媒体、CD−ROM、DVDのような光記録媒体、光ディスクのような光磁気媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれてもよい。プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コード(machine code)だけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行され得る高級言語コード(higher level code)を含む。上述したハードウェア装置は、本発明の動作を行うために1つ以上のソフトウェアのレイヤで動作するように構成されてもよい。
【0060】
上述したように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような実施形態から多様な修正及び変形が可能である。
【0061】
したがって、本発明の範囲は、開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲だけではなく特許請求の範囲と均等なものなどによって定められるものである。
【符号の説明】
【0062】
100 RGBプライマリ生成システム
201 RGBプライマリ設定部
202 色域境界設定部
203 固有色調判断部
204 色域範囲判断部
205 色域効率判断部
206 RGB判断部