(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5705237
(24)【登録日】2015年3月6日
(45)【発行日】2015年4月22日
(54)【発明の名称】非伸張性横糸で編んだ管状伸張性化ネット
(51)【国際特許分類】
B65D 65/04 20060101AFI20150402BHJP
A23L 1/317 20060101ALI20150402BHJP
【FI】
B65D65/04 A
A23L1/317 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-546500(P2012-546500)
(86)(22)【出願日】2010年12月31日
(65)【公表番号】特表2013-516363(P2013-516363A)
(43)【公表日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】GB2010002347
(87)【国際公開番号】WO2011080509
(87)【国際公開日】20110707
【審査請求日】2013年10月15日
(31)【優先権主張番号】1000419.0
(32)【優先日】2010年1月12日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】0922728.1
(32)【優先日】2009年12月31日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512161273
【氏名又は名称】トゥルネイチャー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRUNATURE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】レヴィル,スチュアート
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−156848(JP,A)
【文献】
実開昭63−020785(JP,U)
【文献】
米国特許第07247359(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/04
A23L 1/317
D04B 1/18
D04B 1/22
D04B 21/00
B32B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉製品を詰め込む管状ネットであって、離間配置した縦糸、およびこれら縦糸に結合された弾性横糸および非弾性横糸からなる離間配置したペアリングからなる管状ネットにおいて、前記弾性横糸および非弾性横糸が前記縦糸間において相互結合をもたず、前記弾性横糸に張力が作用していない状態にあるときに、前記非弾性横糸が弛緩した、直線状ではない状態にあるように、また前記弾性横糸が延伸している間、前記非弾性横糸が直線状になり、張力が作用するため、確実に前記ネットの直径拡張が制限されるように構成されたことを特徴とするネット。
【請求項2】
各対の弾性横糸および非弾性横糸がこれら横糸の長さにそって存在する同じ点において前記縦糸に結合し、これら結合が前記弾性横糸と前記非弾性横糸との間の唯一の結合であることを特徴とする請求項1に記載のネット。
【請求項3】
前記弾性横糸が剥き出しのゴムである請求項1に記載のネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非伸張性横糸で編んだ管状伸張性化ネットに関する
【背景技術】
【0002】
管状伸張性化ネット(Tubular elasticated netting)は、ビーフ塊やポーク塊などの食肉製品を詰め込む(包み込む)ために利用されている。このネットは、調理時食肉塊の形状および一体性を保持するものである。このようなネットを製造する編み機の一例は、英国特許第2333301号公報に開示されている。また、このようなネットで食肉を包装する包装機の一例は、英国特許第2380179号公報に開示されている。これら特許公報の参照は、本発明の理解の一助になる。
【0003】
この伸縮性化ネットは食肉塊を包み込むだけでなく、加工済み食肉製品例えばソーセージ、ハム、サラミやフランクフルトソーセージを製造し、かつ商品展示するためにも利用できる。これら食肉製品は個別に分け、プラスチック製か、場合によっては繊維状の包装体で包み込み、加工時の膨張を抑える。この結果、均一な円筒形加工食肉製品になり、スーパーマーケットでそのまま展示販売でき、またスライス加工も容易になる。通常、コラーゲンフィルムにはエマルジョンが含まれる。ところが、食肉の場合には、加工調理時に搾り、脂肪が溶ける結果発生する空洞による歪みを防止することが必要であり、これを実現するために、無孔ケースを管状伸張性化ネットに封じ込めているが、弾性材料の延伸が制限されていない限り、目的の均一な円筒体は得られない。
【0004】
米国特許第1,679,822号公報には、らせん状に巻き付けた織物用糸で被覆したゴム糸が開示されている。織物用糸は、直線状である間、即ちらせん状巻き線のピッチが広がっている間、ゴムの延伸を抑えるといわれている。欧州特許第1154696号公報には、食品製品を包み込むために利用されているネットの横糸としてこのような被覆ゴム糸を使用することが開示されている。ゴム糸上の織り物糸巻き線がゴムの延伸を制限する。
【0005】
この欧州特許第1154696号公報に開示されている種類のネットは、少なくとも過去20年間にわたって世界中で商業的に広く利用されてきているが、このようなネットを使用して加工食肉製品の形を整える場合、以下のような問題が発生する。米国特許第1,679,822号公報でも認められているように、非伸張性糸およびゴム糸を単に並列に撚り合わせ、織り物糸巻き線で被覆した場合、極端な張力をかけない限り、得られる糸が始末に負えない程、また醜い程変形する。また細い綿糸または細いナイロン糸をゴム糸にらせん状に巻き付けた場合、張力を受けると簡単に切れる。より太くより強い非伸張性糸を使用した場合には、コストが高くなるだけでなく、ゴムの延伸性を大きく損なう。いずれにせよ、このようなネットの延伸限界を正確に予測決定することは不可能である。ゴムが延伸している間ゴムに糸が食い込む範囲は、らせん状に巻いた糸の最終的なピッチ角度が変化すると、変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第2333301号公報
【特許文献2】英国特許第2380179号公報
【特許文献3】米国特許第1,679,822号公報
【特許文献4】欧州特許第1154696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主目的は、上記のような従来技術を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の、一つの態様によれば、調理加工用食肉製品を製造する方法において、(以下定義するように)相互に独立した弾性横糸(elastic weft threads)および実質的に非伸張性の横糸(inextensible weft threads)からなる管状ネットに、前記弾性横糸の張力作用により前記食肉製品に圧縮力が作用している間、前記非伸張性横糸の直線延伸が前記ネットの直径拡張を制限するまで、前記食肉製品を詰めることからなることを特徴とする製造方法を提供するものである。
【0009】
別な態様によれば、本発明は、前記製造方法を実施するさいに使用する管状ネットであって、離間配置した縦糸、および弾性横糸および実質的に非伸張性の横糸からなる離間配置したペアリングからなる管状ネットにおいて、前記弾性横糸および非伸張性横糸が(以下に定義するように)独立した関係にあり、これら横糸すべてが前記縦糸それぞれに結合され、前記弾性横糸に張力が作用していない状態にあるときに、前記非伸張性横糸が弛緩した、直線状ではない状態にあるように、また前記弾性横糸が延伸している間、前記非伸張性横糸が直線状になり、張力が作用するため、確実にネットの直径方向の拡張(diametral expansion)が制限されるように構成されたネットを提供するものである。
【0010】
本明細書における2本の糸の“独立関係”又は独立性(independent relationship)は、これら2本の糸が捻じれていないか、さもなければ長さ全体を通して結合していないことを意味する。なお、縦糸の長さにそって存在する同じ点でネットの離間配置された縦糸にこれら2つの横糸が結合しているのが有利であり、弾性糸の張力が作用していない状態では、非弾性糸が縦糸間において弛緩状態にあるのが有利である。
【0011】
弾性糸から独立して非伸張性糸を使用すると、望ましい強度に関係なく、非伸張性糸を使用することが可能になり、弾性糸の延伸性を阻害することはなく、またネットの製造コストが高くなることはない。剥き出しのゴムでもよいが、例えば保護するために綿糸、ポリエステル糸またはナイロン糸をらせん状に巻き付けたゴムコアまたは合成ゴムコアを有する弾性糸、および単純に紐状の非伸張性糸をそれぞれのボビンから引き出し、管状ネットを通常の方法で製造している間、縦糸に編み付けるか、あるいは縦糸の編み目に撚り合わせる。
【0012】
ネットの直径拡張に明確な制限を設けると、異なるサイズのノズルを備えた詰め込み機に好適な管状ネットを正確に製造することができる。
【0013】
弾性横糸成分としては、剥き出しのゴムでもよく、らせん状に巻き付けた織物用糸またはプラスチック糸によって被覆されたゴムコアまたは合成ゴムコアを有するものでもよく、また非伸張性横糸成分としては、紐状のものがよい。
【0014】
さらに別な態様によれば、本発明は、前記ネットの製造方法において、前記弾性横糸および前記非伸張性横糸をそれぞれのボビンから引き出し、これら両者を前記縦糸に編み付けるか、あるいは前記縦糸間において前記弾性横糸および実質的に非伸張性の横糸が結合しないように前記ネットの前記縦糸の編み目に撚り合わせる製造方法を提供するものである。本発明では、前記縦糸の長さにそって存在する前記縦糸の同じ点において前記縦糸に前記弾性横糸および前記非伸張性横糸を結合することができる。
【0015】
さらに別な態様によれば、本発明は、調理加工食肉製品を製造する方法において、食肉を層状化するか、巻き取り、ノズルを介してこの食肉を前記ネットに詰め込み、そして押し出され、ネットに詰め込まれた製品を所定の長さ毎に分離し、調理加工する製造方法を提供するものである。
【0016】
以下、本発明の好適な実施態様を、添付図面を参照して非制限的な実施例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】張力を作用させていない状態にある本発明の管状ネットを示す図である。
【
図2】最大直径まで拡張した状態にある
図1のネットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図示の管状ネット10は、離間配置した縦糸11および離間配置した弾性横糸12からなり、この横糸12については剥き出しゴムでもよく、あるいは織物素材またはプラスチック素材をらせん状に巻いたもので被覆したゴムコアを有するものでもよい。以上説明してきたように、ネット10は従来ネットと同様であるが、本発明では、紐状の非伸張性横糸13を付設する。ネット10を製造するさいには、弾性横糸12および非伸張性横糸13をそれぞれのボビンから引き出し、縦糸11の長さにそって存在する縦糸11の同じ点14に両者を編み付ける。あるいは、横糸12および13を点14において縦糸11の編み目に撚り合わせてもよい。非伸張性糸13を設けるため、弾性糸12は剥き出しのゴムでもよい。
【0019】
弾性横糸12の張力のない状態では、ネット10は
図1に示すように、直径が比較的小さく、紐状の横糸13は直線状ではなく、縦糸間に輪を作っている。(図示を省略した)ノズルを介してネット10に食肉製品を詰めた場合、弾性横糸12に張力がかかり、
図2に示すように、ネット10が紐状の横糸13によって許容される最大径に達するまで、紐状横糸13が直線状になる。食肉が調理加工されている間、弾性横糸12が食肉に搾力(squeezing force)を加え続けるが、非伸張性横糸13があるため、製品は歪むことなく、均一な円筒形を確保する。
【0020】
ネット10の一つの使用実施例では、骨から切り離されたハム肉が層状化されるか、巻き取られ、次にノズルを介して管状ネットに詰められる。この場合、ネットが拡張して、食肉を受け取り、食肉に搾力(squeezing pressure)を加える。ネットで包まれた食肉を所定の長さごとに分離し、調理加工する。なお、ネットの最大拡張により調理加工製品の最終形状が決まる。
【0021】
明細書および特許請求の範囲に使用した横糸13を修飾する用語“非伸張性(inextensible)”は、紐などの糸素材でさえ延伸性が限られている事実を考慮すると、用語“実質的に”によってその使用が担保されている。本質的な特徴は、横糸(weft threads)13が弾性横糸12よりも延伸性がきわめて小さいため、本発明の目的を実現できることである。
【符号の説明】
【0022】
10:ネット
11:縦糸
12、13:横糸
14:点