【実施例】
【0037】
以下に、本発明の転写フィルムおよび透明導電積層体の製造方法について、実施例に基づき具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0038】
本実施例においては、本発明の範囲外の比較例も含めて、試料No.1〜10の10種類の転写フィルム、およびこれを用いた透明導電積層体を作製して、これらを評価した。試料No.1〜10の10種類の転写フィルムは、離型層を形成するために用いた離型樹脂組成物が異なるのみであり、具体的には、(表1)に示すように、アクリルメラミン系樹脂を用いて離型層を形成した試料No.1〜5の5種類、および、アクリルフッ素系樹脂を用いて離型層を形成した試料No.6〜10の5種類である。
【0039】
次に、試料No.1〜10の10種類の転写フィルム、およびこれを用いた透明導電積層体の作製方法について、具体的に説明する。まず、基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム準備した。
【0040】
また、試料No.1〜10の10種類の転写フィルムの透明導電層を形成するための導電性高分子組成物を作製し準備した。導電性高分子組成物として、具体的には、PEDOT/PSS(ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸)水分散液(ヘレウス社製PH1000、固形分量1.0%)100重量部に、導電性向上剤としてジメチルスルホキシドを5重量部、バインダー樹脂としてポリエステル系樹脂(固形分量10%)を2.5重量部、ポリグリシジルエーテル系樹脂(固形分量10%)を2.5重量部、希釈溶剤としてイソプロパノール75%水溶液を100重量部加えて攪拌し、導電性高分子組成物を作製した。
【0041】
はじめに、試料No.1の転写フィルムは、以下のようにして作製した。まず、離型層を形成するための離型樹脂組成物を作製した。試料No.1の転写フィルムの離型樹脂組成物として、樹脂の組成をアクリル系樹脂60重量部、メラミン系樹脂40重量部とし、これに、トルエン50重量部、メチルエチルケトン50重量部の溶剤を加え離型樹脂組成物を調製した。
【0042】
この離型樹脂組成物を用い、基材フィルムとして準備した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、離型樹脂組成物を乾燥後の厚さが1μmとなるよう塗工し、120℃で1分乾燥させ、離型層を形成した。
【0043】
次に、この離型層の上に、上記で作製し準備した導電性高分子組成物を乾燥後の厚さが100nmになるように塗工し、120℃で1分乾燥させて透明導電層を形成した。
【0044】
続いて、この透明導電層の上に、銀ペースト(藤倉化成製、ドータイトFA−401CA)を用いてスクリーン印刷法によりライン幅75μm、間隔2900μmの格子状パターンを印刷し、140℃で15分乾燥させて、高さ6μmの導電性メッシュを形成した。
【0045】
さらに、接着剤としてアクリル系樹脂を乾燥後10μmの厚さになるように塗工し、120℃で3分乾燥させ、接着剤層を形成した。以上により、試料No.1の転写フィルムを得た。
【0046】
そして、試料No.1の転写フィルムの接着剤層側を、厚さ2mmアクリル板に当接し、ロール転写機を用いて、200℃、1.2m/分、10kg/cm
2の条件で加熱加圧し、冷却した後、基材フィルムを剥離した。以上により、アクリル板の表面に導電性メッシュと透明導電層とを転写して形成し、試料No.1の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0047】
試料No.2の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂の組成をアクリル系樹脂50重量部、メラミン系樹脂50重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.2の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0048】
試料No.3の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂の組成をアクリル系樹脂40重量部、メラミン系樹脂60重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.3の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0049】
試料No.4の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂の組成をアクリル系樹脂30重量部、メラミン系樹脂70重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.4の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0050】
試料No.5の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂の組成をアクリル系樹脂10重量部、メラミン系樹脂90重量部とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.5の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0051】
試料No.6の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂を、アクリル系樹脂100重量部に対しフッ素系添加剤0.05重量部を添加した組成とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.6の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0052】
試料No.7の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂を、アクリル系樹脂100重量部に対しフッ素系添加剤0.1重量部を添加した組成とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.7の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0053】
試料No.8の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂を、アクリル系樹脂100重量部に対しフッ素系添加剤1重量部を添加した組成とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.8の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0054】
試料No.9の転写フィルムは、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂を、アクリル系樹脂100重量部に対しフッ素系添加剤2重量部を添加した組成とした離型樹脂組成物を用いた以外は、試料No.1の転写フィルムと全く同様にして作製した。また、同様に、試料No.9の転写フィルムを用いた透明導電積層体を作製した。
【0055】
試料No.10は、離型層を形成するための離型樹脂組成物として、樹脂を、アクリル系樹脂100重量部に対しフッ素系添加剤3重量部を添加した組成とした離型樹脂組成物を用いた。そして、試料No.10では、形成した離型層に対する導電性高分子組成物の濡れ性が非常に悪く、透明導電層を良好な塗膜として形成できず、試料No.10の転写フィルムは、作製することができなかった。
【0056】
以上により得られた試料No.1〜9の9種類の転写フィルム、およびこれらを用いた透明導電積層体について、評価した。評価としては、接着剤層形成前の転写フィルムの透明導電層のシート抵抗値R
0、転写後の透明導電積層体のシート抵抗値R
1、および耐環境試験後の透明導電積層体のシート抵抗値R
2を測定し、転写性と耐環境性を評価した。また、転写後の透明導電積層体の全光線透過率を評価した。評価結果を、転写フィルムの離型樹脂組成物の内容とともに、(表1)に示す。
【0057】
なお、それぞれの評価は、次のようにして行った。シート抵抗値は、(株)三菱化学アナリテック製表面抵抗測定器MCP−T610を用いて、JIS K7194に準じて、四端子法により測定した。電圧端子間距離は5mmとした。
【0058】
耐環境試験は、試料の透明導電積層体を60℃、95%RHの環境下に250時間放置して耐湿熱試験を行い、試験後の透明導電積層体のシート抵抗値R
2を測定して、耐環境性を評価した。
【0059】
また、全光線透過率は、日本電色工業(株)製NDH−4000を用い、JIS K7361−1に準じて、入射光強度に対する透過光強度の割合を全光線透過率として測定した。透明導電層側を入射光側として測定した。
【0060】
【表1】
【0061】
(表1)の評価結果に示したように、試料No.1〜9の転写フィルムを用いて作製した透明導電積層体は、いずれも、シート抵抗値R
1が3.0Ω/□であり転写前後の変化がなく、また、全光線透過率が86%であり、用いた転写フィルムによる違いは見られなかった。しかしながら、耐環境試験後の透明導電積層体のシート抵抗値R
2には、用いた転写フィルムによる違いがあり、耐環境性には差違があった。
【0062】
この原因は、透明導電層の転写性の差違によるものと考えられる。すなわち、転写後の透明導電積層体のシート抵抗値R
1は、導電性メッシュの抵抗値によって決定されるため違いが見られない。しかし、耐環境性では、透明導電層の転写性の良好な転写フィルムの場合は、導電性メッシュ上に導電性高分子の透明導電層が形成され保護された構造となるので、導電性メッシュの耐環境特性が向上し、シート抵抗値R
2は変化しないが、透明導電層の転写性の悪い転写フィルムの場合は、導電性メッシュ上に導電性高分子の透明導電層が形成されず導電性メッシュが露出するため、耐環境性が低下し、湿度等により導電性が劣化しシート抵抗値R
2が増加したものと考えられる。
【0063】
そして、(表1)のように、試料No.3〜5および試料No.7〜9の転写フィルムを用いて作製した透明導電積層体は、いずれも、耐環境試験後の透明導電積層体のシート抵抗値R
2が3.0Ω/□であり、耐環境試験前後のシート抵抗値に変化がなく、耐環境性に優れ、低抵抗値の透明導電層を有する積層体が得られた。そして、試料No.3〜5および試料No.7〜9の転写フィルムは、いずれも剥離性および転写性に優れていることが確認できた。
【0064】
上記試料No.3〜5の転写フィルムは、離型層がメラミン樹脂の含有比が樹脂全量に対して60〜90重量%であるアクリルメラミン系樹脂である。また、上記試料No.7〜9の転写フィルムは、離型層がアクリル系樹脂に対して0.1〜2重量%のフッ素系添加剤を添加したアクリルフッ素系樹脂である。
【0065】
以上のように、透明導電層が導電性高分子組成物とバインダー樹脂とを含み、そのバインダー樹脂がポリエステル系樹脂およびポリグリシジルエーテル系樹脂のいずれか一方または両方を含有する樹脂である透明導電層の場合には、転写フィルムの離型層として、メラミン樹脂の含有比が樹脂全量に対して60〜90重量%であるアクリルメラミン系樹脂、または、アクリル系樹脂に対して0.1〜2重量%のフッ素系添加剤を添加したアクリルフッ素系樹脂とすることにより、いずれも、優れた剥離性と転写性が得られる。
【0066】
一方、上記の試料以外の、試料No.1、試料No.2、および試料No.6の転写フィルムは、いずれも、本発明の範囲外の比較例であり、試料No.1、試料No.2、および試料No.6の転写フィルムを用いて作製した透明導電積層体は、耐環境試験後の透明導電積層体のシート抵抗値R
2が3.3Ω/□以上であり、耐環境試験前のシート抵抗値の1.1倍以上に増加しており耐環境性が悪く、導電性高分子の透明導電層の転写性が劣っていた。